JP5140223B2 - 補強された当接面を有する中空ねじ継手 - Google Patents
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Description
本発明は中空ねじ継手に関し、これは第1の中空要素の端部に位置する雄ねじ要素を含み、この雄ねじ要素は、第2の中空要素の端部に位置する雌ねじ要素への螺合により接続される。
【0002】
このような継手は特に、炭化水素井又は地熱井のための鋼管(ケーシング)ストリング、生産管ストリング又はドリルストリングを構成するために用いられている。
【0003】
雄及び雌ねじ要素はそれぞれ長尺管の一端に配置でき、第1の管の雄ねじ要素は、一体的なねじ継手を構成するように、第2の管の雌ねじ要素へねじ込まれる。
【0004】
代替的に、雄ねじ要素は長尺管の二端の各々に配置でき、これらは2つの雌ねじ要素を支持する端部へ短尺管又は継手により接続され、このような長尺管の間の継手は「ねじ接続継手」として知られており、2つの中空ねじ継手を採用する。
【0005】
更に本発明は、プレミアム継手として知られているねじ継手に関し、プレミアム継手は半径方向干渉金属対金属シール表面を含み、このシール表面はこれを正確に位置決めするように特に指向された当接面に関連している。
【0006】
このようなプレミアムねじ継手は例えば欧州特許EP488,912号に説明されており、様々な実用構成(軸方向張力又は圧縮、内部又は外部圧力、曲げ)における流体に対するねじ継手のシールを保証することを可能にする。
【0007】
傾斜しているか或いは充分に水平な角度におけるドリル偏りさく井のための最近の技術は、複数の管及びそれらを接続するねじ継手がウェル(井)の中へ下降するに従って回動させる必要がある。
【0008】
このような技術は、さく井へ下降するときに採用されるトルクよりも常に実質的に大きな高構成(makeup)トルクを有するねじ継手を構成する必要があり、これが達成されなければ、シーリング面の位置が変わって継手が漏洩を生じるおそれがある。
【0009】
所望のトルクと、さく井(偏りさく井)の幾何形状により曲げられた部分的な曲げ負荷のために、当接面は大きな負荷を受ける。
【0010】
鋼管ストリング又は管ストリングの更に特定の場合では、さく井は複数の偏心ストリング管を備えており、ストリングの構成要素の内径及び外径は最大数のストリングのさく井への進入を制限する必要がある。
【0011】
当接面は、軸に対して実質的に垂直なねじ要素上の表面であり、制約された半径方向の厚さを有し、このようなねじ継手の場合には樹脂成形には適さない非常に高い応力を受ける。
【0012】
国際特許公報WO94/29627号及びWO00/14441号は、非常に高いトルクの構成を可能とする中空管継手を開示し、これは完全に又は部分的に突合せとして働くフランクを生じる。
【0013】
本発明の目的は、一対の雄及び雌当接面を有するプレミアム中空ねじ継手を与えることであり、その一対の雄及び雌当接面は、突合せとして働くねじフランクを生じることなく樹脂成形に対して特別な抵抗をなす。
【0014】
本発明の目的は、各ねじ要素について少なくとも1つの接合部を有するが、主な接合部(最初に当接して殆どの応力下にある)が雄ねじ要素上にその自由前方端に形成され、且つ同様な方式で雌ねじ要素上にあるプレミアム中空管継手に適用可能である。
【0015】
本発明の目的は、任意の形式のねじ、ねじ形態又はシーリング面形式にも適用可能である。
【0016】
本発明の中空ねじ継手は、第1中空部品の端部における雄ねじ要素と、第2中空部品の端部における雌ねじ要素とを備える。
【0017】
雄ねじ要素は雄ねじを含み、且つ雄リップにより終端する。
【0018】
雄リップは、
・その上に雄シーリング面が形成された外周面と、
・雄シーリング面に実質的に横切るように向き付けられて接続され、雄ねじ要素の自由端の前面により構成された雄環状当接面と、
・内周面とを含む。
【0019】
用語「実質的に交差する面」は、平面と非平面との双方、例えば円錐を意味し、その母線はねじ継手の軸に対して直交する平面に関して30°を越えて延出することはない。
【0020】
