JP5010759B2 - 非結晶性ポリエステル樹脂、静電荷像現像用トナー用結着樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法 - Google Patents

非結晶性ポリエステル樹脂、静電荷像現像用トナー用結着樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非結晶性ポリエステル樹脂、静電荷像現像用トナー用結着樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法に関する。
近年、OA機器の発展、コンピューターの普及に伴い、従来ならば専門の印刷所にて行われてきた高解像度のカラー写真印刷や、ポスターやパンフレット等の高解像度商業用印刷が一般家庭、個人事務所や各オフィス単位で行われるようになり、より高品位で、より高速度の印刷技術が求められている。
このような印刷技術としては、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等が用いられており、一般的には、光導電性物質を利用して、各々の手段により感光体上に静電荷像を形成させ、次いで、該静電荷像をトナーにより現像し、紙等の印刷媒体にトナー画像を転写させた後、ローラーによる加熱、加圧等により画像を定着させ、印刷物を得る方法が用いられている。
従来、静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂として、安価なスチレン−アクリル系樹脂が使用されてきた。しかし、上記のような高解像度商業用印刷や銀塩写真に代わる高解像度のカラー写真印刷においては、画像の鮮明さに加えてより高い光沢性が要求されるのに対し、従来のスチレン−アクリル系樹脂では光沢性が不充分であるといった問題がある。そこで、高光沢化への要求に対応するために、特に光沢性に優れるポリエステル樹脂の利用が拡大しつつある。
ところで、印刷機は、起動直後や印刷開始直後のように印刷機内部が低温である状態から、連続で印刷を行うことにより蓄熱され印刷機内部が高温になった状態まで、広い温度範囲で使用される。印刷機内部が低温である状態ではトナーの印刷媒体への未融着が生じやすく、高温になった状態ではトナーの破断が生じやすいため、印刷物のかすれ、白抜け、色むら、ローラー汚れ等を引き起こすといった問題が生じる。
このような問題を解消するために、例えば、トナーについては、低温時にはトナーの未融着を防ぐための耐コールドオフセット性が、高温時にはトナーの破断等を防ぐための耐ホットオフセット性が求められている。
耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性の両立を試みたトナーとして、例えば、結着樹脂として、耐ホットオフセット性は劣るが耐コールドオフセット性は良好である結晶性ポリエステル樹脂と、耐コールドオフセット性は劣るが耐ホットオフセット性は良好である非結晶性ポリエステル樹脂とを併用する例がある(特許文献1〜3)。しかしながら、このような例では、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とが一部相溶することがあり、それぞれの樹脂の良好な性能を充分に両立させることができないといった問題点や、性能が良好であっても原料コストの高い結晶性樹脂の使用量が多いことから供給面で実現困難といった問題もある。
また、耐コールドオフセット性が良好な低分子量の非結晶性ポリエステル樹脂と、耐ホットオフセット性が良好な高分子量の非結晶性ポリエステル樹脂とを併用した例(特許文献4)もある。しかし、それぞれの性能が平均化されてしまい両立が不充分であるうえに、結着樹脂がトナー表面にブリードアウトしやすく、トナーの保管安定性が不良となる場合がある。
このような背景から、結着樹脂として、耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性とを両立させ得るポリエステル樹脂の開発が求められてきている。
しかしながら、例えば、良好な耐コールドオフセット性を得るためにはポリエステル樹脂のガラス転移点や溶融温度を低くする必要があり、そのためには樹脂の平均分子量を低くする必要がある。その反面、良好な耐ホットオフセット性を得るためには高温でも樹脂の溶融粘度が低下しすぎず、適度に保持される必要があり、そのためには樹脂の平均分子量を高くする必要がある。このように耐ホットオフセット性及び耐コールドオフセット性を両立しようとすると、樹脂の平均分子量1つを例にとっても矛盾する要求がなされていることから、未だ満足する性能のポリエステル樹脂が得られていない。
さらに、ポリエステル樹脂の場合は、製造面においても問題点を抱えている。一般的に、ポリエステル樹脂は、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と種々の多価アルコールとの直接重縮合反応により合成される。しかし、芳香族ジカルボン酸は融点が非常に高く、種々の多価アルコールに対しても溶解性が低いために、直接重縮合法を採用すると、芳香族ジカルボン酸が昇華する、反応系が不均一となるといった問題があり、常に以下のような不具合が生じる可能性がある。
・芳香族ジカルボン酸の昇華に伴い、モル比の精密な制御ができない。
・製造設備への昇華物の付着、滞留による熱交換器の効率低下。
・昇華物による粉塵爆発の危険性を伴う。
・反応系が不均一であるため、モノマー間で反応性に差が出やすく、樹脂の高次構造の制御が困難になる。
・反応系が不均一であるため、高分子量化しにくい。
なお、これらの問題は、製造方式がバッチ方式か連続方式かに拘わらず、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を原料として使用する限り回避できない問題点でもある。
特開2001−222138号公報 特開平11−249339号公報 特開2004−191623号公報 特開平5−17562号公報
本発明は、静電荷像現像用トナーにおいて重大な課題である耐ホットオフセット性と耐コールドオフセット性という、相反する性能を充分に両立させるとともに、充分な耐ブロッキング性を得ることが可能な非結晶性ポリエステル樹脂、静電荷像現像用トナー用結着樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
上記事情に鑑み本発明は、多価カルボン酸化合物と多価アルコールとを反応させてなる非結晶性ポリエステル樹脂であって、上記多価カルボン酸化合物は、(a)芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を、上記多価カルボン酸化合物の全量を基準として60モル%以上含み、上記非結晶性ポリエステル樹脂は、(I)ガラス転移点が55〜75℃であり、(II)重量平均分子量が10,000〜50,000であり、(III)動的粘弾性測定で、温度T[℃]に対する貯蔵弾性率G’[Pa]の常用対数logG’をプロットしたグラフにおいて、logG’の低下開始温度T1Sが55〜72℃であり、Tに対するlogG’の変化率が最大となる点Fにおける温度Tが65〜77℃であり、上記点Fにおける貯蔵弾性率G’が8.0×10〜4.0×10Paであり、かつT±2℃におけるTに対するlogG’の変化率の平均値が0.25〜0.30である、領域1と、貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa〜1.0×10Paである領域であって、貯蔵弾性率が1.0×10Paであるときの温度T2Sが74〜90℃であり、貯蔵弾性率が1.0×10Paであるときの温度T2Eと上記T2Sとの差が20〜40℃であり、かつ該領域におけるTに対するlogG’の変化率の平均値が0.05〜0.09である、領域2と、を有する、非結晶性ポリエステル樹脂を提供する。
