JP5152856B2 - ポリマー成形体の同一ポリマーによる表面改質方法及び該方法により改質されたポリマー成形体 - Google Patents

ポリマー成形体の同一ポリマーによる表面改質方法及び該方法により改質されたポリマー成形体 Download PDF

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本発明は、ポリマー成形体の表面改質方法及び表面が改質されたポリマー成形体に関するものであり、特に、ポリマー成形体の表面に微細な凹凸を形成する方法及び微細な凹凸表面が形成されたポリマー成形体に関する。
ポリオレフィン系ポリマー、特に、結晶性ポリプロピレン等の結晶性ポリマーは、その耐熱性、軽量性、機械的強度、成型加工の容易さ、耐薬品性などが優れているために、種々の用途に用いられている。しかしながら、これらの諸特性、とりわけ、耐薬品性に優れ、化学的に極めて安定であるという特性は、逆の見方をすれば、ポリマー成形体の表面加工が極めて困難で、表面への塗装、印刷、他の物体との接着、若しくは、表面における他の物体の物理的吸着や取り込み、化学的な反応が極めて困難であることを意味している。結晶性ポリオレフィン成形体の上記のような優れた諸特性を保持しつつ、表面加工性を向上させることが出来れば、工業利用の点から、大いなる利点が期待される。
そこで、安定な結晶性ポリオレフィン等のポリマー成形体においては、その表面に所望の化学的及び/又は物理的性質を付与するために、ポリマーの表面を処理して活性化する技術が、既に数多く提案されている。
例えば、ポリプロピレン成形体をオゾン気流下で処理するか、又はオゾン水溶液に接触させることにより、その表面が酸化されて親水性基が導入され、改質される(特許文献1、2参照)。
この他、樹脂表面を直接酸化させることにより極性基を生成させる方法には、火炎処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子照射等の処理の他、薬品による処理等が挙げられ、これらの処理により成形体表面には、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等が生成することが知られている(特許文献3参照)。
また、ポリプロピレン成形体の表面を改質する方法として、極性を有する化合物やポリマーを導入する方法も提案されており、極性を有する化学構造とポリプロピレンと親和性のある化学構造とを有する化合物やポリマーを、ポリプロピレン成形体表面に塗布するプライマー処理などがこの例である。
さらに、極性を有する化学構造を表面に導入する方法としては、表面にラジカルを生成させ、そこに極性基を有するモノマーを結合させることにより、極正ポリマーをグラフトする方法も知られており、表面にラジカルを生成する方法として、プラズマ処理や電子線照射を用いたり、或いは、重合開始剤を表面に導入して光や熱によりラジカルを発生する方法等が用いられる。(特許文献4参照)。
しかしながら、これら、既存の表面改質方法は、何れも、文字通り表面を物理的、化学的に改質して、耐薬品性に優れ、化学的に安定な表面の物性そのものを、反応性に富んだ不安定な物性に変化させてしまうものである。成形体本体と同様、本来有する諸特性を基本的に変化させること無く、且つ、必要な表面活性を向上させる表面改質法の開発が必要とされている。
更に、このような表面改質の必要性は、結晶性ポリオレフィン成形体のみに限られない。例えば、生物由来の典型的な結晶性ポリマー(グルカン)であるセルロースは、その機械的強度、物理的、化学的安定性、耐薬品性、に加えて、ポリオレフィン等の合成ポリマーには無い微生物分解性を有することから、合成ポリマーの開発以前から今日に至るまで広く用いられている。しかしながらセルロースの生分解速度は一般に極めて遅く、また、セルロースからなる繊維やフィルム等の成形体表面の物理的、化学的安定性、耐薬品性のために、表面における他の物体の物理的吸着や取り込み等、期待されるその優れた性質が十分に生かされているとは言い難い。
セルロースの生分解性を向上させるため、ナノ構造化し、直径20〜50nmの結晶性セルロースからなり、数百nm程度の孔径を有する多孔質体とすることが報告されており(非特許文献1参照)、これによって、表面における他の物体の物理的吸着や取り込み等、表面物性そのものも、大きく変化することが期待される。
しかしながら、この方法は、セルロースそのものを細い繊維にしてしまうのであるから、成形体表面の改質とは異なる。セルロース等、生物由来の結晶性ポリマーにおいても、成形体本体の形状と諸特性を保ちつつ、成形体本体と同様、本来有する諸特性を基本的に変化させること無く、且つ、必要な表面活性を向上させる表面改質法の開発が必要とされている。
