以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式によって画像を形成する複写機の実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部1と、白紙供給装置100と、原稿搬送読取ユニット150とを備えている。原稿搬送読取ユニット150は、プリンタ部1の上に固定された原稿読取装置たるスキャナ160と、これに支持される原稿搬送装置たるADF170とを有している。
白紙供給装置100は、ペーパーバンク101内に多段に配設された2つの給紙カセット102,103、2組の分離ローラ対104,105、給紙路106、複数の搬送ローラ対107等を有している。2つの給紙カセット102,103は、それぞれ、図示しない記録紙を複数枚重ねた紙束の状態で内部に収容している。そして、プリンタ部1からの制御信号に基づいて、送出ローラ102a,103aを回転駆動させて、紙束における一番上の記録紙を給紙路106に向けて送り出す。送り出された記録紙は、分離ローラ対104,105によって1枚に分離されてから、給紙路106内に至る。そして、給紙路106内に設けられた複数の搬送ローラ対107の搬送ニップを経由して、プリンタ部1の第1受入分岐路30に送られる。
プリンタ部1は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット2Y,M,C,Kを備えている。また、第1受入分岐路30、受入搬送ローラ対31、手差しトレイ32、手差し分離ローラ対33、第2受入分岐路34、手差し搬送ローラ対35、転写前搬送路36、レジストローラ対37、搬送ベルトユニット39、定着ユニット43、スイッチバック装置46、排紙ローラ対47、排紙トレイ48、切換爪49、光書込ユニット50、転写ユニット60等も備えている。なお、プロセスユニット2Y,M,C,Kは、潜像担持体たるドラム状の感光体3Y,M,C,Kを有している。
後述する2次転写ニップの直前で記録紙を搬送するための転写前搬送路36は、紙搬送方向の上流側で第1受入分岐路30と第2受入分岐路34とに分岐している。白紙供給装置100の給紙路106から送り出された記録紙は、第1受入分岐路30に受け入れられた後、第1受入分岐路30内に配設された受入搬送ローラ対31の搬送ニップを経由して転写前搬送路36に送られる。
プリンタ部1の筺体における側面には、手差しトレイ32が筺体に対して開閉可能に配設されており、筺体に対して開いた状態でトレイ上面に紙束が手差しされる。手差しされた紙束における一番上の記録紙は、手差しトレイ32の送出ローラ32aによって第2受入分岐路34に向けて送り出される。そして、手差し分離ローラ対33によって1枚に分離されてから第2受入分岐路34に送られた後、第2受入分岐路34内に配設された手差し搬送ローラ対35の搬送ニップを経由して、転写前搬送路36に送られる。
光書込ユニット50は、図示しないレーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有しており、後述するスキャナ160によって読み取られた画像情報や、外部のパーソナルコンピュータから送られている画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動する。そして、プロセスユニット2Y,M,C,Kの感光体3Y,M,C,Kを光走査する。具体的には、プロセスユニット2Y,M,C,Kの感光体3Y,M,C,Kは、図示しない駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。光書込ユニット50は、駆動中の感光体3Y,M,C,Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向せしめながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体3Y,M,C,Kには、Y,M,C,K画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
図2は、プリンタ部1の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。各色のプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、潜像担持体たる感光体と、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部本体に対して着脱可能になっている。そして、互いに使用するトナーの色が異なる点の他が同様の構成になっている。Y用のプロセスユニット2Yを例にすると、これは、感光体3Yの他、これの表面に形成された静電潜像をYトナー像に現像するための現像装置4Yを有している。また、後述するY用の1次転写ニップを通過した後の感光体3Y表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置18Yなども有している。本複写機では、4つのプロセスユニット2Y,M,C,Kを、後述する中間転写ベルト61に対してその無端移動方向に沿って並べたいわゆるタンデム型の構成になっている。
