JP5092552B2 - 燃料電池用触媒層の製造方法及び燃料電池 - Google Patents
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Description
第1の本発明は、電解質樹脂と担体との質量比Pと、触媒金属の電気化学的表面積(ECSA)との関係を調べ、電気化学的表面積(ECSA)の最大値Xを導出する、最大値導出工程と、最大値導出工程後に、触媒金属が担体に担持された触媒金属担持担体と、電解質樹脂とを、電気化学的表面積(ECSA)が0.8X以上X以下となる質量比Pで混合することにより、第1インク状物質を作製する、第1インク作製工程と、第1インク作製工程によって作製された第1インク状物質と、電解質樹脂とを混合することにより、第2インク状物質を作製する、第2インク作製工程と、第2インク作製工程によって作製された第2インク状物質、を用いて作製した触媒インクを塗布する、塗布工程と、を備えることを特徴とする、燃料電池用触媒層の製造方法である。
これまでに、燃料電池の発電性能を向上させること等を目的とした研究はいくつか行われてきているが、従来の方法により製造した燃料電池用触媒層では、プロトンが生じやすい形態にするとプロトンが伝導され難い形態になり、プロトンが伝導されやすい形態にするとプロトンが生じ難い形態になりやすいという問題があった。それゆえ、プロトンが生じやすく、かつ、プロトンが伝導されやすい形態の燃料電池用触媒層を製造可能な、燃料電池用触媒層の製造方法の開発が望まれている。
図1は、本発明の燃料電池用触媒層の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)の形態例を示すフローチャートである。図2は、質量比Pと触媒金属1g当たりのECSAとの関係を示す概念図である。図3は、CV測定(サイクリックボルタンメトリ(cyclic voltammetry)測定)によって得られる波形の形態例を示す図である。図4は、触媒金属担持担体の凝集体の形態例を示す概念図である。図4(a)は、第1インク作製工程で作製される第1インク状物質の形態例を示す概念図であり、図4(b)は、第2インク作製工程で作製される第2インク状物質の形態例を示す概念図である。
工程S1は、インク状物質に含有される電解質樹脂(Nafion)と担体(C)との質量比Pと、当該インク状物質に含有される触媒金属(Pt)の電気化学的表面積(ECSA)との関係を調べ、ECSAの最大値Xを導出する工程である。質量比PとECSAとの間には、図2で示すような関係が認められる。したがって、複数の質量比Pに対応するECSAを調べ、図2に示すような曲線を作成することにより、ECSAの最大値Xを導出することができる。質量比Pに対応するECSAは、CV測定(サイクリックボルタンメトリ(cyclic voltammetry)測定)によって得られる波形から導出可能な、水素脱離領域の面積(図3にYで示す部位の面積)とすることができる。
ECSAが0.8X以上X以下となる質量比Pの範囲を、P1≦P≦P2とするとき(図2参照)、工程S2は、P1≦P≦P2となる分量比の触媒金属担持担体(Pt/C)及び電解質樹脂(Nafion)を、溶媒(例えば、純水等)の中で混合・分散することにより、第1インク状物質を作製する工程である。工程S2における混合方法の具体例としては、遠心攪拌等を挙げることができ、分散方法の具体例としては、スターラー等を用いた攪拌や超音波ホモジナイザーによる分散等を挙げることができる。なお、攪拌を強力に行うことで分散方法とすることもできる。Pt/CのCとNafionとの質量比Pが、P1≦P≦P2のとき、当該インク状物質のECSAは0.8X以上X以下となるので、工程S2によれば、多くの触媒金属(Pt)と電解質樹脂(Nafion)とが接触した形態の第1インク状物質を作製できる。
本発明の製造方法において、電解質樹脂がNafionであり、担体がCであり、触媒金属がPtである場合、P1=0.5、P2=1.1である。
工程S3は、上記工程S2で作製された第1インク状物質と、電解質樹脂(Nafion)とを、溶媒(例えば、純水等)の中で混合することにより、第2インク状物質を作製する工程である。工程S3における混合方法の具体例としては、遠心攪拌等を挙げることができる。
