本発明の第1の目的は、容易に製造することが可能な、端部にレンズ機能を有した光導波路を提供することにある。
本発明の第2の目的は、光伝搬特性を外部から容易に測定することができる光導波路を提供することにある。
本発明の第3の目的は、他の部品と接続する際の位置合わせが容易な光導波路を提供することにある。
本発明の第4の目的は、コア層周辺の上部クラッド層と下部クラッド層の間に形成される残留層の厚みを容易に制御することができる光導波路を提供することにある。
本発明の第1の局面に従う光導波路は、光伝搬領域となるコア層と、該コア層を覆う上部クラッド層及び下部クラッド層とを備え、コア層、上部クラッド層及び下部クラッド層が樹脂系材料から形成されている光導波路であり、コア層の端面近傍に、コア層を形成する材料より屈折率が大きい材料からなるマイクロレンズが配置されていることを特徴としている。
本発明の第1の局面に従えば、コア層内の端面近傍にマイクロレンズを配置し、コア層の形成と共に、マイクロレンズを所定箇所に固定することができる。従って、容易に製造することが可能な、レンズ機能を有した光導波路とすることができる。
第1の局面において、マイクロレンズは、実質的に球形または円柱形の形状を有していることが好ましい。コア層が、下部クラッド層または上部クラッド層に形成された溝内に形成されている場合、マイクロレンズを該溝内の少なくとも2つの内壁面と接触させることにより、マイクロレンズを位置決めすることができる。従って、このようにしてマイクロレンズを位置決めした状態で、コア層を形成し、マイクロレンズを固定することができる。
コア層を形成する溝の形状は、特に限定されるものではないが、矩形状、V字状及び五角形形状などが挙げられる。溝が矩形状である場合、溝の幅をマイクロレンズの直径とほぼ同程度にすることにより、その側壁面及び底面によってマイクロレンズを位置決めすることができる。また、溝が、V字形状や五角形形状のように、その底部が互いに付き合う傾斜面により形成されている場合、この2つの傾斜面と接することにより球形形状または円柱形状を有するマイクロレンズを位置決めすることできる。
第1の局面において用いるマイクロレンズとしては、コア層内に配置することができ、導波光に対し透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、樹脂やガラスから形成されたものを挙げることができる。例えば、粒度分布計やパーティクルカウンターの標準試料として用いられる真球状のポリスチレン粒子などが挙げられる。
本発明の第2の局面に従う光導波路は、光伝搬領域となるコア層と、該コア層を覆う上部クラッド層及び下部クラッド層とを備え、コア層、上部クラッド層及び下部クラッド層が樹脂系材料から形成されている光導波路であり、コア層の一部に、気泡または粒子を含有させた光散乱領域を形成し、該光散乱領域によってコア層内の導波光を散乱させ、その一部を光導波路の外部に取り出すことができるように構成されていることを特徴としている。
第2の局面に従えば、コア層内の導波光を光散乱領域により散乱させ、その一部を光導波路の外側に取り出すことができるので、これをフォトダイオードなどの光検出器によりモニターすることができる。従って、光導波路内の光伝搬特性を外部から容易に測定することができる。
第2の局面における気泡または粒子の直径は、効率的に導波光を散乱させるためには、導波光の波長以上であることが好ましい。
コア層内に含有される気泡は、気泡を含有したコア層形成材料をコア層の溝内に注入することにより形成することができる。気泡を含有したコア層形成材料は、コア層形成材料の領域中に、多孔質のフィルタを通して窒素ガスなどをバブリングさせることにより作製することができる。
光散乱領域に含有させる粒子としては、光を散乱させることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス粒子、樹脂粒子、金属粒子などが挙げられる。粒子の直径は、上述のように、導波光の波長以上であることが好ましく、例えば、シングルモード導波路の場合2〜4μmの範囲内が好ましく、マルチモード導波路の場合2〜10μmの範囲内が好ましい。
また、上記気泡の直径もこのような範囲内であることが好ましい。
本発明の第3の局面に従う光導波路は、光伝搬領域となるコア層と、該コア層を覆う上部クラッド層及び下部クラッド層とを備え、コア層、上部クラッド層及び下部クラッド層が樹脂系材料から形成されている光導波路であり、上部クラッド層及び/または下部クラッド層の一部に気泡または粒子を含有させた光散乱領域が形成されていることを特徴としている。