図3は、Y用のプロセスユニット2Yを示す拡大構成図である。同図に示すように、プロセスユニット2Yは、感光体3Yの周りに、現像装置4Y、ドラムクリーニング装置18Y、除電ランプ17Y、帯電ローラ16Y等を有している。
感光体3Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
現像装置4Yは、図示しない磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に現像剤という)を用いて潜像を現像するようになっている。そして、内部に収容している現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌部5Yと、感光体3Y上の静電潜像を現像する現像部9Yとを有している。なお、現像装置4Yとして、二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用していもよい。
攪拌部5Yは、現像部9Yよりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された第1搬送スクリュウ6Y及び第2搬送スクリュウ7Y、これらスクリュウの間に設けられた仕切り板、ケーシングの底面に設けられたトナー濃度センサ8Yなどを有している。
現像部9Yは、ケーシングの開口を通して感光体3Yに対向する現像ロール10Y、これに対して自らの先端を近接させるドクターブレード13Yなどを備えている。そして、現像ロール10Yは、非磁性材料からなる筒状の現像スリーブ11Yと、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ12Yとを有している。このマグネットローラ12Yは、周方向に並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部5Yから送られてくる現像剤を現像スリーブ11Y表面に引き寄せて担持させるとともに、磁力線に沿った磁気ブラシをスリーブ表面上に形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ11Yの回転に伴ってドクターブレード13Yとの対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体3Yに対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ11Yに印加される現像バイアスと、感光体3Yの静電潜像との電位差によってYトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ11Yの回転に伴って再び現像部9Y内に戻り、マグネットローラ12Yの磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部5Y内に戻される。攪拌部5Y内には、トナー濃度センサ8Yによる検知結果に基づいて、現像剤に適量のトナーが補給される。
ドラムクリーニング装置18Yとしては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード20Yを感光体3Yに押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本複写機では、外周面を感光体3Yに接触させるファーブラシ19Yを、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ19Yは、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体3Y表面に塗布する役割も兼ねている。
ファーブラシ19Yに付着したトナーは、ファーブラシ19Yに対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ21Yに転位する。そして、スクレーパ22Yによって電界ローラ21Yから掻き取られた後、回収スクリュウ23Y上に落下する。
回収スクリュウ23Yは、回収トナーをドラムクリーニング装置18Yにおける図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置に受け渡す。図示しないリサイクル搬送装置は、受け渡されたトナーを現像装置4Yに送ってリサイクルする。
除電ランプ17Yは、光照射によって感光体3Yを除電する。除電された感光体3Yの表面は、帯電ローラ16Yによって一様に帯電せしめられた後、上述した光書込ユニットによる光走査が施される。なお、帯電ローラ16Yは、図示しない電源から帯電バイアスの供給を受けながら回転駆動するものである。かかる帯電ローラ16Yを用いる帯電方式に代えて、感光体3Yに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ方式を採用してもよい。
先に示した図2において、4つのプロセスユニット2Y,M,C,Kの感光体3Y,M,C,Kの表面には、これまで説明してきたプロセスによってY,M,C,Kトナー像が形成される。
4つのプロセスユニット2Y,M,C,Kの下方には、転写ユニット60が配設されている。この転写ユニット60は、複数のローラによって張架した像担持体たる中間転写ベルトを、感光体3Y,M,C,Kに当接させながら、何れか1つのローラの回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体3Y,M,C,Kと中間転写ベルト61とが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
