JP5123487B2 - 精密プレス成形用光学ガラス、精密プレス成形用プリフォームおよびその製造方法、光学素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、このガラスで作ったレンズは洗浄すると表面性状が劣化するという問題がある。表面性状の低下には洗浄によるレンズ表面の傷や白濁が挙げられ、いずれもレンズの光学素子としての性能を著しく低下させる。また、反射防止膜をコートしたときに膜の付着力が弱くなり、時間の経過とともに膜剥離がおきてしまうこともある。
質量%表示で、
P2O5 18〜70%(ただし、70%を除くとともに5モル%以上)、
B2O3 0.6〜34%(ただし、P 2 O 5 /B 2 O 3 (質量%の比)は2.1〜30)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 0〜20%(ただし、0%を除く)、
Na2O 0〜18%、
K2O 0〜15%、
MgO 0〜25%、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜20%、
BaO 0〜40%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜15)、
ZnO 0〜14%
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O /ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜18%、
Sb2O3 0〜1%、
を含み、かつ、質量%表示において、P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、
SrO、BaO、ZnO、Gd2O3、Sb2O3以外の成分のうち最も多く含有されている成分の量がB2O3およびLi2Oの含有量のいずれよりも少ないことを特徴とする精密プレス成形用光学ガラス。
[2] 質量表示において、
P2O5 20〜60%、
B2O3 3%超かつ28%以下(ただし、P2O5/B2O3(質量%の比)は2.1〜30)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 1〜20%(ただし、1%を除く)、
Na2O 0〜18%、
K2O 0〜15%、
MgO 0〜25%(ただし、0%を除く)、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜20%、
BaO 0〜39%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜15)、
ZnO 0〜14%、
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O /ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜18%、
Sb2O3 0〜1%、
を含む[1]に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[3] 質量表示において、
P2O5 20〜60%、
B2O3 3%超かつ28%以下(ただし、P2O5/B2O3(質量%の比)は2.1〜15)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 1〜10%(ただし、1%を除く)、
Na2O 0〜9%、
K2O 0〜4%、
MgO 0〜15%(ただし、0%を除く)、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜15%、
BaO 0〜39%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜12)、
ZnO 0〜14%、
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O/ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜14%、
Sb2O3 0〜1%、
を含む[2]に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[4] 1〜20質量%(ただし、20質量%を含まない)のBaOを含む[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学ガラス。
[5] BaOを1〜18質量%含む[4]に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[6] ZnOを0〜3質量%含む[1]〜[5]のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[7] BaO含有量に対するP2O5含有量の質量比(P2O5/BaO)が1以上であり、質量%表示で、P2O5を48%未満、ZnOを0〜2%含む[1]〜[6]のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[8] SrOとBaOの合計量(SrO+BaO)に対するMgOとCaOの合計量(MgO+CaO)の割合(MgO+CaO)/(SrO+BaO)(質量比)が0.11〜10である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[9] P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Gd2O3およびSb2O3の合計含有量が95質量%超である[1]〜[8]のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[10] 