JP5182516B2 - 圧電スピーカ及び圧電スピーカを備えた電子機器 - Google Patents
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Description
圧電スピーカにおいては、圧電スピーカ内で保持された振動板に、円形の圧電素子が貼り付けられている。この圧電素子に、電気信号を印加すると、印加された電気信号に応じて圧電素子が変形する。印加される電気信号は入力音声信号に応じて電圧及び電流が様々に変化するので、圧電素子の変形は入力音声信号の変化に応じた変形運動となる。圧電素子の変形運動は、圧電素子が貼付された振動板に伝えられ、振動板が振動することにより周囲の空気を振動させて、音声が生成される。
圧電スピーカの振動板は、できる限り大きな振動面で、できる限り大きな振幅で、自由に振動可能であることが望ましい。なぜならば、振動板が大きな振動面で、大きく振動可能であれば、大きな音圧で、大音量の音声の生成が可能となるからである。また振動板が自由に振動可能であれば、圧電素子の変形運動が効率よく振動運動に変換されることとなり、圧電素子に入力された信号を、より正確に再生すること可能となるからである。
そこで振動板の支持方法に関して、様々な方法が提案されている。より具体的には、振動板の支持部材や、支持構造などが提案されている(例えば、特許文献1:特開2005−130156号公報、特許文献2:特開2001−119795号公報、特許文献3:特開平10−164694号公報参照)。
図1を参照して、振動板の支持構造の一例を説明する。
図1に示される振動板の支持構造においては、振動板11は圧電スピーカの筐体12と圧電スピーカ内部の構造部(カバー13)との間に、スペーサ14と15を介して支持されている。スペーサ14、15として、例えばシリコーンゴムなど、適度な弾性を有する部材を用いることにより、振動板11が相応の自由度を保ちつつ構造部に保持される構造となっている。
しかしながら、圧電スピーカの振動板の支持構造において、振動運動の自由度のみを追求すると、圧電スピーカの音響特性が一部劣化するという問題が生じる。具体的には、信号入力開始時の立ち上がり時の再生特性や、小さな音圧の信号の再生特性が劣化するという問題を生じる。
この問題は、振動板が音声を生成するための動きが、振動面に垂直方向の往復運動であるのに対して、圧電素子の変形は、振動板の面に対して平行な伸縮運動であり、両者が全く異なる方向の運動であることに起因する。
以下に、圧電スピーカにおいて、圧電素子の伸縮運動を、振動板の垂直方向の往復運動に変換する仕組みを説明する。
圧電スピーカに音声信号が入力されると、圧電素子に電気信号が印加され、圧電素子が伸長する。圧電素子が伸長すると、振動板もそれに伴って引き延ばされる。
ここで振動板が、圧電素子の伸長分以上の伸長が可能であり、理想的な状態で支持されていて、振動板の伸長を阻害する要因が全く無ければ、振動板は、圧電素子の伸長分だけ、振動面に平行に自由に引き伸ばされる。しかしながら、振動板は支持構造により支持されているので、ある程度まで伸長した時点で、支持構造から反力が生じ、伸長が阻止される。振動板の伸長が阻止されると、振動板の振動面に平行な方向へ広がろうとする動きは行き場を失って、振動板は屈曲を開始する。この振動板の屈曲により、圧電素子の伸長が、振動板の垂直方向の運動に変換される。一旦屈曲を開始すると、振動板の動きは屈曲運動として勢いを得て、以降の圧電素子の伸縮運動は、振動板の屈曲運動に変換され、振動運動となる。
圧電スピーカにおいては、上記のような過程を経て、圧電素子の伸縮運動が、振動板の屈曲運動へと変換され、最終的に振動板が振動する。また振動板が振動運動を開始するためには、振動板が最初に屈曲運動を開始するための“引き金”が必要となる。
上記の点を、図2A〜図2Dに示す具体例を用いて説明する。図2A〜図2Dは、無音状態(無入力状態)の圧電スピーカが、振動板を振動させて音声の生成を開始するまでを、時間経過に従って4段階で示した図である。
圧電スピーカは、圧電素子21と、振動板22と、保持部材23、24、25、26とから構成される。圧電素子21は、その伸縮運動が振動板22に伝導するよう、振動板22に密着して貼付されている。保持部材23〜26は、シリコーンゴムなどの適度な弾性を有する部材であり、図示されない筐体やカバー部(以下、筐体として説明する)に、それぞれの一端が取付固定されている。さらに保持部材23〜26のそれぞれは別の一端で振動板22に接着されている。即ち、保持部材23〜26は、振動板22と筐体との間に位置して、振動板22を筐体に保持、固定している。同時に保持部材23〜26の弾性により、振動板22の保持、固定は可撓性接続となり、振動板22が音声を生成する程度に振動運動する自由度を確保している。