Y,M,C,K用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ62Y,M,C,Kによって中間転写ベルト61を感光体3YY,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の1次転写ニップには、感光体3Y,M,C,K上のトナー像を中間転写ベルト61に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト61のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト61のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト61の図中下方には、2次転写ローラ72が配設されており、これは中間転写ベルト61における2次転写バックアップローラ68に対する掛け回し箇所にベルトおもて面から当接して2次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト61のおもて面と、2次転写ローラ72とが当接する2次転写ニップが形成されている。
2次転写ローラ72には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ内の2次転写バックアップローラ68は接地されている。これにより、2次転写ニップ内に2次転写電界が形成されている。
2次転写ニップの図中右側方には、図示しない上述のレジストローラ対が配設されており、ローラ間に挟み込んだ記録紙を中間転写ベルト61上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト61上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録紙に一括2次転写され、記録紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
レジストローラ対37の各ローラについては、電気的に接地することが一般的であるが、転写体としての記録紙の紙粉除去を除去する目的で、バイアスを印加することも可能である。例えば、レジストローラ対37のローラとして、導電性ゴムローラからなるものを使用してこれにバイアスを印加すればよい。ローラの直径としては18[mm]程度で、表面を1[mm]厚みの導電性NBRゴム層で被覆したものである。導電性NBRの電気抵抗としては、体積抵抗で109[Ω・cm]程度が好ましく、バイアスとしては、記録紙の転写面側に接触する方のローラには−800V程度のものを印加し、もう一方のローラには+200V程度を印加すればよい。また、バイアスとして、記録紙をより均一に帯電させる目的から、DCバイアスに代えて、DCバイアスにACバイアスを重畳したものを採用してもよい。かかるバイアスを印加したレジストローラ対37を通過した後の記録紙は,若干マイナス側に帯電している。よって、中間転写ベルト61から記録紙へのトナー像の2次転写では、レジストローラ37に電圧を印加しない構成とは転写条件を異ならせることが望ましい。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト61のおもて面には、2次転写ニップで記録紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト61に当接するベルトクリーニング装置75によってクリーニングされる。
先に示した図1において、2次転写ニップを通過した記録紙は、中間転写ベルト61から離間して、搬送ベルトユニット39に受け渡される。この搬送ベルトユニット39は、無端状の搬送ベルト40を駆動ローラ41と従動ローラ42とによって張架しながら、駆動ローラ41の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめる。そして、2次転写ニップから受け渡された記録紙をベルト上部張架面に保持しながら、ベルトの無端移動に伴って搬送して定着ユニット43に受け渡す。
定着ユニット43は、駆動ローラと、発熱源を内包する加熱ローラとによって張架した定着ベルトを駆動ローラの回転駆動に伴って図中時計回り方向に無端移動せしめている。そして、定着ベルトの下方に配設された加圧ローラ45を定着ベルトの下部張架面に当接させて定着ニップを形成している。定着ユニット43に受け入れられた記録紙は、この定着ニップ内で加圧されたり加熱されたりすることで、表面上のフルカラー画像が定着せしめられる。そして、定着ユニット43内から切換爪49に向けて送り出される。
切換爪49は、図示しないソレノイドによって揺動するようになっており、その揺動に伴って、記録紙の搬送路を排紙路と反転路とで切り換える。切換爪49によって排紙路が選択されていると、定着ユニット43内から送り出された記録紙は、排紙路と排紙ローラ対47とを経由した後、機外に排出されて排紙トレイ48上にスタックされる。
