本発明に係る連発式クリップ処置具を、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、以下に詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1(A)は、本発明の連発式クリップ処置具の一実施例の要部を示す模式的部分断面図であり、図1(B)は、図1(A)と90度異なる角度から見た断面図である。図1(A)および(B)のクリップ処置具10は図中下方へ長く延び、その端部には図7に示す操作部を有している。図13は、図1(A)に示す連発式クリップ処置具の基端側の操作部の一実施例の概略構成を示す部分断面平面図である。図2(A)は、図1(A)に示す連発式クリップ処置具の先端部のクリップ装填部分をより詳細に示す模式的断面図であり、図2(B)は、図2(A)と90度異なる角度から見た断面図である。
図1(A)および(B)に示すクリップ処置具10は、複数のクリップを連続して使用できる連発式のクリップ処置具であり、図2(A)および(B)に示すように、複数(図2(A)に示す例では3個)のクリップ12(12A、12B、12C)と、隣り合うクリップ12の係合部を覆ってクリップ12の連結状態を維持する連結リング14(14A、14B、14C)と、連結リング14によって連結されたクリップ12を内部に移動可能に収容するシース16と、最後尾のクリップ12Cに接続されたダミークリップ18と、シース16内に移動可能に収納され、接続部材19を介してダミークリップ18に接続された操作ワイヤ20と、操作ワイヤ20がその基端において押引き可能に取り付けられた操作部120(図7参照)とを有する。クリップ12、連結リング14、ダミークリップ18、操作ワイヤ20は、シース16の内部に移動可能に収容されている。操作ワイヤ20は、操作部120に接続される太径部(拡径部)84、ダミークリップ18に接続される細径部90、および操作ワイヤ20に被覆するチューブ80を有する。
図1(A)および(B)は、ならびに、図2(A)および(B)先頭のクリップ12によるクリップ処置動作開始直前の初期状態を示している。
1つのクリップ12と1つの連結リング14は、1つの内視鏡用止血クリップ体を構成し、クリップ処置具10は、この止血クリップ体が長尺なシース16の先端内部に複数装填されたものである。連続する止血クリップ体の終端は、ダミークリップ18に噛み合い結合し、ダミークリップ18は、接続部材19を介して操作ワイヤ20に接続され、操作ワイヤ20は、シース16の基端部まで延びて、後述する操作部120につながっている。操作部120から操作ワイヤ20を所定の長さだけ牽引し、ダミークリップ18を一方向に所定長さ移動させることで、一連のクリップ12が同量だけ移動し、先頭のクリップ12がそれを保持する連結リング14によって締め付けられて、先頭のクリップ12による止血やマーキング等のためのクリップ処置(クリッピング)が行われる。先頭のクリップ12によるクリップ処置が完了した後、操作ワイヤ20をシース16に対して所定の長さだけ押し出すことで、次のクリップ12が使用可能な状態(スタンバイ状態)となり、続けてクリップ処置を行うことができる。
図2(A)および(B)は、先頭のクリップ12Aがシース16の先端から突出した状態の図としてあるが、クリップ12等をシース16へ装填するときは、後述する図12(C)に示すように、先頭のクリップ12Aがシース16の内部に完全に納まった状態でセットされる。また、図2(A)および(B)ではクリップ12を3つとし、3連発式のクリップ処置具10としてあるが、クリップ12の数は、2つ以上いくつであってもよい。
図3は、図1(A)に示す連発式クリップ処置具のクリップの斜視図である。同図に示すように、クリップ12は、爪部22に対して180度ターンしたターン部24を有するクローズクリップである。すなわち、クリップ12は、一枚の細長い板を180度湾曲させて閉塞端を作った後、その両片を交差させ、かつ2つの開放端に、端部が対向するように屈曲させて爪部22,22を形成した形状をしている。この交差部26を境にして、開放端側が腕部28,28であり、閉塞端側がターン部24である。腕部28,28の中央部分には、部分的に広幅とされた凸部30,30が形成されている。クリップ12には、生体適合性のある金属を用いることができ、例えば、ばね用ステンレス鋼であるSUS631などを用いることができる。
クリップ12は、その交差部26に嵌められた連結リング14の先端部分(後述する締付部40)が、腕部28,28を押圧しながら爪部22,22の方へ向かって所定量移動することにより、その腕部28,28および爪部22,22が閉じ、爪部22,22において所定の嵌合力を発揮する。
爪部22,22は、出血部や病変組織除去後の処置部等の対象部を確実に摘むために、V字のオス型とメス型に形成されている。また、図3に示すように、クリップ12の腕部28は、交差部26から凸部30に掛けて徐々に幅が広くなっている。
凸部30は、連結リング14の先端側の開口および基端側の開口の、凸部30が当接する部分よりも広い幅とされている。したがって、クリップ12の凸部30以外の部分は、連結リング14の内部に侵入できるが、凸部30は、連結リング14の先端側からも基端側からも、その内部に侵入できない。
図2(A)および(B)に示すように、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bは、第2クリップ12Bの爪部22が第1クリップ12Aのターン部24に係合して閉じた状態で連結リング14Aに保持されることで連結状態とされる。図2(A)に示すように、第2クリップ12Bの爪部22,22は、第1クリップ12Aのターン部24に直交方向に噛みあって結合し、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bは、90度異なる向きで連結される。同様に、第2クリップ12Bと第3クリップ12Cも、90度異なる向きで連結される。
連結リング14は、2つのクリップ12と12との係合部を覆って連結状態を維持しつつ、シース16内に進退可能に嵌入されている。すなわち、連結リング14は、その外径がシース16の内径とほぼ等しく、クリップ12の移動に伴ってシース16内をスムーズに進退移動することができる。
図4(A)〜(C)に、このような連結リングの一実施例の概略構成を示す。図4(A)は、連結リングの正面図、図4(B)は、断面図、図4(C)は、底面図である。
図4(A)〜(C)に示す連結リング14は、締付部40と保持部42とから成る。連結リング14は、樹脂製の保持部42の先端に、金属製の締付部40を固定し、2部材で一体構造とされている。樹脂製の保持部42が連結状態の維持およびクリップの連結リング内での保持を担当し、金属製の締付部40がクリップの締め付けを担当する。なお、連結リング14は、締付部40および保持部42の両機能を発揮できれば、1部材で形成してもよい。
締付部40は、連結リング14の先端側に取り付けられた金属製の円筒状(リング状)の部品であり、クリップ12の交差部26近傍の幅よりも大きく、凸部30の幅よりも小さい内径の穴が形成されている。したがって、締付部40は、保持するクリップ12の交差部26の近傍を移動することができるが、凸部30を超えて先端側へは抜けられない。すなわち凸部30が、クリップ12に対して前進する連結リング14の移動限界を決めるストッパとして機能する。
締付部40は、クリップ12の交差部26の近傍の所定位置にセットされる。締付部40は、その初期位置から、クリップ12の腕部28が幅広になる、交差部26から凸部30の側へ移動することで、拡開しているクリップ12の両方の腕部28,28を閉じさせて固定する締め付け機能を有している。締付部40には、生体適合性のある金属が用いられ、例えばステンレス鋼SUS304を用いることができる。締付部40を金属製としたことで、金属製のクリップ12に対して締付力となる摩擦力を発揮させることができる。
保持部42は、樹脂成形された概略円筒状(リング状)の部品である。保持部42は、先のクリップ12を保持する第1領域32と、先のクリップに連結した状態で次のクリップ12を保持する連結保持領域である第2領域34とを有している。
第1領域32には、クリップ12のターン部24を収容可能な、締付部40の穴よりも大きな円形の穴が形成されている。第1領域32の先端部の外面には、締付部40を嵌めるための段付き部が形成されており、締付部40と保持部42とは、シース16に装填された状態およびクリッピング操作時において外れない程度の締まり嵌めで嵌め合わされている。また、第1領域32は、連結リング14本体の軸に対してスカート状に傾斜して広がるスカート部38を有している。
スカート部38は、先端側、すなわち図4(A)および(B)における上方の付け根が保持部42の本体につながっており、下方の広がり部分が、本体から一部切り離されて、半径方向に広がったり閉じたりするようになっている。スカート部38は、クリップ12の牽引方向、すなわち図4の上下方向において同じ位置に、180度離れた両側の2箇所に形成されている。
両側のスカート部38、38は、外力が付与されない自然状態では、図4(A)に示すように、スカート状に広がる。このとき、保持部42の第1領域32の内部は、図4(B)に示すように、円柱状の空間となっている。一方、連結リング14がシース16内へ装填されるときは、例えば図2(B)の2つめの連結リング14Bに示すように、スカート部38が内側に押し込まれて内部空間へ入り込み、スカート部38の内周側の部分が、第1領域32に保持されるクリップ12Bのターン部24の側面(エッジ部)を押圧して、クリップ12Bが連結リング14B内で回転方向および進退方向に移動しないように保持する。