屈折率(nd)が1.46以上である[1]〜[9]のいずれかに記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[11] 液相温度が950℃以下である[1]〜[10]のいずれかに記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[12] 液相温度における粘性が2〜20dPa・sの範囲にある[1]〜[11]のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
[13] [1]〜[12]のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる精密プレス成形用プリフォーム。
[14] 流出パイプから流出する熔融ガラス流から所要質量の熔融ガラスを分離して[1]〜[12]のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる精密プレス成形用プリフォームを成形することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[15] 熔融ガラスを流出、成形してガラス成形体を作製し、前記ガラス成形体を機械加工して[1]〜[12]のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる精密プレス成形用プリフォームを作製することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
[16] [1]〜[12]のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなり、レンズ、回折格子、回折格子付のレンズ、レンズアレイまたはプリズムのいずれかである光学素子。
[17] ガラス製のプリフォームを加熱し、プレス成形型を用いて精密プレス成形する光学素子の製造方法において、
前記プリフォームが[13]に記載のプリフォームであるか、または[14]または[15]に記載の方法により製造されたプリフォームであることを特徴とする光学素子の製造方法。
[18] プレス成形型に前記プリフォームを導入し、前記成形型と前記プリフォームを一緒に加熱し、精密プレス成形することを特徴とする[17]に記載の光学素子の製造方法。
[19] プレス成形型に予熱したプリフォームを導入し、精密プレス成形することを特徴とする[17]に記載の光学素子の製造方法。
上記条件における質量減少量に応じて1級〜5級に分類されることがある。
すなわち
0.01mg未満の値を四捨五入して
1級は質量減少量が0.01mg/(cm2・15h)以下、
2級は質量減少量が0.02〜0.10mg/(cm2・15h)以下、
3級は質量減少量が0.11〜0.20mg/(cm2・15h)以下、
4級は質量減少量が0.21〜0.30mg/(cm2・15h)以下、
5級は質量減少量が0.31mg/(cm2・15h)以上
のため、
1時間あたりの質量減少量に換算すると
1級は質量減少量が1μg/(cm2・時)未満
2級は質量減少量が1μg以上〜7μg/(cm2・時)未満、
3級は質量減少量が7μg以上〜約13.667μg/(cm2・時)未満、
4級は質量減少量が約13.667μg以上〜約20.333μg/(cm2・時)未満、
5級は質量減少量が約20.333μg/(cm2・時)以上
となる。
P2O5 18〜70%(ただし、70%を除きかつ5モル%以上)、
B2O3 0〜34%(ただし、0%を除く)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 0〜20%(ただし、0%を除く)、
Na2O 0〜18%、
K2O 0〜15%、
MgO 0〜25%、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜20%、
BaO 0〜40%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜15)
ZnO 0〜14%
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O/ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜18%、
Sb2O3 0〜1%、
を含み、かつ、上記以外の成分のうち最も多く含有されている成分の量がB2O3およびLi2Oの含有量のいずれよりも少ない組成範囲である。
第1の範囲、第2の範囲の両方において、
P2O5 20〜60%、
B2O3 0.6〜28%(ただし、P2O5/B2O3(質量%の比)は2.1〜30)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 1〜20%(ただし、1%を除く)、
Na2O 0〜18%、
K2O 0〜15%、
MgO 0〜25%(ただし、0%を除く)、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜20%、