雌ねじ要素は雄ねじ要素上の対応する手段と協働するように、雌ねじと、雌シーリング面を支持する中間周面と、雌肩とを含む。
【0021】
雌肩は雌環状当接面を有し、この当接面は前記雌シーリング面に実質的に横切るように向き付けられて、近接して接続されると共に、雌環状肩領域を規定し、これは前記雄当接面が前記雌当接面に当たるにつれて軸方向圧縮負荷を受ける。
【0022】
雄ねじは、前記雄当接面が前記雌当接面に当たるまで雌ねじへ一体化されて、前記雄シーリング面は前記雌支持面と径方向で干渉する。
【0023】
本発明の1つの特徴によれば、雌環状肩領域は内周面を含み、その内径は、少なくとも前記雌当接面に接近して雄リップの内周面の径よりも小さく、これら2つの径の比は1未満であるが0.9以上である。
【0024】
このような特徴は、雌環状肩領域における等価フォン・マイセス(von Mises)応力を低減させることが可能であり、この等価フォン・マイセスは、多数の従来技術のねじ継手においては、発明者によれば、隣接支持面により形成された3軸応力に対する雄突合せにおける応力よりも高く、雄突合せにおける主応力は全て圧縮応力であり、一方、雌環状肩領域においては、軸応力のみが圧縮応力であり、2つの他の主応力は引張応力である。
【0025】
この特徴は、ねじ管状継手継手の内側の通路のために充分な内径を保つことも可能にする。
【0026】
これらの形態の幾つかにおいて、フランス特許第1,488,719号及び1,489,013号は、当接面及びシーリング面を有するねじ管状継手を開示しており、この継手には雄ねじ要素の端部における雄リップと、雌ねじ要素上の雌肩部とが設けられており、雌環状肩領域の内周面の内径は前記雌当接面に近接して雄リップの内周面の径よりも小さい。
【0027】
径の比に関して、これら2件の文献には値の制限が与えられていない。
【0028】
更にフランス特許第1,489,013号においては、何の機能も内径における差に関連しておらず、これは単に雌環状肩領域の内周面の小さな径が、ねじ雌要素を構成するための管のアップセットからもたらされるとみなせるのみである。
【0029】
鋼管のためのねじ継手を扱うフランス特許第1,488,719号の場合においては、雌環状肩領域が雄リップの損傷を回避するために雄リップよりも小さな内径を有し、その結果、鋼管ストリング内へドリル管が落ちる間の衝撃によるねじ継手のシールを有する。従って内径差の機能は本発明の場合におけるものとは全く別である。
【0030】
好ましくは、比Rは以下の関係を満足する。
【0031】
【数3】
【0032】
ここでSは前記雄当接面の外縁の径と雄リップの内径との間の比に等しい。
【0033】
この特徴は雄突合せと雌環状肩領域との間の等応力の差を最小化して、ひいては本発明のねじ継手の幾何形状を最適化することを意図している。
【0034】
有益なことには、本発明のねじ継手の雌肩部の内周面は、前記内周面が以下のように規定された最大剪断のテーパー面を遮る点において最大径を有する。即ち、この内周面は、
・雌ねじ要素に共軸な頂半角45°を有するテーパー面であり、
・その径は前記雌当接面からの距離が減少するにつれて、雄肩領域内においてその径が減少すると共に、
・前記雌当接面の外縁を通過する。
【0035】
また有益なことには、前記雌当接面側におけるその端部において、雌肩部の内周面の径が雄リップの内周面の内径に等しい。
【0036】
好ましくは、雌肩の内周面は、遷移部分と称される第1部分を含み、この第1部分の内径は前記雌当接面から漸進的に減少し、雌肩の内周面は更に、最小内径を有する第2の円筒部分を含む。
【0037】
接続点は、雌肩部の内周面の遷移部分と円筒部分との間に規定できる。
【0038】
また好ましくは、この接続点は、一方では前記雌当接面側上の前記遷移部分と他方では最大剪断のテーパー面を有する雌肩部の内周面の交差点との間の実質的に軸方向中間に位置している。
【0039】
本発明の更なる利点及び特徴は以下の詳細な説明から明らかになる。
【0040】
管10及び10’の各端部は雄ねじ要素11,11’を支持する。
【0041】
雄要素11は雄テーパーねじ12を含み、その自由側は雄リップ18により終端する。
【0042】
この雄リップ18は以下を含む。即ち、
