JP5145660B2 - 光配向膜用組成物、光配向膜の製造方法、及びこれを用いた光学異方体、光学素子、その製造方法 - Google Patents
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Description
また最近では、液晶セルと偏光板との間に使用する光学異方体の一種である光学補償シート(位相差板)として、重合性液晶材料を配向させた状態で硬化させて得た光学異方体の需要が伸びており、これにも液晶配向膜が使用される。
また、光学補償シート(位相差板)は、広波長帯域化や視野角安定性を高精度化させる目的で使用する場合も多く、その場合は、例えば1/4波長板と1/2波長板との積層体、あるいは、A−PlateとC−Plateとの積層体が使用される。しかし、該積層体を製造する方法、即ち液晶配向膜層を作成後、重合性液晶層を硬化させる工程を繰り返す場合、重合性液晶層をラビングで作成したのでは、装置が非常に大がかりとなり、連続的に作成することができない。従って、液晶配向膜、及び液晶層の全ての積層工程を連続的に行うことができるような、液晶配向膜を得る方法が求められている。
このような光配向膜となり得るものとしてはアゾベンゼン誘導体のように光異性化反応をする二色性化合物、シンナメート、クマリン、カルコン等の光二量化反応を生じる部位を有する化合物やポリイミドなど異方的な光分解を生じる化合物がある(非特許文献1)。この中で、今最も配向性のよい光配向材料はアゾベンゼン誘導体のように光異性化反応をする二色性化合物であり、数々の研究がなされている。(なおここでいう感度とは、十分な配向規制力が得られるのに必要な照射エネルギーが小さいことを意味する。)
本発明者らは、二色性化合物にエポキシ化合物を添加し、硬化させた光配向膜が、接着剤として最も汎用に使用されているエポキシ系接着剤にも侵されない光配向膜であることを見いだし、該光配向膜を使用することで、接着剤等の部材に侵されることのない液晶セルを得ることができ、また、該光配向膜を使用することで、塗布法により異なる異方性を有する複数の光学異方体を重ね合わせた積層体を作成する際にも、希釈溶剤等に侵されることなく、配向の乱れのない光学異方体を得ることができることを見いだし、上記課題を解決した。
該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と、
重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させる工程3をこの順に行う、前記記載の光学異方体の製造方法であって、
前記工程1の後から前記工程3の後までの間に、エポキシ化合物を硬化させる工程を有する光学異方体の製造方法を提供する。
該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と、
重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させる光学異方体を得る工程3と、
前記光学異方体を設置した光学素子を得る工程4とをこの順に行う、前記記載の光学素子の製造方法であって、
前記工程1の後から前記工程4の間に、エポキシ化合物を硬化させる工程を有する光学素子の製造方法を提供する。
(二色性化合物)
本発明で用いる二色性化合物としては、1分子中に少なくとも1個の光異性化反応により液晶配向機能を発現する光配向性基(以下、光配向性基と略す)を有する化合物が好ましい。特に分子の発色団による光吸収スペクトルが直線偏光の偏波面の方向によって異なる性質(以下、二色性と称す)を示すアゾベンゼン骨格、アントラキノン骨格、キノフタロン骨格、ペリレン骨格を有する化合物が好ましく、アゾベンゼン骨格、又はアントラキノン骨格を有する化合物は、偏光照射により良好な光配向性を示す点で特に好ましく、アゾベンゼン骨格を有する化合物(以下、アゾ化合物と略す)が光に対する感度が最も高いので最も好ましい。
重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、マレイミド基、アジド基、クロロメチル基、エポキシ基、などが挙げられ、重合性基を有する誘導体としてケイ皮酸誘導体、チミン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、光重合や熱重合が比較的容易なことから、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、マレイミド基、又は(メタ)アクリルアミド基がより好ましい。また、これらの重合性基は、アルキレン基及び/又はフェニレン基の如き連結基を介して、アゾベンゼン誘導体と結合していてもよく、該連結基は、エステル結合、エーテル結合、イミド結合又はアミド結合を有していてもよい。
光配向性基を有する化合物が重合性基を有する場合は、光配向後、冷却工程を経て、配向性を上昇させた後、その配向状態を重合性基を用いて重合を行い配向を固定化することが好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子や塩素原子が挙げられる。ハロゲン化メチル基としては、トリクロロメチル基やトリフルオロメチル基が挙げられる。ハロゲン化メトキシ基としては、クロロメトキシ基やトリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
R7の炭素原子数1〜6の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルエチル基等が挙げられる。R7で表される炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6の低級アルキル気としては、メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
