本発明は、チャネルの寄生抵抗を低減させ、最大ドレイン電流を増大させ、相互コンダクタンスを増大させたIII族窒化物半導体から成るノーマリオフ型電界効果トランジスタ及びその製造方法に関する。
近年、III族窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタは、バンドギャップが広いことから、高耐圧、高温動作、高周波動作、高出力、高電圧信号の入出力などが可能であることから、盛んに、研究されている。
III族窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタを高電圧に対するスイッチング素子として用いる場合には、ノーマリオフ型のトランジスタを実現することが不可欠である。このノーマリオフ型のMOSFETとして、非特許文献1に記載のトランジスタが知られている。このトランジスタは、サファイア基板上に、p型のGaN層を形成し、そのGaN層の表面部に、Siを拡散させた高電子濃度のソース領域と、そのソース領域と対向した位置に、Siを拡散させた高電子濃度のドレイン領域とを形成している。そして、ソース領域とドレイン領域との間のGaN層の表面に、厚さ100nmのSiO2膜を形成している。しかし、このMOSFETにおいては、チャネルの寄生抵抗が大きく、最大ドレイン電流が小さく、相互コンダクタンスが低いという問題がある。
また、AlGaN/GaN構造を有するHEMTも、上記の用途に有効なデバイスである。特に、ゲートリーク電流を減少させるために、ゲート電極直下に絶縁膜を用いたMIS−HEMTが有効とされている。下記特許文献1においては、そのMIS−HEMTにおいて、ゲート電極下の障壁層だけ薄くし、ソース電極、ドレイン電極下の障壁層は厚くすることで、ノーマリオフ型のトランジスタを実現している。
また、下記特許文献2には、シリコン半導体によるMOSFETが開示されている。このMOSFETは、ゲート電極とソース拡散領域及びドレイン拡散領域へのリードとなるポリシリコン膜とのオーバーラップ容量を低減させ、寄生抵抗の発生を防ぐ構造が開示されている。その構造では、砒素をドープしたポリシリコン膜を形成して、この砒素をシリコン基板中に熱拡散させて、ソース拡散領域とドレイン拡散領域とを得ている。そして、ポリシリコン膜を、ゲート電極付近では薄くし、上方にゲート電極の存在しないところでは厚くし、且つ、ゲート電極とポリシリコン膜との間に存在する絶縁膜のサイドウォールの幅をゲート絶縁膜に近い側では狭くし、ゲート絶縁膜から遠い側では厚くして第1、第2のサイドウォールを形成している。
また、特許文献3には、シリコンを用いたMOSFETにおいて、ゲート誘導ドレイン漏れ電流(GIDL)を減少させるために、ゲート絶縁膜を形成するのにLOCAS法に代えて、ソース拡散領域及びドレイン拡散領域上のエッジゲート絶縁膜を複数の層で構成して厚くすることで、GIDLを減少させて耐圧を向上させている。
しかしながら、非特許文献1の構造で、ノーマリオフ型の電界効果トランジスタを実現する場合には、最大ドレイン電流が小さく、且つ、相互コンダクタンスが低いという問題がある。また、特許文献1のMIS−HEMTでは、ソース電極及びドレイン電極下の障壁層は厚く、ゲート電極下の障壁層は薄くする構成を採用する関係上、III族窒化物半導体の厚さを精度良く制御してエッチングしなければらない。しかしながら、III族窒化物半導体をウェットエッチングすることは困難であり、現実問題として、ウェットエッチングは実用化されていない。III族窒化物半導体のウェットエッチングができないことらか、事実上、高性能のノーマリオフ型のMIS−HEMTを実現することはできなかった。
また、特許文献2の方法では、ソース領域及びドレイン領域をポリシリコン膜中にドープした砒素の拡散で形成しているが、III族窒化物半導体においては、拡散によっては、低抵抗なソース領域及びドレイン領域が形成できないため、この方法を使用することができない。また、この方法では、ポリシリコン膜と酸化膜を堆積させた後、ポリシリコン膜と酸化膜をエッチングしてポリシリン膜の薄い領域の形成、セルフアラインによる幅の広い第1のサイドウォールの形成、セルフアラインによるゲート部のポリシリコン膜のエッチング、セルフアラインによる幅の狭い第2のサイドウォールの形成、ゲート絶縁膜の形成、砒素の熱拡散によるソース拡散領域とドレイン拡散領域との形成、ゲート電極の形成という多数の工程を必要とし、製造工程が複雑であるという欠点が存在する。
また、特許文献3においては、シリコン基板に燐をイオン注入して、ソース拡散領域及びドレイン拡散領域を形成している。しかし、III族窒化物半導体においては、不純物をイオン注入すると結晶性が低下して、低抵抗なソース拡散領域やドレイン拡散領域を形成することが困難であるので、この方法では、最大ドレイン電流の大きな、性能の高い素子を形成することは困難である。
このように、最大ドレイン電流が高く、相互コンダクタンスが大きく、絶縁耐圧に優れたIII族窒化物半導体を用いたノーマリオフ型電界効果トランジスタを実現することが、大いに期待されている。
特に、高電圧を制御できる低周波スイッチング素子に応用できるノーマリオフ型電界効果トランジスタの実現が大いに期待されている。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、チャネルの寄生抵抗を小さくして最大ドレイン電流を大きくし、且つ、相互コンダクタンスの大きな、素子特性に優れたノーマリオフ型の電界効果トランジスタを、製造容易に実現することである。
上記の課題を解決するためには、以下の手段が有効である。
即ち、第1の発明は、半導体層に形成されるチャネルを流れる電流をゲート電極に印加する電圧で制御する、III族窒化物半導体から成るノーマリオフ型電界効果トランジスタにおいて、III族窒化物半導体から成る最上半導体層の上に形成される金属から成るソース電極と、ソース電極と離間して、最上半導体層の上に形成される金属から成るドレイン電極と、ソース電極の金属と少なくとも最上半導体層との合金化により形成されるソース領域と、ドレイン電極の金属と少なくとも最上半導体層との合金化により形成されるドレイン領域と、最上半導体層、ソース電極、ドレイン電極の上に形成される絶縁膜と、ソース電極とドレイン電極との間の絶縁膜上に形成され、少なくとも、ソース電極とドレイン電極の相互に対向するエッジまで伸長して形成されたゲート電極とから成る電界効果トランジスタである。
