以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態について図1から図6を用いて説明する。
ここでは、エネルギ処置具(治療用処置具)として、例えば腹壁を通して処置を行うための、リニアタイプの外科用処置具12を例にして説明する。
図1および図2に示すように、治療用処置システム10は、エネルギ処置具12と、エネルギ源(制御部)14と、フットスイッチ(ハンドスイッチでも良い)16(図2参照)と、流体源18とを備えている。
図1に示すように、エネルギ処置具12は、ハンドル22と、シャフト24と、開閉可能な処置部(保持部)26とを備えている。ハンドル22は、ケーブル28を介してエネルギ源14に接続されている。図2に示すように、エネルギ源14には、フットスイッチ16が接続されている。
フットスイッチ16は、図示しないペダルを備えている。フットスイッチ16のペダルを術者が操作(押圧/押圧解除)することにより、エネルギ源14から外科用処置具12へのエネルギ(この実施の形態では高周波エネルギ)の供給のON/OFF、さらには後述する流体(接合補助剤)を流すか否か、の一連の動作が切り換えられる。ペダルが押圧されているときには、高周波エネルギを適宜に設定した状態(エネルギ出力量、エネルギ出力タイミングなどを制御した状態)に基づいて出力する。ペダルの押圧が解除されると、高周波エネルギの出力を強制的に停止させる。また、ペダルが押圧されているときには、所定の流量の流体が流され、押圧が解除されると流体の流れが停止する。
図1に示すように、ハンドル22は、術者が握り易い形状に形成され、例えば略L字状に形成されている。ハンドル22の一端には、シャフト24が配設されている。このシャフト24と同軸上のハンドル22の基端からは、上述したケーブル28が延出されている。ケーブル28には、後述する高周波電極92,94の通電ライン28a,28bが挿通されている。
一方、ハンドル22の他端側は、シャフト24の軸方向から外れる方向に延出され術者に把持される把持部である。ハンドル22は、その他端側に並設されるように、処置部開閉ノブ32を備えている。この処置部開閉ノブ32は、ハンドル22の略中央の部分でシャフト24の後述するシース44(図3Aおよび図3B参照)の基端に連結されている。この処置部開閉ノブ32をハンドル22の他端に対して近接および離隔させると、シース44がその軸方向に沿って移動する。
図3Aおよび図3Bに示すように、シャフト24は、筒体42と、この筒体42の外側に摺動可能に配設されたシース44とを備えている。筒体42は、その基端部がハンドル22(図1参照)に固定されている。シース44は、筒体42の軸方向に沿ってスライド可能である。
筒体42の外側には、その軸方向に沿って凹部46が形成されている。この凹部46には、後述する高周波電極(エネルギ出力部)92に接続される電極用通電ライン28aが配設されている。筒体42の内部には、後述する高周波電極(エネルギ出力部)94に接続される電極用通電ライン28bが挿通されている。
図1に示すように、処置部26は、シャフト24の先端に配設されている。図3Aおよび図3Bに示すように、処置部26は、1対の保持部材52,54、すなわち、第1の保持部材(第1のジョー)52および第2の保持部材(第2のジョー)54を備えている。
図3Aおよび図3Bに示す第1および第2の保持部材52,54自体は、それぞれ全体的に絶縁性を有することが好適である。図4Aから図4Cに示すように、第1の保持部材52は、第1の保持部材本体(以下、主に本体という)62と、この本体62の基端部に設けられた基部64とを一体的に備えている。本体62は第2の保持部材54の後述する本体72と協働して図5Bに示す生体組織L1,L2を保持する部分であり、保持面(縁部)62aを有する。基部64はシャフト24の先端に連結される部分である。第1の保持部材52の本体62および基部64は同軸上に配設されている。そして、本体62と基部64との間には、段差66が形成されている。
第2の保持部材54は、図4Aから図4Cに示す第1の保持部材52のようには詳細に図示しないが、第2の保持部材本体(以下、主に本体という)72と、この本体72の基端部に設けられた基部74とを一体的に備えている。本体72は第1の保持部材52の本体62と協働して生体組織L1,L2を保持する部分であり、保持面(縁部)72aを有する。基部74はシャフト24の先端に連結される部分である。第2の保持部材54の本体72および基部74は同軸上に配設されている。そして、本体72と基部74との間には、段差76が形成されている。
なお、この実施の形態および後述する実施の形態では、第1の保持部材52の本体62と、第2の保持部材54の本体72とは、同じ形状を有する。また、第1の保持部材52の基部64と、第2の保持部材54の基部74とは、第2の保持部材54の基部74が後述するようにシャフト24の筒体42に枢支されるように形成されていることが第1の保持部材52の基部64とは異なるが、他の構造は同一であるから、適宜に説明を省略する。
図4Cに示すように、第1の保持部材52の本体62の外表面は、滑らかな曲面状に形成されている。図示しないが、第1の保持部材52の基部64の外表面も滑らかな曲面状に形成されている。第1の保持部材52に対して第2の保持部材54が閉じた状態では、処置部26の横断面は、本体62,72および基部64,74の横断面共に略円形または略楕円状に形成されている。第1の保持部材52に対して第2の保持部材54が閉じた状態では、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の保持面(縁部)62a,72aは互いに対向して当接する。なお、この状態では、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の基端部の外径の方が、基部64,74の外径よりも大きく形成されている。そして、本体62,72と基部64,74との間には、それぞれ上述した段差66,76が形成されている。
第1の保持部材52は、その基部64が、シャフト24の筒体42の先端部に固定されている。一方、第2の保持部材54は、その基部74が、シャフト24の軸方向に対して直交する方向に配設された支持ピン82によってシャフト24の筒体42の先端部に回動可能に支持されている。第2の保持部材54は、支持ピン82の軸回りに回動することにより第1の保持部材52に対して開閉可能である。この第2の保持部材54は、第1の保持部材52に対して開くように、例えば板バネなどの弾性部材84により付勢されている。
ここで、第1および第2の保持部材52,54は、第2の保持部材54を第1の保持部材52に対して閉じた状態で、それらの基部64,74を合わせた略円形または略楕円状の外周面が、筒体42の先端部の外周面に対して略面一または僅かに大径に形成されている。このため、シース44を筒体42に対してスライドさせて、シース44の先端で第1の保持部材52および第2の保持部材54の基部64,74を覆うことが可能である。
この状態では、図3Aに示すように、弾性部材84の付勢力に抗して第1の保持部材52に対して第2の保持部材54が閉じる。一方、シース44の先端で第1および第2の保持部材52,54の基部64,74を覆った状態からシース44を筒体42の基端側にスライドさせると、図3Bに示すように、弾性部材84の付勢力によって第1の保持部材52に対して第2の保持部材54が開く。
図4Aから図4Cに示すように、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72には、平行であることが好ましい2列の凹溝状の流路(チャンネル)62b,72bが形成されている。すなわち、本体62,72の流路62b,72bは外側に開口されている。流路62b,72bの先端は閉塞されている。
基部64,74には、平行であることが好ましい2列の管路64a,74aがそれぞれ形成されている。すなわち、基部64,74の管路64a,74aは両端部以外、外側に対して閉口されている。本体62,64の流路62b,72bと基部64,74の管路64a,74aとは連続して形成されている。基部64,74の管路64a,74aの基端には、シャフト24の内部に挿通された可撓性を有するホース18aの先端が接続されている。ホース18aの基端は、ハンドル22を通してエネルギ処置具12の外部に延出されて流体源18に接続されている。このため、流体源18に溜めた液体等の後述する流体をホース18aを通して第1および第2の保持部材52,54の基部64,74の管路64a,74a、本体62,72の流路62b,72bに導くことができる。なお、ホース18aはエネルギ処置具12の外側では透明又は半透明の可撓性チューブが用いられることが好ましい。このような透明又は半透明のチューブが用いられることによって、液体が流れるのを視認することができる。
なお、ホース18aは流体源18から処置部26に液体を導く場合、第1および第2の保持部材52,54の基部64,74に近接する位置で2つや4つに分岐されていることが好ましい。
また、流体源18から処置部26に導く液体の粘性によってはホース18aを通して第1および第2の保持部材52,54に液体を供給する際に空気圧等を用いて供給を補助するようにしても良い。
そして、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の保持面(縁部)62a,72aの内側には、出力部材やエネルギ放出部として、平板状の高周波電極(接合部材)92,94が配設されている。これら高周波電極92,94は、通電ライン28a,28bの先端と、コネクタ96a,96bを介して電気的に接続されている。そして、これら通電ライン28a,28bは、エネルギ源14の後述する高周波エネルギ出力部104に接続されている。このため、高周波電極92,94間に保持した生体組織L1,L2に通電して生体組織L1,L2にジュール熱を発生させることによって、生体組織L1,L2自体が加熱されて変性される。
これら高周波電極92,94は、本体62,72のそれぞれ2列の溝状の流路62b,72bに蓋をするものであり、これら流路62b,72bをそれぞれ管路として形成する。高周波電極92,94には、各流路62b,72bに沿って複数の開口(接合維持補助部)92a,94aが形成されている。このため、上述した流体源18からの流体を高周波電極92,94の開口92a,94aから染み出させることができる。なお、開口92a,94aは、例えば等間隔に配置されていたり、開口径を調整するなどして各開口92a,94aから同量の液体を染み出させるように配置されていることが好ましい。
これら高周波電極92,94は、生体組織L1,L2を高周波エネルギにより処置するのに用いるのに加えて、生体組織L1,L2間のインピーダンスZ(図5A参照)や位相θ(図7参照)を測定するセンサとして用いることができる。高周波電極92,94は例えば通電ライン28a,28bを通してエネルギ源14の後述する検出部106に信号を送受信できる。ここでは検出部106によって、インピーダンスZを測定するものとして説明する。
図2に示すように、エネルギ源14は、第1の制御部(エネルギ制御部)102と、高周波エネルギ出力部(第1の高周波エネルギ出力部)104と、検出部106と、表示部108と、スピーカ110とを備えている。第1の制御部102には、高周波エネルギ出力部104と、検出部106と、表示部108と、スピーカ110とが接続されており、第1の制御部102により、高周波エネルギ出力部104、検出部106、表示部108およびスピーカ110が制御される。
高周波エネルギ出力部104は、エネルギを発生し、通電ライン28a,28bを介して高周波電極92,94にエネルギを供給する。なお、高周波エネルギ出力部104は、第7の実施の形態で説明するヒータ222,232(図26Aおよび図26B参照)にエネルギを供給するエネルギ出力部としても機能する。
検出部106は生体組織L1,L2を保持した高周波電極92,94によって得られる測定結果を通電ライン28a,28bを通して検出してインピーダンスZを算出する。表示部108は、インピーダンスZの閾値Z1の設定等、表示によって確認しながら各種の設定を行う部分である。スピーカ110は音源(図示せず)を有し、処置の終了を知らせたり、問題が起こったときなどに音を出す。処置の終了を知らせる音と問題が起こったことを知らせる音とは、音色が異なっている。また、スピーカ110は、処置の最中に、第1段階の処置が終了した音、第2段階の処置が終了した音のように処置を区切って音を出すことも可能である。
エネルギ源14の第1の制御部102には、フットスイッチ16が接続されているとともに、流体源18の後述する第2の制御部(流量制御部)132が接続されている。このため、フットスイッチ16が操作されると、エネルギ源14が動作するとともに、流体源18が動作する。
フットスイッチ16がONに切り換えられる(図示しないペダルが押圧される)とエネルギ処置具12による処置が行われ、OFFに切り換えられる(ペダルの押圧が解除される)と処置が停止する。表示部108は、高周波エネルギ出力部104の出力量(出力量自体、または、どのような処置を行うか(生体組織L1,L2同士を接合する目的の処置か、生体組織の開口を封止する目的の処置か等))やエネルギの出力タイミングを第1の制御部102で制御する際の設定手段(コントローラ)として機能する。表示部108が設定したものを表示する表示機能を有することはもちろんである。
検出部106は、高周波エネルギを出力する第1および第2の高周波電極92,94を通して、第1および第2の高周波電極92,94間の生体組織L1,L2のインピーダンスZを検出(算出)可能である。すなわち、検出部106と第1および第2の高周波電極92,94は、第1および第2の高周波電極92,94間の生体組織L1,L2のインピーダンスZを計測するセンサ機能を有する。
流体源18は、流体貯留部122と、流量調整部124とを備えている。流量調整部124は、第2の制御部(流量制御部)132と、流量調整機構134とを備えている。