特開平3−103448号公報 特開平8−3351号公報 特開2005−154523号公報 特開2008−115305号公報 出口等、「ナノ構造材料を利用した有用生物資源の探索」、第60回コロイドおよび界面化学討論会、第2回日豪シンポジウム講演要旨集、第235頁(2007年9月3日発行)
上述のように、従来の改質方法は、いずれも本来安定である結晶性ポリマーの表面に活性な官能基を導入することによって活性状態にするものである。
したがって、そのために、表面が改質されると同時に、ポリマーが本来有する化学的、機械的安定性、耐薬品性、その他の表面特性がうしなわれてしまうが、例えば吸着剤として用いる際には、また、表面への塗装、印刷、他の物体との接着を行う際にも、当該ポリマーの化学的、機械的安定性などの諸特性が失われることなく、しかも、他の物質との表面反応性が高まるように表面改質が行われることが最も望ましい。
また、従来の改質方法は、いずれも重合開始剤、アンモニアガス、その他の活性な化学物質、或いは場合によっては有毒な化学物質を用いるものであり、これらのものから、排ガス、廃液、反応副産物などが排出されるために、その排出物の処理を必要とする。
さらには、従来のオゾン処理、火炎処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子照射等を用いる処理方法においては、大掛かりの装置が必要である。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、ポリマーが有する本来の特性を損なわず、しかも有害な化学薬品や大がかりな装置を用いることなく、ポリマー成形体の表面の活性を向上できるような、ポリマー表面の改質方法を提供することを目的とするものである。
発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、結晶性ポリマーが溶媒に溶解する温度よりも、溶解したポリマーが結晶として析出する温度の方が遙かに低いという、よく知られた現象、すなわち、過冷却現象を応用し、ポリマー成形体の表面に同一ポリマーを析出させることにより、ポリマー成形体の表面改質をすることができるという知見を得た。
上記課題を解決するための本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
オレフィン系ポリマーを加熱した溶媒中に溶解してポリマー溶液とした後、溶解したポリマーは析出せず、且つ、同一ポリマーよりなるポリマー成形体は溶解されない温度に保持された該溶液中に前記ポリマー成形体を浸漬し、その後該溶液の温度を下げることにより、オレフィン系ポリマー成形体の表面に、溶解していたポリマーを析出させることを特徴とするオレフィン系ポリマー表面改質方法。
]前記ポリマー溶液は、溶質がポリプロピレンであり、溶媒がデカヒドロナフタレンであることを特徴とする[]のオレフィン系ポリマー表面改質方法。
][]又は[方法により表面が改質されたオレフィン系ポリマー成形体。
本発明の表面改質方法によれば、ポリマーは有している物性そのものは何ら変化せず、表面に微細な凹凸のみが付与されるので、耐薬品性、光や熱に対する安定性、機械的強度等の本来有する特性はそのまま保つことができる。しかも、表面に形成された微細な凹凸によって表面反応性が高まるので、例えば吸着剤として用いる際にも、また、表面への塗装、印刷、他の物体との接着を行う際にも、既存の方法で表面改質したものと同等或いはそれ以上の効果が期待できる。
本発明について更に詳細に説明する。
本発明のポリマー改質方法は、ポリマー成形体の表面に、該ポリマーと同一のポリマーを析出させることにより、該表面にポリマーの結晶からなる微細な凹凸を形成することを特徴とする。
本発明において、ポリマー成形体の表面に同一ポリマーの微細な結晶を析出させる方法として、結晶が溶媒に溶解する温度よりも、溶解したものが結晶として析出する温度のほうが遙かに低温であるという、いわゆる過冷却現象を利用する。
すなわち、ポリマーを加熱した溶媒に溶解してポリマー溶液を製造し、次に、このポリマー溶液を、ポリマーを溶解させた温度よりも遙かに低温まで冷却しても、溶解したポリマーが析出しないという現象を利用して、ポリマー成形体の表面に、ポリマーの微細な結晶を析出させるものである。
