JP5104481B2 - 防火防水方法および防火防水構造体 - Google Patents
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Description
本発明は、木造建築物の屋根下地やバルコニー下地などの躯体上に、防水層を設ける場合に、重量があり嵩高いロール状の防水シートを用いる作業と比較して、作業負荷が小さく作業性が良好で、さらに防水層を設ける木造建築物の屋根下地やバルコニー下地などの躯体の変形に対する下地追従性に優れる防水構造を有し、尚且つ優れた防火性能を有する防火防水構造体およびその施工方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、木造建築物の木製下地面に断熱材を敷設して、断熱材の敷設層を設ける工程と、前記断熱材敷設層の上面にケイ酸カルシウム板を敷設して、ケイ酸カルシウム板敷設層を設ける工程と、前記ケイ酸カルシウム板敷設層の上面にポリマーセメント組成物用プライマーを塗布して乾燥させ、ポリマーセメント組成物用プライマー層を設ける工程と、前記ポリマーセメント組成物用プライマー層の上面に、ポリマーセメント組成物を塗布して硬化させ、ポリマーセメント組成物硬化体層を設ける工程と、前記ポリマーセメント組成物硬化体層の上面に難燃性トップコートを塗布して乾燥させ、難燃性トップコート層を設ける工程とを含むことを特徴とする木造建築物の防火防水方法である。
(1)ポリマーセメント組成物硬化体層は、ポリマーセメント組成物を塗布した未硬化のポリマーセメント組成物塗布層の上面に、織布及び/又は不織布を敷設し、さらに織布及び/又は不織布の敷設層の上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させた、ポリマーセメント組成物と織布及び/又は不織布との複合硬化体層であること。
(2)ポリマーセメント組成物は、ポリマー成分と水硬性成分とを含むこと。
(3)ポリマーセメント組成物は、ポリマー成分に含まれるポリマー固形分100質量部に対して、水硬性成分が20〜80質量部であること。
(4)ポリマー成分は、アクリル共重合体エマルジョンであり、水硬性成分は、アルミナセメントを含むこと。
(5)ケイ酸カルシウム板は無機質繊維を含み、ケイ酸カルシウム板100質量%中に無機質繊維が8〜15質量%であり、
ケイ酸カルシウム板の厚さは、8〜36mmであること。
(6)難燃性トップコートは、アクリル共重合体エマルジョンと難燃剤とを含み、アクリル共重合体エマルジョンの固形分100質量部に対して、難燃剤が10〜30質量部であること。
<図1の説明/断熱材なし、不織布なし>
図1(A−1)は、たる木(支持部材)と構造用合板とからなる木製下地を示している。構造用合板は、野路板あるいは合板であっても差し支えない。構造用合板は、たる木(支持部材)に釘及び/又はねじを用いて固定する。この時、接着剤を使用する場合には、たる木(支持部材)に接着剤を塗布し、その上に構造用合板を仮留めした後、釘及び/又はねじを用いて固定する。
<図2の説明/断熱材あり、不織布あり>
図2は、本発明の木造建築物の防火防水構造を形成する施工方法(B)である。
図2(B−1)は、図1(A−1)と同様に、たる木(支持部材)と構造用合板とからなる木製下地を示している。
また、図2(B−3)に示すように、ポリマーセメント組成物を塗布した未硬化のポリマーセメント組成物塗布層の上面に、織布及び/又は不織布を敷設し、さらに織布及び/又は不織布の敷設層の上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させ、ポリマーセメント組成物と織布及び/又は不織布との複合硬化体とすることができ、より強度特性に優れた塗膜防水層が得られることから特に好適である。
<図3の説明/断熱材:傾斜あり、不織布なし>
図3は、本発明の木造建築物の防火防水構造を形成する施工方法(C)である。
図3(C−1)は、図1(A−1)及び図2(B−1)と同様に、たる木(支持部材)と構造用合板とからなる木製下地を示している。
<材料の説明>
本発明では、木製下地の上面に、断熱材を敷設して断熱材の敷設層を設けることができる。
断熱材としては、特に限定されるものではなく、ALCなどの無機系断熱材や、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム及びポリスチレンフォームなどの有機系断熱材などの市販の断熱材から適宜選択して用いることができる。本発明では、特に遮熱性に優れ、軽量で良好な施工性を有するポリエチレンフォームを好適に用いることができる。
