JP5177471B2 - 水酸化インジウム又はインジウムの回収方法 - Google Patents
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Description
このスパッタリング法による薄膜形成手段は優れた方法であるが、スパッタリングターゲットを用いて、例えば透明導電性薄膜を形成していくと、該ターゲットは均一に消耗していく訳ではない。
このターゲットの一部の消耗が激しい部分を一般にエロージョン部と呼んでいるが、このエロージョン部の消耗が進行し、ターゲットを支持するバッキングプレートが剥き出しになる直前までスパッタリング操作を続行する。そして、その後は新しいターゲットと交換している。
したがって、使用済みのスパッタリングターゲットには多くの非エロージョン部、すなわち未使用のターゲット部分が残存することになり、これらは全てスクラップとなる。また、ITOスパッタリングターゲットの製造時においても、研磨粉や切削粉からスクラップが発生する。
このインジウム回収方法として、従来酸溶解法、イオン交換法、溶媒抽出法などの湿式精製を組み合わせた方法が用いられている。
例えば、ITOスクラップを洗浄及び粉砕後、硝酸に溶解し、溶解液に硫化水素を通して、亜鉛、錫、鉛、銅などの不純物を硫化物として沈殿除去した後、これにアンモニアを加えて中和し、水酸化インジウムとして回収する方法である。
しかし、この方法によって得られた水酸化インジウムはろ過性が悪く操作に長時間を要し、Si、Al等の不純物が多く、また生成する水酸化インジウムはその中和条件及び熟成条件等により、粒径や粒度分布が変動するため、その後ITOターゲットを製造する際に、ITOターゲットの特性を安定して維持できないという問題があった。
この方法はスクラップからインジウムを回収する方法として優れた方法であったが、水酸化インジウムを回収する際、1ミクロン以下の微細水酸化インジウム又はイオン化したインジウムがフイルタープレスで濾過する時に、網の目を通過してしまい、ロスとなることが分かった。このため水酸化インジウムの収率を向上させる改善が必要であった。
1. 微細な水酸化インジウム又はイオンとなっているインジウム溶液中に、水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム水溶液を添加してpHを7〜10に調整し水酸化インジウムを凝集させる工程、さらにこの水酸化インジウムを濾過する工程からなることを特徴とする水酸化インジウムの回収方法。
2. ITOインジウム含有スクラップを塩酸で溶解して塩化インジウム溶液とする工程、該溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加してスクラップ中に含有する錫を水酸化錫として除去し、さらに水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム水溶液を添加してpHを7〜10に調整し水酸化インジウムを凝集させる工程、さらにこの水酸化インジウムを濾過する工程からなることを特徴とする水酸化インジウムの回収方法。
3. ITOインジウム含有スクラップを塩酸で溶解して塩化インジウム溶液とする工程、該溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加してスクラップ中に含有する錫を水酸化錫として除去し、さらに水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム水溶液を添加してpHを7〜10に調整し水酸化インジウムを凝集させる工程、この水酸化インジウムを濾過しケーキとして回収した後、硫酸を添加して硫酸インジウムとする工程、該硫酸インジウムを電解採取によりインジウムとする工程からなることを特徴とするインジウムの回収方法
4. 水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを1.5〜2.0に調整しスクラップ中に含有する錫を水酸化錫として除去することを特徴とする上記2又は3に記載のインジウムの回収方法
5. 電解開始時のインジウム濃度を50〜250g/Lに調製することを特徴とする上記3又は4に記載のインジウムの回収方法
6. 電解終了時のインジウム濃度を10〜50g/Lに調製することを特徴とする上記3〜5のそれぞれに記載のインジウムの回収方法
7. 電解槽のアノードとして不溶性貴金属酸化物アノードを、カソードとしてチタン板を使用し、電解液のpHを1.5〜2.0、電流密度を0.1〜2.0A/dm2に、電解温度を5〜50°Cに調整して電解採取することを特徴とする上記3〜6のそれぞれに記載のインジウムの回収方法