・雄要素の軸XXに関して例えば20°傾いた雄テーパー状シーリング面13を支持する外周面と、
・雄ねじ要素の自由端の前面により構成され、実質的に横切るように向き付けられた雄環状面16とを含む。
【0043】
雄当接面16は雄シーリング面13に近接し、この接続破断を構成するのを避けるために1ミリメートル程度の小さな半径を有するトリック面により雄シーリング面13に接続されている。この例における雄突合わせ14は逆突合わせ又は負の角度突合わせと称される突合わせとして示されており、ここで当接面16は、75°の頂半角を有する凹テーパー状面16であるので、軸XXに対する法線に関して15°の角度を構成する。
【0044】
・雄リップ18は更に、内周面17を含み、この内周面は機械加工により得られる内径IDPを有するので、この面17の軸は、管10の厚さの変動に関係なく、雄ねじ要素の軸に一致する。この面17は一方では管10の現在の内周面へ接続され、他方では雄当接面16へBにて接続されている。
【0045】
管10,10’は、継手20の各端部において対称に配置された2つの雌ねじ要素21,21’を含む継手20を用いて構成される。
【0046】
雌ねじ要素21,21’は、2つの管ねじ継手1,1’を構成するように雄ねじ要素11,11’の対応する手段に協働するように配置された手段を有する。
【0047】
継手の対称性の観点から、ねじ継手1のみについて説明する。
【0048】
雌ねじ要素21は、雄ねじ12に対応する雌ねじ22と、テーパー状雌シーリング面23を含む内周面と、75°の頂半角を有する凸テーパー状面により形成された実質的に横切るように向き付けられた雌環状面26が設けられた雌肩部とを有する。
【0049】
雌突合わせ26の面は雄シーリング面23に近接し、また雄ねじ要素の場合のように、この接続が破断することを防止するように小さな曲率半径を有するトリック面によりシーリング面に接続されている。
【0050】
点Aは雌当接面26の外縁ひいては雌シーリング面23の側部上の雌肩の根を特徴付ける。これは雄当接面16の外縁を併合させる。
【0051】
ねじ継手の位置決めにおいて、雄ねじ12は、雄ねじ14が接触圧力下で雌突合わせ24に当接するまで雌ねじ22へねじ込まれる。
【0052】
当接面16,26の準横断配置は、雄ねじ要素11が雌ねじ要素21に関して位置すべきことを可能にし、この相対位置は構成(makeup)トルクの量により非常に正確に規定される。
【0053】
ねじ継手の位置決めにおいては、雄シーリング面13が半径方向で雌シーリング面23に干渉し、これは雄及び雌シーリング面の対応する直線部分について、構成前には雄ベアリング径が雌ベアリング径より僅かに大きい。
【0054】
このような半径方向干渉はシーリング面13,23の間の高い接触圧力を生成する。この接触圧は、応力(内圧又は外圧、張力、圧縮、ねじれ、曲げ、周期的温度変化の有無、その他)の変化に関係なく、ねじ継手を内部又は外部の液体に対して単独でも組み合わせでも液密にすることができる。
【0055】
高い構成トルクは、特に管がウェル内へ下降するにつれて回動するならば、雄ねじ要素11の雌ねじ要素21に関する回動を防止するのに好ましい。
【0056】
この構成トルクは、突合わせ14,24の軸方向金属圧縮をもたらすが、その可塑化をもたらしてはならない。
【0057】
更に、さく井によれば、曲げ応力は突合わせ上の付加的圧縮負荷を誘発する。
【0058】
これは、管ストリングが軸方向圧縮又は熱周期又はその両方を受ける場合も同様である。
【0059】
一般に、図1及び図2に示されるように、従来技術のねじ継手においては、雌肩の頂部が、雄リップ18の雄内周面17と同一内径を持つ円筒内周面27を有する。
【0060】
これは以下のことを防止できる。
【0061】
・流体の内部循環における乱流、特に雄ねじ要素11と雌ねじ要素21との間の接続点における乱流、この乱流は浸食腐食現象を生じる。
【0062】
・操作中に管ストリング内へ落下した工具又は装置によるこの接続点の閉塞又は損傷。
【0063】
本願に記載された発明者は、図1及び図2に示すようなねじ継手による過トルク試験の間に、雌環状肩領域24における金属(これは雄突合わせ14のそれ以前には常に可塑化していた)に驚くべき観察を得ている。
【0064】