BaO 0〜39%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜15)、
ZnO 0〜14%、
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O/ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜18%、
Sb2O3 0〜1%、
を含む光学ガラスである。
その他の2価成分としてZnOを任意成分とし、失透安定性、耐候性、熔解性、清澄効果の向上および光学特性の調整のため、Al2O3、Na2O、K2O、Gd2O3を任意成分として導入するとともに、Sb2O3を任意添加の清澄剤として導入することができる。
P2O5は、ガラスの網目構造の形成成分であり、ガラスに製造可能な安定性を持たせるための必須成分である。しかし、その含有量が70%以上になるとガラス転移温度や屈伏点が上昇してプレス成形温度が高くなり、屈折率や耐候性が低下し、18%未満ではガラスの失透傾向が強くなりガラスが不安定になる。よって、P2O5の含有量を18〜70%(ただし、70%を除き、かつ5モル%以上)とする。好ましくは20〜60%、より好ましくは24〜58%、さらに好ましくは28〜54%である。なお、前述のモル%表示によるP2O5の好ましい量と質量%表示による含有量範囲との関係は、一方の表示による範囲が他方の表示による範囲より狭い場合、狭い範囲に限定されるにしたがい、本組成範囲ではより好ましい組成になることを意味する。
第1、第2の範囲のいずれにおいても、ガラスの低分散性と安定性、および耐候性を両立するために、前記範囲内であって、さらにMgOとCaOの合計量(MgO+CaO)が4%超、好ましくは5%以上、より好ましくは7〜25%、さらに好ましくは7〜20%となるように、MgOおよびCaO導入量を設定する。
前記範囲に含まれる成分の合計量は、95%超とすることが好ましく、98%超とすることがより好ましく、99%超とすることがさらに好ましく、100%とすることがより一層好ましい。
例えば、Y2O3は、ガラスの耐候性や屈折率を改善することができる成分として導入することができる。但し、過剰のY2O3の導入により、ガラスの安定性が悪化してしまう恐れがあるため、B2O3およびLi2Oの各含有量が1%以上の場合であってもY2O3の導入量は1%未満とすることが好ましく、ガラスの安定性が低下しないように十分配慮する場合は、導入しないことが好ましい。
さらに発光素子を作製する場合を除き、Nd、Er、Prなどの導入も不要である。また、燐光などの発光源となる物質の導入も、発光素子などの作製を目的にしない場合には好ましくない。
以上、いずれの光学ガラスとも優れた耐アルカリ性を有するので、研磨したガラスおよび精密プレス成形品の表面に存在する潜傷や微細な凹凸をガラスの洗浄によって顕在化するのを抑え、清浄かつクモリなどのない優れた表面性状のガラス物品を提供することができる。特に、前記組成範囲により優れた耐候性も得られるので、長期にわたり表面の劣化が少ないガラス物品を実現することができる。
ガラスの安定性を示す指標の一つは液相温度である。本発明の光学ガラスにおいて、液相温度は、好ましくは950℃以下、より好ましくは940℃以下、さらに好ましくは930℃以下、一層好ましくは920℃以下、より一層好ましくは910℃以下、さらに一層好ましくは900℃以下、なお一層好ましくは890℃以下、一段と好ましくは880℃以下である。
上記プリフォームの成形に適した光学ガラスを提供するという観点から、本発明の光学ガラスは、液相温度における粘性が2〜20dPa・sの範囲であることが好ましい。
本発明の光学ガラスは、ガラス原料を加熱、熔融することにより製造することができる。P2O5の原料としてはH3PO4、メタリン酸塩、五酸化二燐など、B2O3の原料としてはH3BO3、B2O3、BPO4など、他の成分については炭酸塩、硝酸塩、酸化物などを適宜用いることが可能である。これらの原料を所定の割合に秤取し、混合して調合原料とし、これを、例えば1000〜1250℃に加熱した熔解炉に投入し、熔解・清澄・攪拌し、均質化することにより、泡や未熔解物を含まず均質な熔融ガラスを得る。この熔融ガラスを成形、徐冷することにより、本発明の光学ガラスを得ることができる。
なお、より分散を小さくするにはフッ化物原料を用いてガラス中にフッ素を導入することが好ましい。
このように分散が小さいガラスを得るには、フツリン酸塩ガラスとすることが望ましいが、さほど分散を低くしない場合は、揮発性の高いフッ素を導入しないリン酸塩ガラスのほうが揮発による脈理を低減し、生産性の面から好ましい。
次に、本発明の精密プレス成形用プリフォーム(以下、プリフォームという。)およびその製造方法について説明する。プリフォームは、精密プレス成形品に等しい質量のガラス製成形体である。プリフォームは精密プレス成形品の形状に応じて適当な形状に成形されているが、その形状として、球状、回転楕円体状などを例示することができる。プリフォームは、精密プレス成形可能な粘度になるよう、加熱して精密プレス成形に供される。
本発明の光学素子は、本発明の光学ガラスからなることを特徴とするものである。本発明の光学素子は、光学素子を構成するガラスが前記各特性を備えているので、所要の光学恒数、優れた耐候性を活かして、長期にわたって高い信頼性を維持することができる。特に耐アルカリ性が優れていることから、研磨により作製した光学素子、精密プレス成形により作製した光学素子ともに洗浄によって潜傷が顕在化するのを抑え、清浄で表面性状がよい光学素子を実現することができる。また反射防止膜などのコーティングの付着力をよくすることもできる。