第3の局面においては、上部クラッド層及び/または下部クラッド層の一部に、光散乱領域が形成されている。上部クラッド層または下部クラッド層に光散乱領域を形成することにより、コア層内を伝搬する導波光の一部を外部に取り出すことができる。従って、これを検出することにより、第2の局面と同様に光導波路内の光伝搬特性を外部から容易に測定することができる。
また、上部クラッド層または下部クラッド層に光散乱領域を形成することにより、外部からこの光散乱領域を容易に認識することができるようになる。この光散乱領域をコア層の端部が認識し易い位置に形成しておくことにより、光導波路を他の部品と接続する際にコア層の位置合わせが容易になる。
第3の局面において光散乱領域に含有させる気泡は、気泡を含有したクラッド層形成用材料を光散乱領域を形成する所定箇所に注入することにより形成することができる。気泡を含有したクラッド層形成用材料は、第2の局面における気泡を含有したコア層形成用材料と同様にして作製することができる。
また、第3の局面における粒子は、第2の局面における粒子と同様のものを用いることができる。
クラッド層形成用材料中の気泡を所定箇所に凝集させる方法としては、例えば、上部クラッド層または下部クラッド層を硬化させる際、突起部を有する型でクラッド層を覆うことにより、突起部の周囲に気泡を凝集させる方法が挙げられる。
本発明の第4の局面に従う光導波路は、光伝搬領域となるコア層と、該コア層を覆う上部クラッド層及び下部クラッド層とを備え、コア層、上部クラッド層及び下部クラッド層が樹脂系材料から形成されている光導波路であり、コア層周辺の上部クラッド層と下部クラッド層の間にスペーサが配置されていることを特徴としている。
第4の局面に従い、コア層周辺の上部クラッド層と下部クラッド層の間にスペーサを配置することにより、コア層周辺の上部クラッド層と下部クラッド層の間に形成される残留層の厚みを容易に制御することができる。すなわち、スペーサの寸法及びスペーサの配置箇所を調整することにより、該残留層の厚みを容易に制御することができる。
第4の局面において、コア層を挟む両側の領域において、一方側の領域にのみスペーサを配置してもよい。特に、光導波路の曲線部においては、曲線部の外側に導波光が漏れ易いので、これを抑制するため、曲線部の内側の領域にのみスペーサを配置し、曲線部の外側の残留層の厚みを相対的に薄くし、曲線部の内側の残留層の厚みを相対的に厚くすることにより、曲線部外側への導波光の漏洩を抑制することができる。
第4の局面において用いるスペーサとしては、例えば、液晶ディスプレイにおいて対向する基板の間に挿入されるスペーサを用いることができる。このようなスペーサとしてはプラスチックスペーサ、ガラススペーサなどが知られており、その形状としては、粒状スペーサ、棒状スペーサなどが知られている。また、サイズの小さなスペーサを用いる場合には、第1の局面においてマイクロレンズとして例示した標準試料を用いることができる。
本発明の第1〜第4の局面において、コア層、上部クラッド層及び下部クラッド層は、樹脂系材料から形成されている。樹脂系材料としては有機無機複合体を用いることが好ましい。有機無機複合体を用いることにより、光伝搬特性に優れ、かつ耐熱性、耐薬品性及び機械的強度等に優れた光導波路とすることができる。
有機無機複合体は、例えば、有機重合体と金属アルコキシドから形成することができる。また、有機無機複合体は、少なくとも1種の金属アルコキシドから形成されてもよい。この場合、少なくとも2種の金属アルコキシドから形成されることが好ましい。
上記有機無機複合体においては、有機重合体と金属アルコキシドの組み合わせまたは少なくとも2種の金属アルコキシドの組み合わせを適宜調整することにより、最終的に形成される有機無機複合体の屈折率を調整することができる。
金属アルコキシドとしては、光(紫外線)または熱により重合する重合性基を有する金属アルコキシドを用いてもよい。この場合、光または熱により重合する重合性基を有する金属アルコキシドと、該重合性基を有しない金属アルコキシドを組み合わせて用いることが好ましい。上記重合性基としては、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ビニル基、及びスチリル基などが挙げられる。紫外線照射により硬化するクラッド層またはコア層が金属アルコキシドを含む有機無機複合体から形成される場合には、金属アルコキシドとして、光(紫外線)により重合する重合性基を有する金属アルコキシドが含まれていることが好ましい。
重合性基を有する金属アルコキシドを用いる場合には、光または熱により金属アルコキシドの重合性基が重合されていることが好ましい。