発明者が見出した説明は図2に示されるように3軸応力における突合わせに近接するシーリング面の存在の影響に頼っている。
【0065】
雄突合わせ14における金属15の基本立方体を考える。この立方体15は1組の応力を受け、その応力は軸方向、半径方向、及び周方向においてそれぞれσAP,σRP,σCPの3つの主応力へ減少する。
【0066】
軸方向応力σAPは基本的に構成トルクから生じており、圧縮応力(負符号)である。
【0067】
半径応力σRPは主にシーリング面13,23の間の半径方向干渉からもたらされ、これもまた圧縮応力である。逆当接面16,26の負角は、半径応力σRPにおけるシーリング面の半径方向干渉効果を補強する傾向にある。
【0068】
周方向応力σCPも主にシーリング面13,23の間の半径方向干渉からもたらされ、これは雄リップの径を制限する傾向にあるので、周方向応力σCPは依然として圧縮応力であり、その強度も突合せ14,24の逆配置により補強される。
【0069】
雌肩の環状領域24における基本金属立方体25を考慮すると、この立方体25は3つの主要応力の組を受ける。即ち、
・軸方向応力σABも圧縮負荷(正値)である。
【0070】
・半径方向応力σRBは主に雌シーリング面23上(因みに逆当接面26上である)の半径方向干渉の影響からもたらされ、これは張力応力(負値)である。
【0071】
・周方向応力σCBも雌シーリング23及び逆当接面26上の半径方向干渉からもたらされ、これもまた張力応力(正値)である。
【0072】
材料可塑性の公知の理論によれば、可塑変形は、同時に採る2つの主要応力の間の代数差の関数である等価応力(例えばフォン・マイセス応力)が材料の降伏強度よりも高いときに開始される。
【0073】
等価フォン・マイセス応力は雄突合せ14における基本立方体15については比較的に低く、これは3つの主要な応力σAP,σRP,σCPが同一の符号を有するためである。対照的に、雌環状肩領域24における基本的立方体25については比較的に高く、これは2つの主応力(σRB,σCB)が正(張力)であり、一方、3つ目(σAB)は負(圧縮)であることによる。
【0074】
従ってねじ継手の過トルクにおいては、雌肩の基本立方体25は、材料の過剰な降伏強度を雄突合せ14の基本立方体15の等価応力よりも迅速に受け易い。
【0075】
本願に記載された発明者は、雌環状肩領域24における金属の降伏強度を局所的に高めるように、例えば焼き入れを誘導するか、又は予応力ショットブラスをなすか、或いは、応力が加わる表面面積を増加して軸方向圧縮下の雌環状肩領域24における等価応力を低減するかの何れかの利点を結論付けた。
【0076】
継手の内側の熱処理又は機械加工処理の実行のための困難性を考慮すると、発明者は図3、図4、図5に示されるように雌方区画を肉厚にすることを選んでいる。
【0077】
図3及び図4は、図2とは雌環状肩領域24を内側よりも厚くすることにより、内周面27の最小内径ID8が雄リップ18の内周面17の内径IDPより局所的に小さい。
【0078】
雌肩の内周面27は、雌当接面側26上の「遷移部分」と称される第1テーパー部分29と径IDBの第2円筒部分30とを有する円筒円錐面である。
【0079】
テーパー状面29は雌ねじ要素に共軸であり、その頂半角θは30°であり、その径は雌当接面26からの距離が増大するにつれて減少する。テーパー状面29の内径は雌当接面側26上のその端部Bにおいて雄リップの内周面の内径IDPに等しいので、雄ねじ要素11から雌ねじ要素21への過程においては、内径の変化がない。
【0080】
角度θは、内部流体循環の乱流のおそれ、及び管ストリング内へ落下した工具による閉塞のおそれを制限するために45°未満である。この角度θについての下限を設定することが何故有益かについて以下に説明する。
【0081】
テーパー状面29は雄リップの内周面17と雌肩の内周面27の円筒部分30との間の漸次接合点を構成する。
【0082】
雌肩の内周面27の円筒部分30の径IDBは勿論、値IDP未満であり、そうでなければ雌突合せ24の補強にならない。
【0083】
径IDBは0.9IDP以上として、ストリング内側の流体の充分な断面積を確保するようにしてある。0.9IDP未満の径IDBは、一方が他方へ挿入される数本の管ストリングを可能にするのみであり、このようなストリング設計は非常に高価である。