本発明の非結晶性ポリエステル樹脂によれば、耐ホットオフセット性と耐コールドオフセット性とを充分に両立させるとともに、充分な耐ブロッキング性を得ることができる。
上記多価アルコールは、該多価アルコールの全量を基準として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むことが好ましい。
また、上記多価アルコールは、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。
多価アルコールが、上記構成を有することにより、耐ホットオフセット性及び耐ブロッキング性をより向上することができる。
また、上記多価カルボン酸化合物は、該多価カルボン酸化合物の全量を基準として、3価以上のカルボン酸化合物を2〜30モル%含むことが好ましい。
上記非結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量500以下の成分の含有量が5.0質量%以下であることが好ましい。
非結晶性ポリエステル樹脂が、上記構成を有することにより、トナー粒子表面へのブリードアウトを抑制し、耐ブロッキング性をさらに向上させることができる。
また、上記非結晶性ポリエステル樹脂は、酸価が4〜25mgKOH/gであることが好ましい。
非結晶性ポリエステル樹脂が、上記構成を有することにより、耐ブロッキング性をさらに向上することができる。
また、上記非結晶性ポリエステル樹脂は、印加周波数1kHzにおける誘電正接tanδが0.0015〜0.0060であることが好ましい。
非結晶性ポリエステル樹脂が、上記構成を有することにより、トナーに適度な帯電特性を付与でき、帯電不足による画像未形成や帯電過多による樹脂の溶融や感光ローラーの汚れなどの問題が起きにくくなる。
また、上記非結晶性ポリエステル樹脂は、溶融粘度が10,000Pa・sとなるときの温度が90〜125℃であることが好ましい。
非結晶性ポリエステル樹脂が、上記構成を有することにより、耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性をより高度に両立することができる。
本発明は、上記非結晶性ポリエステル樹脂を含む静電荷像現像用トナー用結着樹脂を提供する。
本発明は、(a)芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を、上記多価カルボン酸化合物の全量を基準として60モル%以上含む多価カルボン酸化合物と、多価アルコールとを、均一に溶解させた状態で反応させることを特徴とする、上述の非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
本発明の非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法によれば、原料の昇華がなく、反応が均一であることから、上述の従来の製造面における不具合を生じることなく非結晶性ポリエステル樹脂を製造することができる。
本発明の非結晶性ポリエステル樹脂は、耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性という、相反する性能を両立させるとともに、充分な耐ブロッキング性を得ることが可能なものであり、静電荷像現像用トナーの結着樹脂として有用である。
また、本発明の製造方法により得られる非結晶性ポリエステル樹脂は、芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を原料として製造されるが、該化合物のその他の原料との相溶性が良好であることから均一系での反応が可能となり、上述の製造面における従来の問題を解決することができる。
実施例3及び比較例2で得られた非結晶性ポリエステル樹脂の動的粘弾性を測定し、温度Tに対して貯蔵弾性率G’の常用対数logG’をプロットしたグラフである。
本発明において「非結晶性」のポリエステル樹脂とは、DSC(示差走査熱量測定)曲線において、明確な結晶融解の吸熱ピークを示さないポリエステル樹脂を指し、具体的には融解吸熱ピーク面積から求められた融解エンタルピーが5mJ/mg以下となるものを指す。これに対し「結晶性」のポリエステル樹脂とは、明確な結晶融解の吸熱ピークを示し、その融解エンタルピーが5mJ/mgより大きいものを指す。なお、上記の融解エンタルピーの値は、インジウムを標準物質として求められた値である。
一般に、結晶性ポリエステル樹脂は、シャープな融解温度を示し、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が融解温度以下の温度で急激に低下するために、静電荷像現像用トナーの結着樹脂として単独で使用すると印刷媒体に浸透して定着不良や画像のにじみを起こすことが知られている。
これに対し、非結晶性ポリエステル樹脂は、明確な融解温度を示さず、ガラス転移点以上からはゴム状領域を有することから、動的粘弾性測定において樹脂の流動開始直前まで貯蔵弾性率を保持しやすいという性質を示す。
本発明における「耐コールドオフセット性」とは、低温、すなわち、印刷機の起動直後や印刷開始直後であって、加熱、定着ローラー等の本来印刷前に予備加熱されるはずの部位が充分に温まっていない状態での印刷時に、トナーが主要因となるトラブル(例えば、トナーの溶融不足、溶融斑等に起因する印刷のかすれや白抜け、色むら、定着不良等)の起こし難さである。トナーの定着下限温度が低いほど耐コールドオフセット性が良好である。
また、「耐ホットオフセット性」とは、高温、すなわち、連続印刷や高速印刷時に印刷機内部の蓄熱により転写、加熱、定着ローラー等の部位が高温になった状態での印刷時に、トナーが主要因となるトラブル(例えば、印刷媒体とトナーとローラーとの間でトナー自体が破断することに起因する、定着不良による印刷かすれやむら、にじみ、トナー汚れ、ローラーへのトナーの融着等)の起き難さである。トナーの定着上限温度が高いほど耐ホットオフセット性が良好である。
また、「耐ブロッキング性」とは、トナーの保管安定性を指す。運搬時や特に夏場での保管等のようにトナーカートリッジが苛酷な環境におかれると、トナーの粒子同士が合着又は凝集しやすくなり、これらが顕著になると振動を与えても流動せず、もはやトナーとして使用することができなくなる。耐ブロッキング性とはこれらのトラブルの起き難さを示すものである。
以下に、本発明の一実施形態における非結晶性ポリエステル樹脂について説明する。本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移点が55〜75℃であり、重量平均分子量が10,000〜50,000である。ガラス転移点が55℃未満であると耐ブロッキング性が不充分なものとなり、75℃を超えると耐コールドオフセット性の低下を招きやすくなる。また、重量平均分子量が10,000未満であると、高温で貯蔵弾性率を保持できず、後述する領域2でのlogG’の変化率([d(logG’)/dT]の絶対値)が大きいものとなり、領域2の温度幅も20℃未満となり、耐ホットオフセット性が不充分なものとなる。重量平均分子量が50,000を超えると、反応系の粘度が高くなりすぎて攪拌設備などの製造設備への負荷が大きく製造が困難となり、また、得られる樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて、耐コールドオフセット性と光沢性が低下する傾向がある。なお、非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量を上記範囲内で大きくすると、ガラス転移点が上記範囲内で上昇し、後述する領域1におけるT1Sが下記範囲内で上昇し、また領域2におけるlogG’の変化率の平均が下記範囲内で低下する。