工程S4は、上記工程S3で作製された第2インク状物質を用いて作製される触媒インクを塗布することにより、燃料電池用触媒層(以下、単に「触媒層」という。)を形成する工程である。ここで、Pt/CとNafionとを純水中で混合・分散することにより作製された第1インク状物質と、Nafionとを、上記工程S3において純水中で混合することにより、第2インク状物質が作製されている場合、当該第2インク状物質をそのまま塗布すると、電解質膜又は拡散層から剥がれやすい形態の触媒層が形成されやすい。これは、上記形態の工程S2及び工程S3を経て作製された第2インク状物質は、純水の表面張力により、塗布される第2インク状物質の粒の大きさが大きくなるためと考えられる。剥がれやすい形態の触媒層が燃料電池に備えられると、触媒層と電解質膜との接触界面における接触抵抗、又は、触媒層と拡散層との接触界面における接触抵抗が増大するため、燃料電池の発電性能が低下する。そこで、上記工程S2において、Pt/CとNafionとを純水中で混合・分散することにより第1インク状物質が作製され、上記工程S3において、第1インク状物質とNafionとを純水中で混合することにより第2インク状物質が作製されている場合には、当該第2インク状物質に、炭素数3以下のアルコール(例えば、エタノール等)を添加して作製した触媒インクを塗布して触媒層を形成することが好ましい。このようにすれば、塗布される触媒インクの粒の大きさが小さくなるので、触媒インクを均一に塗布することが容易になり、電解質膜や拡散層から剥がれ難い形態の触媒層を形成できる。
図5は、本発明の燃料電池の形態例を概略的に示す断面図であり、単セルの一部を拡大して示している。図5の紙面左右方向が、集電体の積層方向である。以下、図5を参照しつつ、本発明の燃料電池について具体的に説明する。なお、以下の説明では、Nafionを含有する電解質膜(Nafion膜)が備えられる形態を例示するが、本発明の燃料電池は当該形態に限定されるものではない。本発明の燃料電池は、ポリオレフィンのような炭化水素を骨格とするポリマーを含有する電解質膜が備えられる形態とすることも可能である。
1.1.実施例1
0.8gの21%Pt/Cと、24gの純水と、5.5gのナフィオン分散溶液(DE1020、和光純薬工業株式会社製)とを遠心攪拌により混合し、さらに、超音波ホモジナイザーで1時間に亘って分散した後、スターラーで12時間に亘って攪拌することにより、第1インク状物質を作製した。第1インク状物質における、NafionとCとの質量比Pは、1.0であった。次に、このようにして作製した第1インク状物質と、2.2gのナフィオン分散溶液(DE1020、和光純薬工業株式会社製)と、6gのエタノールとを遠心攪拌により混合して第2インク状物質を作製した。その後、当該触媒インクを電解質膜(Nafion117)の一方の面へスプレー塗布することにより、実施例1にかかるカソード触媒層を形成した。
一方、1.0gの30%Pt/Cと、3gの純水と、7gのエタノールと、7gのプロピレングリコールと、4gのナフィオン分散溶液(DE2020、和光純薬工業株式会社製)とを、超音波ホモジナイザーで1時間に亘って分散することにより、アノード触媒層用の触媒インクを作製し、当該触媒インクを、テフロン膜(ニトフロンフィルムNo.900UL、日東電工株式会社製)の上へ塗布して触媒層を形成した。そして、この触媒層を、実施例1にかかるカソード触媒層が形成された上記電解質膜の他方の面へ、転写法によって120℃で熱圧着してアノード触媒層を形成することにより、実施例1にかかるMEAを作製した。その後、一対のカーボンペーパーの間に実施例1にかかるMEAを配置し、100℃で熱圧着することにより、実施例1にかかる積層体を作製した。そして、実施例1にかかる積層体の両側に、カーボンセパレータを配設することにより、実施例1にかかる燃料電池を作製した。
0.8gの21%Pt/Cと、24gの純水と、5.5gのナフィオン分散溶液(DE1020、和光純薬工業株式会社製)とを遠心攪拌により混合し、さらに、超音波ホモジナイザーで1時間に亘って分散した後、スターラーで12時間に亘って攪拌することにより、NafionとCとの質量比Pが1.0の第1インク状物質を作製した。そして、この第1インク状物質に6gのエタノールを添加して作製した触媒インクを、電解質膜(Nafion117)の一方の面へスプレー塗布することにより、比較例1にかかるカソード触媒層を形成した。
一方、比較例1にかかるカソード触媒層が形成された上記電解質膜の他方の面へ、上記実施例1にかかるアノード触媒層の形成方法と同様の方法で、アノード触媒層を形成することにより、比較例1にかかるMEAを作製した。その後、一対のカーボンペーパーの間に比較例1にかかるMEAを配置し、100℃で熱圧着することにより、比較例1にかかる積層体を作製した。そして、比較例1にかかる積層体の両側に、カーボンセパレータを配設することにより、比較例1にかかる燃料電池を作製した。
0.8gの21%Pt/Cと、24gの純水と、7.7gのナフィオン分散溶液(DE1020、和光純薬工業株式会社製)とを遠心攪拌により混合し、さらに、超音波ホモジナイザーで1時間に亘って分散した後、スターラーで12時間に亘って攪拌することにより、NafionとCとの質量比Pが1.4の第1インク状物質を作製した。そして、この第1インク状物質に6gのエタノールを添加して作製した触媒インクを、電解質膜(Nafion117)の一方の面へスプレー塗布することにより、比較例2にかかるカソード触媒層を形成した。