図3に示すように、断熱材敷設層が傾斜角を有する場合の断熱材敷設層の厚さは、好ましくは10〜120mmの範囲、特に好ましくは15〜115mmの範囲が好適であり、所定の遮熱性能が得られるように、単層または複数層を設けて、前記の範囲の厚さとすることが好ましい。
ケイ酸カルシウム板の厚さは、好ましくは8〜36mmのものを好適に使用でき、ケイ酸カルシウム板の単位面積質量は、好ましくは5〜10kg/m2、特に好ましくは7〜8kg/m2の範囲のものを好ましく用いることができる。
ケイ酸カルシウム板は、ケイ酸カルシウム板100質量%中にケイ酸カルシウムを、好ましくは70〜95質量%、特に好ましくは73〜90質量%含み、無機質繊維を、好ましくは8〜15質量%、特に好ましくは10〜12質量%含むものを好適に用いることができる。
ポリマーセメント組成物は、ポリマー成分と、セメントを含む水硬性成分とを含むものである。
特にガラス転移温度が好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−25℃以下、より好ましくは−25℃〜−50℃の範囲、特に好ましくは−33℃〜−50℃の範囲を有するアクリル共重合体を主成分とするポリマーエマルジョンは、硬化体の伸び率が優れているために好ましく用いることができる。
ポリマーエマルジョンは、(メタ)クリル酸誘導体を1種または2種以上を使用して製造するアクリル系ポリマーエマルジョンを用いることが好ましい。
CaO・Al2O3 + 10H2O → CaO・Al2O3・10H2O
多くの水分子を結晶水として結晶構造中取り込んだ水和反応物は、火災などで高温条件に置かれると、結晶水を放出することから、防火性能の向上に寄与する効果を有することから好適である。
特に水硬性成分は、水硬性成分100質量%中に、アルミナセメントを90質量%以上含むものを用いることが、多くの水分子を結晶水として結晶構造中取り込んだ水和反応物を大量に生成し、防火性能の向上効果が高くなるために好ましい。
さらに、本発明で用いるポリマーセメント組成物は、ポリマーエマルジョンと水硬性成分と充填材とを含むことが好ましい。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で適宜添加量を調整することができ、ポリマーセメント組成物100質量%中、0.05〜1.0質量%、さらに0.1〜0.7質量部、特に0.2〜0.5質量部含むことが好ましい。
水硬性成分、充填材、増粘剤或いは添加剤などは、単独で添加しても良いし、予め他の数種と混合したものを添加しても良く、添加順序は特に選ばない。また、攪拌機は、一般的な固液攪拌機など撹拌機能を有するものを問題なく用いることができる。
水を添加する場合は、成分が分離しないように、均質なスラリー状のポリマーセメント組成物が得られるように添加することが好ましい。
難燃性トップコートは、アクリル共重合体エマルジョンと難燃剤とを含むものを好適に用いることができる。さらに、難燃性トップコートは、アクリル共重合体エマルジョンと難燃剤とを含み、難燃剤は無機系の難燃剤と有機系の難燃剤とを含むものを特に好適に用いることができる。
また、難燃性トップコートは、アクリル共重合体エマルジョンの固形分100質量部に対して、無機系難燃剤が3〜10質量部の範囲であり、有機系難燃剤が10〜20質量部の範囲であることが好ましく、無機系難燃剤が5〜8質量部の範囲であり、有機系難燃剤が12〜18質量部の範囲であることが特に好ましい。無機系の難燃剤と有機系の難燃剤が、前記範囲である場合、優れた防火性能を付与するために特に好適である。
1)ポリマーセメント組成物の調製
温度23±2℃の環境下で、ポリ容器にポリマーエマルジョンを固形分で100質量部を量り取り、アルミナセメント50質量部と珪砂150質量部を加え、0.15KW攪拌機を使用し1300rpmの条件下で3分間混合し、スラリー状のポリマーセメント組成物を調製した。
ガラス板にPETフィルムを敷き、その上に調製したポリマーセメント組成物をコテやヘラなどを用いて1.2kg/m2で塗布し、そのポリマーセメント組成物の上にポリエステル不織布を敷設し、さらにその上にポリマーセメント組成物を1.0kg/m2塗布して、23±2℃の環境下で7日間養生した。養生後、塗膜を剥がし、さらに23±2℃の環境下で7日間養生し、ポリマーセメントシートを得た。
引張強さ及び伸び率の測定は、ポリマーセメントシートよりダンベル2号形を用いて試験片を作製し、夫々の測定温度の条件下(−10℃、23℃、60℃)で、精密万能材料試験機((株)インテスコ製、210XLS)を用い、チャック間距離60mmで、引張速度200mm/分の条件で行った。なお、引張強さ(N/mm2)及び伸び率(%)は、数式(1)及び数式(2)に従い、算出した。