本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂は、動的粘弾性測定において得られる貯蔵弾性率G’[Pa]の常用対数を温度T[℃]に対してプロットした場合に、以下の条件を満たす領域1及び領域2を有するという特異的な挙動を示す。
図1は、後述する実施例3及び比較例2で得られた非結晶性ポリエステル樹脂の動的粘弾性を測定し、温度Tに対して貯蔵弾性率の常用対数logG’をプロットしたグラフである。グラフ上の左側平坦部は、非結晶性ポリエステル樹脂がガラス状であるガラス状領域を指す。これに対し、右側平坦部は、ゴム状であるゴム状領域を指す。左右の平坦部に挟まれた部分は、ガラス状領域からゴム状領域に転移する転移領域である。領域1は、転移領域に相当する。領域1における貯蔵弾性率G’の挙動は、主にトナーの保管性(耐ブロッキング性)、定着性、耐コールドオフセット性と相関する。
領域1において、非結晶性ポリエステル樹脂のlogG’の低下開始温度T1Sは55〜72℃である。logG’の低下開始温度T1Sとは、図1のグラフにおいてガラス状領域にある、logG’のベースラインを高温側に延長した線と、Tに対するlogG’の変化率([d(logG’)/dT]の絶対値)が最大となる点Fの接線との交点の温度をいう。また領域1において、上記点Fの温度Tは65〜77℃であり、貯蔵弾性率G’は8.0×10〜4.0×10Paである。T1Sが55℃より低い場合、Tが65℃より低い場合、G’が8.0×10Paより小さい場合には、いずれも、トナーが高温に長時間曝された際に、トナー同士の合着や凝集が生じるおそれがあり、耐ブロッキング性が低下したり、樹脂が溶融しやすくなることから印刷媒体へトナーが浸透しすぎてにじみが生じる等、画像の鮮明性が低下したりする。また、T1Sが72℃より高い場合、Tが77℃より高い場合、G’が4.0×10Paより大きい場合には、いずれも、低温での印刷時に樹脂が溶融しにくいことから溶融むらが生じて画像の定着性低下を招きやすくなり、耐コールドオフセット性が低下する。
さらに、領域1において、T±2℃のときの、Tに対するlogG’の変化率([d(logG’)/dT]の絶対値)の平均値は0.25〜0.30である。領域1において、T±2℃のときの、Tに対するlogG’の変化率([d(logG’)/dT]の絶対値)の平均値が0.25より小さい場合は、低温での印刷時に樹脂の溶融むらが生じて画像の定着性低下を招きやすく、0.30より大きい場合は、樹脂が溶融しやすくなることから印刷媒体へトナーが浸透しすぎてにじみが生じる等、画像の鮮明性の低下を招きやすい。言い換えると、上記平均値が0.25〜0.30であると、少量の熱量で樹脂が溶融しやすく、結着樹脂として用いた場合の低温での印刷適性、つまり、耐コールドオフセット性が良好なものとなる。
図1のグラフにおいて、領域2は、ゴム状領域内にあり、貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa〜1.0×10Paである領域である。領域2における貯蔵弾性率G’の挙動は、主に耐ホットオフセット性と相関する。すなわち、この領域2における貯蔵粘弾性率G’が、適正な温度幅で、緩やかに低下する場合は耐ホットオフセット性が良好となる。
領域2において、貯蔵弾性率G’が1.0×10Paのときの温度T2Sは、74〜90℃である。T2Sが74℃より低い場合は、樹脂の溶融粘度が低下して印刷媒体への浸透、つまり画像のにじみが起き易く、画像の鮮明性、耐ホットオフセット性や光沢性が不充分なものとなり、90℃より高い場合は、樹脂が溶融しにくいものとなり良好な耐コールドオフセット性が得られない。また、領域2において、貯蔵弾性率が1.0×10Paのときの温度T2Eと上記T2Sとの差(温度幅)(T2E−T2S)は20〜40℃である。また、上記領域2における、Tに対するlogG’の変化率([d(logG’)/dT]の絶対値)の平均値は0.05〜0.09である。領域2におけるlogG’の変化率の平均値が0.05未満である場合、T2E−T2Sが40℃を超える場合には、樹脂が溶融しにくくなり結着樹脂として用いたときに断裂が生じやすく、logG’の変化率の平均値が0.09を超える場合、T2E−T2Sが20℃未満である場合には、樹脂が溶融しすぎて高温での印刷時に印刷媒体への浸透(画像のにじみ)が起きやすく、耐ホットオフセット性や光沢性が不充分なものとなりやすい。
つまり、T2Sが74〜90℃であり、T2S−T2Eが20〜40℃であり、かつ、領域2におけるlogG’の変化率の平均値が0.05〜0.09であるときに、耐ホットオフセット性が良好となり、耐コールドオフセット性との両立を図ることができる。
本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸化合物と多価アルコールとを反応させてなるものであり、特に、原料である多価カルボン酸化合物は、(a)芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を60モル%以上含む。このような構成を有することにより、本実施形態の非結晶性ポリエステル樹脂は上記のような特異的な貯蔵弾性率G’の挙動を示すものとなり、その結果、耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性の相反する性能を両立できるという効果を奏する。
非結晶性ポリエステル樹脂の製造に用いられる多価カルボン酸化合物とは、多価カルボン酸、その酸無水物及びその低級アルキル(好ましくは炭素数1〜3)エステル、並びにそれらの誘導体を総称したものである。多価カルボン酸化合物は、(a)芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を含む。
(a)成分の製造に用いられる芳香族多価カルボン酸化合物は、芳香環を有する多価カルボン酸、その酸無水物及びその低級アルキル(好ましくは炭素数1〜3)エステルを総称したものであり、具体的には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸、これらの酸無水物、これらの酸の低級アルキル(好ましくは炭素数1〜3)のエステルである。芳香族多価カルボン酸化合物には、非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点や重量平均分子量のコントロールのし易さから、芳香族ジカルボン酸化合物を使用することが好ましい。
また、(a)成分の製造に用いられる炭素数2〜4のグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール等のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコールを挙げることができる。これらの中でも、ポリエステル樹脂の製造時の反応性、すなわちエステル交換反応の効率を良好なものとするために、炭素数2〜3のアルキレングリコールが好ましい。