定着ユニット43や搬送ベルトユニット39の下方には、スイッチバック装置46が配設されている。切換爪49によってスイッチバック路が選択されていると、定着ユニット43内から送り出された記録紙は、反転路を経由して上下反転せしめられた後、スイッチバック装置46に送られる。そして、再び2次転写転写ニップに進入して、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施される。
プリンタ部1の上に固定されたスキャナ160は、図示しない原稿の画像を読み取るための読取手段として、固定読取部161と、移動読取部162とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する固定読取部161は、原稿に接触するようにスキャナ160のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、ADF170によって搬送される原稿が第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿を走査する。
一方、移動読取部162は、原稿に接触するようにスキャナ160のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサで受光する。これにより、光学系を移動させながら、原稿を走査する。
次に、本複写機の特徴的な構成をについて説明する。
図4は、転写手段たる転写ユニット60におけるベルトクリーニング装置75を、中間転写ベルト61の一部とともに示す拡大構成図である。ベルトクリーニング装置75は、像担持体たる中間転写ベルト61のおもて面に付着している転写残トナーをクリーニングするクリーニング部と、中間転写ベルト61に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部とを備えている。
ベルトクリーニング装置75のクリーニング部は、クリーニングブラシローラ76、クリーニングブレード77、トナー搬送スクリュウ78、第1ブレードホルダー79、支持軸80、第1コイルバネ81等を有している。
クリーニング部材たるクリーニングブラシローラ76は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる軸部材76a、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部76bなどから構成されている。それら起毛は、ポリエチレンテレフタレートやナイロンなどからなる。クリーニングブラシローラ76は、中間転写ベルト61のおもて面にブラシ部76bの先端を当接させながら回転する。これにより、中間転写ベルト61に付着している転写残トナーが掻き取られる。このようにしてクリーニングブラシローラ76によってクリーニングされた中間転写ベルト61は、その走行に伴って、後述するクリーニングブレード77によるクリーニング位置に進入する。
クリーニングブラシローラ76は、周面の一部を装置筺体に設けられた開口部から露出させており、その露出部を中間転写ベルト61に当接させている。ベルトクリーニング装置75がプリンタ部にセットされた状態では、クリーニングブラシローラ76よりもベルト移動方向上流側で、ベルトクリーニング装置75のケーシングに片持ち支持される可撓性に富んだ入口シール82の自由端と、中間転写ベルト61のおもて面とが当接している。これにより、回転するクリーニングブラシローラ76から、筺体外へのトナー飛散が防止されている。
クリーニング部材たるクリーニングブレード77は、第1ブレードホルダー79によって片持ち支持されている。また、第1ブレードホルダー79は、ケーシングに固定された支持軸80によって回動自在に支持されている。但し、第1ブレードホルダー79の図中左側の端部が第1コイルバネ81によって引っ張られるため、第1ブレードホルダー79には図中反時計回り方向に回転する力が付与されている。これにより、第1ブレードホルダー79の図中右側の端部に片持ち支持されているクリーニングブレード77が中間転写ベルト61に向けて付勢され、ブレードの自由端がベルトおもて面に当接している。上述したクリーニングブラシローラ76によるクリーニング位置を通過した中間転写ベルト61は、クリーニングブレード77との当接部に進入する。そして、クリーニングブラシローラ76で除去し切れなかった転写残トナーがクリーニングブレード77によって掻き取り除去される。
クリーニングブレード77としては、ポリウレタンゴムに代表されるゴム製のものを用いるのが一般的である。安価で良好なクリーニング性を得ることができるからである。かかる構成のクリーニングブレード77において、中間転写ベルト61のおもて面に付着している紙粉がベルトとの間に挟まって、いつまでもそこに留まっているとする。すると、紙粉が介在することによってできたベルトとブレードとの間の間隙をトナーがすり抜けてしまうため、クリーニング不良が発生してしまう。しかし、本複写機では、クリーニングブレード77よりもベルト移動方向上流側にクリーニングブラシローラ76を設け、これによって紙粉を除去しているので、かかるクリーニング不良の発生を良好に抑えることができる。また、クリーニングブラシローラ76をクリーニングブレード77よりも上流側に配設することにより、クリーニングブレード77の負担を軽減してブレードの寿命を延ばすこともできる。