スカート部38,38は、図2(A)の1つめの連結リング14Aに示すように、シース16の先端から抜け出ると同時に、それ自体の弾性によって開き、クリップ12Aの保持を解除するとともに、シース16の内径よりも広幅となって、連結リング14Aのシース16内への後退を阻止する。この状態で操作ワイヤ20が引かれ、クリップ12Aが後退することで、連結リング14Aがクリップ12Aに対して相対的に前進し、クリップ12Aを締め付ける。
したがって、スカート部38は、シース16の内部では内側へ閉じることができ、シース16の先端から出て外力から解放されるとスカート状に広がるように、弾性を有していることが必要である。それとともに、スカート部38は、シース16の内部でクリップ12を保持できる剛性と、シース16の先端でクリップ12の締付力の反力に耐える剛性とを有していることも必要である。
これらの観点から、保持部42には、生体適合性があり、かつ、スカート部38に要求される弾性および剛性を満たす材料が用いられる。また、その形状は、スカート部38に要求される弾性および剛性を満たすように定められる。このような保持部42の材料としては、例えば、PPSU(ポリフェニルサルホン、polyphenylsulfone)などを用いることができる。製造の容易さから、保持部42は、一体成形されるのが好ましい。
第2領域34は、第1領域32の基端側に設けられており、第1領域32に保持されるクリップ12に係合する次のクリップ12を、その爪部22,22が先のクリップ12のターン部24の閉塞端(尾部)を挟んで閉じた状態で保持する。
第2領域34は、領域長さとして、クリップ12に対して初期位置にセットされた締付部40が、クリップ12の締め付けを完了するまでに要する移動長さとほぼ等しい長さを持つ。すなわち、連結リング14の第2領域34は、クリップ12が連結リング14に対して相対的に後退して締め付けられていく間、その内部に保持する2つのクリップ12,12の連結を保持して、後ろのクリップ12の牽引力が先端のクリップ12へ伝達されるようにするとともに、締め付けが完了したときには、2つのクリップ12,12の係合部が第2領域34から外れることにより、そのクリップ12,12の連結を解除する。
第2領域34には、図4(C)に示すように、第1領域32の基端側部分と同じ内径の穴43が形成され、さらに、その対向する2箇所に溝(凹部)43aが形成されている。溝43a,43aは、第2領域34に保持されるクリップ12の腕部28,28を、爪部22,22が閉じた状態で収容可能である。また、第2領域34には、図4(A)〜(C)に示すように、その基端から切り込むスリット46が2箇所に形成されている。
溝43a,43aは、第2領域34に保持されるクリップ12の爪部22の開閉方向(図4(B)中、左右方向)の2箇所に設けられている。第2領域34に保持されるクリップ12の腕部28,28の板面は、溝43a,43aの内壁に当接する。溝43aの幅(開口幅)は、クリップ12の腕部28の最大幅よりわずかに大きく、一方の溝43aの壁面から他方の溝43aの壁面までの距離は、クリップ12の2つの爪部22,22の長さ(拡開方向の長さ)を足し合わせた長さにほぼ等しい。また、溝43aの幅は、腕部28に形成された凸部30の幅よりは小さい。したがって、第2領域34に保持されるクリップ12の凸部30は、溝43aに進入できない。
なお、両溝43a,43aの壁面から壁面までの距離は、先のクリップ12のターン部24と、次のクリップ12の爪部22,22との係合が外れない寸法にすればよく、2つの爪部22,22の長さと、ターン部24の爪部22,22が係合する部分の幅とを足し合わせた長さよりも短くすればよい。例えば、第2領域34に保持されるクリップ12の爪部22,22は、少し重なった状態となっていてもよいし、爪部22,22の間にわずかな隙間がある状態で、先のクリップ12との連結が維持されるようにしてもよい。
2つのクリップ12,12の係合部は、第2領域34の、第1領域32との境目に近接する部分に保持される。先のクリップ12(例えば、図2(B)の連結リング14Bにおけるクリップ12B)は、シース16の内部においては、ターン部24が第1領域32の閉じたスカート部38によって保持されているので、進退移動および回転移動が抑えられている。また、先のクリップ12に係合する次のクリップ12(例えば、図2(B)の連結リング14Bにおけるクリップ12C)は、第2領域34の溝43aによって先のクリップと90度異なる方向に保持されることにより回転移動が抑えられ、進退移動が抑えられた先のクリップに係合することにより、進退移動が抑えられている。すなわち、前後のクリップの係合部は、遊びが非常に小さい状態で、連結リング14によって保持される。
スリット46は、スカート部38,38から90度ずれた2箇所に、第2領域34の上端よりも浅い位置まで形成されている。言い換えれば、スリット46は、第2領域34に保持されるクリップ12の拡開方向から90度ずれた位置に設けられている。
スリット46を設けることにより、連結リング14のフレキシブル性を向上させることができ、クリップ処置具10は、曲率の小さい湾曲部を通過することができる。また、スリット46を設けることにより、連結リング14の裾(基端部)が一部めくれるようになるため、シース16へのクリップ12の装填前に前後のクリップ12,12を連結させる際に、連結リング14の裾をめくることで容易に連結させることができるという利点もある。
スリット46の深さは、スカート部38よりも浅い位置までとされており、連結リング14の強度が大幅に低下するのが防止されている。また、スリット46の深さは、第1領域32に保持されるクリップ12の後端の位置、すなわちクリップ12,12の係合位置よりも浅い位置までとされており、シース16に装填される前の連結クリップユニットにおいても、連結リング14の第2領域34におけるクリップ12の保持を保つことができる。
図2(A)および(B)に示すように、第1クリップ12Aのターン部24に第2クリップ12Bの爪部22,22が係合し、その係合部を連結リング14Aが保持する。連結リング14A(その第2領域34)の内壁によって、第2クリップ12Bの爪部22,22は閉じた状態に保持されている。それにより、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bの連結状態が維持される。同様に、第2クリップ12Bと第3クリップ12Cとの連結状態は、連結リング14Bによって、第3クリップ12Cとダミークリップ18との連結状態は、連結リング14Cによって維持される。
最後尾のクリップ12Cには、クリップ処置には用いられないダミークリップ18が係合している。ダミークリップ18は、先端部に、クリップ12の交差部26から開放端側半分の部分と類似の形状をしたバネ性を持つ部分を有しており、爪部を閉じた状態でクリップ12Cのターン部に係合し、爪部を開くとクリップ12Cを開放する。ダミークリップ18の基端部には接続部材19があり、この接続部材19に操作ワイヤ20が接続されている。
シース16は、例えば、金属ワイヤを密着巻きした可撓性のコイルシースである。シース16は、その内部に、先端側においてクリップ12が移動可能に嵌入され、クリップ12にダミークリップ18および接続部材19を介して接続されている操作ワイヤ20を収納するもので、基端側において図7に示す操作部120に接続される。シース16の内径は、先のクリップ12のターン部24と、次のクリップ12の爪部22,22との係合が解除される寸法とされている。すなわち、シース16の内径は、2つの爪部22,22の長さと、ターン部24の爪部22,22が係合する部分の幅とを足し合わせた長さよりも大きい。
操作ワイヤ20は、一連のクリップ処置において、その移動に応じて複数のクリップ12を進退動作させるもので、牽引によって移動可能であるが自身が長さ方向に伸縮することのない材料で作製される。操作ワイヤ20は、図5に示すように、シース16内に収納され、太径部(第1の部分)84と、細径部(第2の部分)90とを有する。太径部84はシース16の基端側から延在し、シース16と略同軸となるように、例えば、図6に示すように、金属ワイヤからなるワイヤ心線92に樹脂チューブ80を被せる等の樹脂被覆をして、シース16の内径より少し小さな外径を持つようにしたワイヤからなり、その基端が操作部120に接続されている。細径部90はシース16の先端側にあり、太径部84の外径より細い外径を持ち、例えば、樹脂被覆されていない金属ワイヤからなるワイヤ心線92であり、その先端が接続部材19およびダミークリップ18を介してクリップ12に接続されている。
太径部84の樹脂被覆は、樹脂チューブ80による被覆に限られず、直接操作ワイヤ20に樹脂をコーティングしても良い。また、樹脂チューブは熱収縮により被覆したものであっても良い。ここで、太径部84はシース16と略同軸となり隙間を少なくしてあるため、接触による摩擦の発生を抑えるために摩擦係数の小さい材質とすることが望ましい。
操作ワイヤ20の先端部分を除く大部分を占める太径部84の範囲では、操作ワイヤ20とシース16との間隔が小さくなり操作ワイヤ20の中心を、シース16の中心100(以下、シース中心100という。)にほぼ一致させることができ、シース16が湾曲している部分でも、操作ワイヤ20の経路長をシース中心100の経路長とほぼ等しくすることができる。さらに、操作ワイヤ20を太くすることでトルクの伝達特性が改善し、クリップの拡開角度の調整のために必要となる場合がある操作ワイヤ20の回転操作時のねじれを少なくすることができる。
