JP5183885B2 - 光学活性なジヒドロベンゾフラン誘導体及びクロマン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)式(1)
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基、式:NR8R9(R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよいベンゾイル基を表す。)で表される基、式:OR10(R10は、水素原子、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいベンゾイル基、若しくは置換基を有していてもよいベンジル基を表す。)で表される基、ハロゲン原子、又はニトロ基を表す。
Aは、式(2)
(2)前記式(1)で表されるo−アルケニルフェノール誘導体に、光学活性ジルコニウム錯体の存在下、酸化剤を作用させることにより、式(4)
(3)前記光学活性ジルコニウム錯体として、ジルコニウムアルコキシド化合物又はジルコニウムハライド化合物に、光学活性ジオール化合物を作用させて得られる錯体を用いることを特徴とする(1)又は(2)の光学活性化合物の製造方法。
(5)前記式(4)で表される光学活性エポキシ誘導体を得る工程が、前記式(1)で表されるo−アルケニルフェノール誘導体に、光学活性ジルコニウム錯体及びモレキュラーシーブスの存在下、酸化剤を作用させるものであることを特徴とする(2)〜(4)いずれかの光学活性化合物の製造方法。
(6)前記酸化剤として、式(5)
(7)前記式(1)で表されるo−アルケニルフェノール誘導体に、光学活性ジルコニウム錯体の存在下、酸化剤を作用させることを特徴とする、式(4)
本発明は、o−アルケニルフェノール誘導体(1)に、光学活性ジルコニウム錯体の存在下、酸化剤を作用させた後、閉環反応を行うことを特徴とする、光学活性化合物(3)の製造方法である。
本発明の製造方法の概要を下記反応スキームに示す。
o−アルケニルフェノール誘導体(1)に、光学活性ジルコニウム錯体の存在下、酸化剤を作用させる。
出発原料として用いるo−アルケニルフェノール誘導体(1)において、前記式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又はC1−6アルキル基を表す。
C1−6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
R8〜R10のC1−6アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基等が挙げられる。
また、R4〜R7のハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。C1−6アルキル基としては、前記R1〜R3のC1−6アルキル基として例示したものと同様のものが挙げられる。
nは1又は2を表し、nが2のとき、R11及びR12は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
本発明においては、光学活性ジルコニウム錯体を不斉酸化触媒として用いる。光学活性ジルコニウム錯体を用いることで、室温付近で反応を行うことができ、高い光学純度で収率よく、目的とする光学活性2−ヒドロキシメチルジヒドロベンゾフラン誘導体及び2−ヒドロキシメチルクロマン誘導体を得ることができる。
このような光学活性ジルコニウム錯体は、ジルコニウム化合物と光学活性配位子との配位子交換反応により調製することができる。
また、ジルコニウムハライド化合物のハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
ジルコニウムハライド化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムテトラクロリド、ジルコニウムテトラブロマイド等が挙げられる。
光学活性ジルコニウム錯体の調製に用いる光学活性配位子としては、ジルコニウム原子に配位できる光学活性化合物であれば、特に制約はなく、単座配位子であっても多座配位子であってもよい。なかでも、本発明の製造方法に用いるのに好適な光学活性ジルコニウム錯体が得られることから、光学活性ジオール化合物が好ましく、光学活性酒石酸ジエステル化合物又は光学活性酒石酸ジアミド化合物が特に好ましい。
本発明に用いる酸化剤としては、o−アルケニルフェノール誘導体(1)の側鎖アルケニル基の炭素−炭素二重結合を不斉エポキシ化するものであれば、特に制約されず、種々の化合物が使用できる。例えば、過酸化水素;過ギ酸、過酢酸、メタクロロ過安息香酸等のペルオキシカルボン酸;前記式(5)
C1−6アルキル基としては、前記R1〜R3のC1−6アルキル基として例示したものと同様のものが挙げられる。
フェニル基の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
o−アルケニルフェノール誘導体(1)の不斉エポキシ化反応を行う方法としては、例えば、(a)o−アルケニルフェノール誘導体(1)の溶媒溶液に、所定量の光学活性ジルコニウム錯体(又は光学活性ジルコニウム錯体の溶液)及び酸化剤を添加して、全容を所定温度で攪拌する方法、(b)光学活性ジルコニウム錯体の溶液に、所定量のo−アルケニルフェノール誘導体(1)(又はo−アルケニルフェノール誘導体(1)の溶液)、及び酸化剤を添加して、全容を所定温度で攪拌する方法、等が挙げられ、作業効率の観点からは、後者の方法が好ましい。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常、数分から2週間である。
