JP4980795B2 - 正孔注入層用溶液、有機el素子の製造方法 - Google Patents

正孔注入層用溶液、有機el素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、正孔注入層用溶液、有機EL素子の作製方法関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL)は、応答速度の速い自発光素子であり、発光材料を選択することにより、赤、緑、青、さらには白色の発光が得られることから、フルカラーディスプレイや照明機器としての応用が期待されている。
既に、小型のディスプレイ等で実用化もされている。しかしながら、従来の方法では、高精細、大面積の有機ELディスプレイを低コストで製造することは難しいので、インクジェット法により有機ELディスプレイを作製する方法が注目され始めている。
特許文献1〜3において、インクジェット法による有機EL素子の作製方法が開示されている。たとえば、発光機能、導電機能などを有する機能性有機材料を溶剤に溶解又は分散させてインクジェット用溶液を調整し、インクジェット法を用いて画素領域上に吐出し、その後溶剤成分を除去することによって、前記機能性有機材料からなる薄膜を形成して、赤、緑、青、の有機EL素子を画素として形成する。
インクジェット技術によって有機EL素子による画素を形成する際には、一般的に、一定の厚みを有する絶縁層を形成し、これを分離帯として各画素を分離し、さらに前記絶縁層の表面を撥液性とする。撥液性を有する絶縁層によって各画素が分離形成されているので、ある画素領域に吐出された溶液が隣接する画素領域に濡れ広がるのを防ぐことができる。
特許文献4、5には、発光層と正孔注入層とからなる積層構造が開示されている。正孔注入層を用いることで、電子と正孔の注入バランスを向上させ、再結合領域を制御することができ、発光効率や耐久性を向上させることができる。正孔注入層の形成には、まずインクジェット法で正孔注入層用溶液を画素領域に吐出し、それを乾燥させて正孔注入層とする。その後、発光層用溶液を正孔注入層上に塗布し、乾燥させて積層構造とする。
前記条件によって正孔注入層を形成した場合には、溶媒乾燥後の正孔注入層が画素領域内だけでなく、絶縁層の壁面や上面にまで形成されてしまう場合があった。正孔注入層の材料は、導電率の高い導電性高分子が使用されることが多いので、これが画素以外の絶縁層上に形成されてしまうと、この厚さ数十〜数百nmの有機薄膜である正孔注入層を通じて、電流リークが生じる場合があった。
さらに、画素領域以外の発光層の膜厚の薄い部分から無駄な発光を生じる場合も発生し、これらが有機ELディスプレイのコントラストを低下させたり、消費電力を増大させたり、画素欠陥を生じさせたりする原因となった。
図5は、従来の有機EL素子の作製方法の一例を説明する工程断面図である。図5(a)は、インクジェット法によって、開口部70に正孔注入層用溶液42からなる液滴を吐出した時点の断面模式図である。基板10上に陽極20が間隔をあけて設けられ、前記陽極20の端部の上と、陽極20が形成されていない基板10上の部分に絶縁層30が形成されている。開口部は、前記陽極20上の一部の絶縁層30が取り除かれることによって、形成されている。
前記正孔注入層用溶液42は、開口部70および開口部70の周辺部70a上に大きく盛り上がるように形成されている。
図5(b)は、乾燥工程により、正孔注入層用溶液42を乾燥させ、正孔注入層43が形成された時点の断面模式図である。
前記乾燥工程において、正孔注入層用溶液42の溶液が揮発していく過程では、乾燥がすばやくなされるので、まず、周辺部70aで前記溶液が揮発し、周辺部70a上に前記正孔注入層43は形成される。続いて、内壁部30aの上方から徐々に、前記正孔注入層43が形成され、最後に陽極20上の前記正孔注入層43が形成される。
従来、吐出した液滴が乾燥する際には、前記液滴は表面張力により中心部分に集まった後、蒸発していた。しかしながら、乾燥速度が速い場合や、液滴の表面張力が小さいときには、吐出した部分で等方的に乾燥を行う場合がある。液滴を吐出した領域の周辺内部をピンで留めるように乾燥が行われることから、これをピンニング現象という。
前記ピンニング現象により、陽極20の上だけに形成されるのではなく、絶縁層30の内壁部30a上、および周辺部70a上に正孔注入層43が形成される。