クリーニングブレード77によって掻き取られた転写残トナーは、自重によってクリーニングブラシローラ76上に落下して、ブラシ内に捕捉される。また、クリーニングブラシローラ76は、クリーニングブレード77の先端から落下してくる転写残トナーをブラシ内に捕捉することに加えて、自らが掻き取った転写残トナーもブラシ内に捕捉する。
クリーニングブラシローラ76のブラシ76b部には、フリッカー部材92が当接している。クリーニングブラシローラ76のブラシ部76bの各起毛は、回転に伴ってこのフリッカー部材92との当接位置にくると、フリッカー部材92に一時的に引っ掛かって大きく撓んだ後、その撓みを一気に復元しながら再び回転し始めるいわゆるフリッカー動作を行う。これにより、ブラシ部76bの各起毛間に捕捉された転写残トナーがブラシ内から振り払われる。振り払われた転写残トナーは、トナー搬送スクリュウ78の上に落下する。そして、駆動手段によって回転駆動せしめられるトナー搬送スクリュウ78により、図紙面に直交する方向に搬送されてベルトクリーニング装置75の筺体外に排出された後、図示しない廃トナーボトルに落とし込まれる。
なお、ベルトクリーニング装置75のクリーニング部は、アジテータブラシ93を有しているが、これについては後に詳述する。
ベルトクリーニング装置75における潤滑剤塗布部は、クリーニング部の上方に設けられており、クリーニング部よりもベルト移動方向下流側に位置している。そして、固形潤滑剤85、潤滑剤付勢バネ86、塗布ブラシローラ87、ならしブレード88、第2ブレードホルダー89、支持軸90、第2コイルバネ91等を有している。
塗布ブラシローラ87は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる軸部材87a、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部87bなどから構成されている。潤滑剤塗布装置の塗布ブラシローラ87は、中間転写ベルト61のおもて面にブラシ部87bの先端を当接させながら回転する。また、潤滑剤付勢バネ76によって塗布ブラシローラ87に向けて付勢されている固形潤滑剤85に対して、ブラシ部87bの先端を当接させながら回転する。このように、ブラシ部87bを中間転写ベルト61と固形潤滑剤85との両方に接触させながら回転するのに伴って、固形潤滑剤85から掻き取った潤滑剤を中間転写ベルト61のおもて面に塗布する。塗布ブラシローラ87によって潤滑剤が塗布された中間転写ベルト61は、その走行に伴って、後述するならしブレード88によるならし位置に進入する。
ならし部材としてのならしブレード88は、第2ブレードホルダー89によって片持ち支持されている。また、第2ブレードホルダー89は、ケーシングに固定された支持軸90によって回動自在に支持されている。但し、第2ブレードホルダー89の図中左側の端部が第2コイルバネ91によって引っ張られるため、第2ブレードホルダー89には図中反時計回り方向に回転する力が付与されている。これにより、第2ブレードホルダー89の図中右側の端部に片持ち支持されているならしブレード88が中間転写ベルト61に向けて付勢され、ブレードの自由端がベルトおもて面に当接している。上述した塗布ブラシローラ87による潤滑剤塗布位置を通過した中間転写ベルト61は、ならしブレード88との当接部に進入する。そして、塗布ブラシローラ87によって塗布された潤滑剤がベルト表面方向に均一にならされる。
図10は、本発明に係る回転体であるアジテータブラシを搭載していないベルトクリーニング装置のクリーニング部を示す拡大構成図である。このベルトクリーニング装置は、アジテータブラシを有していない点の他が、図4に示した実施形態に係るベルトクリーニング装置75と同様の構成になっている。
図10において、クリーニングブラシローラ76のブラシ部76bの各起毛は、実施形態に係るベルトクリーニング装置75と同様に、図中時計回り方向の回転に伴ってフリッカー部材92に接触してフリッカー動作を行う。このフリッカー動作に伴ってブラシ内から振り払われたトナーは、クリーニングブレード77と、トナー搬送スクリュウ78との間に形成されている空間Rで舞った後、トナー搬送スクリュウ78上に落ちる。空間Rは、クリーニングブラシローラ76によって掻き取られた転写残トナーの装置筺体内におけるトナー移動経路となっているのである。
クリーニングブラシローラ76のブラシのフリッカー動作に伴ってブラシ内から振り払われたトナーうち、比較的勢い良くブラシ内から飛び出したものは、クリーニングブレード77の裏面や、これを下側から支持している第1ブレードホルダー79の裏面に付着する。そして、そのトナーの上に更に後続のトナーが付着し、高温多湿環境下などにそれらトナーの凝集によるトナー塊が形成され始めると、その後は、そのトナー塊に後続のトナーが良好に付着するようになって、比較的短時間でトナー塊が成長していく。この一方で、クリーニングブレード77の真下に位置するフリッカー部材92の表面に落下したトナーも、トナー塊を形成してそれを徐々に成長させていく。そして、やがてブレード裏側で鉛直方向下方に向けて成長していくトナー塊と、フリッカー部材92の表面上で鉛直方向上方に向けて成長していくトナー塊とがくっついて、図示のように、ブレード〜フリッカー間を完全に架橋する巨大なトナー塊TLが形成される。ここまでトナー塊TLが成長すると、クリーニングブラシローラ76から振り払われたトナーの行き場がなくなって、やがて中間転写ベルト61の表面に向けて溢れ出してしまう。
