本発明は、発電プラント及び発電プラントの運転方法に係り、特に、原子力発電プラント及び火力発電プラントに適用するのに好適な発電プラント及び発電プラントの運転方法に関する。
プラントの熱効率を高めるために、圧縮機を用いた蒸気ヒートポンプを適用した火力発電プラントが提案されている。この火力発電プラントの例が、実開平1−123001号公報に記載されている。提案された火力発電プラントは、ボイラで発生した蒸気を高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンに順次供給し、これらのタービンの回転軸に連結された発電機を回転させて発電を行っている。低圧タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管を通してボイラに供給される。給水は、給水配管を通る間に、4段の給水加熱器によって加熱されて温度が高められている。復水器から抽気された蒸気が圧縮機によって圧縮されて温度が上昇し、この圧縮された蒸気が、圧縮機の、軸方向における複数箇所から抽気されて各給水加熱器に供給される。給水は、各給水加熱器に供給されたその蒸気によって加熱される。蒸気は各給水加熱器で凝縮水となり、この凝縮水が給水に供給される。また、蒸気圧縮機は、蒸気を断熱圧縮するために内部エンタルピーが上昇して過熱状態となるので、これを防ぎ所要電力をセーブするために復水を上記圧縮機内にミスト状に噴霧している。
また、特開平5−65808号公報は、熱併給蒸気タービンプラントを記載している。この熱併給蒸気タービンプラントは、ボイラで発生した蒸気をタービンに供給して発電機を回転させて電力を発生し、そのタービンから排気された蒸気を高圧プロセス蒸気供給先及び低圧プロセス蒸気供給先にそれぞれ供給する。高圧プロセス蒸気供給先に供給される蒸気は、タービンから排気された蒸気を圧縮機で圧縮している。
実開平1−123001号公報は、復水器から供給した蒸気を一台の圧縮機で圧縮し、圧縮された蒸気を、圧縮機の、軸方向における複数箇所から4基の給水加熱器に供給する火力発電プラントを記載している。
特開平5−65808号公報
実開平1−123001号公報
一般的に、既設の発電プラントに対して出力向上を行う場合、出力を向上させる度合いにほぼ比例して給水流量及び主蒸気流量を増加させる必要がある。必要に応じて機器等を改造及び交換することによって、出力向上による給水流量及び主蒸気流量の増加に対し、十分な設計余裕を確保することができる。しかしながら、出力の向上を行う場合、発電プラントの熱効率が低下するので、出力向上と共に発電プラントの熱効率の低下を抑制することが望まれる。このために、給水温度を上昇させることが考えられる。
このため、発明者らは、実開平1−123001号公報に記載された、圧縮機で圧縮されて圧縮機から抽気された蒸気を各給水加熱器に供給して給水を加熱することについて検討した。発明者らは、実開平1−123001号公報に記載された火力発電プラントのように一台の圧縮機で4基の給水加熱器に圧縮空気を供給するためには、圧縮機が大型化し、圧縮機の駆動で消費される電力量が多くなる、という課題を見出した。この電力は圧縮機を備えた火力発電プラントで発生した電力を使用するが、圧縮機での大量の電力を消費することは、火力発電プラントの効率を結果として抑制していることになる。
本発明の目的は、出力向上の際にプラントの熱効率を向上させることができる発電プラント及び発電プラントの運転方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、蒸気を発生する蒸気発生装置に接続されて蒸気を導く主蒸気配管、及び主蒸気配管により蒸気が順次供給される第1タービン及び第1タービンよりも圧力が低い第2タービンを有する主蒸気系と、復水器での蒸気の凝縮によって生成された給水を蒸気発生装置に導く給水配管に設けられた給水加熱器と、蒸気を圧縮する蒸気圧縮装置と、蒸気圧縮装置が設置されていなく、主蒸気系の第1の位置から抽気された蒸気をその給水加熱器に導く第1配管と、蒸気圧縮装置が設けられ、第1の位置より下流に位置するその主蒸気系の第2の位置から排気された蒸気を給水加熱器に供給する第2配管とを備えたことにある。
給水加熱器において、給水が、第1配管によって導かれる蒸気、及び蒸気圧縮装置で圧縮され第2配管によって導かれる蒸気によって加熱されるので、蒸気圧縮装置における圧縮による蒸気の温度上昇の度合いを小さくすることができる。このため、蒸気圧縮装置の駆動によって消費される熱エネルギーを低減することができ、発電プラントでの出力向上の際に発電プラントの熱効率を向上させることができる。
蒸気を発生する蒸気発生装置に接続されて蒸気を導く主蒸気配管、及び主蒸気配管により蒸気が順次供給される第1タービン及び第1タービンよりも圧力が低い第2タービンを有する主蒸気系と、復水器での蒸気の凝縮によって生成された給水を蒸気発生装置に導く給水配管に設けられた複数の給水加熱器と、駆動装置によって駆動され、蒸気を順番に圧縮する第1及び第2蒸気圧縮機と、第1及び第2蒸気圧縮機が直列に設けられ、主蒸気系のある位置から抽気された蒸気をある給水加熱器に導く第1配管とを備え、
第1及び第2蒸気圧縮機のうち蒸気の流れ方向で上流に位置する第1蒸気圧縮機から排気された蒸気の一部をある給水加熱器の上流に配置された他の給水加熱器に導く第2配管を備えたことによっても、上記の目的を達成することができる。
本発明によれば、出力向上の際にプラントの熱効率を向上させることができる。
本発明の好適な一実施例である実施例1の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
図1に示す蒸気圧縮機の特性を示す説明図である。
発電プラントの熱力学的サイクルの説明図であり、(A)は従来の発電プラントの概略構成図、(B)は(A)に示す従来の発電プラントのT−S線図、(C)は本発明の一つの概要を示す改良案の発電プラントの概略構成図、及び(D)は(C)に示す改良案の発電プラントのT−S線図である。
発電プラントにおける蒸気圧縮サイクルの成績係数と熱効率向上割合の関係を示す特性図である。
発電プラントの熱効率と電気出力向上の関係を示す説明図である。
給水加熱器内の温度分布を示す説明図である。
図3(C)に示された改良案である発電プラントの3つの具体例を示す説明図である。
沸騰水型原子力発電プラントにおける改良案の概要を示す説明図である。
本発明の他の実施例である実施例2の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例3の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例4の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例5の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例6の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例7の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例8の発電プラントである加圧水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例9の発電プラントである高速増殖炉原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例10の発電プラントである火力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例11の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
本発明の他の実施例である実施例12の発電プラントである沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
符号の説明
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1K,1L…沸騰水型原子力発電プラント、1G 加圧水型原子力発電プラント、1H 高速増殖炉原子力発電プラント、1J 火力コンバインド発電プラント、2,2A…原子炉、3…高圧タービン、4…湿分分離器、5A,5B,5C…低圧タービン、6…主蒸気配管、11…復水器、15…給水配管、16A…第1高圧給水加熱器、16B…第2高圧給水加熱器、17A…第3低圧給水加熱器、17B…第4低圧給水加熱器、17C…第5低圧給水加熱器、17D…第6低圧給水加熱器、19…給水ポンプ、20,21,22,23,24,25…抽気管、26…ドレン配管、27,27A,27B,27C,27D,27E,27F…蒸気圧縮装置、28,28A,28B…蒸気圧縮機、29…駆動装置、37,38…タービン、45,54,57…蒸気発生器、50…高速増殖炉、59…ガスタービン、60…燃焼器。
発明者らは、実開平1−123001号公報に記載された火力発電プラントを詳細に検討した。この結果、発明者らは、この火力発電プラントにおいて、前述したように、圧縮機が大型化して圧縮機で消費される電力量が多くなる、という課題を見出した。この電力としては圧縮機を備えた火力発電プラントで発生した電力を使用するので、圧縮機での大量の電力消費は、火力発電プラントの効率を結果として抑制している。
発明者らは、この課題の解決案を見出すべく、種々の検討を行った。この検討の結果、発電プラント、たとえば、火力発電プラントにおいて、タービン等の蒸気系から抽気した蒸気を、給水を加熱する給水加熱器に供給しながら、この給水加熱器にその蒸気の抽気点よりも下流の位置から供給した蒸気を圧縮機で圧縮してその給水加熱器に供給する(以下、この案を改良案という)ことによって、上記の課題を解決できることを発明者らが見出した。この改良案は本発明の概念を示している。改良案では、タービン等の蒸気系から抽気した蒸気を、圧縮機を通さないで、給水を加熱する給水加熱器に供給しながら、この給水加熱器に圧縮機で圧縮された蒸気を供給するので、圧縮機による圧縮によって上昇する蒸気の温度上昇幅を、実開平1−123001号公報に記載された火力発電プラントで必要とする、圧縮機による圧縮によって上昇する蒸気の温度上昇幅よりも小さくすることができる。改良案の発電プラントで使用される圧縮機の駆動に消費される所内電力は、実開平1−123001号公報の発電プラントで使用される圧縮機の駆動に消費される所内電力よりも少なくなる。このため、改良案の発電プラントにおけるプラントの熱効率が向上する。
従来の発電プラント及び改良案の発電プラントの熱力学的サイクルについて、図3を用いて説明する。
図3(A)は、圧縮機が適用されない従来の発電プラントの概略構成を示している。ボイラ(蒸気発生装置)で発生した蒸気は主蒸気配管を通ってタービンに供給される。タービンから排出された蒸気は復水器で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管を通ってボイラに供給される。給水は、タービンから抽気されて給水配管に供給された抽気蒸気によって加熱される。
図3(B)は、図3(A)に示す従来の発電プラントに対するT−S線図を示している。ここで、Tは温度、Sはエントロピである。エントロピSは通常用いられる比エントロピに流量Gを乗じたものである。ボイラからの入熱量をQ1とし、復水器からの放熱量をQ2とする。入熱量Q1はABCDIJKLMAの面積で表され、放熱量Q2はAIJKLMAの面積で表される。タービンでなされる仕事はL=Q1−Q2となり、ABCDIAの面積に対応する。発電プラントの熱効率ηはη=L/Q1によって算出される。