図2Aでは、圧電スピーカへ音声信号が入力されておらず、無音の状態で停止した、初期状態の圧電スピーカを示している。次に図2Bは、圧電スピーカへの音声信号の入力が開始され、圧電素子21が伸長を開始した状態を示す。図2Bから図2Cでは、圧電素子21が伸長し、それに伴って振動板22も伸長している。図2B及び図2Cの段階では、振動板22の伸長は、保持部材23〜26の変形により吸収されている。しかし、図2Bから図2Cへと振動板22の伸長が進むにつれて、保持部材23〜26からの反力RF1,RF2も増加する。図2Dの段階に至り、保持部材23〜26からの反力RF1,RF2が、振動板22の伸長しようとする力より大きくなり、圧電素子21から伝導された振動板22の伸長しようとする力は行き場を失う。行き場を失った伸長方向への力は、振動板22をその中央部を隆起させるように屈曲させ、垂直方向に逃げる。こうして振動板22が屈曲を開始する。以降、圧電素子21の伸縮運動は、振動板22の屈曲運動に連続的に変換されて振動板22の振動運動となり、音声の生成が開始される。
以上のように、圧電素子21の伸縮運動が、振動板22の屈曲、振動運動へと変換されるためには、振動板22の伸長運動が屈曲運動への変換を開始する上記のような“引き金”が必要となる。そして振動板22が伸長動作を開始する早い段階から屈曲運動を開始させるためには、振動板22を強い拘束力で保持する構造が望ましい。振動板22を強い拘束力で保持する構造とは、例えば、図2A〜図2Dに示す例においては、保持部材23〜26の弾性を弱め、硬質の保持部材とする。弾性が弱く硬質の保持部材であれば、保持部材は、小さな変形でも大きな反力を生じ、振動板22の伸長が小さい段階で振動板22の屈曲を開始させるからである。
しかしながら振動板22を強い拘束力で保持する支持構造を採用すれば、“引き金”は早い段階で得られ、屈曲運動が速やかに開始されるものの、屈曲運動開始後の振動板22の動きも阻害され、圧電スピーカの音響特性は損なわれてしまう。
逆に、音響特性を考慮して振動板22の振動運動の自由度を高めると、振動板22における屈曲運動の開始が阻害される。具体的には、振動板22の振動開始が遅れるので、音声信号入力開始時の音声の再生開始が遅くなる。即ち、音声再生の立ち上がりが鈍くなる。また音声信号の入力が、小さな音量、音圧(振幅)に終始すると、圧電素子21の変形も小さな伸縮運動に終始し、結果として最後まで振動板22の屈曲運動が開始されず、最後まで音声が生成されないことさえ起こり得る。
本発明の態様によれば、圧電スピーカは、さらに前記振動板の振動面に接触して前記振動板の一部をロックするロック部を有する。該ロック部は、前記圧電スピーカに前記入力信号が入力されていない状態の時には前記振動板に接触して前記振動板の伸長を阻止し得るロック状態にあり、前記入力信号の入力直後に前記ロック状態が解除されることにより、前記弾性部による保持のもとで前記振動板が振動する。
前記ロック部の具体例として、以下のものがあげられる。
ロック部は、磁性を有するとともに外縁部の少なくとも一部を前記弾性部で保持され、前記振動板の外縁部近傍を一方の振動面側から押さえることのできるリング体と、前記弾性部で保持され、前記振動板の外縁部近傍において他方の振動面に接触、離反可能な磁石体とを含む。前記リング体と前記磁石体とが磁力で引き合って前記振動板を挟むことにより前記ロック状態となり、前記入力信号の入力直後に前記振動板の振動によって前記リング体と前記磁石体とが引き離されることにより、前記ロック状態が解除される。
前記磁石体は、前記振動板の外周方向に関して複数に分割された複数のラバー磁石からなることが好ましい。また、前記弾性部は、前記振動板の外周方向に関して複数に分割された複数の粘着テープからなり、各粘着テープが前記リング体、前記振動板、前記ラバー磁石のそれぞれの外周端部に接着され、しかも各粘着テープは前記リング体の接着部と前記振動板の接着部との間、前記振動板の接着部と前記ラバー磁石の接着部との間にそれぞれ遊びができるように接着されていることが好ましい。さらに、前記振動板は、前記磁石体が接触する箇所に、該磁石体と係合する凹部、凸部の少なくとも一方を有することが好ましい。
図2Aは、従来の圧電スピーカの動作を説明するための図である。
図2Bは、図2Aに続く、従来の圧電スピーカの動作を説明するための図である。