図1に示す流体貯留部122は、流体を溜める例えば透明なバッグ等により形成されている。この流体貯留部122には、ホース18aの基端が着脱可能に接続されている。流量調整部124の第2の制御部132は、エネルギ源14の第1の制御部102に接続されている。このため、第2の制御部132はエネルギ源14と連動して動作する。流量調整機構134は、ホース18aを通してエネルギ処置具12に流れる流体の流量を調整するように、例えばピンチコック等により形成されている。すなわち、第2の制御部132は流量調整機構134を動作させて、流体貯留部122からホース18aを介して第1および第2の保持部材52,54に供給する液体等の流体の流量を制御する。
流体貯留部122には、例えば接着剤等、高周波エネルギにより処置した生体組織LTの外表面Scに塗布したときに生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質(接合補助剤)を溜めることができる。生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質は生体組織に塗布すると生体組織に浸透する生体吸収性材料であることが好ましい。流体貯留部122に溜める物質は液体だけでなく、例えばゲル状の物質でも良い。すなわち、流体貯留部122に溜める物質はホース18aを通して流すことができる流体であれば良い。生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質は、化合物を含有する。この化合物は、物理的作用、化学的作用、あるいは両作用によって生体組織LTを被覆又は接合する物質である。化合物は、タンパク質、糖質、重合体、硬化剤の少なくとも1つであることが好ましい。タンパク質は、フィブリン、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンの少なくとも1つであることが好適である。糖質は、デンプン、ヒアルロン酸、キトサンの少なくとも1つであることが好適である。重合体は、ポリエチレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクタムであることが好適である。硬化剤は、アクリレート誘導体、アルデヒド誘導体、スクシンイミド誘導体、イソシアネート誘導体であることが好適である。すなわち、生体組織に水分が浸透するのを防止する物質(接合補助剤)は、例えば、有機系接着剤、無機系接着剤、接着用生体材料、架橋剤、モノマー系・ポリマー系の樹脂材等が挙げられる。また、接着剤を用いる場合、2液混合型のものなど、種々のものを使用することができる。
さらに、流体貯留部122に溜める、例えば接着剤等の液体やゲル状の物質には、抗生剤や成長促進剤等を含有させても良い。
なお、表1には、以下に説明する生体組織L1,L2同士を接合する実験で用いた8種類の接合補助部材の主成分と対応する接合補助部材の種類を示す。接合補助部材の主成分や種類が表1に示すものに限定されるものでないことはもちろんである。
流体貯留部122に液体の物質を溜めた場合、流体貯留部122に接続されたホース18aを通してエネルギ処置具12の第1および第2の保持部材52,54の基部64,74の管路64a,74a、および、本体62,72の流路62b,72bに液体の物質を導くことができる。流体貯留部122にゲル状の物質を溜めた場合、流体貯留部122に例えば空気圧等の圧力を加えることにより、流体貯留部122に接続されたホース18aを通してエネルギ処置具12の第1の保持部材52の基部64の管路64a、本体62の流路62bにゲル状の物質を導くことができる。
図5Aには、高周波エネルギ出力部104から高周波電極92,94に所望のエネルギを供給し、生体組織L1,L2を高周波処置したときの高周波電極92,94間の生体組織L1,L2の、エネルギ供給時間tと生体組織L1,L2間のインピーダンスZとの関係を示す。また、図6には、高周波エネルギ出力部104による外科用処置具12の制御フローの一例を示す。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
流体源18の流体貯留部122に、高周波エネルギによる処置により生体組織L1,L2同士を接合した後、2つの生体組織L1,L2を接合した生体組織LTの外周をコーティングするための流体を入れておく。ここでは、流体が生体組織LT用の接着剤であるとして説明する。この接着剤は例えば空気等に触れると乾く、特に速乾性を有することが好適である。また、流体貯留部122に接続されたホース18aは流量調整機構134によって閉じられ、通常は接着剤が流体貯留部122からエネルギ処置具12に向かって流れないようになっている。
術者は、予めエネルギ源14の表示部108を操作して、治療用処置システム10の出力条件を設定しておく(ステップS11)。表示部108で高周波エネルギ出力部104からの出力(設定電力Pset[W])、検出部106によるインピーダンスZの閾値Z1[Ω]、エネルギ最大供給時間t1[sec]等を確認する。高周波エネルギ出力部104からの出力、検出部106によるインピーダンスZの閾値Z1を異なる値に設定する場合はそのように設定し、表示部108で確認する。また、流体貯留部122からホース18aを通してエネルギ処置具12に流す流量V1を設定する。さらに、ホース18aを開放しておく最長時間t-maxを設定する。すなわち、ホース18aを開放してから流量V1に到達しなくても、時間t-maxの経過後、自動的にホース18aを閉じる。
図3Aに示すように、第1の保持部材52に対して第2の保持部材54を閉じた状態で、例えば、腹壁を通して腹腔内に外科用処置具12の処置部26およびシャフト24を挿入する。外科用処置具12の処置部26を処置対象(保持対象)の生体組織L1,L2に対して対峙させる。
第1の保持部材52および第2の保持部材54で処置対象の生体組織L1,L2を保持するため、ハンドル22の処置部開閉ノブ32を操作する。この操作によって、筒体42に対してシース44をシャフト24の基端部側に移動させる。弾性部材84の付勢力によって、基部64,74間を筒状に維持することができなくなり、第1の保持部材52に対して第2の保持部材54が開く。
接合対称(処置対象)の生体組織L1,L2を第1および第2の保持部材52,54の高周波電極92,94の間に配置する。この状態で、ハンドル22の処置部開閉ノブ32を操作する。このとき、筒体42に対してシース44をシャフト24の先端部側に移動させる。弾性部材84の付勢力に抗してシース44によって、基部64,74間を閉じて筒状にする。このため、基部64に一体的に形成された第1の保持部材52の本体62と、基部74に一体的に形成された第2の保持部材54の本体72とが閉じる。すなわち、第1の保持部材52に対して第2の保持部材54が閉じる。このようにして、接合対象の生体組織L1,L2を第1の保持部材52と第2の保持部材54との間で保持する。
このとき、第1の保持部材52の高周波電極92に、処置対象の生体組織L1が接触し、第2の保持部材54の高周波電極94に、処置対象の生体組織L2が接触している。第1の保持部材52の本体62の保持面(縁部)62aと第2の保持部材54の本体72の保持面(縁部)72bとの対向する接触面の両方に、接合対象の生体組織L1,L2の周辺組織が密着している。なお、生体組織L1の接触面C1が生体組織L2の接触面C2に、互いに対して圧力を加えるように接触している。
このように、第1の保持部材52および第2の保持部材54の間に生体組織L1,L2を保持した状態で、フットスイッチ16のペダルを操作する。フットスイッチ16から第1の制御部102に信号が入力され、エネルギ源14の第1の制御部102は、術者の操作によってスイッチ16のペダルが押圧されてONに切り換えられたかを判断する(S12)。
第1の制御部102がスイッチ16のペダルが押圧されてONに切り換えられたと判断したとき、第1の制御部102から高周波エネルギ出力部104に信号が入力される。高周波エネルギ出力部104はエネルギを発生し、通電ライン28a,28bを通して高周波電極92,94間の生体組織L1,L2にエネルギを供給する(S13)。このとき、高周波エネルギ出力部104は、第1の保持部材52の高周波電極92および第2の保持部材54の高周波電極94の間に、表示部108で予め設定した設定電力Pset[W]、例えば20[W]〜80[W]程度の電力を供給する。
このため、高周波エネルギ出力部104は、第1の保持部材52の高周波電極92および第2の保持部材54の高周波電極94間の接合対象の生体組織L1,L2に高周波電流を通電する。すなわち、高周波電極92,94間に保持された生体組織L1,L2に高周波エネルギを与える。このため、高周波電極92,94間に保持された生体組織L1,L2内にジュール熱を発生させて、生体組織L1,L2自体が加熱される。ジュール熱の作用により高周波電極92,94間に保持された生体組織L1,L2内の細胞膜を破壊して細胞膜内物質を放出し、コラーゲンをはじめとする細胞外成分と均一化する。高周波電極92,94間の生体組織L1,L2には高周波電流が流されているので、このように均一化された組織L1,L2に更なるジュール熱を作用させ、例えば生体組織L1,L2の接触面C1,C2同士、組織の層間同士の接合が行われる。したがって、高周波電極92,94間の生体組織L1,L2に高周波電流が通電されると、生体組織L1,L2自体が発熱して脱水しながら生体組織L1,L2の内部が変性(生体組織L1,L2が焼灼)され、接触面C1,C2同士が密着して接合部Cとなる。このようにして、2つの生体組織L1,L2同士が接合されて、接合部Cを有する生体組織LTが形成される。
なお、生体組織L1,L2が変性されるにつれて、生体組織L1,L2から流体(例えば液体(血液)および/または気体(水蒸気))が放出される。このとき、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の保持面62a,72aは、高周波電極92,94よりも生体組織L1,L2に対する密着度が高い。このため、保持面62a,72aは生体組織L1,L2からの流体が第1の保持部材52および第2の保持部材54の外側に逃げるのを抑制する障壁部(ダム)として機能する。すなわち、接合処置対象の生体組織L1,L2以外の生体組織にサーマルスプレッドが生じるのを防止することができる。
このとき、第1および第2の保持部材52,54の高周波電極92,94はセンサ機能を有するので、通電ライン28a,28bを通して、保持した生体組織L1,L2間の情報(インピーダンスZ)を検出部106に伝達する。図5Aに示すように、処置を始めた(生体組織L1,L2間に高周波エネルギを供給し始めた)ときのインピーダンスZの初期値Z0は、例えば50[Ω]〜60[Ω]程度である。そして、生体組織L1,L2に高周波電流が流れて生体組織L1,L2が焼灼されるにつれて、インピーダンスZがZmin(例えば10[Ω]程度)まで一旦低下した後、次第に上昇していく。
第1の制御部102は高周波電極92,94間の生体組織L1,L2の情報を等時間間隔(例えば数ミリ秒)に算出するように検出部106を制御する。第1の制御部102は、検出部106からの信号に基づいて演算した高周波エネルギ出力時のインピーダンスZが予め表示部108で設定(S11)した閾値Z1(図5Aに示すように、ここでは約1000[Ω])以上となったか判断する(S14)。なお、インピーダンスZの閾値Z1を適宜に設定できることはもちろんである。
閾値Z1は、例えば、初期値Z0よりも大きく、インピーダンスZの値の上昇率が鈍化する位置にある(図5A参照)ことが好ましい。インピーダンスZが閾値Z1に到達し、又は閾値Z1よりも大きくなったと判断した場合、第1の制御部102から高周波エネルギ出力部104に信号が伝達される。そして、高周波エネルギ出力部104から第1および第2の保持部材52,54の高周波電極92,94への出力を停止させる(S151)。
一方、インピーダンスZが閾値Z1に到達していなければエネルギ出力を継続する。生体組織L1,L2間のインピーダンスZが閾値Z1よりも小さいと判断した場合、第1および第2の保持部材52,54の高周波電極92,94の間に保持した生体組織L1,L2に対して処置のための高周波エネルギを与え続ける。そして、生体組織L1,L2間のインピーダンスZが閾値Z1に到達するか、又は、高周波エネルギ出力部104からエネルギを供給し始めて所定の時間tが経過した後、高周波エネルギ出力部104からのエネルギ出力を停止させる。このとき、生体組織LTは接合部Cで接合されている。
そして、フットスイッチ16のペダルを押圧したままである。また、生体組織LTも保持部材52,54で保持した状態を維持する。
第1の制御部102によって高周波エネルギ出力部104から高周波電極92,94へのエネルギの供給を停止する(S151)のと同時に、第1の制御部102から第2の制御部132に信号が伝達される。第2の制御部132は、流量調整機構134を動作させ、ホース18aを開放する(S152)。このため、流体貯留部122からホース18aを通してエネルギ処置具12に接着剤が供給される。すなわち、流体貯留部122からホース18aによってハンドル22およびシャフト24の内部を通して、第1および第2の保持部材52,54の基部64,74の管路64a,74aおよび本体62,72の流路62b,72bに接着剤が供給される。このため、本体62,72の流路62b,72bに沿って形成された高周波電極92,94の開口92a,94aから接着剤が染み出す。
高周波電極92,94の開口92a,94aから染み出した接着剤は接合した生体組織の外周面をコーティングするように広げられて塗布される。すなわち、高周波電極92,94と生体組織とが接触した面全体に接着剤が塗布される。そして、接着剤は、例えば空気に触れると時間の経過とともに次第に硬化していく。ここでの接着剤は速乾性を有することが好ましく、硬化した際には防水性を有する。このため、接着剤が硬化することによって接合した生体組織LTの外表面Scはコーティングされている。このため、接合した生体組織LTの外表面Scから接合部C(接触面C1,C2の間)に液体が浸入するのを防止できる。
なお、接着剤の種類によって性質が異なることはもちろんであるが、この実施の形態での接着剤を生体組織L1,L2の接合後に塗布するのは、生体組織用の接着剤が効果的な接着作用を発揮するのが、生体組織L1,L2ができるだけ乾燥した状態で塗布した場合であるためである。すなわち、水分を充分に除去しない状態で接着剤を塗布すると、エネルギ投与によっても生体組織L1,L2から水分が除去され難くなるが、接着剤を生体組織L1,L2の接合後に塗布することによって、このような状態を防止することができる。また、水分を充分に除去しない状態で接着剤を塗布すると、接着剤に水分が混ざり合うことがあるが、接着剤を生体組織L1,L2の接合後に塗布することによって、このような状態を防止することができる。