ここで、本発明の電界効果トランジスタは、第10の発明のように、チャネルが最上半導体層の絶縁膜に対する界面に形成される電界効果トランジスタ、第11の発明のように、ヘテロ接合した半導体層の界面にチャネルが形成される高移動度トランジスタを含む。第11の発明のHEMTの場合には、金属と半導体との合金化により形成されるソース領域及びドレイン領域は、チャネルが形成される半導体層のヘテロ接合の界面にまで達していることが望ましい。
ゲート電極は、ソース電極とドレイン電極の相互に対向するエッジまで伸長して形成されている。これにより、ゲート電極に制御電圧が印加されたとき、チャネルの全領域にわたって電子を発生させることができる。よって、寄生抵抗が無視できるノーマリオフ型電界効果トランジスタとすることができる。
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の金属材料は、第1の発明においては、限定するものではないが、第2の発明のように、ソース電極、ドレイン電極については、最上半導体層の側から順に、チタン、アルミニウム、ニッケル、金を積層したもの、ゲート電極については、絶縁膜の側から順に、チタン、白金、金を積層して形成したものとするのが望ましい。なお、半導体層と合金化された後には、これらの金属材料が厚さ方向にこの順で明確に区分されている訳ではない。これらの金属材料を用いることにより、ソース領域とドレイン領域の電子密度を高くすることができる。また、ソース電極とドレイン電極には、チタン、アルミニウム、白金、金の多層構造を用いることができる。ゲート電極をチタン、白金、金とすることで、ゲート絶縁膜上に強固に接合した電極を形成することができる。
チャネルの寄生抵抗をなくすためには、ゲート電極は、少なくとも、ソース電極とドレイン電極のエッジまで、伸長して形成されていれば良い。すなわち、ソース領域とドレイン領域との間に形成されるチャネルの全域に渡って、ゲート電圧が印加されて、電子がチャネルの全長に渡り誘起されれば良い。また、第3の発明のように、ゲート電極は、ソース電極及びドレイン電極の一部の領域上方の絶縁膜上にも、伸長して形成されていても良い。このように、ゲート電極をソース電極及びドレイン電極の上方に絶縁膜を介してオーバーラップさせることで、製造容易にして、確実に、チャネルの寄生抵抗をなくすことができる。
また、第4の発明のように、絶縁膜を、HfO2、HfOx、HfON、ZrO2、ZrOxのうちの少なくとも1種で構成することで、相互コンダクタンスを向上させることができる。
第1の発明では、絶縁膜は、ゲート電極下、ソース電極及びドレイン電極上で、一様な厚さでも良いが、第5の発明のように、絶縁膜は、ドレイン電極とゲート電極間及びソース電極とゲート電極間のうち少なくともドレイン電極とゲート電極間では、ゲート電極下に位置する絶縁膜よりも厚く形成するのが望ましい。この場合には、耐圧を向上させることができる。また、ゲート電極のオーバラップ容量を低下でき、動作速度を向上させることができる。なお、ソース電極とゲート電極間においても、絶縁膜を厚く形成することが望ましい。これらの領域で絶縁膜を厚くする方法は、単一層であれば、その領域の積層厚さを制御すれば良く、また、第6、第8の発明のように、異なる材料の絶縁膜を積層して、絶縁膜を2層以上としても良い。
第1の発明では、絶縁膜は、ゲート電極下の領域と、ソース電極及びドレイン電極上の領域との両領域において、同一材料でも良いが、第7の発明のように両領域の材料を異ならせることにより、ソース電極とゲート電極間及びドレイン電極とゲート電極間における絶縁膜の実効誘電率をゲート電極下の絶縁膜の誘電率よりも小さくするようにしても良い。このようにすることで、ゲート電極のオーバーラップ容量を低減して、動作速度を向上させることができる。また、少なくとも、ソース電極とゲート電極間及びドレイン電極とゲート電極間のうち、ドレイン電極とゲート電極間の絶縁膜を、耐圧の優れた材料を用いることで、トランジスタの耐圧を向上させることができる。
ソース電極上及びドレイン電極上の絶縁膜の実効誘電率を小さくする方法には、第6、第8の発明のように、それらの領域において、絶縁膜を2層以上の構成として、ゲート電極下の絶縁膜よりも誘電率の小さい材料を、さらに、設けることで実現できる。また、絶縁膜を1層で構成して、ゲート電極下の絶縁膜にに対して、ソース電極及びドレイン電極上は誘電率の小さな異なる材料で絶縁膜を形成しても良い。
また、第8の発明のように、絶縁膜を、ドレイン電極とソース電極の上に形成された第1絶縁膜と、この第1絶縁膜と、最上半導体層の上に、一様な厚さで形成された第2絶縁膜とで構成しても良い。すなわち、第8の発明では、ゲート絶縁膜以外の絶縁膜である第1絶縁膜が、ソース電極及びドレイン電極上に形成される。この第1絶縁膜を、ゲート絶縁膜である第2絶縁膜よりも、比誘電率が小さい材料、又は、絶縁破壊電圧の大きな材料で構成することで、ゲートオーバーラップ静電容量を減少させて動作速度を高くでき、また、耐圧を高くすることができる。
この場合の材料としては、第9の発明のように、第1絶縁膜は、SiO2、Al2O3、SiOx、SiNx、AlOx,SiON、AlNxのうちの少なくとも1種から成り、第2絶縁膜は、HfO2、HfOx、HfON、ZrO2、ZrOxのうちの少なくとも1種から成ることが望ましい。
HEMTにおいては、第11の発明のように、最上半導体層である障壁層と、その障壁層とヘテロ接合し障壁層に対する界面においてチャネルの形成されるチャネル層とを有し、障壁層は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の下の全域において均一一様な厚さであり、ゲート電極に電圧が印加されていない状態で、ソース電極、ドレイン電極間は、非導通となる厚さとする。この構成により、III族窒化物半導体から成る障壁層をエッチングすることなく、最大ドレイン電流が大きく、相互コンダクタンスの大きなノーマリオフ型電界効果トランジスタを、容易に実現できる。