(a)成分の製造に用いられる芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールの比率は、好ましくはモル比で1.0:1.8〜1.0:3.0、より好ましくは1.0:2.0〜1.0:2.5である。芳香族多価カルボン酸化合物1.0モルに対する、炭素数2〜4のグリコールのモル比が1.8モルより小さい場合は、芳香族多価カルボン酸化合物が未反応のまま系内に残りやすく、反応物をポリエステル樹脂の合成に使用した場合に、昇華による問題が解決されない又は反応が均一系にならないおそれがある。また、芳香族多価カルボン酸化合物1.0モルに対する、炭素数2〜4のグリコールのモル比が3.0モルより大きい場合は、未反応のグリコールが残留し反応の長時間化やコストアップのおそれがある。(a)成分の製造方法は特に制限されず、反応温度を120〜260℃(好ましくは130〜210℃)としてエステル化又はエステル交換反応することにより(a)成分を製造することができ、必要に応じて、減圧下で反応することにより製造することができる。また、反応中に、適宜、窒素等の不活性ガスを通気させてもよく、エステル化又はエステル交換反応の触媒を使用してもよい。
(a)成分は、芳香族ジカルボン酸化合物と炭素数2〜3のアルキレングリコールとの反応物であることが好ましく、このような反応物は、以下の一般式[1]で表される構造を有する。
−O(CO−R−COO−R−O)−R [1]
(一般式[1]中、Rは炭素数2〜3のアルキレングリコール残基、水素、又は低級アルキル基(好ましくは炭素数1〜3)を表し、Rは芳香族ジカルボン酸の残基を表し、Rは炭素数2〜3のアルキレン基を表し、Rは水素、芳香族ジカルボン酸化合物によるモノエステル基を表す。nは繰り返し単位数であって、1〜12程度の整数を示す。)
このような(a)成分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)では複数のピークとして検出され、一般式[1]におけるnが1〜12程度の混合物となっていることが解析される。
(a)成分の平均分子量は300〜1500であることが好ましく、330〜800であることがより好ましい。平均分子量が300未満であると、(a)成分中に未反応の芳香族多価カルボン酸化合物が残留していることがあり、昇華の抑制が不充分なものとなりやすく、平均分子量が1500を超えると、多価アルコールとの相溶性が低下し、ポリエステル樹脂の合成が均一系で行われず、反応が阻害されるおそれがある。
非結晶性ポリエステルの製造における(a)成分の使用量は、多価カルボン酸化合物の全モル数中、60モル%以上であり、100モル%であってもよく、好ましくは70〜98モル%であり、より好ましくは80〜95モル%である。この(a)成分の使用量が60モル%未満であると、得られる樹脂のガラス転移点が55℃以下となりやすく、その結果、耐ホットオフセット性や耐ブロッキング性が不充分なものとなる。なお、多価カルボン酸中に含まれる(a)成分を60モル%から大きくすると、上記範囲内でガラス転移点が上昇し、領域1におけるT1Sが上記範囲内で上昇し、また領域2におけるlogG’の変化率の平均が上記範囲内で低下する。
(a)成分以外の多価カルボン酸化合物としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸等の3価以上の脂環式カルボン酸等の3価以上のカルボン酸、これらの酸無水物及びこれらの低級(好ましくは炭素数1〜3)アルキルエステルを使用することができる。本発明においては、非結晶性ポリエステル樹脂をより高分子量化して耐ホットオフセット性を良好なものとするために、多価カルボン酸化合物中、3価以上のカルボン酸化合物を2〜30モル%使用することがより好ましく、特に3価以上の芳香族カルボン酸化合物を使用することが好ましい。
また、その他の多価カルボン酸化合物としては、本発明の効果を損なわない程度に、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−エチルヘキシルコハク酸、オレイルコハク酸、2−ドデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸等の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族多価カルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−エチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−プロピル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−ブチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸等のシクロへキセンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、オレイン酸やトール油脂肪酸等の不飽和結合を有する脂肪酸を二量化したダイマー酸、これらの酸無水物及びこれらの低級アルキル(好ましくは炭素数1〜3)エステルを使用することもできるが、これらは非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点の低下を招くため、その使用量は多価カルボン酸化合物の全量に対して30モル%未満であることが好ましい。
非結晶性ポリエステル樹脂の製造に用いられる多価アルコールとしては、ガラス転移点、領域1のlogG’の低下開始温度T1S、領域2における貯蔵弾性率の保持性(logG’の変化率)の観点から、2価の芳香族アルコール、2価の脂環式アルコール若しくはこれらのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、2価の芳香族アルコールのアルキレンオキサイド付加物がより好ましい。2価の芳香族アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が挙げられる。また、2価の脂環式アルコールとしては、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールS、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジオキサングリコール等が挙げられる。多価アルコールは、これらの中でもビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であることがさらに好ましい。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、多価アルコール中に、50モル%以上含まれることが好ましく、60モル%以上含まれることがより好ましい。また、100モル%であってもよい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドは炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであることが好ましく、その付加モル数は、好ましくは2〜5モル、より好ましくは2〜4.5モルであり、付加形態は1種のアルキレンオキサイドの単独付加であってもよいし、2種以上のアルキレンオキサイドの付加であってもよい。