8. 電解後液中のインジウムイオンを水酸化ナトリウムで中和し水酸化インジウムとして回収し、この水酸化インジウムを原料として再使用することを特徴とする上記3〜7のそれぞれに記載のインジウムの回収方法
を提供する。
塩酸量は300L〜600Lとする。300Lは反応当量であり、600Lを超えて添加しても特に反応が促進するわけではないので、無駄である。上記塩酸量に調製し、かつ温度100〜110°Cで溶解することにより、未溶解残を極力少なくできる。
この後、さらに水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム水溶液を添加して塩化インジウム(InCl3)を水酸化インジウムとする。この場合、pHを7〜10に調節する。これを濾過して水酸化インジウムのケーキを得る。濾液であるNaClは排水する。
この場合にpHの調製が重要であり、pHを7〜10に調節する簡単な操作によって1μm以下の微細水酸化インジウム又はイオンとなっているインジウムを凝集させ、水酸化インジウムとして沈殿させることができる。pH調製にはアルカリ溶液として、上記水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム、酸溶液として硫酸、硝酸を使用することができる。pH7未満では1μm以下の微細水酸化インジウム又はインジウムイオンの凝集能が低く、水酸化インジウムの十分な回収が得られない。
インジウム濃度50g/L未満では、電解採取における能率が低下するので好ましくない。またインジウム濃度が250g/Lを超えると飽和してしまい溶解しない。したがって、電解液中のインジウム濃度50〜250g/Lとして電解するのが良い。
電解槽のアノードとしては、不溶性貴金属酸化物アノードを使用するのが良い。またカソードとしてチタン板を使用する。いずれの場合も電解液の汚染を防止するとともに、電流効率を上げることができる。
電解液のpHは、水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより1.0〜2.3に調整する。pH1.0未満ではカソードでの水素発生が多くなり、電流効率が低下する。またpH2.3を超えるとInが水酸化物となって沈殿するため好ましくない。したがって、pH1.0〜2.3の範囲とするのが良い。好ましくは電解液のpHを1.5〜2.0に調整する。
また、電解温度は5〜50°Cに調整して電解する。電解温度5°C未満では電解液の中和により発生する硫酸ナトリウムの結晶が配管を詰まらせ、また電解温度が50°Cを超えるとミストが多くなり、また電解槽に使用できる部材の材質が限られてくるので好ましくない。したがって、電解温度は5〜50°Cとする。好ましくは、電解温度を30〜40°Cに調整して行うのが良い。
また、電解終了時のインジウム濃度を10〜50g/Lに調整するのが好ましい。電解終了時のインジウム濃度を10g/L未満とすると、上記電解採取によるインジウム回収の作業能率が劣り、また電解終了時のインジウム濃度が50g/Lを超えると、上記水酸化ナトリウムの中和による水酸化インジウム回収工程で付随的に析出する硫酸ナトリウムの量が増大し、これが回収装置の配管の詰まりを生起するので、好ましくない。
したがって、電解終了時のインジウム濃度は10〜50g/Lに調整するのが、望ましい。
ITOインジウム含有スクラップ原料として、酸化インジウム−酸化錫(ITOスクラップ)2kgを使用した。このスクラップ中、Inは73.6wt%、Snは8.6wt%であった。このスクラップ原料に、濃塩酸を10リットル添加し、110°Cで4時間加熱した。液は沸騰状態にあった。
溶解後、約6リットルとなった液に、6.5N水酸化ナトリウム3.4リットルを添加し、pH2.0まで中和した。これにより、スクラップ中に含有する殆どの錫を水酸化錫(Sn(OH)4)として沈殿させ、濾過してこれを除去した。
水酸化ナトリウム水溶液によるpH調製の際、浮遊していた1μm以下の細かい水酸化インジウム又はイオン化したインジウムは水酸化インジウムとして凝集し、粗大化した。これを濾過して水酸化インジウムのケーキを得た。濾液NaClは排水した。この廃液中の水酸化インジウム濃度を測定すると、インジウム換算で10mg/L以下であった。この時の収率は99%であった。
次に、このようにして得た水酸化インジウムに硫酸を加え、In濃度約160g/Lの硫酸インジウム(In2(SO4)3)としベッセルに貯蔵した。