具体的には、ポリマーを、該ポリマーが溶解する温度以上に加熱した溶媒中で完全に溶解させる。次に、このポリマー溶液の温度を、前記のポリマーが溶解する温度以下で、かつ、まだポリマーが完全に溶解している温度まで下げ、これにポリマー成形体を浸漬する。浸漬されたポリマー成形体は、この温度では溶媒に全く溶解しない。その後、ポリマー成形体を浸漬したポリマー溶液の温度を室温まで下げることによって、溶液中に溶解していたポリマーは、液中に微細な結晶として析出せずに、浸漬したポリマー成形体の表面に、微細な結晶として析出する。
本発明の処理により、ポリマー成形体の表面は、ポリマー成形体の表面に付着、析出させる同一ポリマー微結晶の量に応じて、肉眼ではほとんど確認できないがSEM画像などでその表面に微細な凹凸が形成され明らかな表面改質効果が発現される段階から、肉眼でも明らかに付着が確認でき、且つ、比表面積は、数10〜数100m程度に増大していることが測定できる段階まで、必要に応じて、様々なレベルで、ポリマー成形体の表面を改質することができる。
更に、本発明において用いられるポリマー成形体表面への同一ポリマーの析出は、1回に限られない。同様な手順を繰り返すことによって、最初にポリマー成形体表面に同一ポリマーの微結晶を析出させた後、このようにして表面改質されたポリマー成形体表面に、更に多量の同一ポリマーを析出させることによって、より顕著な、効果的な表面改質を行うことも可能となる。
また、最初のポリマーの完全溶解後に、ポリマー成形体をこの溶液に浸漬する温度を、十分に高温でポリマー成形体の表面が溶媒によって幾分侵食される温度から、十分に低温でしかも最初に溶解したポリマーは未だ析出しないぎりぎりの温度まで、様々に変化させることによって、成形体表面に付着させる析出微結晶の量、改質即ち付着の程度、付着するポリマーの微小構造を制御することができる。
ポリマーを溶解させる溶媒として有機溶媒を用いた場合には、微細な結晶が析出した後、ポリマー成形体を、ポリマー溶液から取り出し、その表面を、ポリマーを溶解しないが、前記ポリマーの溶媒と相溶性があり、且つ沸点が前記のポリマーの溶媒の沸点よりも充分低い溶媒を用いて洗浄し、乾燥させる。
このとき、ポリマー成形体の洗浄時に混合した両溶媒は、それらの沸点の差により、容易に蒸留によって分離され、それぞれ再利用される。
また、洗浄に用い、最後にポリマーに付着している、沸点の低い洗浄溶媒は、真空トラップにより回収し、再利用することができる。
一方、ポリマーを溶解するのに用いた溶媒は、濾過して、再利用することができる。なぜなら、ポリマー成形体を取り出した後の溶媒には、ポリマーは事実上少しも溶解、残存しておらず、他に何も混入するものを使用していない。
このように、本発明の方法によれば、使用する溶媒はすべて再利用することができるばかりでなく、本発明の方法に必要な装置は、基本的に、加熱溶解槽、洗浄装置、及び乾燥装置の組み合わせのみで構成される。
本発明において用いられるポリマーは、前述の過冷却現象を利用できるポリマー、すなわち、加熱することにより溶媒に溶解するポリマーであれば、特に限定されず、改質されたポリマー成形体の用途により、選択することができ、特に、高温にしたときにはじめて溶解することができる溶媒が知られているものが用いられる。
例えば、改質されたポリマー成形体を有機溶剤や油脂等の吸着材として用いる場合であれば、ポリマー成形体に用いるポリマーは、その表面がアルキル基で構成されているポリマーが好ましく、例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー等が挙げられる。
また、改質されたポリマー成形体を、野菜くず、でんぷん等の親水性有機物の廃棄処理、回収に用いることを考慮すると、ポリマー成形体に用いるポリマーは、その表面が水酸基等を多く含む多糖で構成されているポリマーが好ましく、例えば、セルロース系のポリマー等を用いることが好ましい。
また、表面改質により接着性能の向上、印刷、塗装等を行う場合には、夫々の目的に応じたポリマー成形体を用いることが出来る。
本発明において用いる溶媒は、常温ではポリマーを溶解しないが、加熱した状態ではポリマーを溶解することができるものであれば、いずれのものも用いることができるが、たとえば、ポリマーとして、結晶性ポリプロピレンを用いる場合であれば、150〜200℃で、完全にポリプロピレンを溶解することができる、デカヒドロナフタレンが好ましく用いられる。この加温したデカヒドロナフタレンにポリプロピレンを溶解した後、60℃まで温度を下げても、ポリプロピレンは完全に溶解している。
また、本発明において用いられるポリマー成形体の形状は、特に限定されず、改質されたポリマー成形体の用途により、フィルム状、繊維状、網目状、或いは円筒状、若しくは各種3次元構造の成形体等の様々な形状が用いられる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、結晶性ポリマーとして、高純度結晶性ポリプロピレンより構成される市販の荷作り用の紐を用い、溶媒としてデカヒドロナフタレンを用いた。