なお、この光学素子には必要に応じて、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜などの光学薄膜を設けることもできる。
本発明の光学素子の製造方法は、ガラス製のプリフォームを加熱し、プレス成形型を用いて精密プレス成形する光学素子の製造方法において、前記プリフォームが上記本発明のプリフォームであるか、または上記本発明の製造方法により製造されたプリフォームであることを特徴とするものである。
さらにガラスが熱的安定性に優れていることから、ガラスを失透させることなく、光学素子を作製することもでき、優れた耐候性、耐アルカリ性によって長期使用に対して信頼性の高い光学素子を提供することができる。
精密プレス成形法では、プレス成形型の成形面を良好な状態に保つため成形時の雰囲気を非酸化性ガスにすることが望ましい。非酸化性ガスとしては窒素、窒素と水素の混合ガスなどが好ましい。
(精密プレス成形法1)
この方法は、プレス成形型にプリフォームを導入し、プレス成形型とプリフォームを一緒に加熱し、精密プレス成形するというものである(精密プレス成形法1とういう)。
精密プレス成形法1において、プレス成形型と前記プリフォームの温度をともに、プリフォームを構成するガラスが106〜1012dPa・sの粘度を示す温度に加熱して精密プレス成形を行うことが好ましい。
また前記ガラスが1012dPa・s以上、より好ましくは1014dPa・s以上、さらに好まくは1016dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してから精密プレス成形品をプレス成形型から取り出すことが望ましい。
上記の条件により、プレス成形型成形面の形状をガラスにより精密に転写することができるとともに、精密プレス成形品を変形することなく取り出すこともできる。
この方法は、プレス成形型に予熱したプリフォームを導入し、精密プレス成形することを特徴とするものである(精密プレス成形法2という)。この方法では、プレス成形型とプレス成形用プリフォームを別々に予熱し、予熱されたプリフォームをプレス成形型に導入して精密プレス成形することが好ましい。
この方法によれば、前記プリフォームをプレス成形型に導入する前に予め加熱するので、サイクルタイムを短縮化しつつ、表面欠陥のない良好な面精度の光学素子を製造することができる。
プレス成形型の予熱温度は前記プリフォームの予熱温度よりも低くすることが好ましい。このような予熱によりプレス成形型の加熱温度を低く抑えることができるので、プレス成形型の消耗を低減することができる。
精密プレス成形法2において、前記プリフォームを構成するガラスが109dPa・s以下、より好ましくは109dPa・sの粘度を示す温度に予熱することが好ましい。
また、前記プリフォームを浮上しながら予熱することが好ましく、さらに前記プリフォームを構成するガラスが105.5〜109dPa・s、より好ましくは105.5dPa・s以上109dPa・s未満の粘度を示す温度に予熱することがさらに好ましい。
またプレス開始と同時またはプレスの途中からガラスの冷却を開始することが好ましい。
なおプレス成形型の温度は、前記プリフォームの予熱温度よりも低い温度に調温させるが、前記ガラスが109〜1012dPa・sの粘度を示す温度を目安にすればよい。
この方法において、プレス成形後、前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上にまで冷却してから離型することが好ましい。
精密プレス成形された光学素子はプレス成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。成形品がレンズなどの光学素子の場合には、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。
(実施例1〜21)
表1に各実施例のガラスの組成、屈折率(nd)、アッべ数(νd)、転移温度(Tg)、屈伏点温度(Ts)、および液相温度(L.T.)、比重、耐候性の指標であるヘイズ値、耐アルカリ性の指標である水酸化ナトリウム水溶液に浸漬したときのガラスの質量減少量を示す。いずれのガラスとも、各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、および硝酸塩を使用し、ガラス化した後に表1に示す組成となるように前記原料を秤量し、十分混合した後、白金坩堝に投入して電気炉で1050〜1200℃の温度範囲で熔融し、攪拌して均質化を図り、清澄してから適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを転移温度まで冷却してから直ちにアニール炉に入れ、室温まで徐冷して各光学ガラスを得た。
得られた光学ガラスについて、屈折率(nd)、アッべ数(νd)、転移温度(Tg)、屈伏点温度(Ts)、液相温度(L.T.)、液相温度におけるガラスの粘性(L.T.粘性)、ヘイズ値、比重、質量減少量を、以下のようにして測定した。
(1)屈折率(nd)およびアッべ数(νd)
徐冷降温速度を-30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
(2)転移温度(Tg)および屈伏点温度(Ts)
理学電機株式会社の熱機械分析装置により昇温速度を4℃/分にして測定した。
(3)液相温度(L.T.)