なお、付加モル数が2モル未満であると、フェノール性水酸基が残留しやすく多価カルボン酸化合物との反応が阻害されるおそれがあり、5モルを超えるとガラス転移点が低くなり、上記範囲内にある場合と比較して耐ホットオフセット性や耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点を調整する、又は後述する非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法において反応系が均一になり易いという観点から、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を使用することが好ましい。また、非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点のコントロールのし易さの観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を使用することが好ましい。さらに、反応系の均一さとガラス転移点のコントロールのし易さの観点から、特にビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物とを併用することが好ましい。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物は、(エチレンオキサイド付加物):(プロピレンオキサイド付加物)が0:100〜50:50のモル比で使用されることが好ましく、10:90〜50:50のモル比で使用されることがより好ましく、20:80〜40:60のモル比で使用されることが特に好ましい。
さらに、多価アルコールは、耐ホットオフセット性や耐ブロッキング性をより向上させるために、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物をさらに含有することができる。ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物は、多価アルコール中に、2〜40モル%含まれることが好ましく、5〜30モル%含まれることがより好ましい。アルキレンオキサイドの炭素数及び付加モル数の好ましい範囲はビスフェノールAと同様である。
上記以外の多価アルコールとしては、本発明の効果を損なわない程度に、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価の脂肪族アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールを併用することができる。
非結晶性ポリエステル樹脂の製造における(多価カルボン酸化合物):(多価アルコール)は、モル比で50:100〜120:100であることが好ましく、50:100〜98:100であることがより好ましい。多価カルボン酸化合物と多価アルコールとを上記範囲のモル比で反応させることにより、非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量を上記範囲に制御しやすくなる。多価アルコール100モルに対し、多価カルボン酸化合物の使用量が50モル未満であるとき、得られる非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、上記下限値である10,000に満たないことがあり、多価アルコール100モルに対し、多価カルボン酸化合物の使用量が98モルを超えるとき、得られる非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、上記上限値である50,000を超えることがある。
非結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が500以下である成分の含有率が5.0質量%以下であることが好ましい。重量平均分子量が500以下である成分(いわゆるポリエステルオリゴマー)の含有量が多いと、これらの成分がトナー粒子表面へブリードアウトしやすくなり、耐ブロッキング性が充分に向上しない傾向がある。このような成分は、非結晶性ポリエステル樹脂の製造条件をコントロールすることにより、例えば、反応温度を上げる、より減圧する、反応時間を長くすることにより減少させることができる。
非結晶性ポリエステル樹脂は、酸価が4〜25mgKOH/gであることが好ましく、5〜15mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が4mgKOH/g未満であると、トナー表面の電荷による粒子間のイオン反発力が小さくなり、保管時など高温状態に長期間曝された場合にトナー同士の合着や凝集といった問題が発生しやすくなり、上記範囲内にある場合と比較して耐ブロッキング性が低下する傾向がある。一方、酸価が25mgKOH/gを超えると、イオン性官能基に起因する吸湿性が増大し、上記範囲内にある場合と比較して耐ブロッキング性が低下するおそれがあり、また、トナーの帯電特性が低下して画像形成不良による画質の低下につながるおそれがある。さらに、酸価が4〜25mgKOH/gの範囲にあると、樹脂を乳化・再凝集させて作製されるケミカルトナーの場合に粒径のコントロールが容易となる。
なお、製造された非結晶性ポリエステル樹脂の酸価が上記範囲から外れていた場合は、多価カルボン酸を適宜反応させて上記範囲に調整すればよい。
非結晶性ポリエステル樹脂は、温度25℃、湿度65%RHの条件下で、印加周波数1kHzにおける誘電正接tanδが0.0015〜0.0060であることが好ましい。誘電正接tanδ値がこの範囲内にあると、トナー用の結着樹脂として用いた際に、トナーに適度な帯電特性を付与でき、帯電不足による画像未形成や帯電過多による樹脂の溶融や感光ローラーの汚れなどの問題が起きにくくなる傾向がある。
非結晶性ポリエステル樹脂は、溶融粘度が10,000Pa・sとなるときの温度が90〜125℃であることが好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂が、上記条件を満たすことにより、耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性がより良好なものとなる。より具体的には、上記温度が90℃より低い場合は、高温での定着時に結着樹脂の粘度が低くなり、印刷媒体への過度の浸透に起因する画像のにじみが生じやすく、上記範囲内にある場合と比較して耐ホットオフセットが低下する傾向がある。一方、上記温度が125℃より高い場合は、低温での定着時に結着樹脂の粘度が高くなりすぎて、定着不良が生じやすく、上記範囲内にある場合と比較して耐コールドオフセット性が低下する傾向がある。
次に、本発明の非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法について述べる。非結晶性ポリエステル樹脂は、上述した(a)成分を60モル%以上含む多価カルボン酸化合物と多価アルコールとを混合し、得られた混合物を均一に溶解させた状態で反応させることにより得られる。
(a)成分は、その他の非結晶性ポリエステル樹脂の原料(すなわち、その他の多価カルボン酸化合物や多価アルコール)との相溶性が良好であり、上記混合物は140℃程度で均一に溶解した状態となる。非結晶性ポリエステル樹脂の製造条件は、例えば、減圧下で180〜280℃(好ましくは200〜270℃)で3〜7時間程度とすることができるので、上記混合物が充分に均一に溶解された状態で製造することができる。このように、非結晶性ポリエステル樹脂は、原料を均一に溶解した状態で製造されることから、上述した従来の不均一系での反応による不具合を解消することが可能となる。