チューブ80は、例えば、フッ素樹脂熱収縮チューブであり、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、polytetrafluoroethylene)製等を用いることができる。
チューブ80、シース16および操作ワイヤ20との関係を図6に示す。チューブ80は、ワイヤ心線92に被せられ、加熱により収縮してワイヤ心線92に密着し、ワイヤ心線92と一体化し太径部84を形成している。チューブ80の外径d2は、ワイヤ心線92の外径d1よりも大きく、操作ワイヤ20の進退動作および湾曲の妨げとならないよう、シース16の内径Dよりも若干小さくなっている。すなわち、チューブ80は、操作ワイヤ20とシース16の隙間を埋めるよう構成されている。
ここで、チューブ80は操作ワイヤ20の進退動作時には、シース16の内壁と接して摺動抵抗が発生する場合がある。操作ワイヤ20の動作を良くするためには、チューブ80は摺動抵抗を軽減する摺動部材を兼ねること、すなわち摩擦係数の小さい材質、例えば、PTFEのような樹脂とすることが好ましい。これにより、操作ワイヤ20を構成する撚り線の一部断線等による、シース16との摺動抵抗の増加を防ぐこともでき、スムーズに操作することができるとともに、シース16および操作ワイヤ20の摩耗による減損を防ぎ、耐久性を上げることができる。
チューブ80をワイヤ心線92に被覆することで、操作ワイヤ20の曲げ剛性の増加を抑えつつ操作ワイヤ20の外径を太くすることができる。
ワイヤ心線92の曲げ剛性は太さによって決まり、太ければ曲げ剛性が大きくなる。しかし、同じ外径であっても細いワイヤ心線92に、例えば、フッ素樹脂熱収縮チューブ80による被覆をすれば、外径はチューブ80まで含めることができるので、ワイヤ心線92自身の外径を太くせずとも結果として外径を太くすることができる。チューブ80自身の曲げ剛性は、例えば、金属ワイヤのワイヤ心線92自身の曲げ剛性と比較して小さいため、ワイヤ心線92を直接太くした場合に比べ、曲げ剛性の小さい構成で同様の効果を得ることができる。
操作ワイヤ20の細径部90の範囲では、チューブ80が無くワイヤ心線92のみとなるため可撓性に優れ、内視鏡のアングル部にて発生する曲率の大きい湾曲部においても操作性に優れている。
しかし、ワイヤ心線92のみとなると、シース16との隙間が拡がり、さらに、ワイヤ心線92が座屈する場合もあるため、操作部120での操作ワイヤ20の移動量が正確にシース16の先端部に伝わらない可能性が出てくる。そこで、操作ワイヤ20の細径部90は先端側において必要最小限の長さとすることが好ましい。この必要最小限の長さとは、例えば、クリップ処置具10が内視鏡に挿入されたときの、アングル部の終端に対応する部分までの長さである。例えば、上部/下部消化管用の内視鏡に用いる処置具の場合、全長約2mのうち約10%〜20%を細径部90とするのが好ましい。
なお、内視鏡のアングル部にて発生する曲率の大きい湾曲部において操作性に支障が出なければ、操作ワイヤ20の全長において樹脂被覆を行ってもよい。この場合、操作ワイヤ20の全長に渡って、操作ワイヤ20の中心を、シース中心100にほぼ一致させることができるので、操作ワイヤ20とシース16の径路長差をより小さくすることができ、さらに、トルクの伝達特性もより良好なものとすることができる。
次に、図7〜12を参照して、操作ワイヤを操作する操作部について説明する。
図7は、操作部の概略構成を示す断面図である。同図に示す操作部120は、図中左側が、クリップ12およびシース16と接続され、図中右側が、操作者によって操作される。以下の説明では、図7における左側の端部を先端、右側の端部を基端と呼ぶ。
操作部120は、その中心を成す本体レール122と、本体レール122の先端に固定された先端部材124と、本体レール122の基端に取り付けられた指掛けリング126と、本体レール122の外側に設けられたワイヤ固定部材128、調整ダイヤル130、スライダ132、およびロックダイヤル134と、先端部材124の外側に設けられたスライダガイド138、および位置規制機構142とを有している。
シース16の基端は、先端部材124の先端に保持され、操作ワイヤ20(太径部84)の基端は、ワイヤ固定部材128のワイヤ接続部128aに保持される。操作者は、例えば、指掛けリング126に親指を掛け、スライダ132に人差し指と中指を掛けて、スライダ132を指掛けリング126に対して進退方向にスライド移動させることができる。スライダ132が移動すると、ワイヤ固定部材128も共に移動し、ワイヤ接続部128aに保持された操作ワイヤ20も共に移動する。一方、シース16は、先端部材124および本体レール122を介して指掛けリング126に接続している。したがって、指掛けリング126に対するスライダ132の移動操作によって、シース16に対して操作ワイヤ20を進退移動させることができる。以下、操作部120の各部の構成について詳述する。
本体レール122は、図8に示すように、円柱状の基端部122aから、断面が略半円状の2つの棒部材122b,122bが延びた形状を有している。2つの棒部材122b,122bは、平面部を対向させて、その間に所定の間隔を空けて配置されており、両部材の曲面は、1つの円筒面を形成している。言い換えれば、棒部材122b,122bは、基端部122aと同軸でそれよりも細い円柱の中央を、その軸線に沿って所定幅で削り落とした形状である。図7では、本体レール122は、図中手前側の棒部材122bが取り除かれ、奥側の棒部材122bの平面部が表示されている。
2つの棒部材122b,122bの間隔は、ワイヤ固定部材128のワイヤ接続部128a、および、スライダ132に取り付けられるスライダピン136の先端部分が挿入可能な寸法とされている。図7に示すように、ワイヤ接続部128aおよびスライダピン136は、先端が2つの棒部材122b,122bの間に挿入され、棒部材122b,122bにガイドされて、本体レール122の延在方向に移動できる。すなわち、本体レール122は、棒部材122b,122bが、ワイヤ接続部128a(ワイヤ固定部材128)およびスライダピン136(スライダ132)のレールとして機能する。
先端部材124は、基端部に径が大きいフランジ状の部分124aを持つ円筒状の部品である。先端部材124の基端の端面には、本体レール122の先端が固定されている。また、先端部材124の先端には、シース16の基端部が挿入されて保持されている。操作ワイヤ20は、シース16の基端から延びて先端部材124の内部の空間を貫通している。先端部材124の筒状部分の外径は、先端部材124の外側に配置されるスライダガイド138の先端部分の内径にほぼ等しく、フランジ状部分124aの外径は、スライダガイド138の後端側の内径にほぼ等しい。これにより、スライダガイド138が先端部材124に対して摺動可能となっている。
指掛けリング126は、操作者が指を挿入可能なリング部分を持つ部品で、本体レール122の円筒状の基端部122aに取り付けられている。
ワイヤ固定部材128は、本体レール122の2つの棒部材122b,122bの外径とほぼ等しい内径を有する円筒状の部材である。ワイヤ固定部材128の基端部分の外周面にはネジが切ってある。ワイヤ固定部材128の軸方向の略中央部には、内面側へ突出するワイヤ接続部128aが形成されている。先端部材124を貫通して延びる操作ワイヤ20(太径部84)の基端は、ワイヤ接続部128aの、ワイヤ固定部材128の中心軸(すなわち操作部120の中心軸)に一致する位置に固定される。なお、操作ワイヤ20は、シース16の先端内部からワイヤ接続部128aの範囲までが、補強管148によって覆われており、操作部120の内部で折れることがないように補強されている。
調整ダイヤル130は、ワイヤ固定部材128の外側に嵌められたフランジ付きの円筒状部品である。調整ダイヤル130の基端側の内周面にはネジが切ってあり、このネジ部分が、ワイヤ固定部材128のネジ部分に嵌められている。調整ダイヤル130は、フランジ部分が操作者によって回されることで、その回転方向に応じて、ワイヤ固定部材128のネジに沿って前進または後退する。調整ダイヤル130の薄肉部分の外周面には、スライダ132の凹部と係合する凸部が、全周にわたって設けられている。
スライダ132は、糸巻き状の形状を有しており、操作者が指を掛けて進退方向に動かし易いようになっている。スライダ132には、ワイヤ固定部材128が挿通されている。また、スライダ132の基端側部分は内径が大きくなっており、基端側から調整ダイヤル130が挿入されている。スライダ132の内周面には、調整ダイヤル130の凸部と係合する凹部が全周に形成されている。この凹部と凸部の係合により、軸方向には、スライダ132は調整ダイヤル130と一体的に移動するが、周方向には、調整ダイヤル130とスライダ132とは回転自在となっている。
ロックダイヤル134は、内周面にワイヤ固定部材128の基端部のネジに対応するネジが切られた、リング状の部品である。調整ダイヤル130の位置が調整された後に、ロックダイヤル134を調整ダイヤル130の基端の端面に当たるまでネジが締められることで、調整後の調整ダイヤル130の位置がロックされる。
スライダ132と調整ダイヤル130とは、凹部と凸部によって係合し、調整ダイヤル130およびロックダイヤル134とワイヤ固定部材128とは、ネジ部分によって係合しているので、スライダ132が進退方向(図中左右方向)へ動かされると、これらの4つの部品が一体的に移動する。