白金ルツボにガラス試料約50gを入れ、約1100〜1200℃にて約15〜60分熔融後、それぞれ860℃、870℃、880℃、890℃、900℃、910℃、920℃、930℃、940℃、950℃、960℃にて2時間保温したものを冷却して結晶析出の有無を顕微鏡により観察し、結晶の認められない最低温度を液相温度(L.T.)とした。
(4)液相温度における粘性(L.T.粘性)
JIS規格Z8803、共軸二重円筒型回転粘度計による粘度測定方法により粘度を測定した。
(5)ヘイズ値
温度65℃-湿度90%の清浄な恒温恒湿機内に1週間保持された、両面光学研磨されたガラス平板に、研磨面に対し垂直に白色光を透過させたときの散乱光強度と透過光強度の比(散乱光強度/透過光強度)を%表示した。
(6)比重
アルキメデス法を用いて算出した。
(7)表面結晶、内部結晶
ガラスを大気中にて熔融状態から鋳型にキャストし、上面に平坦な自由表面を有するガラス成形体を作製し、このガラス成形体を切断し、1×1×2cm3の直方体状のガラス試料を得た。なお、前記試料の表面のうちの1つ(1×2cm2)が、上記自由表面の一部になるようにガラス成形体の切断を行った。このガラス試料を、610℃まで30℃/minの速度で昇温して10分間保持した後に放冷(熱処理A)した後、ガラスを顕微鏡によって拡大観察し、ガラス内部に存在する直径100nm以上の結晶粒子の個数を数えた。さらに、顕微鏡による拡大観察によって、上記熱処理Aの後にガラスの自由表面に析出する、直径0.1μm以上の結晶粒子の平均密度を求めた。
(8)耐アルカリ性
ガラス表面を光学研磨して50℃、0.01モル/リットルのNaOH水溶液に浸漬したときの単位面積・単位時間あたりの質量減少量を求めた。
次に実施例1〜21に相当する清澄、均質化した熔融ガラスを、ガラスが失透することなく、安定した流出が可能な温度域に温度調整された白金合金製のパイプから一定流量で流出し、滴下または降下切断法にて目的とするプリフォームの質量の熔融ガラス塊を分離し、熔融ガラス塊をガス噴出口を底部に有する受け型に受け、ガス噴出口からガスを噴出してガラス塊を浮上しながら精密プレス成形用プリフォームを成形した。熔融ガラスの分離間隔を調整、設定することにより直径2〜30mmの球状プリフォームを得た。プリフォームの質量は設定値に精密に一致しており、いずれも表面が滑らかなものであった。
実施例22で得られたプリフォームを、図1に示すプレス装置を用いて精密プレス成形して非球面レンズを得た。具体的にはプリフォームを、プレス成形型を構成する下型2および上型1の間に設置した後、石英管11内を窒素雰囲気としてヒーター12に通電して石英管11内を加熱した。プレス成形型内部の温度を成形されるガラスが108〜1010dPa・sの粘度を示す温度に設定し、同温度を維持しつつ、押し棒13を降下させて上型1を押して成形型内にセットされたプリフォームをプレスした。プレスの圧力は8MPa、プレス時間は30秒とした。プレスの後、プレスの圧力を解除し、プレス成形されたガラス成形品を下型2および上型1と接触させたままの状態で前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上になる温度まで徐冷し、次いで室温まで急冷してガラス成形品を成形型から取り出し非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するレンズであった。
このようにして得た非球面レンズを洗剤を用いて洗浄し、すすぎを十分してから乾燥さ
せ、清浄なレンズを得た。これらレンズを観察したところ、表面にクモリは見られず、内
部にも失透や脈理などの欠陥は認められなかった。
洗浄した非球面レンズには必要に応じて反射防止膜を設けてもよい。
実施例22で得られたプリフォームを、浮上しながらプリフォームを構成するガラスの粘度が108dPa・sになる温度に予熱した。一方で上型、下型、胴型を備えるプレス成形型を加熱し、前記ガラスが109〜1012dPa・sの粘度を示す温度にし、予熱したプリフォームをプレス成形型のキャビティ内に導入して精密プレス成形した。プレスの圧力は10MPaとした。プレス開始とともにガラスとプレス成形型の冷却を開始し、成形されたガラスの粘度が1012dPa・s以上となるまで冷却した後、成形品を離型して非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するレンズであった。
得られたレンズを実施例23と同様に洗浄、乾燥し、表面、内部とも高品質のレンズを得ることができた。精密プレス成形により得られた非球面レンズには必要に応じて反射防止膜を設けてもよい。
Claims (19)
- 5モル%以上のP2O5を含み、アッベ数(νd)が58以上、ガラス転移温度(Tg)が570℃以下、表面を光学研磨して50℃、0.01モル/リットルのNaOH水溶液に浸漬したときの質量減少量が17μg/(cm2・時)以下の耐アルカリ性、610℃まで30℃/分の速度で昇温して10分間保持した後に放冷した後、内部に100nm以上の大きさの結晶粒子が10個/cm3以下となる熱的安定性、および10%以下のヘイズ値を有し、かつ
質量%表示で、
P2O5 18〜70%(ただし、70%を除くとともに5モル%以上)、
B2O3 0.6〜34%(ただし、P 2 O 5 /B 2 O 3 (質量%の比)は2.1〜30)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 0〜20%(ただし、0%を除く)、
Na2O 0〜18%、
K2O 0〜15%、
MgO 0〜25%、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜20%、
BaO 0〜40%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜15)、
ZnO 0〜14%
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O /ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜18%、