金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Zr、Al、Sn、Zn、Nbなどのアルコキシドが挙げられる。特に、Si、Ti、またはZrのアルコキシドが好ましく用いられる。従って、アルコキシシラン、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ニオブアルコキシドが好ましく用いられ、特にアルコキシシランが好ましく用いられる。
アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、フェニルトリメトキシシラン(PhTMS)、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
上記重合性基を有するアルコキシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(MPTES)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
チタンアルコキシドとしては、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド等が挙げられる。ジルコニウムアルコキシドとしては、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
ニオブアルコキシドとしては、ペンタエトキシニオブ等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、上述のものを用いることができるが、一般には、式M(OR)n、R′M(OR)n-1、及びR′2M(OR)n-2(ここで、Mは金属、nは2、3、4、または5、R及びR′は有機基を示す)で表わされる金属アルコキシドを用いることができる。有機基としては、アルキル基、アリール基、上記の重合性基を有する有機基などが挙げられる。Mとしては、上述のように、Si、Ti、Zr、Al、Sn、Zn、Nb等が挙げられる。なお、アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
有機無機複合体を有機重合体と金属アルコキシドから形成する場合における、有機重合体は、金属アルコキシドと有機無機複合体を形成し得るものであれば特に限定されるものではない。有機重合体としては、例えば、カルボニル基を有する高分子重合体、ベンゼン環を有する高分子重合体、及びナフタレン環を有する高分子重合体を挙げることができる。
有機重合体の具体例としては、例えばポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。光学的透明性に優れた有機無機複合体を形成する観点からは、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、エポキシ樹脂、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。
有機無機複合体を光(紫外線)の照射により硬化させる場合、有機無機複合体に光重合開始剤が含有されていることが好ましい。光重合開始剤を含有することにより、僅かな光(紫外線)の照射量で硬化させることができる。
光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、トリクロロメチルトリアジン、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、イミドスルホネートなどが挙げられる。
本発明におけるコア層、上部クラッド層及び下部クラッド層は、UV硬化樹脂により形成してもよい。このようなUV硬化樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ系UV硬化樹脂、アクリル系UV硬化樹脂、エポキシアクリレート系UV硬化樹脂、ポリウレタン系等のUV硬化樹脂を挙げることができる。
本発明の第1の局面によれば、容易に製造することが可能な、端部にレンズ機能を有した光導波路とすることができる。
本発明の第2の局面によれば、光伝搬特性を外部から容易に測定することができる光導波路とすることができる。
本発明の第3の局面によれば、光伝搬特性を外部から容易に測定することができる共に、他の部品と接続する際の位置合わせが容易な光導波路とすることができる。
本発明の第4の局面によれば、コア層周辺の上部クラッド層と下部クラッド層の間に形成される残留層の厚みを容易に制御することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