スライダピン136は、スライダ132の先端部分に、外側から内側へ差し込んで固定されている。スライダピン136は、その先端が、本体レール122の棒部材122b,122bの間に達しており、2つの棒部材122b,122bの間を移動できる。
スライダガイド138は、先端部材124の外側に設けられた略円筒状の部材である。上述したように、スライダガイド138の先端部分の内径は、先端部材124の筒状部分の外径とほぼ等しく、スライダガイド138の基端側の内径は、先端部材124のフランジ部分124aの外径とほぼ等しく、スライダガイド138は、フランジ状の部分124aに摺動可能に支持されている。また、スライダガイド138の基端側部分の外径は、スライダ132の内径よりわずかに小さく、スライダ132が先端側へ移動したときに、スライダ132の内側へ入り込むことができる。スライダガイド138は、操作者の操作によって、その先端の位置規制機構142に対して回転移動するため、操作者が持ちやすいように、外面に傾斜面が形成されている。
先端部材124のフランジ部分124aとスライダガイド138の内面との間には、先端部材124を中心としてコイルバネ144が配置されている。コイルバネ144は、圧縮バネであり、固定部材である先端部材124(そのフランジ部分124a)に対して、スライダガイド138を先端側へ付勢して、位置規制機構142の方へ押し付けている。位置規制機構142は、先端部材124に固定されている。
図9および図10を参照して、スライダガイド138および位置規制機構142についてさらに詳細に説明する。図9(A)は、スライダガイド138の斜視図であり、図9(B)は、スライダガイド138の基端側のガイド溝部分の展開図である。また、図10は、位置規制機構142の斜視図である。
図9(A)に示すように、スライダガイド138の先端部の、位置規制機構142との接合部138aには、その端面に、周方向において2辺の傾斜角が異なる鋸波形状の凸部が90度間隔で4つ形成されている。この鋸波形状の凸部は、一方の面の傾斜角が緩やかで、他方の面の傾斜角が略直角である。また、図10に示すように、位置規制機構142の後端部の、スライダガイド138との接合部142aにも、スライダガイド138の接合部138aの凸部と同様の4つの凸部が設けられている。
スライダガイド138は、位置規制機構142と噛み合った状態でコイルバネ144によって位置規制機構142に押し付けられているため、操作者からの外力が作用しない限り、スライダガイド138は位置規制機構142に対して回転しない。また、位置規制機構142とスライダガイド138とは、鋸波形状の凹凸で噛み合っているので、操作者がスライダガイド138を軸周りに回そうとした場合に、スライダガイド138は、その接合部138aおよび142aの凸部の、互いの急斜面(略直角面)が離れる方向には回転するが、その反対の急斜面が当接する方向へは回転しない。図示例では、スライダガイド138は、基端側(図9(A)の右側)から見て反時計方向には回転できるが、時計方向には回転できない。
スライダガイド138は、接合部138aの緩斜面が位置規制機構142の接合部142aの緩斜面に沿って回転し、90度回転して互いの頂点を乗り越えると、次の凹凸で噛み合う。それにより、スライダガイド138は、90度ずつ回転する。
スライダガイド138の基端側の円筒部分には、図9(A)に示すように、基端側端面から回転軸に沿って延在する4本のスライダガイド溝140A,140B,140C,140Dが、90度間隔で形成されている。このスライダガイド溝140A〜140Dは、図9(B)に示すように、それぞれ溝の長さが異なる。図示例では、スライダガイド溝140Aが最も長く、スライダガイド溝140D、スライダガイド溝140C、スライダガイド溝140Bの順で短くなっている。図7では、図中上側に、最も短いスライダガイド溝140Bが、下側に2番目に長いスライダガイド溝140Dが表れている。
スライダガイド溝140A〜140Dは、スライダピン136のガイド溝としての機能を有し、その溝の幅は、スライダピン136の径とほぼ等しい。スライダガイド138が90度回転するごとに、スライダガイド溝140A〜140Dの何れかが、本体レール122のレール位置、すなわち2つの棒部材122b,122bの間の位置に一致するように配置される。したがって、操作者の操作によってスライダ132が進退方向に移動するときは、スライダピン136は、先端部分が本体レール122に案内されると同時に、中間部分がスライダガイド溝140A〜140Dの何れかに案内され、スライダ132の移動量は、スライダガイド溝140A〜140Dの溝の長さによって定められる。
すなわち、スライダガイド138は、スライダガイド溝140A〜140Dにより、本体レール122に沿って移動するスライダピン136の先端側への移動限界を規定することで、スライダ132、およびそれと共に移動する調整ダイヤル130、ワイヤ固定部材128、ロックダイヤル134の移動位置を規定して、ワイヤ固定部材128に接続された操作ワイヤ20(太径部84)の移動位置を規定する。
スライダ132等の基端側の移動限界は、ロックダイヤル134の基端側端面が、本体レール122の基端部122aの先端側端面に当接する位置によって規定される。
図11および図12を参照して、操作部120の作用を説明する。
図11は、クリップ処置動作時のスライダガイド138とスライダピン136との位置関係を示す、スライダガイド溝140A〜140Dの部分の展開図である。図12はクリップ処置動作における段階的な状態を示す部分断面図である。スライダ132等が、基端側の移動限界にあるときのスライダピン136の位置を、ホームポジションP1とする。スライダ132のホームポジションは、スライダ132が最も基端側まで引かれたときの位置であり、ロックダイヤル134が本体レール122の基端部122aに当接することで規定される。スライダピン136が、ホームポジションP1にあるとき、操作ワイヤ20の先端は、3つのクリップ12とダミークリップ18および接続部材19の分L1だけ、シース16の先端から引っ込んだ位置にある(図12(A)参照)。
図7の操作部120において、まず、スライダガイド138を回して、スライダガイド溝140Aがスライダピン136に一致する位置にセットする。次いで、スライダ132を前方へ移動させて、スライダピン136をスライダガイド溝140Aの先端の最大突出位置P2まで移動させると、スライダガイド溝140Aの溝の長さに等しい長さL1だけ操作ワイヤ20が先端側へ移動し、操作ワイヤ20の先端がシース16の先端から突出して、操作ワイヤ20に、接続部材19を取り付けられるようになる(図12(B)参照)。接続部材19を操作ワイヤ20に取り付けた後、スライダ132を後方へ移動させて、スライダピン136をホームポジションP1と同じ位置であるP3に戻すと、操作ワイヤ20がシース16の内部に引き込まれることによって、操作ワイヤ20の先端に接続された接続部材19、ダミークリップ18およびそれに続く3つのクリップ12がシース16内に引き込まれる(図12(C)参照)。これにより、シース16へのクリップの装填が完了する。
次に、スライダガイド138を90度回転させる。これにより、スライダピン136の位置が、ホームポジションP1およびP3と軸方向の位置が等しく周方向の位置が90度異なる位置P4となり、スライダピン136がスライダガイド溝140Bの位置に一致する。スライダ132を前方へ移動させて、スライダピン136をスライダガイド溝140Bの先端の突出位置P5まで移動させると、スライダガイド溝140Bの溝の長さだけ、操作ワイヤ20およびそれに接続されたクリップ12等が、先端側へ移動する(図12(D)参照)。
ここで、スライダガイド溝140Bの長さは、先頭のクリップ12がシース16の先端から突出し、その連結リング14のスカート部38が開くまでの操作ワイヤ20の移動量L2に一致させてある。したがって、スライダピン136が突出位置P5に来るまでスライダ132を移動させることで、先頭のクリップ12を使用可能な状態(スタンバイ状態)とすることができる。
続いて、スライダ132を後方へ移動させると、スライダピン136がクリップ完了位置P6に移動した時点で、シース16の先端の処置動作部では、先頭のクリップ12の連結リング14による締め付け(図12(E)参照)、および次のクリップ12との切り離しが行われる(図12(F)参照)。これにより、1発目のクリップ処置が完了する。
引き続きスライダ132を後方へ移動させて、スライダピン136をホームポジションP4と同じ位置P7に戻し、次のクリップ処置のために、スライダガイド138を先ほどと同方向へ90度回転させて、スライダピン136をスライダガイド溝140CのホームポジションP8に一致させる(図12(G)参照)。スライダピン136がホームポジションP8にあるとき(図12(G)参照)の操作ワイヤ20の先端の位置は、スライダピン136がP3にあるとき(図12(C)参照)の操作ワイヤ20の先端の位置と同じになっている。
スライダガイド溝140C、140Dは、それぞれ、2番目、3番目のクリップ12をシース16から突出させるための操作ワイヤ20の移動量に一致させてある。以下、1発目と同様にして、スライダ132の前方への移動、後方への移動、スライダガイド138の90度回転を順に行うことで、2発目、3発目のクリップ処置を行うことができる。