第12の発明は、半導体層に形成されるチャネルを流れる電流をゲート電極に印加する電圧で制御する、III族窒化物半導体から成るノーマリオフ型電界効果トランジスタの製造方法において、III族窒化物半導体から成る最上半導体層の上に、ソース電極及びドレイン電極を形成する領域に窓の形成されたマスクを形成し、窓及びマスク上に金属を堆積し、金属の上に絶縁膜を堆積し、マスクを除去することで、金属から成るソース電極及びドレイン電極と、それらの電極の上に形成された第1絶縁膜とを形成し、金属と少なくとも最上半導体層とを合金化して、ソース領域及びドレイン領域を形成し、第1絶縁膜及び最上半導体層の露出面上に、第2絶縁膜を形成し、ソース電極とドレイン電極との間の第2絶縁膜上に、少なくとも、ソース電極とドレイン電極の相互に対向するエッジまで伸長して、ゲート電極を形成することを特徴とする電界効果トランジスタの製造方法である。
なお、電極の金属と半導体との合金化によりソース領域とドレイン領域とを形成する工程は、必ずしもマスクを除去するリフトオフ工程の後である必要はなく、第1絶縁膜を形成した後、マスクを除去する前であっても良く、マスクを除去した後、第2絶縁膜を形成した後であっても良く、又は、第2絶縁膜を形成した後のゲート電極を形成した後であっても良い。
第13の発明は、マスクは、単層のフォトレジストから成ることを特徴とし、第14の発明は、マスクは、レジスト、酸化物又は窒化物から成る絶縁膜、及びフォトレジストの複数層構造で形成されることを特徴とする。
ただし、絶縁膜は複数の層で構成されていても良い。最も下のレジストは、感光性があってもなくとも良いが、硬化温度が高い方が望ましい。
以上の本発明の構成によって得られる効果は以下の通りである。
本発明は、ソース電極とドレイン電極を最上半導体層の上に積層した金属で構成し、その金属直下に、その金属と半導体との合金化によりソース領域とドレイン領域とを形成し、且つ、ソース電極とドレイン電極間の最上半導体層の表面と、ソース電極とドレイ電極の上に絶縁膜を形成し、その絶縁膜の上に形成されるゲート電極を、少なくとも、ソース電極とドレイン電極との対向するエッジまで伸長して形成したことを特徴としている。また、第3の発明では、ゲート電極は絶縁膜を介してソース電極の上部、ドレイン電極の上部にオーバーラップしている。
この構造により、ソース領域とドレイン領域を繋ぐチャネルの全域において、ゲート電圧を印加することが可能となる。したがって、ゲート電圧が印加された時のチャネルの全域におい電子を誘起することが可能となり寄生抵抗を小さくすることができる。また、ソース領域とドレイン領域は、イオン打ち込みを用いていないので、結晶性を乱すことがなく、その領域の抵抗を低減することができる。また、これらの金属と半導体との合金化された領域と半導体間の接触抵抗を低減でき、チャネルの寄生抵抗を無視できる程度に低減できる。
本発明ではソース領域およびドレイン領域の上に、その領域の半導体と合金化する金属から成るソース電極およびドレイン電極が、それぞれ、形成されているので、イオン打ち込みにより形成したソース領域やドレイン領域に比べてソース領域およびドレイン領域の全抵抗を小さくすることができる。すなわち、特許文献2では、電流路としては、金属ソース電極、ポリシリコン膜、砒素が拡散されて形成されたソース拡散領、チャネル、砒素が拡散されて形成さたドレイン拡散領域、ポリシリコン膜、金属ドレイン電極となる。したがって、この特許文献2の場合には、金属ソース電極とポリシリコン膜との接触抵抗、ポリシリコン膜とソース拡散領域との接触抵抗、ドレイン拡散領域とポリシリコン膜との接触抵抗、ポリシリコン膜と金属ドレイン電極との接触抵抗とが、本発明に対して、余分に付加されたものとなっている。
これに対して、本件発明では、ソース領域及びドレイン領域が、ソース電極とドレイン電極を構成する金属と半導体との合金で形成されており、いわば、ソース領域とドレイン領域とを金属電極そのものを用いているのに等しい状態としているので、特許文献2のような接触抵抗が存在しないために、寄生抵抗を無視できる程に小さくできる。特許文献3に関しても、不純物がイオン注入されたソース拡散領域及びドレイン拡散領域に、さらに、不純物を高濃度にイオン注入された領域を形成し、この領域に金属を接触させている。したがって、これらの各領域間の接触抵抗が存在し、且つ、ソース拡散領域及びドレイン拡散領域の抵抗が大きいので、寄生抵抗は、大きくなる。
このように、本件発明は、これらのソース電極直下の合金によるソース領域及びドレイン電極直下の合金によるドレイン領域、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極とのオーバーラップ構造の相乗作用の結果、チャネル全体としての抵抗を低減でき、最大ドレイン電流を増加させた、ノーマリオフ型電界効果トランジスタを得ることができる。また、このノーマリオフ型電界効果トランジスタでは、金属、絶縁膜、金属の堆積と、絶縁膜と金属のみのパターンエッチング、合金化処理だけで、製造可能であり、III族窒化物半導体のエッチングやイオン打ち込みなどを必要としないことから、製造が極めて簡単となる。また、特許文献2のような微細加工も必要ではない。
特に、本発明は、ノーマリオフ型MIS−HEMTを、III族窒化物半導体をエッチングすることなしに製造できるので、その技術的意義は大きい。また、本発明は、特に、高耐圧、高応答速度、高電流のノーマリオフ型MIS−HEMT、MOSFETを実現できるので、電力スイッチング素子として、極めて有望である。
また、第5の発明では、絶縁膜を介して、ゲート電極がソース電極の上にオーバーラップしている領域(以下、この絶縁膜の領域を「ソース電極オーバーラップ領域」という、ゲート電極がドレイン電極の上にオーバーラップしている領域(以下、この絶縁膜の領域を「ドレイン電極オーバーラップ領域」という)のうち、少なくともドレイン電極オーバーラップ領域を厚くすることで、耐圧を向上させることができる。また、両オーバーラップ領域を厚くすることで、ゲート電極のオーバーラップ静電容量を低減でき、応答性を向上させることができる。