図5(c)は、発光層50および陰極60を形成した時点の断面模式図である。発光層50は、開口部70の内壁部30a上に形成された正孔注入層43上に形成されている。また、前記陰極60は、絶縁層30上と開口部70に形成された発光層50とを覆うように形成される。
図5(c)に示した有機EL素子では、陽極20と陰極60とに電圧を印加し、開口部70の正孔注入層43と発光層50との接合部分に電子とホールが注入し、発光層50で電界発光を行う。
しかしながら、正孔注入層43の材料として、たとえば、ポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDOT)とポリスチレンスルホネート(PSS)の混合物(PEDOT/PSS)を用いた場合には、前記混合物の比抵抗は、10〜10Ωcmであるので、前記電界発光の際、周辺部70aの正孔注入層43にも電子又はホールが流入してしまい、リーク電流を発生する場合があった。
さらに、前記周辺部70aにおける正孔注入層43上に発光層50が形成された場合には、周辺部70a上に発光層50に電子とホールが注入され、電界発光を行う場合があった。その結果、消費電力を増大させたり、コントラストを低下させるなどの問題を起こした。
以上のように、ピンニング現象が発生した有機EL素子においては、本来の有機EL素子形成部分である開口部70での発光効率が低下するほか、電流−発光特性が不安定になる場合があった。また、ディスプレイとしての消費電力を増加させ、コントラストを低下させるなどの問題を生じさせる場合があった。
特開平10−12377号公報 特開平11−40358号公報 特開平11−54270号公報 特開2004−87509号公報 特開2004−111367号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、有機EL素子をインクジェット技術で作製するのに好適な正孔注入層用溶液であって、有機EL素子の特性を悪化させるピンニング現象を防ぐのに好適な正孔注入層用溶液を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、
本発明の正孔注入層用溶液は、有機EL素子の正孔注入層をインクジェット技術で形成する際に使用される溶液であって、前記溶液は、水と、2−プロパノールと、N、N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンの何れか一方とからなる溶媒と、1種類以上の正孔注入層用材料とを含有し、前記溶液は、20℃において1mPa・s〜20mPa・sの粘度を有し、かつ、30mN/m〜70mN/mの表面張力を有しており、前記1種類以上の溶媒は、20℃で液体であり、前記水以外の前記溶媒の少なくとも1つが、150℃以上の沸点を有し、30mN/m以上の表面張力を有するものであり、かつ、前記溶液に10質量%以上含有されており、前記1種類以上の正孔注入層用材料は、前記溶液に0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする。
本発明の正孔注入層用溶液は、前記正孔注入層用材料として、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネ―トの混合物が含有されていることを特徴とする。
本発明の有機EL素子の製造方法は、一対の電極と、前記電極に挟まれた2層以上の有機薄膜層とからなる有機EL素子の製造方法であって、前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が正孔注入層であり、前記正孔注入層が、インクジェット法を用いて、請求項1または2に記載の正孔注入層用溶液を基板上に吐出して形成されることを特徴とする。
上記の構成によれば、有機EL素子をインクジェット技術で作製するのに好適な正孔注入層用溶液であって、有機EL素子の特性を悪化させるピンニング現象を防ぐのに好適な正孔注入層用溶液を提供することができる。
以下、本発明の実施形態である正孔注入層用溶液、前記正孔注入層用溶液を用いた有機EL素子の作製方法、および前記正孔注入層用溶液を用いた有機EL素子の一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態である正孔注入層用溶液を用いて作製した有機EL素子の図であって、(a)は平面模式図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面模式図の一部である。