ここで、スライダガイド138は3連発用であるが、スライドガイド溝を増減することで他の連発数のクリップ処置具へも適用可能である。例えば、5連発用とするためにはスライドガイド溝を2本増加させ、スライドガイド溝の間隔を60度とすることで、5発のクリップ処置を連続して行うことができる。
長期間の使用のうちに、操作ワイヤ20が伸びてしまった場合には、以下のように調整する。まずロックダイヤル134を緩め、次いで調整ダイヤル130を回して、調整ダイヤル130をワイヤ固定部材128に対して先端側へ移動させる。スライダ132は、調整ダイヤル130の凸部と係合しているので、軸方向へはスライダ132と一緒に移動する。ただし、調整ダイヤル130とスライダ132は、回転方向の移動はフリーなので、スライダピン136によって周方向の移動が規制されたスライダ132に対し、調整ダイヤル130だけが回転することができる。操作ワイヤ20の弛みが無くなる分だけ調整ダイヤル130を移動させたら、再びロックダイヤル134を締めて調整ダイヤル130およびスライダ132の位置をロックする。
スライダ132のホームポジションは、ロックダイヤル134が本体レール122の基端部122aに当接することで規定されるので、ホームポジションにおけるスライダ132の本体レール122に対する位置は変わらない。一方、調整ダイヤル130およびスライダ132をワイヤ固定部材128に対して先端側に移動させることにより、ワイヤ固定部材128がスライダ132に対して相対的に後方へ移動することになり、ワイヤ接続部128aも同様に移動する。したがって、ホームポジションにおける操作ワイヤ20の基端が後方へ移動することとなり、操作ワイヤ20の伸び分による弛みを解消することができる。
ここで、本発明のクリップ処置具10において、図5および図13に示すように、操作ワイヤ20のシース16の基端部から先端部に近い部分までを太径部84としているので、チューブ80を被せた操作ワイヤ20の太径部84の範囲では、操作ワイヤ20とシース16との間隔が小さくなり、操作ワイヤ20の中心を、シース16の中心100にほぼ一致させることができ、シース16が湾曲している部分でも、操作ワイヤ20の経路長をシース中心100の経路長とほぼ等しくすることができ、シース16と操作ワイヤ20の経路差を最小限にすることができる。
操作ワイヤ20の経路がシース中心100とほぼ一致することにより、シース16の湾曲による操作ワイヤ20の移動量の変動を抑えることができ、シース16の先端におけるクリップ12によるクリップ処置を正確かつ確実に行うことができる。
また、内視鏡のアングル部に配置されるシース16の先端部分は、曲率半径の小さな湾曲となる場合があるが、シース16の先端部は、チューブ80を被せない状態、すなわち太径部84に比べて細い外径の細径部90を用いることで、可撓性に優れ、曲率半径の小さな湾曲部であっても操作性を損なうことはない。
さらに、操作ワイヤ20を進退操作して、クリップ12を使用するための準備を行うにあたり、クリップ12の拡開角度を合わせるために、操作ワイヤ20を回転させる場合があるが、チューブ80を被せた部分、すなわち太径部84が長いほど、操作ワイヤ20のねじれの発生が少なく、基端側の操作ワイヤ20を回転させた回転量がそのまま先端側へ伝わり、クリップ12の拡開角度の調整が正確にできることとなる。
また、本発明のクリップ処置具10では、上述したように、連結リング14でクリップ12の連結部分を覆って保持するため、複数のクリップ12の連結状態が確実に維持される。そして、操作ワイヤ20でダミークリップ18およびそれに連結する複数のクリップ12を所定長分だけ一方向に牽引することで、連結リング14の締付部40による先頭のクリップ12の締め付けと、次のクリップ12との連結解除とを同時に行って、先頭のクリップ12によるクリップ処置を行うことができ、さらに、操作ワイヤ20を先端側へ所定長分だけ移動させることで、次のクリップ12が使用可能となり、続けてクリップ処置を行うことができる。
また、クリップ12の連結部を連結リング14で覆っているため、クリップ処置操作時等にクリップ12の連結部の角部などでシース16の内壁を傷付ける心配が無く、シース16を内視鏡に挿入する時などにも、連結部において、クリップ12にこじれや歪みを生じる可能性が極めて小さい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図14(A)は、本発明の第2の実施形態の連発式クリップ処置具の他の実施形態の要部を示す模式的部分断面図であり、図14(B)は、図14(A)と90度異なる角度から見た断面図である。
図14に示す本発明の第2の実施形態のクリップ処置具92は、操作ワイヤ20の細径部90にスペーサ48を付加したことを除いて、図1および図5に示す本発明の第1の実施形態のクリップ処置具10と、同様の構成を有するものであり、図5に示すクリップ処置具10の場合と同様に、図1(A)、(B)および図2(A)、(B)に示すシース16の先端における連結止血クリップ体(全クリップ12A〜12C)の構成および図7に示す操作部120を適用できるものである。図14のクリップ処置具92において、図1のクリップ処置具10と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下、主に、本実施形態のクリップ処置具92が図1および図5に示すクリップ処置具10と異なる点について説明する。
スペーサ48は、図16に示すように、操作ワイヤ20の細径部90をシース16と同軸上に保持するように、すなわち、シース16の内面と操作ワイヤ20の細径部90の外表面との間隔を一定に維持するように、シース16内に摺動可能に挿入されている。操作ワイヤ20の細径部90は、スペーサ48の中心部を貫通している。ここで、スペーサ48は、操作ワイヤ20の細径部90に固定されており、例えばボンディング等により接着固定され、または機械的に固定されている。この場合には、スペーサ48とシース16は、固定されておらず、スペーサ48は、シース16の内壁を摺動可能に構成されており、操作ワイヤ20と共に移動し、操作ワイヤ20の移動を妨げることはない。
スペーサ48はシース16の全長のうち、先端部、すなわち操作ワイヤ20の細径部90に1つ以上入っており、シース16の先端部を湾曲させた場合でも、操作ワイヤ20をシース16の中心に保持している。
ここで、スペーサ48は、操作ワイヤ20の進退動作時には、シース16の内壁と接触しているため摺動抵抗が発生する。操作ワイヤ20の動作を良くするために、スペーサ48は、摺動抵抗を軽減する摺動部材を兼ねること、すなわち摩擦係数の小さい材質、例えばPTFEのような樹脂とすることが好ましい。これにより、操作ワイヤ20をスムーズに操作でき、シース16および操作ワイヤ20の摩耗による減損を防ぎ、耐久性を上げることができる。
なお、スペーサ48は、操作ワイヤ20の細径部90にどのように取り付けられても良く、特に制限はない。隣接するスペーサ48間の間隔は、均等であってもよいし、異なっていても良いし、その数も、特に制限はないが、図17に示すように、複数であるのが好ましい。こうすることにより、シース16を湾曲させた場合でも、より正確かつ確実に操作ワイヤ20をシース16の中心に保持することができる。
内視鏡によりクリップ処置具92を使用する場合、内視鏡を挿入する胃や食道や小腸や大腸などの体腔は湾曲しているので、これらの部位に止血部や処置部がある場合には、内視鏡の先端側は湾曲させる必要があり、例えば曲率半径25mmの湾曲となる場合が考えられる。このとき、シース16も内視鏡の湾曲と同様に曲率半径25mmの湾曲となる。シース16の先端部以外の部分では、上述したように、操作ワイヤ20の太径部84によって、シース16と操作ワイヤ20の経路差を最小限にすることができるが、シース16の先端部においては、操作ワイヤ20の細径部90が細いため、湾曲による操作ワイヤ20の最長経路化が発生しやすく、シース16との経路差が大きくなりやすい。
また、操作ワイヤ20の細径部90においては、シース16との隙間が拡がり操作ワイヤ20が座屈し、操作部120での操作ワイヤ20の移動量が正確に操作ワイヤ20の先端部に伝わらない可能性が出てくる。
そこで図15の模式的断面図に示すように、シース16の先端側の、操作ワイヤ20の細径部90にスペーサ48を挿入する。操作ワイヤ20の細径部90は、スペーサ48によりシース中心100に保持され、シース16の先端側の湾曲部でのシース中心100と操作ワイヤ20との経路差を少なくすることができ、操作ワイヤ20の座屈を防ぐことができる。さらに、第1の実施形態と比較して、スペーサ48があることで操作ワイヤ20の細径部90の長さを第1の実施形態よりも長くすることができる。
これにより、操作ワイヤ20の経路は、曲率半径の小さい湾曲部が第1の実施形態よりも長い場合であっても、シース16のシース中心100とほぼ一致し、操作部120での操作ワイヤ20の進退動作による移動量が、そのままシース16の先端部での操作ワイヤ20の移動量となる。これにより、良好な操作性を確保することができ、クリッピング処置等を行う場合において、操作部120の操作ワイヤ20の移動量が正確に先端部に伝わり、クリッピング処置等の作業が容易になる。
また、スペーサ48の配置は、想定される曲率半径に応じて、スペーサ48の密度を高くするなど最適化することが好ましい。
また、第1の実施形態と同様、チューブ80により被覆された操作ワイヤ20の太径部84が長いほど、操作ワイヤのねじれの発生が少なく、基端側の操作ワイヤ20を回転させた回転量が、そのまま先端側の操作ワイヤ20へ伝わり、クリップ12の拡開角度の調整が正確にできる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図18(A)は、本発明の第3の実施形態の連発式クリップ処置具の他の実施形態の要部を示す模式的部分断面図であり、図18(B)は、図18(A)と90度異なる角度から見た断面図である。