R8、及び、R9で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1−メチルエチル基等が挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン原子、カルボキシル基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシメチル基、カルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、シアノ基が好ましく、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、またはトリフルオロメチル基は良好な配向性が得られる点で特に好ましい。
本発明で使用するエポキシ化合物は、具体的には少なくとも2つ以上の反応性エポキシ基を有している化合物が好ましい。具体的には、例えば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたは水添ビスフェノールA、等の脂肪族ポリオールのジグリシジルエーテル化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド、ナフトールフェニルアルデヒド樹脂、メチレンビスアニリン、ジヒドロキシナフタレン、ナフトールダイマー、テトラメチルビフェノール、レゾルシン、ヒドロキノン、カテコール等の芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラエチレングリコール、等のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル化合物、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル化合物、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸もしくはトリメリット酸、等の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル化合物、ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネンもしくはビニルシクロヘキセン、等の炭化水素系ジエンのビスエポキシド化合物、ビス(3,4ーエポキシシクロヘキシルメチル)アジペートもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、等の脂環族ポリエポキシ化合物などが挙げられる。これらのエポキシ化合物は1種類で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ化合物は、分子量、その他の物性にも特に制限はないが、配合が容易であることから、通常分子量100〜3000程度のものを使用する。
硬化剤の例として、アミン系化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類や、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンどの脂環族ポリアミン類等、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂などが挙げられる。また、酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。また、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物などが挙げられる。これらのアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物等の硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
本発明で使用する光配向膜用組成物は、塗布性を良好にする目的で、通常溶媒を使用する。溶媒に使用する溶剤としては、特に限定はないが、前記化合物が良好な溶解性を示す溶媒が使用する。例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のジオール系溶剤、テトラヒドロフラン、2−メトキシエターノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテル系溶剤、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、公知慣用の添加剤を添加してもよい。
通常、固形分比が0.2質量%以上となるように調製する。中でも0.5〜10質量%となるように調製することが好ましい。
本発明で使用する光配向膜用組成物を均一に塗布し、膜厚の均一な光配向膜を得るために、汎用の添加剤を使用することもできる。例えば、レベリング剤、チキソ剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、表面処理剤、等の添加剤を液晶の配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
本発明の光配向膜用組成物を使用して光配向膜を得るには、該光配向膜用組成物を基板上に塗布乾燥した後に、紫外線、あるいは、可視光線等の異方性を有する光を照射し、光配向性を有する化合物を配向させる。その後、エポキシ化合物を硬化させることで、光配向膜を得ることができる。これにより、液晶表示セル等のシール部材に使用している原料、例えば硬化性化合物(エポキシ系接着剤であればエポキシ化合物、アクリル系接着剤であればアクリレート等)や、希釈目的で使用する有機溶剤等に侵されなくなるので、表示部分の配向が一様な液晶表示セルを得ることができる。
場合によっては、光学異方体を数層にわたり積層することもできる。その場合は前記工程を複数繰り返せばよく、光学異方体の積層体を形成することができる。