図3(C)は、圧縮機が適用された改良案の発電プラントの概略構成を示している。改良案の発電プラントは、従来の発電プラントの構成に圧縮機を付加した構成を有する。この改良案の発電プラントでは、タービンから排気された蒸気を圧縮機で圧縮し、圧縮された蒸気を、抽気蒸気が供給された給水加熱器に供給する。ボイラに供給される給水は、抽気蒸気及び圧縮された蒸気によって加熱される。
図3(D)は、図3(C)に示す改良案の発電プラントに対するT−S線図を示している。改良案においても、ボイラからタービンへの入熱量をQ1iとし、復水器からの放熱量をQ2iとする。改良案では給水加熱器によりΔQ3のエネルギーが与えられるので、従来の発電プラント(図3(A))及び改良案の発電プラント(図3(C))において蒸気発生量が同じであれば、Q1i=Q1−ΔQ3であり、Q2i=Q2−ΔQ2である。ここで、ΔQ1を、圧縮機を有する蒸気ヒートポンプの軸動力とした時、蒸気ヒートポンプの動力と蒸気ヒートポンプから給水の加熱のために供給されるエネルギーの間には、成績係数COPを介して(1)式及び(2)式の関係式が成り立つ。
ΔQ3=COP×ΔQ1 ……(1)
ΔQ2=(COP−1)×ΔQ1 ……(2)
そこで、改良案のタービンでなされる仕事はLi=Q1i−Q2iとなり、改良案の発電プラント熱効率ηiはηi=Li/Q1iによって算出される。
改良案の発電プラントにおける正味の仕事Liは、従来の発電プラント(図3(A))におけるタービンの仕事Lから圧縮機に必要な動力ΔQ1を差し引いた(3)式の関係で表すことができる。
Li=L−ΔQ1 ……(3)
Q1i=Q1−COP×ΔQ1であるから、両者を整理することによって、改良案の発電プラントの熱効率ηiは(4)式で表される。
ηi=(L−ΔQ1)/(Q1−COP×ΔQ1) ……(4)
L=η×Q1となるので、(4)式は(5)式のように整理することができる。
ηi/η ≒ 1+(ΔQ1/Q1)×(COP−1/η) ……(5)
(5)式において、右辺の第2項が正の値を取るならば、左辺は1よりも大きな値となる。したがって、改良案の発電プラントのプラント熱効率は、図3(A)に示す従来の発電プラントにプラント熱効率よりも高くなる。
ここで、成績係数COP(Coefficient of Performance)は、正味の出力・効率が向上することを蒸気ヒートポンプに用いる指標であり、(6)式で定義される。
COP=(QL+Qh)/QL ……(6)
ここで QLは蒸気ヒートポンプの圧縮動力及びQhは蒸気ヒートポンプで汲み上げた熱エネルギーである。(1)式及び(2)式から、例えば熱効率ηが0.33である場合、COP>3の範囲で大きな蒸気ヒートポンプを使用すれば、従来例に比べて熱効率が向上することが分かる。
蒸気圧縮機を用いた発電プラントにおける蒸気圧縮サイクルの成績係数と熱効率向上割合の関係を、図4を用いて説明する。図4において、横軸は成績係数COP、縦軸は熱効率向上割合ηi/ηを示している。発電プラントの一例として、BWR5(電気出力1100MWe)型の沸騰水型原子力発電プラントを用いて、上記の関係を説明する。この沸騰水型原子力発電プラントでは、蒸気発生装置である原子炉の熱出力Q1が3300MWt、及び蒸気圧縮ヒートポンプの軸動力ΔQ1が33.5MWtとなる。ここで、蒸気温度Tが100℃から160℃に上昇するまで圧縮機によって蒸気を圧縮するとき、成績係数COPが6程度になり、ηi/ηが1.0305になる。これは、上記した従来のBWR5型の沸騰水型原子力発電プラントにおける熱効率ηの公称値が定格出力(100%出力)運転時で33.4%である(原子力発電便覧’95年度版、第7章 原子炉設備、335頁(電力新報社)参照)ので、相対的に約3%、絶対値で約1%熱効率が向上して熱効率ηが34.4%になることを意味している。
発電プラントの熱効率と電気出力向上の関係を、図5を用いて説明する。上記したように、1100MWe級の沸騰水型原子力発電プラントでは、定格100%運転時でのプラントの熱効率の公称値が約33.4%である。この定格100%の従来の運転点Aから電気出力を120%まで向上させる電気出力向上運転を行ったとき、この運転点は、プラントの熱効率が運転点Aから低下するので、B点になる。そこで、前述の改良案では、電気出力120%での運転に加え、プラントの熱効率を従来の沸騰水型原子力発電プラントに比べて0.6%向上させる運転点Cの実現を目標にした。但し、この場合には、以下に示す2つの課題が生じる。これらの課題は、(1)中圧蒸気タービン駆動源へ抽気蒸気を供給することで、若干の熱効率低下が生じる(運転点E)、及び(2)蒸気圧縮機の使用によって、この蒸気圧縮機を駆動するため、所内電力の消費量が増加し、電気出力が若干低下する(運転点D)、ことである。試算した結果、蒸気圧縮機の駆動による所内電力の消費割合は約2〜5%程度になる。(1)及び(2)の課題により、目標である運転点Cを実現することはできないが、運転点D及びEは従来の運転点A(電気出力100%及びプラント熱効率33.4%)に比べると、電気出力及びプラント熱効率を増加することができる。
給水配管に設けられた給水加熱器内の温度分布の概要を、図6に示す。原子力発電プラントには、一般的に、2基の高圧給水加熱器及び4基の低圧給水加熱器の合計6基の給水加熱器が設けられている。これらの給水加熱器は、いずれも、横置きの胴体内に複数のU字伝熱管を配置した熱交換器である。低温の給水が伝熱管内を流れ、高圧タービンまたは低圧タービンから抽気された蒸気が、給水加熱器の胴体に設けられたノズルから胴体内で伝熱管の外側に供給される。伝熱管内を流れる給水は、胴体内に供給された抽気蒸気によって加熱される。
被加熱流体である給水は、抽気蒸気と熱交換されるが、単相流のままで顕熱により温度が上昇する。加熱流体である抽気蒸気は、給水との熱交換により飽和蒸気から凝縮して徐々に過冷却され、給水加熱器の底部にドレン水として溜まる。このドレン水は、各給水加熱器内を高温・高圧側から低温・低圧側に向かって圧力差によって流れ、各給水加熱器によりカスケード式に熱回収され、最終的には復水器内のホットウェルに供給される。
給水加熱器を設計する際、給水と抽気蒸気の近づき温度として、抽気蒸気入口温度と給水出口温度の温度差をターミナル温度差TDと定義する。さらに、抽気蒸気出口温度と給水入口温度の温度差をドレンクーラ温度差DCと定義する。給水加熱器の伝熱面積が既設のままであれば、給水加熱器の運転条件の仕様である加熱用の抽気蒸気流量を増加させることによって、ターミナル温度差TDを小さくすることができる。すなわち、給水出口温度Tfoを上昇させることができる。また、抽気蒸気を導く抽気管の口径を大きくすることによって、抽気管の摩擦損失が減少して圧力損失が低下し、抽気蒸気量が増加する。給水加熱器に供給される抽気蒸気の流量に加えて、蒸気圧縮機で圧縮されて温度が上昇した蒸気を加熱用として給水加熱器に供給することによって、給水加熱器に供給される、給水の加熱用の蒸気量が増加する。この結果、給水の加熱量が大きくなり、給水加熱器1基あたりの伝熱管の面積を変えなくても、給水出口温度Tfoが上昇する。すなわち、容易に発電プラントの熱効率の向上を図ることができる。
BWR5型の沸騰水型原子力発電プラントにおける熱効率ηが、上記したように、定格出力(100%出力)運転時で33.4%であり、蒸気ヒートポンプの蒸気圧縮機を、COP>3を満足するように、主蒸気系の蒸気抽気点及び給水加熱器に接続すればよい。ABWRを用いた原子力発電プラントに適用した場合には、この原子力発電プラントの熱効率が34.5%であるので、蒸気ヒートポンプの蒸気圧縮機を、COP>2.9を満足するように、主蒸気系の蒸気抽気点及び給水加熱器に接続すればよい。高速増殖炉発電プラントに適用した場合には、高速増殖炉発電プラントの熱効率が41.9%であるので、蒸気ヒートポンプの蒸気圧縮機を、COP>2.38を満足するように、主蒸気系の蒸気抽気点及び給水加熱器に接続すればよい。火力コンバインド発電プラントに適用した場合には、火力コンバインド発電プラントの熱効率が42%であるので、蒸気ヒートポンプの蒸気圧縮機を、COP>2.38を満足するように、主蒸気系の蒸気抽気点及び給水加熱器に接続すればよい。
上記した改良案における各給水加熱器での給水の温度上昇を、図7を用いて説明する。沸騰水型原子力発電プラントは、図7に示すように、6基の給水加熱器を給水配管に設けている。給水配管には、蒸気発生装置である原子炉側から、第1高圧給水加熱器、第2高圧給水加熱器、第3低圧給水加熱器、第4低圧給水加熱器、第5低圧給水加熱器及び第6低圧給水加熱器が設けられている。「原子力発電便覧’95年度版、第7章 原子炉設備、355頁(電力新報社)」を参考にして、1100MWe級の沸騰水型原子力発電プラントに設けられた6基の給水加熱器のそれぞれによる給水の温度上昇値を、図7に示す。図7に示す棒グラフが各々の給水加熱器での給水の温度上昇値を表している。棒グラフの横の( )内にその温度上昇値を付記した。給水の温度上昇値は最低17℃から最高46℃まで幅を持っており、各給水加熱器により約29℃の温度差が見られる。
発明者らは、前述の改良案において、蒸気圧縮機で圧縮された蒸気を、特定の3箇所の給水加熱器(第1高圧給水加熱器、第3低圧給水加熱器及び第6低圧給水加熱器)に供給する3つの具体例を考えた。便宜的に、第6低圧給水加熱器に供給する場合をaケース、第3低圧給水加熱器に供給する場合をbケース及び第1高圧給水加熱器に供給する場合をcケースという。これらのケースにおいて、蒸気圧縮機における圧縮比を保守的に15とした。それぞれのケースを、以下に詳細に説明する。なお、a,b及びcケースとも、蒸気圧縮機で圧縮された蒸気以外に、低圧タービン等の主蒸気系から抽気された抽気蒸気が、蒸気圧縮機を通らないで該当する給水加熱器に供給される。
(a)aケースでは、低圧タービン(LPT)から排気された圧力5kPaの蒸気を1台の蒸気圧縮機で圧縮し、この蒸気を、制御弁によって圧力が40.4kPaに低下するまで調整して、第6低圧給水加熱器に供給する。このとき、蒸気圧縮機を並列に配置すれば、給水加熱器に供給する蒸気流量をさらに増加することができる。aケースは、最も低エンタルピーの、低圧タービンから排気された蒸気から排熱を回収するため、沸騰水型原子力発電プラントの給水加熱システムとして最も効率的な方法である。勿論、ここで給水温度が20℃増加した分、第5低圧給水加熱器から第1高圧給水加熱器までの抽気蒸気条件を変える必要がある。また、蒸気圧縮機を駆動するために消費される電力が増大する。
(b)bケースでは、低圧タービンから抽気された圧力40kPaの蒸気を、1台の蒸気圧縮機で圧縮し、この蒸気を、制御弁によって蒸気の圧力が465kPaに低下するまで調整して、第3低圧給水加熱器に供給する。蒸気圧縮機を並列配置すれば、第3低圧給水加熱器に供給される蒸気流量をさらに増加することができる。bケースは、6基ある給水加熱器のうちで最も給水温度の上昇割合が17℃と少ない第3低圧給水加熱器に排熱回収効果を付与することによって、給水加熱器の温度上昇割合のバランスを平準化する狙いがある。これにより、抽気条件の最適化による再生サイクルの熱効率向上も図れる。また、第3低圧給水加熱器には、高圧タービンと低圧タービンを連絡する主蒸気配管に設けられた湿分分離器からのドレン水が、給水の加熱源として供給される。このドレン水は、大きな液の塊として第3低圧給水加熱器に供給される。蒸気圧縮機で圧縮された蒸気の第3低圧給水加熱器への供給は、そのドレン水を微粒子化して給水との熱交換面積を増加させる狙いもある。この場合には、第1高圧給水加熱器及び第2高圧給水加熱器に供給する抽気蒸気の条件を変える必要がある。