図2Cは、図2Bに続く、従来の圧電スピーカの動作を説明するための図である。
図2Dは、図2Cに続く、従来の圧電スピーカの動作を説明するための図である。
図3は、本発明による圧電スピーカを備えた携帯電話機の構成を示すブロック図である。
図4は、本発明の第1の実施例による圧電スピーカを模式的に示す分解図である。
図5は、本発明の第1の実施例による圧電スピーカの一部を拡大して示す断面図である。
図6Aは、本発明の第1の実施例による圧電スピーカの動作を説明するための断面図である。
図6Bは、図6Aに続く、第1の実施例による圧電スピーカの動作を説明するための断面図である。
図6Cは、図6Bに続く、第1の実施例による圧電スピーカの動作を説明するための断面図である。
図6Dは、図6Cに続く、第1の実施例による圧電スピーカの動作を説明するための断面図である。
図6Eは、図6Dに続く、第1の実施例による圧電スピーカの動作を説明するための断面図である。
図7は、本発明の第2の実施例による圧電スピーカの一部を拡大して示す断面図である。
図8は、本発明の第3の実施例による圧電スピーカの一部を拡大して示す断面図である。
図9Aは、本発明の第4の実施例による圧電スピーカの一部を信号入力無しの場合について示す拡大断面図である。
図9Bは、本発明の第4の実施例による圧電スピーカの一部を信号入力有りの場合について示す拡大断面図である。
図10は、第2〜第4の実施例の組合せによる圧電スピーカの一部を拡大して示す断面図である。
図3は、本発明の実施例による圧電スピーカ38を備えた電子機器の一例として、携帯電話機30の構成を示す。
携帯電話機30は、アンテナ部31と、無線部32と、表示部33と、CPU(Central Processing Unit)34と、ドライブ部35と、入力部36と、メモリ37と、圧電スピーカ38とを備えている。この携帯電話機30において、圧電スピーカ38は、例えば以下のように動作する。
アンテナ部31を介して、無線部32により無線信号を受信する。無線信号が例えば着信信号であると、CPU34は、着信に関する情報を表示部33に表示するとともに、メモリ37に格納された着信音や着信メロディの音響データを読み出す。CPU34は、読み出した音響データをドライブ部35に入力する。ドライブ部35は、入力された音響データに応じて圧電スピーカ38を駆動し、圧電スピーカ38は音響データに対応する音響を生成する。
図4において、圧電スピーカ40は、圧電素子42と、振動板43と、固定リング44と、複数の粘着テープ(弾性部)45と、複数のラバー磁石46とからなる。圧電スピーカ40は、図4において矢印が示すように各部位が組み合わされて作られる。即ち、振動板43の一方の面の中央に、圧電素子42が密着するように貼布される。次に、振動板43と、固定リング44及びラバー磁石46の、それぞれの外周端部に粘着テープ45を接着する。これにより、振動板43の外縁部を、固定リング44と複数のラバー磁石46とで挟んで振動板43を固定(ロック)する。
固定リング44は、例えば金属製の材質であり、磁性を有している。また固定リング44が一体構造であるのに対し、粘着テープ45及びラバー磁石46は、固定リング44の円周に沿って複数に分割されている。さらに粘着テープ45は、適当な弾性を有するとともに接着面にあそびを有している。ラバー磁石46は、固定リング44の円周に沿って複数に分割されていることと、弾性を有する粘着テープ45が保持することにより、後述するような動作が可能となっている。なお図4において、圧電素子42へ電気信号を印加するための配線等は図示を省略している。また以降の図においても同様に、説明に必要の無い限り、圧電素子42へ電気信号を印加するための配線等は図示を省略している。
図5に、図4に示す圧電スピーカ40が組み立てられた後の部分断面図を示す。図5は、図4に示す圧電スピーカ40の外周部分の一部を拡大して示している。図5において、図4と対応する部品は、図4における参照番号と同じ参照番号を付与している。
図5に示すように、固定リング44と、振動板43と、ラバー磁石46のそれぞれの外周端部に、粘着テープ45が接着されている。53は、粘着テープ45の粘着箇所を示しており、3つの粘着箇所53で、固定リング44と、振動板43と、ラバー磁石46のそれぞれと、粘着テープ45とが接着されている。また粘着テープ45が、適当な弾性を有するので、52で示されるたわみにより、固定リング44と振動板43との間、及び、振動板43とラバー磁石46との間に隙間(遊び)が存在している。たわみ52により隙間が生じているものの、磁性を有する固定リング44とラバー磁石46は矢印51で示す磁力で互いに引き合い、振動板43を挟んで固定(ロック)している。このため、振動板43は、固定リング44とラバー磁石46との間の磁力による引き合いを妨げない材料であることが望ましい。