あるいは、本発明の光配向膜用組成物を使用して光学素子を得るには、前記記載の光配向膜用組成物を基板上に塗布する工程1と、該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と、重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させる光学異方体を得る工程3と、前記光学異方体を設置した光学素子を得る工程4とをこの順に行う。エポキシ化合物を硬化させる工程は、前記工程1の後から前記工程4の間にいれればよく、エポキシ化合物の硬化を加熱で行う場合は、該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と重合性液晶組成物を塗布する工程との間に入れる方法が光配向膜の配向規制力を保持しつつ、エポキシ化合物の硬化により光配向膜の耐溶剤性が向上する理由から好ましい。
本発明で使用する基板は、液晶表示素子や光学異方体に通常使用する基板であって、光配向膜用組成物溶液の塗布後の乾燥時、あるいは液晶素子製造時における加熱に耐えうる耐熱性を有する材料であれば、特に制限はない。そのような基板としては、ガラス基板、セラミックス基板や高分子材料基板、等が挙げられる。高分子材料基板としては、セルロース誘導体、ポリシクロオレフィン誘導体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ナイロン、ポリスチレン等を使用することができる。
塗布法としては、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、ディッピング等、公知慣用の方法を行うことができる。
通常は、有機溶剤で希釈した溶液を塗布するので、塗布後は乾燥させ、光配向膜用塗膜を得る。
前記方法により得た光配向膜用塗膜に、異方性を有する光を照射して液晶配向機能を付与(以下、光異性化工程と略す)して、光異性化した光配向膜用塗膜を作成する。光異性化工程で使用する、異方性を有する光としては、直線偏光や楕円偏光等の偏光、もしくは基板面に対して斜めの方向から非偏光があげられる。偏光は直線偏光、楕円偏光のいずれでも良いが、効率よく光配向を行うためには、消光比の高い直線偏光を使用することが好ましい。
照射する光は、使用する化合物の光配向性基が吸収を有する波長領域の光であれば良い。例えば光配向性基がアゾベンゼン構造を有する場合は、アゾベンゼンのπ→π*遷移による強い吸収がある、波長350〜500nmの範囲の紫外線が特に好ましい。
前記光源からの光を偏光フィルタやグラントムソン、グランテ−ラ−等の偏光プリズムを通すことで紫外線の直線偏光を得ることができる。
また、偏光、非偏光のいずれを使用する場合でも、照射する光は、ほぼ平行光であることが特に好ましい。
冷却条件としては、冷却温度が20℃で1分以上であるが、冷却温度が20℃よりも低い場合は、その限りではない。冷却温度としては、使用する溶剤の融点以上であればよいが、通常−40℃〜20℃の範囲が好ましい。液晶配向機能が向上した、より安定な光配向膜を得るには10℃以下が好ましく、冷却時間としては5分以上が好ましい。さらに冷却時間を短縮させるには冷却温度は5℃以下が好ましい。
また、結露防止のため、冷却をする際に乾燥空気や窒素、アルゴン雰囲気下で行ってもよいし、乾燥空気や窒素等を基板に吹きかけながら冷却してもよい。
次にエポキシ化合物を硬化させる。該硬化を熱によって行う場合は、前記光異性化工程後に行う。加熱方法は公知の方法でよく、通常は基板ごと加熱する。加熱温度は、使用するエポキシ化合物、硬化剤、硬化促進剤の反応速度にもよるが、通常は80〜300度の範囲が好ましく、80〜200度の範囲が特に好ましく、100〜200度の範囲が更に好ましい。
加熱工程は、前述の通り、光異性化工程後であるならば、目的とする光配向膜や光学異方体、あるいは該光学素子を作成する工程のうち、どの工程に組み入れても構わない。
本発明の光配向膜を使用した光学異方体を得る場合は重合性液晶組成物を重合させる工程があるが、該重合方法として熱を利用すると、光配向膜中のエポキシ化合物も同時に硬化させることができる。また、本発明の光配向膜を使用した液晶セルを得る場合は、セル作成工程中の加熱工程を利用して光配向膜中のエポキシ化合物を硬化させることもできる。例えば、エポキシ系シール剤等を熱硬化させる際の熱を利用すると、一度に硬化させることができ効率的である。この方法は、シール剤と光配向膜界面とがより強固に接着するのでなお効果的である。
本発明で得られた光配向膜を使用して光学異方体を得る際に使用する重合性液晶組成物は、単独又は他の液晶化合物との組成物において液晶性を示す、重合性基を有する化合物を含む液晶組成物である。例えば、Handbook of Liquid Crystals (D. Demus, J. W. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiess, V. Vill編集、Wiley−VCH 社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)、あるいは、特開平7−294735号公報、特開平8−3111号公報、特開平8−29618号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−148079号公報、特開2000−178233号公報、特開2002−308831号公報、特開2002−145830号公報に記載されているような、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基といった重合性官能基とを有する棒状重合性液晶化合物、 あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物、 あるいは特開2004−149522号公報に記載されているようなアリルエーテル基を有する棒状重号性液晶化合物、あるいは、例えば、Handbook of Liquid Crystals (D. Demus, J. W. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiess, V. Vill編集、Wiley−VCH 社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)や、特開平07−146409号公報に記載されているディスコティック重合性化合物があげられる。中でも、重合性基を有する棒状液晶化合物が、液晶温度範囲として室温前後の低温を含むものを作りやすく好ましい。