図1は、本発明の第1の局面に従う一参考例の光導波路の製造工程を示す断面図である。本参考例の光導波路は、図1(e)に示す構造を有している。すなわち、基板1の上には下部クラッド層2が設けられており、下部クラッド層2の上面中央部には光導波路の長手方向に沿って延びるコア層3が設けられている。コア層3は、下部クラッド層2の溝2a内に設けられている。溝2aは、矩形形状の断面を有している。コア層3及び下部クラッド層2の上には、上部クラッド層4が設けられている。下部クラッド層2及び上部クラッド層4は、コア層3よりも低い屈折率を有する材料から形成されている。コア層3は、上部クラッド層4及び下部クラッド層2よりその周囲を覆われることにより、その内部において光を伝搬させることができる。
図1(e)は、光導波路の端面近傍の断面を示しており、光導波路のコア層3の端面近傍には、マイクロレンズ5が配置されている。本参考例において、マイクロレンズ5は、実質的に球形の形状を有している。本参考例において、マイクロレンズ5は、球状のポリスチレン粒子から形成されている。
以下、図1(e)に示す光導波路の製造工程を、図1(a)〜(d)を参照して説明する。本参考例及び以下の参考例、実施例において、コア層、下部クラッド層及び上部クラッド層は、アルコキシシランから形成される有機無機複合体を用いて形成している。コア層形成用溶液及びクラッド層形成用溶液を以下のようにして調製した。
〔コア層形成用溶液の調製〕
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン5.5ml、フェニルトリエトキシシラン5.5ml、塩酸(2N)1.65ml、及びエタノール20.5mlを混合した後、24時間放置することにより、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランを加水分解し、重縮合させる。得られた重縮合物4mlに重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン10mlを加えた後、100℃に加熱することにより、エタノールを蒸発除去し、粘性液体を得る。粘性液体1gに、トリエチルエトキシシラン3ml及び無水トリフルオロ酢酸0.8mlを混合し、24時間放置した後、100℃に加熱乾燥することにより、過剰のトリエチルエトキシシラン及び無水トリフルオロ酢酸を蒸発除去し、コア層形成用溶液を得る。
このコア層形成用溶液で形成した有機無機複合体の屈折率は、1.519である。
〔クラッド層形成用溶液の調製〕
上記のコア層形成用溶液の調製において、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを5.5mlとし、フェニルトリエトキシシランを4.5mlとする以外は、上記と同様にしてクラッド層形成用溶液を調製する。この溶液から形成した有機無機複合体の屈折率は、1.515である。この溶液を用いて、上部クラッド層及び下部クラッド層を形成する。
〔光導波路の作製〕
図1(a)に示すように、ガラス基板1の上に、下部クラッド形成用溶液2を滴下し、次に図1(b)に示すように、凸部6aを有する型6を、下部クラッド形成用溶液2の層に押し当て、この状態で紫外線を基板1側から照射することにより、溶液を硬化させ、凸部6aに対応した溝2aを有する下部クラッド層2を形成する。凸部6aの幅及び高さは、8〜9μmである。従って、下部クラッド層2に形成された溝2aの幅及び深さは8〜9μmである。型6は、樹脂または金属から形成されている。下部クラッド層2の厚みは約50μmである。
次に、下部クラッド層2の溝2aの端面近傍以外の領域に、コア層形成用溶液を滴下する。端面近傍の溝2aには、マイクロレンズを含有したコア層形成用溶液をマイクロピペットで吸い上げ、顕微鏡で観察しながら、溝2aの端面近傍にマイクロレンズ粒子が位置するようにマイクロピペットからマイクロレンズ粒子と共に溶液を滴下する。マイクロレンズとしては、標準粒子(JSR社製「DYNOSPHERES SS−072−P」、球状ポリスチレン粒子、平均粒径7〜8μm、屈折率1.586)を用いた。
図1(c)は、上述のようにしてマイクロレンズ5を端面近傍に配置した状態を示す図である。次に、図1(d)に示すように、平板7を下部クラッド層2の上に押し当て、荷重をかけながら、ガラス基板1側から紫外線(365nm)を照射し、コア層形成用溶液を硬化させて、コア層3を形成した。
次に、平板7を除去した後、上部クラッド形成用溶液を滴下し、その上に平板を載せ、数分間荷重をかけて溶液が全体に行き渡るようにし、その後ガラス基板1側から紫外線(365nm)を照射し、上部クラッド層形成用樹脂を硬化させ、上部クラッド層4を形成する。上部クラッド層4の厚みは約50μmである。