【0084】
雌突合せが雄突合せ程度に強くされる径IDBを越えて雌肩領域24を肉厚にすることは有用でないことが判っているので、発明者はIDBとIDPとの間の比Rを以下の範囲におくことを見出している。即ち、
【数4】
及び、
【数5】
また好ましくは、
【数6】
【0085】
に等しく、ここでSはODA/IDPに等しく、径ODAは雄突合せ面16の外縁の径であり、この径は雌肩24の根に位置する点Aを通る径に等しい。
【0086】
0.95乃至0.98程度のRについての値はIDP及びODAの現在の値に依存して得られている。
【0087】
有益なことには、径IDBは所定の径の管についてAPI又は管状ねじ継手製造業者により指定された「ドリフト」径よりも大きく、ドリフトは、マンドレルを接続管における所定径を有するものに置き換えることにより監視され、これにより管ストリングは、その所定径まで工具を落下させても、これらの工具が閉塞をもたらすおそれがないことが保証される。従って管10,10’の内径は特にそれらの現在位置においてドリフト径よりも大きくせねばならない。
【0088】
発明者は、図3に関連して、肩を内表面27の全軸方向長に亘って肉厚にすることは有用でないことを発見している。
【0089】
発明者は、雌環状肩領域24の殆どの変形領域は、約45°の頂半角で、且つ突合せ面26からの距離が大きくなるにつれて減少する雌方領域24の径について、雌支持面23側上の雌肩の根における点Aを通る雌ねじ要素に共軸なテーパー状表面32であることを特記する。
【0090】
このテーパー面に沿う変形は剪断変形であり、また発明者は、剪断応力は最大剪断のこのテーパー状面32と雌肩の内周面27との間のDにおける交点に最小径IDBを導入することにより最小化できることを発見している。
【0091】
従って、テーパー状表面29の角度θが15°未満であれば、最大剪断テーパー32については、径が最小内径IDBでないテーパー状部分29における内周面27を遮ることが可能であることが理解される。
【0092】
面29及び30を接続する点Cについては、点Bと点Dとの間の実質的に中間に配置させるのが有益である。
【0093】
図5は図4の変形例を示し、ここでは遷移部分がテーパー面ではないが、トリック面39は雌ねじ要素に共軸である。
【0094】
図5に示された縦断面において、このトリック面39は円弧として表れる。即ち、
・約10mmの半径を有し、
・ここで中心は雌ねじ要素の材料へ向かって指向されており、
・雄リップの内周面17を有する接続点Bを通り、
・Bにおける正接は、ねじ要素の軸XXに関して角度30°であり、内表面17の母線に関しても角度30°であり、
・雌肩の内表面27の円筒部分30に対するCにおいて正接を有する。
【0095】
このようなトリック面は、内周面17と、内径IDBを有する円筒部分30との間の連続接続点も構成するので、そのBにおける軸XXについての正接の角度は15°乃至45°の範囲である。
【0096】
雌肩の内周面17の遷移部分についての他の連続形態、例えば2つのトリック面の組が可能であり、その2つのトリック面は、互いに近接して正接すると共に、一方がBにおいて内周面17に対し、且つ他方がCにおいて円筒面30に対して対向する曲率及び正接を有する。
【0097】
本発明の目的は当接面16,26に近接しないシーリング面を包含し、更に、図2乃至5は、シーリング面12,13と対応する当接面16,26との間の小さな曲率を有するトリック接続面を示す。他の形式の面も本発明の目的の範囲内で接続点を設けることができ、シーリング面における半径方向干渉が雌環状肩領域における半径方向張力応力及び周方向応力を引き起こす。
【0098】
本発明はねじ継手の変形例に適用可能であり、この変形例は以下を含む。即ち、
・一体的又は接続されたねじ継手と、
・大径管又は小径管(例えば管ストリング又は鋼管ストリング)用ねじ継手と、
・外部突合せ(雌突合せは雌ねじ要素の自由端において)又は突合せの幾つかの組を有する継手と、
・テーパー状又は非テーパーの何れかであるシーリング面、例えば両方のねじ要素のためのトリック、又は一方のねじ要素のためのトリック及び対向する要素のためのテーパーを有するねじ継手と、