さらに、第6、第7の発明では、ソース電極オーバーラップ領域とドレイン電極オーバーラップ領域のうち、少なくともドレイン電極オーバーラップ領域では、絶縁膜を2層以上の構造にして、他の領域よりも厚くしたり、ゲート絶縁膜と、その絶縁膜の誘電率よりも小さな誘電率の絶縁膜との2層以上に構成することで、実効誘電率を低減させることができる。2層以上に構成する場合には、ゲート絶縁膜が他の絶縁膜の上側にあっても下側にあっても良い。これにより、ゲート電極のオーバーラップ静電容量を低減して、トランジスタの応答性を向上させることができる。また、少なくとも、ドレイン電極オーバーラップ領域において、積層する他の材料として、絶縁破壊耐圧の大きな材料を用いることで、トランジスタの耐圧を向上させることができる。特に、第8の発明のように、ゲート絶縁膜以外の第1絶縁膜をソース電極及びドレイン電極上に先に形成することで、製造が容易となる。
また、第4の発明では、絶縁膜に、HfO2、HfOx、HfON、ZrO2、ZrOxのうちの少なくとも1種を用いる。これらの材料は、比誘電率が21〜24と大きいことから、ゲート電極の静電容量を増加でき、相互コンダクタンスを増大させることができる。
第12の製造方法の発明では、第1絶縁膜は、ソース電極及びドレイン電極の形成と、同一のフォトリソグラフィ工程により形成されるので、製造が簡単となる。特に、第14の方法によると、マスクを、レジスト、酸化物又は窒化物から成る絶縁膜、及びフォトレジストの複数層構造とすることで、マスクの剥離を容易且つ確実に行うことが可能となる。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
図1は、実施例1に係る反転型MOSFETの断面図である。サファイアから成る基板10の上に、膜厚約30nmのAlNから成る非晶質の低温形成バッファ層12が形成されており、その層12の上に、アンドープの厚さ1μmのGaNから成る第1層14が形成されている。その第1層14の上には、厚さ1μmのMgドープのp−GaNから成る第2層16が形成されている。この第2層16の上にTi/Al/Ni/Auをこの順に積層した厚さ400nmのソース電極22及びドレイン電極24が形成されている。このソース電極22とドレイン電極24とは、第2層16のGaNと、合金化されて、電子密度が1019/cm3と高いソース領域18とドレイン領域20が、ソース電極18及びドレイン電極24の直下に形成されている。
また、第2層16の表面及びソース電極22及びドレイン電極24の上には、HfO2から成る厚さ100nmの絶縁膜26が形成され、その絶縁膜26の上に、Ti/Pt/Auをこの順に積層した厚さ400nmのゲート電極28が形成されている。チャネルChは、絶縁膜26に対する界面で、第2層16側に形成される。このゲート電極28のチャネルChの長さ方向の両端28a、28bは、ソース電極22とドレイン電極24の対向する両エッジ22a、24bを越えて、ソース電極22とドレイン電極24の平面の内部領域に位置している。すなわち、ゲート電極28は、ソース電極22の上方及びドレイン電極24の上方に、絶縁膜26を介して、オーバーラップしている。
上記の各層の成長は、有機金属化合物気相成長法(MOVPE)により行った。ここで用いられたガスは、キャリアガス(H2又はN2 )と、アンモニアガス(NH3 )と、トリメチルガリウム(Ga(CH3)3)(以下、「TMG」と記す)、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)(以下、「TMA」と記す)と、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5H5)2)(以下、「Cp2Mg」と記す)である。
ただし、これらの半導体結晶層を結晶成長させる方法としては、上記の有機金属化合物気相成長法(MOVPE)の他にも、分子線気相成長法(MBE)、ハイドライド気相成長法(HVPE)等が有効である。
次のようにして、図1に示したMOSFETを製造した。基板10の上に、キャリアガスとして、水素(H2 )ガスを用い、TMA、NH3を原料ガスとして、成長炉内全圧1000〔hPa〕として、400℃にて、非晶質のバッファ層12を厚さ30nmに形成した。次に、結晶成長温度を1100℃として、水素ガスを10L/分、アンモニアを12L/分、TMGを2×10−4モル/分で供給して、厚さ1μmの第1層14を成長させた。この第1層14は、厚いほど、結晶性が良いので、厚い程望ましい。続いて、成長温度を同一、他の原料ガスの流速を同一として、TMGを2×10−4モル/分で供給して、その第1層14の上に、Mg濃度が2×1017/cm3のp−GaNから成る厚さ1μmの第2層16を形成した。その後、窒素雰囲気で、700℃でアニーリングして、第2層16のp型低抵抗化を行った。
次に、第2層16の表面に、レジストを塗布し、フォトリソグラフィにより、ソース電極22とドレイン電極24の形成領域だけ、レジストを除去した。その後、Ti/Al/Ni/Auを、総合厚さ400nmとなるように、順次蒸着して、レジストを、リフトオフして、ソース電極22とドレイン電極24とを形成した。次に、850℃で、1分間加熱して、ソース電極22及びドレイン電極24と第2層16のGaNとを合金化して、ソース領域18とドレイン領域20とを第2層16の表面部に形成した。その後、第2層16の表面、ソース電極22及びドレイン電極24の表面に、レーザアブレーション法により、HfO2から成る絶縁膜26を厚さ100nmに堆積した。次に、フォトレジストの塗布、フォトリソグラフィによりゲート電極28の形成領域だけレジストを除去して、所定のレジストパターンを形成し、Ti/Pt/Auを、総合厚さ400nmになるように、この順に積層した。その後、レジストをリフトオフして、厚さ400nmのゲート電極28を得た。
このようにして、形成したMOSFETの動作特性を測定した。その特性を図2の(a)〜(d)に示す。チャネル長は、2.5μm、チャネル幅(ゲート幅)は、20μmである。ノーマリオフ型電界効果トランジスタが得られていることが理解される。なお、図2(a)は、ドレインソース間電圧を8V(飽和領域)とした時のゲートソース間電圧−ドレイン電流特性であるが、ゲートソース間電圧が電圧が8V以下の範囲でドレイン電流が一定となっており、しきい値電圧7〜8Vが得られていることが分かる。ゲートソース間電圧がしきい値電圧より低い領域で、ドレイン電流が0になっていないのは、半導体の結晶性が十分でないためにチャネルを通らないリーク電流があるためである。また、図2(b)も、ゲートソース間電圧が0の場合にも、ドレインソース間電圧に比例したドレイン電流が流れているが、これはリーク電流によるものであり、(b)の特性から、このドレインソース間電圧に比例するリーク電流特性を減算すれば、飽和領域が形成されていることが理解される。このリーク電流は、半導体結晶の成長を厳密に行い結晶性を改善することにより、解消されるものである。