複数本の光導波路を1本にして同時に製造する場合には、上部クラッド層形成後、ダイシングによって光導波路を所定のサイズにカットして各光導波路を分離する。
図2は、本参考例における下部クラッド層2及び溝2aの端面近傍に配置されたマイクロレンズ5を示す斜視図である。図2に示すように、本参考例においては、光導波路の端面10の近傍にマイクロレンズ5が配置される。
図3は、本参考例の光導波路の端面近傍を示す側方断面図である。図3に示すように、下部クラッド層2と上部クラッド層4の間に位置するコア層3の端面10近傍にマイクロレンズ5が配置されている。このようにマイクロレンズ5を端面近傍に配置することにより、光導波路3内を伝搬する導波光8を、端面近傍において集束し、集束光9とすることができる。
マイクロレンズ5は、端面10近傍のコア層3内に配置されるが、好ましくは、マイクロレンズ5の先端部が、端面10からマイクロレンズ5の半径に相当する距離離れた領域内に配置される。すなわち、マイクロレンズ5が光導波路の内側に配置される場合、マイクレンズ5の端面10側の先端部が、端面10からマイクロレンズ5の半径に相当する距離離れた位置から端面10までの領域に位置するように配置されることが好ましい。また、マイクロレンズ5が端面10から突き出て外側に配置される場合、マイクロレンズ5の先端部が端面10からマイクロレンズ5の半径に相当する距離離れた領域内までの範囲に位置するように配置されることが好ましい。
図4は、従来のマイクロレンズの配置状態を示す側方断面図である。従来においては、図4に示すように、マイクロレンズ40を光導波路の外部に設ける必要があり、マイクロレンズ40を固定する手段が必要であった。また、マイクロレンズとコアの位置合わせにμmオーダーの精度が必要であった。これに対し、本発明の第1の局面に従えば、マイクロレンズをコア層内に配置することができるので、コア層の形成と共に、マイクロレンズをコア層内に固定し一体化することができる。また、マイクロレンズとコアとの位置調整(光軸合わせ)を不要にすることができる。
上記参考例においては、マイクロレンズとして球形形状のものを示したが、第1の局面においてはこのような形状に限定されるものではない。例えば、図27に示すように、非球面レンズ14を用いてもよい。また、レンズ面が円筒状であるようなレンズやロットレンズなどの円柱状のレンズ、さらには四角柱形状のレンズであってもよい。
また、図28に示すように、横方向に対して縦方向に長く延びたような、断面が楕円形状の球状レンズ15を用いてもよい。この場合、クラッド層2の溝2aの幅及び深さは、幅方向よりも深さ方向に長いものとなる。
また、図29に示すように、断面が楕円形状の円柱状レンズ16を用いてもよい。この場合も図28と同様に、溝2aは深さ方向が幅方向よりも長い溝となる。
図5は、本発明の第2の局面に従う一参考例の光導波路を示す平面方向の断面図である。本参考例においては、コア層3内に、気泡20が形成されている。コア層3内に気泡20を形成することにより、光散乱領域が形成されている。光導波路の端面10から入射した導波光11は、この光散乱領域の粒子により散乱され、その一部が光導波路の外部に取り出される。
図6は、光散乱領域が形成されている領域の光導波路の外側に光検出器12を設置した状態を示す平面方向の断面図である。光散乱領域が形成される領域の光導波路の外側に光検出器12を設けることにより、光散乱領域によって散乱された導波光の一部を検出することができる。従って、本発明の第2の局面によれば、コア層を伝搬する導波光の光強度等を簡易に測定することができる。
本参考例では、光散乱領域の長さを1mmとしており、気泡のサイズを2〜3μmとしている。また、気泡の量は長さ1mm中において20〜30個程度である。
上記参考例では、コア層中に気泡を形成しているが、気泡に代えて粒子を含有させてもよい。このような粒子としては、金属粒子、ガラス粒子、樹脂粒子などが挙げられる。
図7及び図8は、本発明の第2の局面に従う光導波路の製造工程を示す断面図である。
図7(a)及び(b)に示すように、基板1の上に、コア層形成のための溝2aを有する下部クラッド層2を形成し、下部クラッド層2の上にコア層形成用溶液3を滴下して、層を形成する。
次に、図8(c)に示すように、気泡を含有したコア層形成用溶液をマイクロピペットに吸い上げ、顕微鏡で観察しながら、光散乱領域を形成する部分の溝2a内に、この溶液を注入する。気泡を含有したコア層形成用溶液は、コア層形成用溶液に、多孔質(孔径1〜2μm)のフィルタを通して窒素ガスをバブリングすることにより作製する。コア層形成用溶液は粘度の高い溶液であるので、溝2a内に注入された気泡は溝2a内に留まる。なお、溝2aの幅及び深さは6〜7μmである。なお、上述のように、気泡を注入して形成する光散乱領域は長さ1mmであり、気泡のサイズは2〜3μm、気泡の量は長さ1mm中に20〜30個程度である。