次に、電解槽のアノードとして不溶性貴金属酸化物アノード(DSA)を、カソードとしてチタン板をセットした。そして、前記ベッセル中の電解液を電解槽に張った。電解液は一部純水で希釈して、液量を12lとした。
この時の電解液中のインジウムイオン、鉄イオン、銅イオン、酸濃度及び電解液の温度は表1に示す通りである。
回収したインジウムは963.2gであった。また、この時の電流効率は88.8%であった。
これによって、得られた精製インジウムの錫品位は<10ppm(重量)であった。以上から、酸化インジウム−酸化錫(ITO)スクラップの不純物としての大半を占める錫を除去することが可能であり、純度の高いインジウムを回収することができた。
塩化インジウム(InCl3)を含有する濾液に、水酸化ナトリウム水溶液をさらに添加してpHを5〜6に調製し塩化インジウム(InCl3)を水酸化インジウム(In(OH)3)としたが、それ以外は全て実施例と同一の処理を行った。
この結果、水酸化ナトリウム水溶液によるpH調製の際、1μm以下の細かい水酸化インジウムが浮遊しており、これを濾過して水酸化インジウムのケーキを得た後の濾液には、微細な水酸化インジウムが浮遊していた。この廃液中の水酸化インジウム濃度を測定すると、インジウム換算で1g/L程あった。この時の収率は90%であった。
インジウム含有溶液(80g/L)を水酸化ナトリウムで中和し、水酸化インジウム(In(OH)3)とした。これをフィルタープレスにより濾過した。
しかし、このフィルタープレスよりコロイド状の水酸化インジウム(In(OH)3)が漏れが確認された。このため、さらに水酸化ナトリウム水溶液によるpH調製によりpH8.2として、このコロイド状の水酸化インジウムを凝集させて再度フィルタープレスにより濾過した。
これによって、水酸化インジウムの収率を向上させることができた。
Claims (6)
- ITOインジウム含有スクラップを塩酸で溶解して塩化インジウム溶液とする工程、該溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加してスクラップ中に含有する錫を水酸化錫(Sn(OH) 4 )として沈殿させ、濾過して除去する工程、次に塩化インジウム(InCl 3 )を含有する濾液に、水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム水溶液を添加してpHを7〜10に調整し水酸化インジウムを凝集させる工程、さらにこの水酸化インジウムを濾過し、濾過後の廃液中の水酸化インジウム濃度をインジウム換算で10mg/L以下とする工程からなることを特徴とする水酸化インジウムの回収方法。
- ITOインジウム含有スクラップを塩酸で溶解して塩化インジウム溶液とする工程、該溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加してスクラップ中に含有する錫を水酸化錫(Sn(OH) 4 )として沈殿させ、濾過して除去する工程、次に塩化インジウム(InCl 3 )を含有する濾液に、水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム水溶液を添加してpHを7〜10に調整し水酸化インジウムを凝集させる工程、この水酸化インジウムを濾過し、濾過後の廃液中の水酸化インジウム濃度をインジウム換算で10mg/L以下とした後、硫酸を添加して硫酸インジウムとする工程、該硫酸インジウムを電解採取によりインジウムとする工程からなることを特徴とするインジウムの回収方法。
- 電解開始時のインジウム濃度を50〜250g/Lに調製することを特徴とする請求項2記載のインジウムの回収方法。
- 電解終了時のインジウム濃度を10〜50g/Lに調製することを特徴とする請求項2又は3記載のインジウムの回収方法。
- 電解槽のアノードとして不溶性貴金属酸化物アノードを、カソードとしてチタン板を使用し、電解液のpHを1.5〜2.0、電流密度を0.1〜2.0A/dm2に、電解温度を5〜50°Cに調整して電解採取することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のインジウムの回収方法。
- 電解後液中のインジウムイオンを水酸化ナトリウムで中和し水酸化インジウムとして回収し、この水酸化インジウムを原料として再使用することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のインジウムの回収方法。
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