また、相互コンダクタンスは、25mS/mmが得られている。この値は、従来のGaNを用いた反転型MOSFETの相互コンダクタンスの10倍に当たり、本発明の構成が、相互コンダクタンスの増大に大きく寄与していることが理解される。
本実施例は、図3に示す構成のMOSFETである。本実施例では、ゲート電極28の両端28a、28bを、それぞれ、ソース電極22のエッジ22a(ドレイン電極と対向するエッジ)、ドレイン電極24のエッジ24b(ソース電極と対向するエッジ)まで、伸長したものである。ゲート電極22の両端28a、28bは、少なくとも、ソース電極22とドレイ電極24のエッジ22aと24bまで、伸長していれば良い。製造方法は、実施例1と同一である。これによっても、ソース領域18とドレイン領域20の間のチャネルの全長に渡り、ゲート電圧を均一に印加させることができるので、チャネルの寄生抵抗を排除することができる。よって、最大ドレイン電流を向上させることができる。なお、ゲート電極28は、ソース電極22上、又は、ドレイン電極24上の何れか一方のみを図1に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。
本実施例は、図4の構成のMOSFETである。サファイア基板50上に非晶質のバッファ層52、厚さ3μmのアンドープのGaN層54が形成されている。i−GaN層54の表面に、ソース領域56とソース電極60、ドレイン領域58とドレイン電極62、絶縁膜64、ゲート電極66とが形成されている。実施例1では、第2層16をp−GaNとしたが、本実施例では、i−GaNとした点のみが異なる。電極材料、厚さ、ゲート電極66とソース電極60とドレイン電極62との位置関係は、実施例1と同一である。このような構成であっても、最大ドレイン電流が大きく、相互コンダクタンスの大きなノーマリオフ型電界効果トランジスタを実現することができる。もちろん、この実施例においても、図3のように、ゲート電極66の両端が、ソース電極60とドレイ電極62のそれらの対向するエッジに位置する関係に構成しても良い。
また、ゲート電極66は、ソース電極60上、又は、ドレイン電極62上の何れか一方のみを図1に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。
本実施例は、MIS−HEMTである。その構成を図5に示す。サファイアから成る基板30の上に、膜厚約30nmのAlNから成る非晶質の低温形成バッファ層32が形成されており、その層32の上に、アンドープの厚さ3μmのGaNから成るチャネル層34が形成されている。そのチャネル層34の上には、厚さ12nmのアンドープのAl0.2Ga0.8Nから成る障壁層36
が形成されている。障壁層36の上にTi/Al/Ni/Auをこの順に積層した厚さ400nmのソース電極42及びドレイン電極44が形成されている。このソース電極42とドレイン電極44とは、障壁層36のAl0.2Ga0.8Nおよびチャネル層34の一部のGaNと、合金化されて、電子密度が1019/cm3と高いソース領域38とドレイン領域40が、ソース電極42及びドレイン電極44の直下に形成されている。
また、障壁層36の表面及びソース電極42及びドレイン電極44の上には、HfO2から成る厚さ100nmの絶縁膜46が形成され、その絶縁膜46の上に、Ti/Pt/Auをこの順に積層した厚さ400nmのゲート電極48が形成されている。チャネルChは、障壁層36に対するヘテロ接合界面で、チャネル層34の側に形成される。このチャネルの両端は、ソース領域38とドレイン領域40に接続されている。このゲート電極48のチャネルChの長さ方向の両端48a、48bは、ソース電極42とドレイン電極44の対向する両エッジ42a、44bを越えて、ソース電極42とドレイン電極44の平面の内部領域に位置している。すなわち、ゲート電極48は、ソース電極42の上方及びドレイン電極44の上方に、絶縁膜46を介して、オーバーラップしている。
この実施例のMIS−HEMTの製造方法は、実施例1と同様である。すなわち、障壁層36の形成に際して、チャネル層34の上に、温度を1150℃として、水素ガスを10L/分、アンモニアを12L/分、TMGを2×10−4モル/分、TMAを6×10−6モル/分で供給して、Al0.2Ga0.8Nからなる障壁層36を12nmの厚さに成長させた点のみが異なる。
このようにして形成したMIS−HEMTの特性を図6(a)〜(d)に示す。チャネル長は、2.5μm、チャネル幅(ゲート幅)は、20μmである。しきい値電圧3Vのノーマリオフ型電界効果トランジスタが得られていることが理解される。また、リーク電流もない。相互コンダクタンスは、185mS/mmが得られている。これは、従来のIII族窒化物半導体を用いたMOSFETの100倍に当たる。
この実施例においても、図3のようなゲート電極とソース電極及びドレイン電極との位置関係を採用しても良い。すなわち、ゲート電極48のチャネルChの長さ方向の両端48a、48bが、ソース電極42とドレイン電極44の対向する両エッジ42a、44bに位置するように構成しても良い。また、ゲート電極48は、ソース電極42上、又は、ドレイン電極44上の何れか一方のみを図5に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。
障壁層36の厚さは、ゲート電極48にゲート電圧を印加していない状態で、ソース電極42とドレイン電極44との間に電流が流れない、すなわち、チャネルChにキャリアが誘起されない厚さの範囲である。障壁層36のAlの組成比にも依存するが、Al0.2Ga0.8Nの場合には、1nm〜15nmの範囲が望ましい。この範囲は、AlGaNについて、一般的に当てはまる範囲である。障壁層36には、Al0.2Ga0.8Nを用いているが、任意の組成比のAlGaNを用いることができる。なお障壁層の厚みを薄くしているので障壁層のAl組成比を大きくすることができ、従って耐圧を向上させることができる。