本発明の実施形態である正孔注入層用溶液を用いて作製した有機EL素子は、基板10の上に、陽極20がライン状に形成され、それらの上に、絶縁層30が形成されている。前記絶縁層30には、開口部70が、例えばマトリックス状に設けられるとともに、前記陽極20の端部に、端子となる開口部71が設けられている。
前記開口部70においては、正孔注入層41、発光層50がこの順序で積層されている。さらに、前記陽極20のラインと垂直の方向に、各開口部70を覆うように陰極60が形成されている。
前記陽極20と前記陰極60とに電圧を印加することにより、陽極20から正孔が正孔注入層41に注入される。前記正孔は、前記正孔注入層41中を移動した後、発光層50に注入される。一方、陰極60からは、電子が発光層50に注入される。発光層50中で前記正孔と前記電子とが再結合し、電界発光する構成となっている。
以下、前記正孔注入層用溶液を用いた有機EL素子の製造工程の順に詳しく説明する。
有機EL素子の製造工程は、一般的には、陽極形成工程、絶縁膜形成工程、正孔注入層形成工程、発光層形成工程、陰極形成工程からなる。
(陽極20形成工程)
まず、基板10上に、陽極20をライン状に形成する。ラインの形成は、陽極20の形成の際、マスクを用いて形成するか、もしくは、全面に陽極20を形成した後、レジストを塗布し、ガラスマスクにより露光処理して、ラインパターンを形成する。
前記基板10は、透明な材料が好ましい。たとえば、ガラス、石英、その他プラスチックフィルム等を例示することができる。
前記陽極20は、透明で導電性の高い材料が好ましい。たとえば、インジウム−錫−酸化物(以下、ITO)あるいはインジウム−亜鉛−酸化物(以下、IZO)などの導電性透明酸化物を用いることができる。
(絶縁膜30形成工程)
次に、絶縁膜30を、前記陽極20を形成した基板10全面に形成する。次に、レジストを塗布し、ガラスマスクにより露光処理して、開口部70、および各陽極20の端部の開口部71を形成する。陽極20の端部の開口部71は、電圧を印加するときの端子取り付け部として用いる。
前記絶縁膜30としては、一般的に用いられる絶縁膜材料を用いることができる。たとえば、フッ化物、ポリイミドあるいはレジスト材料などを挙げることができる。
前記絶縁膜30は、撥液性であることが望ましい。具体的には、インクジェット法で吐出する溶液との接触角が50°以上あることが望ましい。前記接触角が50°以上ある場合には、インクジェット法により吐出された液滴が濡れ広がることがなく、隣接する開口部70へこの液滴が濡れ広がることを防ぐことができる。
たとえば、前記絶縁層30としてフッ化物を用いた場合には、フッ化物自身が表面エネルギーの低い材料なので、前記絶縁層30は撥液性となる。
また、前記絶縁層30としてポリイミドやレジスト材料などを用いた場合には、CFプラズマで表面処理をすることにより、前記絶縁層30を撥液性とすることができる。
(正孔注入層41形成工程)
次に、前記開口部70にインクジェット法により、正孔注入層用溶液を吐出する。
前記正孔注入層用溶液は、1種類以上の溶媒と、1種類以上の正孔注入層用材料とからなる。前記開口部70に前記正孔注入層用溶液を吐出し、それを乾燥させることによって、前記溶媒を揮発させ、前記開口部70に前記正孔注入層用材料のみを残すことができ、これにより正孔注入層41を形成できる。
前記正孔注入層用溶液は、20℃において1mPa・s〜20mPa・sの粘度を有し、30mN/m〜70mN/mの表面張力を有していることが好ましい。
前記範囲の粘度および表面張力を有する場合には、インクジェット法により、液滴を好適に吐出することができる。また、液滴乾燥後に、有機EL素子の正孔注入層41として好適な膜厚の薄膜を得ることができる。
前記正孔注入層用溶液に含有される溶媒は、20℃で液体であることが好ましい。インクジェット法などウエットプロセスによって好適に成膜することができるためである。
前記溶媒は、150℃以上の沸点を有し、かつ、30mN/m以上の表面張力を有する溶媒を10質量%以上含有することが好ましい。
前記特性を有する溶媒を10質量%以上含有すれば、インクジェット法により、基板上に液滴が吐出した後、ゆっくりと前記溶媒を揮発させて、液滴の大きさを徐々に収縮させることができ、ピンニング現象を抑制することができるためである。その結果、絶縁層30上には、正孔注入層41を形成せず、開口部70にだけ成膜することができる。