ここで、これまでの圧電スピーカにおける振動板の保持部材は、粘着テープ45に対応する。即ち、粘着テープ45に相当する保持部材によってのみ振動板を保持する構造が、これまでの支持構造である。それに対して第1の実施例による圧電スピーカには、これまでの支持構造と比較して、固定リング44と、ラバー磁石46とが追加され、固定リング44とラバー磁石46とにより振動板43を挟んで固定(ロック)する構造が追加されている。図4に矢印で示すように組み立てられた圧電スピーカは、例えば、固定リング44の上部に両面テープを貼付し、圧電スピーカの筐体の一部へ貼り付けて取り付けられる。あるいはまた、組立て後の圧電スピーカ全体を、成型により作られた枠内に収容して接着剤で固着したものを筐体の一部に固定するようにしても良い。
次に図6A〜図6Eを参照して、第1の実施例による圧電スピーカ40の動作を説明する。以降の説明でも入力信号として音声信号が与えられる場合について説明する。図6A〜図6Eは、圧電スピーカ40が無音の静止状態(無入力状態)、即ち初期状態から、連続的に振動運動するまでを5段階の断面図で示している。また図6A〜図6Eにおいて、図4と対応する部品は、図4における参照番号と同じ参照番号を付与している。
図6Aに示される圧電スピーカ40は、図5に示される圧電スピーカ40と同じ初期状態を示す。即ち、この段階の圧電スピーカ40は、静止状態あるいは無音状態にある。図6Bの時点で音声信号に対応する電気信号が圧電素子42に印加され、圧電素子42が伸長を開始する。振動板43は、固定リング44とラバー磁石46で挟まれて固定されているので、粘着テープ45のみにより保持、固定される場合よりも、振動板43の伸長量が小さい時点から、伸長を押し戻そうとする反力RF1、RF2を生じる。即ち、固定リング44とラバー磁石46による振動板43の挟持、固定(ロック)により、振動板43の伸長は、圧電素子42への電気信号の印加直後の早い段階から阻止され、これを”引き金”として振動板43の伸長は屈曲運動に変換される。そして図6Cの時点で振動板43は屈曲運動を開始する。このように、固定リング44と複数のラバー磁石46との組合せは、電気信号印加直後の振動板43の伸長を阻止するロック機能を有するのでロック部と呼ばれても良い。
次に、圧電素子42に印加される電気信号が変化して圧電素子42が縮小すると、振動板43は既に屈曲を開始して振動運動の勢いを得ているので、図6Dに示されるように、振動板43は下向きに屈曲する。振動板43が下向きに屈曲するため、磁力により引き合っていた固定リング44とラバー磁石46は、引き離される。固定リング44とラバー磁石46が引き離されて開放状態になると、図6Eに示すように、振動板43は、粘着テープ45の弾性のみの拘束で自由な振動(屈曲)運動を連続的に開始し、音声を生成する。即ち、有音の状態となる。なお図6Eでは、理解し易くするために、図の上方向に屈曲した振動板43と、図の下方向に屈曲した振動板43との双方を重ねて図示し、振動板43の振動(屈曲)運動を模式的に示している。
図6Eに示されるように、振動板43を拘束するのは粘着テープ45の弾性力のみであり、図6Aから図6Cの状態、即ち、固定リング44とラバー磁石46が振動板43を挟んで固定する状態よりも弱い拘束となる。
また図6Aから図6Cの状態では、振動板43の振動は、図6Aに拘束箇所61を示すように、リング状の固定リング44とラバー磁石46の内径側のエッジによって拘束される。拘束箇所61での拘束により、振動板43の振動が制限される。しかし、図6Eの状態では、固定リング44とラバー磁石46による挟み込み(保持)、固定は開放されるので、振動板43は粘着テープ45との接着部62を支点にして、振動板43の面全体で振動(屈曲)運動することが可能となる。即ち、図6Eの状態は、図6Aの状態よりも広い振動面で振動運動することが可能となる。このため圧電スピーカ40は、固定リング44とラバー磁石46による挟み込み状態から開放されると、より高い自由度で、広い振動面での振動による音声の生成が可能となる。
圧電素子42への電気信号の印加が終了し、振動板43の振動が収束して音声の生成が終了すると、粘着テープ45の弾性と、固定リング44とラバー磁石46との間の磁力により、再び固定リング44とラバー磁石46とが振動板43を挟み込んで、固定する図6Aの初期状態に戻る。