図18に示す本発明の第3の実施形態のクリップ処置具94は、操作ワイヤ20をチューブ80で被覆する代わりに、操作ワイヤ20のワイヤ自体で太径部84と細径部90を構成し、太径部84と細径部90とを接続するワイヤ径変化部82を設けたことを除いて、図1および図5に示す本発明の第1の実施形態のクリップ処置具10と、同様の構成を有するものであり、図5に示すクリップ処置具10の場合と同様に、図1(A)、(B)および図2(A)、(B)に示すシース16の先端における連結止血クリップ体(全クリップ12A〜12C)の構成および図7に示す操作部120を適用できるものである。図18のクリップ処置具94において、図1のクリップ処置具10と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下、主に、本実施形態のクリップ処置具94が図1および図5に示すクリップ処置具10と異なる点について説明する。
ワイヤ径変化部82は、例えば、連結部材を用いて機械的に操作ワイヤ20の太径部84と細径部90とを接続するものである。ワイヤ径変化部82は、操作ワイヤ20を進退動作させても、シース16に引っかかることなく動くように、その径はシース16の内径よりも小さい寸法とされている。
ワイヤ径変化部82の接続方式としては種々の方式が適用でき、適用可能な接続方式として、例えば、図19(A)〜(D)に示す接続方式を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
図19(A)に示す例では、ワイヤ径変化部82として、操作ワイヤ20の太径部84と細径部90との接続に連結部材86を用い、例えば、圧着等により操作ワイヤ20の太径部84と細径部90とを接続するものである。太径部84と細径部90とを接続するのに適したサイズの連結部材86を用いることにより、両者を圧着工具または治工具のみで簡単に接続することができる。
また、太径部84または細径部90の単独交換が必要になる場合には、連結部材86との接続にネジを用いてもよい。ネジを用いることにより、連結部材86と太径部84または細径部90とを簡単に接続、分離することができ、容易に交換することができる。
図19(B)に示す例では、操作ワイヤ20の太径部84と細径部90との接続に溶接を用い、例えば、抵抗溶接等により太径部84と細径部90とを接続して、ワイヤ径変化部82として、溶接部88を形成する。太径部84と細径部90とは溶接部88により接続され、ワイヤ径変化部82の強度を増すことができる。
図19(C)に示す例では、例えば、太径部84を構成する1本の太い金属ワイヤから、一部の撚り線を徐々に間引くことによって太径部84から徐々に細径するワイヤ径変化部82を連続的に形成し、さらに所定外径を持つ細い金属ワイヤからなる細径部90を連続的に作製することができる。
図19(D)に示す例では、単線ワイヤを用い、操作ワイヤ20の作製行程において、操作ワイヤ20の太径部84を構成する太いワイヤ、例えば、太い金属ワイヤの一部に引き抜き加工や伸延加工を施すことによって、ワイヤ径変化部82および細径部90を連続的に作製する。このように、1本の太い金属ワイヤから外径の異なる太径部84、ワイヤ径変化部82および細径部90を持つ操作ワイヤ20を作製することができる。
ここで、本発明のクリップ処置具94において、図20に示すように、操作ワイヤ20のシース16の基端部から先端部に近い部分までを太径部84としている、すなわち第1の実施形態のチューブ80を用いる部分を、操作ワイヤ20自身を太くした太径部84としているので、太径部84の範囲では、操作ワイヤ20とシース16との間隔が小さくなり、操作ワイヤ20の中心を、シース16の中心100にほぼ一致させることができ、シース16が湾曲している部分でも、操作ワイヤ20の経路長をシース中心100の経路長とほぼ等しくすることができ、シース16と操作ワイヤ20の経路差を最小限にすることができる。
操作ワイヤ20の経路がシース中心100とほぼ一致することにより、シース16の湾曲による操作ワイヤ20の移動量の変動を抑えることができ、シース16の先端におけるクリップ12によるクリップ処置を正確かつ確実に行うことができる。
このとき、太径部84はシース16と略同軸となるため隙間が少なく、シース16との接触による摩擦の発生を抑えるために、本発明の第1の実施形態のクリップ処置具10および第2の実施形態のクリップ処置具92における摩擦係数の小さい材質のチューブ80の代わりに、潤滑剤を塗布することが好ましい。さらに、操作ワイヤ20自体の曲げ剛性を低減させるために、操作ワイヤ20の材質も、牽引によって移動可能であるが自身が長さ方向に伸縮することがない範囲で、曲げ剛性の低い材料で作製されるのが望ましい。
また、内視鏡のアングル部に配置されるシース16の先端部分は、曲率半径の小さな湾曲部となる場合があるが、シース16の先端部の操作ワイヤ20には、太径部84に比べて細い外径の細径部90を用いることで、可撓性に優れ、曲率半径の小さな湾曲部であっても操作性を損なうことはない。
さらに、操作ワイヤ20を進退操作して、クリップ12を使用するための準備を行うにあたり、クリップ12の拡開角度を合わせるために、操作ワイヤ20を回転させる場合があるが、太径部84が長いほど、操作ワイヤ20のねじれの発生が少なく、基端側の操作ワイヤ20を回転させた回転量がそのまま先端側へ伝わり、クリップ12の拡開角度の調整が正確にできることとなる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図21(A)は、本発明の第4の実施形態の連発式クリップ処置具の他の実施形態の要部を示す模式的部分断面図であり、図21(B)は、図21(A)と90度異なる角度から見た断面図である。
図21に示す本発明の第4の実施形態のクリップ処置具96は、図18および図20に示す本発明の第3の実施形態のクリップ処置具94に、図14および図15に示す本発明の第2の実施形態のクリップ処置具92にて用いたスペーサ48を適用したものであり、操作ワイヤ20の細径部90にスペーサ48を付加したことを除いて、図18および図20に示す本発明の第3の実施形態のクリップ処置具94と同様の構成を有するものであり、図20に示すクリップ処置具94の場合と同様に、図1(A)、(B)および図2(A)、(B)に示すシース16の先端における連結止血クリップ体(全クリップ12A〜12C)の構成および図7に示す操作部120を適用できるものである。図21のクリップ処置具96において、図18のクリップ処置具94と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下、主に、本実施形態のクリップ処置具96が図18および図20に示すクリップ処置具94と異なる点について説明する。
スペーサ48は、図16に示すように、操作ワイヤ20の細径部90をシース16と同軸上に保持するように、すなわち、シース16の内面と操作ワイヤ20の細径部90の外表面との間隔を一定に維持するように、シース16内に摺動可能に挿入されている。操作ワイヤ20の細径部90は、スペーサ48の中心部を貫通している。ここで、スペーサ48は、操作ワイヤ20の細径部90に固定されており、例えばボンディング等により接着固定され、または機械的に固定されている。この場合には、スペーサ48とシース16は、固定されておらず、スペーサ48は、シース16の内壁を摺動可能に構成されており、操作ワイヤ20と共に移動し、操作ワイヤ20の移動を妨げることはない。
スペーサ48はシース16の全長のうち、先端部、すなわち操作ワイヤ20の細径部90に1つ以上入っており、シース16の先端部を湾曲させた場合でも、操作ワイヤ20をシース16の中心に保持している。
ここで、スペーサ48は、操作ワイヤ20の進退動作時には、シース16の内壁と接触しているため摺動抵抗が発生する。操作ワイヤ20の動作を良くするために、スペーサ48は、摺動抵抗を軽減する摺動部材を兼ねること、すなわち摩擦係数の小さい材質、例えばPTFEのような樹脂とすることが好ましい。これにより、操作ワイヤ20をスムーズに操作でき、シース16および操作ワイヤ20の摩耗による減損を防ぎ、耐久性を上げることができる。
なお、スペーサ48は、操作ワイヤ20の細径部90にどのように取り付けられても良く、特に制限はない。隣接するスペーサ48間の間隔は、均等であってもよいし、異なっていても良いし、その数も、特に制限はないが、図17に示すように、複数であるのが好ましい。こうすることにより、シース16を湾曲させた場合でも、より正確かつ確実に操作ワイヤ20をシース16の中心に保持することができる。
内視鏡によりクリップ処置具96を使用する場合、内視鏡を挿入する胃や食道や小腸や大腸などの体腔は湾曲しているので、これらの部位に止血部や処置部がある場合には、内視鏡の先端側は湾曲させる必要があり、例えば曲率半径25mmの湾曲となる場合が考えられる。このとき、シース16も内視鏡の湾曲と同様に曲率半径25mmの湾曲となる。シース16の先端部以外の部分では、上述したように、操作ワイヤ20の太径部84によって、シース16と操作ワイヤ20の経路差を最小限にすることができるが、シース16の先端部においては、操作ワイヤ20の細径部90が細いため、湾曲による操作ワイヤ20の最長経路化が発生しやすく、シース16との経路差が大きくなりやすい。