また、用いるモレキュラーシーブスは、予め真空下で加熱乾燥し、不純物や水分を除去した後に使用するのが好ましい。またモレキュラーシーブスの使用量は、用いるジルコニウム化合物1モルに対して、通常0.01g〜10g、好ましくは0.01g〜4gの範囲である。
前記式(4)中、R1〜R7、及びAは前記と同じ意味を表す。*1は不斉炭素原子を表し、*2は不斉であってもよい炭素原子を表す。
光学活性エポキシ誘導体(4)は、常法により単離することができるが、そのまま、連続的に次の閉環反応を行うこともできる。作業効率の上からは、反応溶液をそのまま次工程に用いるのが好ましい。
前記不斉エポキシ化反応により得られた光学活性エポキシ誘導体(4)の閉環反応を行うことにより、不斉を保持した光学活性化合物(3)を得ることができる。
用いる塩基としては、特に制限はないが、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;等が挙げられる。
酸又は塩基の使用量は、特に制限されないが、光学活性エポキシ誘導体(4)に対し、通常、0.001〜10当量、好ましくは0.01〜3当量である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常、数分から数日間、好ましくは、1〜8時間である。
光学活性化合物(3)の光学純度は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定することができる。
カラム:CHIRALPAK AD−H(ダイセル化学工業(株)製)
移動相:n−ヘキサン:イソプロパノール=50:1(容積比)
カラム温度:35℃
測定波長:254nm
流速:1ml/min
2−ヒドロキシメチル−2,4,6,7−テトラメチルジヒドロベンゾフランの保持時間:7.1min(R体)、8.5min(S体)
カラム:CHIRALPAK AD−RH(ダイセル化学工業(株)製)
移動相:水:アセトニトリル=3:1(容積比)
カラム温度:25℃
測定波長:254nm
流速:0.5ml/min
2−ヒドロキシメチル−2,4,6,7−テトラメチルジヒドロベンゾフランの保持時間:52.5min(R体)、55.9min(S体)
(CDCl3、TMS)δppm:1.4(s,3H),2.1(s,3H),2.1(s,3H),2.2(s,3H),2.8(d,1H),3.1(d,1H),6.5(s,1H)
(実施例1〜8)
実施例1〜8では、光学活性な2−ヒドロキシメチル−2,4,6,7−テトラメチルジヒドロベンゾフランを合成した。反応式を下記に示す。
窒素雰囲気下、モノクロロベンゼン5mlに、モレキュラーシーブス4A 0.50g、ジルコニウムテトラt−ブトキシド0.20g(0.52ミリモル)、(L)−酒石酸ジイソプロピルエステル0.13g(0.55ミリモル)を加え、全容を室温で1時間撹拌して、光学活性ジルコニウム錯体の溶液を調製した。
次いで、得られた光学活性ジルコニウム錯体の溶液に、2,3,5−トリメチル−6−(2’−メチルアリル)フェノール0.56g(2.94ミリモル)、及びクメンヒドロペルオキシド1.02g(5.90ミリモル)を室温で加え、全容を室温で24時間撹拌した。
実施例1において、2,3,5−トリメチル−6−(2’−メチルアリル)フェノール、クメンヒドロペルオキシドを加える温度を0℃とし、室温で24時間撹拌することに代えて、10℃にコントロールしながら72時間撹拌する以外は、実施例1と同様の操作を行なったところ、目的物を主成分として含む混合物を得た。その結果、実施例1と同じ目的物を主成分として含む混合物が0.42g得られた。目的物の収率は69%、光学純度は78%eeであった。
実施例1において、(L)−酒石酸ジイソプロピルエステルの仕込量を0.13gに代えて、0.25g(1.07ミリモル)とした以外は、実施例1と同様の操作を行なったところ、目的物を主成分として含む混合物を得た。その結果、実施例1と同じ目的物が0.41g得られた。目的物の収率は68%、光学純度は83%eeであった。
窒素雰囲気下、モノクロロベンゼン5mlにモレキュラーシーブス4A 0.50g、ジルコニウムテトラt−ブトキシド0.20g(0.52ミリモル)、(L)−酒石酸ジイソプロピルエステル0.13g(0.55ミリモル)を加え、室温で1時間撹拌した後に、減圧留去により溶媒を除去し、さらにモノクロロベンゼン5mlを加えて減圧留去により溶媒を除去する作業を2回繰り返し、光学活性ジルコニウム錯体の溶液を調製した。
得られた混合物の1H−NMRスペクトル及びHPLCを測定した結果、目的物が0.40g得られたことがわかった。目的物の収率は66%、光学純度は87%eeであった。
実施例4において、溶媒をn−ヘキサンに変更する以外は実施例4と同様の操作を行なったところ、目的物を主成分として含む混合物を得た。その結果、目的物が0.42g得られた。目的物の収率は69%、光学純度は84%eeであった。
実施例4において、ジルコニウムテトラt−ブトキシドに代えて、85%ジルコニウムテトラn−ブトキシドのn−ブタノール溶液0.24g(0.52ミリモル)を用い、(L)−酒石酸ジイソプロピルエステルの仕込量を0.39g(1.66ミリモル)に変更する以外は、実施例4と同様の操作を行なったところ、目的物を主成分として含む混合物を得た。その結果、目的物が0.39g得られた。目的物の収率は64%、光学純度は89%eeであった。
実施例3において、モレキュラーシーブスとしてモレキュラーシーブス5A 1.0gを用い、室温で24時間撹拌することに代えて、22℃にコントロールしながら24時間撹拌する以外は実施例1と同様の操作を行なったところ、目的物を主成分として含む混合物を得た。その結果、目的物が0.41g得られた。目的物の収率は68%、光学純度は93%eeであった。