(c)cケースでは、低圧タービンから抽気された圧力278kPaの蒸気を、1台の蒸気圧縮機で圧縮し、この蒸気を、制御弁によって蒸気の圧力が2.36MPaに低下するまで調整して、第1高圧給水加熱器に供給する。この時、蒸気圧縮機を並列配置すれば、第1高圧給水加熱器に供給する蒸気流量をさらに増加することができる。cケースは、蒸気発生装置である原子炉に最も近い最終段の第1高圧給水加熱器に供給される給水を圧縮蒸気によって昇温するため、他の5基の給水加熱器への抽気蒸気などの従来の条件を変更することがない。このため、沸騰水型原子力発電プラントの改造及び運転条件変更について最も軽微な変更で給水温度上昇が図れ、比較的容易な排熱回収給水加熱システムを構成できる。
代表的な3ケースについて、蒸気圧縮機で圧縮された蒸気を用いた給水の加熱量の増加を併用した方法を、代表的な3ケース、すなわち、a,b及びcケースについて、説明した。蒸気圧縮機の圧縮比が15から20の範囲では、それらのケースで対象になった、圧縮された蒸気が供給される給水加熱器以外の給水加熱器に対しても、比較的低質である低温で低圧の蒸気を蒸気圧縮機で圧縮して供給し、排熱回収することができる。低圧タービンからの抽気蒸気及び排気蒸気のそれぞれの圧縮蒸気を利用すれば、最大圧力の第1高圧給水加熱器に圧縮蒸気を供給することができ、排熱回収も十分可能である。更に、圧縮蒸気の給水加熱器への供給を最適化すれば、各々の給水加熱器へ数℃ずつ温度上昇するような分散供給方法も十分に考えられる。
以上述べた検討によって得られた沸騰水型原子力発電プラントの改良案の概要を、図8を用いて説明する。この改良案の説明では、圧縮機で圧縮された蒸気を第3低圧給水加熱器に供給する発電プラントを代表例として用いている。なお、第1及び第2高圧給水加熱器等の他の給水加熱器でも同様である。
沸騰水型原子力発電プラントの第3低圧給水加熱器には、給水を加熱するため、低圧タービンから抽気された湿り蒸気である抽気蒸気が抽気管を介して供給され、さらに、湿分分離器から排出された、蒸気の湿りを除去した飽和ドレン水が供給される。抽気蒸気の第3低圧給水加熱器への供給は、低圧タービンの抽気点と第3低圧給水加熱器内の圧力差によって行われる。飽和ドレン水の第3低圧給水加熱器への供給は、湿分分離器と第3低圧給水加熱器内の圧力差によって行われる。本改良案は、この抽気蒸気及び飽和ドレン水の供給に加えて、低圧タービンからの抽気蒸気または排気蒸気を蒸気圧縮機で圧縮し、加熱用の圧縮蒸気として第3低圧給水加熱器に供給している。
オプションOP1として、湿分分離器を蒸気圧縮機の上流側に設置する案との併用がある。湿分分離器の設置により、蒸気圧縮機に供給する蒸気を、湿分を除去して乾き蒸気にすることができる。
オプションOP2として、蒸気圧縮機で圧縮された乾き蒸気にスプレー水のミストを噴霧する案の併用がある。スプレー水のミスト噴霧は、蒸気圧縮機の吐出側で急激に圧縮されて乾き蒸気の温度が高くなり過ぎたときに蒸気圧縮機の性能低下を防止するために行われる。スプレー水のミスト噴霧により、蒸気圧縮機から第3低圧給水加熱器に供給する加熱用の圧縮蒸気を湿り蒸気にすることもある。スプレー水のミスト噴霧は、従来よりも多くの加熱蒸気を第3低圧給水加熱器に供給することになり、第3低圧給水加熱器での給水の温度上昇を増大させる。このため、第3低圧給水加熱器において従来よりも給水温度を約20℃上昇させることができ、原子炉により高い温度の給水を供給することができる。これは、原子炉から排出される蒸気の流量を増加させ、熱出力増加に比例して電気出力を向上させることができる。
オプションOP3は、高流量比のジェットポンプを組み合せることである。このオプションOP3の併用によって、原子力運転時、特に電気出力を120%まで増大させる出力向上時において、狭まる炉心流量制御を用いた運転幅を拡大することができる。このため、炉心流量制御及び制御棒操作によって原子炉出力を制御していた従来の沸騰水型原子力プラントの運転方法を、炉心流量制御及び給水温度制御とオプションOP3である高流量比のジェットポンプによる冷却材の炉心への供給を併用した沸騰水型原子力プラントの運転方法に変えることによって、制御棒を用いないで原子炉を運転することができる。このため、運転サイクル初期から末期にかけて炉心流量を増加させ、炉心入口冷却水温度を低下させることによって、発電プラントの出力向上運転時でも定格出力運転時と同様な炉心流量幅を確保することができ、電気出力を20%向上させることができる。オプションOP3を用いれば、制御棒を設置する必要がないので、定期検査の期間を短縮することができる。
以上に述べた改良案を基にして成された本発明の実施例を、以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の発電プラントを、図1を用いて説明する。本実施例の発電プラントは、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1である。
沸騰水型原子力発電プラント1は、蒸気発生装置である原子炉2、高圧タービン(第1タービン)3、低圧タービン(第2タービン)5A,5B,5C、主蒸気配管6、復水器11、複数の給水加熱器、給水配管15及び蒸気圧縮装置27を備えている。これらの給水加熱器は、第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器(第1低圧給水加熱器)17A、第4低圧給水加熱器(第2低圧給水加熱器)17B、第5低圧給水加熱器(第3低圧給水加熱器)17C及び第6低圧給水加熱器(第4低圧給水加熱器)17Dを含んでいる。低圧給水加熱器は、低圧タービンからの抽気蒸気が供給される給水加熱器である。高圧給水加熱器は、高圧タービン、または高圧タービンの出口側の主蒸気配管6からの抽気蒸気が供給される給水加熱器である。高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B,5Cは、主蒸気配管6によって原子炉1に接続される。湿分分離器(湿分分離装置)4は、高圧タービン3と低圧タービン5A,5B及び5Cを接続している主蒸気配管6に設置される。隔離弁7及び主蒸気調節弁8が、原子炉1と高圧タービン3の間に存在する主蒸気配管6に設置される。高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B,5Cは、1つの回転軸10によって互いに連結され、さらに、発電機9にも連結される。本実施例は、1台の高圧タービン及び3台の低圧タービンを設けているが、発電プラントの種類によりこれらの台数を変えてもよい。
本実施例は、主蒸気系及び給水系を有する。主蒸気系は、高圧タービン3、湿分分離器4、低圧タービン5A,5B,5C、主蒸気配管6及び復水器11を有する。給水系は、給水配管15、第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C、第6低圧給水加熱器17D、復水ポンプ18及び給水ポンプ19を有する。
復水器11は内部に複数の伝熱管12を配置している。これらの伝熱管12は、海水供給管13A及び海水排出管13Bに接続される。海水循環ポンプ14が海水供給管13Aに設置される。海水供給管13A及び海水排出管13Bは海35まで伸びている。
給水配管15が復水器11と原子炉2を接続する。第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dは、原子炉2から復水器11に向ってこの順番で給水配管15に設置されている。復水ポンプ18が復水器11と第6低圧給水加熱器17Dの間で給水配管15に設けられる。給水ポンプ19が第1高圧給水加熱器16Aと第2高圧給水加熱器16Bの間で給水配管15に設けられる。
高圧タービン3の抽気点(第1の位置)で高圧タービン3に接続された抽気管20が第1高圧給水加熱器16Aに接続される。高圧タービン3と湿分分離器4の間に存在する主蒸気配管6に接続された抽気管21が第2高圧給水加熱器16Bに接続される。低圧タービン5Bに抽気点71で接続された抽気管22が第3低圧給水加熱器17Aに接続される。湿分分離器4に接続されたドレン配管26が第3低圧給水加熱器17Aに接続される。低圧タービン5Bに抽気点72で接続された抽気管23が第4低圧給水加熱器17Bに接続される。低圧タービン5Bに抽気点73で接続された抽気管24が第5低圧給水加熱器17Cに接続される。低圧タービン5Bに抽気点74で接続された抽気管25が第6低圧給水加熱器17Dに接続される。抽気点71,72,73及び74は、低圧タービン5Bの軸方向において、低圧タービン5Bの蒸気流入口から低圧タービン5Bの蒸気排出口に向ってその順番に設けられている。これらの抽気点は、低圧タービン5Bに設けられた複数の静翼の異なる段数の位置で、低圧タービン5Bのタービンケーシング(図示せず)に設けられる。第1高圧給水加熱器16A、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dを接続するドレン水回収配管34は、復水器11に接続される。
図1では、低圧タービン5Bが大きく低圧タービン5A,5Cが小さくなっているが、これらの低圧タービンの大きさは同じである。図示されていないが、低圧タービン5A及び5Cに対しても復水器11がそれぞれ設けられており、各復水器11にそれぞれ給水配管15が接続されている。低圧タービン5A,5B及び5Cに対応してそれぞれ設けられた合計3基の復水器11にそれぞれ別々に接続された給水配管15は、第2高圧給水加熱器16Bの上流に位置する合流点で合流して第2高圧給水加熱器16Bに接続される。その合流点よりも上流では、低圧タービン5A,5B及び5Cごとに並列配置された3本の給水配管15には、低圧給水加熱器である第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17D、及び復水ポンプ18が、この順序で下流から上流に向ってそれぞれ設置されている。このため、低圧タービン5A及び5Cのそれぞれに対応して、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17D、及び復水ポンプ18を設置した各給水配管5が、第2高圧給水加熱器16Bよりも上流に配置されている。低圧タービン5A及び5Cには、低圧タービン5Bと同様に、抽気点71,72,73及び74が設けられる。低圧タービン5Aの抽気点71,72,73及び74には、低圧タービン5Bと同様に、抽気管22,23,24及び25が接続される。低圧タービン5Aに接続された抽気管22,23,24及び25は、低圧タービン5Bの場合と同様に、低圧タービン5Aに対応して設けられた第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dに接続される。低圧タービン5Cの抽気点71,72,73及び74にも、低圧タービン5Bと同様に、抽気管22,23,24及び25が接続される。低圧タービン5Cに接続された抽気管22,23,24及び25は、低圧タービン5Bの場合と同様に、低圧タービン5Cに対応して設けられた第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17Dに接続される。