第2の制御部132は、流体貯留部122からホース18aを通して所定の流量の接着剤を通過させた(S16)とき、又は、所定時間ホース18aを開放した後、流量調整機構134を再び作動させてホース18aを閉じる(S17)。
ホース18aを閉じてから所定の時間(例えば数秒)が経過した後、スピーカ110からブザー等の音を発して処置(生体組織同士の接合処置および接合した接触面C1,C2に水分の浸入を防止する処置)が終了したことを知らせる(S18)。そして、医師等はスピーカ110からの音や表示部108による表示によって処置が終了したことを認識した後、フットスイッチ16のペダルから足を離してペダルの押圧を解除する。
なお、処置はフットスイッチ16のペダルを押圧したままで図6に示す「スタート」から「エンド」まで行われるが、「スタート」から「エンド」に至るまでの間にペダルの押圧を解除すると、第1の制御部102は、そのペダルの押圧を解除した時点で強制的に処置を停止させる。すなわち、高周波エネルギの供給を途中で停止させたり、接着剤の供給を途中で止めたりする場合、スピーカ110からブザー等の音が発せられる前にフットスイッチ16のペダルから足を離し、ペダルの押圧を解除する。ペダルの押圧を解除すると、第1の制御部102は高周波エネルギ出力部104からエネルギが出力されているときには高周波エネルギ出力部104から電極92,94への出力を停止させる。また、第2の制御部132はホース18aが開放されているときには流量調整機構134を動作させてホース18aを閉じて流体の供給を停止させる。
医師はスピーカ110からのブザー音を認識した上で処置部開閉ノブ32を操作し、生体組織LTを開放する。このとき、図5Bに示すように、生体組織同士の接触面C1,C2は接合され接合部Cが形成されている。また、生体組織LTには、生体吸収性を有する接着剤が、その外表面Scから接合部Cに向かって浸透しながら硬化していくので、生体組織LTは接着剤によりコーティングされた状態となる。なお、接着剤が生体吸収性を有するので、図5Bに示す生体組織L1,L2の側面にも開口92a,94aから染み出した接着剤が塗布される場合がある。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
生体組織L1,L2のインピーダンスZを計測しつつ、生体組織L1,L2の接合処置を行うことによって、生体組織L1,L2同士の接触面C1,C2の密着をより確実にすることができる。また、生体組織L1,L2同士の接合処置を行った後、接合処置した生体組織LTの外周を接着剤等でコーティングすることによって、接合処置した生体組織LTの接合部Cに水分が浸入するのを防止することができる。このため、生体組織L1,L2の接触面C1,C2が密着した状態(生体組織LTが接合した状態)を長く維持することができる。
なお、生体組織L1,L2同士の接合後、接合した生体組織LTの外周をコーティングする流体物質として2液混合型の接着剤を用いる場合、流体源18に2種類の液体を並設させれば良い。この場合、2つのホース18aが流体源18から並設された状態でエネルギ処置具12に延出され、ハンドル22およびシャフト24を通して処置部26の第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の流路62b,72bまでそれぞれ独立して液体が供給される。そして、高周波電極92,94の開口92a,94aから2種類の液体が染み出したときに混合されるようにすれば良い。このようにすると、ホース18aの内部や第1および第2の保持部材52,54の内部で接着剤が硬化するのを防止できる。また、2液混合型の接着剤を用いる場合、1つのホース18aに2つの流路(図示せず)が形成されていることも好ましい。
上述した実施の形態では検出部106で検出する生体情報としてインピーダンスZ(図5A参照)を用いる例について説明したが、生体情報として位相の変化量(位相差Δθ)(図7参照)を用いることも好ましい。位相差Δθを用いる場合、図8に示すように、検出部106は、電圧検出部142と、電流検出部144と、位相検出部146を備えている。位相検出部146は第1の制御部102に接続されている。電圧検出部142および電流検出部144は、エネルギ処置具12(高周波電極92,94)に接続されているとともに、位相検出部146に接続されている。これについては、第1の実施の形態に限らず、後述する実施の形態も同様である。
高周波エネルギ出力部104に高周波電圧を発生させた場合、高周波エネルギ出力部104の高周波電圧に基づく、所定の周波数及びピーク値を有する高周波電流が、電流検出部144を介して外科用処置具12に出力される。電圧検出部142は、高周波エネルギ出力部104を通した高周波電圧のピーク値を検出し、検出したピーク値を出力電圧値情報として位相検出部146に対して出力する。電流検出部144は、高周波エネルギ出力部104を通した高周波電圧に基づいて発生する、高周波電流のピーク値を検出し、検出したピーク値を出力電流値情報として位相検出部146に対して出力する。
位相検出部146は、電圧検出部142から出力される出力電圧値情報に基づいて高周波エネルギ出力部104を通して出力される高周波電圧の位相を検出した後、検出した位相を出力電圧位相情報として、出力電圧値情報と併せて第1の制御部102に対して出力する。また、位相検出部146は、電流検出部144から出力される出力電流値情報に基づいて高周波エネルギ出力部104を通した高周波電流の位相を検出した後、検出した位相を出力電流位相情報として、出力電流値情報に併せて第1の制御部102に対して出力する。
第1の制御部102は、位相検出部146から出力される出力電圧値情報と、出力電圧位相情報と、出力電流値情報と、出力電流位相情報とに基づいて、高周波エネルギ出力部104を通して出力される高周波電圧及び高周波電流の位相差Δθを算出する。
第1の制御部102は、フットスイッチ16のペダルの操作に応じて出力される指示信号と、算出した位相差Δθとに基づいて、高周波エネルギ出力部104に対し、高周波電流及び高周波電圧の出力状態をON状態またはOFF状態として変更する制御を行う。
図7に示すように、高周波エネルギ出力部104を通して出力される高周波電流及び高周波電圧の位相差Δθは、生体組織LTに対する処置を行う初期の段階においては0°または略0°である。なお、表示部108で位相差Δθの値は90°またはそれに近い値に設定しておく。
フットスイッチ16のペダルが継続して押圧され、第1および第2の保持部材52,54の高周波電極92,94間に保持した生体組織L1,L2の処置が進むにつれて生体組織L1,L2から脱水されて生体組織L1,L2が焼灼されたり凝固されたりする。このように処置が進むにつれて、高周波エネルギ出力部104を通して出力される高周波電圧及び高周波電流の位相差Δθは、例えば適当な時間t1を境として、0°または略0°の状態から増加する。
その後、さらにフットスイッチ16のペダルが継続して押圧されることにより、所望の部位における処置が進むと、例えば時間t1以降において、第1の制御部102により算出される位相差Δθの値は、図7に示す90°付近の一定の値をとる。
なお、この変形例において、第1の制御部102は、位相差Δθが90°付近の一定の値になったことを検出した際に前述した制御を行うものに限らず、例えば、位相差Δθが45°より大きく、かつ、90°以下の所定の値で一定になったことを検出した際に前述した制御を行うものであっても良い。
また、インピーダンスZの変化および位相θの変化の両者を組み合わせて生体組織L1,L2に投入するエネルギの切り換えを行っても良い。すなわち、インピーダンスZの変化および位相θの変化のうち、閾値への到達が早い方や遅い方など、適宜に表示部108で設定して用いることも好ましい。
また、第7の実施の形態(図26Aおよび図26B参照)で後述するが、高周波電極92,94の代わりにヒータ222,232を用いた熱エネルギによる処置を行うこともできる。この場合、ヒータ222,232に接触する生体組織の温度を計測しながら処置を進める。
また、この実施の形態では、バイポーラタイプのエネルギ処置具12を用いる場合について説明したが、モノポーラタイプの処置具(図9参照)を用いても良い。
この場合、図9に示すように、処置される患者Pには、対極板150が装着される。この対極板150は、通電ライン150aを介してエネルギ源14に接続されている。さらに、第1の保持部材52に配設された高周波電極92と、第2の保持部材54に配設された高周波電極94とは、通電ライン28a,28bが電気的に接続された同電位の状態にある。この場合、高周波電極92,94に接触する生体組織L1,L2の面積は対極板150が生体に接触する面積よりもそれぞれ充分に小さいため、電流密度が高くなるが、対極板150における電流密度は低くなる。このため、第1および第2の保持部材52,54に保持される生体組織L1,L2はジュール熱により加熱されるのに対して、対極板150に接触した生体組織の加熱は無視できる程度に小さい。したがって、第1および第2の保持部材52,54で把持した部分のうち、同電位の高周波電極92,94に接触した生体組織L1,L2のみ加熱されて変性される。
また、この実施の形態では高周波エネルギを用いて生体組織L1,L2を処置する場合について説明したが、例えばマイクロ波等のエネルギを用いても良い。この場合、高周波電極92,94をマイクロ波電極として用いることができる。
また、この実施の形態では、腹壁を通して腹腔内(体内)の生体組織L1,L2を処置するための、リニアタイプのエネルギ処置具12(図1参照)を例にして説明したが、例えば図10に示すように、腹壁を通して体外に処置対象組織を取り出して処置を行うオープン用のリニアタイプのエネルギ処置具(治療用処置具)12aを用いることもできる。
このエネルギ処置具12aは、ハンドル22と、処置部(保持部)26とを備えている。すなわち、腹壁を通して処置するためのエネルギ処置具12(図1参照)とは異なり、シャフト24が除去されている。一方、シャフト24と同様の作用を有する部材がハンドル22内に配設されている。このため、図10に示すエネルギ処置具12aは、上述した図1に示すエネルギ処置具12と同様に使用することができる。
なお、流体貯留部122を使わず、直接、シリンジのような注入器で生体組織に接着剤を供給してもよい。また、接着剤の供給方法として流体調整部124はロータリーポンプ等を使って生体組織への接着剤の流量を制御してもよい。特に説明しないが、以下に説明する実施の形態においても、直接、シリンジのような注入器で生体組織に接着剤等を供給することが許容される。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について図11Aから図11Cを用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で用いた部材と同一の部材又は同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、その部材の説明を省略する。
図11Aから図11Cに示す第1の保持部材52の本体62には、流路(凹部)62b(図4Aから図4C参照)の代わりに絶縁性を有する流体導管162が配設されている。第1の実施の形態で説明した高周波電極92,94の開口92a,94aは除去されている。
流体導管162は、本体62の外周の縁部に沿って高周波電極92の表面に近接した位置に環状に配設されている。図11Cに示すように、流体導管162の横断面は例えば円形状や矩形状などに形成されている。流体導管162は、第1および第2の保持部材52,54で生体組織L1,L2を保持したときに生体組織L1の外表面に密着するように、適度な弾性力を有することが好ましい。流体導管162は第1の保持部材52の基部64の管路64aに接続されている。なお、流体導管162の内側には高周波電極92が配設されている。
流体導管162には、適当な間隔をおいて複数の開口(接合維持補助部)162aが形成されている。これら開口162aは、図11Bおよび図11Cに示すように、高周波電極92の表面に向けられ、かつ、高周波電極92の中心軸に向けられている。このため、流体導管162の開口162aから排出される流体を高周波電極92の表面に沿って高周波電極92の中心軸に向かって流すことができる。
また、図11Aに示すように、流体導管162の開口162aが高周波電極92の表面に近接した位置にあることから、流体導管162は、その一部が高周波電極92の表面から突出している。このため、流体導管162は、高周波電極92を用いて生体組織L1,L2を処置した際に生体組織L1,L2から発生する蒸気等の流体が外部に漏れ出すのを防止する障壁部の役割を果たす。
なお、図示しないが、第2の保持部材54の本体72の縁部にも、第1の保持部材52と対称的に、開口(接合維持補助部)164aを有する流体導管164が配設されている。このため、流体導管164は、高周波電極94を用いて生体組織L1,L2を処置した際に生体組織L1,L2から発生する蒸気等の流体が外部に漏れ出すのを防止する障壁部の役割を果たす。また、流体導管164は第2の保持部材54の基部74の管路74aに接続されている。
また、図示しないが、流体導管162はダブルルーメンとして形成され、一方(内側)が開口162aを有する管路であり、他方(外側)が冷媒として気体や液体を通じる管路となっていることが好ましい。この場合、他方の管路(外側の管路)に冷媒を循環させることによって、流体導管162に接触した部分の生体組織L1,L2を冷やすことができる。このため、第1および第2の保持部材52,54の保持面62a,72aの外側に生体組織L1,L2を通して熱が伝熱されるのを防止し、処置対象の生体組織L1,L2の外側の生体組織L1,L2に熱の影響を及ぼすのをより確実に防止できる。