前記特性を有する溶媒を10質量%以上含有しない場合、あるいは溶媒が前記特性を有しない場合、すなわち、沸点が150℃未満であったり、表面張力が30mN/m未満である場合には、前記効果を発現させることはできず、前記溶媒がすばやく揮発し、ピンニング現象を起こすおそれが発生するので好ましくない。
前記特性を有する溶媒は、溶液に少なくとも1種類以上含有されていれば良く、たとえば、2種類の溶媒が含有されていてもかまわない。その場合、溶液に含有される溶媒の量が、それぞれ10質量%未満であっても、2種類の溶媒を合計して10質量%以上含有されていればかまわない。
さらに、前記正孔注入層用材料と混合する溶媒としては、極性溶媒が好ましく、N、N−ジメチルホルムアミド、N,N―ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどを挙げることができる。前記極性溶媒は、前記正孔注入層用材料45をよく溶解することができるためである。PEDOT/PSS混合材料のようなポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネ―トの混合物を用いる場合には、N−メチル−2−ピロリドンが、前記極性溶媒の中でも特に好ましい。
正孔注入層用溶液に含有される正孔注入層用材料は、前記溶液に0.1〜10質量%含有されていることが好ましい。0.1質量%未満では、正孔注入層用材料の量が少なすぎるため、インクジェット法により基板上に吐出させて、乾燥させたときに、正孔注入層41の膜厚が薄すぎるものとなる。逆に、10質量%超の場合には、溶媒に対して正孔注入層用材料の量が多すぎるので、インクジェット法による吐出量の精度が低下する。その結果、膜厚を高精度で制御することができなくなる。
前記正孔注入層用溶液に含有させる正孔注入層用材料は、導電性の高い材料が好ましい。たとえば、PEDOT/PSS混合材料、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料などを挙げることができる。
図2(a)は、上記の正孔注入層用溶液40を、前記開口部70に吐出した時点の断面模式図である。
吐出された前記正孔注入層用溶液40は、その表面張力によって、開口部70および周辺部70a上に、その液面が大きく盛り上がる。前記正孔注入層用溶液40に対して、絶縁層30は接触角が50°以上となる撥液性を有しているので、これ以上濡れ広がることはない。
図2(b)は、乾燥工程を行い、正孔注入層用溶液40を乾燥させ、正孔注入層41を形成した状態を示す断面模式図である。
前記正孔注入層用溶液40は、前記溶媒と1種類以上の正孔注入層用材料45を有しているので、インクジェット法により、開口部70に液滴を吐出させた後、前記溶媒を乾燥させることによって、ピンニング現象を発生させることなく、正孔注入層用材料からなる正孔注入層41を形成することができる。
なお、前記乾燥工程を行った後、正孔注入層41には前記溶媒がわずかに残留する場合がある。前記残留溶媒は、正孔注入層41における導電性を向上し、有機EL素子の発光特性を向上させることができる場合があるので、発光特性に悪影響を及ぼさない範囲で残留することに問題はない。
なお、残留成分については、NMR、GC/MS、FT−IRなどの分析手法を用いて検出すればよい。
(発光層50形成工程)
次に、図2(c)に示すように、スピンコーティング法により、発光層50を形成する。まず、正孔注入層41までを形成した前記基板10をスピンコーターの冶具取り付け部にセットし、所定の回転速度とした後、発光層用溶液を塗布する。所定の成膜条件で、スピンコーティングを行うことにより、開口部70内に所定の膜厚の発光層50を形成することができる。
なお、発光層50の材料としては、溶媒への溶解性および成膜性を考慮して、高分子化合物が好ましい。特に、電荷輸送性および発光性の高い高分子化合物が好ましく、たとえば、ポリ(パラフェニレンビニレン)(以下、PPV)、前記PPV誘導体、ポリフルオレン(以下、PFO)、前記PFO誘導体、ポリビニルカルバゾール(以下、PVCz)、前記PVCz誘導体、トリフェニルアミン、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体、およびこれらの共重合高分子化合物などを挙げることができる。
前記発光層50はスピンコーティング法で作成したが、インクジェット法など他のウエット・プロセスによる成膜手法を用いてもかまわない。
また、前記高分子化合物に、電荷輸送性材料あるいは発光色素などを分散させてもかまわない。これらの材料を分散させることにより、発光波長を変えることができ、また、発光特性を上げることができる。