特に、粉砕法によるトナーに代えて、重合法によるトナーの需要が高まっている近年においては、トナー塊TLによるトナー移動経路の閉塞が起こり易くなっている。具体的には、古くから用いられてきた粉砕法によるトナーは、平均粒径が十〜数十[μm]といった大径で、且つトナー粒子の平均円形度が0.9未満といった不定形のものであった。このようなトナーでは、近年の高画質化に対応し得る高レベルのトッド再現性を実現することが困難になってきた。そこで、近年においては、粉砕法によるトナーに代えて、重合法によるトナーを用いることが多くなってきている。重合法によるトナーは、平均粒径が9[μm]以下といった小径で、且つトナー粒子の平均円形度が0.96以上といった真円に近い球形である。このようなトナーを用いることで、近年の高画質化に対応し得る高レベルのドット再現性を実現することが可能になる。しかし、重合法によるトナーは、小径で且つ球形であるという特性に起因してトナー粒子同士が凝集し易くなっているため、何らかの部材にトナーが付着してトナー塊を形成し始めると、比較的短期間のうちにそのトナー塊を成長させていく。このため、トナー塊によるトナー移動経路の閉塞が起こり易くなるのである。
先に図4に示した本実施形態に係るベルトクリーニング75においては、このようなトナー移動経路の閉塞を、次のようにして回避している。即ち、図4に示したように、クリーニングブレード77とトナー搬送スクリュウ78との間の空間であるトナー移動経路内に、図示しない駆動手段によって回転駆動されるアジテータブラシ93を配設している。このアジテータブラシ93がクリーニングブレード77とトナー搬送スクリュウ78との間のトナー移動経路内で回転駆動することで、トナー移動経路内のトナー塊を崩してその成長を阻止する。
図5は、アジテータブラシ93を軸線方向の一端側から示す拡大構成図である。アジテータブラシ93は、図示しない軸受けによって両端部がそれぞれ回転自在に支持される回転軸部93aと、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部93bとを有している。回転軸部93aは、金属材料から構成されている。複数の起毛は、ナイロンやポリエチレンテレフタレート等の素材にカーボン粉末等の導電材が分散せしめられた材料からなる繊維が、所定の長さにカットされたものであり、周知のように良好な可撓性を発揮する。かかる起毛からなる立設部としてのブラシ部93bも、良好な可撓性を発揮する。
かかる構成では、アジテータブラシ93の全体のうち、周囲のクリーニングブラシローラ(図4の76)やトナー搬送スクリュウ(図4の78)に対して最も近い位置にある箇所は、立設部としてのブラシ部93の先端部(以下、ブラシ先端という)である。このブラシ先端は、可撓性材料としての起毛からなっており、回転に伴ってクリーニングブラシローラやトナー搬送スクリュウに接触したとしても、それに伴って自らを柔軟に撓ませることが可能である。このため、自らや、クリーニングブラシローラ及びトナー搬送スクリュウを摩耗させたり破損したりすることがない。よって、トナー移動経路内におけるトナー塊の成長を長期間に渡って安定して防止することができる。
アジテータブラシ93については、回転動作を行っていないときに、そのブラシ先端を、周囲のクリーニングブラシローラやトナー搬送スクリュウとの間に微小ギャップを形成し得る大きさ(直径)のものにする必要はない。むしろ、それら周囲の部材に積極的に接触させる大きさのものを採用した方が、同部材の表面に付着したトナーを掻き取ることができるため、有利である。そこで、本複写機では、たとえ回転に伴う回転軸部93aの振れが起こらなくても、ブラシ先端が回転に伴ってクリーニングブラシローラやトナー搬送スクリュウに接触する大きさに、アジテータブラシ93を構成している。
アジテータブラシ93のブラシ部93bは、回転軸部93aの表面における回転方向において、全領域に連続して設けられているのではなく、部分的に設けられている。但し、回転軸線方向では、所定の範囲内において、軸線方向の全領域に渡って存在するように設けられている。更に、回転軸部93aの回転角度によってクリーニングブラシローラやトナー搬送スクリュウとの回転軸線方向における接触領域を異ならせる構造になっている。かかる構造として、本複写機では、図6に示すように螺旋状の構造を採用している。
かかる構成では、回転方向における回転軸部93aの全領域にブラシ部93bを連続して設ける場合とは異なり、ブラシ部93bによって崩したトナー塊のトナーをブラシ部93bの側面に保持して搬送することが可能である。このため、たとえブラシ部93bの起毛間にトナーを蓄積させたとしても、ブラシ部93bの側面によってトナーを良好に搬送することが可能である。
回転体たるアジテータブラシ93は、立設部たるブラシ部93bの先端をクリーニングブラシローラ等の周囲の部材に接触させるように配設されるので、配設スペースがアジテータブラシ93の回転軌道の面積より小さい場合であっても、その配設スペースに設置することが可能である。このため、装置の大型化を抑えることができる。