治療用処置システム10の他の構造や作用は第1の実施の形態で説明したのと同様であるから、説明を省略する。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について図12から図16を用いて説明する。この実施の形態は第1および第2の実施の形態の変形例であって、第1および第2の実施の形態で用いた部材と同一の部材又は同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、その部材の説明を省略する。
図12に示すように、エネルギ処置具12bのハンドル22は、処置部開閉ノブ32に並設された状態で、後述するカッタ(処置用補助具)180を移動させるためのカッタ駆動ノブ34を備えている。
図13に示すように、エネルギ源14には、第1の実施の形態で説明した検出部(ここでは第1の検出部という)106に加えて、第2の検出部107が第1の制御部102に接続されている。第2の検出部107は、カッタ180の後述する長溝184の係止部184a,184b,184cに配設されたセンサ185に接続されている。
第1および第2の保持部材52,54の本体62,72および基部64,74の外形は、後述するカッタ案内溝172,174が形成されていること以外、第2の実施の形態の第1および第2の保持部材52,54と同様に形成されている。
図14Aから図15Bに示すように、第1の保持部材52の本体62および基部64のうち、第2の保持部材54に近接する側には、真っ直ぐのカッタ案内溝172が形成されている。同様に、第2の保持部材54の本体72および基部74のうち、第1の保持部材52に近接する側には、真っ直ぐのカッタ案内溝174が形成されている。これらカッタ案内溝172,174には後述する1つのカッタ180が出し入れ可能に配設される。
図14Aに示すように、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72に配設される高周波電極92,94は、例えば略U字状に形成され、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の基端部に2つの端部を有する。すなわち、各高周波電極92,94は連続的に形成されている。そして、高周波電極92,94には、第1および第2の保持部材52,54とともにカッタ180を案内するカッタ案内溝(便宜的に符号172,174を付す)が形成されている。
なお、第1および第2の保持部材52,54のカッタ案内溝172,174は互いに対向した状態に形成され、シャフト24の軸方向に沿って形成されている。そして、第1および第2の保持部材52,54の協働する2つのカッタ案内溝172,174によって、1つのカッタ180を案内することができる。
第1の保持部材52のカッタ案内溝172は、第1の保持部材52の本体62および基部64の中心軸上に形成され、第2の保持部材54のカッタ案内溝174は、第2の保持部材54の本体72および基部74の中心軸上に形成されている。
シャフト24の筒体42の内部には、駆動ロッド182がその軸方向に沿って移動可能に配設されている。駆動ロッド182の基端には、カッタ駆動ノブ34が配設されている。駆動ロッド182の先端には、薄板状のカッタ(処置用補助具)180が配設されている。このため、カッタ駆動ノブ34を操作すると、駆動ロッド182を介してカッタ180がシャフト24の軸方向に沿って移動する。
カッタ180は、その先端に刃180aが形成され、基端に駆動ロッド182の先端が固定されている。このカッタ180の先端と基端との間には、長溝184が形成されている。この長溝184には、シャフト24の軸方向に対して直交する方向に延びた移動規制ピン42aがシャフト24の筒体42に固定されている。このため、カッタ180の長溝184が移動規制ピン42aに沿って移動する。そうすると、カッタ180は真っ直ぐに移動する。このとき、カッタ180は、第1および第2の保持部材52,54のカッタ案内溝(流路、流体放出溝)172,174に配設される。
なお、カッタ180の長溝184の一端、他端、および一端と他端の間の例えば3箇所には、移動規制ピン42aを係止し、カッタ180の移動を制御するための係止部184a,184b,184cが形成されている。カッタ180の長溝184には、移動規制ピン42aの位置を認識可能であるとともに、移動規制ピン42aの移動方向を認識可能なセンサ185が配設されている。センサ185は、光を用いたセンサであったり、接触型センサであったりするなど、種々のものが用いられる。このため、長溝184の一端(先端)の係止部184aに移動規制ピン42aがあるときはカッタ180の刃180aがシャフト24の内部に収納され、他端(後端)184bに移動規制ピン42aがあるときはカッタ180の刃180aがシャフト24の先端を通してカッタ案内溝172,174に配設されていることを認識できる。したがって、第2の検出部107は、センサ185によって、シャフト24および処置部26に対するカッタ180の刃180aの位置を認識でき、カッタ180の刃180aで生体組織を切断する位置にあるか否か、容易に判断することができる。
図15Aおよび図15Bに示すエネルギ処置具12のシャフト24の筒体42およびシース44には、それぞれ後述する蒸気(気体)や液体(組織液)などの流体が放出される流体放出口186,188が形成されている。これら流体放出口186,188は、シャフト24の基端側に形成されている。
ここでは図示しないが、シース44の流体放出口188の外周面には、接続口金が設けられていることも好適である。このとき、後述する流体は、カッタ案内溝172,174、シャフト24の筒体42の流体放出口186、シャフト24のシース44の流体放出口188、および、接続口金を通して排出される。この場合、接続口金内を吸引することによって生体組織L1,L2から放出される蒸気や液体などの流体を流体放出口186,188から容易に排出することができる。
なお、流体放出口186,188はシャフト24に設けられていることが好適であるが、ハンドル22に設けられていることも好適である。
図14Aから図14Cに示すように、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72には第1の流体導管162,164(第2の実施の形態では、単に、流体導管162,164として説明した)が配設されているが、これは第2の実施の形態で説明したので、ここでの説明を省略する。
図14Bに示すように、カッタ案内溝172,174の縁部には、絶縁性を有する第2の流体導管192,194が配設されている。この第2の流体導管192は例えば第1の保持部材52の基部64の管路64aに接続されている。同様に、別の第2の流体導管194は例えば第2の保持部材54の基部74の管路74aに接続されている。
第2の流体導管192,194にはそれぞれ適当な間隔をおいて複数の開口(接合維持補助部)192a,194aが形成されている。流体導管192,194の開口192a,194aの向きはカッタ180を挟んで対向する同じ第2の流体導管192,194に向けられている。
なお、第2の流体導管192,194はそれぞれ1対であっても良いし、それぞれ1つの流体導管192,194が略U字状に曲げられていても良い。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について図16を用いて説明する。
第1の実施の形態で説明したように、生体組織L1,L2を接合した後にその接合した生体組織LTをコーティングするための流体(接合補助剤)を流体源18の流体貯留部122に入れておく。流体貯留部122に接続されたホース18aは流量調整機構134によって閉じられ、接着剤がエネルギ処置具12に向かって流れないようになっている。
術者は、予めエネルギ源14の表示部108を操作して、治療用処置システム10の出力条件を設定しておく(S31)。表示部108で高周波エネルギ出力部104からの出力(設定電力Pset[W])、検出部106によるインピーダンスZの閾値Z1[Ω]、エネルギ供給時間t1[sec]等を確認する。高周波エネルギ出力部104からの出力、検出部106によるインピーダンスZの閾値Z1を異なる値に設定する場合はそのように設定し、表示部108で確認する。また、流体貯留部122からホース18aを通してエネルギ処置具12に流す流量V1を設定する。
図15Aに示すように、第1の保持部材52に対して第2の保持部材54を閉じた状態で、例えば、腹壁を通して腹腔内に外科用処置具12の処置部26およびシャフト24を挿入する。第1および第2の保持部材52,54で処置対象の生体組織L1,L2を保持するため、ハンドル22の処置部開閉ノブ32を操作し、接合対象の生体組織L1,L2を第1および第2の保持部材52,54の間で保持する。
第1の保持部材52および第2の保持部材54の間に生体組織L1,L2を保持した状態で、フットスイッチ16のペダルを操作する。フットスイッチ16から第1の制御部102に信号が入力され、エネルギ源14の第1の制御部102は、術者の操作によってスイッチ16のペダルが押圧されてONに切り換えられたかを判断する(S32)。
第1の制御部102がスイッチ16のペダルが押圧されてONに切り換えられたと判断したとき、第1の制御部102から高周波エネルギ出力部104に信号が入力される。高周波エネルギ出力部104は通電ライン28a,28bを通して高周波電極92,94間の生体組織L1,L2にエネルギを供給する(S33)。そして、高周波電極92,94間の生体組織L1,L2に高周波電流が通電される。このため、生体組織L1,L2自体が発熱して脱水されながら生体組織L1,L2の内部が変性(生体組織L1,L2が焼灼)され、生体組織L1,L2同士の接触面C1,C2が接合部Cとなる。なお、インピーダンスZが所定の閾値Z1に到達したか否か判断(S34)し、閾値Z1に到達したら高周波エネルギの供給を止める(S35)。
そして、スピーカ110から、高周波エネルギを用いた生体組織L1,L2の接合処置の終了を知らせるブザー音(1回目のブザー音)を発する(S36)。
次に、医者は1回目のブザー音を確認した後、図12に示すカッタ駆動ノブ34を操作する。すなわち、図15Aおよび図15Bに示す状態からカッタ案内溝172,174に沿ってカッタ180を前進させる。カッタ180が前進するにつれて、高周波電極92,94により変性されて接合された部位が切断されていく。このとき、センサ185は例えば移動規制ピン42aに対する係止部184a,184b,184cの相対位置を検出し、第2の検出部107に伝達する。第2の検出部107は、シャフト24および処置部26に対するカッタ180の位置および移動方向を認識する(S37)。
第2の検出部107で検出したカッタ180の移動方向が、生体組織LTを切断する方向に移動していると認識されたとき、第1の制御部102は第2の制御部132に信号を受け渡し、流量調整機構134を動作させてホース18aを開く(S38)。
このため、ホース18aを接着剤が通過して、第1および第2の保持部材52,54の流体導管162,164の開口162a,164aから接着剤が染み出すとともに、流体導管192,194の開口192a,194aから接着剤が染み出す。そして、流体導管162,164の開口162a,164aから染み出した接着剤が高周波電極92,94に接触した部分(接合した生体組織LTの外周面Sc)に塗布されるとともに、流体導管192,194の開口192a,194aから染み出した接着剤がカッタ180の側面に塗布される。このため、生体組織LTの切断の際にカッタ180の側面が生体組織LTの切断面Sに接触することによってカッタ180による生体組織LTの切断面Sに接着剤が塗布される。
ホース18aを所定の流量の接着剤が通過したか否か判断(S39)し、所定の流量の接着剤が通過したとき、流量調整機構134を動作させてホース18aを閉じる(S310)。
そして、スピーカ110から接着剤の塗布が終了したことを知らせるブザー音(2回目のブザー音)を発する(S311)。
医師はスピーカ110からの2回目のブザー音を認識した上でフットスイッチ16のペダルの押圧を解除するとともに、ハンドル22の処置部開閉ノブ32を操作し、生体組織LTを開放する。このとき、図17に示すように、生体組織L1,L2は接合部Cで接合されているとともに、切断面Sで切断されている。そして、接合部Cの表面Scおよび切断面Sは接着剤が塗布されてコーティングされている。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
処置の際に生体組織L1,L2から発生した血液等の流体をカッタ案内溝172,174に入れることができる。そして、カッタ案内溝172,174に入れた流体をシャフト24の筒体42およびシース44に形成された流体放出口186,188からエネルギ処置具12bの外部に導くことができる。このため、生体組織L1,L2の接合部Cの接合面に水分が残るのを極力防止でき、生体組織L1,L2の接合処置をより素早く行うことができる。したがって、生体組織L1,L2を接合し、接合部Cをコーティングする一連の処置を、より効率的に行うことができる。
また、接合対象の生体組織LTの外周面を接着剤でコーティングするだけでなく、生体組織LTの切断面Sにも接着剤を塗布して接合面をコーティングすることができるので、生体組織LTの接合部Cへの水分の浸入を防止することができる。
なお、上述したように、カッタ180が移動しているときにホース18aを開放して接着剤を流しても良いが、筒体42の移動規制ピン42aがカッタ180の長溝184の一端184aから中間部184cを通して他端184bに到達した後にホース18aを開放しても良い。この場合、カッタ180の刃180aによる生体組織LTの切断は既に済んでいる(既に切断面Sが形成されている)。そして、筒体42の移動規制ピン42aがカッタ180の長溝184の他端184bから中間部184cを通して一端184aに到達するまでの間、接着剤を流す。そうすると、カッタ180の刃180aが第1および第2の保持部材52,54のカッタ案内溝172,174からシャフト24に引き込まれる際に生体組織LTの切断面S同士により空間が形成される。接着剤が開口192a,194aから染み出すと、切断面Sの間に接着剤が入り込む。なお、筒体42の移動規制ピン42aがカッタ180の長溝184の一端184aと他端184bとの間を移動しているのはセンサ185で検出可能であるから、接合対象の生体組織LTとカッタ180との位置関係は容易に把握できる。このため、流量調整機構134によってホース18aを閉じるタイミングも適宜に設定できる。