次に、図8(d)に示すように、溶液3の上に平板7を載せ、荷重13をかけて、溝2a内以外の溶液を押し出す。この状態で、紫外線(365nm)を基板1側から照射し、コア層形成用溶液を硬化させて、コア層3を形成する。図8(d)に示すように、光散乱領域の部分にのみ気泡20が含有された状態となる。
次に、図8(e)に示すように平板7を取り外した後、上部クラッド層形成用溶液を滴下し、これに紫外線を照射して硬化させ、上部クラッド層を形成する。
図9は、本発明の第3の局面に従う一参考例の光導波路を示す平面方向の断面図である。図9に示す参考例においては、下部クラッド層2の一部の領域に気泡20を含有させ、光散乱領域21が形成されている。光散乱領域21においては、多数の気泡20が樹脂中に形成された状態となっている。コア層3を伝搬する導波光11の一部は、コア層3から漏れ出て、光散乱領域20によって散乱され、その一部が光導波路の外部に取り出される。図9に示す参考例においては、コア層3が曲線部を有しており、この曲線部の外側に光散乱領域21を形成している。従って、曲線部から漏れた光を光散乱領域21によって散乱させ、外部に設けたフォトダイオードなどのセンサーで検出することができるので、曲線部における損失を測定することができる。
図10は、本発明の第3の局面に従う他の参考例の光導波路を示す平面方向の断面図である。本参考例では、光導波路の端面10の近傍に気泡20を含有した光散乱領域21が形成されている。光導波路の端面10に、光ファイバー30の端面30aが接続されており、光ファイバー30から導波光11が光導波路に伝搬される。本参考例では、光ファイバー30との結合損失により発生した放射光を光散乱領域21で散乱し、光導波路の外側に設けたフォトダイオードなどのセンサーでこれを検出して、結合損失を評価することができる。
図11に示すように、コア層3の両側に光散乱領域21を形成し、それぞれの光散乱領域21から放出された光を検出する光検出器12を設けておくことにより、例えば、2個の光検出器12の信号強度が等しくなるように調整して、光ファイバー接続の際の位置合わせを行うことが可能になる。
図10及び図11において、光散乱領域21は、例えば端面10から100μm内側で、コア層3から20μm程度離れた位置に形成することができる。光散乱領域のサイズは、例えば、一辺数mm程度の領域とすることができる。また、気泡の直径2〜3μm程度、気泡の量は1mm3中に20〜30個程度である。
図12及び図13は、本発明の第3の局面に従う一参考例の光導波路の製造工程を示す断面図である。
図12(a)及び(b)に示すように、基板1の上にクラッド層形成用溶液2を滴下して溶液層を形成し、この上に凸部6aを有する型6を押し当てた状態で基板1側から紫外線を照射して硬化させ、コア層形成のための溝2aを有するクラッド層2を形成する。
次に、図12(c)に示すように、コア層形成用溶液3を滴下し、この上に平板7を載せて、紫外線を基板1側から照射して溝2a内の溶液を硬化させ、コア層3を形成する。
次に、図13(e)に示すように、平板7を取り外し、光散乱領域を形成する部分の下部クラッド層をドライエッチングにより除去し、エッチング部分2bを、コア層3の両側に形成する。ドライエッチングは、エッチングしない領域の上に、リフトオフによりNiマスク(厚み500nm)を形成した後、エッチングの深さが5〜10μmとなるように行う。ドライエッチングの条件は、CF4ガス流量:10sccm、真空度:25mTo
rr、RFパワー:200W、RIEモードとした。エッチング後、Niマスクを希塩酸により除去し、図13(e)に示すような状態とした。
次に、図13(f)に示すように、上記と同様にして作製した気泡を含有したクラッド層形成用溶液を下部クラッド層2及びエッチング部2bの上に滴下する。エッチング部2b以外の領域の上に載った溶液をヘラで除去した後、図13(g)に示すように、平板7を載せ、荷重13をかけながら、紫外線を基板1側から照射し、溶液を硬化させ、光散乱領域21を形成する。
次に、平板7を取り外し、図13(h)に示すように、上部クラッド層4を形成する。