以下の説明において、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B、第5低圧給水加熱器17C及び第6低圧給水加熱器17D、抽気管22,23,24及び25及び抽気点71,72,73及び74は、特に断りが無ければ、低圧タービン5Bに対応して設けられたそれらを意味している。
蒸気圧縮装置27は、蒸気圧縮機28、駆動装置(例えば、モータ)29及び制御弁30を有する。駆動装置29は蒸気圧縮機28の回転軸に連結されている。低圧タービン5Bの抽気点71(第2の位置)に接続された蒸気供給管31が蒸気圧縮機28の蒸気流入口に接続される。蒸気供給管32が蒸気圧縮機28の蒸気排出口と第1高圧給水加熱器16Aを接続している。蒸気供給管31及び32が第2配管であり、本実施例では抽気管20が第1配管である。制御弁30が蒸気供給管32に設けられる。抽気蒸気が流れる抽気管20〜25には、蒸気圧縮機28が設置されていない。蒸気圧縮機28として、単段遠心式水蒸気圧縮機を用いる。蒸気圧縮機28として他のタイプの圧縮機を用いてもよい。蒸気圧縮機28及び駆動装置29は、タービン建屋内の空き空間に設置される。
抽気管22が接続される抽気点71と蒸気供給管31が接続される抽気点71は、低圧タービン5Bの同じ段数の静翼が設けられている位置で、低圧タービン5Bの周方向において互いにずれている。低圧タービン5A及び5Cに対応して設けられた蒸気圧縮装置27も、第1高圧給水加熱器16Aに、同様に、接続されている。蒸気供給管31は抽気管22に接続してもよい。蒸気圧縮機28の駆動により、抽気管22を通して第3低圧給水加熱器17Aに供給される蒸気量が減少しないように、蒸気供給管31の流路断面積を抽気管22のそれよりも小さくする。配管の流路断面積を変える替りに、蒸気供給管31に流量調節弁を設けて、蒸気圧縮機28に供給する蒸気量を調節してもよい。抽気管及び蒸気供給管31の流量断面積を変えることによる蒸気流量の調節方法、または蒸気供給管31に設けた流量調節弁による蒸気流量の調節方法は、後述の実施例2から実施例12の各実施例にも適用される。
原子炉2内の炉心(図示せず)には、再循環ポンプ(図示せず)及びジェットポンプ(図示せず)によって冷却水が供給される。冷却水は炉心内に装荷された複数の燃料集合体(図示せず)に含まれた核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、冷却水の一部が蒸気になる。原子炉2で発生した蒸気は、主蒸気配管6を通って、高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B及び5Cにそれぞれ供給される。高圧タービン3から排出された蒸気は、途中で、湿分分離器4により湿分が除去された後に、低圧タービン5A,5B及び5Cにそれぞれ導かれる。低圧タービン5A,5B及び5C内の圧力は、高圧タービン3内の圧力よりも低くなっている。高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B及び5Cは、蒸気によって駆動され、発電機9を回転させる。これにより、電力が発生する。低圧タービン5A,5B及び5Cから排気された蒸気は、復水器11で凝縮されて水になる。海水が、海水循環ポンプ14の駆動によって海水供給管13Aを通して復水器11内の各伝熱管12内に供給される。各伝熱管12から排出された海水は、海水排出管13Bを通って海35に放出される。低圧タービン5A,5B及び5Cから排気された蒸気は、それぞれに対応して別々に設けられた各復水器11内の伝熱管12内を流れる海水によって冷却されて凝縮される。蒸気の凝縮により、各伝熱管12内を流れる海水の温度が上昇する。
各復水ポンプ18、及び給水ポンプ19がそれぞれ駆動されている。各復水器11で生成された凝縮水は、給水として、これらのポンプによって昇圧され、給水配管15を通って原子炉2に供給される。給水配管15内を流れる給水は、各低圧タービンに対応してそれぞれ設けられた第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B及び第3低圧給水加熱器17Aによって順次加熱され、低圧タービン5A,5B及び5Cに対して共通に用いられる第2高圧給水加熱器16B及び第1高圧給水加熱器16Aによってさらに加熱されて温度を上昇させ、設定温度になった状態で原子炉2に供給される。
給水は、第6低圧給水加熱器17Dにおいて、低圧タービン5Bの抽気点74から抽気されて抽気管25を通して供給される抽気蒸気によって加熱される。給水は、第5低圧給水加熱器17Cにおいて、低圧タービン5Bの抽気点73から抽気されて抽気管24を通して供給される抽気蒸気によって加熱される。給水は、第4低圧給水加熱器17Bにおいて、低圧タービン5Bの抽気点72から抽気されて抽気管23を通して供給される抽気蒸気によって加熱される。給水は、第3低圧給水加熱器17Aにおいて、低圧タービン5Bの抽気点71から抽気されて抽気管22を通して供給される抽気蒸気、及び湿分分離器4から排出されてドレン配管26を通して供給される飽和ドレン水によって加熱される。給水は、第2高圧給水加熱器16Bにおいて、主蒸気配管6から抽気されて抽気管21を通して供給される抽気蒸気によって加熱される。給水は、第1高圧給水加熱器16Aにおいて、高圧タービン3の抽気点(第1の位置)から抽気されて抽気管20を通して供給される抽気蒸気によって加熱される。
低圧タービン5A及び5Cのそれぞれに対応して設けられた第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B及び第3低圧給水加熱器17Aにおいても、上記した各抽気蒸気を用いてそれぞれの給水配管15内を流れる給水を加熱する。
蒸気圧縮装置27の機能について説明する。所内電力、すなわち、発電機9で発生した電力により駆動装置29を駆動して蒸気圧縮機28の動翼が設けられたローターを回転させる。抽気点71で低圧タービン5Bから抽気された蒸気が、蒸気供給管31を通って蒸気圧縮機28に供給される。この蒸気は、蒸気圧縮機28の駆動により圧縮されて圧力が高められた後、蒸気供給管32に排出される。蒸気は、蒸気圧縮機28によって断熱圧縮されるために、温度も上昇する。圧縮された蒸気の温度は、抽気管20で高圧タービン3から抽気された蒸気の温度近くまで上昇する。温度及び圧力が上昇した蒸気は、制御弁30の開度調節によって、その蒸気の圧力が第1高圧給水加熱器16Aの胴体内の圧力以上になり、且つ圧縮された蒸気が第1高圧給水加熱器16Aの胴体内を経て抽気管20に逆流しないように調節されて、蒸気供給管32を通して第1高圧給水加熱器16Aの胴体側に供給される。抽気管20を通して供給される抽気蒸気も、第1高圧給水加熱器16Aの胴体側に供給される。第1高圧給水加熱器16Aでは、給水は、抽気管20を通して供給される抽気蒸気及び蒸気供給管32を通して供給される圧縮された蒸気によって加熱される。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27は、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられた蒸気圧縮装置27は、低圧タービン5Aの抽気点71から抽気された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。低圧タービン5Cに対して設けられた蒸気圧縮装置27は、低圧タービン5Cの抽気点71から排出された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。
蒸気圧縮機28の特性を図2に示す。図2において、横軸は蒸気圧縮機に供給される蒸気の流量Q、縦軸は蒸気圧縮機から排気される蒸気の吐出圧力Pを示し、回転数Nrをパラメータにしている。Q−P特性線、及び蒸気圧縮機の吸込み側及び吐出側のシステム抵抗曲線に基づいて蒸気圧縮機28の定格運転点が決定される。蒸気圧縮機28の回転数を増加すれば、蒸気圧縮機28から吐出される蒸気流量Q及び蒸気の吐出圧力Pも増加する。可変周波数電源装置を用いて蒸気圧縮機28の駆動装置29の回転数及び出力を制御してもよい。可変周波数電源装置を用いて、蒸気圧縮機28の定格運転点を変えて蒸気の流量及び圧力を設定することも可能である。適宜、蒸気の流量及び圧力を設定することによって、効率の良い蒸気圧縮機28の運転が可能となる。
本実施例における出力向上運転について説明する。従来、運転サイクルにおいて原子炉2が定格出力(100%)で運転されていたのに対し、本実施例では、原子炉出力を、例えば、120%まで増大させて原子炉の運転が運転サイクルにおいて行われる。この原子炉出力を120%まで増大させて原子炉2の運転を行うことが、出力向上運転である。このような沸騰水型原子力プラントにおける出力向上は、例えば、再循環ポンプの容量増大及び低圧タービン5A,5B及び5Cの長翼化によって達成できる。再循環ポンプの容量増大によって、炉心流量を従来の定格である100%から120%まで増大させることができる。このため、本実施例では、炉心流量制御によって、原子炉出力を定格の100%から120%までさらに向上させることができる。この出力向上運転時において、蒸気圧縮機28で圧縮された蒸気が、第1高圧給水加熱器16Aに供給される。
蒸気圧縮機28の吸込み側の蒸気供給管31を流れる蒸気の湿り度が大きい場合には、ミストセパレータを蒸気供給管31に設置してもよい。さらに、蒸気の乾き度が大きい場合は、蒸気圧縮機28の吐出側で飽和蒸気が圧縮されて急激な温度上昇が生じる。これを避けるために、微小水滴の噴霧、すなわち、ミストスプレーを蒸気供給管32内で行って蒸気の過熱度を下げてもよい。適宜、蒸気の状態を変えることによって、効率の良い蒸気圧縮機28の運転状態を維持できる。本実施例は、前述したcケース(図7参照)の概念を適用し、蒸気圧縮機28で圧縮した蒸気を第1高圧給水加熱器16Aに供給している。勿論、低圧タービン5Aから、蒸気圧縮機28に供給する蒸気を抽出する抽気蒸気点を適切に設定すれば、第1高圧給水加熱器16Aの替りに、第1高圧給水加熱器16Aの上流に設置された第2高圧給水加熱器16Bに水蒸気圧縮機28で圧縮した蒸気を供給してもよい。
本実施例は、高圧タービン3からの抽気蒸気(蒸気圧縮機28を通らない抽気蒸気)、及び各蒸気圧縮機28により昇圧されて昇温された蒸気を、第1高圧給水加熱器16Aで給水を加熱する熱源にしている。