中央に切り込みを入れた5mm厚スレート板(50×150mm)に、予めプライマーを0.2kg/m2の量で塗布した。このスレート板のプライマー塗布面に、調製したポリマーセメント組成物をコテやヘラなどを用いて1.2kg/m2で塗布し、そのポリマーセメント組成物の上にポリエステル不織布を敷設し、さらにその上にポリマーセメント組成物を1.0kg/m2塗布して、23±2℃の環境下で14日間養生し、試験体を得た。
下地ひび割れ追従性試験による伸びの測定は、試験体を夫々の測定温度の条件下(−10℃、23℃、60℃)で、精密万能材料試験機((株)インテスコ製、210XLS)を用い、引張速度5mm/分の条件で行った。目視観察で試験体に亀裂などの欠陥が生じる時の伸びを測定し、その伸びを下地ひび割れ追従性とした。
ケイ酸カルシウム板の様々な動きを想定して耐疲労性を評価する為、ケイ酸カルシウム板の通常の突き合わせ部分(通常部)、立上り面と床面の入り隅部分(入り隅部)、段違いを想定した段差部分(段差部)、通常の突き合わせ部分のせん断方向の動き部分(せん断部)についての耐疲労性を評価した。なお、本評価では、試験片の両端を疲労試験機へ強く固定する為、下地板はある程度の強度が必要であったので、ケイ酸カルシウム板ではなく、スレート板を使用した。
5mm厚スレート板(50×75mm)2枚を短片部同士で1mmの隙間を開けて突き合わせ、その1mmの隙間をプライマーやポリマーセメント組成物が流れ込まないように、1mm厚のフッ素樹脂製シート(ポリマーセメント組成物やプライマーがくっつきにくい素材できたものなら、どんなものでも良い)で埋めて固定した下地板を作製した。
試験体のポリマーセメント組成物の塗布面を上にした状態を通常部の試験片として使用した。
試験体のポリマーセメント組成物の塗布面を上にした状態で塗布面が直角に折れ曲がった状態になるように片方スレート板を立てて固定して、入り隅部の試験片とした。
5mm厚スレート板(50×75mm)1枚と8mm厚スレート板(50×75mm)1枚を用いて、通常部の試験片と同様にして、段差部の試験片を作製した。
5mm厚スレート板(25×150mm)2枚の長片部同士で1mmの隙間を開けて突き合わせ、通常部の試験片と同様にして、せん断部の試験片を作製した。
疲労性試験は、3−1)から3−3)で作製した試験片を疲労試験装置((株)インテスコ製)を用いた。試験片を試験機に取り付けた状態を0mmとして、10分間で1回の周期で±0.5mmのムーブメントを与え、試験温度を20℃、60℃、−10℃の順に500回ずつ行った。さらに、ムーブメントを±1mmにして、同様に各温度の順に500回ずつ行った。試験後、ポリマーセメント組成物層に貫通した穴の有無を目視にて評価した。
〇:貫通した穴が生じなかった、 ×:貫通した穴が生じた。
支持部材(たる木)を用いて1200mm×2000mmの支持部材を作製した。
支持部材(たる木)の間隔は600mmとした。
支持部材に鉄丸くぎを用いて合板を固定し、木製下地部材を作製した。
木製下地部材の上面に、ポリスチレンフォームを厚さ115mmになるように積層して配置した。(厚さ20mm×5枚、厚さ15mm×1枚、重張)
ポリスチレンフォームを配置したのち、その上面にケイ酸カルシウム板を敷設し、十字穴付きタッピングねじを用いてポリスチレンフォームとケイ酸カルシウム板を固定し、ケイ酸カルシウム板の継ぎ目に沿って粘着テープを貼り目地処理を行った。
次に、ポリマーセメント組成物用プライマー層の上に、調製したポリマーセメント組成物をコテ、ヘラなどを用いて1.2kg/m2で塗布し、そのポリマーセメント組成物の上にポリエステル不織布を敷設し、さらにその上にポリマーセメント組成物を1.0kg/m2塗布して、硬化させた。不織布同士の重ね合わせ幅は、100mmとした。硬化後、さらにポリマーセメント組成物を1.0kg/m2塗布して硬化させた。
さらに、硬化したポリマーセメント組成物層の上に難燃性トップコートをローラーにて1.0kg/m2塗布、乾燥させて14日間養生して試験体とした。試験体の作成手順の概要および試験体の模式断面図を図2に示す。
1個目の火種を置いてから30分を経過するまで、試験体の4辺からの超える火炎の有無、試験体裏面における火炎を伴う燃焼の有無及び10mm×10mmを超える貫通孔の有無について観察し、すべて満足した場合に合格とした。
(1)原材料は、以下のものを用いた。
(木製下地)
・合板 : 普通合板、厚さ9mm。
・支持部材(たる木) : 一般製材、幅38mm、高さ89mm、施工間隔600mm。
(断熱材)