最初に、厚さ5μmの結晶性ポリプロピレン膜である市販の荷作り用の紐を、重量比で500倍量のデカヒドロナフタレンの入ったガラス容器中に入れ、200℃に加熱することにより完全に溶解した。
次に、この溶液を80℃まで下げ、この状態ではポリプロピレンが完全に溶解していることを確認した後、これに、上記と同一の結晶性ポリプロピレンである市販の荷作り用の紐を、重量比で、溶解したポリプロピレンの10倍量浸漬した。このとき、後から浸漬した結晶性ポリプロレンにも何ら変化がなかった。
その後更に温度を室温まで低下させると、溶解していたポリプロピレンは全て、後から加えたポリプロピレンの表面に結晶となって析出、付着した。即ち、後から加えた結晶性ポリプロピレン紐(ポリマー成形体)は、最初に溶解した結晶性ポリプロピレンが微細な結晶となって表面に析出することによって、表面改質されたことになる。
このようにして表面改質されたポリプロピレン紐を、ガラス容器より取り出し、ヘキサンで洗浄し、真空乾燥させた。このときポリプロピレンに付着、残存したヘキサンは、真空トラップによって回収した。また、ヘキサン洗浄により混合したデカヒドロナフタレンとヘキサンは蒸留により分離した。また、ガラス容器中に残ったデカヒドロナフタレンは、そのまま次の反応に使用した。このとき、ガラス容器中に残ったデカヒドロナフタレン中には、事実上ポリプロピレンは溶解していないこと、更に、最初に溶解していたポリプロピレンは、後から加えたポリプロピレン紐に付着した以外には、(微粉状、繊維状などとなって)析出してはいないこと、即ち、溶解していたポリプロピレンは、事実上全て、後から加えたポリプロピレン紐に付着したことを確認した。
このようにして得られたポリプロピレン紐を、日立株式会社製の走査電子顕微鏡(S-4300)を用いて観察した結果、肉眼および低倍率では、改質前のポリプロピレン紐と何等変化が無いように見えるにも関わらず、表面に微細な結晶が析出し、表面改質されていることを確認した。
図1は、実施例1により表面改質することにより得られたポリプロピレン紐の表面のSEM写真であり、左図が倍率60倍の写真、右図が倍率10,000倍の写真である。
右図の写真に示すように、微細な凹凸構造を持ったポリプロピレン紐が得られていることがわかる。しかしながら左図の写真に示すように、得られたポリプロピレン紐は、巨視的には元の膜と何ら変わらないことを示している。
また、得られたポリプロピレン紐を、Quantachrome Corporation製の比表面積測定装置(Autosorb-1)を用いて測定した結果、表面改質前の、通常の得られたポリプロピレン紐と変わらない程度の小さな値(1m/g以下)を示した。
(実施例2)
実施例1と同様に、結晶性ポリマーとして、高純度結晶性ポリプロピレンより構成される市販の荷作り用の紐を用い、溶媒としてデカヒドロナフタレンを用いた。
最初に、厚さ5μmの結晶性ポリプロピレン膜である市販の荷作り用の紐を、重量比で500倍量のデカヒドロナフタレンの入ったガラス容器中に入れ、200℃に加熱することにより完全に溶解した。
次に、この溶液を130℃まで下げ、この状態ではポリプロピレンが完全に溶解していることを確認した後、これに、上記と同一の結晶性ポリプロピレンである市販の荷作り用の紐を、重量比で、溶解したポリプロピレンの10倍量浸漬した。このとき、後から浸漬した結晶性ポリプロレンにも何ら変化がなかった。
その後更に温度を室温まで徐々に低下させると、溶解していたポリプロピレンの大半は、後から加えたポリプロピレンの表面に結晶となって析出、付着した。即ち、後から加えた結晶性ポリプロピレン紐(ポリマー成形体)は、最初に溶解した結晶性ポリプロピレンが微細な結晶となって表面に析出することによって、表面改質されたことになる。このとき、溶解していたポリプロピレンの一部は、微細な微粉状結晶となって、液中に、別個に析出した。
このようにして表面改質されたポリプロピレン紐を、ガラス容器より取り出し、ヘキサンで洗浄し、同時に、付着した微粉状結晶を洗浄分別した後、真空乾燥させた。このときポリプロピレンに付着、残存したヘキサンは、真空トラップによって回収した。また、ヘキサン洗浄により混合したデカヒドロナフタレンとヘキサンは蒸留により分離した。また、ガラス容器中に残ったデカヒドロナフタレンは、微粉状結晶をろ過、分別した後そのまま次の反応に使用した。このとき、デカヒドロナフタレン中には、事実上ポリプロピレンは溶解していないこと、更に、最初に溶解していたポリプロピレンのうち、後から加えたポリプロピレン紐に付着した以外の、微粉状に析出した分については、全て回収し、次のポリプロピレン原料として用いた。