図14は、本発明の第3の局面に従うさらに他の参考例の光導波路を示す断面図である。本参考例においては、上部クラッド層4に気泡20を含有する光散乱領域21が形成されている。上部クラッド層形成用溶液を滴下した後、上記と同様にして作製した気泡を含有したクラッド層形成用溶液をマイクロピペットで凸部31aが位置する周辺部分に滴下し、この部分に気泡を含有させる。次に、凸部31aを有する型31を、上部クラッド層形成用溶液4の層の上に載せ、荷重をかけることにより、凸部31aの近傍に気泡20を凝集させる。この状態で紫外線を照射し、溶液を硬化させることにより、上部クラッド層の上面近傍に気泡20が凝集した光散乱領域21を形成することができる。硬化後、型31を取り外す。型31の凸部31aの形状は、例えば、幅及び奥行きが20〜50μm程度で、高さは20μm程度である。型31は、例えば樹脂または金属などから形成することができる。
図15は、図14に示す方法で上部クラッド層4の上方に光散乱領域21を形成した光導波路である。図15に示すように、コア層3の端面近傍の両側に光散乱領域21を形成することにより、導波路におけるコア層の端面の位置の目印となる。従って、光ファイバーなどとコア層とを接続する際、光散乱領域21を位置合わせの目印として用いることができる。
図16は、本発明の第3の局面に従うさらに他の参考例の光導波路を示す平面図である。本参考例においては、コア層3の領域以外の部分に多数の気泡20を含有させ、コア層3の近傍以外の領域が光散乱領域によって認識しやすくさせている。光導波路内におけるコア層3の位置が容易に認識できるようになるので、光ファイバーを接続するなどの組み立て作業が容易になる。
図17は、本発明の第3の局面に従うさらに他の参考例の光導波路を示す平面図である。本参考例では、コア層3以外の領域において、気泡20を集中的に形成し、光散乱領域21をコア層3以外の限定した領域に形成している。気泡20を凝集させているので、気泡の密度が高くなっており、図16に示す参考例に比べ、より認識しやすくなる。
図18及び図19は、本発明の第3の局面に従う参考例の光導波路を製造する工程を示す断面図である。
図18(a)〜(d)に示す工程は、図12(a)〜(d)に示す工程と同様であり、基板1の上に下部クラッド層2を形成し、下部クラッド層2の溝2a内にコア層3を形成する。
次に、図19(e)に示すように、光散乱領域の形成される部分において、ドライエッチングにより下部クラッド層2の両側をドライエッチングし、エッチング部分2cを形成する。ここでは、基板1が露出するまでドライエッチングを行っている。
次に、図19(f)に示すように、気泡20を含有したクラッド層形成用溶液をマイクロピペットで滴下し、図19(g)に示すように、平板7を載せこの状態で、紫外線を基板1側から照射して溶液を硬化させ、気泡20を含有した光散乱領域21を形成する。
次に、図19(h)に示すように、下部クラッド層2、コア層3及び光散乱領域21の上に上部クラッド層4を形成する。
図20は、本発明の第4の局面に従う実施例の光導波路を示す断面図である。
図20に示すように、コア層3周辺の上部クラッド層4と下部クラッド層2との間にスペーサ25が配置されている。スペーサ25を配置することにより、上部クラッド層4と下部クラッド層2の間に形成される残留層26の厚みが制御されている。
本発明の第4の局面において用いるスペーサとしては、上述の液晶ディスプレイ用のスペーサや、本発明の第1の局面において用いる標準粒子などを用いることができる。本実施例では、微小シリカ粒子(宇部日東化成社製、商品名「ハイプレシカ」、平均粒子径0.2μm、屈折率1.35〜1.45)を用いている。スペーサ25としては、屈折率の小さいスペーサが好ましい。屈折率の小さいスペーサを用いることにより、残留層26からの光の漏れを少なくすることができる。本実施例において、コア層3の屈折率は1.519であり、上部クラッド層4及び下部クラッド層2の屈折率は1.515である。従って、スペーサ25の屈折率は、コア層3、上部クラッド層4及び下部クラッド層2の屈折率よりも小さい。
本発明の第4の局面において、スペーサ25は、コア層3から10μm程度以上離れた領域に設けられることが好ましい。これは、コア層における光伝搬特性に影響を与えないようにするためである。
また、本発明の第4の局面に従えば、上述のようにスペーサ25を配置することにより残留層26の厚みを制御することができる。また、残留層26の厚みはスペーサ25により決定されるため、導波路基板内の残留層の厚みの均一性が向上するとともに、残留層の厚みの再現性が向上する。シングルモード導波路の場合、コア層3の幅及び深さは、5〜8μm程度であるので、残留層26の厚みは、コア層3の近傍において1.0μm以下となるように制御されていることが好ましい。また、マルチモード導波路の場合は、コア層3の幅及び深さが50μm程度であるので、コア層3の近傍において残留層26の厚みは10μm以下に制御されていることが好ましい。