一方、比較例2にかかるカソード触媒層が形成された上記電解質膜の他方の面へ、上記実施例1にかかるアノード触媒層の形成方法と同様の方法で、アノード触媒層を形成することにより、比較例2にかかるMEAを作製した。その後、一対のカーボンペーパーの間に比較例2にかかるMEAを配置し、100℃で熱圧着することにより、比較例2にかかる積層体を作製した。そして、比較例2にかかる積層体の両側に、カーボンセパレータを配設することにより、比較例2にかかる燃料電池を作製した。
実施例1にかかる燃料電池、比較例1にかかる燃料電池、及び、比較例2にかかる燃料電池を、それぞれ80℃に維持し、各燃料電池のアノード側に、80℃フル加湿(相対湿度100%。以下同じ。)の水素を、カソード側に80℃フル加湿の空気を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、上記各燃料電池を作動させ、発電性能(IV特性)及びセル抵抗を調べた。電流密度が0.2[A/cm2]の時における、セル電圧[V]の結果を、図6に併せて示す。また、電流密度が0.2[A/cm2]の時における、セル抵抗[mΩ]の結果を、図7に折れ線グラフで示す。
上記発電性能評価を行った後、実施例1にかかる燃料電池に備えられるカソード触媒層、比較例1にかかる燃料電池に備えられるカソード触媒層、及び、比較例2にかかる燃料電池に備えられるカソード触媒層のそれぞれに対してCV測定を行った。そして、水素脱離領域の面積(図3にYで示す部位の面積)を導出することにより、触媒金属(Pt)1g当たりのECSAを調べた。結果を図7に棒グラフで示す。
図7に示すように、実施例1にかかる燃料電池は、電流密度が0.2[A/cm2]の時におけるセル抵抗が最も低かった。ここで、電子伝導とプロトン伝導のうち、より抵抗の大きい方の値が、セル抵抗として検出される。Nafion量のみに差を設けた、比較例1にかかる燃料電池の結果と比較例2にかかる燃料電池の結果を比較すると、プロトンの伝導経路として機能するNafion量の多い比較例2にかかる燃料電池の方が、Nafion量の少ない比較例1にかかる燃料電池よりもセル抵抗が少なかった。それゆえ、比較例1にかかる燃料電池及び比較例2にかかる燃料電池では、プロトン伝導の抵抗が、セル抵抗として検出されたと考えられる。そして、カソード触媒層の製造方法のみを変えた実施例1にかかる燃料電池のセル抵抗と、比較例2にかかる燃料電池のセル抵抗とを比較すると、実施例1にかかる燃料電池の方が、比較例2にかかる燃料電池よりもセル抵抗が低かった。したがって、セル抵抗の比較より、本発明の製造方法によれば、プロトンの伝導性能を向上させ得ることが確認された。
2 担体
3 触媒金属担持担体
4 電解質樹脂
5 細孔
10 凝集体
51 電解質膜
52 アノード
52a アノード触媒層(第1触媒層)
52b アノード拡散層
53 カソード
53a カソード触媒層(第2触媒層)
53b カソード拡散層
54 MEA(膜電極構造体)
55、56 セパレータ(集電体)
57、58 反応ガス流路
100 燃料電池
Claims (3)
- 電解質樹脂と担体との質量比Pと、触媒金属の電気化学的表面積との関係を調べ、前記電気化学的表面積の最大値Xを導出する、最大値導出工程と、
前記最大値導出工程後に、前記触媒金属が前記担体に担持された触媒金属担持担体と、前記電解質樹脂とを、前記電気化学的表面積が0.8X以上X以下となる前記質量比Pとなるように混合することにより、第1インク状物質を作製する、第1インク作製工程と、
前記第1インク作製工程によって作製された前記第1インク状物質と、前記電解質樹脂とを混合することにより、第2インク状物質を作製する、第2インク作製工程と、
前記第2インク作製工程によって作製された前記第2インク状物質、を用いて作製した触媒インクを塗布する、塗布工程と、を備えることを特徴とする、燃料電池用触媒層の製造方法。 - 前記電解質樹脂がフッ素系の電解質樹脂であり、前記担体が炭素材料であり、前記触媒金属がPtであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用触媒層の製造方法。
- 電解質膜と、前記電解質膜の一方の側に配設される第1触媒層と、前記電解質膜の他方の側に配設される第2触媒層とを備える膜電極構造体と、前記膜電極構造体の一方の側及び他方の側にそれぞれ配設される集電体と、を備え、
前記第1触媒層及び/又は前記第2触媒層が、請求項1又は2に記載の燃料電池用触媒層の製造方法によって製造されていることを特徴とする、燃料電池。
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