・直線(平坦)当接面又は負の角度を有するねじ継手であり、突合せが逆突合せであるか又は負の角度を有する突合せである場合、後者の場合にはねじ要素の軸XXに対する法線に関して突合せの角度が20°未満であり、好ましくは5°乃至10°の範囲であるねじ継手と、
・単独の段差又は多段の何れかであるテーパー状又は直線ねじを有するねじ継手と、
・三角形、丸み付け、又は台形などの形状の変形例を有するねじを持つねじ継手と、
・幅が変化するねじを有するねじ継手とを含む。
【0099】
実施形態
第1例
構成破断(makeup-breakout)試験をVallourec Oil&GasのVAM (商標)カタログn°940(1994年7月)の2つのシリーズのVAM TOP(商標)形式のねじ継手に施した。このねじ継手は以下のとおりである。
【0100】
・管外径:177.8mm(7”)
・管厚:10.36mm(29lb/ft)
・雄端における外径(ODA):170.8mm
・雄リップ(IDP)の内径:161.3mm
・ドリフト径:153.90mm(6.059”)
・管グレード:APIL80(降伏強度552MPa以上)
標準Pシリーズは図2に従っており、雄内径IDBに等しい雌肩領域の雌内径IDPを有する。
【0101】
Qシリーズは本発明によって変更されており、図5の模式図に対応する。このQシリーズにおける雌突合せの補強は円筒部分30の径IDBを156.2mmとして、ドリフト径よりも大きくすると共に、円筒部分30は、半径10mmを有するトリック部分39の前に置くことにより、雌内周面27を有する最大剪断の円錐32の交点Dを内径IDBを有する円筒部分30に生じさせる。
【0102】
比R=IDB/IDPはQシリーズについて0.97に等しい、ウェルはODAの値により請求項3により規定された(0.96−0.99)の範囲内にある。
【0103】
これら構成破断試験の間に、構成トルクは構成回転の回数の関数として記録され、最大トルクを各構成試験において突合せが可塑になるまで同じシリーズに関して1サイクルずつ漸進的に上昇させた。
【0104】
全ての構成破断試験において、ねじ、シーリング面及び当接面はAPI5A2タイプグリースで第1被覆された。
【0105】
図6はQシリーズからのねじ継手のための最後の構成試験についての回転数Nの関数としての構成トルクTのグラフを示す。
【0106】
このグラフにおいて、トルクは、突合せが互いに接触することを意味する点E(トルクTE)を越えて殆ど垂直に急峻に上昇する。この急峻な上昇は点F(トルクTF)まで実質的に線形である。
【0107】
点F(グラフの非線形部分)を越えると、少なくとも1つの管の可塑性の喰い込み(plastic embedding) が始まる。
【0108】
値TOPTは構成トルクについての推奨された値に対応し、この値はTEとTFとの間の値である。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の値から、突合せにより支持された構成トルクの部分を測定する量(TF―TE)は、Qシリーズについての本発明のねじ継手の場合には、従来技術のねじ継手Pに関して非常に増大する(+60%)ことに注目できる。
【0111】
第2例
第1例で規定したVAM(商標)カタログからL80グレードにおける2つの寸法A及びBのVAM(商標)ACEタイプねじ継手における試験。
【0112】
この試験の被験体の特性を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表3はトルクTOPTにおける構成の前後の内径を示す。
【0115】
内径IDBは、標準ねじ継手(A3,B3)と本発明(A1,A2,B1,B2)により変更された継手との双方について、常にドリフト径(表2参照)よりも高いことが明らかである。
【0116】
【表3】
【0117】
a)表4は塑性に至るまでの過トルク試験の結果を示す。ねじシーリング面及び当接面はAPI5Aタイプグリースで被覆してある。
【0118】
【表4】
【0119】
過トルク試験は特にトルクTFの基準と、突合せ及び肩の可視的な外観について以下の順の減少を分類できる。
【0120】