さらに、発光層50の上に正孔阻止層あるいは電子輸送層などを積層してもかまわない。前記正孔阻止層あるいは電子輸送層を設けることにより、さらに有機EL素子の発光特性を向上させることができる。
(陰極60形成工程)
最後に、図2(c)に示すように、真空蒸着法により、陰極60を形成する。まず、発光層50までを形成した前記基板10を真空蒸着器のチャンバー内の所定の位置に取り付け、前記基板10の表面には、ライン状の開口部が設けられた金属マスクを配置する。その後、前記チャンバー内を減圧状態にし、金属材料を真空蒸着することによって、ストライプ状の前記金属材料からなる陰極60を前記基板10上に形成する。
図2(c)は、前記陰極60を形成した時点の断面模式図である。前記陰極60は、絶縁層30上と開口部70上を覆って、陽極20と垂直の方向に、ストライプ状に形成されている。
前記陰極60は、仕事関数の低い金属が好ましい。仕事関数の低い金属を用いることにより、陰極60と発光層50との間の電子注入障壁を低くすることができ、陰極60から発光層50へ電子を注入させやすくすることができるためである。仕事関数の低い金属としては、たとえば、Li、Csなどのアルカリ金属、Ca、Ba、Mgなどのアルカリ土類金属を例示することができる。
しかしながら、前記仕事関数の低い金属は、空気中の酸素や水分などと反応しやすいので、MgAgなどの前記金属を含む合金、あるいはLiF、LiO、CsFなどの前記金属を含む化合物などとして形成することが好ましい。あるいは、前記アルカリ金属、アルカリ土類金属の上に、AlもしくはAuなどの仕事関数の高い金属を積層して形成することが望ましい。
以下、本発明の実施形態の効果について説明する。
本発明の実施形態である正孔注入層用溶液は、20℃で液体である1種類以上の溶媒と、1種類以上の正孔注入層用材料とからなり、前記溶液は、20℃において1mPa・s〜20mPa・sの粘度を有し、かつ、30mN/m〜70mN/mの表面張力を有するので、インクジェット法により好適に液滴を吐出することができる。
本発明の実施形態である正孔注入層用溶液は、150℃以上の沸点を有し、かつ、30mN/m以上の表面張力を有する溶媒を10質量%以上含有しているので、インクジェット法により吐出された液滴を、ゆっくりと蒸発させることができ、液滴の大きさを徐々に収縮させることができる。そのため、瞬間的に蒸発する溶媒を用いた場合に発生するピンニング現象を発生させることがない。そのため、ピンニング現象に起因する有機EL素子のリーク電流などの発生を抑制することができる。
本発明の実施形態である正孔注入層用溶液は、正孔注入層用材料として、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネ―トの混合物を含有し、極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンを溶媒として含有しているので、ピンニング現象を抑制することができる。そのため、ピンニング現象に起因する有機EL素子のリーク電流などの発生を抑制することができる。
本発明の実施形態である有機EL素子の作製方法は、先に記載の正孔注入層用溶液を、インクジェット法により吐出して、正孔注入層を形成することを特徴とする有機EL素子の作製方法なので、インクジェット法により液滴を吐出させても、ピンニング現象を起こすおそれがない。そのため、ピンニング現象に起因する有機EL素子のリーク電流などの発生を抑制することができる。
本発明の実施形態である有機EL素子は、正孔注入層に、150℃以上の沸点を有し、かつ30mN/m以上の表面張力を有する溶媒成分が残留してなることを特徴とする有機EL素子なので、正孔注入層における導電性を向上させ、有機EL素子の発光特性を向上させることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
(正孔注入層用溶液の調整)
本発明の正孔注入層用の高分子材料を調整した。
まず、(1)式で示すPEDOTと(2)式で示すPSSを含む混合水溶液(H.C.スタルク社製(H.C.Starck)、Baytron P CH8000、固形分3%、以下、PEDOT/PSS混合水溶液)を用意した。
Figure 0004980795
Figure 0004980795
次に、前記PEDOT/PSS混合水溶液を30wt%に対し、N−メチル−2−ピロリドンを20wt%、2−プロパノールを10wt%、水を40wt%として、これらを混合し、正孔注入層用溶液として調整した。