また、障壁層36は、複数の層で構成しても良いし、絶縁膜側からn−AlGaN、i−AlGaNなどの2層以上の構成としても良い。なおこの場合、n−AlGaNの濃度および厚みはゲート電極48にゲート電圧を印加していない状態で、ソース電極42とドレイン電極44との間に電流が流れない、すなわち、チャネルChにキャリアが誘起されない厚さの範囲である。また、
絶縁膜側からi−AlGaN、n−AlGaN、i−AlGaNなどの3層、または、それ以上の数の層で構成としても良い。これらの場合も、障壁層の厚さは、ゲート電極48にゲート電圧を印加していない状態で、ソース電極42とドレイン電極44との間に電流が流れない厚さの範囲とする。
本実施例は、図7に示すように、実施例1のMOSFETにおいて、絶縁膜を2層構造としたものである。すなわち、ソース電極22とドレイン電極24上の絶縁膜は、厚さ100nmのHfO2から成る絶縁膜26と、厚さ200nmのSiO2から成る第2の絶縁膜70,71の2層構造である。SiO2の絶縁膜は、スパッタリングにより形成すれば良い。SiO2の比誘電率は3.9と、HfO2より小さく、HfO2の比誘電率23.4であるので、ゲート電極28とソース電極22間のソース電極オーバーラップ領域の絶縁膜、ゲート電極28とドレイン電極24間のドレイン電極オーバーラップ領域の絶縁膜の実効的な比誘電率を小さくすることができる。これにより、ゲート電極のオーバーラップ容量を低減することができ、応答速度が向上する。
また、ドレイン電極24とゲート電極28間が最も電界が大きくなるが、この電界が大きくなるドレイン電極オーバーラップ領域の絶縁膜を厚くし、また、絶縁破壊耐圧の大きなSiO2を用いることで、動作電圧を向上させることができる。
本実施例では、ゲート電極28とソース電極22間と、ゲート電極28とドレイン電極24間の絶縁膜を比誘電率の異なる材料で2層構造にしたが、ゲート電極28とドレイン電極24間の絶縁膜だけを2層構造にしても良い。2層の他、3層以上としても良い。さらに、ゲート電極28とドレイン電極24間の絶縁膜をバンドギャップの大きい、したがって、絶縁破壊耐圧の大きい材料を用いると良い。また、本実施例においても、図3と同様なゲート電極とソース電極及びドレイン電極の位置関係となるようにしても良い。また、ゲート電極28は、ソース電極22上、又は、ドレイン電極24上の何れか一方のみを図7に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。特に、ゲート電極をドレイン電極側でオーバーラップさせずに、ドレイン電極24上を耐圧の大きい材料を用いた2層構造の絶縁膜とすることにより、耐圧を向上させることができる。
本実施例は、実施例5の構成をMIS−HEMTに用いたものである。
図8に示すように構成しても良い。すなわち、ゲート電極48とソース電極42間のソース電極オーバーラップ領域と、ゲート電極48とドレイン電極44間のドレイン電極オーバーラップ領域の絶縁膜を、厚さ100nmのHfO2から成る絶縁膜46と、厚さ200nmのSiO2から成る第2の絶縁膜70,71の2層構造としたものである。この例も、実施例5と同様な効果を奏する。もちろん、この実施例においても、図3のように、ゲート電極48の両端が、ソース電極42とドレイ電極44のそれらの対向するエッジに位置する関係に構成しても良い。また、ゲート電極48は、ソース電極42上、又は、ドレイン電極44上の何れか一方のみを図8に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。特に、ゲート電極をドレイン電極側でオーバーラップさせずに、ドレイン電極44上を耐圧の大きい材料を用いた2層構造の絶縁膜とすることにより、耐圧を向上させることができる。
本実施例は、実施例6のMIS−HEMTにおいて、ドレイン電極44とゲート電極48間のみ、絶縁膜の厚さを厚くしたものでる。図9に示すように、ゲート電極48とソース電極42間のソース電極オーバーラップ領域と、ゲート電極48とドレイン電極44間のドレイン電極オーバーラップ領域の絶縁膜の厚さを異にして、ドレイン電極オーバーラップ領域をソース電極オーバーラップ領域に比べて厚くして、絶縁膜の厚さに関して非対称に構成している。チャネルChの上部及びソース電極オーバーラップでは、絶縁膜46の厚さは、厚さ100nm、ドレイン電極オーバーラップ領域では、絶縁膜46の厚さを400nmとした。絶縁膜46は、HfO2で構成した。これにより、ゲートオーバラップ静電容量を低減して動作速度を向上させると共に、耐圧を向上させて、動作可能電圧を大きくすることができる。もちろん、この実施例においても、図3のように、ゲート電極48の両端が、ソース電極42とドレイ電極44のそれらの対向するエッジに位置する関係に構成しても良い。また、ゲート電極48は、ソース電極42上、又は、ドレイン電極44上の何れか一方のみを図9に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。特に、ゲート電極をドレイン電極側でオーバーラップさせずに、ドレイン電極44上の絶縁膜を厚くすることで、耐圧を向上させることができる。これらの構造は、MOSFETにおいても、利用可能である。
本実施例は、実施例6のMIS−HEMTにおいて、ドレイン電極オーバーラップ領域のみ、絶縁膜を2層構造にしたものである。図10に示すように、ゲート電極48とソース電極42間のソース電極オーバーラップ領域とチャネルChの上部には、厚さ100nmのHfO2から成る絶縁膜46が設けられている。ゲート電極48とドレイン電極44間のドレイン電極オーバーラップ領域では、厚さ100nmのHfO2から成る絶縁膜46と、厚さ200nmのSiO2から成る第2の絶縁膜71との2層構造としている。また、第2の絶縁膜71は、ドレイン電極44の直上だけでなく、チャネルCh側に伸びた領域711を有していても良い。第2の絶縁膜71は、SiO2の他、絶縁破壊耐圧の高い、アルミナ、SiNxなどの他の材料を用いても良い。もちろん、この実施例においても、図3のように、ゲート電極48の両端が、ソース電極42とドレイ電極44のそれらの対向するエッジに位置する関係に構成しても良い。また、ゲート電極48は、ソース電極42上、又は、ドレイン電極44上の何れか一方のみを図10に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。特に、ゲート電極をドレイン電極側でオーバーラップさせずに、ドレイン電極24上の絶縁膜を耐圧の高い絶縁膜を用いた2層構造とすることで、耐圧を向上させることができる。これらの構造は、MOSFETにおいても、利用可能である。