以上のように、振動板43が屈曲運動を開始する前においては、固定リング44とラバー磁石46により振動板43を挟んで、固定していることにより、電気信号の印加に伴って伸長しようとする振動板43に屈曲運動開始のための反力を”引き金”として与える。そのため圧電スピーカ40への音声信号入力の早い段階、あるいは圧電スピーカ40への小さな音声信号入力に対しても、圧電スピーカ40は屈曲運動を開始し音声を生成することが可能となる。さらに屈曲運動開始後には、固定リング44とラバー磁石46とによる振動板43の挟み込みが開放され、振動板43は、より大きな自由度、即ち、弱い拘束力、大きな振動面による大きな振幅で振動が可能となる。
またラバー磁石46の数、即ち、円弧形状に分割したいくつのラバー磁石46によって振動板43の外縁部を固定するか、あるいはラバー磁石46の磁力や重さ、さらには粘着テープ45の弾性などの要素を、さまざまに変更して組み合わせることにより、振動板43の固定状態と開放状態との切り替えの動作やタイミングを、さまざまに変更することが可能である。
第2の実施例では、振動板43に凸部71を設けている。凸部71は、振動板43の挟み込み、固定状態において、ラバー磁石46が振動板43に接する位置に対応して設けられている。凸部71は、振動板43が伸長しようとする動きをより確実に阻止して反力を生じさせ、振動板43に屈曲運動を開始させ固定状態(ロック状態)が解除される。
またラバー磁石46の接触部(内径側のエッジ)に対して凸部71の角度を様々に変更しても良い。例えば図7に示すように凸部71の断面形状が三角形であれば、挟み込み、固定状態で、振動板43が伸長すると、振動板43を振動面に対して垂直に押し上げる作用を得ることが可能である。
なお、凸部71は、振動板43の振動面上に連続した完全な円を形成するようにリング状に設けられても良いし、あるいは、振動板43に接する複数のラバー磁石46のそれぞれのエッジに対応する部分に不連続的に設けられても良い。
第3の実施例においては、第2の実施例における凸部71の代わりに、凹部81を設けている。凹部81は、振動板43の挟み込み、固定状態において、ラバー磁石46のエッジに対応する位置に設けられているため、第2の実施例と同様に、振動板43が伸長しようとする動きをより確実に阻止して反力を生じさせ、振動板43に屈曲運動を開始させて固定状態(ロック状態)を解除させる。第2の実施例と同様に、挟み込み、固定状態にあるラバー磁石46のエッジに対して凹部81の角度を様々に変更しても良い。例えば図8に示すように凹部81の断面形状が三角形であれば、挟み込み、固定状態で、振動板43が伸長すると、振動板43を振動面に対して垂直に押し上げる作用を得ることが可能である。加えて、凹部81は、振動板43の振動面を一部削って溝を形成するという、容易な加工で実現することが可能である。
以下では、第1〜第3の実施例との差異を中心に第4の実施例を説明する。
第4の実施例による圧電スピーカ40においては、固定リング44、粘着テープ45は用いられず、振動板43は、ギャザードエッジ(弾性部)111により圧電スピーカの筒状の筐体114に保持されている。ギャザードエッジ111は弾性を有しており、振動板43の自由な運動が可能となっている。第1〜第3の実施例の初期状態において振動板43を挟みこみ、固定していた固定リング44、ラバー磁石46の代わりに複数の円弧形状の保持部112が用いられている。複数の保持部112は、図4で説明したラバー磁石46と同様、組立て後には全体として略リング形状になる。第4の実施例においては、保持部112は、全体が磁性体である必要はない。その代わりに保持部112の材質は、後述する仕組みや動作に十分な剛性や、適切な重さ(軽さ)であれば良い。保持部112の全体が磁性を有する必要は無いものの、保持部112は筐体114に対向する方の端部に磁石部113を有している。さらに筐体114であって、磁石部113に対向する位置には電磁石部115が設けられている。電磁石部115は、磁石部113と反発する方向に磁力を発生する。保持部112は、支点部110を支点に回動することが可能な回動体となっている。筐体114には、支点部110を間にして電磁石部115と対称となる位置にバネ部(伸長バネ)116が設けられている。バネ部116は、保持部112を振動板43に接近させる方向に付勢している。電磁石部115と、バネ部116と、磁石部113と、支点部110とで、回動式の1つの電磁スイッチ120を構成している。