また、調整した正孔注入層用溶液の一部を用いて、表面張力と粘度の測定を行った。
(発光層用溶液の調整)
次に、本発明の発光層用の高分子材料を調整した。
まず、(3)式で表される分子構造を有するトリフェニルアミンとオキサジアゾールの共重合高分子Poly[HMTPD−PBD]と、(4)式で表される構造を有するイリジウム錯体Ir(ppy)とを用意し、これらを、9:1の重量比でトルエンに溶解させ、発光層用溶液を調整した。
Figure 0004980795
Figure 0004980795
(素子作成)
25×35mm角のガラス基板上にITO陽極をパターニングし、その上部に厚さ2μmのポリイミド層を形成した。その後、フォトリソグラフィー法で、前記ポリイミド層に250μm×90μmの楕円形状の開口部を6×9個形成し、ITO表面を露出させた。
次に、ポリイミドおよびITO表面をOプラズマ処理によりクリーニングし、CFプラズマ処理を行い、ポリイミド表面を撥液性とした。
その後、前記正孔注入層用溶液をインクジェット法により、開口部に吐出した後、180℃で1時間乾燥させて、正孔注入層とした。
その後、前記発光層用溶液を、スピンコーティング法で塗布した後、160℃で1時間乾燥させて、発光層とした。
次に、メタルマスクを用いて、バリウムとアルミニウムを同時に真空蒸着し、ストライプ状の陰極を形成した。最後に、UV硬化樹脂により、ガラスキャップを基板上に接着し、有機EL素子を封止した。
このようにして作製した有機EL素子の陽極と陰極との間に電圧を印加したところ、ポリイミドをエッチングした開口部においてのみ発光が見られた。
図3(a)に示した写真が、得られた発光状態である。
外部量子効率は、7.4%(100cd/m時)であった。
また、NMR、GC/MS、FT/IRなどの分析手法を用いて、正孔注入層にN−メチル−2−ピロリドンの残留成分が存在していることが分かった。
以上、実施例1の正孔注入層用溶液に使用した溶媒の種類、その混合比、正孔注入層用溶液の表面張力および粘度の測定結果、発光写真の観察結果は表1に示した。
なお、発光写真の観察結果は、開口部のみから発光が得られたサンプルを○と評価し、開口部以外からの発光が観察されたサンプルを×と評価した。
(比較例1)
前記正孔注入層用溶液の調整の際、N−メチル−2−ピロリドンを混合せず、前記PEDOT/PSS混合水溶液を30wt%に対し、2−プロパノールを20wt%、水を50wt%として、これらを混合し、正孔注入層用溶液として調整した。
この正孔注入層用溶液を用いたほかは、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製し、発光状態を写真観察した。
このようにして作製した素子の陽極と陰極との間に電圧を印加したところ、開口部以外にも、その周辺部分で発光が見られた。よって、発光写真の観察結果は、×と評価した。
図3(b)に示した写真が、得られた発光状態である。また、外部量子効率は、6.5%(100cd/m時)であった。実施例1に比較して、外部量子効率は良くなかった。
比較例1の実験条件および実験結果も表1に合わせて示した。
(比較例2)
前記正孔注入層用溶液の調整の際、N−メチル−2−ピロリドンを混合せず、前記PEDOT/PSS混合水溶液を30wt%に対し、2−エトキシエタノールを40wt%、水を30wt%として、これらを混合し、正孔注入層用溶液として調整した。
この正孔注入層用溶液を用いたほかは、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製し、発光状態を写真観察した。
このようにして作製した素子の陽極と陰極との間に電圧を印加したところ、開口部以外にも、その周辺部分で発光が見られた。よって、発光写真の観察結果は、×と評価した。
図3(c)に示した写真が、得られた発光状態である。また、外部量子効率は、4.0%(100cd/m時)であった。実施例1に比較して、外部量子効率は良くなかった。
比較例2の実験条件および実験結果も表1に合わせて示した。
(実施例2)
前記正孔注入層用溶液の調整の際、前記PEDOT/PSS混合水溶液を30wt%に対し、N−メチル−2−ピロリドンを40wt%、2−プロパノールを10wt%、水を20wt%として、これらを混合し、正孔注入層用溶液として調整した。
この正孔注入層用溶液を用いたほかは、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製し、発光状態を写真観察した。
