JP5140814B2 - 抗体の安定化方法およびその方法を用いたイムノクロマト法ならびに植物ウイルス診断キット - Google Patents
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〔i〕 N末端からβ-アラニン、オルニチンの順、もしくはN末端からオルニチン、オルニチンの順でペプチド結合した配列を有するペプチドまたはその塩を、蛋白質もしくは蛋白質結合担体の少なくともいずれか一方を含む試薬組成物に共存させることを特徴とする蛋白質の安定化方法。
〔ii〕 N末端からβ-アラニン、オルニチンの順、もしくはN末端からオルニチン、オルニチンの順でペプチド結合した配列を有するペプチドまたはその塩からなる蛋白質安定化剤。
〔iii〕 β-アラニン、オルニチンの順でペプチド結合したジペプチド、もしくはオルニチン、オルニチンの順でペプチド結合したジペプチドまたはその塩からなる蛋白質安定化剤。
〔iv〕 N末端からβ-アラニン、オルニチンの順、もしくはN末端からオルニチン、オルニチンの順でペプチド結合した配列を有するペプチドまたはその塩を、蛋白質もしくは蛋白質結合担体の少なくともいずれか一方を含む試薬組成物に共存させてなることを特徴とする蛋白質含有溶液。
〔v〕 〔iv〕に記載の蛋白質含有溶液を用いてなる生体成分測定用試薬。
〔vi〕 〔iv〕に記載の蛋白質含有溶液を用いてなる生体成分測定のために用いる標準液。
(2) 植物ウイルス検出のため、該植物ウイルスの抗体を含有する移動相媒体および固定相を用いるイムノクロマト法において、該移動相媒体にはβ-Ala−Orn−Ornが抗体安定化剤として含有されていることを特徴とするイムノクロマト法。
(3) 特定の植物ウイルスを検出するために、該植物ウイルスの抗体を固定化したクロマトグラフ媒体と、該抗体を含む移動相媒体とを備えてなる植物ウイルス診断キットにおいて、該移動相媒体にはβ-Ala−Orn−Ornが抗体安定化剤として含有されていることを特徴とする植物ウイルス診断キット。
つまり本願発明は、抗体もしくは抗体を含む組成物に、β-Ala−Orn−Ornを共存させることによって、抗体の保存安定性を顕著に高められるという新規技術を、その基礎とするものである。
特定構造(β-Ala−Orn−Orn)のトリペプチドは、シジミエキスからの精製、化学合成、あるいは酵素合成により入手することができる。本発明の抗体の安定化方法に用いる該トリペプチドまたはその塩は、N末端からβ-アラニン、オルニチン、オルニチンの順でペプチド結合した配列を有するトリペプチドβ-Ala−Orn−Ornであり、抗体、酵素標識抗体、蛍光標識抗体、金コロイド抗体、磁性ビーズに吸着させた抗体、もしくはこれらを担体に結合させたもの等の、少なくともいずれかを含む抗体組成物に該トリペプチドを含有させることにより、抗体の安定化作用を得るものである。
<実施例1 抗原抗体反応における、トリペプチド(β-Ala−Orn−Orn)の抗体に対する安定化効果>
ウサギIgGと西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG抗体との反応性において、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG抗体溶液に該トリペプチドを含有させることにより、該トリペプチドの同抗体に対する安定化効果を検討した。
(1)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG抗体溶液の調製方法および保存試験方法
表1に記載の試験物質(安定化剤)を、0.15mol/l(リットル)塩化ナトリウム、0.05%Tween20および防腐剤として0.05%プロクリン300を含む50mmol/lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以下P−TBSと記載する。)に溶解させて、設定した濃度に調製し、0.22μmフィルターで濾過した溶液を試験物質溶液とした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(以下HRP−ヤギ抗ウサギIgG抗体と記載する。)(CHEMICON INTERNATIONAL)を上記試験物質溶液で10000倍希釈した溶液を保存試験に用いた。試験当日、37℃で保存した1週間後、3週間後、6週間後、12週間後におけるHRP−ヤギ抗ウサギIgG抗体の活性(安定性)を検討した。各試験溶液は、測定前に室温(20〜25℃)に戻してから活性測定に使用した。
固相化ヤギ抗ウサギIgG抗体プレート(Reacti−BindTM Goat Anti−Rabbit IgG Coated Plates,PIERCE)の各ウエルに1%BSAを含むP-TBS(以下BSA溶液と記載する。)を100μlずつ加え、次にBSA溶液で100ng/mlに調製したウサギIgG(CHEMICON INTERNATIONAL)を20μlずつ加え(ブランクはBSA溶液)、37℃で60分間静置して抗原抗体反応を行った。