蒸気圧縮装置27を備えていない従来の電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラントにおける熱エネルギーの利用について説明する。この従来の沸騰水型原子力発電プラントは、本実施例の沸騰水型原子力発電プラント1から蒸気圧縮装置27を取り除いた構成を有する。従来の沸騰水型原子力発電プラントは、設定された炉心の熱出力で最高の熱効率が得られるように、主蒸気管6、高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B及び5Cを含む主蒸気系での蒸気の流れを最適化している。具体的には、復水器11で蒸気を凝縮して水にすると、原子炉2の圧力(約7MPa)では、熱サイクルの原理に基づいて原子炉2で発生するエネルギーの約2/3が、復水器11から海35に排出される温排水等により外部の環境に排出される。この排出されるエネルギーを有効に利用するために、原子炉2で発生した蒸気のうちの一部を、高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B及び5C等から抽気することにより、各給水加熱器での給水の加熱に用いている。原子炉2で発生した蒸気の熱が回収されて原子炉2に供給される給水の温度が上昇するため、原子炉2の熱効率が向上する。湿分分離器4を備えている沸騰水型原子力発電プラント1においては、発生した蒸気のうち、高圧タービン3及び低圧タービン5A,5B及び5Cで動力に変換されて最終的に低圧タービン出口から復水器11に排気される蒸気の量は約56%である。残りの約44%の蒸気は、各給水加熱器において給水の加熱に用いられる。従来の沸騰水型原子力発電プラントも6基の給水加熱器を設置しているので、給水加熱器の1基当たりの抽気蒸気量は平均して原子炉2から排出される蒸気の約7%程度である。また、湿分分離器4の替わりに湿分分離再熱器または湿分分離過熱器を設置した改良型沸騰水型原子炉(以下、ABWRと称す)を用いた従来の沸騰水型原子力発電プラントでは、原子炉で発生した蒸気のうち最終的に低圧タービン出口から復水器に送られる蒸気の量は約54%である。これらの従来の沸騰水型原子力発電プラントの熱効率を向上させるためには、湿分分離器を湿分分離過熱器に変更すれば、再熱効率により性能が向上することは一般的に知られている。しかしながら、特に、BWR−5型の従来の沸騰水型原子力発電プラントでは、湿分分離器の容器が小さいため、この容器内に過熱器となる伝熱管を多数本追設することは極めて難しい。
沸騰水型原子力発電プラント1において、定格の原子炉出力をさらに増大させる出力向上運転を行う場合、原子炉2から吐出される蒸気の流量が増加する。このため、出力向上運転において低圧タービン5A,5B及び5Cで発電機9を回すために使用された低温で低圧の蒸気は、できるだけ復水器11に排気せずに、給水の加熱に利用して熱回収することが望ましい。
本実施例は、前述したように、蒸気圧縮装置27を設置し、蒸気圧縮機28を用いて圧縮されて温度が上昇した蒸気を第1高圧給水加熱器16Aに供給し、給水の加熱に利用する。このため、原子炉2に供給される給水の温度が、従来の沸騰水型原子力発電プラントの給水温度よりも上昇する。給水温度の上昇により、原子炉2で核分裂によって発生する熱量を蒸気の生成に有効に利用することができ、原子炉2から排出する蒸気の流量を増大させることができる。このため、沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率をさらに向上させることができる。
特に、本実施例は、高圧タービン3からの抽気蒸気及び蒸気圧縮機28で圧縮した蒸気を用いて第1高圧給水加熱器16Aで給水を加熱しているので、蒸気圧縮機28で圧縮された蒸気の温度上昇割合を、実開平1−123001号公報に記載された圧縮機における蒸気の温度上昇割合よりも小さくすることができる。このため、蒸気を圧縮するために蒸気圧縮機28で消費される所内電力は、実開平1−123001号公報に記載された圧縮機におけるそれよりも少なくなる。この所内電力の消費量の低下も、沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率の向上に貢献する。本実施例で用いられる蒸気圧縮機28は、実開平1−123001号公報に記載された圧縮機よりも小型であるので、所内電力の消費量が少ない。このため、沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率がさらに向上する。
以上に述べた沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率の向上は、沸騰水型原子力発電プラント1で出力向上運転を行った場合における沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率をさらに向上させることになる。
本実施例は、蒸気圧縮機28で圧縮した蒸気により給水を加熱しているので、復水器11から海水排出管13Bを通して海に排出される温排水の温度を低下させることができる。
本実施例において、蒸気供給管32を、第1高圧給水加熱器16Aの替りに、第2高圧給水加熱器16Bに接続してもよい。
本実施例は、電気出力1350MWeのABWR型の沸騰水型原子力発電プラントに適用することができる。後述の実施例2から7、11及び12のそれぞれの実施例(図9から図14、図18及び図19)も、そのABWR型の沸騰水型原子力発電プラントに適用することができる。
本発明の他の実施例である実施例2の発電プラントを、図9を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Aである。沸騰水型原子力発電プラント1Aは、実施例1の沸騰水型原子力発電プラント1において、蒸気圧縮装置27を蒸気圧縮装置27Aに替えた構成を有する。蒸気供給管31の接続位置は、抽気点72(第2の位置)になっている。沸騰水型原子力発電プラント1Aの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1と同じである。
図9では、第1高圧給水加熱器16A及び第5低圧給水加熱器17C以外の給水加熱器、及び抽気管20及び24以外の抽気管は、省略されている。これは、後述の図10、図11、図15、図17、図18及び図19でも同じである。
蒸気圧縮装置27Aは、蒸気圧縮装置27において蒸気圧縮機28を蒸気圧縮機28A及び28Bに置き換え、蒸気圧縮機28Aの蒸気排出口と蒸気圧縮機28Bの蒸気流入口を配管36で接続した構成を有する。配管36によって直列に接続された蒸気圧縮機28A及び28Bは、共通の回転軸により駆動装置29に連結されている。低圧タービン5Bの抽気点72に接続された蒸気供給管31が蒸気圧縮機28Aの蒸気流入口に接続される。制御弁30が設けられた蒸気供給管32が蒸気圧縮機28Bの蒸気排出口及び第1高圧給水加熱器16Aにそれぞれ接続される。本実施例では、第2配管が蒸気供給管31及び32及び配管36を含んでいる。
抽気管23が接続される抽気点72と蒸気供給管31が接続される抽気点72は、低圧タービン5Bの同じ段数の静翼が設けられている位置で、低圧タービン5Bの周方向において互いにずれている。
実施例1と異なる蒸気圧縮装置27Aの作用について説明する。低圧タービン5Bの抽気点72から抽気された蒸気は、蒸気供給管31を通して蒸気圧縮機28Aに供給され、蒸気圧縮機28Aで圧縮されて温度が上昇する。蒸気圧縮機28Aで圧縮された蒸気は配管36を通って蒸気圧縮機28Bに供給される。蒸気は蒸気圧縮機28Bで圧縮されてさらに温度が上昇する。蒸気圧縮機28Bから吐出された圧縮蒸気は、蒸気供給管32を通して第1高圧給水加熱器16Aに供給される。この圧縮蒸気は、高圧タービン3から抽気された蒸気と共に、第1高圧給水加熱器16Aにおいて給水を加熱する。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27Aは、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられた蒸気圧縮装置27Aは、低圧タービン5Aの抽気点72から抽気された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。低圧タービン5Cに対して設けられた蒸気圧縮装置27Aは、低圧タービン5Cの抽気点72から抽気された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。
本実施例の沸騰水型原子力発電プラント1Aは、蒸気が直列に供給される蒸気圧縮機28A及び28Bを有する蒸気圧縮装置27Aを用いているので、蒸気圧縮装置27に比べて圧縮による蒸気の圧力の増加割合(蒸気の圧縮比)を高めることができる。このため、実施例1に比べて蒸気圧力の低い低圧タービン5Bの抽気点72から抽気された蒸気を蒸気圧縮装置27Aにより、第1高圧給水加熱器16Aに供給することができる。蒸気圧縮装置27Aを備えた沸騰水型原子力発電プラント1Aも、実施例1の沸騰水型原子力発電プラント1で生じる各効果を得ることができる。
蒸気圧縮機28A及び28Bの各回転軸を、増速器を用いて別々に駆動装置29の回転軸に連結することも可能である。この構成によって、駆動装置29で消費される電力をさらに低減することができる。
蒸気圧縮機28Bに接続された蒸気供給管32を、第1高圧給水加熱器16Aの替りに、第2高圧給水加熱器16B及び第3低圧給水加熱器17Aのいずれかに接続し、蒸気供給管32が接続される給水加熱器に、圧縮された蒸気を供給してもよい。
蒸気供給管31を、低圧タービン5Bの抽気点72に接続する替りに、湿分分離器4に接続し、湿分分離器4から抽気した蒸気を蒸気圧縮機28A及び28Bに供給してもよい。
本発明の他の実施例である実施例3の発電プラントを、図10を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Bである。沸騰水型原子力発電プラント1Bは、実施例1の沸騰水型原子力発電プラント1において、蒸気圧縮装置27を蒸気圧縮装置27Bに替えた構成を有する。蒸気供給管31の接続位置は、抽気点72になっている。沸騰水型原子力発電プラント1Bの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1と同じである。
蒸気圧縮装置27Bは、蒸気圧縮装置27において蒸気圧縮機28を蒸気圧縮機28A及び28Bに置き換えた構成を有する。蒸気圧縮機28A及び28Bは、共通の回転軸により駆動装置29に連結されている。低圧タービン5Bの抽気点72に接続された蒸気供給管31が蒸気圧縮機28A及び28Bのそれぞれの蒸気流入口に接続される。制御弁30が設けられた蒸気供給管32が、蒸気圧縮機28A及び28Bの各蒸気排出口と第1高圧給水加熱器16Aに接続される。蒸気圧縮機28A及び28Bは蒸気供給管31及び32に並列に接続される。
抽気管23が接続される抽気点72と蒸気供給管31が接続される抽気点72は、低圧タービン5Bの同じ段数の静翼が設けられている位置で、低圧タービン5Bの周方向において互いにずれている。
実施例1と異なる蒸気圧縮装置27Bの作用について説明する。低圧タービン5Bの抽気点72から抽気された蒸気は、蒸気供給管31を通して蒸気圧縮機28A及び28Bにそれぞれ供給され、各蒸気圧縮機で圧縮されて温度が上昇する。蒸気圧縮機28A及び28Bで圧縮された蒸気は、蒸気供給管32を通して第1高圧給水加熱器16Aに供給される。この圧縮蒸気は、高圧タービン3から抽気された蒸気と共に、第1高圧給水加熱器16Aにおいて給水を加熱する。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27Bは、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられた蒸気圧縮装置27Bは、低圧タービン5Aの抽気点72から抽気された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。低圧タービン5Cに対して設けられた蒸気圧縮装置27Bは、低圧タービン5Cの抽気点72から抽気された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。