本実施例は、実施例8のMIS−HEMTにおいて、ドレイン電極オーバーラップ領域において、絶縁膜46と第2の絶縁膜71との上限関係を反転させたものである。すなわち、図11に示すように、第2の絶縁膜72は、絶縁膜46に対して下側に位置しドレイン電極44に接合し、障壁層36に接合する部分721を有している。この場合には、第2の絶縁膜72として、Si3N4に代表される窒化珪素SiNxを用いることが有効である。また、ゲート電極48は、図11に示すように、実施例2と同様に、ゲート電極48の両端48a、48bは、それぞれ、ソース電極42のエッジ42a(ドレイン電極と対向するエッジ)、ドレイン電極44のエッジ44b(ソース電極と対向するエッジ)まで、伸長したものでも良い。また、ソース電極42上では、ゲート電極48はオーバーラップしており、ドレイン電極44側では、図11に示すように、ゲート電極48の端面48bが、ドレイン電極44のエッジ44bまで伸長した、非対称形であっても良い。これにより、ゲートオーバラップ静電容量を低減して動作速度を向上させると共に、耐圧を向上させて、動作可能電圧を大きくすることができる。ゲート電極48は、図10に示すように、ソース電極42及びドレイン電極44上に共にオーバーラップしていても良い。これらの構造は、MOSFETにおいても、利用可能である。
本実施例は、図7に示す実施例5のMOSFETにおいて、図12に示すように、絶縁膜をソース電極22上の第1絶縁膜80と、ドレイン電極24上の第1絶縁膜81と、それらの第1絶縁膜80、81の上とp−GaNの第2層16の上表面上に形成された第2絶縁膜85との2層構造にしたものである。すなわち、第1絶縁膜80、81は、厚さ200nmのSiO2 膜で構成し、第2絶縁膜85は、厚さ100nmのHfO2膜で構成した。すなわち、ソース電極22上とドレイン電極24上の絶縁膜を複数の層で構成する場合において、本実施例では、実施例5とは逆に、ゲート絶縁膜である第2絶縁膜85が上側に、余分に形成する第1絶縁膜80、81を下側にするものである。もちろん、本実施例においても、第1絶縁膜は、ソース電極22とドレイン電極24のうち、ドレイン電極24上のみに形成しても良い。もちろん、この実施例においても、図3のように、ゲート電極28の両端が、ソース電極22とドレイ電極24のそれらの対向するエッジに位置する関係に構成しても良い。また、ゲート電極28は、ソース電極22上、又は、ドレイン電極24上の何れか一方のみを図12に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。特に、ゲート電極をドレイン電極側でオーバーラップさせずに、ドレイン電極24上の絶縁膜を2層構造とすることで、耐圧を向上させることができる。
本実施例は、図8に示す実施例6のMIS−HEMTにおいて、図13に示すように、絶縁膜をソース電極42上の第1絶縁膜80と、ドレイン電極44上の第1絶縁膜81と、それらの第1絶縁膜80、81の上と障壁層36の上表面上に形成された第2絶縁膜85との2層構造にしたものである。すなわち、第1絶縁膜80、81は、厚さ200nmのSiO2 膜で構成し、第2絶縁膜85は、厚さ100nmのHfO2膜で構成した。すなわち、ソース電極42上とドレイン電極44上の絶縁膜を複数の層で構成する場合において、本実施例では、実施例6とは逆に、ゲート絶縁膜である第2絶縁膜85が上側に、余分に形成する第1絶縁膜80、81を下側にするものである。もちろん、本実施例においても、第1絶縁膜は、ソース電極42とドレイン電極44のうち、ドレイン電極44上のみに形成しても良い。もちろん、この実施例においても、図3のように、ゲート電極48の両端が、ソース電極42とドレイ電極44のそれらの対向するエッジに位置する関係に構成しても良い。また、ゲート電極48は、ソース電極42上、又は、ドレイン電極44上の何れか一方のみを図13に示すようにオーバーラップさせて、他方を図3に示すように、ゲート電極の端をソース電極又はドレイン電極のエッジに位置合せするようにしても良い。特に、ゲート電極をドレイン電極側でオーバーラップさせずに、ドレイン電極44上の絶縁膜を耐圧の高い材料を用いた2層構造とすることで、耐圧を向上させることができる。
次に、実施例10のMOSFET、実施例11のMIS−FETのソース電極、ドレイン電極、第1絶縁膜、第2絶縁膜、ゲート電極、ソース領域、ドレイン領域の形成方法について説明する。以下の説明では、実施例11のMIS−FETに関するものである。実施例10のMOSFETでも製造方法は同一である。
最上半導体層の形成までは、通常のようにMOCVD法で形成する。図14(a)に示すように、チャネル層34と障壁層36から成る半導体層70の上に、フォトレジスト膜71を一様な厚さに形成して、露光、エッチングにより、ソース電極とドレイン電極とを形成する領域に窓72を形成する。次に、窓72の半導体層70の露出面上と、残されたフォトレジスト膜71の上に、順次、Ti、Al、Ni、Auを蒸着して、総合厚さ400nmの電極層73を形成した。次に、SiO2膜74を、一様に、200nmの厚さに、スパッタリングにより堆積した。その後、フォトレジスト膜71を半導体層70からリフトオフして、図14(b)に示すように、ソース電極42とその上の第1絶縁膜80、及び、ドレイン電極44とその上の第1絶縁層81を形成した。
次に、850℃で、1分間加熱して、ソース電極42及びドレイン電極44と障壁層36とチャネル層34の一部とを合金化して、ソース領域38とドレイン領域40とを形成した。そのソース領域38とドレイン領域40は、少なくとも、障壁層36とチャネル層34との界面であって、チャネル層34側に形成されるチャネルChに至る深さまで形成した。