また、この実施の形態では、スピーカ110から発するのをブザー音として説明したが、処置の内容を音声で知らせたり、処置の手順を音声で知らせる等でも良い。また、1回目のブザー音と2回目のブザー音は大きく異なっており、それぞれどのような処置を終了したのか、が容易に認識可能とすることが好ましい。
なお、この実施の形態では、カッタ180をカッタ駆動ノブ34を操作することによって手動で動作させる場合について説明したが、高周波エネルギによる生体組織L1,L2同士の接合処置の終了後、カッタ駆動ノブ34を操作することなく自動的にカッタ180を動作させて生体組織LTを切断するようにすることも好ましい。すなわち、生体組織L1,L2同士を接合するための高周波エネルギを用いた処置の開始から、接合した生体組織LTをコーティングするための処置の終了までの一連の処置を自動的に行うようにしても良い。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について図18Aから図20を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材または同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図17Aから図17Cに示すように、第1の実施の形態で説明したように、第1の保持部材52の本体62には、凹部62bが形成されている。第1の保持部材52の本体62には、第1の高周波電極92が配設されている。第1の高周波電極92のうち、第1の保持部材52の本体62の凹部62b上には、第2の保持部材54に向かって複数の突起(接合維持補助部)202が形成されている。突起202は、生体組織L1,L2に図20に示す孔Pを形成するように、適宜の長さに形成されている。突起202は必ずしも生体組織L1,L2を貫通することを要するわけではなく、突起202の先端(第1の高周波電極92に対する遠位端部)が生体組織L1,L2の接触面C1,C2よりも第2の高周波電極94に近接する位置にあることが好適である。
図18Dに示すように、各突起202には、1つ又は複数の開口204が形成されている。なお、開口204は複数であることが好ましい。突起202は凹部62bに連通しており、凹部62bを通して接着剤等の流体(接合補助剤)を染み出すことができる。
図19Aから図19Cに示すように、第2の保持部材54の本体72および高周波電極94には、凹部(接合維持補助部)206が形成されている。各凹部206は、第1の保持部材52に配設された高周波電極92から突出した突起202を受け入れるように形成されている。
高周波電極92,94の表面は、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の縁部62a,72aに対して低い位置にある。また、第1の高周波電極92の突起202の長さは、第2の保持部材54の凹部206に接触しない高さに形成されている。このため、第1の高周波電極92の突起202を第2の高周波電極94の凹部206に配設した状態でも、第1の高周波電極92と第2の高周波電極94とは接触しないように形成されている。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について図6を用いて説明する。
第1の実施の形態と同様に、接合対象の生体組織L1,L2を保持する。このとき、第1の保持部材52に配設された高周波電極92には突起202が配設されているので、突起202は生体組織L1,L2を貫通して孔Pを形成するとともに、第2の保持部材54および高周波電極94に配設された凹部206に受け入れられる。
この状態で、第1および第2の保持部材52,54に配設された高周波電極92,94から出力する高周波エネルギによって、2つの生体組織L1,L2を接合する。このとき、第1の保持部材52に配設された高周波電極92に設けられた突起202は生体組織L1,L2を貫通した状態(孔Pに配設された状態)を維持する。
このとき、突起202が生体組織L1,L2の内部に配設され、突起202と第2の高周波電極94との間の生体組織に通電されるので、生体組織L1,L2の高周波エネルギを用いた処置を効率的に行うことができる。
インピーダンスZが閾値Z1に達した後、流量調整機構134を開放し流体貯留部122からホース18aを通して接着剤を流す。このとき、第1の保持部材52の基部64には管路64aが、本体62には凹部62bが設けられているので、突起202の開口204から接着剤が染み出す。このとき、突起202は接合した生体組織LTを貫通して孔Pに配設されているので、開口204から染み出した接着剤はその一部が生体組織LT同士の接合部Cに塗布される。接着剤の一部は接合部Cの接合面から直接浸透する。接着剤は接着作用に加えてコーティング作用を有するので、接合部Cに水分が浸入するのを防止するとともに、接合状態を維持することができる。
高周波エネルギによる生体組織L1,L2同士の接合、および、接合部Cに対する接着剤の塗布の一連の処置が終了したとき、ブザー等の音をスピーカ110から発して医師に知らせる。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波電極92,94の間だけでなく、生体組織L1,L2を貫通する突起202と高周波電極94との間の生体組織L1,L2にジュール熱を発生させることができるので、生体組織L1,L2の厚さが厚い場合(高周波エネルギが生体組織L1,L2に浸透し難い場合)であっても、生体組織L1,L2にエネルギを浸透し易くすることができる。
高周波電極92に設けられた突起202によって、接合対象の生体組織L1,L2の接合部C等、接合した生体組織LTの内部に直接接着剤等の流体を供給して浸透させることができるので、接合部Cの接合をより確実なものにすることができるとともに、接着剤のコーティング作用を接合面を含む接合部Cの近傍に及ぼすことができる。
なお、この実施の形態では、生体組織を第1および第2の保持部材52,54で保持したときに第1の保持部材52の突起202により生体組織L1,L2に孔Pを形成する場合について説明した。その他、突起202は、第1および第2の保持部材52,54で生体組織L1,L2を保持したときに必ずしも孔Pが形成される必要はない。すなわち、第1および第2の保持部材52,54で生体組織L1,L2を保持したときに、第1の保持部材52の突起202が第2の保持部材54の凹部206に生体組織L2を押し付けるようにしても良い。この場合でも、第1および第2の高周波電極92,94の間の生体組織L1,L2に高周波エネルギを供給するにつれて生体組織L1,L2に孔Pが形成されていき、すなわち、突起202が孔Pに配設されていく。
また、第1の保持部材52の高周波電極92の突起202が絶縁性を有する硬質樹脂材等の別体で形成されていても良い。この場合、突起202が第2の保持部材54の高周波電極94に接触することが許容される。
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について図21Aから図23を用いて説明する。この実施の形態は第3の実施の形態の変形例であって、第3の実施の形態で説明した部材と同一の部材または同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図21Aおよび図21Bに示すように、この実施の形態では、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72から凹部62b,72b(図4Aから図4C参照)や管路64a,74a(図4Aから図4C参照)が除去されている。
図22Aに示すカッタ180は、先端に刃180aを有する。カッタ180の内部には、カッタ180の長手方向に沿って例えば図22B中の上下に管路212,214が形成されている。カッタ180の内部に形成された管路212,214は、駆動ロッド182の内部を通してホース18aに接続されている。図22Aおよび図22Bに示すように、カッタ180の側面には、カッタ180の長手方向に沿って適当な間隔をおいて複数の開口(接合維持補助部)212a,214aが形成されている。これら開口212a,214aは管路212,214に連通されている。このため、管路212,214を通して開口212a,214aから接着剤等、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質(接合補助剤)を出すことができる。
また、この実施の形態では、カッタ180が一連の処置の途中の適宜の場合に自動で動くようにした場合について説明する。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について図23を用いて説明する。
第1の実施の形態で説明したように、生体組織L1,L2の接触面C1,C2同士を高周波電極92,94から発する高周波エネルギによって接合する(S51からS56)。
そして、接合した生体組織LTを切断するためにカッタ180が動作する(S57)。カッタ180の動作に連動して、ホース18aを開く(S58)。このため、接合した生体組織LTを切断している際に、カッタ180の開口212aから接着剤を染み出させて、切断面Sに塗布する。すなわち、生体組織LTの切断を進めるにつれてカッタ180の開口212aから染み出させた接着剤が塗布されていく。
このとき、図22Bに示すように、カッタ180の上下に開口212aが形成されているので、各生体組織L1,L2の厚さが同じであると仮定した場合、接合部Cの接合面からずれた位置に接着剤を塗布する。塗布された接着剤は第1および第2の保持部材52,54の向きによって適宜の方向に流れるので、カッタ180による切断面Sの全体に接着剤が塗布される。
なお、生体組織LTのうち、高周波電極92,94に接触した表面にも接着剤が流れて塗布される。このため、生体組織LTの外表面全体に接着剤が塗布される。
所定の流量の接着剤がホース18a内を流れた場合、ホース18aを閉じる(S510)とともに、カッタ18を元の位置に復帰させる。そして、カッタ180に配設されたセンサ185によってカッタ180が元の位置に復帰するのを認識した場合(S511)、スピーカ110から一連の処置が終了したことを知らせるブザー音を発する(S512)。
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態について図24Aから図24Dを用いて説明する。この実施の形態は第5の実施の形態の変形例であって、第5の実施の形態で説明した部材と同一の部材または同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図24Bに示すように、カッタ180の内部には、カッタ180の長手方向に沿って1つの管路216が形成されている。カッタ180の内部に形成された管路216は、駆動ロッド182の内部を通してホース18aに接続されている。カッタ180の側面の幅方向の中央には、複数の開口(接合維持補助部)216aが形成されている。このため、生体組織LTを切断するのと同時に接着剤が接合部Cの接合面の近傍に塗布される。したがって、接着剤(接合補助剤)が接合部Cの接合面に浸透して硬化する。なお、この場合、図24Dに示すように、切断面Sに近いほど多くの接着剤が浸透し、切断面Sから遠くなるほど接着剤の浸透量が少なくなる。
[第7実施の形態]
次に、第7の実施の形態について図25から図30を用いて説明する。この実施の形態は第1および第5の実施の形態の変形例であって、第1および第5の実施の形態で説明した部材と同一の部材または同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図25に示すように、この実施の形態に係る治療用処置システム10は、エネルギ処置具12と、エネルギ源14とを備えている。ここでは、治療用処置システム10から流体源18が除去されている場合について説明する。
図26Aおよび図26Bに示すように、第1の保持部材52の本体62には、平板状のヒータ(エネルギ出力部)222が配設されている。このヒータ222は、本体62の保持面62aに囲まれている。なお、図示しないが、第2の保持部材54の本体72には、平板状のヒータ(エネルギ出力部)232が配設されている。このヒータ232は、本体72の保持面72aに囲まれている。
図27Aに示すように、第1の保持部材52の本体62の外周には、横断面が予めC字状に形成された被覆部材(シート状部材)224(図27B参照)が配設されている。
図28Aから図28Cに示すように、被覆部材224のうちヒータ222に接触する部分は、それぞれ無孔シート状、メッシュ状、多孔質状など、種々のものが用いられる。被覆部材224は、第1の実施の形態で説明した接合補助剤の成分を含有し、適当な温度に加熱すると加熱された部分が溶融して接合補助剤の成分が生体組織の表面に広がったり浸透したりし、冷やされると生体組織の表面に広がったり浸透したりした状態で硬化する。硬化した際には、第1の実施の形態で説明したように、生体組織の外側から後述する接合面等に水分が浸透するのを防止する作用を奏する。
なお、この被覆部材224は加熱前(例えば無孔シート状、メッシュ状、多孔質状などの状態)に少なくとも周方向(第1の保持部材52の本体62の長手方向に直交する幅方向)に伸縮可能であることが好適である。そして、被覆部材224を第1の保持部材52の本体62に配設したときに、第1の保持部材52の本体62の保持面62a、および、本体62のうち第2の保持部材54に対して離隔した外表面に密着させることができる。
被覆部材(接合維持補助部)224,234は、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72で生体組織L1,L2を保持したときに生体組織L1,L2とヒータ222,232との間に配設されることとなるので、生体組織L1,L2によってヒータ222,232に向かって押圧される。このため、第1および第2の保持部材52,54で生体組織L1,L2を保持したとき、被覆部材224,234はヒータ222,232に接触する。