また、ブラシ部93bの先端は、可撓性材料からなるので、回転に伴って周囲の部材に接触すると、柔軟に撓んで自らの破損や摩耗を避ける。このように、周囲の部材との接触に伴うブラシ部93bの破損や摩耗を回避することで、トナー塊の成長を長期間に渡って安定して阻止するができる。なお、立設部として、ブラシ部93bの代わりに、樹脂等の可撓性材料からなる羽根部材を設けてもよい。
アジテータブラシ93は、ブラシ部93bの回転軸線方向における全領域を周囲の部材に同時に接触させずに、周囲の部材に接触させる領域を回転角度に応じて少しずつ異ならせていく。かかる構成では、アジテータブラシ93を所定の回転角度位置に進入させる際に、それまで周囲の部材に全く接触させていなかったブラシ部の回転軸線方向の全領域を周囲の部材に一気に接触させ、これによって大きな衝撃を発生させていた開発中の装置に比べて、ブラシ部と周囲の部材との接触によって発生する衝撃を軽減する。よって、開発中の装置に比べて、衝撃による画像濃度ムラの発生を抑えることもできる。
回転軸部93aの回転角度によって周囲の部材との回転軸線方向における接触領域を異ならせるブラシ部93bの構造としては、次のような構造を例示することができる。即ち、回転軸部93aの表面において、回転軸線方向から傾いた姿勢で突出する羽根状の小ブラシ部を、回転方向の位置と、回転軸線方向の位置とを少しずつずらしながら複数並べた構造である。かかる構成でも、ブラシ部の回転軸線方向の全領域を一気に周囲の部材に接触させることはなく、周囲の部材に接触させる領域を回転角度に応じて少しずつ異ならせていくので、周囲の部材とブラシ部との接触に伴って発生する衝撃を上述した開発中の装置に比べて軽減することができる。但し、回転角度によっては、複数の羽根状の小ブラシ部を周囲の部材に全く接触させていなかったり、何れか1つの小ブラシ部を周囲の部材に接触させていたりするので、回転に伴って接触と離間とを繰り返すことになる。そして、接触の際には、開発中の装置よりは小さいものの、ある程度の衝撃を発生させることになる。これに対し、本複写機に採用されている図6に示した螺旋状の構造のブラシ部93bでは、回転角度にかかわらず、ブラシ部93bにおける回転軸線方向の全領域のうち、何れかの領域を常に周囲の部材に接触させている。加えて、回転角度にかかわらず、その何れかの領域と、周囲の部材との接触面積が一定である。かかる構成では、回転ブラシローラ93と周囲の部材との接触負荷が回転角度にかかわらず一定になるので、接触による衝撃を大幅に軽減する。これにより、衝撃による画像濃度ムラをほぼ防止することができる。
導電性の起毛からなるブラシ部93bについては、金属製の回転軸部93aを介してアースに接続している。かかる構成では、ブラシ部93bの帯電を防止することで、ブラシに対するトナーの静電的な付着を回避して、ブラシ部93bからトナーを良好に離脱させることができる。
次に、本複写機に使用されるトナーについて説明する。600dpi以上の微少ドットを再現するために、トナーとしては、体積平均粒径が3〜8μmであるものが好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)は1.00〜1.40の範囲にあることが好ましい。(Dv/Dn)が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜190の範囲にあることが好ましい。図7は、形状係数SF−1、形状係数SF−2を説明するためにトナーの形状を模式的に示した図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、「SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4)」という式で表される。図7(a)に示すように、トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
また、形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、「SF−2={(PERI)2/AREA}×(100π/4)」という式で表される。図8(b)に示すように、トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。形状係数については、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析することで求めることが可能である。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなる。また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−2が190を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
そこで、本複写機では、トナーとして、形状係数SF−1が100〜180であり、且つ形状係数SF−2が100〜190であるもの、を用いるようになっている。かかるトナーは、トナー塊を形成し易いが、本複写機ではアジテータブラシ93を設けているので、かかるトナーを用いてもトナー塊の成長によるトナー溢れを回避することができる。
また、本複写機に用いられるトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるものである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