電磁スイッチ120は、制御部118からの電磁スイッチ駆動信号Ssdによって動作する。制御部118は、図3におけるドライブ部35と同様に圧電素子42を駆動する電気信号を生成し、さらに第4の実施例においては電磁スイッチ120の駆動信号Ssdを生成する。より具体的には、制御部118は、音声信号119が入力され、前述の電磁スイッチ駆動信号Ssdと、圧電素子駆動信号Spdとを出力する。制御部118が出力した圧電素子駆動信号Spdは、圧電素子42に入力される。
次に、第4の実施例による圧電スピーカの動作を説明する。
図9Aは、圧電スピーカ40の初期状態を示している。初期状態においては、電磁スイッチ120は作動しておらず、バネ部116により保持部112が振動板43に押し付けられ、保持部112はそのエッジが凹部81に入り込んだ第1の位置にある。すなわち、電磁スイッチ120は、音声信号入力直後の振動板43の伸長を阻止し得るロック状態にある。
音声を生成するための音声信号119が制御部118に入力されると、制御部118は、入力された音声信号119に対応して圧電素子駆動信号Spdを出力する。出力された圧電素子駆動信号Spdは、圧電素子42に印加される。
圧電素子駆動信号Spdの印加により、圧電素子42は伸長を開始する。圧電素子42の伸長に伴い、振動板43が伸長しようとすると、振動板43の伸長に対して、凹部81と保持部112のエッジとの接合箇所で反力が生じ、これが”引き金”となって振動板43は屈曲運動を開始する。
振動板43が屈曲運動を開始した時点で、制御部118は電磁スイッチ駆動信号Ssdにより電磁スイッチ120を動作させる。電磁スイッチ120が動作すると、図9Bに示すように、電磁石部115が励磁されて電磁石部115と磁石部113が、バネ部116の付勢力よりも強い力で反発し合う。これにより、保持部112はそのエッジが、支点部110を中心に振動板43から離れるように第2の位置まで回動する。その結果、振動板43は、保持部112による保持、固定状態(ロック状態)から開放されて、ギャザードエッジ111にのみ拘束された自由な状態で、振動運動を開始する。このように、第4の実施例においては、制御部118と電磁スイッチ120との組合せが、電気信号印加直後の振動板43の伸長を阻止するロック機能を有するロック部として作用する。
音声の生成が終了する時には、制御部118が、音声信号119から音声生成の終了を検出する。音声生成の終了を検出すると、制御部118は圧電素子駆動信号Spdを音声信号119に応じて収束させる。さらに制御部118は、振動板43の振動が収束した時点で、電磁スイッチ120をオフとし、圧電スピーカ40を初期状態である図9Aに示される状態に戻す。
以上のように、第4の実施例においては、電磁スイッチ120を用いることで、保持部112による振動板43の保持、固定と開放の動作を、制御部118によって電気的に制御する。これにより保持部112による振動板43の保持、固定と開放のタイミングを、より適切に、より細かく制御することが可能となる。制御部118を、CPUやデジタル論理回路を用いて高度化すれば、保持部112による振動板43の保持、固定と開放の動作の、より複雑な制御も可能となる。例えば入力される音声信号119の振幅、周波数、信号の継続時間、その他の信号の性質に応じて、保持部112による振動板43の保持、固定と開放の動作や動作のタイミングを細かに切り替えても良い。例えば、制御部118は、音声信号の入力から所定時間後、あるいは入力された音声信号が所定の条件を満たした時に振動板43をロック状態から開放するようにしても良い。この場合の所定の条件としては、例えば音声信号が所定の振幅より大きくなった時とすることが考えられる。
第4の実施例では、伸長コイルバネによるばねバネ部116を用いて保持部112を振動板43に接触する第1の位置へ付勢し、磁石部113と電磁石部115との間の反発力によって保持部112を第2の位置へ回動させる構成としているが以下の構成でも良い。電磁石部115と磁石部113とに代えて圧縮コイルバネを設けることにより圧縮コイルばねの引っ張り力により保持部112を第1の位置へ回動させる。一方、バネ部116に代えて、筐体114には電磁石部を、保持部112には磁石部あるいは磁性体をそれぞれ設ける。そして、音声信号の入力直後に電磁石を励磁して両者の間に吸引力を生じさせることにより保持部112を第2の位置へ回動させる。