第1の保持部材52に配設された被覆部材224の端部同士は、第1の保持部材52の本体62のうち、第2の保持部材54の本体72に対して離隔した位置で対向した状態にあっても良く、一部が重なり合った状態にあっても良い。第2の保持部材54にもヒータ232および被覆部材234が配設される。この場合、ヒータ232および被覆部材234は第1の保持部材52と同様に配設されることが好適である。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について図29を用いて説明する。
まず、表示部108を操作し、各種の設定を行う。例えばヒータ222,232の最高温度、高周波エネルギ出力部104からヒータ222,232へのエネルギの出力時間、生体組織の処置の終了温度(ここでは生体組織L1,L2の表面温度)の閾値T1等を設定する(S71)。
そして第1および第2の保持部材52,54の本体62,72にそれぞれ被覆部材224,234を巻きつけた状態で、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72によって生体組織L1,L2を保持する。すなわち、第1の保持部材52に配設された被覆部材224は、生体組織L1のうち、生体組織L2に接触する接触面C1とは反対側の表面に接触する。また、第2の保持部材54に配設された被覆部材234は、生体組織L2のうち、生体組織L1に接触する接触面C2とは反対側の表面に接触する。
この状態で、フットスイッチ16のペダルを押圧する(S72)と、高周波エネルギ出力部104からヒータ222,232にエネルギが伝達(S73)されてヒータ222,232の温度が次第に上昇する(電気エネルギが熱エネルギに変換される)。そして、ヒータ222,232の熱エネルギによって被覆部材224,234のうち、ヒータ222,232に接触した部分が溶融して生体組織L1,L2の外表面に、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が塗布される。また、ヒータ222,232の温度の上昇とともに、ヒータ222,232の熱を生体組織L1,L2に及ぼして生体組織L1,L2に熱を加えていく。そして、インピーダンスZの測定、生体組織L1,L2の表面温度Tの測定、又は所定時間t1の経過後(S74)、高周波エネルギ出力部104からヒータ222,232へのエネルギの供給を止める(S75)。その後、一連の処置の終了を知らせるブザー音をスピーカ110から発する(S76)。
生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質は、例えば、エネルギの供給の停止により冷やされることによって次第に硬化が進んでいく。そして、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質は接合した生体組織LTをコーティングした状態に維持される。
なお、被覆部材224,234のうち、ヒータ222,232に接触していない部分は第1および第2の保持部材52,54の本体62,72に配設された状態を維持することが好ましい。すなわち、第1の保持部材52に配設された被覆部材224は、本体62の保持面62aから第2の保持部材54に対して離隔した側が本体62の外周面に配設した状態を維持する。また、第2の保持部材54に配設された被覆部材234は、本体72の保持面72aから第1の保持部材52に対して離隔した側が本体72の外周面に配設した状態を維持する。
なお、図28Bに示す多孔質状の被覆部材224,234や、図28Cに示すメッシュ状の被覆部材224,234を用いる場合、処置にヒータ222,232ではなく高周波電極92,94を用いることもできる。図28Bに示す多孔質状の被覆部材224,234を用いる場合、高周波電極92,94の一部が生体組織L1,L2に接触する。また、図28Cに示すメッシュ状の被覆部材224,234を用いる場合、高周波電極92,94の一部が生体組織L1,L2に接触する。したがって、これら多孔質状やメッシュ状の被覆部材224,234を用いる場合、高周波電極92,94又はヒータ222,232のいずれも使用することができる。
一方、図28Aに示す無孔シート状の被覆部材224,234を用いる場合、高周波電極92,94が生体組織L1,L2に接触しないので、この場合はヒータ222,232を用いることが好ましい。なお、無孔シート状の被覆部材224,234の一部に孔を設け、生体組織L1,L2に高周波電極92,94を直接接触させることができれば以下に説明するように高周波エネルギによる処置も可能である。また、被覆部材224,234を通電材料として形成すれば、以下に説明するように高周波エネルギによる処置も可能である。
次に、ヒータ222,232の代わりに高周波電極92,94を用いて生体組織L1,L2を処置する場合の治療用処置システム10の作用について説明する。ここでは、図28Bに示す多孔質状の被覆部材224,234や、図28Cに示すメッシュ状の被覆部材224,234を用いる。
図27Aに示すように、第1および第2の保持部材52,54本体62,72に被覆部材224,234を巻きつけた状態の本体62,72で生体組織L1,L2を保持する。このとき、被覆部材224,234は生体組織L1,L2の外表面に接触するが、被覆部材224,234には孔があるので高周波電極92,94の一部も生体組織L1,L2の外表面に接触する。このように生体組織L1,L2を保持した状態で、高周波電極92,94から生体組織L1,L2に高周波エネルギを供給する。
被覆部材224,234のうち、生体組織L1,L2に接触した部分は、高周波電極92,94から生体組織L1,L2にエネルギが供給されて生体組織L1,L2自体が発熱するのに伴って溶融する。そして、溶融した被覆部材224,234は、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72で保持した生体組織L1,L2の外周面全体に広がる。すなわち、接着剤等の流体が生体組織L1,L2の外表面に塗布されたのと同じ状態となる。そして、インピーダンスZが所定の閾値Z1に達して高周波電極92,94へのエネルギの供給が止められると、生体組織LTの温度が低下するとともに、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が硬化する。
このとき、接着剤等の流体は接合した生体組織LTに水分が浸透するのを防止する役割を果たす。このため、生体組織L1,L2同士が接合された状態を長く維持することができる。
なお、図30には生体組織L1,L2の外側に被覆部材224,234が被覆された模式図を示す。このような状態で生体組織L1,L2を熱エネルギや高周波エネルギを用いて処置すると、接合された生体組織LTの外側が、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質に覆われた状態となる。
[第8の実施の形態]
次に、第8の実施の形態について図31Aから図35を用いて説明する。この実施の形態は第7の実施の形態の変形例であって、第7の実施の形態で説明した部材と同一の部材または同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図31Aおよび図31Bに示すように、第1および第2の保持部材52,54には、カッタ案内溝172,174が形成されている。また、カッタ案内溝172,174には、長溝184を有するカッタ180(図15Aおよび図15B参照)を出し入れ可能である。
第1の保持部材52の本体62に配設された高周波電極92の裏面には、複数のヒータ(エネルギ出力部)242が配設されている。同様に、第2の保持部材54の本体72に配設された高周波電極94の裏面には、図示しないが、複数のヒータ(エネルギ出力部)252が配設されている。ここで、ヒータ242,252は高周波エネルギ出力部104で制御可能である。すなわち、高周波エネルギ出力部104は、高周波電極92,94にエネルギを供給することができるとともに、ヒータ242,252にエネルギを供給することができる。なお、高周波電極92,94、ヒータ242,252の両者に選択的にエネルギを供給できるようにしても良いし、同時にエネルギを供給できるようにしても良い。
そして、高周波電極92,94はそれぞれ良熱伝導性を有する素材で形成されているので、高周波エネルギ出力部104からヒータ242,252にエネルギを供給してヒータ242,252を発熱させると、ヒータ242,252から高周波電極92,94に熱が伝熱する。高周波電極92,94に伝熱された熱は、ヒータ242,252から例えば同心状に広げられる。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について図32を用いて説明する。ここでは、接合補助剤を含有する無孔シート状の被覆部材224,234を用いるものとする。
なお、高周波エネルギ出力部104からヒータ242,252に対する出力量および出力時間を適宜に設定する(S181)。ここでは、ヒータ242,252に対する出力時間を10秒として説明する。
フットスイッチ16のペダルを押圧する(S182)と、高周波エネルギ出力部104からヒータ242,252にエネルギを供給し、ヒータ242,252を発熱させる(S183)。エネルギの供給を開始してから10秒経過したか否か判断する(S184)。高周波エネルギ出力部104からヒータ242,252に10秒出力した後、ヒータ242,252に対するエネルギの供給を停止する(S185)。そして、スピーカ110からブザー音を発し、ヒータ242,252に対する熱エネルギの供給が停止したことを知らせるとともに、カッタ180を動作させることを知らせる(S186)。
ここで、無孔シート状の被覆部材224,234は、ヒータ242,252からの熱が高周波電極92,94に伝熱することにより高周波電極92,94に接触した部分が溶融している。
その後、カッタ180をカッタ案内溝に向かって進めて、生体組織L1,L2を切断する(S187)。すなわち、生体組織L1,L2の切断面Sを形成する。そして、カッタ180を元の位置に復帰させる(S188)。
そして、高周波エネルギ出力部104から高周波電極92,94にエネルギを供給する(S189)。ここで、インピーダンスZが閾値Z1に到達したと判断したとき(S1810)、高周波エネルギ出力部104から高周波電極92,94への出力を停止する(S1811)。
スピーカ110からブザー音を発し、高周波エネルギの供給が停止したことを知らせる(S1812)。このため、一連の処置が終了したことを医師等が認識できる。
この実施の形態では、ヒータ242,252による熱エネルギと、高周波電極92,94による高周波エネルギとの両者を組み合わせて一連の処置を行う場合について説明したが、熱エネルギだけを用いて一連の処置を行うことも可能である。
次に、接合補助剤を含有する多孔質状又はメッシュ状の被覆部材224,234を用いたときの治療用処置システム10の作用(第1の作用)について図34を用いて説明する。
表示部108を操作して、高周波エネルギの出力量等を設定する(S281)。そして、それぞれ被覆部材224,234を配設した第1および第2の保持部材52,54の本体62,72で生体組織L1,L2を保持する。この状態でフットスイッチ16のペダルを押圧する(S282)。
高周波エネルギ出力部104から高周波電極92,94にエネルギが伝達され、高周波電極92,94間の生体組織L1,L2に高周波電流が通電する(S283)。高周波電流が通電されたとき、インピーダンスZは初期値Z0から低下し、その後再び上昇する(図5A参照)。ここで、最下点のインピーダンスをZminとし、最下点のインピーダンスZminの次に計測したインピーダンスZmin+1としたとき、最下点のインピーダンスZminよりも次に計測したインピーダンスZmin+1が大きく、かつ、インピーダンスZmin+1が初期値Z0よりも小さい場合、最下点のインピーダンスZminを判断できる(S284)。このように、インピーダンスZが最下点のインピーダンスZminから再び上昇に転じたと判断したとき、高周波エネルギ出力部104からのエネルギの供給を停止する(S285)。このとき、スピーカ110からブザー音を発し、生体組織L1,L2に高周波エネルギを供給するのを停止したことを知らせるとともに、カッタ180を動作させることを認識させる(S286)。
カッタ180は、第1および第2の保持部材52,54のカッタ案内溝172,174に沿って自動的にゆっくり進んで生体組織L1,L2を切断した後(S287)、元の位置に復帰させる(S288)。このとき、速度や位置等が制御された状態でカッタ180の長溝184の先端側の係止部184aにシャフト24の移動規制ピン42aがある状態からカッタ180が移動することにより長溝184の基端側の係止部184bに移動した後、再びカッタ180が移動することにより長溝184の先端側の係止部184a(元の位置)に配設される。
その後、高周波エネルギ出力部104からヒータ242,252にエネルギが供給され、ヒータ242,252が発熱する(S289)。高周波エネルギ出力部104からヒータ242,252へのエネルギの供給の開始から10秒経過したとき(S2810)、エネルギの供給を停止する(S2811)。
ヒータ242,252は高周波電極92,94に伝熱して、これら高周波電極92,94から生体組織に直接熱を与えるので、生体組織(タンパク質)を一体的に変性させるともに、タンパク質同士の結合の阻害要因である水分の除去を行う。
そして、スピーカ110からブザー音を発し、一連の処置が終了したことを知らせる(S2812)。
なお、被覆部材224,234は、高周波エネルギにより生体組織L1,L2を発熱させることによって溶融させるようにしても良く、ヒータ242,252により被覆部材224,234を直接熱することによって溶融させるようにしても良い。
次に、多孔質状又はメッシュ状の被覆部材224,234を用いたときの治療用処置システム10の作用(第2の作用)について図35を用いて説明する。
ここでは、図34に示す第1の作用とは異なり、一連の処置をヒータ242,252を用いることなく、高周波電極92,94による高周波エネルギ処置により行う場合について説明する。