ポリエステルには、上述した重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。
多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。また、2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満であったりすると、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。
ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置100に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEGVP2036、コピーチャージNXVP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2μmであることが好ましく、特に5×10−3〜0.5μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。
無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−2μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。
酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
まず、着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
次に、トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm及び2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
これまで説明した樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
これまでの操作で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
図8は、本複写機に用いられるトナーの形状を模式的に示す図である。同図において、略球形状のトナーは、完全な真球ではないので、図8(a)に示されるように、長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)が存在する。本複写機に用いられるトナーは、図8(b)に示されるように、長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5〜1.0の範囲にある。また、図8(c)に示されるように、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7〜1.0の範囲にある。
長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。なお、r1、r2、r3については、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定することが可能である。
これまで、ベルトクリーニング装置75に本発明を適用した複写機について説明してきたが、ドラムクリーニング装置に本発明を適用してもよい。また、転写ユニットなどの転写手段に付着したトナーを掻き取るクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。例えば、無端状の転写搬送ベルトの表面に記録紙を保持して搬送しながらその記録紙に複数の感光体上のトナー像を転写する転写手段における転写搬送ベルトをクリーニングするクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。
以上、実施形態に係る複写機においては、立設部たるブラシ部93bを回転軸部93aの周面上で螺旋を描く螺旋状の構造にしている。かかる構成では、既に説明したように、回転ブラシローラ93と周囲の部材との接触負荷を回転角度にかかわらず一定にすることで、接触による衝撃を大幅に軽減して、衝撃による画像濃度ムラをほぼ防止することができる。
また、実施形態に係る複写機においては、立設部を、回転軸部93aの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部93bとして構成している。かかる構成では、立設部に可撓性フィルムを採用したものに比べて、静音化を図ることができる。
また、実施形態に係る複写機においては、ブラシ部93b及び回転軸部93aをそれぞれ導電性材料で構成している。かかる構成では、既に説明したように、ブラシに対するトナーの静電的な付着を回避して、ブラシ部93bからトナーを良好に離脱させることができる。
また、実施形態に係る複写機においては、転写手段たる転写ユニット60として、潜像担持体たる感光体に担持された潜像の現像によって得られたトナー像を像担持体たる中間転写ベルト61に転写した後、転写体たる記録紙に転写するもの、を用いている。かかる構成では、中間転写ベルト61をクリーニングするベルトクリーニング装置75からのトナー溢れを回避することができる。