なお、非結晶性ポリエステル樹脂の製造においては、三酸化アンチモン、ジブチル錫オキサイド等の有機スズ系重合触媒、ゲルマニウム系触媒、無機チタン系触媒、n−テトラブトキシチタンやテトライソプロポキシチタン等の有機チタン系触媒、有機コバルト系触媒、酢酸亜鉛や酢酸マンガン等のエステル交換触媒等の、従来公知の触媒を使用することができ、特に、ゲルマニウム系触媒、無機チタン系触媒、有機チタン系触媒などを好ましく使用することができる。
非結晶性ポリエステル樹脂には、その製造過程の任意の段階で、あるいは、製造の後に、着色や熱分解を防ぐ目的で、酸化防止剤を加えてもよい。このような酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、含イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
このようにして製造された非結晶性ポリエステル樹脂は、そのままで、あるいは、従来公知の非結晶性又は結晶性ポリエステル樹脂と併用して、静電荷像現像用トナーの結着樹脂として用いることができる。
非結晶性ポリエステル樹脂と併用してもよい結晶性ポリエステル樹脂としては、炭素数4〜12(好ましくは炭素数8〜12)の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸と、炭素数2〜12(好ましくは炭素数8〜12)の脂肪族ジオールから選ばれる少なくとも1種のジオールとの組み合わせにより製造される樹脂が挙げられる。また、このような結晶性ポリエステル樹脂は、DSCによる融解温度(JIS K7121(1987)の9.1(3)による)が65〜75℃であるものがより好ましい。
また、本発明の非結晶性ポリエステル樹脂を、結着樹脂として使用しトナーを製造する際は、従来公知の混練粉砕法、スプレイドライ法、乳化分散法等のケミカルトナー等を採用すればよく、また、トナー製造のための成分も従来公知のものを使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、実施例おいては下記の方法にしたがって各評価を行った。
(1)水酸基価
(a)成分の水酸基価を、JIS K 0070(1992)の7.3のピリジン−塩化アセチル法により測定した。
(2)酸価
JIS K 0070(1992)の3.1の中和滴定法に準じ、測定溶媒としてテトラヒドロフラン:水=10:1(体積比)の混合溶媒を用い、この混合溶媒60mLに試料1gを溶解させて、非結晶性ポリエステル樹脂の酸価を測定した。
(3)融点
(a)成分の融点は、示差走査熱量計DSC−6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)により得られる温度に対する熱量のグラフにおける、融解吸熱ピーク頂点の温度を融点とした。
<測定条件>
昇温及び降温速度:10℃/分
昇温プログラム:室温から150℃まで昇温した後、150℃で1分間保持した。次いで、0℃まで降温して0℃で1分間保持し、さらに150℃まで昇温しながら測定した。
雰囲気:窒素気流中(50mL/分)
セル:密閉アルミニウム
試料量:5mg
(4)重量平均分子量
非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量を以下の方法にしたがって測定した。すなわち、ポリエステル樹脂2mgをテトラヒドロフラン5mLに加えて溶解させ、重量平均分子量を、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)により、ポリスチレン換算にて求めた。また、重量平均分子量が500以下である成分の割合を検出ピークの面積比より算出した。
<測定条件>
検出装置:RI検出器
移動相:テトラヒドロフラン
カラム:Tsk−gel Super HZ 2000を2本とTsk−gel Super HZ 4000を1本とを、直列に接続した。
サンプルインジェクターとカラムの温度:40℃
RI検出器の温度:35℃
サンプル注入量:5μL
流速:0.25mL/分
測定時間:40分
(5)ガラス転移点
非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点を、JIS K7121(1987)の9.3(3)に従いDSCにより測定した。測定装置として示差走査熱量計DSC−6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用し、測定条件は(3)融点の場合と同様とした。
(6)貯蔵弾性率測定
非結晶性ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率G’の測定には、動的粘弾性測定装置ARESレオメーター(レオメトリック社製)を用いた。パラレルプレート間に試料を固定し、一方より、振動周波数6.28rad/secのねじり往復振動の歪みを与え、他方でこの歪みに対する応力を検出した。この状態で室温から順次温度を上昇させて、粘弾性の温度依存性の測定を行った。なお、測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
振動周波数:6.28rad/秒
測定温度:40〜130℃
パラレルプレート:φ8mm
測定CAP:2.5mm
ひずみ量:30%
昇温速度:1℃/分
(7)溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度
高架式フローテスターCFT−500(株式会社島津製作所製)を用い、ダイ(長さ1.0mm、直径φ0.5mm)を取り付けたシリンダー内に非結晶性ポリエステル樹脂を1.0g入れ、85℃で5分間保持した後、3℃/分で昇温しながら、プランジャーにより25kgの荷重を加えて溶融粘度を測定し、溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度を測定した。
(8)誘電正接(tanδ)
非結晶性ポリエステル樹脂を金型に入れ加圧してペレット(直径φ55mm、厚さ2mm)を作製し、LCRハイテスタ3522−50(日置電機株式会社製)にて、温度25℃、湿度60%RH、電圧5V、バイアスoffの条件下で印加周波数1.0kHzのときの誘電正接(tanδ)を測定した。
(9)非結晶性ポリエステル樹脂製造時の評価
(9−1) 反応系の均一さ
各原料を反応容器に仕込み、窒素通気中で攪拌しながら180℃になるまで加熱し、この時の混合物の可視光660nmの透過率を分光光時計により測定し、以下の基準で均一さを評価した。
A: 透過率が90%以上であり、均一透明である。
B: 透過率が75以上90%未満であり、一部不溶解物があるがほぼ均一透明である。
C: 透過率が75%未満であり、不均一で不溶解物が多く確認できる。
(9−2) 昇華抑制
芳香族ジカルボン酸化合物由来の昇華による問題の抑制度合いを下記基準にしたがって評価した。
<昇華抑制I(反応容器)>
触媒を添加した後の、芳香族ジカルボン酸化合物由来の昇華物の反応容器への付着度合いを目視で確認した。
A: 昇華物の付着がなく、昇華が確認されない。
B: 昇華物が僅かに付着している。
C: 昇華物が付着している。
D: 昇華物が大量に付着している。
<昇華抑制II(留出管)>
減圧反応時の、減圧ポンプと反応容器とを連結するガラス製留出管内への昇華物の堆積度合いを評価した。
A: 昇華物の堆積がなく、反応容器内の減圧度が目標に達している。
B: 昇華物の堆積があり、容器内の減圧度が目標に達しないことがある。但し、窒素の強制通気により回復する。