本実施例は、実施例1よりも第1高圧給水加熱器16Aに供給する圧縮蒸気の流量を増加することができる。本実施例も、実施例1の沸騰水型原子力発電プラント1で生じる各効果を得ることができる。
蒸気圧縮機28A及び28Bに接続された蒸気供給管32を、第1高圧給水加熱器16Aの替りに、第2高圧給水加熱器16B及び第3低圧給水加熱器17Aのいずれかに接続し、蒸気供給管32が接続される給水加熱器に、圧縮された蒸気を供給してもよい。
本発明の他の実施例である実施例4の発電プラントを、図11を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Cである。沸騰水型原子力発電プラント1Cは、実施例2の沸騰水型原子力発電プラント1Aにおいて、蒸気圧縮装置27Aを蒸気圧縮装置27Cに替えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Cの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1Aと同じである。
蒸気圧縮装置27Cは、蒸気圧縮装置27Aにおいて駆動装置29の替りに、タービン37及び38を設けた構成を有する。蒸気圧縮装置27Cの他の構成は蒸気圧縮装置27Aと同じである。中圧タービンであるタービン37及び38は、蒸気圧縮機28A及び28Bの共通の回転軸に連結される。発電機39がタービン38に連結される。タービン37は、抽気管43によって高圧タービン3と湿分分離器4の間に存在する主蒸気配管6に接続され、蒸気排出管40によって第1高圧給水加熱器16Aに接続される。タービン38は、抽気管41によって湿分分離器4と低圧タービンの間に存在する主蒸気配管6に接続され、蒸気排出管42によって第5低圧給水加熱器17Cに接続される。第5低圧給水加熱器17Cは、図示されていないが、抽気管24によって低圧タービン5Bの抽気点73に接続される。
蒸気圧縮装置27Cにおいて、蒸気圧縮機28A及び28Bはタービン37及び38の駆動によって回転される。タービン37は、主蒸気配管6から抽気されて抽気管43によって供給される抽気蒸気によって駆動される。タービン37から排気された蒸気は、蒸気排出管40を通って第1高圧給水加熱器16Aの胴体内に供給される。タービン38は、主蒸気配管6から抽気されて抽気管41によって供給される抽気蒸気によって駆動される。タービン38から排気された蒸気は、蒸気排出管42を通って第5低圧給水加熱器17Cの胴体内に供給される。蒸気圧縮装置27Cにおける蒸気の圧縮は、蒸気圧縮装置27Aと同様に行われる。蒸気圧縮機28A及び28Bで圧縮された蒸気は、第1高圧給水加熱器16Aに供給される。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27Cは、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられたタービン37から排気された蒸気は、蒸気排出管40を通って第1高圧給水加熱器16Aの胴体内に供給される。低圧タービン5Aに対して設けられたタービン38から排気された蒸気は、蒸気排出管42を通って低圧タービン5Aに対して設けられた第5低圧給水加熱器17Cの胴体内に供給される。低圧タービン5Cに対して設けられたタービン37から排気された蒸気は、蒸気排出管40を通って第1高圧給水加熱器16Aの胴体内に供給される。低圧タービン5Cに対して設けられたタービン38から排気された蒸気は、蒸気排出管42を通って低圧タービン5Cに対して設けられた第5低圧給水加熱器17Cの胴体内に供給される。
本実施例は、実施例2の沸騰水型原子力発電プラント1Aで生じる各効果を得ることができる。本実施例は、駆動装置29を用いずにタービン37及び38で蒸気圧縮機28A及び28Bを回転させる。このため、本実施例は、実施例2に比べて所内電力の消費量を低減することができ、沸騰水型原子力発電プラント1Cの熱効率を沸騰水型原子力発電プラント1Aのそれよりも高めることができる。抽気蒸気によって駆動されるタービン37及び38によって発電機39を回転させ、発電機39で発電を行っている。このため、沸騰水型原子力発電プラント1Cの熱効率がさらに向上される。タービン37及び38から排気された蒸気は、第1高圧給水加熱器16A及び第5低圧給水加熱器17Cにおいて給水の加熱に使用されるので、熱効率がさらに向上する。さらに、蒸気圧縮機28A及び28Bが遠心型蒸気圧縮機である場合には、片側に回転荷重を含めた負荷が加わるためのオーバーハング状態となって回転不安定が発生することを、両端に設置したタービン37及び38により防止できる。
蒸気圧縮装置27Cにおいて、蒸気圧縮機28A及び28Bのそれぞれを、蒸気圧縮装置27Bのように、蒸気供給管31及び32に接続してもよい。
本発明の他の実施例である実施例5の発電プラントを、図12を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Dである。沸騰水型原子力発電プラント1Dは、実施例2の沸騰水型原子力発電プラント1Aにおいて、蒸気圧縮装置27Aを蒸気圧縮装置27Dに替えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Dの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1Aと同じである。図12では、抽気管20〜25及びドレン水配管26が省略されている。後述の図13においても、これらは省略されている。
蒸気圧縮装置27Dも、蒸気圧縮装置27Aと同様に、直列に接続された2段の蒸気圧縮機28を設けた構成を有する。1段目の蒸気圧縮機28の蒸気流入口が蒸気供給管31に接続される。蒸気供給管31は、低圧タービン5Bから復水器11に排気される蒸気を蒸気抽気点33から1段目の蒸気圧縮機28に導く。2段目の蒸気圧縮機28の蒸気排出口に接続された蒸気供給管32が、第5低圧給水加熱器17Cに接続される。1段目の蒸気圧縮機28から2段目の蒸気圧縮機28までの各段の蒸気圧縮機28では、隣り合う蒸気圧縮機28において一方の蒸気圧縮機28の蒸気排出口と他方の蒸気圧縮機28の蒸気流入口がそれぞれ配管36で接続されている。
低圧タービンから排気された圧力Peが5kPaの蒸気が、蒸気抽気点33から蒸気供給管31に流入し、1段目の蒸気圧縮機28に導入されて圧縮される。その後、蒸気が、2段目の蒸気圧縮機28で圧縮され、蒸気供給管32を通って第5低圧給水加熱器17Cに供給され、給水を加熱する。第5低圧給水加熱器17Cには、給水の加熱のために、低圧タービン5Bから抽気された蒸気が抽気管24を通って供給される。本実施例は、2台の蒸気圧縮機28で蒸気を圧縮するので、蒸気の圧力を、5kPaから、第5低圧給水加熱器17Cに供給するために必要な114kPaまで高めることができる。この時、蒸気圧縮機のCOPは3.7となる。本実施例も、実施例2で生じる各効果を得ることができる。
蒸気供給管32を第6低圧給水加熱器17Dに接続して蒸気圧縮装置27Dで圧縮された蒸気を、抽気管25が接続された第6低圧給水加熱器17Dに供給する場合には、蒸気圧縮装置27Dでは1台の蒸気圧縮機28によって、蒸気の圧力を、5kPaから、第6低圧給水加熱器17Dに供給するために必要な40kPaに高めるとよい。この時、蒸気圧縮機のCOPは6となる。
圧縮された蒸気が供給される給水加熱器の条件にあうように、蒸気圧縮機の台数を選択することにより、沸騰水型原子力発電プラントの効率的な運転が可能となる。
本発明の他の実施例である実施例6の発電プラントを、図13を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Eである。沸騰水型原子力発電プラント1Eは、実施例2の沸騰水型原子力発電プラント1Aにおいて、蒸気圧縮装置27Aを蒸気圧縮装置27Eに替えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Eの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1Aと同じである。
蒸気供給管32を第3低圧給水加熱器17Aに接続して蒸気圧縮装置27Eで圧縮された蒸気を第3低圧給水加熱器17Aに供給する場合には、蒸気圧縮装置27Eでは1台の蒸気圧縮機28を設け、蒸気の圧力を、278kPaから、第3低圧給水加熱器17Aに供給するために必要な465kPaに高めるとよい。この時、蒸気圧縮機のCOPは16となる。
蒸気圧縮装置27Eは1台の蒸気圧縮機28を設けた構成を有する。この蒸気圧縮機28の蒸気流入口が、低圧タービン5Bの抽気点72に接続された蒸気供給管31に接続される。その蒸気排出口に接続された蒸気供給管32が、第3低圧給水加熱器17Aに接続される。
低圧タービン5Bの抽気点72(第2の位置)から抽気された圧力Peが278kPaの蒸気が、抽気点72から蒸気供給管31に流入し、蒸気圧縮機28に導入されて圧縮される。その後、蒸気圧縮機28から排気された蒸気が、蒸気供給管32を通って第3低圧給水加熱器17Aに供給され、給水を加熱する。第3低圧給水加熱器17Aには、給水の加熱のために、低圧タービン5Bの抽気点71(第1の位置)から抽気された蒸気が抽気管22を通って供給され、さらに、湿分分離器4から排出された飽和ドレン水がドレン水配管26を通って供給される。本実施例は、1台の蒸気圧縮機28で蒸気を圧縮するので、蒸気の圧力を、278kPaから、第3低圧給水加熱器17Aに供給するために必要な465kPaまで高めることができる。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27Eは、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられた蒸気圧縮装置27Eは、低圧タービン5Aの抽気点72から抽気された蒸気を圧縮して低圧タービン5Aに対して設けられた第3低圧給水加熱器17Aに供給する。低圧タービン5Cに対して設けられた蒸気圧縮装置27は、低圧タービン5Cの抽気点72から抽気された蒸気を圧縮して低圧タービン5Cに対して設けられた第3低圧給水加熱器17Aに供給する。
本実施例も、実施例2で生じる各効果を得ることができる。
蒸気供給管32を第1高圧給水加熱器16Aに接続して蒸気圧縮装置27Eで圧縮された蒸気を、第1高圧給水加熱器16Aに供給する場合には、蒸気圧縮装置27Eでは1台の蒸気圧縮機28によって、蒸気の圧力を、278kPaから、第1高圧給水加熱器16Aに供給するために必要な2.36MPaに高めることができる。この時、蒸気圧縮機のCOPは8.5となる。
蒸気供給管32を第2高圧給水加熱器16Bに接続して蒸気圧縮装置27Eで圧縮された蒸気を、抽気管21が接続された第2高圧給水加熱器16Bに供給する場合には、蒸気圧縮装置27Eでは1台の蒸気圧縮機28によって、蒸気の圧力を、278kPaから、第2高圧給水加熱器16Bに供給するために必要な1.4MPaに高めるとよい。この時、蒸気圧縮機のCOPは5.3となる。
本発明の他の実施例である実施例7の発電プラントを、図14を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Fである。沸騰水型原子力発電プラント1Fは、実施例1の沸騰水型原子力発電プラント1において、蒸気圧縮装置27の蒸気供給管31を低圧タービン5Bに接続し、蒸気圧縮装置27の蒸気供給管32を第5低圧給水加熱器17Cに接続した構成を有する。蒸気供給管31の接続位置は抽気点74(第2の位置)になっている。沸騰水型原子力発電プラント1Fの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1と同じである。