図21は、本発明の第4の局面に従うさらに他の実施例を示す平面図である。本実施例では、図21に示すように、コア層3の曲線部の内側にのみスペーサ25が配置されている。図22は、スペーサが配置されている領域の縦方向の断面図である。図22に示すように、コア層3を挟む両側の領域において、一方の領域のみにスペーサ25が配置されている。このため、スペーサ25が配置されている側の残留層26の厚みが厚くなっており、反対側の残留層26の厚みが薄くなっている。
図23(a)に示すように、コア層3が直線状である場合、コア層3の両側における実効屈折率Neffは同等である。図23(b)に示すように、コア層3が曲線状である場合
、曲線部内側の実効屈折率Neffは低くなるが、曲線部外側の実効屈折率Neffは高くなる。このため、曲線部外側において導波光の漏れが生じ、光の損失が発生する。
本実施例においては、曲線部の内側にのみスペーサを配置し、曲線部内側の残留層26の厚みを厚くし、曲線部外側の残留層26の厚みを薄くしている。すなわち、残留層26の厚みを曲線部の内側から外側に薄くなるようにグレーデッドに変化させている。このため、図22に示すように、曲線部外側における実効屈折率Neffを低くすることができる
。従って、従来、曲線部外側において発生していた光の損失を低減することができる。
図21及び図22に示す実施例のように、コア層両側において一方側にのみスペーサを配置して残留層の厚みを一方側から他方側に薄くなるように制御する場合、スペーサはコア層から50μm程度離れた位置に配置することが好ましい。また、この場合において用いるスペーサは比較的大きなものでもよく、従って液晶ディスプレイに用いられるスペーサでも十分に使用することができる。例えば、粒子径5〜10μmのシリカ製スペーサなどを用いることができる。
また、コア層の両側にスペーサを設置し、コア層の一方側と他方側とでスペーサの粒径を変えることにより、残留層の厚みをグレーデッドに制御してもよい。
図24は、本発明の第4の局面に従うさらに他の実施例の光導波路を示す平面図である。光導波路41の一方側の端面10aには、光導波路42が結合されている。また、光導波路41の他方側の端面10bには、光導波路43が結合されている。光導波路41のコア層3の幅及び深さは8μmであり、光導波路42のコア層33の幅及び深さは8μmである。一方、光導波路43のコア層32の幅及び深さは9μmであり、コア層3よりも大きくなっている。
光導波路41においては、光導波路43と結合する端面10b近傍のコア層3の両側の領域にスペーサ25を配置している。このため、端面10b近傍において残留層の厚みが厚くなっている。一方、光導波路42と結合する端面10aの近傍にはスペーサを配置していない。端面10bの近傍領域にスペーサ25を配置することにより、残留層の厚みを厚くすることができるので、端面10bから出射される光の領域を広げることができ、コア層3より広いコア層32との結合性を良好にすることができる。
図24に示す実施例において、スペーサ25は、コア層3から50μm程度離れた領域に配置することが好ましく、スペーサ25としては、粒子径5〜10μmのものを用いることが好ましい。
図25及び図26は、図20に示す実施例の光導波路を製造する工程を示す断面図である。
図25(a)に示すように、下部クラッド層形成用溶液2を基板上に滴下した後、この上に凸部6aを有する型6を載せて荷重13をかけ、この状態で紫外線を基板1側から照射する。凸6aの幅及び高さは6〜7μmである。図25(b)に示すように、コア層形成のための溝2aを有した下部クラッド層2を形成し、図25(c)に示すように、下部クラッド層2の上にコア層形成用溶液3を滴下する。
不要なコア層形成用溶液3をヘラなどで除去した後、図25(d)に示すように、コア層3の上方をメタルマスク34で覆う。メタルマスク34は、コア層3の両側それぞれ10μm程度の領域にスペーサが付着しないよう覆うためのカバーである。従って、メタルマスク34は、25〜30μm程度の幅を有している。次に、メタルマスク34の上方から、スペーサ25を振りかけるようにして落下させ、メタルマスク34で覆われていない下部クラッド層2の領域の上にスペーサ25を付着させる。
次に、図26(e)に示すように、平板7をスペーサ25の上に載せ、荷重13をかけながら、基板1側から紫外線を照射し、コア層3及びスペーサ25が配置されている残留層の部分を硬化させる。
次に、平板7を取り除き、図26(f)に示すように、コア層3及び残留層26の上に、上部クラッド層4を形成する。
図21、図22及び図24に示す実施例においても、それぞれの実施例において所定の位置だけにスペーサを配置するためのメタルマスクを用い、上記と同様の製造工程で製造することができる。