1)35°の角度におけるテーパー状面取りにより補強された雌突合わせ(試験A1,B1)
2)10°の角度におけるテーパー状面取りにより補強された雌突合わせ(試験A2,B2)
3)標準雌突合わせ(試験A3,B3)
TFの値はA1及びB1において標準ねじ継手よりも40%乃至70%大きく、これはA2及びB2における標準ねじ継手のそれよりも5%乃至23%大きかった。
【0121】
10°のテーパー状面取りを有するねじ継手に比べた35°のテーパー状面取りを有するねじ継手の良好な結果は、図4における点C及びDの相対位置により説明する。
【0122】
ねじ継手A1及びB1の場合において、図4における点Dは、点Bに比べて点Cを越えて位置しており、ひいては最初径IDBを有する一定径領域にあるが、このことはA2及びB2のねじ継手については見られない(表5参照)。
【0123】
【表5】
【0124】
試験A及びB1の場合、点Cは、点Bと点Dとの概ね軸方向中間にある。
【0125】
b)内圧下における捻り試験
シリーズA及びBからの同様なねじ継手を表2の推奨構成トルク(TOPT)で先ず構成した。
【0126】
次いでこれらのねじ継手を、接続管のウェル内への回転下降を模擬するように意図された組合わせ応力下におき、同時に以下a)及びb)を施した。
【0127】
a)被験体A1乃A3について内圧43.7MPa、被験体B1乃至B3について56.0MPa、このような圧力は指定された最小降伏強度(表2に従って552MPa)の80%に等しい管本体の応力を生じる。
【0128】
b)可変捻れモーメント。
【0129】
表6はトルクの値Tlを与えており、この値を越えると継手のリークが始まる。
【0130】
【表6】
【0131】
リークTlの前の最大捻れモーメントは、従来技術の参照例(被験体A3,B3)に比べると、10°の面取りで補強された突合わせについては僅かに増大(10%未満)し、対照的に、35°の面取りで補強された突合せ(被験体A1及びB1)については30%乃至40%だけ増大する。
【0132】
c)構成破断サイクル
被験体A1には、表2に示された推奨構成トルクの1.5倍の構成トルクにおいて10回までの連続構成破断サイクルを受けさせた。構成破断トルクの記録及び目視検査においては何の問題にも出会わず、この被験体は10回の構成破断サイクルの後に何の変態も示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は従来技術のねじ及び接続継手を示す。
【図2】 図2は図1のアセンブリのねじ継手の雄及び雌突合わせの詳細を示す。
【図3】 図3は本発明のねじ継手の本発明のねじ継手の詳細を示す。
【図4】 図4は図3の高拡大における詳細を示す。
【図5】 図5は図4の変形例である。
【図6】 図6は突合わせが変形するまでのねじ回し回数の関数としての構成トルクを示す過トルク試験を示すグラフを示す。
Claims (10)
- 管状ねじ継手であって、
第1の管状部品(10)の端部における雄ねじ要素(11)と第2の管状部品(20)の端部における雌ねじ要素(21)とを備え、
前記雄ねじ要素は、雄ねじ(12)が設けられると共に雄リップ(18)で終端し、
この雄リップは第1に外周面を含み、この外周面上には雄シーリング面(13)が形成され、前記雄リップは第2に雄環状当接面(16,14)を含み、これは前記雄シーリング面の近傍で前記雄シーリング面に対して傾斜して位置して前記雄シーリング面に接続される前記雄ねじの自由端の前面により構成されて、前記雄リップは第3に内周面(17)を含み、
前記雌ねじ要素は、前記雄ねじ要素に共働するように、雌ねじ(22)と、第1の内周面とを含み、この内周面の上には雌シーリング面(23)が形成されて、前記雌ねじ要素は更に雌肩を含み、この雌肩は一方には、前記雌シーリング面に対して傾斜してその近傍に位置する雌環状当接面(26)を含み、前記雌肩は他方では雌環状肩領域(24)を規定し、この雌環状肩領域は前記雄当接面(16)が前記雌当接面(26)に当接したときに軸方向圧縮負荷を受け、前記雄ねじは、前記雄当接面が前記雌当接面へ当接するまで雌ねじへねじ込まれ、前記雄シーリング面は次いで前記雌シーリング面と半径方向で干渉するねじ継手であり、