・ポリスチレンフォーム : 押出法ポリスチレンフォーム保温板、厚さ115mm、密度27kg/m3。
(ケイ酸カルシウム板)
・ケイ酸カルシウム板 : 厚さ8mm、単位面積質量7.3kg/m2、ケイ酸カルシウム含有率=83質量%、無機質繊維含有率=11質量%、有機質含有率=6質量%。
(ポリマーセメント組成物用プライマー)
・アクリル樹脂系プライマー(市販品)、固形分(ポリマー成分)=50質量%。
(ポリマーセメント組成物)
・ポリマー成分: アクリル共重合体エマルジョン(市販品)、固形分(ポリマー成分)=50質量%。
・水硬性成分 : アルミナセメント:ブレーン比表面積3300cm2/g、ケルネオス社製。
・充填材 : 珪砂:7号珪砂(市販品)。
(不織布)
・ポリエステル不織布、単位面積質量(目付け)=70g/m2。
(難燃剤トップコート)
・アクリル樹脂系難燃性トップコート : アクリル系樹脂(固形分)22.8質量%、有機系難燃剤3.5質量%、無機系難燃剤1.5質量%、無機質系顔料・骨材70.1質量%、有機質系添加剤2.1質量%。
ポリマーエマルジョンと、アルミナセメント、珪砂を表1に示す配合割合で3分間混合してポリマーセメント組成物を調製した。
Claims (9)
- 木造建築物の木製下地面にケイ酸カルシウム板を敷設して、ケイ酸カルシウム板敷設層を設ける工程と、前記ケイ酸カルシウム板敷設層の上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させ、ポリマーセメント組成物硬化体層を設ける工程と、前記ポリマーセメント組成物硬化体層の上面に難燃性トップコートを塗布して乾燥させ、難燃性トップコート層を設ける工程とを含むことを特徴とする木造建築物の防火防水方法。
- 木造建築物の木製下地面に断熱材を敷設して、断熱材の敷設層を設ける工程と、前記断熱材敷設層の上面にケイ酸カルシウム板を敷設して、ケイ酸カルシウム板敷設層を設ける工程と、前記ケイ酸カルシウム板敷設層の上面にポリマーセメント組成物用プライマーを塗布して乾燥させ、ポリマーセメント組成物用プライマー層を設ける工程と、前記ポリマーセメント組成物用プライマー層の上面に、ポリマーセメント組成物を塗布して硬化させ、ポリマーセメント組成物硬化体層を設ける工程と、前記ポリマーセメント組成物硬化体層の上面に難燃性トップコートを塗布して乾燥させ、難燃性トップコート層を設ける工程とを含むことを特徴とする木造建築物の防火防水方法。
- ポリマーセメント組成物硬化体層は、ポリマーセメント組成物を塗布した未硬化のポリマーセメント組成物塗布層の上面に、織布及び/又は不織布を敷設し、さらに織布及び/又は不織布の敷設層の上面にポリマーセメント組成物を塗布して硬化させた、ポリマーセメント組成物と織布及び/又は不織布との複合硬化体層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木造建築物の防火防水方法。
- ポリマーセメント組成物は、ポリマー成分と水硬性成分とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の木造建築物の防火防水方法。
- ポリマーセメント組成物は、ポリマー成分に含まれるポリマー固形分100質量部に対して、水硬性成分が20〜80質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の木造建築物の防火防水方法。
- ポリマー成分は、アクリル共重合体エマルジョンであり、水硬性成分は、アルミナセメントを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の木造建築物の防火防水方法。
- ケイ酸カルシウム板は無機質繊維を含み、ケイ酸カルシウム板100質量%中に無機質繊維が8〜15質量%であり、ケイ酸カルシウム板の厚さは、8〜36mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の木造建築物の防火防水方法。
- 難燃性トップコートは、アクリル共重合体エマルジョンと難燃剤とを含み、アクリル共重合体エマルジョンの固形分100質量部に対して、難燃剤が10〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の木造建築物の防火防水方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の木造建築物の防火防水方法によって得られる防火防水構造体。
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