JP5044310B2 - 低温液化ガス貯蔵タンク - Google Patents
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Description
i) タンクがかなり重いものになりがちである。内部に貯蔵する低温液化ガスは一般に比重が小さい(たとえば液体水素の比重は0.07)ので、液化ガスが内部にフルに貯蔵された状態でも全重量の半分以上がタンク自体の重さとなるなど、重量効率としてみる場合にはとくに好ましくない。ここに重量効率とは、タンク重量に対する内容物重量の割合である。
ii) タンクの形状は円筒形にすることが多いが、金属で殻を形成する場合にはそれ以外の任意の形に形成するのが容易でない。特定の型を用いて成形することが、プラスチック材料等に比べて難しいからである。
iii) 内槽等の熱容量が大きいので、常温のタンク内に新たに低温液化ガスを注入したとき、かなりの液化ガスが蒸発する。
iv) 注入が終わった後にも、タンク内において液化ガスの蒸発が続きやすい。内槽のうち液面より高い位置にある上部の温度は、液と接触している下部の温度よりも高いが、金属は熱伝導率が高いために上部の熱量を下部に伝えやすいため、タンクの下部まで温度上昇して液化ガスの蒸発をうながすのである。
発明者らはその点を考慮して、繊維強化プラスチック材に、ガスの透過を防ぐバリア材を併せて使用することとしたのである。バリア材としては、後述するアルミ箔やステンレス箔等を採用することができる。このような皮膜とともに繊維強化プラスチック材を使用することにより、十分な機械的強度とガスの透過防止性能とを備えた内槽または外槽を形成することができ、もって、低温液化ガス貯蔵タンクに十分な強度と真空層保持機能をもたせることができる。
繊維強化プラスチック材は金属に比べて比重が小さい(またバリア材は薄いもので足りる)ため、こうした低温液化ガス貯蔵タンクは軽量に構成することができる。容易に製作される型を用いた成形法によって、タンクを円筒形以外の任意の形に形成することも難しくない。そのほか、タンクの熱容量が小さくなるので、常温のタンク内に新たに低温液化ガスを注入したときも液化ガスの蒸発が少ない。また、金属に比べて繊維強化プラスチック材は熱伝導率が小さいので、上部の熱量を下部に伝えにくく、そのことによっても液化ガスの蒸発が生じにくい。
なお、以上の点から、バリア材を有する繊維強化プラスチック材によって内槽・外槽の双方を形成するのが最も好ましいが、一方のみをそのような材料で形成し他方は従来と同様に金属にて形成する場合にも、相当のメリットがもたらされる。
繊維強化プラスチック材は自身の内部に有機系ガスを内在させており、時間の経過とともにそれが外部に放出されてしまう。そのような放出ガスも、真空層内に入るとその真空度を低下させ、断熱性能を損なわせてしまう。しかし、繊維強化プラスチック材にて内槽を形成した場合にその内槽の外側面にバリア材を設け、または、繊維強化プラスチック材にて外槽を形成してその外槽の内側面にバリア材を設けるなら、当該バリア材の作用により、上記のように放出ガスが真空層に進入することをも防止できる。
また、プラスチック材は輻射率が高くて輻射による熱の移動を生じやすいが、輻射率の低い金属類でバリア材を形成し上記のような箇所(内槽の外側面または外槽の内側面)に同バリア材を設けるなら、それがいわば輻射シールド板として機能し、低温液化ガス貯蔵タンクにおける断熱効果を高めることになる。
アルミ箔は、比較的容易に入手できて、透過ガスや放出ガスが真空層内に入るのを効果的に防止する。また、輻射率が低いので輻射シールド板としての機能にすぐれるほか、導電性があるのでタンクが静電気に帯電することを防止する作用をももたらす。一方、エポキシ樹脂をベースとするガラス繊維強化プラスチックまたは炭素繊維強化プラスチックは、極低温における性能に優れていて機械的強度も高いほか、成形容易であって任意の形に成形しやすい点で有利である。
上述のようにアルミ箔はガスの透過を防ぐ機能を有するが、ピンホールの発生がゼロではないため、厚さが15μm以下だとガスの透過を十分には防止できない。発明者らの調査では、使用温度にもよるが、厚さを25〜35μmの範囲またはそれ以上にするとガスの透過をほぼ完全に防止できる。したがって、もし厚さを50μm以上にすると、ガスの透過防止という機能が飽和しているにもかかわらずアルミ箔の使用量が増加し、コスト上の無駄が大きくなる。
アルミ箔は、平面的な膜状のものをタンクの三次元の面に設けるため、その端部間を接合する必要が生じる。そうした接合部は、端部同士を単に突き合わせるよりも上記のように端部同士を重ね合わせる方がガスの透過を防止しやすく、また、重ね合わせる端部間にエポキシ樹脂接着剤をはさむ方が接合が確実になる。そうして接合するとしても、接着剤層をガスが透過し得るため、ガスが多少でも真空層内に進入することが避けられないが、上記のように接合部をタンクの低温部に設けるなら、そのガスの進入量は最小限に抑えられる。図4は、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックのガス透過に関する温度特性を示すもので、低温部ではガス透過度が低いことが分かる。つまり、低温部では、前記接合部における接着剤の分子振動が活発でないため、同じようにミクロボイド等が存在するとしてもガスの透過量は少なくなる。