抽気管25が接続される抽気点74と蒸気供給管31が接続される抽気点74は、低圧タービン5Bの同じ段数の静翼が設けられている位置で、低圧タービン5Bの周方向において互いにずれている。
沸騰水型原子力発電プラント1Fでは、低圧タービン5Bの抽気点74から抽気された蒸気が、蒸気圧縮機28で圧縮されて第5低圧給水加熱器17Cに供給され、第5低圧給水加熱器17Cで給水を加熱する。低圧タービン5Bの抽気点73(第1の位置)から抽気された蒸気が、抽気管24を通って第5低圧給水加熱器17Cに供給される。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27は、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられた蒸気圧縮装置27は、低圧タービン5Aの抽気点74から抽気された蒸気を圧縮して低圧タービン5Aに対して設けられた第5低圧給水加熱器17Cに供給する。低圧タービン5Cに対して設けられた蒸気圧縮装置27は、低圧タービン5Cの抽気点74から排出された蒸気を圧縮して低圧タービン5Cに対して設けられた第5低圧給水加熱器17Cに供給する。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
蒸気供給管32は、第5低圧給水加熱器17Cに接続する替りに、第3低圧給水加熱器17A、または第4低圧給水加熱器17Bに接続してもよい。
本発明の他の実施例である実施例8の発電プラントを、図15を用いて説明する。本実施例の発電プラントは、実施例1から7が適用された沸騰水型原子力発電プラントとは異なり、原子力発電プラントの一種である加圧水型原子力発電プラントである。
本実施例の加圧水型原子力発電プラント1Gは、原子炉2A,蒸気発生器(蒸気発生装置)45、一次冷却系配管47、沸騰水型原子力発電プラント1で用いられる主蒸気系及び給水系、及び蒸気圧縮装置27を備えている。この主蒸気系は、図1に示された高圧タービン3、低圧タービン5A,5B及び5C、主蒸気配管6、湿分分離器4及び復水器11を含んでいる。給水系は、図1に示された給水配管15、高圧給水加熱器16A及び16B、低圧給水加熱器17A〜17D、抽気管20〜25及びドレン配管26を含んでいる。
蒸気発生器45は、冷却水の循環ループを形成する一次冷却系配管47によって原子炉2Aに接続される。循環ポンプ46が一次冷却系配管47に設けられる。主蒸気配管6及び給水配管15は、蒸気発生器45に接続される。蒸気圧縮装置27の蒸気圧縮機28は、蒸気供給管31により低圧タービン5Bに接続され、蒸気供給管32により第1高圧給水加熱器16Aに接続される。
原子炉2A内の炉心で加熱された高温の冷却水が、循環ポンプ46を駆動することによって一次冷却系配管47を通って蒸気発生器45の胴体内に設置された複数の伝熱管(図示せず)内に供給される。この高温の冷却水は、蒸気発生器45の胴体内で伝熱管の外に供給される給水を加熱する。給水は、給水配管15から供給され、高温の冷却水による加熱によって蒸気になる。給水の加熱によって温度が低下した冷却水は、一次冷却系配管47を通って原子炉2Aに戻される。
蒸気発生器45で発生した蒸気は、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、主蒸気配管を通って高圧タービン3、及び低圧タービン5A,5B及び5Cに供給される。低圧タービンから排気された蒸気は、復水器11で凝縮されて水になる。この水は、給水として、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、給水配管15を通り、第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B、第3低圧給水加熱器17A、第2高圧給水加熱器16B及び第1高圧給水加熱器16Aによって順次加熱されて温度を上昇させ、設定温度になった状態で蒸気発生器45に供給される。
本実施例では、低圧タービン5Bの抽気点71から抽気された蒸気が、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、蒸気圧縮機28で圧縮されて第1高圧給水加熱器16Aに供給される。第1高圧給水加熱器16Aに供給された給水は、その圧縮蒸気及び高圧タービン3から抽気された蒸気によって加熱される。抽気管22が接続される抽気点71と蒸気供給管31が接続される抽気点71は、低圧タービン5Bの同じ段数の静翼が設けられている位置で、低圧タービン5Bの周方向において互いにずれている。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27は、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられた蒸気圧縮装置27は、低圧タービン5Aの抽気点71から抽気された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。低圧タービン5Cに対して設けられた蒸気圧縮装置27は、低圧タービン5Cの抽気点71から排出された蒸気を圧縮して第1高圧給水加熱器16Aに供給する。
本実施例における出力向上は、低圧タービン5A,5B及び5Cの動翼を長翼化することによって可能になる。このため、従来よりも長い動翼を備えた低圧タービン5A,5B及び5Cが用いられる。また、従来よりも伝熱管の伝熱面積が増大した蒸気発生器45を用いる。これによっても、出力向上が可能になる。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本実施例においても、蒸気圧縮装置27A,27B,27C,27D及び27Eのいずれかを、沸騰水型原子力発電プラント同様に、用いることができる。
本発明の他の実施例である実施例9の発電プラントを、図16を用いて説明する。本実施例の発電プラントは、原子力発電プラントの一種である高速増殖炉原子力発電プラントである。
本実施例の高速増殖炉原子力発電プラント1Hは、高速増殖炉50、中間熱交換器51、一次循環ポンプ52、一次冷却系配管53、蒸気発生器(蒸気発生装置)54、二次循環ポンプ55、二次冷却系配管56、沸騰水型原子力発電プラント1で用いられる主蒸気系及び給水系、及び蒸気圧縮装置27を備えている。この主蒸気系は、図1に示された高圧タービン3、低圧タービン5A,5B及び5C、主蒸気配管6、湿分分離器4及び復水器11を含んでいる。給水系は、図1に示された給水配管15、高圧給水加熱器16A及び16B、低圧給水加熱器17A〜17D、抽気管20〜25及びドレン配管26を含んでいる。図16では、沸騰水型原子力発電プラント1が有する主蒸気系及び給水系(図1参照)に設けられた、低圧タービン5A及び5C、第1高圧給水加熱器16A以外の給水加熱器、抽気管20以外の抽気管、及びドレン配管26が、省略されている。
一次冷却系配管53が、高速増殖炉50、中間熱交換器51、一次循環ポンプ52及び高速増殖炉50をこの順序に接続し、一次系冷却材(例えば、液体ナトリウム)が一次冷却系の閉ループを形成する。二次冷却系配管56が、中間熱交換器51、蒸気発生器54、二次循環ポンプ55及び中間熱交換器51をこの順序に接続し、二次冷却系の閉ループを形成する。主蒸気配管6及び給水配管15は、蒸気発生器54に接続される。蒸気圧縮装置27の蒸気圧縮機28は、蒸気供給管31により低圧タービン5Bに接続され、蒸気供給管32により第1高圧給水加熱器16Aに接続される。
一次循環ポンプ52の駆動によって、高速増殖炉50内の炉心で加熱された一次系冷却材(例えば、液体ナトリウム)が、一次冷却系配管53を通って中間熱交換器51に導かれる。高温の一次系冷却材は、中間熱交換器51において、二次冷却系配管56から供給される二次系冷却材(例えば、液体ナトリウム)を加熱する。温度が低下した一次系冷却材が高速増殖炉50に戻される。二次循環ポンプ55の駆動によって、中間熱交換器51で加熱された二次系冷却材が、二次冷却系配管56を通って蒸気発生器54に導かれる。給水配管15で供給された給水が、蒸気発生器54内で二次系冷却材によって加熱されて蒸気になる。
蒸気発生器54で発生した蒸気は、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、主蒸気配管を通って高圧タービン3、及び低圧タービン5A,5B及び5Cに供給される。低圧タービンから排気された蒸気は、復水器11で凝縮されて水になる。この水は、給水として、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、給水配管15を通り、第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B、第3低圧給水加熱器17A、第2高圧給水加熱器16B及び第1高圧給水加熱器16Aによって順次加熱されて温度を上昇させ、設定温度になった状態で蒸気発生器54に供給される。
本実施例でも、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、低圧タービン5Bの抽気点71から抽気された蒸気が、蒸気圧縮機28で圧縮されて第1高圧給水加熱器16Aに供給される。第1高圧給水加熱器16Aに供給された給水は、その圧縮蒸気及び高圧タービン3の抽気点から抽気された蒸気によって加熱される。
本実施例における出力向上も、実施例8と同様に、長翼化した動翼を有する低圧タービン5A,5B及び5C、及び従来よりも伝熱管の伝熱面積が増大した蒸気発生器54を用いることによって可能になる。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本実施例においても、蒸気圧縮装置27A,27B,27C,27D及び27Eのいずれかを、沸騰水型原子力発電プラント同様に、用いることができる。
本発明の他の実施例である実施例10の発電プラントを、図17を用いて説明する。本実施例の発電プラントは、実施例1から9が適用された原子力発電プラントとは異なり、火力発電プラントである。本実施例は、具体的には、火力コンバインド発電プラント1Jである。
火力コンバインド発電プラント1Jは、ガスタービン発電プラント及び蒸気発電プラントを備えている。ガスタービン発電プラントは、圧縮機58、ガスタービン59、燃焼器60及び発電機61を有する。圧縮機58、ガスタービン59及び発電機61は、一軸の回転軸にて連結されている。燃焼空気配管62が、圧縮機58の空気流入口に接続され、さらに、圧縮機58の空気排出口と燃焼器60を接続している。燃焼器60は、配管によりガスタービン59に接続される。蒸気発電プラントは、実施例1の沸騰水型原子力発電プラント1において原子炉2を蒸気発生器(蒸気発生装置)57に替えた構成を有する。主蒸気配管6及び給水配管15が、蒸気発生器57に接続される。ガスタービン59の排ガス吐出口に接続された排ガス配管64が蒸気発生器57に接続されている。
