JP5038113B2 - 構造物の破壊評価方法 - Google Patents
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Description
Vf :破壊のプロセスゾーン(脆性破壊の起点が生じる領域の体積。ほぼ塑性域に相当)
Vo :材料の破壊基本体積
σeff :プロセスゾーン内の有効応力
m :ワイブル形状パラメータ
非特許文献1,2に示された手法は構造物中に存在するき裂を起点とした破壊を取り扱ったものであるが、これを構造的応力集中部を起点とした破壊に対しても適用できるとする。
なお、累積頻度とは、破壊が発生する累積確率であり、ワイブル応力が大きくなれば100%に近づく。
しかし、材料の破壊抵抗は一般的にシャルピー衝撃値で管理されており、現状では、直接に限界ワイブル応力を用いて品質管理を行う事は困難である。その理由としては、当該ワイブル応力を算定するためには、上述した非特許文献1・2に示された手法に基づいて実施される評価手順のように、20本以上の小型試験片の破壊試験(図11では標準破壊靱性試験に相当)、FEM解析を順に行う必要があり、相当の時間と労力を必要とするためである。
なお、構造物の破壊評価方法とは、脆性破壊を回避するための構造物の設計方法、及び、脆性破壊の可能性に関する構造物の検査方法をいう。
ここにいう「脆性材料」とは、結晶構造的に「へき開面」と呼ばれるきわめて容易に分離する面を有する材料をいう。すなわち結晶構造がBCC(体心立方格子構造)やHCP(稠密六方構造)である材料であり、BCC構造の鋼、HCP構造のチタン、マグネシウム及びその合金などを含む。発明の限界ワイブル応力線図は、たとえば図2のように、一方の軸に限界ワイブル応力をとり他方の軸にシャルピー衝撃値をとったとき、脆性材料ごとに示される曲線または直線である。ただし、そのような線図と実質的に等しい一覧表や関係式及びその関係をコンピュータプログラム化したものをも発明の範囲に含むものとする。
発明者の調査によれば、上記のような限界ワイブル応力線図は、同種の脆性材料について一本の曲線に表されることが多い。「同種の脆性材料」とは、たとえば、炭素鋼であっても炭素量および他の元素量の異なる種々のものや、炭素鋼であっても異なる熱処理によるものや、主元素が共通する非鉄合金であっても他の微量元素が異なるものをさす。したがって、ある種の脆性材料について同線図を明らかにした場合、それは同種の脆性材料に広く適用でき有益に活用される。
しかも、脆性破壊に関する限り、材料の限界ワイブル応力はその材料の引張強度や伸び等には影響を受けず、ほとんどシャルピー衝撃値のみに対応して決まる。そのため、発明の線図は、脆性破壊に関する評価を合理的に実現するという効果をも有している。
炭素鋼に関して発明者は、後述する図2・図7のように、炭素量および他の元素量ならびに熱履歴等の相違によらず限界ワイブル応力線図が破壊確率別に1本の線に沿うことを確かめている。そのような線図は、種々の炭素鋼に適用でき、破壊評価に広く効果的に活用される。
i) 脆性材料について得られた限界ワイブル応力線図と、
ii) 破壊評価しようとする構造物に使用される脆性材料に生じる発生ワイブル応力と当該構造物の設計上のパラメータとの関係に基づき、
iii) 発生ワイブル応力が限界ワイブル応力を超えないように、上記脆性材料の固有のシャルピー衝撃値と上記構造物の設計上のパラメータとの関係を定めることを特徴とする。
なお、構造物の破壊評価方法とは、脆性破壊を回避するための構造物の設計方法、及び、脆性破壊の可能性に関する構造物の検査方法をいう。
また、上記ii)・iii)にいう「設計上のパラメータ」は、たとえば構造物への作用荷重や構造物の形状および寸法、拘束条件、温度などをさす。
なぜなら、この方法では、a)材料の破壊抵抗を限界ワイブル応力で管理する考え方に基づき、初期き裂が存在しない場合等にみられる応力集中部を起点とする脆性破壊を評価できる、b)材料の破壊抵抗として一般的に使用されているシャルピー衝撃値を用いて破壊評価を行う、c)脆性破壊に関しては材料の限界ワイブル応力はほとんどシャルピー衝撃値のみに対応するので、他の要因による誤差がない――といった特徴があるからである。このような特徴に基づき、破壊強度を合理的に評価して、材料コストを抑制しながら必要な機械的強度を満たす適切な構造物の設計、及び、脆性破壊の可能性に関する適切な構造物の検査が可能になる。
なお、上記iii)では、材料の固有のシャルピー衝撃値と上記構造物の設計上のパラメータとの関係を定めるので、それらシャルピー衝撃値またはパラメータのうちいずれか一つの適正値を、あらかじめ定めたまたは明らかになった他のパラメータ等から算出して、構造物の設計及び構造物の検査に反映させることができる。