前記重合性液晶組成物を重合させるには、一般には紫外線等の光照射あるいは加熱により行う。光照射によって行う場合に使用する光重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア907」)。ベンジルメチルケタ−ル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)。2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ−ドプレキンソップ社製「カンタキュア−ITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)、などが挙げられる。光重合開始剤の使用量は重合性液晶化合物に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
前記重合性液晶組成物に使用する溶剤としては、特に限定はないが、前記化合物が良好な溶解性を示す溶媒が使用する。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また、添加剤を添加することもできる。
前記重合性液晶組成物の重合操作については、一般に紫外線等の光照射あるいは加熱によって行われる。重合を光照射で行う場合は、本発明の光配向膜用組成物からなる光配向膜の配向状態を乱さないようにするため、一般には、二色性化合物が有する光の吸収帯、例えば、アゾベンゼン骨格やアントラキノン骨格が持つ吸収帯以外の波長で行われることが好ましい。具体的には320nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜300nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、320nm以下の紫外光により光配向膜及び重合性液晶組成物が分解などを引き起こす場合は、320nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。
この光は、既に得られた光配向性基の配向を乱さないために、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。そのために、通常は、二色性化合物が有する光の吸収帯とは異なる光吸収波長帯域を持つ光重合開始剤を使用するのが好ましい。一方、重合のための光を光配向操作と同じ方向から照射する場合は、光配向材料の配向状態を乱す恐れがないので、任意の波長を使用することができる。
また、重合性液晶組成物を加熱重合で行う場合は、光配向膜層に添加するエポキシ化合物及び硬化剤の組み合わせを、重合性液晶組成物の加熱温度とあわせておくと、一度に両層を硬化させることができ好ましい
式(a)で示される化合物(a)1部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)49.5部に溶解させた後、レゾルシノールジグリシジルエーテル1部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.05部、2−ブトキシエタノール49.5部を加え、固形分比2.0%の溶液を作成した。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、光配向膜用組成物(1)を得た。
光配向膜用組成物(2)〜(7)は表1に示すとおりである。
エピクロン1055(大日本インキ化学工業(株)社製)40部、エピクロン850(大日本インキ化学工業(株)社製)20部、フェノライトTD−2090(大日本インキ化学工業(株)社製)20部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学工業(株)社製)5部、アミキュアVDH(味の素ファインテクノ(株)社製)2部、N,N−ジメチルアミノピリジン1部を2−(2−メトキシエトキシ)エタノール20部に溶解させ、さらにレオロシール(トクヤマ(株)社製)10部を加えて、3本ロールミルで練錬することにより液晶シール剤組成物(1)を得た。
エピクロンN−665−EXP(大日本インキ化学工業(株)社製)50部、エピクロン830−LVP(大日本インキ化学工業(株)社製)15部、ラッカマイドTD−971(大日本インキ化学工業(株)社製)20部(キシレン25%、1−ブタノール25%含有)、シランカップリング剤、KBM−403(信越化学工業(株)社製)5部、アミキュアVDH(味の素ファインテクノ(株)社製)1部、レオシール(トクヤマ(株)社製)10部を3本ロールミルで練錬することにより液晶シール剤組成物(2)を得た。
エピクロンHP−7200L(大日本インキ化学工業(株)社製)45部、エピクロンN−740(大日本インキ化学工業(株)社製)15部、フェノライトKA−7052−L2(大日本インキ化学工業(株)社製)20部、シランカップリング剤KBM−4038信越化学工業(株)社製)5部、アミキュアVDH(味の素ファインテクノ(株)社製)2部、ジシアンジアジド2部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部に溶解させ、さらにレオシール(トクヤマ(株)社製)10部を加えて、3本ロールミルで練錬することにより液晶シール剤組成物(3)を得た。