第1の作用と同様に、カッタ180で生体組織L1,L2を切断し、切断面Sを形成するまでは同様である(S381−S388)。カッタ180を元に位置に復帰させた後、高周波電極92,94により高周波エネルギを用いた処置を行う(S389)。そして、閾値Z1とインピーダンスZが同じか、閾値Z1よりもインピーダンスZが大きくなった場合(S3810)、高周波エネルギ出力部104からのエネルギの供給を停止する(S3811)。そして、一連の処置が終了したことをブザー音をスピーカ110から発することによって知らせる(S3812)。
以上説明したように、この実施の形態によれば以下の効果が得られる。
高周波エネルギによる生体組織の処置、熱エネルギによる生体組織の処置を適宜に組み合わせることができるので、生体組織に対して最適な処置を行うことができる。
[第9実施の形態]
次に、第9の実施の形態について図36Aから図36Cを用いて説明する。この実施の形態は第7および第8の実施の形態の変形例であって、第7および第8の実施の形態で説明した部材と同一の部材または同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
この実施の形態では、生体組織L1,L2の接触面C1,C2の間に接合補助剤を含有するメッシュ状(図36A参照)又は多孔質状(図36B参照)の接合補助部材(接合維持補助部)262を挟み込んだ状態で熱エネルギや高周波エネルギで強固な接合部Cを形成する場合について説明する。
接合補助部材262は、第7の実施の形態で説明した被覆部材224,234と同じ素材が用いられることが好適であり、この場合、被覆部材224,234と同じ作用をする。
生体組織L1,L2の間に接合補助部材262を配置する。ここで、エネルギ処置具12の第1および第2の保持部材52,54で生体組織L1,L2を保持する。このとき、接合補助部材262は生体組織L1,L2の間に配設されているので、第1および第2の保持部材52,54で生体組織L1,L2を保持することによって生体組織L1,L2の間に保持される。
ここで、接合補助部材262はメッシュ状(図36A)や多孔質状(図36B)に形成されているので、生体組織L1,L2の接触面C1,C2の一部は互いに対して接触する。このため、高周波電極92,94間に高周波電流を通電させると、生体組織L1,L2に通電されて生体組織L1,L2が発熱する。生体組織L1,L2の発熱によって接合補助部材262は溶融し、接触面C1,C2の全体にわたって、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が塗布されたのと同じこととなる。さらに、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質は、接触面C1,C2から高周波電極92,94に接触した外表面Scに向かって浸透する。このため、生体組織L1,L2同士の接合面だけでなく、接合面の周囲の組織に対しても、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が浸透する。したがって、生体組織L1,L2のうち、接触面C1,C2だけでなく、より広い範囲に生体組織L1,L2同士の接合部Cを形成することができる。すなわち、ここでいう接合部Cは接合面だけでなく、その周囲の組織を含む。
この状態でインピーダンスZが閾値Z1に到達するまで高周波電流を生体組織L1,L2に通電する。インピーダンスZが閾値Z1に達した後、エネルギの供給を停止する。このとき、生体組織L1,L2の接合部Cの接合面は、生体組織L1,L2の高周波エネルギによる処置によりコラーゲン同士が接合するとともに、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質により接合されている。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
生体組織L1,L2の間に接合補助部材262を配置して生体組織L1,L2同士を接合することによって、高周波エネルギを用いたときに得られる生体組織L1,L2の接合力に加えて、接触面C1,C2同士を接着剤のような物質で接合することができるので、大きな接合力を得ることができる。また、接着剤のような物質は、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質であるから、生体組織L1,L2の接合面に水分が浸透するのを防止できるので、大きな接合力を長時間にわたって維持することができる。
[第10の実施の形態]
次に、第10の実施の形態について図37から図41を用いて説明する。この実施の形態は第1から第9の実施の形態の変形例であって、第1から第9の実施の形態で説明した部材と同一の部材または同一の作用を奏する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図39Aおよび図39Bに示すように、第1の保持部材52の基部64は、筒体42に対して回動可能に支持ピン83により枢支されている。この支持ピン83は第1の実施の形態で説明した支持ピン82と平行に配設されている。第1の保持部材52の基部64は、第2の保持部材54の基部74の弾性部材84と同様に、板バネなどの弾性部材85により付勢されている。なお、この実施の形態では、図37Aおよび図39Bに示すように、エネルギ処置具12cの処置部26は、第1の保持部材52および第2の保持部材54の両者がシャフト24の中心軸に対して対称に開くことが好ましい。
図37A、図38、図39Aおよび図39Bに示すように、この実施の形態では、カッタ180(図15Aおよび図15B参照)の代わりに処置用補助具としてパイプ状部材(接合維持補助部)272が配設されている。パイプ状部材272の基端は、図39Aおよび図39Bに示すように、ホース18aに接続されている。
図39Bに示すように、このパイプ状部材272の先端部側には、複数の側孔272aが形成されている。このパイプ状部材272は、ハンドル22に配設されたパイプ状部材移動用ノブ36の操作によりシャフト24の内部から処置部26の内部との間を進退可能であり、処置部26やシャフト24に対するパイプ状部材272の位置を検出可能である。
図40Aおよび図40Bに示すように、第1の保持部材52の本体62には、パイプ状部材272を進退させるための空間を形成する凹部(パイプ状部材案内溝)62cが形成されている。この凹部62cの幅は、パイプ状部材272の外径よりもわずかに大きく形成されていることが好ましい。凹部62cにも高周波電極92aが配設されている。凹部62cに配設された高周波電極92aと、本体62の保持面62aの内側に配設された高周波電極92とは同電位である。
なお、第2の保持部材54の本体72にも、図40Bに示すように、凹部72cが形成され、凹部72cには高周波電極94と同電位の高周波電極94aが配設されている。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
図40Bに示すように、エネルギ処置具12cのパイプ状部材272を接合対象の生体組織L1,L2同士の間に配置する。そして、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72で生体組織L1,L2を保持するとともに、生体組織L1,L2でパイプ状部材272を狭持する。このとき、第7実施の形態で説明した、接合補助剤を含有するメッシュ状や多孔質状の被覆部材224,234(図28Bおよび図28C参照)を接合対象の生体組織L1,L2の外側に配設する。
この状態で、流体貯留部122からホース18aを通してパイプ状部材272に、接着剤等、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質(接合補助剤)を導入する。このため、パイプ状部材272の側孔272aから生体組織L1,L2に生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が塗布される。この状態で、パイプ状部材移動用ノブ36を操作して、第1および第2の保持部材52,54の本体62,72の間からパイプ状部材272を引き抜く。このため、生体組織L1,L2の接触面C1,C2同士が、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質を介して接触する。
そして、高周波エネルギ出力部104から高周波電極92,94にエネルギを供給する。このため、接合面の生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が加熱されるとともに、接合面同士が接合される。また、メッシュ状や多孔質状の被覆部材224,234は生体組織L1,L2からの熱により溶融されて接合対象の生体組織L1,L2の外側をコーティングする。
高周波電極92,94へのエネルギが供給されるにしたがって、又は、エネルギの供給が止められると、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が硬化する。このとき、生体組織L1,L2同士の接合面に配設された生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質は、生体組織L1,L2同士の接触面C1,C2から高周波電極92,92a,94,94aに向かって浸透する。このため、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質は、生体組織L1,L2同士が接合状態(接着状態)を維持するように作用する。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
生体組織L1,L2の間に直接、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質を塗布することができる。すなわち、生体組織L1,L2の接触面C1,C2同士の間に確実に生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質を塗布することができる。したがって、高周波エネルギ等を用いて生体組織L1,L2同士を接合したとき、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質が接触面C1,C2間に配設されているので、生体組織L1,L2同士の接合を解除する方向の力が働いたとしても、生体組織L1,L2同士の接合面への水分の浸入を防止でき、接合状態を長く維持することができる。
なお、この実施の形態では、被覆部材224,234を用いる場合について説明したが、被覆部材224,234は必ずしも必要ではない。
また、この実施の形態では、カッタ180の代わりにパイプ状部材272を用いるものとして説明したが、パイプ状部材272の基端に超音波振動子276(図41参照)が配設されていても良い。すなわち、パイプ状部材272は超音波エネルギを生体組織L1,L2に対して出力するエネルギ出力部として機能する。この場合、パイプ状部材272を用いた超音波処置で生体組織L1,L2の接触面C1,C2にコラーゲンを露出させるように前処理された後、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質で生体組織L1,L2を接着することができる。
[第11の実施の形態]
次に、第11の実施の形態について図42Aから図42Cを用いて説明する。この実施の形態は第1から第10の実施の形態の変形例である。上述した実施の形態では、高周波エネルギ、ヒータ242,252の発熱による熱エネルギ、超音波エネルギ等を用いて処置を行う場合について説明したが、この実施の形態では、レーザ光による熱エネルギを用いて処置を行う場合の第1の保持部材52について説明する。
図42Aから図42Cに示すように、第1の保持部材52には、高周波電極92の代わりに伝熱板(エネルギ出力部)282が配設されている。この伝熱板282には、凹溝282aが形成されている。この伝熱板282の凹溝282aには、出力部材やエネルギ出力部としてのディヒューザ(diffuser)284が配設されている。このディヒューザ284の内部には、ファイバ(エネルギ出力部)286が挿通されている。このため、ファイバ286にレーザ光を入射すると、ディヒューザ284から外側にレーザ光が拡散する。このレーザ光によるエネルギは、伝熱板282に照射されることにより熱エネルギに変換される。このため、伝熱板282を第8の実施の形態で説明した、ヒータ242から伝熱される高周波電極92(図31Aおよび図31B参照)のように用いることができる。
図42Aから図42Cに示す流体導管162には開口162aを有する(図11Aから図11C参照)ので、生体組織LTに水分が浸透するのを防止する物質を生体組織LTの外周面に塗布することができる。
なお、流体導管162の代わりに第1の保持部材52の本体62の縁部(保持面)62aが形成され、第7の実施の形態で説明した被覆部材224(図27A参照)を用いて処置を行うこともできる。すなわち、レーザ光によるエネルギを用いても上述した実施の形態と同様に処置を行うことができる。
また、伝熱板282を例えば高周波電極92として用いることによって、熱エネルギと高周波エネルギとを組み合わせた適宜の処置、熱エネルギだけを用いた処置、高周波エネルギだけを用いた処置を行うなど、種々の処置を行うことができる。
[第12の実施の形態]
次に、第12の実施の形態について図43から図46Bを用いて説明する。この実施の形態は第1から第11の実施の形態の変形例である。ここでは、エネルギ処置具として、例えば腹壁を通して、もしくは腹壁外で処置を行うための、サーキュラタイプのバイポーラ型エネルギ処置具(治療用処置具)12dを例にして説明する。
図43に示すように、エネルギ処置具12dは、ハンドル322と、シャフト324と、開閉可能な処置部(保持部)326とを備えている。ハンドル322には、ケーブル28を介してエネルギ源14が接続されているとともに、ホース18aを介して流体源18が接続されている。
ハンドル322には、処置部開閉ノブ332と、カッタ駆動レバー334が配設されている。処置部開閉ノブ332は、ハンドル322に対して回転可能である。この処置部開閉ノブ332をハンドル322に対して例えば右回りに回転させると、処置部326の後述する離脱側保持部材354が本体側保持部材352に対して離隔(図46B参照)し、左回りに回転させると、離脱側保持部材354が本体側保持部材352に対して近接する(図46A参照)。