C: 昇華物の堆積があり、容器内の減圧度が目標に達しないことがあり、留出管の切替(すなわち、予備留出管への切替又は留出管の洗浄)が2回まで必要であった。
D: 昇華物の堆積があり、容器内の減圧度が目標に達しないことがあり、留出管の切替(すなわち、予備留出管への切替又は留出管の洗浄)が3回以上必要であった。
((a)成分の製造)
<製造例1>
予め乾燥させた反応容器にテレフタル酸ジメチル970g、エチレングリコールを682g、及び、触媒として酢酸亜鉛0.04gを仕込み、攪拌しながら窒素通気下で昇温し均一に溶解させた。次いで、この混合物を150℃まで昇温し、150℃で3時間エステル交換反応を行った後、210℃まで昇温し、未反応のエチレングリコールを留去し、反応物(a−1)を得た。
DSCにより求められた、この反応物(a−1)の融点は70.1℃であり、水酸基価は297mgKOH/gであった。平均分子量は、水酸基価から次式により378であると算出された。
平均分子量=56100÷(水酸基価)×2
<製造例2〜3>
原料及び組成(モル比)を表1のように変えた以外は製造例1と同様にして、反応物(a−2)及び(a−3)を得た。得られた反応物の融点、水酸基価、及び平均分子量を表1に示す。
(非結晶性ポリエステル樹脂の製造)
(実施例1)
予め充分乾燥させた反応容器に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2.2モル付加物456g、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2.3モル付加物923g、製造例1で得られた反応物(a−1)1058g、テトラプロペニル無水コハク酸56g、及び無水トリメリット酸を23g仕込み、窒素通気中で攪拌しながら180℃になるまで加熱した。このとき混合物は均一に溶解した状態となっていた。ここで、触媒として、n−テトラブトキシチタン0.7gを仕込み、240℃まで昇温し、最終的に反応容器内の圧力が2kPa以下になるまで減圧し、240℃で5時間重縮合反応を行った。
次いで、窒素にて反応容器内を常圧に戻し、再び、窒素通気下で酸価調整のために無水トリメリット酸23gを加え、210℃で1時間反応させ、非結晶性ポリエステル樹脂(A−1)を得た。
(実施例2〜12及び比較例1〜5)
原料及び組成(モル比)を表2〜表4のように変えた以外は実施例1と同様にして、非結晶性ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−12)及び(B−1)〜(B−5)を得た。
実施例及び比較例で得られた非結晶性ポリエステル樹脂の樹脂組成及び物性を表2〜表4にまとめる。なお、比較例5の非結晶性ポリエステル樹脂(B−5)はガラス転移点が低く過ぎるため、正確な動的粘弾性測定を行うことができなかった。また、表2〜表4において、EO、POはそれぞれエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを意味する。
(トナーの調製)
(実施例13〜24及び比較例6〜10)
実施例1〜12又は比較例1〜5により得られた非結晶性ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−12)及び(B−1)〜(B−5)を結着樹脂として用いてトナーを調製した。なお、各着色剤(カーボンブラック、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントレッド48:1の計4種)毎にトナー調製を行った。
表5〜表7に示す非結晶性ポリエステル樹脂100質量部、荷電調整剤「T−77」(保土谷化学工業株式会社製)4質量部、「パラフィンワックスHNP−9」(日本精蝋株式会社製)3質量、及び、着色剤7質量部を20L容量のヘンシェルミキサーにて1500rpmで60秒間混合した後、さらに着色剤7質量部を添加して10秒間混合した。得られた混合物を二軸押出機により溶融混練し、冷却した後、ハンマーミルで1mm程度に粗粉砕した。次いで、この粗粉砕物をエアージェット方式の粉砕機により微粉砕した後、ふるいにて分級し、体積中位粒径(d50)6.0μmの負帯電性のトナー粒子を得た。
(トナー性能評価)
フルカラー複合機「イプシオC−4500IT」(株式会社リコー製)を温度調節ができるように改造して評価を行った。上記のように調製した各トナーをトナーカートリッジに実装し、画像濃度が0.8〜0.85であるハーフトーン画像を90g/mのA4コピー用紙に印刷し評価した。温度は、定着ローラーと紙との間に薄膜温度計を設置し測定した。
調製した4色のトナーに対し、耐コールドオフセット性、耐ホットオフセット性、低温定着性、画像安定性、及び耐ブロッキング性を、下記基準に基づいて評価した。
<耐コールドオフセット性>
印刷速度50枚/分で印刷したときの、定着ローラーや印刷物の画像の汚れ具合を目視で確認し、以下の基準で判定した。
A判定: 130℃以下でも汚れが発生しない。
B判定: 140℃で汚れが発生しなくなる。
C判定: 150℃で汚れが発生しなくなる。
D判定: 160℃以上でも汚れが発生する。
<耐ホットオフセット性>
印刷速度50枚/分で印刷したときの、定着ローラーや印刷物の画像の汚れ具合を目視で確認を行い、以下の基準で判定した。
A判定: 230℃以上でも汚れが発生しない。
B判定: 230℃で少し汚れが発生するが、220℃では汚れが発生しない。
C判定: 220℃で少し汚れが発生するが、210℃では汚れが発生しない。
D判定: 210℃でも汚れが発生する。
<低温定着性>
印刷速度50枚/分で印刷したときの、紙への最低定着温度を測定し、以下の基準で判定した。なお、定着の基準は、印刷物の画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復擦り、摺擦前後の濃度低下率が5点平均で15%以下になる温度を定着温度とした。
A判定: 130℃以下で定着が可能。
B判定: 140℃で定着が可能。
C判定: 150℃で定着が可能。
D判定: 160℃以上の温度をかけないと定着できない。
<画像安定性>
温度可変のフルカラー複写機を用いて、印刷速度50枚/分で10万枚の印刷テストを行い、得られた印刷画像の濃度変化を目視にて以下の基準で評価した。
A判定: 画像濃度の変化が目視では確認できない。
B判定: 画像濃度が若干変化するが、実用には支障がない。
C判定: 画像濃度の変化がやや大きく、実用には支障がある。
D判定: 画像濃度の変化が著しく、画像が確認できないこともある。
<耐ブロッキング性>
トナー5gをガラス製の50mLサンプル瓶に入れ、温度50℃の乾燥機に24時間放置した後に室温で24時間冷却した。これを1サイクルとし、これを2サイクル繰り返した。2サイクル後のトナーの凝集状態を目視で観察し、以下の基準にしたがって評価した。
A判定: サンプル瓶を逆さにしたときにトナーが簡単に流動する。
B判定: サンプル瓶を逆さにして2〜3回叩くと流動する(固まりなし)。
C判定: サンプル瓶を逆さにして5〜6回叩くと流動する(一部固まり有)。
D判定: サンプル瓶を逆さにして叩いても流動しない。
<総合評価>
上記の評価において、4色のトナーに対し得られたA〜Dの判定に、以下の基準によりポイント付けを行った。
A判定: 5ポイント
B判定: 3ポイント
C判定: 1ポイント
D判定: 0ポイント
各評価項目について、4色のトナーの評価に付されたポイントの合計値を算出し、以下の基準により再評価して、非結晶性ポリエステル樹脂の総合評価とした。評価結果を表5〜表7にまとめる。