この方法は、作用荷重以外のパラメータとシャルピー衝撃値とを先に設定しておいて、上記iii)で定めた関係から作用荷重を求めるものである。このようにすれば、上記a)・b)・c)の理由により、当該構造物が脆性破壊を起こさないための許容最大荷重を簡単かつ的確に決定することができる。
この方法は、形状および寸法以外のパラメータとシャルピー衝撃値とを先に設定しておいて、上記iii)で定めた関係から構造物の形状および寸法を求めるものである。この場合にも、上記a)・b)・c)の理由により、当該構造物が脆性破壊を起こさないための形状および寸法を簡単かつ合理的に決定することができる。
この方法は、設計に不可欠なすべてのパラメータを先に設定しておいて、上記iii)で定めた関係から、上記脆性材料に必要な固有のシャルピー衝撃値を求めるものである。この場合にも、上記a)・b)・c)の理由により、当該構造物が脆性破壊を起こさないためのシャルピー衝撃値を簡単かつ合理的に決定することができる。
まず、構造物における荷重、使用温度、拘束条件を定めたうえ(S1)、その構造物につきFEM解析を行って(S2)、その構造物における発生ワイブル応力σw(A)を算出する(S3)。一方、当該構造物中に使用される脆性材料について、限界ワイブル応力(σw)crとシャルピー衝撃値vEとの関係(限界ワイブル応力線図)を求めておき(S4)、それに上記の発生ワイブル応力σw(A)を当てはめる(S5)。発生ワイブル応力σw(A)に対応するシャルピー衝撃値vE(B)を境にしてその構造物が破壊するか否かの評価が可能であり、その(B)以上の値を、材料に要求されるシャルピー衝撃値vEと決定する(S6)。
まず、当該構造物について、使用温度や拘束条件とともに使用材料のシャルピー衝撃値vEを定めたうえ(S11)、その構造物につきFEM解析を行い(S12)、その構造物に作用する荷重と発生ワイブル応力σwとの関係を算出する(S13)。一方、当該構造物の使用材料について、限界ワイブル応力(σw)crとシャルピー衝撃値vEとの関係(限界ワイブル応力線図)を把握し(S14)、それを利用して、使用材料固有のシャルピー衝撃値vE(A)に対応する限界ワイブル応力(σw)cr(B)を知る(S15)。上記で求めた荷重と発生ワイブル応力σwとの関係において上記の限界ワイブル応力(σw)cr(B)を特定すると、その構造物が破壊するか否かの境界となる荷重(C)が特定される(S16)ので、その荷重(C)を許容最大荷重とする(S17)。
この例では、破壊評価をする対象が鋼管構造物であるため、評価対象の構造物の寸法および形状ならびに化学成分について模した図4の鋼管1から試験片を採取して、その限界ワイブル応力線図を得ることとする。また、評価対象の構造物の使用材料に溶接による熱影響部(HAZ)があることから、鋼管1には図4のようにラグピース1aを溶接し、そのうえで鋼管1から図5に示す試験片を採取する。
シャルピー衝撃試験によって求めた各材料のシャルピー衝撃値vEを上記の限界ワイブル応力σwと関係づけることにより、図7に示すように限界ワイブル応力線図を得ることができる。
Claims (5)
- 脆性材料について、複数の破壊試験結果および応力解析結果に基づいて限界ワイブル応力を求め、さらに、該脆性材料の破壊試験に用いた金属片についてシャルピー衝撃値の測定を行うことにより、該脆性材料について限界ワイブル応力とシャルピー衝撃値とを対応づけて両者の関係を示した限界ワイブル応力線図と、
破壊評価しようとする構造物の設計上のパラメータと、該パラメータに基づいて算出される該構造物における前記脆性材料に生じる発生ワイブル応力との関係に基づき、
該発生ワイブル応力が前記限界ワイブル応力線図における限界ワイブル応力を超えないように、該脆性材料の固有のシャルピー衝撃値と該構造物の設計上のパラメータとの関係を定めることを特徴とする構造物の破壊評価方法。 - 前記構造物への作用荷重以外の設計上のパラメータと該構造物に使用される脆性材料の固有のシャルピー衝撃値とを特定することにより、設計上のパラメータの一つである、構造物に作用する許容最大荷重を求めることを特徴とする請求項1に記載した構造物の破壊評価方法。
- 前記構造物の形状および寸法以外の設計上のパラメータと該構造物に使用される脆性材料の固有のシャルピー衝撃値とを特定することにより、設計上のパラメータの一つである、構造物の形状および寸法を求めることを特徴とする請求項1に記載した構造物の破壊評価方法。
- 設計上のパラメータのうち設計に不可欠なものをすべて特定することにより、前記構造物に使用される脆性材料に必要な固有のシャルピー衝撃値を求めることを特徴とする請求項1に記載した構造物の破壊評価方法。
- 前記脆性材料が、炭素量および他の元素量が異なるものを含む炭素鋼または異なる熱処理による炭素鋼であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した構造物の破壊評価方法。
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