また、操作ワイヤ20の細径部90においては、シース16との隙間が拡がり操作ワイヤ20が座屈し、操作部120での操作ワイヤ20の移動量が正確に操作ワイヤ20の先端部に伝わらない可能性が出てくる。
そこで図22の模式的断面図に示すように、シース16の先端側の、操作ワイヤ20の細径部90にスペーサ48を挿入する。操作ワイヤ20の細径部90は、スペーサ48によりシース中心100に保持され、シース16の先端側の湾曲部でのシース中心100と操作ワイヤ20との経路差を少なくすることができ、操作ワイヤ20の座屈を防ぐことができる。さらに、第3の実施形態と比較して、スペーサ48があることで操作ワイヤ20の細径部90の長さを第1の実施形態よりも長くすることができる。
これにより、操作ワイヤ20の経路は、曲率半径の小さい湾曲部が第3の実施形態よりも長い場合であっても、シース16のシース中心100とほぼ一致し、操作部120での操作ワイヤ20の進退動作による移動量が、そのままシース16の先端部での操作ワイヤ20の移動量となる。これにより、良好な操作性を確保することができ、クリッピング処置等を行う場合において、操作部120の操作ワイヤ20の移動量が正確に先端部に伝わり、クリッピング処置等の作業が容易になる。
また、スペーサ48の配置は、想定される曲率半径に応じて、スペーサ48の密度を高くするなど最適化することが好ましい。
また、第3の実施形態と同様、操作ワイヤ20の太径部84を用いた部分が長いほど、操作ワイヤのねじれの発生が少なく、基端側の操作ワイヤ20を回転させた回転量が、そのまま先端側の操作ワイヤ20へ伝わり、クリップ12の拡開角度の調整が正確にできる。
次に、本発明の連発式クリップ処置具に用いられる操作部の他の例について説明する。上記の実施形態では、先頭のクリップ12をシース16から突出させるときには、操作部120のスライダ132によって操作ワイヤ20を押し出し、また、クリップ12による処置をするときには、操作部120のスライダ132によってクリップ12に接続する操作ワイヤ20を手元側へ引いて、シース16に対して操作ワイヤ20の進退操作のみでクリップ12を進退移動させた。しかし、操作部の構成およびクリップ処置具の動作は、これには限定されず、シース16と操作ワイヤ20をそれぞれ操作して、クリップ12とシース16とを相対的に移動させて、クリップ12をシース16から突出させることと、クリップ処置とを行ってもよい。
図23(A)および(B)は操作部の他の例の概略構成を示す部分断面平面図および部分断面正面図である。同図に示す操作部50は5連発のクリップ処置具に用いることができ、上述の第1から第4の実施形態のクリップ処置具10,92,94,96において、クリップ12を5つ装填して5連発で使用可能な処置具とした場合に、操作部120に代えて用いることができる。操作部50を用いた場合でも、クリップ処置動作等における、クリップ装填部分(シース16の先端部分)の各部の相対的な位置関係は上述の各例と同様であり、また、操作ワイヤ20に太径部84を設けたことおよび、操作ワイヤ20とシース16との間にスペーサ48を入れたことによる作用効果は、上述の各例と同様である。
図23(A)および(B)において、操作部50は、左側が、クリップ12に連結された操作ワイヤ20およびクリップ12を収納するシース16と接続される先端側、右側が、操作者によって操作される後端側(または基端側)であり、操作部本体であるワイヤ操作ハンドル52と、シース16の基端部を把持する把持部の機能を持つシース操作ハンドル54とを有している。シース操作ハンドル54は、ワイヤ操作ハンドル52に対してスライド移動可能に構成されている。
ワイヤ操作ハンドル52は、円筒状のケース58と、ケース58の先端に軸を一致させて固定された位置決めパイプ56と、ケース58の内部に保持されたレバー60およびスプリング62とを有している。
レバー60は、ケース58の内部において、前後方向(ワイヤ操作ハンドル52の軸方向)に移動可能に保持されている。レバー60の後端側の一部は、ケース58の中央部分に設けられた貫通窓59に現れており、操作者が指を掛けてレバー60を後端側に引けるようになっている。レバー60の後端にはスプリング62が取り付けられている。スプリング62は、レバー60が後方へ引かれることによって圧縮され、レバー60を引く力が解除されると、反発力によってレバー60を前方へ押し戻す。それにより、レバー60は元の位置(ホームポジション)へ戻る。
レバー60の後方への移動限界は、貫通窓59によって規定される。すなわち、レバー60の指が掛かる面60aが、貫通窓59の後端に一致する位置が、レバー60の移動限界である。なお、レバー60の後方に規制板を設け、レバー60の後端がその規制板に当たることにより、レバー60の後方への移動限界を規定するようにしてもよい。
一方、レバー60の前方には、規制板61が設けられており、レバー60のホームポジションを規定している。レバー60は、スプリング62に付勢されて前方へ移動し、規制板61に当たって停止してホームポジションに戻る。
このように、レバー60は、ホームポジションから後方への移動限界までの一定量だけを前後方向に移動できる。
なお、図23(A)では、スプリング62をコイルスプリングとして示しているが、スプリング62は、レバー60を前方へ付勢できればよく、板ばねやその他の弾性体等の付勢手段を用いても良い。
レバー60の先端には、クリップ12を牽引するための操作ワイヤ20の太径部84が固定されている。操作ワイヤ20の太径部84は、シース操作ハンドル54および位置決めパイプ56の内部を通過して、レバー60に到達している。
操作者が貫通窓59に指を挿入してレバー60を引くことで、レバー60が後方へ移動すると、レバー60の先端に取り付けられた操作ワイヤ20の太径部84も同様に移動して、操作ワイヤ20の先端が後方へ移動する。また、レバー60を引く力が解除されてレバー60が元の位置に戻ると、操作ワイヤ20も同様に移動して、その先端が元の位置に戻る。
なお、クリップ処置における操作ワイヤ20の牽引量は、例えば3.1mmなどの非常に小さい量なので、操作部50における確かな操作感覚を与えるために、操作ワイヤ20の牽引量とレバー60の操作量との間に、操作ワイヤ20の牽引量の変倍機構を設けて、レバー60の移動量を、操作ワイヤ20の移動量の所定倍としてもよい。
位置決めパイプ56は、中空のパイプ状の部材であり、その中を操作ワイヤ20の太径部84が通過する。また、位置決めパイプ56の内径はシース16の外径よりも大きく、位置決めパイプ56の内部にシース16を挿入可能である。図23(B)に示すように、位置決めパイプ56の上側表面には、軸線方向に所定の間隔L2で刻まれた複数のノッチ66が形成されている。ここで、L2は先頭のクリップ12がシース16の先端から突出し、連結リング14のスカート部38が開くまでの操作ワイヤ20の移動量であり、上記の実施形態(図12(C)参照)のL2と同じである。また、位置決めパイプ56の先端部は、シース操作ハンドル54の中に挿入され、その先端部に抜け止めリング64が取り付けられている。
図23(A)に示すように、抜け止めリング64の中心部には、シース16の外径よりわずかに大きい穴が形成されている。抜け止めリング64は、シース16を軸線方向に移動可能に保持する。
シース操作ハンドル54は、円筒状のケース68と、支持ブロック70と、シース保持リング72とを有する。
支持ブロック70は、シース操作ハンドル54の後端部分に配置されており、シース操作ハンドル54に挿入された位置決めパイプ56をスライド移動可能に支持する。また、支持ブロック70は、図23(B)に示すように、その先端側の面が、位置決めパイプ56の先端に取り付けられた抜け止めリング64に当接して、位置決めパイプ56がシース操作ハンドル54から外れるのを防止する。
シース保持リング72は、ケース68の先端に、シース操作ハンドル54の軸線上に設けられており、シース操作ハンドル54に挿入されたシース16の外周を固定的に保持する。したがって、シース操作ハンドル54が移動すると、シース16も共に移動する。
シース操作ハンドル54は、さらに、ケース68の外部に突出するボタン74と、ケース68の内部に設けられ、ボタン74の動きに連動する爪76を有している。爪76は、位置決めパイプ56に押し付ける方向に付勢されており、位置決めパイプ56のノッチ66に引っ掛かって、ワイヤ操作ハンドル52に対するシース操作ハンドル54の位置を決め、かつ、その移動を止める。
ボタン74が押されると、爪76が持ち上げられてノッチ66から乗り上げ、シース操作ハンドル54がワイヤ操作ハンドル52に対して移動可能となる。ボタン74から手を離してシース操作ハンドル54をワイヤ操作ハンドル52に対して移動させると、爪76が次のノッチ66に引っ掛かった時点で移動が止められる。したがって、シース操作ハンドル54およびシース16は、ノッチ66の間隔L2を1ストロークとして、その1ストロークの長さ単位L2で移動できる。このL2は、例えば15.5mmである。
シース操作ハンドル54の移動に伴ってシース16が移動すると、シース16の基端側端部は、抜け止めリング64の穴を進んで、位置決めパイプ56の内部に侵入する。
次に、図24(A)〜(E)ならびに図23(A)、(B)、図5および図13を参照して、本発明の連発式クリップ処置具の作用について説明する。図24(A)〜(E)は、本発明の連発式クリップ処置具のクリップ処置動作時における段階的な状態を示す部分断面図である。