得られたポリプロピレン紐は、肉眼および低倍率のSEM観察においても、改質前のポリプロピレン紐と比べて表面状態は変化していたが、機械的強度は変わらなかった。更に、表面には寄り凹凸の大きな微細な結晶が析出し、表面改質されていることを走査電子顕微鏡(SEM)像の観察によって確認した。
図2は、実施例2により表面改質することにより得られたポリプロピレン紐の表面のSEM写真であり、左図が倍率100倍の写真、右図が倍率10,000倍の写真である。
右図の写真に示すように、微細な凹凸構造を持ったポリプロピレン紐が得られていることがわかる。左図の写真に示すように、得られたポリプロピレン紐は、実施例1の場合と異なり、元のポリプロピレン紐の巨視的な構造、機械的な物性等を保ちつつ、外見的にも、改質された様子が見て取れることを示している。
また、得られたポリプロピレン紐を、Quantachrome Corporation製の比表面積測定装置(Autosorb-1)を用いて測定した結果、比表面積は、107m/gと、極めて大きくなっていることを確認した。
(実施例3)
デカヒドロナフタレンに溶解するポリプロピレンの量を4倍にしただけで、他は実施例1と同様にして、ポリマーの完全溶解液を作った。この溶液を80℃に保ったまま、別途実施例1と全く同様の手順、温度、濃度で作ることによって既に表面改質されている結晶性ポリプロピレン紐を、この溶液中に浸漬し、更に、温度が変化しないように徐々にデカヒドロナフタレン溶媒を加えて、溶媒量を全体で1000となるようにした。その後室温まで温度を低下させることによって、溶液中のポリプロピレンの大半を、既に表面改質の施されているポリプロピレン紐の表面に析出、付着させた。この操作によって、10の重量のポリプロピレン紐の表面には、あわせておよそ5に近い重量に相当するポリプロピレン微結晶が付着し、改質を行ったことになる。出来たポリプロピレン紐の洗浄、乾燥、少量析出した微粉状結晶や、溶媒等の処理、再利用は、実施例2と同様である。
このようにして得られたポリプロピレン紐は、実施例1と比べて表面に付着した微結晶の量が大きく異なるにも拘らず、肉眼および低倍率のSEM観察においては、改質前のポリプロピレン紐と比べて僅かに変化していることがわかる程度であった。機械的強度は変わらず、表面にはより凹凸の大きな微細な結晶が重層して析出し、表面改質されていることが、走査電子顕微鏡(SEM)像の観察によって明らかとなった。
図3は、実施例3により表面改質することにより得られたポリプロピレン紐の表面のSEM写真であり、左図が倍率60倍の写真で、右図が倍率10,000倍の写真である。
右図の写真に示すように、更に凹凸の顕著な、微細な構造を持ったポリプロピレン紐が得られていることがわかる。左図の写真に示すように、得られたポリプロピレン紐は、実施例1の場合よりは若干変化がわかる外見を呈している。
また、得られたポリプロピレン紐の比表面積を同様に測定した結果、19m/gと、実施例1よりは大きく、実施例2よりは小さな値を示した。
以上詳述したように、本発明によって、ポリマー成形体の表面に、該ポリマーと同一のポリマーを析出させることにより、該表面にポリマーの結晶からなる微細な凹凸を形成することが可能となった。このようにして表面改質されたポリマーは、各種有機物の吸着剤として、また、表面への塗装、印刷、他の物体との接着等が容易な材料としての利用が可能となる。
実施例1で得られたポリプロピレン紐の表面のSEM写真 実施例2で得られたポリプロピレン紐の表面のSEM写真 実施例3で得られたポリプロピレン紐の表面のSEM写真

Claims (3)

  1. オレフィン系ポリマーを加熱した溶媒中に溶解してポリマー溶液とした後、溶解したポリマーは析出せず、且つ、同一ポリマーよりなるポリマー成形体は溶解されない温度に保持された該溶液中に前記ポリマー成形体を浸漬し、その後該溶液の温度を下げることにより、オレフィン系ポリマー成形体の表面に、溶解していたポリマーを析出させることを特徴とするオレフィン系ポリマー表面改質方法。
  2. 前記ポリマー溶液は、溶質がポリプロピレンであり、溶媒がデカヒドロナフタレンであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン系ポリマー表面改質方法。
  3. 請求項1又は2に記載された方法により表面が改質されたオレフィン系ポリマー成形体。
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