Sb2O3 0〜1%、
を含み、かつ、質量%表示において、P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、
SrO、BaO、ZnO、Gd2O3、Sb2O3以外の成分のうち最も多く含有されている成分の量がB2O3およびLi2Oの含有量のいずれよりも少ないことを特徴とする精密プレス成形用光学ガラス。 - 質量表示において、
P2O5 20〜60%、
B2O3 3%超かつ28%以下(ただし、P2O5/B2O3(質量%の比)は2.1〜30)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 1〜20%(ただし、1%を除く)、
Na2O 0〜18%、
K2O 0〜15%、
MgO 0〜25%(ただし、0%を除く)、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜20%、
BaO 0〜39%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜15)、
ZnO 0〜14%、
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O /ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜18%、
Sb2O3 0〜1%、
を含む請求項1に記載の精密プレス成形用光学ガラス。 - 質量表示において、
P2O5 20〜60%、
B2O3 3%超かつ28%以下(ただし、P2O5/B2O3(質量%の比)は2.1〜15)、
Al2O3 0〜8%、
Li2O 1〜10%(ただし、1%を除く)、
Na2O 0〜9%、
K2O 0〜4%、
MgO 0〜15%(ただし、0%を除く)、
CaO 0〜18%(ただし、MgO+CaO>4%)、
SrO 0〜15%、
BaO 0〜39%(ただし、SrO+BaO>1%、BaO/B2O3(質量%の比)は0〜12)、
ZnO 0〜14%、
(ただし、ΣR''O=(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)、ΣR'O=(Li2O+Na2O+K2O)としたときのΣR''O/ΣR'Oは質量%の比で25以下)、
Gd2O3 0〜14%、
Sb2O3 0〜1%、
を含む請求項2に記載の精密プレス成形用光学ガラス。 - 1〜20質量%(ただし、20質量%を含まない)のBaOを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- BaOを1〜18質量%含む請求項4に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- ZnOを0〜3質量%含む請求項4または5に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- BaO含有量に対するP2O5含有量の質量比(P2O5/BaO)が1以上であり、質量%表示で、P2O5を48%未満、ZnOを0〜2%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- SrOとBaOの合計量(SrO+BaO)に対するMgOとCaOの合計量(MgO+CaO)の割合(MgO+CaO)/(SrO+BaO)(質量比)が0.11〜10である請求項1〜7のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Gd2O3およびSb2O3の合計含有量が95質量%超である請求項1〜8のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- 屈折率(nd)が1.46以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- 液相温度が950℃以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- 液相温度における粘性が2〜20dPa・sの範囲にある請求項1〜11のいずれか1項に記載の精密プレス成形用光学ガラス。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる精密プレス成形用プリフォーム。
- 流出パイプから流出する熔融ガラス流から所要質量の熔融ガラスを分離して請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる精密プレス成形用プリフォームを成形することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- 熔融ガラスを流出、成形してガラス成形体を作製し、前記ガラス成形体を機械加工して請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる精密プレス成形用プリフォームを作製することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなり、レンズ、回折格子、回折格子付のレンズ、レンズアレイまたはプリズムのいずれかである光学素子。
- ガラス製のプリフォームを加熱し、プレス成形型を用いて精密プレス成形する光学素子の製造方法において、
前記プリフォームが請求項13に記載のプリフォームであるか、または請求項14または15に記載の方法により製造されたプリフォームであることを特徴とする光学素子の製造方法。 - プレス成形型に前記プリフォームを導入し、前記成形型と前記プリフォームを一緒に加熱し、精密プレス成形することを特徴とする請求項17に記載の光学素子の製造方法。
- プレス成形型に予熱したプリフォームを導入し、精密プレス成形することを特徴とする請求項17に記載の光学素子の製造方法。
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