図4(a)に示した写真が、得られた発光状態である。よって、発光写真の観察結果は、○と評価した。
(実施例3)
前記正孔注入層用溶液の調整の際、N−メチル−2−ピロリドンに代えて、表2に示す各種極性溶媒を用いたほかは、実施例2と同様にして、有機EL素子を作製し、発光状態を写真観察した。
図4(b)に示した写真が、得られた発光状態である。
以上、実施例3において用いた正孔注入層用溶液の表面張力、粘度の測定結果と、発光写真の観察結果を表1にまとめた。
実施例1では、N−メチル−2−ピロリドンを添加することによって、溶液の表面張力が増加するとともに、溶液の粘度が、9.5mPa・sとなり、発光写真の観察結果で分かる通り、開口部のみから、均一な発光が得られた。
逆に、比較例1、2では、溶液の表面張力は、30mN/m、35mN/mであり、30mN/m〜70mN/mの範囲内であったが、使用溶媒の表面張力が30mN/m以下であるため、発光写真の観察結果で分かる通り、開口部以外にも、その周辺部分で発光が見られた。
Figure 0004980795
また、今回使用した溶媒の沸点、表面張力および粘度を表2にまとめた。
Figure 0004980795
本発明は、正孔注入層用溶液、インクジェット法を用いた有機EL素子の製造方法、有機EL素子に関するものであり、有機EL素子を利用した発光素子、照明機器、ディスプレイ産業において利用可能性がある。
本発明の実施形態である有機EL素子の一例を説明する図であって、(a)は平面模式図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面模式図である。 本発明の実施形態である有機EL素子の製造方法の一例を説明する工程断面図である。 本発明の実施形態である有機EL素子の発光写真であって、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)は比較例2のサンプルの発光写真である。 本発明の実施形態である有機EL素子の発光写真であって、(a)は実施例2、(b)は実施例3のサンプルの発光写真である。 従来の有機EL素子の製造方法の一例を説明する工程断面図である。
符号の説明
10…基板、20…陽極、30…絶縁層、30…内壁部、40…正孔注入層用溶液、41…正孔注入層、42…正孔注入層用溶液、43…正孔注入層、50…発光層、60…陰極、70…開口部、70a…周辺部、71…開口部。

Claims (3)

  1. 有機EL素子の正孔注入層をインクジェット技術で形成する際に使用される溶液であって、
    前記溶液は、水と、2−プロパノールと、N、N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンの何れか一方とからなる溶媒と、1種類以上の正孔注入層用材料とを含有し、
    前記溶液は、20℃において1mPa・s〜20mPa・sの粘度を有し、かつ、30mN/m〜70mN/mの表面張力を有しており、
    前記溶媒は、20℃で液体であり、
    前記水以外の前記溶媒の少なくとも1つが、150℃以上の沸点を有し、30mN/m以上の表面張力を有するものであり、かつ、前記溶液に10質量%以上含有されており、
    前記正孔注入層用材料は、前記溶液に0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする正孔注入層用溶液。
  2. 前記正孔注入層用材料として、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネ―トの混合物が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の正孔注入層用溶液。
  3. 一対の電極と、前記電極に挟まれた2層以上の有機薄膜層とからなる有機EL素子の製造方法であって、
    前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が正孔注入層であり、
    前記正孔注入層が、インクジェット法を用いて、請求項1または2に記載の正孔注入層用溶液を基板上に吐出して形成されることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
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