その後、障壁層36の表面、ソース電極42上の第1絶縁膜80及びドレイン電極44上の第1絶縁膜81の表面に、レーザアブレーション法により、HfO2から成る絶縁膜85を厚さ100nmに堆積した。次に、フォトレジストの塗布、フォトリソグラフィによりゲート電極48の形成領域だけレジストを除去して、所定のレジストパターンを形成し、Ti/Pt/Auを、総合厚さ400nmになるように、この順に積層した。その後、レジストをリフトオフして、厚さ400nmのゲート電極48を得た。
ソース電極とドレイン電極上の絶縁膜を2層以上の複層に構成する場合には、ゲート絶縁膜以外の絶縁膜を、上記のようにソース電極とドレイン電極との蒸着と同工程で形成して、フォトレジストをリフトオフしている。この結果、その絶縁膜(第1絶縁膜)を形成するためのフォトリフグラフィ、エッチングを必要としないため、製造工程が簡単となる。
次に、別の製造方法について説明する。上記の例では、SiO2膜74を堆積する時に、フォトレジスト膜71が高温に曝されるために、固化する可能性がある。このため、フォトレジスト膜71を半導体層70から溶剤を用いて剥離する場合に、剥離が困難となる可能性がある。そこで、この問題を生じさせないように、次の方法を採用することができる。
図15(a)に示すように、半導体層70上にレジスト膜75を一様な厚さに堆積する。ただし、このレジスト膜75は、感光性であっても良いが、必ずしも、その必要性はない。このレジスト膜75には、硬化温度が高いレジンを用いることが望ましい。次に、このレジスト膜75の上に、一様に、SiO2膜76を500nmの厚さに形成する。次に、フォトレジスト膜77を一様な厚さに形成し、露光、エッチングにより、ソース電極とドレイン電極を形成する領域に窓78を形成する。そして、残されたフォトレジスト膜77をマスクとして、反応性イオンエッチングにより、窓78のSiO2膜76とレジスト膜75とをエッチングして、図15(b)に示すように、障壁層36の表面を露出させる。この時、レジスト膜75は、サイドエッチングされ、上のSiO2膜76の幅よりも狭くなる。
次に、図15(c)に示すように、窓78の障壁層36の露出面上と、残されたフォトレジスト膜77の上に、順次、Ti、Al、Ni、Auを蒸着して、総合厚さ400nmの電極層73を形成した。次に、SiO2膜74を、一様に、200nmの厚さに、スパッタリングにより堆積した。その後、レジスト膜75を障壁層36からリフトオフして、図15(d)に示すように、ソース電極42とその上の第1絶縁膜80、及び、ドレイン電極44とその上の第1絶縁層81を形成した。
次に、850℃で、1分間加熱して、ソース電極42及びドレイン電極44と障壁層36とチャネル層34の一部とを合金化して、図15(d)に示すように、ソース領域38とドレイン領域40とを形成した。そのソース領域38とドレイン領域40は、障壁層36とチャネル層34との界面であって、チャネル層34側に形成されるチャネルChに少なくとも至る深さまで形成した。
その後、障壁層36の表面、ソース電極42上の第1絶縁膜80及びドレイン電極44上の第1絶縁膜81の表面に、レーザアブレーション法により、HfO2から成る絶縁膜85を厚さ100nmに堆積した。次に、フォトレジストの塗布、フォトリソグラフィによりゲート電極48の形成領域だけレジストを除去して、所定のレジストパターンを形成し、Ti/Pt/Auを、総合厚さ400nmになるように、この順に積層した。その後、レジストをリフトオフして、厚さ400nmのゲート電極48を得た。
このような方法によると、図15(b)、(c)に示すように、残されたレジスト膜75の幅は、その直上のSiO2膜74とフォトレジスト膜77の幅よりも狭くなっているので、溶剤の浸透が容易となり、リフトオフを確実に行うことができる。
上記の全実施例において、MIS−HEMTにおいては、障壁層は、AlxIn1−xN(0.7≦x≦0.9)を用いても良い。なお、x=0.83のときはチャネル層のGaNとの格子定数を一致させることができ、さらなる特性改善に有効である。また、チャネル層はGaNに代えて、InyGa1−yN(0<y≦0.2)を用いることも可能である。
また、上記の全実施例において、サファイア基板に代えて、炭化珪素基板、シリコン基板、酸化亜鉛基板、GaN基板などを用いることができる。
本発明は、III族窒化物半導体を用いたノーマリオフ型電界効果トランジスタの特性改善に有効である。
本発明の具体的な実施例1に係るMOSFETの構成を示す断面図。
同実施例に係るMOSFETの測定された動作特性図。
本発明の具体的な実施例2に係るMOSFETの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例3に係るMOSFETの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例4に係るMIS−HEMTの構成を示す断面図。
同実施例に係るMIS−HEMTの測定された動作特性図。
本発明の具体的な実施例5に係るMOSFETの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例6に係るMIS−HEMTの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例7に係るMOSFETの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例8に係るMIS−HEMTの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例9に係るMIS−HEMTの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例10に係るMIS−HEMTの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例11に係るMIS−HEMTの構成を示す断面図。
本発明の具体的な実施例11に係るMIS−HEMTの製造方法を示した工程図。
本発明の具体的な実施例11に係るMIS−HEMTの他の製造方法を示した工程図。
符号の説明
10…サファイア基板
14…第1層
16…第2層
22,42…ソース電極
24,44…ドレイン電極
18,38…ソース領域
20,40…ドレイン電極
26,46…絶縁膜
28,48…ゲート電極
70,71…第2の絶縁膜