各試験物質におけるペルオキシダーゼの残存活性の結果を表1に示した。37℃、1週間保存において、HRP−ヤギ抗ウサギIgG抗体の残存活性は、無添加では28%、BSA添加では65%であり、活性は低下した。一方、本発明に係る該トリペプチド(1mM)では、残存活性が100%であり、活性低下が見られなかった。3週間保存、6週間保存においても、該トリペプチドは高い残存活性を示しており、12週間保存においては、HRP−ヤギ抗ウサギIgG抗体の残存活性は、無添加では1%、BSA添加では14%であったところ、本発明に係る該トリペプチド(1mM)では、残存活性が未だ50%という高い値を示し、極めて良好な安定化効果を示した。なお、従来から蛋白質安定化効果があるとして知られているアルギニンエチルエステル(1mM)では、6週間以後の残存活性が1%であり、結果は無添加の場合とほとんど変わらず、本試験の条件下における安定化効果は認められなかった。
植物ウイルスの一種であるキュウリモザイクウイルス(CMV)を抗原とし、同ウイルスをウサギに接種することにより作製したCMV抗血清を抗体としたイムノクロマト法における、該トリペプチドの抗体に対する安定化効果を検討した。
プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体の調製は、イムノクロマト検出濾紙固定化用に白色ラテックス(Immutex S080−02−120,日本有機合成ゴム(株))を、検出用にピンク色ラテックス(Immutex G0304CR,日本有機合成ゴム(株))を用い、100μg/mlに調製したプロテインA溶液(ナカライ)と等量の0.5%白色ラテックス媒体あるいは1%ピンク色ラテックス媒体を混合し、160rpmで2時間、室温で振とうした後、10,000*g、10分間の遠心分離により沈殿を得た。洗浄用緩衝液(0.45% NaClおよび0.1% 仔牛血清アルブミン(BSA)を含む0.05M Tris−HCl緩衝液、 pH7.0)で懸濁し、遠心・懸濁の操作を4回繰り返し、懸濁した白色プロテインAラテックス媒体あるいはピンク色プロテインAラテックス媒体に、洗浄用緩衝液で50〜100倍に希釈した等量のCMV抗血清希釈液を加え混合して、4℃に一晩静置した。前述の洗浄操作を行い,最後に1mlの洗浄用緩衝液に懸濁して白色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体あるいはピンク色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体とした。
イムノクロマト法における固定相の作製は以下のとおり行った。イムノクロマト検出濾紙にはガラス繊維濾紙GF/A(Whatman)を用い,同濾紙の上部に溶液吸収用濾紙としてガラス繊維濾紙GA100(Advantec)を重ねた。固定化用の白色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体を、濾紙幅1cm当たり15〜20μlになるように検出濾紙の下側から17〜18mmの位置に面相筆を用いて1mm幅で画線するように吸着固定し、乾燥させた。白色PPCラベルシート(KOKUYO)端から1mmの位置に検出濾紙下側を揃えて張り付け、さらに検出濾紙下側端から5mmあけて透明PPCラベルシート(KOKUYO)をのせてカバーした。作製した固定相は、5〜10mm幅になるように切断し、室温のデシケーター内に保存した。
表2に記載の試験物質(安定化剤)を、検出用ピンク色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体に溶解させて設定した濃度に調製し、移動相試験液とした。移動相試験液を5℃冷蔵庫および24℃の恒温器に静置し、試験当日、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、10ヶ月後、12ヶ月後における活性(反応性)を測定し、試験物質の安定化効果を評価した。24℃という温度設定は、室温保管を想定したものである。
100μg/mlに調製したCMV溶液100μlを、上記により作製した固定相に吸収・展開させて固定化白色ラテックス粒子と抗原抗体反応させた後、直ちに、保存試験実施済みの安定化剤を含む移動相試験液(検出用ピンク色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体)100μlを、濾紙に吸収・展開させた。室温に数分放置し、濾紙上の固定化白色ラテックス粒子の抗体に結合したCMVとピンク色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス粒子の抗原抗体反応により生じる濾紙上のピンク色の着色線の有無およびその濃淡を、作製まもない移動相の着色の程度を対照として比較し、移動相に含まれる抗体の反応性を評価した。
植物ウイルスの一種であるキュウリモザイクウイルス(CMV)を抗原とし、同ウイルスをウサギに接種することにより作製したCMV抗血清を抗体とするイムノクロマト法において、その移動相に上記トリペプチドを用いた植物ウイルス診断キットを作製し、該トリペプチドの抗体に対する安定化効果を検討した。
プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体の調製は、実施例2と同様に行った。イムノクロマト検出濾紙固定化用に白色ラテックス(Immutex S080−02−120,日本有機合成ゴム(株))を、検出用にピンク色ラテックス(Immutex G0304CR,日本有機合成ゴム(株))を用い、100μg/mlに調製したプロテインA溶液(ナカライ)と等量の0.5%白色ラテックス媒体あるいは1%ピンク色ラテックス媒体を混合し、160rpmで2時間、室温で振とうした後、10,000*g、10分間の遠心分離により沈殿を得た。洗浄用緩衝液(0.45% NaClおよび0.1% 仔牛血清アルブミン(BSA)を含む0.05M Tris−HCl緩衝液、 pH7.0)で懸濁し、遠心・懸濁の操作を4回繰り返し、懸濁した白色プロテインAラテックス媒体あるいはピンク色プロテインAラテックス媒体に、洗浄用緩衝液で50〜100倍に希釈した等量のCMV抗血清希釈液を加え混合して、4℃に一晩静置した。前述の洗浄操作を行い,最後に1mlの洗浄用緩衝液に懸濁して、白色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体あるいはピンク色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体とした。
固定相の作製は実施例2と同様に行った。イムノクロマト検出濾紙にはガラス繊維濾紙GF/A(Whatman)を用い,同濾紙の上部に溶液吸収用濾紙としてガラス繊維濾紙GA100(Advantec)を重ねた。固定化用の白色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体を、濾紙幅1cm当たり15〜20μlになるように検出濾紙の下側から17〜18mmの位置に面相筆を用いて1mm幅で画線するように吸着固定し、乾燥させた。白色PPCラベルシート(KOKUYO)端から1mmの位置に検出濾紙下側を揃えて張り付け、さらに検出濾紙下側端から5mmあけて透明PPCラベルシート(KOKUYO)をのせてカバーした。作製した固定相は、5〜10mm幅になるように切断し、室温のデシケーター内に保存した。
該トリペプチドを、上記により調製した検出用ピンク色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス媒体に溶解させて2mMに調製し、移動相とした。移動相を24℃の恒温器に静置し、試験当日、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後における反応性について検討した。24℃の温度設定は、室温保管を想定したものである。
CMVの感染による明瞭な病徴が認められるキュウリの葉片(約100mg)に、磨砕用緩衝液(0.1% 2-メルカプトエタノール、10mM EDTA、0.15%ポリビニルピロリドン、0.1%BSAを含む0.1M リン酸緩衝液 pH7.0)を1ml加え、磨砕し、得られた粗汁液100μlを上記により作製した固定相に吸収・展開させて固定化白色ラテックス粒子と抗原抗体反応させた後、直ちに、保存試験実施済みの該トリペプチドを含むピンク色の移動相100μlを、濾紙に吸収・展開させた。室温に数分放置し、濾紙上の固定化白色ラテックス粒子の抗体に結合したCMVとピンク色プロテインA吸着型抗体感作ラテックス粒子の抗原抗体反応により生じる濾紙上のピンク色の着色線の有無およびその濃淡を、作製まもない移動相の着色の程度を対照として比較し、移動相に含まれる抗体の反応性を評価した。
植物ウイルス診断キットにおける移動相の保存試験の結果、24℃保存6ヶ月後および12ヶ月後の移動相を用いてもピンク色の着色線が現れ、活性(反応性)が保持されていることが認められた。このことから、移動相に抗体安定化剤として該トリペプチドを用いることにより、室温保管でき、かつ圃場での検査に充分対応可能なイムノクロマト法を用いた植物ウイルス診断キットを提供できることが分かった。一方、該トリペプチドを用いない場合は、24℃保存1ヶ月で活性が認められなかった。
Claims (3)
- 抗体もしくは抗体を含む組成物の媒体に、β-Ala−Orn−Ornを含有させることを特徴とする抗体安定化方法。
- 植物ウイルス検出のため、該植物ウイルスの抗体を含有する移動相媒体および固定相を用いるイムノクロマト法において、該移動相媒体にはβ-Ala−Orn−Ornが抗体安定化剤として含有されていることを特徴とするイムノクロマト法。
- 特定の植物ウイルスを検出するために、該植物ウイルスの抗体を固定化したクロマトグラフ媒体と、該抗体を含む移動相媒体とを備えてなる植物ウイルス診断キットにおいて、該移動相媒体にはβ-Ala−Orn−Ornが抗体安定化剤として含有されていることを特徴とする植物ウイルス診断キット。
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