タンクの寸法は、通常の箱形のコンテナと同様に、高さ・幅・長さの各寸法が所定の値を超えないように規定されていることが多い。したがって、断面が円形であると、規定の寸法を満たす最大サイズのものであっても容積が小さく、いわゆる容積効率の点で不利になりがちである(図8(a)参照)。ここでいう容積効率とは、一定コンテナ容積内にタンクを収めた場合の一定コンテナ容積に対するタンク内液容積の割合である。しかし、繊維強化プラスチック材の成型容易性に基づいて内槽および外槽の横断面形状を略四辺形状(四辺形、または四隅が丸いなど四辺形に近いもの)にすると、図8(b)のとおり容積効率を向上させ、占有スペースをとくに拡大することなく実質の内容積を拡大することができる。
バリア材を有する繊維強化プラスチック材の作用で高真空に保たれる真空層内にこのような積層真空断熱材を配置すると、外部からの入熱がさらに効果的に遮断され、一層好ましい断熱性が発揮される。真空層において、高真空に保たれてガスによる熱伝導がないことによる断熱に加えて、積層真空断熱材における輻射シールド板が輻射を遮断することによる断熱が同時にもたらされるからである。
とくに、内槽の外側面及び/又は外槽の内側面バリア材を設けるなら、繊維強化プラスチック材からの放出ガスが真空層に進入することをも防止でき、また、輻射による熱の移動をも防止できる点で、低温液化ガス貯蔵タンクにおける断熱効果を一層に高めることが可能である。
バリア材をアルミ箔とし、繊維強化プラスチック材をエポキシ樹脂ベースのガラス繊維強化プラスチックまたは炭素繊維強化プラスチックとするなら、ガスの透過防止、輻射断熱、タンクの帯電防止、機械的強度、成形容易性およびコストといった点で有利である。アルミ箔の厚さは15〜50μmとするのがとくに好ましい。
内槽および外槽の断面を略多角形状にすると、容積効率の点で有利である。
また、真空層内に積層真空断熱材を配置すると、外部からの入熱がさらに効果的に遮断されるため好ましい。
繊維強化プラスチック材におけるガスの透過等に関するメカニズムを図2に示す。ガラス繊維強化プラスチック材11・21の内部には図のようにミクロボイドやミクロクラックが存在するため、水素ガス分子等を透過させてしまう。そうしたガスの透過を防ぐために、ガスバリア材としてアルミ箔12・22を使用するのである。
一方、図3(b)は低温での試験を質量分析法で行う装置である。ガス源46が加圧ラインから供給する水素ガス等を、低温室47内に置いた試験体48に接触させ、試験体48の反対側を、ターボ排気装置49を含む減圧ラインに接続している。
試験体としては、上述したガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックを直径50mm・厚さ1〜5mmにしたもの、またはそれらにアルミ箔等を貼り付けたもの等を採用した。試験ガスとしては水素のほかヘリウムおよび空気を使用し、試験差圧は約0.6MPa、試験温度は常温および液体窒素の温度(78K)とした。
ガス透過度=透過量(mol)/(透過面積(m2)・時間(s)・圧力差(Pa))
ガス透過率=透過量(mol)・厚さ(m)/(透過面積(m2)・時間(s)・圧力差(Pa))
なお、図7のタンクに使用したアルミ箔の厚さは、下記の表3(出典:「ガスバリア性付与技術」、東レリサーチセンター(2006年5月)作成)に基づいて約30μmとしている。
10・51・61 内槽
20・52・62 外槽
30・53・63 真空層
11・21 ガラス繊維強化プラスチック材
12・22 アルミ箔
13 接合部
Claims (3)
- 内槽および外槽を備えるとともに、それらの間に真空層を有する低温液化ガス貯蔵タンクであって、
内槽もしくは外槽またはそれらの双方が、ガスの透過を防ぐバリア材を有する繊維強化プラスチック材にて形成されていること、
内槽を形成する繊維強化プラスチック材の外側面にバリア材が設けられ、及び/又は、外槽を形成する繊維強化プラスチック材の内側面にバリア材が設けられていること、
上記のバリア材がアルミ箔であり、繊維強化プラスチック材が、エポキシ樹脂をベースとするガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチックのいずれかであること、
アルミ箔の厚さが15〜50μmであること、
アルミ箔の端部間の接合部が、端部同士を重ね合わせることにより形成されること
および、前記接合部が、ガスの透過を少なくするため当該タンクのうち低温域に設けられていること
を特徴とする低温液化ガス貯蔵タンク。 - 内槽および外槽の断面を略多角形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の低温液化ガス貯蔵タンク。
- 前記真空層内に積層真空断熱材を有することを特徴とする請求項1または2に記載の低温液化ガス貯蔵タンク。
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