(実施例1)
光配向膜用組成物(1)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗膜表面に、超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長300〜500nm付近の可視紫外光(照射強度:50mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射エネルギー3.0J/cm2で光照射を行った。得られた塗膜をホットプレートに置き、150℃で90分加熱することにより実施例1の光配向膜を得た。
次に得られた光配向膜付きガラス基板の光配向膜面の周囲に、直径5μmのシリカビーズを含んだ液晶シール剤組成物(1)をディスペンサーを用いてガラス基板の周辺に塗布し、80℃で30分間予備硬化した後、真空下でTFT駆動用液晶組成物(商品名「11−3323」:大日本インキ化学工業(株)社製)をディスペンサーで適量塗布し、接着剤が塗布されていないガラス基板と配向面が上下で直交するように重ね合わせて圧着し、150℃90分で接着剤を硬化させることでTN液晶セルを得た。得られたTN液晶セルの上下に偏光板を置き、クロスニコル状態、及び、パラレルニコル状態でTN液晶セルを外観目視(以下参照)することにより液晶配向性の評価を行った。
△:液晶材料の配向は均一であるが、部分的に外観上のむらがある。シール剤付近の配向が乱れている。
○:液晶材料の配向は均一であるが、部分的に外観上のむらがある。
◎:液晶材料の配向が均一で欠陥が全く存在しない。
表に記載の光配向膜用組成物を使用した以外は実施例1と同様にしてTN液晶セルを作成し、評価を行った。得られた結果を表2に示す。
式(c)で示される化合物1部、エピオールTMP−100(日本油脂(株)社製)0.25部、及び、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.01部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)49.3部に溶解させた後、2−ブトキシエタノール(BC)49.5部を加え、固形分比1.0%の溶液を作成した。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、光配向膜用組成物(8)を得た。
光配向膜用組成物(8)と同様にして、光配向膜用組成物(9)〜(28)を調製した。組成比は、光配向膜用組成物(8)を含め、表3に記載した。
ReGy:レゾルシノールジグリシジルエーテール
DME-100:リカレジンDME-100(新日本理化(株)社製)
N-665:エピクロンN-665(大日本インキ化学工業(株)社製)
EXP-830:エピクロンEXP-830LV(大日本インキ化学工業(株)社製)
726:エピクロン726(大日本インキ化学工業(株)社製)
D-570:エピクロンD-570(大日本インキ化学工業(株)社製)
2093Y:フェノライト2093Y(大日本インキ化学工業(株)社製)
Re:レゾルシノール
EMI:2−エチル−4−メチルイミダゾール
SP-003:エポミンSP-003(日本触媒(株)社製)
WH-108S:ラッカマイドWH-108S(大日本インキ化学工業(株)社製)
DMAP:ジメチルアミノピリジン
IS-1000:イミダゾールシランIS-1000(日鉱マテリアルズ(株)社製)
PVCi:ポリビニルシンナメート
化合物(d)、化合物(e)を下記に示す。
式(g)で示される化合物11部、式(h)で示される化合物9部、式(j)で示される化合物16.5部、式(k)で示される化合物11部、式(l)で示される化合物2.5部をキシレン50部に溶解させた後、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)1.2部、式(i)で示されるアクリル共重合体0.3部を加え、溶液を得た。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性液晶組成物(LC−1)を得た。
式(g)で示される化合物15部、式(h)で示される化合物15部をキシレン70部に溶解させた後、イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製)1.2部、式(i)で示されるアクリル共重合体0.3部を加え、溶液を得た。得られた溶液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性液晶組成物(LC−2)を得た。
(実施例6)
光配向膜用組成物(8)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、80℃で1分間乾燥した。このときの乾燥膜厚は20nmであった。
次に超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:10mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射し、光配向膜を得た。照射量は100mJ/cm2であった。
得られた光配向膜上にスピンコーターで重合性液晶組成物(LC−1)を塗布し、80℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射し、さらに200℃で10分加熱することにより均一な光学異方体を得た。リタデーションは270nmであった。得られた光学異方体の膜状態を観察した結果を、評価1に従い評価した。その結果を表4に示す。
A:目視で光配向膜の変化が全くなく、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない
B:目視では光配向膜の変化が全くないが、偏光顕微鏡観察では無配向部分が存在している
C:目視では光配向膜の変化はないが、偏光顕微鏡観察で全体的に無配向部分が存在している
D:目視では光配向膜に一部むらが生じており、偏光顕微鏡観察でも全体的に無配向部分が存在している
E:目視で光配向膜全体にむらが生じている
尚、ここで使用した試験用溶剤は、配向膜用組成物の希釈目的に汎用に使用される溶剤の組み合わせである。
A:目視で膜の変化が全くなく、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない
B:目視では膜の変化が全くないが、偏光顕微鏡観察ではクラックが発生している
C:目視では一部膜が剥がれているが、偏光顕微鏡観察でのクラック発生はBと同レベル
D:目視では膜の大半が剥がれている
E:目視で膜全体が剥がれている
前記実施例6で得られた光学異方体の表面をコロナ処理した後、光学異方体上に、更に、光配向膜用組成物(8)をスピンコーターでガラス基板上に塗布し、80℃で1分間乾燥した。該光学異方体の光配向膜の配向方向に対して60°回転させた状態で、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:10mW/cm2)の直線偏光でかつ平行光を、ガラス基板に対して垂直方向から照射し、2層目の光配向膜を得た。照射量は100mJ/cm2であった。該光配向膜上にスピンコーターで重合性液晶組成物(LC−1)を塗布し、80℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で紫外線を1J/cm2照射し、さらに200℃で10分加熱することにより2層の異なる異方性を有する光学異方積層体を得た。2層目のリタデーションは135nmであった。外観上でも偏光顕微鏡でも配向欠陥のない良好な光学異方体であった。
Claims (6)
- 一般式(1)で表されるアゾ化合物である二色性化合物、及び、分子内に少なくとも2つ以上の反応性エポキシ基を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とする光配向膜用組成物。
(式中、R1、R2は、各々独立して、ヒドロキシ基、又は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、及びマレイミド基からなる群から選ばれる重合性官能基を表す。
X1は、R1がヒドロキシ基の場合、単結合を表し、R1が重合性官能基の場合、−(A1−B1)m−で表される連結基を表し、
X2は、R2がヒドロキシ基の場合、単結合を表し、R2が重合性官能基の場合、−(A2−B2)n−で表される連結基を表す。ここで、A1及びA2は各々独立して単結合、又は二価の炭化水素基を表し、B1及びB2は各々独立して単結合、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−CO−O−、又は−O−CO−NH−を表す。m及びnは各々独立して0〜4の整数を表す。但し、m又はnが2以上のとき、複数あるA1、B1,A2及びB2は同じであっても異なっていても良い。但し、二つのB1又はB2の間に挟まれたA1又はA2は、単結合ではないものとする。
R3およびR4は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基又は水酸基、−OR7(但し、R7は、炭素原子数2〜6のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、または炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)を表す。但し、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。
R5およびR6は各々独立して、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、又はヒドロキシ基を表す。但し、カルボキシ基、スルホ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。) - 請求項1に記載の光配向膜用組成物を基板上に塗布した後、該塗膜に異方性を有する光を照射する光配向膜の製造方法において、光を照射した後、エポキシ化合物を硬化させることを特徴とする光配向膜の製造方法。
- 請求項1に記載の光配向膜用組成物を使用した光配向膜上に、重合性液晶組成物を塗布し、配向させた状態で重合させて得た光学異方体。
- 請求項1に記載の光配向膜用組成物を基板上に塗布する工程1と、
該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と、
重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させる工程3をこの順に行う、請求項3に記載の光学異方体の製造方法であって、
前記工程1の後から前記工程3の後までの間に、エポキシ化合物を硬化させる工程を有することを特徴とする光学異方体の製造方法。 - 請求項3に記載の光学異方体を使用することを特徴とする光学素子。
- 請求項1に記載の光配向膜用組成物を基板上に塗布する工程1と、
該塗膜に異方性を有する光を照射する工程2と、
重合性液晶組成物を塗布し配向させた状態で重合させて光学異方体を得る工程3と、
前記光学異方体を設置した光学素子を得る工程4とをこの順に行う、請求項5に記載の光学素子の製造方法であって、
前記工程1の後から前記工程4の間に、エポキシ化合物を硬化させる工程を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
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