燃焼空気配管62から供給される燃焼空気が、圧縮機58で圧縮されて燃焼器60内に供給される。燃料供給管63から燃焼器60内に供給される燃料が、燃焼器60内で燃焼される。発生した高温高圧の燃焼ガスが、ガスタービン59に供給されてガスタービン59を回転させる。発電機61も回転し、電力を発生する。ガスタービン59から排出された高温の排ガスは、排ガス配管64を通って蒸気発生器57に導かれ、給水配管15を通して蒸気発生器57に供給される給水を加熱する。この給水は、加熱されて蒸気になる。蒸気発生器57で発生した蒸気は、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、主蒸気配管を通って高圧タービン3、及び低圧タービン5A,5B及び5Cに供給される。低圧タービンから排気された蒸気は、復水器11で凝縮されて水になる。この水は、給水として、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、給水配管15を通り、第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B、第3低圧給水加熱器17A、第2高圧給水加熱器16B及び第1高圧給水加熱器16Aによって順次加熱されて温度を上昇させ、設定温度になった状態で蒸気発生器57に供給される。
本実施例でも、沸騰水型原子力発電プラント1と同様に、低圧タービン5Bの抽気点71(第2の位置)から抽気された蒸気が、蒸気圧縮装置27の蒸気圧縮機28で圧縮されて第1高圧給水加熱器16Aに供給される。第1高圧給水加熱器16Aに供給された給水は、その圧縮蒸気及び高圧タービン3から抽気された蒸気によって加熱される。蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27は、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。
本実施例における出力向上も、実施例8と同様に、長翼化した動翼を有する低圧タービン5A,5B及び5C、及び従来よりも伝熱管の伝熱面積が増大した蒸気発生器57を用いることによって可能になる。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本発明の他の実施例である実施例11の発電プラントを、図18を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Kである。沸騰水型原子力発電プラント1Kは、実施例1の沸騰水型原子力発電プラント1において、蒸気圧縮装置27を蒸気圧縮装置27Fに替えた構成を有する。蒸気供給管31の接続位置は、抽気点72になっている。さらに、沸騰水型原子力発電プラント1Kでは、高圧タービン3と第1高圧給水加熱器16Aを連絡する抽気管20、低圧タービン5Bの抽気点71と第3低圧給水加熱器17Aを連絡する抽気管22及びドレン水配管26が設けられていない。沸騰水型原子力発電プラント1Kの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1と同じである。
蒸気圧縮装置27Fは、蒸気圧縮装置27において蒸気圧縮機28を蒸気圧縮機28A及び28Bに置き換え、蒸気圧縮機28Aの蒸気排出口と蒸気圧縮機28Bの蒸気流入口を配管36で接続した構成を有する。配管36によって直列に接続された蒸気圧縮機28A及び28Bは、共通の回転軸により駆動装置29に連結されている。低圧タービン5Bの抽気点72に接続された蒸気供給管31が蒸気圧縮機28Aの蒸気流入口に接続される。制御弁30が設けられた蒸気供給管32が蒸気圧縮機28Bの蒸気排出口及び第1高圧給水加熱器16Aにそれぞれ接続される。配管36に接続された配管(第3配管)48は第3低圧給水加熱器17Aに接続される。蒸気圧縮装置27Fは、実施例2に用いられる蒸気圧縮装置27Aにおいて配管36を配管48によって第3低圧給水加熱器17Aに接続した構成を有するとも言える。抽気管23が接続される抽気点72と蒸気供給管31が接続される抽気点72は、低圧タービン5Bの同じ段数の静翼が設けられている位置で、低圧タービン5Bの周方向において互いにずれている。
構成が異なっている蒸気圧縮装置27Fを中心に、沸騰水型原子力発電プラント1Kの作用について説明する。低圧タービン5Bの抽気点72から抽気された蒸気は、蒸気供給管31を通して蒸気圧縮機28Aに供給され、蒸気圧縮機28Aで圧縮されて温度が上昇する。蒸気圧縮機28Aで圧縮されて温度が上昇した蒸気は配管36に排出される。この圧縮されて温度が上昇した蒸気の一部は、配管48を通って第3低圧給水加熱器17Aに供給され、第3低圧給水加熱器17Aにおいて給水を加熱する。配管36に排出された残りの蒸気は、蒸気圧縮機28Bで圧縮されてさらに温度が上昇する。蒸気圧縮機28Bから吐出された圧縮蒸気は、蒸気供給管32を通して第1高圧給水加熱器16Aに供給される。この圧縮蒸気は、第1高圧給水加熱器16Aにおいて給水を加熱する。
本実施例では、高圧タービン3の抽気点からの抽気蒸気が第1高圧給水加熱器16Aに供給されていなく、低圧タービン5Bの抽気点71からの抽気蒸気も第3低圧給水加熱器17Aに供給されていない。このため、給水配管15内を流れる給水は、第1高圧給水加熱器16A及び第3低圧給水加熱器17Aにおいて、蒸気圧縮装置27Fから供給される圧縮蒸気によってのみ加熱される。残りの第6低圧給水加熱器17D、第5低圧給水加熱器17C、第4低圧給水加熱器17B及び第2高圧給水加熱器16Bでは、給水が、実施例1と同様に、抽気蒸気で加熱される。
蒸気圧縮装置(蒸気ヒートポンプ)27Fは、低圧タービン5A及び5Cに対してもそれぞれ設けられている。低圧タービン5Aに対して設けられた蒸気圧縮装置27Fにおいて、低圧タービン5Aの抽気点72から抽気された蒸気が、蒸気圧縮機28Aで圧縮されて、低圧タービン5Aに対して設けられた第3低圧給水加熱器17Aに供給される。この蒸気圧縮装置27Fの蒸気圧縮機28Bで圧縮された蒸気は、第1高圧給水加熱器16Aに供給される。低圧タービン5Cに対して設けられた蒸気圧縮装置27Fにおいて、低圧タービン5Cの抽気点72から抽気された蒸気が、蒸気圧縮機28Aで圧縮されて、低圧タービン5Cに対して設けられた第3低圧給水加熱器17Aに供給される。この蒸気圧縮装置27Fの蒸気圧縮機28Bで圧縮された蒸気は、第1高圧給水加熱器16Aに供給される。
本実施例でも、実施例1と同様に、炉心流量を増大させて原子炉出力を定格出力よりも増大させる出力向上運転を実施する。
本実施例は、前述したように、蒸気圧縮装置27Fを設置し、蒸気圧縮機28A及び28Bでそれぞれ圧縮されて温度が上昇した蒸気を第1高圧給水加熱器16A及び第3低圧給水加熱器17Aに供給し、給水の加熱に利用する。このため、原子炉2に供給される給水の温度が、従来の沸騰水型原子力発電プラントの給水温度よりも上昇する。給水温度の上昇により、原子炉2で核分裂によって発生する熱量を蒸気の生成に有効に利用することができ、原子炉2から排出する蒸気の流量を増大させることができる。このため、沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率を向上させることができる。
本実施例で用いられる蒸気圧縮機28A及び28Bは、実開平1−123001号公報に記載された圧縮機よりも小型であるので、蒸気圧縮機28A及び28Bを駆動する駆動装置29での所内電力の消費量が、実開平1−123001号公報に記載された圧縮機を駆動する場合よりも少なくなる。このため、沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率がさらに向上する。
以上に述べた沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率の向上は、沸騰水型原子力発電プラント1で出力向上運転を行った場合における沸騰水型原子力発電プラント1の熱効率を向上させることになる。
本実施例は、蒸気圧縮機28Aから排出された圧縮蒸気の一部を第35低圧給水加熱器17Aに供給しているので、蒸気圧縮機28Bに供給される圧縮蒸気の流量が減少する。このため、蒸気圧縮機28Bにおける蒸気の圧縮効率を向上させることができる。
本実施例も、実施例1と同様に、復水器11から排出する海水の温度が低下するので、海に排出する放熱量を低減できる。
本実施例において、蒸気供給管31は、低圧タービンに接続する替りに、高圧タービン3、湿分分離器4、及び高圧タービン3と低圧タービンの間に存在する主蒸気管6のいずれかに接続してもよい。蒸気供給管32は、第1高圧給水加熱器16Aの替りに、蒸気供給管31が接続される主蒸気系の位置に対応して定まる第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B及び第5低圧給水加熱器17Cのいずれかに接続してもよい。配管48は、第2高圧給水加熱器16B、第3低圧給水加熱器17A、第4低圧給水加熱器17B及び第5低圧給水加熱器17Cのうち、蒸気供給管32が接続される給水加熱器よりも上流に位置する給水加熱器に接続してもよい。
本実施例で用いられる蒸気発生装置27F、蒸気供給管31及び32及び配管48を、実施例8が適用される加圧水型原子力発電プラント、実施例9が適用される高速増殖炉原子力発電プラント及び実施例10が適用される火力発電プラントのそれぞれに適用してもよい。
本発明の他の実施例である実施例12の発電プラントを、図19を用いて説明する。本実施例の発電プラントも、電気出力1100MWeのBWR−5型の沸騰水型原子力発電プラント1Lである。沸騰水型原子力発電プラント1Lは、実施例11の沸騰水型原子力発電プラント1Kに、実施例1で用いた高圧タービン3の抽気点(第1の位置)と第1高圧給水加熱器16Aを連絡する抽気管20、低圧タービン5Bの抽気点71(第3の位置)と第3低圧給水加熱器17Aを連絡する抽気管22、及び湿分分離器4と第3低圧給水加熱器17Aを連絡するドレン水配管26を設けた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Lの他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント1Kと同じである。蒸気供給管31は、低圧タービン5Bの抽気点72(第2の位置)に接続されている。
本実施例では、第3低圧給水加熱器17Aにおいて、給水が、蒸気圧縮機28Aで圧縮された蒸気、ドレン水配管26で供給されるドレン水及び低圧タービン5Bから抽気されて抽気管(第4配管)22により供給される抽気蒸気によって加熱される。第1高圧給水加熱器16Aにおいて、給水が、蒸気圧縮機28A及び28Bで圧縮された蒸気、及び高圧タービン3から抽気されて抽気管20により供給される抽気蒸気によって加熱される。
本実施例は、実施例11で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、第1高圧給水加熱器16A及び第3低圧給水加熱器17Aにおいて、給水を抽気蒸気及び圧縮蒸気によって加熱しているので、蒸気圧縮機28A及び28Bで圧縮された蒸気の温度上昇割合を実開平1−123001号公報に記載された圧縮機における蒸気の温度上昇割合よりも小さくすることができる。このため、蒸気圧縮機28A及び28Bを駆動する駆動装置29で消費される所内電力を、実開平1−123001号公報に記載された圧縮機の駆動により消費される電力よりも少なくできる。沸騰水型原子力発電プラント1Lの熱効率をさらに向上することができる。
本発明は、沸騰水型原子力発電プラント及び加圧水型原子力プラント等の原子力発電プラント、及び火力発電プラントのような発電プラントに適用することができる。