前記雌環状肩領域(24)が第2の内周面(27)を含むと共に、前記雌環状肩領域(24)が外側よりも内側で肉厚にされて、その第2の内周面の少なくとも前記雌当接面(26)へ近接する第2の内周面の第1の内径が、前記雄リップ(18)の内周面(17)の第2の径(IDP)よりも小径(IDB)にされており、これら第1と第2の径(IDB、IDP)の比Rは1未満且つ0.9以上であり、比Rが以下の関係式、
前記雌環状肩領域(24)の第2の内周面(27)は、テーパー状仮想面(32)を遮る点(D)において最小径(ID B )を有し、前記テーパー状仮想面(32)は前記雌ねじ要素に同軸であり、45°の頂半角を有し、前記雌肩領域(24)における径は、前記雌当接面(26)からの距離が増大するにつれて減少し、前記雌当接面(26)の外縁を通過することを特徴とする管状ねじ継手。 - 請求項1の管状ねじ継手において、雌肩領域の内周面(27)の径は、前記雌当接面(26)側のその端部(B)において雄リップ(18)の内周面(17)の第2の内径(IDP)に等しいことを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項2の管状ねじ継手において、前記雌肩領域(24)の内周面(27)が第1の遷移部分(29,39)を含み、その第1の遷移部分ではその内径が前記雌当接面(26)から漸進的に減少すると共に、前記内周面(27)が、最小内径(IDB)を有する第2円筒部分(30)を更に含むことを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項3の管状ねじ継手において、前記雌肩領域(24)の前記内周面(27)の前記遷移部分(29,39)と前記円筒部分(30)とが、接合点と称される点(C) において接続し、その点(C)は、前記雌当接面(26)側の前記遷移部分の端部(B)と、前記雌ねじ要素に同軸であるテーパー状表面を有する雌肩の前記内周面(27)の交差点(D)との間の実質的に軸方向中間に位置することを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項3又は4の管状ねじ継手において、前記雌肩領域(24)の内周面(27)の前記遷移部分が、テーパー状面(29)を含み、これは前記雌ねじ要素に同軸であり、且つ15°乃至45°の範囲における頂半角を有することを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項3又は4の管状ねじ継手において、前記雌肩領域(24)の内周面(27)の前記遷移部分が、テーパー状面(29)を含み、これは前記雌ねじ要素に同軸であり、且つ30°乃至45°の範囲における頂半角を有することを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項3又は4の管状ねじ継手において、前記雌肩領域(24)の内周面(27)の前記遷移部分が、少なくとも1つの円環状面(39)を含み、この円環状面は前記雌ねじ要素に同軸であることを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項7の管状ねじ継手において、前記雌肩領域(24)の内周面(27)の前記遷移部分が、円環状面(39)を含み、前記雌当接面(26)側の前記円環状面の端部 における正接は前記ねじ継手の軸(XX)に関して15°乃至45°の範囲における角度を形成することを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項7又は8の管状ねじ継手において、前記雌肩領域(24)の内周面(27)の前記遷移部分が、円環状面(39)を含み、この円環状面(39)は、前記雌当接面(26)に対向する前記円環状面(39)の端部において前記雌肩領域(24)の前記内周面(27)の円筒部分(30)に対して正接をなすことを特徴とする管状ねじ継手。
- 請求項1乃至9の何れか一項に記載の管状ねじ継手において、前記雌及び雄当接面(16,26)が逆当接面を形成し、この逆当接面は、前記ねじ要素の軸(XX)に対する法線に関して20°未満の負角を有することを特徴とする管状ねじ継手。
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