A: 合計ポイント数が16〜20ポイント
B: 合計ポイント数が11〜15ポイント
C: 合計ポイント数が6〜10ポイント
D: 合計ポイント数が0〜5ポイント
実施例1〜24の非結晶性ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−12)は、表2〜表4から分かるように特異的な貯蔵弾性率G’の挙動を示し、トナーの結着樹脂として使用した場合に、表5〜表7から分かるように、耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性という、相反する性能を併せ持ち、画像定着性、耐ブロッキング性にも優れている。
また、その製造は、反応系が均一に溶解した状態で進行しており、表2〜表4に示すとおり芳香族ジカルボン酸化合物による昇華物の発生もなく、留出管のつまり等のトラブルもなく、安定に製造が可能であることが分かる。
さらに、通常、多価カルボン酸化合物としてコハク酸等の脂肪族カルボン酸化合物を併用した場合にはガラス転移点が低下することが多いが、実施例の非結晶性ポリエステル樹脂では、多価アルコールとして、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を使用することにより、さらには、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物を併用することにより、ガラス転移点を維持し、耐ホットオフセット性を向上させることができる。
一方、(a)成分を使用した場合であっても重量平均分子量が低い非結晶性ポリエステル樹脂(B−1)では、領域2の開始温度T2S、温度幅(T2E−T2S)、領域2におけるlogG’の変化率の平均値が条件を満たさず、耐ホットオフセット性、耐ブロッキング性が得られない。
また、樹脂(B−5)のように、(a)成分を使用した場合であってもその使用量が少ないとガラス転移点が低くなり、トナーの結着樹脂としての適性がないことが分かる。
(a)成分を使用せずに製造された従来の非結晶性ポリエステル樹脂(B−2)、(B−3)は、耐ホットオフセット性、耐コールドオフセット性の両立ができず、耐ブロッキング性能も得られなかった。
非結晶性ポリエステル樹脂(B−4)では、耐コールドオフセット性、耐ホットオフセット性、低温定着性や画像安定性等のトナー性能が良好となるが、そもそも製造時の昇華問題が大きく、安定した生産が困難であるうえに、未反応物として残存する芳香族多価カルボン酸化合物(テレフタル酸ジメチル)が経時でトナー表面にブリードアウトして、耐ブロッキング性が不良となった。
本発明のように、多価カルボン酸化合物として、所定量の(a)芳香族多価カルボン酸と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を含むものを使用した場合には、特異的な貯蔵弾性率G’の挙動を示すポリエステル樹脂が得られる。この樹脂は、耐コールドオフセット性と耐ホットオフセット性という、相反する性能を併せ持ち、静電荷像現像用トナーの結着性樹脂として有用である。
また、上記の反応物を使用することにより、従来のポリエステル樹脂製造上の問題(例えば、芳香族ジカルボン酸化合物の昇華による反応モル比のコントロールの困難さ、反応の制御のしにくさ、製造設備への昇華物の付着、昇華物の堆積による製造効率の低下)の改善が可能となる。

Claims (9)

  1. 多価カルボン酸化合物と多価アルコールとを反応させてなる非結晶性ポリエステル樹脂であって、
    前記多価カルボン酸化合物は、(a)芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を、前記多価カルボン酸化合物の全量を基準として60モル%以上含み、
    前記非結晶性ポリエステル樹脂は、
    (I)ガラス転移点が55〜75℃であり、
    (II)重量平均分子量が10,000〜50,000であり、
    (III)動的粘弾性測定で、温度T[℃]に対する貯蔵弾性率G’[Pa]の常用対数logG’をプロットしたグラフにおいて、
    logG’の低下開始温度T1Sが55〜72℃であり、Tに対するlogG’の変化率が最大となる点Fにおける温度Tが65〜77℃であり、前記点Fにおける貯蔵弾性率G’が8.0×10〜4.0×10Paであり、かつT±2℃におけるTに対するlogG’の変化率の平均値が0.25〜0.30である、領域1と、
    貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa〜1.0×10Paである領域であって、貯蔵弾性率が1.0×10Paであるときの温度T2Sが74〜90℃であり、貯蔵弾性率が1.0×10Paであるときの温度T2Eと前記T2Sとの差が20〜40℃であり、かつ該領域におけるTに対するlogG’の変化率の平均値が0.05〜0.09である、領域2と、を有
    前記多価アルコールは、該多価アルコールの全量を基準として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含み、
    前記多価カルボン酸化合物は、該多価カルボン酸化合物の全量を基準として、3価以上のカルボン酸化合物を2〜30モル%含み、
    溶融粘度が10,000Pa・sとなるときの温度が90〜125℃である、
    非結晶性ポリエステル樹脂。
  2. 前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物との、モル比10:90〜50:50の混合物である、請求項1記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
  3. 前記多価アルコールは、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物を含む、請求項1又は2に記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
  4. 前記(a)芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物の平均分子量が300〜1500である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
  5. 重量平均分子量500以下の成分の含有量が5.0質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
  6. 酸価が4〜25mgKOH/gである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
  7. 印加周波数1kHzにおける誘電正接tanδが0.0015〜0.0060である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂を含む、静電荷像現像用トナー用結着樹脂。
  9. 前記(a)芳香族多価カルボン酸化合物と炭素数2〜4のグリコールとの反応物を、前記多価カルボン酸化合物の全量を基準として60モル%以上含む多価カルボン酸化合物と、前記多価アルコールとを、均一に溶解させた状態で反応させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
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