まず、図24(A)に示すように、シース16にクリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eからなる5つの止血クリップ体(以下単にクリップ体という。)が装填された後、シース16が内視鏡の鉗子チャンネルに挿入される。図示例では、図24(A)に示すように、クリップ12Aの先端がシース16の先端にほぼ一致している。
先頭のクリップ12Aは、シース16の内壁によって閉じた状態に保持される。各連結リング14A〜14Eは、その締付部40がクリップ12A〜12Eの交差部26の近傍の初期位置に来るように嵌め込まれている。このとき、クリップ12B〜12Eの凸部30の上端が、それぞれ、連結リング14A〜14Dの直下に位置する。
シース16の先端が、生体内に挿入された内視鏡の挿入部の先端まで到達し、内視鏡先端から突出すると、図23(A)および(B)に示した操作部50において、シース操作ハンドル54の爪76が1番目のノッチ66から2番目のノッチ66へ長さL2だけ移動するように、シース操作ハンドル54が引かれる。シース操作ハンドル54にはシース16が固定されているので、シース操作ハンドル54の移動量L2と同じ量L2だけシース16が後退する。この操作により、操作ワイヤ20は移動せず、シース16のみが操作部50の側に引かれる。
このとき、図13に示すように、操作ワイヤ20の太径部84の範囲では、チューブ80の厚さにより、操作ワイヤ20とシース16との間隔が小さくなり、操作ワイヤ20の中心を、シース中心100にほぼ一致させることができるので、シース16の先端を、操作ワイヤ20に対して移動させたとき、操作ワイヤ20の先端およびその先端に接続された連結止血クリップ体(クリップ12(全クリップ12A〜12E)および連結リング14(全連結リング14A〜14E))に対しても、同じ移動量L2だけより正確に移動する(図24(A)参照)。
シース16が1番目のノッチ66と2番目のノッチ66の間隔に対応する所定量L2だけ引っ張られると、シース16の先端が、連結止血クリップ体に対して正確に移動量L2だけ移動し、先頭の連結リング14Aのスカート部38が開く位置まで下がり、シース16から突出したクリップ12Aの爪部22,22は付勢力によって広がって、図24(B)の状態となる。これにより、1発目のクリップ12Aが使用可能な状態となる。なお、図24(B)では、連結リング14Aのスカート部38は紙面垂直方向にあるため、図に表れていない。
クリップ12Aとクリップ12Bの結合部は、連結リング14Aのスカート部38の直下に位置しているため、図24(B)の状態のとき、クリップ12Bの先端が、シース16の先端にほぼ一致している。
シース16を引くとき、シース16と、シース16に嵌入されている連結リング14A〜14Eとの間に摩擦力が働く。しかし、連結リング14A〜14Eとクリップ12A〜12Eとの間には、閉じたスカート部38の内側部分によるクリップ12の押圧力、および、後ろ側のクリップ12の爪部22が開こうとするバネ力による連結リング14(その第2領域34、図4参照。)の内壁面への押圧力が働いている。さらに、クリップ12B〜12Eの凸部30が連結リング14A〜14Dの基端に当接し、連結リング14の穴43(図4参照)には進入できない。そのため、シース16を引いても連結リング14A〜14Eは不要に移動することがない。したがって、連結リング14A〜14Eは、それぞれ、クリップ12A〜12Eを保持した状態を維持することができる。
次に、図24(B)の状態のクリップ処置具10を移動させて、拡開したクリップ12Aの爪部22,22をクリップ処置したい部位に押し付けて、操作部50(図23参照)のレバー60を引くことにより、操作ワイヤ20を所定量引っ張る。操作ワイヤ20を引くことで、ダミークリップ18から順に係合している全クリップ12A〜12Eが、一様に引っ張られる。この場合にも、操作ワイヤ20の太径部84は、シース16との間隔が小さくなることでシース16の略中心に保持されているので、レバー60の牽引量は、シース16の基端においても、その先端においても、正確に操作ワイヤ20の牽引量として伝達され、操作ワイヤ20の先端に接続された連結止血クリップ体を同じ牽引量だけより正確に引っ張ることができる(図13参照)。
このとき、図24(B)および(C)の状態では、シース16の先端に出た連結リング14Aは、スカート部38が開いており、スカート部38によるクリップ12Aの押圧保持は解除されている。また、連結リング14Aは、スカート部38がシース16先端で開いていることにより、シース16内への後退が阻止されている。そのため、図24(C)に示すように、先頭のクリップ12Aは連結リング14Aに対して後退する。連結リング14Aの先端、すなわち締付部40が、クリップ12Aの凸部30の直下まで正確に押し込まれることにより、連結リング14Aによるクリップ12Aの締め付けが確実に完了する。
それと同時に、クリップ12Aと次のクリップ12Bとの係合部が連結リング14Aの後端から抜け出る。クリップ12Aとクリップ12Bの係合部が連結リング14Aから外れると、クリップ12Bのバネ力によって腕部28がシース16の内壁に当たるまで拡開し、爪部22,22の間がクリップ12Aのターン部24の幅よりも広く開いて、クリップ12Aとクリップ12Bとの連結が解除される。それにより、クリップ12Aおよび連結リング14Aは、シース16から離脱可能となり、クリップ12Aおよび連結リング14Aによるクリップ処置が完了する。
一方、後続のクリップ12B〜12Eは、スカート部38が閉じた連結リング14B〜14Eによって、連結リング14B〜14Eに対して回転方向および進退方向に移動しないように保持されている。さらに、クリップ12B〜12Eに係合するクリップ12C〜12Eの爪部22およびダミークリップ18の爪部の広がろうとする力(付勢力)によって、爪部22が連結リング14B〜14Eの第2領域34の内壁に押し付けられており、クリップ12B〜12Eと連結リング14B〜14Eとの間の摩擦力が高まっている。そのため、連結リング14B〜14Eは、クリップ14B〜14Eの移動とともに移動する。
すなわち、先頭クリップ12Aおよびそれを保持する連結リング14A以外のクリップ12B〜12Eと連結リング14B〜14Eとは、シース16に対して一体的に進退移動し、クリップ14B〜14Eおよびダミークリップ18の連結状態は、連結リング14B〜14Eによって維持される。
操作ワイヤ20は、シース16に対して初期状態から正確に一定量引けるように構成されている。この一定量とは、連結リング14の第2領域34の領域長さに等しいか、それよりもわずかに大きい量であると同時に、クリップ12の凸部30の下端からそのクリップ12を保持している連結リング14の先端までの長さと等しいか、それよりもわずかに小さい量である。この一定量は、図23(A)の操作部50において、レバー60のホームポジションから後方への移動限界までの長さによって定められる。
操作ワイヤ20(太径部84)は、操作部50のレバー60を付勢するスプリング62により、一定量引いた後、すぐにその一定量だけ戻るようになっている。図24(B)の状態から図24(C)の状態まで引っ張った操作ワイヤ20は、操作部50においてレバー60の引っ張り力を解放すると、レバー60が元の位置に戻り、それにより、操作ワイヤ20が元の位置に戻って、図24(D)の状態となる。すなわち、2発目のクリップ12Bの先端は、図24(B)のときと同様の、シース16の先端にほぼ一致する位置に戻る。
次に、2発目のクリップ12Bを使用可能な状態とするために、シース16が所定の1ストローク分、すなわち所定移動長さL2だけ引っ張られる。図23(A)の操作部50において、シース操作ハンドル54が、2番目のノッチ66から3番目のノッチ66へ長さL2だけ動かされる。それにより、シース16の先端が、次の連結リング14Bのスカート部38が開く位置まで下がり、シース16から突出したクリップ12Bの爪部22,22は広がって、図24(E)の状態となる。
シース16を引く1ストローク分の長さL2は、シース16に装填された前後2つのクリップ12の先端の距離、すなわち、シース16におけるクリップ12の装填間隔にほぼ等しい。また、シース16を引く1ストローク分の長さL2は、操作部50のノッチ66間の長さで定められる。
その後、上述のクリップ12Aのときと同様に、クリップ処置したい部位にクリップ12Bの爪部を押し付けて、操作ワイヤ20を所定量引っ張る。これにより、連結リング14Bによるクリップ12Bの締め付けが正確かつ確実に完了すると同時に、クリップ12Bとクリップ12Cとの連結が解除され、クリップ12Bによるクリップ処置が完了する。
この後、本発明のクリップ処置具10では、同様にして、クリップ12C、12Dおよび12Eによるクリップ処置をそれぞれ順次正確に行うことができる。
なお、上記の各例ではクリップ12を90度ずつ向きを変えて連結するものとしているが、本発明はこれには限定されない。例えば、爪部22,22とターン部24との間の部分で90度だけ捻った形状のクリップを使用し、連続するクリップを同じ向きで連結するようにしてもよい。
また、ターン部を有するクローズクリップを用いることで、ターン部を押圧して腕部に拡開するバネ力(付勢力)を与えることができる点で好ましいが、本発明は、ターン部を有さないオープンクリップ(U字状のクリップ)を用いるものに適用することもできる。
以上、本発明の連発式クリップ処置具について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。また、本発明の連発式クリップ処置具は、軟性鏡のほか、硬性鏡にも用いることができる。