シャフト324は、円筒状に形成されている。このシャフト324は、生体組織への挿入性を考慮して、適度に湾曲されている。もちろん、シャフト324が真っ直ぐに形成されていることも好適である。
シャフト324の先端には、処置部326が配設されている。図44Aおよび図44Bに示すように、処置部326は、シャフト324の先端に形成された本体側保持部材(第1の保持部材)352と、この本体側保持部材352に着脱可能な離脱側保持部材(第2の保持部材)354とを備えている。
本体側保持部材352は、円筒体362と、フレーム364と、通電用パイプ366と、カッタ368と、カッタ用プッシャ370と、第1および第2の流体導管372,374とを備えている。これら円筒体362およびフレーム364は、絶縁性を有する。円筒体362は、シャフト324の先端に連結されている。フレーム364は、円筒体362に対して固定された状態で配設されている。
フレーム364は、その中心軸が開口されている。このフレーム364の開口された中心軸には、通電用パイプ366がフレーム364の中心軸に沿って所定の範囲内で移動可能に配設されている。この通電用パイプ366は、ハンドル322の処置部開閉ノブ332を回転させると、図46Aおよび図46Bに示すように、例えばボールネジ(図示せず)の作用により所定の範囲内を移動可能である。この通電用パイプ366には、後述する通電用シャフト382のコネクト部382aが係脱可能なように、径方向内方に突出する突起366aが形成されている。
通電用パイプ366の内側には、離脱側保持部材354に液体を流すための第2の流体導管374が配設されている。第2の流体導管374は、通電用パイプ366と同様に、所定の範囲内を移動可能である。
図44Bに示すように、円筒体362とフレーム364との間には、空間が形成されている。円筒体362とフレーム364との間の空間には、円筒状のカッタ368が配設されている。このカッタ368の基端部は、シャフト324の内側に配設されたカッタ用プッシャ368aの先端部に接続されている。カッタ368は、カッタ用プッシャ370の外周面に固定されている。図示しないが、このカッタ用プッシャ370の基端部はハンドル322のカッタ駆動レバー334に接続されている。このため、ハンドル322のカッタ駆動レバー334を操作すると、カッタ用プッシャ370を介してカッタ368が移動する。
このカッタ用プッシャ370とフレーム364との間には、第1の流体通気路(流体通路)376が形成されている。そして、シャフト324またはハンドル322には、第1の流体通気路376を通した流体を外部に排出する流体放出口(図示せず)が形成されている。
図44Bおよび図45に示すように、円筒体362の先端には、出力部材やエネルギ放出部として円環状の第1の高周波電極378が配設されている。この第1の高周波電極378には、第1の通電ライン378aの先端が固定されている。第1の通電ライン378aは、本体側保持部材352、シャフト324、ハンドル322を介してケーブル28に接続されている。
この第1の高周波電極378の外側には、第1の高周波電極378よりも高い位置に円筒体362の縁部362aが形成されている。すなわち、本体側保持部材352の縁部362aは、第1の高周波電極378よりも離脱側保持部材354の後述するヘッド部384に近接されている。
図44Aおよび図44Bに示すように、本体側保持部材352の円筒体362の外周面には、第1の流体導管372が配設されている。第1の流体導管372は、円筒体362の縁部362aの外側に配設されている。そして、第1の流体導管372のうち、縁部362aの外側に配設された部分には開口(接合維持補助部)372aが形成されている。第1の流体導管372は、本体側保持部材352の円筒体362の外周面からシャフト324の外周面に沿って配設され、シャフト324の基端やハンドル322の部分でホース18aに連結されている。
離脱側保持部材354は、コネクト部382aを有する通電用シャフト382と、ヘッド部384と、流体導管386とを備えている。ヘッド部384は、略半球状に形成されている。通電用シャフト382のコネクト部382aは通電用シャフト382の一端に近接する側に形成されている。通電用シャフト382は、横断面が円形状で、一端が先細に形成され、他端はヘッド部384に固定されている。通電用シャフト382のコネクト部382aは、通電用シャフト382の一端に近接する側に、通電用パイプ366の突起366aに係合可能な凹溝状に形成されている。通電用シャフト382のコネクト部382a以外の部分の外表面は、コーティング等により絶縁されている。
通電用シャフト382には、一端と他端とを貫通するように第1および第2の管路388a,388bが形成されている。第1の管路388aは通電用シャフト382の中心軸を貫通するように形成されている。第1の管路388aは、離脱側保持部材354の通電用シャフト382のコネクト部382aが本体側保持部材352の通電用パイプ366の突起366aに嵌合したとき、本体側保持部材352の第2の流体導管374に連通する。第2の管路388bは、通電用パイプ366と第2の流体導管374との間の第2の流体通気路(流体通路)379に連通する。
ヘッド部384には、ヘッド部384の縁部384aが形成されている。この縁部384aの内側には、出力部材やエネルギ放出部としての円環状の第2の高周波電極390が配設されている。この第2の高周波電極390には、第2の通電ライン390aの一端が固定されている。第2の通電ライン390aの他端は通電用シャフト382に電気的に接続されている。
ヘッド部384の縁部384aと第2の高周波電極390との間には、円環状の流体放出溝392が形成されている。この流体放出溝392は、通電用シャフト382の第2の管路388bに連通されている。なお、第2の高周波電極390の表面は、ヘッド部384の縁部384aに対して引き込まれた状態にある。すなわち、離脱側保持部材354の縁部384aの接触面は、第2の高周波電極390よりも本体側保持部材352に近接されている。このため、第2の高周波電極390と接触した生体組織L1,L2から放出された蒸気や液体は、流体放出溝392に入り込む。
第2の高周波電極390の内側には、本体側保持部材352に配設されたカッタ368を受けるカッタ受部394が円環状に形成されている。
さらに、流体放出溝392は、ヘッド部384および通電用シャフト382の第2の管路388bに連通されている。第2の管路388bは、通電用パイプ366の第2の流体通気路(流体通路)379に連通している。シャフト324またはハンドル322には、第2の流体通気路379を通した流体を外部に排出する流体放出口(図示せず)が形成されている。
なお、通電用パイプ366は、シャフト324およびハンドル322を介してケーブル28に接続されている。このため、通電用パイプ366の突起366aに離脱側保持部材354の通電用シャフト382のコネクト部382aが係合されると、第2の高周波電極390と通電用パイプ366とが電気的に接続される。
図44Aおよび図44Bに示すように、離脱側保持部材354のヘッド部384の外周面には、流体導管386が配設されている。この流体導管386は、ヘッド部384の縁部384aの外側に配設されている。そして、流体導管386のうち、ヘッド部384の縁部384aの外側に配設された部分には開口(接合維持補助部)386aが形成されている。この流体導管386は、離脱側保持部材354のヘッド部384の外周面から通電用シャフト382の内部の第1の管路388aに連通している。通電用シャフト382の第1の管路388aは、本体側保持部材352の通電用パイプ366の内側に配設された第2の流体導管374に接続されている。
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
図46Aに示すように、本体側保持部材352が離脱側保持部材354に対して閉じた状態で例えば腹壁を通して腹腔内にエネルギ処置具12cの処置部326およびシャフト324を挿入する。エネルギ処置具12cの本体側保持部材352および離脱側保持部材354間を処置したい生体組織に対して対峙させる。
本体側保持部材352および離脱側保持部材354で処置したい生体組織L1,L2を狭持するため、ハンドル322の処置部開閉ノブ332を操作する。このとき、ハンドル322に対して例えば右回りに回動させる。すると、図46Bに示すように、通電用パイプ366をシャフト324のフレーム364に対して先端部側に移動させる。このため、本体側保持部材352と離脱側保持部材354との間が開き、離脱側保持部材354を本体側保持部材352から離脱させることができる。
そして、処置したい生体組織L1,L2を本体側保持部材352の第1の高周波電極378と離脱側保持部材354の第2の高周波電極390との間に配置する。離脱側保持部材354の通電用シャフト382を本体側保持部材352の通電用パイプ366に挿入する。この状態で、ハンドル322の処置部開閉ノブ332を例えば左回りに回動させる。このため、離脱側保持部材354が本体側保持部材352に対して閉じる。このようにして、処置対象の生体組織L1,L2を本体側保持部材352と離脱側保持部材354との間で保持する。
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作し、エネルギ源14からケーブル28を介して第1の高周波電極378および第2の高周波電極390にそれぞれエネルギを供給する。第1の高周波電極378は生体組織L1,L2を介して第2の高周波電極390との間に高周波電流を通電する。このため、第1の高周波電極378と第2の高周波電極390との間の生体組織L1,L2が加熱される。
このとき、その生体組織L1,L2の加熱された部分から蒸気や液体などの流体が発生する。ここで、第1の高周波電極378が本体側保持部材352に固定された状態で、離脱側保持部材354側に露出する第1の高周波電極378の表面は、本体側保持部材352の縁部362aに対して少し低い位置にある。同様に、第2の高周波電極390が離脱側保持部材354に固定された状態で、本体側保持部材352側に露出する第2の高周波電極390の表面は、離脱側保持部材354のヘッド部384の縁部384aに対して少し低い位置にある。
このため、本体側保持部材352の縁部362aは、第1の高周波電極378に接触した生体組織L1から生じた流体を流体放出溝392、第2の管路388bを通して通電用パイプ366内の第2の流体通気路379に放出する。また、離脱側保持部材354の縁部384aは、第2の高周波電極390に接触した生体組織L2から生じた流体を円筒体362とフレーム364との間の第1の流体通気路376に放出する。したがって、本体側保持部材352の縁部362aおよび離脱側保持部材354の縁部384aは、生体組織L1,L2から生じた流体が本体側保持部材352および離脱側保持部材354の外部に漏れ出すことを防止する障壁部(ダム)の役割をそれぞれ果たす。
そうすると、本体側保持部材352と離脱側保持部材354とが閉じられた状態で、本体側保持部材352の縁部362aと離脱側保持部材354の縁部384aとが当接されていることにより、生体組織L1から発生した流体は第1の流体通気路376に、生体組織L2から発生した流体は第2の流体通気路379に流れ込む。このため、生体組織L1,L2から発生した流体は第1および第2の流体通気路376,379からハンドル322側に流されて、エネルギ処置具12dの外部に排出される。
生体組織L1,L2を接合した後、第1および第2の流体導管372,386の開口372a,386aからそれぞれ接着剤を流す。そうすると、処置した生体組織L1,L2の外周面に接合補助剤を含有する接着剤が塗布される。このため、生体組織LTの外周面が接着剤によりコーティングされる。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
生体組織L1,L2のインピーダンスZを計測しつつ、生体組織L1,L2の接合処置を行うことによって、生体組織L1,L2同士の接触面C1,C2の密着をより確実にすることができる。また、生体組織L1,L2同士の接合処置を行った後、接着剤等で接合処置した生体組織LTの外周をコーティングすることによって、接合処置した生体組織LTの接合部Cに水分が浸入するのを防止することができる。このため、生体組織L1,L2の接触面C1,C2が密着した状態(生体組織LTが接合した状態)を長く維持することができる。
[第13の実施の形態]
次に、第13の実施の形態について図47Aおよび図47Bを用いて説明する。この実施の形態は第12の実施の形態の変形例であって、第12の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図47Aおよび図47Bに示すように、本体側保持部材352および離脱側保持部材354には、第12の実施の形態で説明した流体導管372,386(図44Aおよび図44B参照)の代わりに、接合補助剤を含有する無孔、多孔質状、メッシュ状等の種々のシート状の被覆部材(接合維持補助部)396,398が配設されている。被覆部材396,398は、第7の実施の形態で説明した被覆部材224,234と同様な成分により形成されている。
被覆部材396,398はそれぞれ略円環状に形成されている。すなわち、被覆部材396,398はその内側に開口396a,398aを有する。本体側保持部材352に配設される被覆部材396の開口396aは本体側保持部材352の通電用パイプ366を突出させる。離脱側保持部材354に配設される被覆部材398の開口398aは離脱側保持部材354の通電用シャフト382を突出させる。
この状態で処置を行うことにより、生体組織L1,L2の外周をコーティングでき、生体組織L1,L2に水分が浸透するのを防止することができる。
この実施の形態では、高周波電極378,390を用いる場合について説明したが、ヒータやレーザ光等の別のエネルギを用いることも好ましい。
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。