なお、第1の実施例において、ラバー磁石46は、振動板43の振動面にエッジ箇所で接触する例を示した(図5、図6参照)。しかしながらラバー磁石46の振動面43への接触は、必ずしもエッジである必要はない。例えば、エッジの代わりにラバー磁石46と振動板43の接触箇所が面となるよう、ラバー磁石46に接触面を備えてもよい。さらには摩擦力が増加するように、ラバー磁石46及び振動板43の接触面の材質や表面形状を工夫しても良い。例えば接触面の材質を、シリコーンゴムなどの摩擦係数の大きい材質としても良いし、接触面の表面形状を、タイヤのトレッドパターンやシューズのソールパターンのような溝や切り込みを設けた形状や、あるいはやすりのような形状としても良い。
第1〜第3の実施例においては、粘着テープ45を用いたが、弾性を有する材質であれば、必ずしも粘着テープを用いる必要は無い。例えば第4の実施例のギャザードエッジ111のように、材質あるいは構造から、振動板43の自由な振動運動を達成するものでも良い。
また第1〜第3の実施例においては、固定リング44とラバー磁石46とが、振動板43を挟んだ状態で磁力によって引き合って、振動板43を挟み込み、固定する構造を示した。しかしながら、必ずしも、固定リング44とラバー磁石46とが、振動板43を挟む構造である必要はない。振動板43を挟まない構造であっても、ラバー磁石46が、初期状態において振動板43を保持、固定し、振動板43の伸長動作に反力を与え、屈曲運動の開始を促す構造であれば良い。
さらに第2〜第4の実施例において、振動板43に凸部71や凹部81を設けた構成を示したが、凸部71や凹部81は、組み合わせて用いる構成としても良い。即ち、第1の実施例〜第4の実施例は適宜組み合わせることが可能である。
図10は、第2の実施例〜第4の実施例を組み合わせた一例を示す。図10に示す圧電スピーカ40は、粘着テープ45に代えてギャザードエッジ111を使用し、また固定リング44とラバー磁石46とで振動板43を挟む構造に代えて、保持部112により振動板43を保持、固定し、さらに凸部71と凹部81とを組み合わせて備える例を示している。図10に示す圧電スピーカ40においては、筐体114の全部、あるいは、筐体114であって磁石部113と対応する位置の一部が磁性を有する構造となっている。そして磁石部113と、筐体114の磁性を有する部分とが磁力により引き合うことにより、保持部112が回動し、保持部112による振動板43の保持、固定状態となる。電気信号の印加直後に振動板43が下向きに屈曲すると、磁力により引き合っていた筐体114と磁石部113は、引き離される。磁石部113が筐体114から引き離されて振動板43が開放状態になると、振動板43は、ギャザードエッジ111の弾性のみの拘束で自由な振動(屈曲)運動を連続的に開始する。
上記の説明では、本発明による圧電スピーカを備えた電子機器として携帯電話機を例示したが、PDA、携帯ゲーム機器等の携帯電子機器にも適用可能である。
以上説明したように、本発明による圧電スピーカ及び圧電スピーカを備えた電子機器は、初期状態においては振動板を挟み込み(保持)、固定し、電気信号が印加され振動板が屈曲運動を開始した後は、振動板の挟み込み(保持)、固定を開放する。これにより振動板の速やかな屈曲運動の開始と、振動板が大きな振幅と大きな振動面で振動することとが可能となる。
本発明は、圧電スピーカにおいて、音声信号の入力開始時や音声信号の立ち上がり時からの音声の生成と、大きな振幅で、大きな振動面での振動板の振動による音声の生成と、微小な音声信号の生成とを可能とする効果を奏し、この効果を奏する圧電スピーカを備えた電子機器を実現する。勿論、音声信号のみならず、アラームや着信メロディ等の音響信号でも作用はまったく同じである。
この出願は、2006年11月9日に出願された日本出願特願第2006−303455号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
Claims (12)
- 入力信号に応じて変形する圧電素子と、前記圧電素子の変形により振動し音響を生成する振動板と、前記振動板の外縁部の少なくとも一部を保持する弾性部とを含む圧電スピーカにおいて、
さらに前記振動板の振動面に接触して前記振動板の一部をロックするロック部を有し、該ロック部は、前記圧電スピーカヘの前記入力信号の入力の有無に応じてロック状態、該ロック状態の解除が切換わることを特徴とする圧電スピーカ。 - 前記ロック部は、前記圧電スピーカに前記入力信号が入力されていない状態の時には前記振動板に接触して前記振動板の伸長を阻止し得るロック状態にあり、前記入力信号の入力直後に前記ロック状態が解除されることにより、前記弾性部による保持のもとで前記振動板が振動することを特徴とする請求項1に記載の圧電スピーカ。
- 前記ロック部は、
磁性を有するとともに外縁部の少なくとも一部を前記弾性部で保持され、前記振動板の外縁部近傍を一方の振動面側から押さえることのできるリング体と、