窒素雰囲気下、トルエン440mlに、乾燥モレキュラーシーブス5A 10.0gを加えて、室温で30分間撹拌し、これに85%ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液22.6g(50ミリモル)、(L)−酒石酸ジイソプロピルエステル36.9g(158ミリモル)を加え、全容を室温で1時間撹拌して、光学活性ジルコニウム錯体の溶液を調製した。
次に、水430mlに硫酸鉄(II)7水和物83.5g(300ミリモル)、(L)−酒石酸22.5g(150ミリモル)を溶解し、これに反応液を加え、5℃で30分間撹拌した後、セライトろ過により不溶物をろ過し、トルエン300mlで洗浄した。有機層を分取し、水層をトルエン100mlで抽出し、先の有機層と混合した。これを1規定水酸化ナトリウム水溶液725ml中に加え、全容を室温で17時間撹拌した。有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液から溶媒及びクミルアルコールを減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=9:1(容積比))で精製し、目的物を主成分として含む混合物を得た。
得られた混合物の1H−NMRスペクトル及びHPLCを測定した結果、目的物が43.3g得られたことがわかった。目的物の収率は84%、光学純度は95%eeであった。
2,3,5−トリメチル−6−(2’−メチル−2’,3’−エポキシプロピル)フェノールの合成
(CDCl3,TMS)δppm:1.4(s,3H),2.1(s,3H),2.2(s,3H),2.3(s,3H),2.6(d,1H),2.8(d,1H),2.8(d,1H),3.3(d,1H),6.6(s,1H),7.4(s,1H)
実施例3において、ジルコニウムテトラt−ブトキシドに代えて、チタニウムテトライソプロポキシド0.15g(0.52ミリモル)を用い、また、室温で24時間撹拌することに代えて、−10℃で1時間撹拌し、さらに室温で69時間撹拌する以外は、実施例3と同様の操作を行なった。その結果、実施例3と同じ目的物を主成分として含む混合物が得られ、その光学純度は18%eeであった。
(参考例1)
窒素雰囲気下、モノクロロベンゼン5mlに、モレキュラーシーブス4A 0.50g、及びジルコニウムテトラt−ブトキシド0.20g(0.52ミリモル)、(L)−酒石酸ジイソプロピルエステル0.13g(0.55ミリモル)を加え、室温で1時間撹拌した後に、減圧留去により溶媒を除去し、さらにモノクロロベンゼン5mlを加えて減圧留去により溶媒を除去する作業を2回繰り返すことにより、光学活性ジルコニウム錯体の溶液を調製した。
この結果より、2−ヒドロキシメチル−2,4,6,7−テトラメチルジヒドロベンゾフランは、2,3,5−トリメチル−6−(2’−メチル−2’,3’−エポキシプロピル)フェノールを経由して生成していると考えられる。
Claims (7)
- 式(1)
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基、式:NR8R9(R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよいベンゾイル基を表す。)で表される基、式:OR10(R10は、水素原子、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいベンゾイル基、若しくは置換基を有していてもよいベンジル基を表す。)で表される基、ハロゲン原子、又はニトロ基を表す。
Aは、式(2)
- 前記光学活性ジルコニウム錯体として、ジルコニウムアルコキシド化合物又はジルコニウムハライド化合物に、光学活性ジオール化合物を作用させて得られる錯体を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学活性化合物の製造方法。
- 前記光学活性ジオール化合物として、光学活性酒石酸ジエステル化合物又は光学活性酒石酸ジアミド化合物を用いることを特徴とする請求項3に記載の光学活性化合物の製造方法。
- 前記式(4)で表される光学活性エポキシ誘導体を得る工程が、前記式(1)で表されるo−アルケニルフェノール誘導体に、光学活性ジルコニウム錯体およびモレキュラーシーブスの存在下、酸化剤を作用させるものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の光学活性化合物の製造方法。
- 式(1)
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、C 1−6 アルキル基、式:NR8R9(R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、C 1−6 アルキル基、ホルミル基、C 1−6 アルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよいベンゾイル基を表す。)で表される基、式:OR10(R10は、水素原子、C 1−6 アルキル基、ホルミル基、C 1−6 アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいベンゾイル基、若しくは置換基を有していてもよいベンジル基を表す。)で表される基、ハロゲン原子、又はニトロ基を表す。
Aは、式(2)
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