前記弾性部で保持され、前記振動板の外縁部近傍において他方の振動面に接触、離反可能な磁石体とを含み、
前記リング体と前記磁石体とが磁力で引き合って前記振動板を挟むことにより前記ロック状態となり、
前記入力信号の入力直後に前記振動板の振動によって前記リング体と前記磁石体とが引き離されることにより、前記ロック状態が解除されることを特徴とする請求項2に記載の圧電スピーカ。 - 前記磁石体は、前記振動板の外周方向に関して複数に分割された複数のラバー磁石からなり、
前記弾性部は、前記振動板の外周方向に関して複数に分割された複数の粘着テープからなり、各粘着テープが前記リング体、前記振動板、前記ラバー磁石のそれぞれの外周端部に接着され、しかも各粘着テープは前記リング体の接着部と前記振動板の接着部との間、前記振動板の接着部と前記ラバー磁石の接着部との間にそれぞれ遊びができるように接着されていることを特徴とする請求項3に記載の圧電スピーカ。 - 前記振動板は、前記磁石体が接触する箇所に、該磁石体と係合する凹部、凸部の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項3に記載の圧電スピーカ。
- 前記ロック部は、
前記振動板の外縁部における振動面に接触する状態と、該振動面から離反する状態とを切換え可能な電磁スイッチと、
前記電磁スイッチに接続され、前記入力信号の有無に応じて前記電磁スイッチの切換制御を行う制御部とを含み、
前記電磁スイッチは前記入力信号が入力されていない状態では前記振動面に接触する状態にあり、
該制御部は、前記入力信号の入力直後に前記電磁スイッチが前記振動面から離反する状態に切換わるように前記電磁スイッチを制御することを特徴とする請求項1に記載の圧電スピーカ。 - 前記振動板は当該圧電スピーカの筐体の一部に前記弾性部を介して保持され、
前記電磁スイッチは、
前記弾性部に近い位置で支点部を介して前記筐体の一部に設けられ、前記振動板の振動面に接触する第1の位置と、前記振動板の振動面から離反した第2の位置との間を回動可能な少なくとも1つの回動体と、
前記回動体における前記筐体との対向部分に設けられた磁石と、
前記筐体の一部に設けられ、前記回動体を前記振動板の振動面に接触させる方向に付勢するバネ部材と、
前記筐体の一部における前記磁石との対向位置に設けられ、前記磁石と反発する方向に磁力を発生する電磁石とを含み、
前記回動体は前記入力信号が入力されていない状態では前記バネ部材によって前記振動面に接触する前記第1の位置にあり、
該制御部は、前記入力信号の入力直後に前記電磁石を励磁して前記回動体を前記振動面から離反した前記第2の位置に切換えることにより前記ロック状態が解除されることを特徴とする請求項6に記載の圧電スピーカ。 - 前記制御部は、前記入力信号が入力されてから所定時間後、あるいは入力信号が所定の条件を満たした時に前記電磁石を励磁して前記回動体を前記振動面から離反した前記第2の位置に切換えることを特徴とする請求項7に記載の圧電スピーカ。
- 前記振動板は、前記回動体が接触する箇所に、該回動体と係合する凹部、凸部の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項7に記載の圧電スピーカ。
- 前記振動板は当該圧電スピーカの筐体の一部に前記弾性部を介して保持され、
前記ロック部は、
前記弾性部に近い位置で支点部を介して前記筐体の一部に設けられ、前記振動板の振動面に接触する第1の位置と、前記振動板の振動面から離反した第2の位置との間を回動可能な少なくとも1つの回動体と、
前記回動体における前記筐体との対向部分に設けられた磁石とを含み、
前記筐体の一部における少なくとも前記磁石との対向部分は磁性体とされ、
前記回動体は前記入力信号が入力されていない状態では前記磁石と前記磁性体とが引き合うことにより前記振動面に接触する前記第1の位置にあり、
前記入力信号の入力直後に前記振動板の振動によって前記磁石と前記磁性体とが引き離されることにより、前記第2の位置に変化して前記ロック状態が解除されることを特徴とする請求項1に記載の圧電スピーカ。 - 前記振動板は、前記回動体が接触する箇所に、該回動体と係合する凹部、凸部の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項10に記載の圧電スピーカ。
- 請求項1に記載の圧電スピーカを備えることを特徴とする電子機器。
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