発明の簡単な概要
本発明は、定量的増幅反応を実施する新たな方法を提供する。その方法は、プローブ、ポリメラーゼ活性を有している酵素、および3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有している酵素を利用する。多くの場合、プローブの3'ヌクレオチドはミスマッチである。3'ヌクレオチドは増幅反応中にプローブから切断される。その反応は、反応中に放出される切断産物の量を検出することにより定量化される。
従って、本発明は、増幅反応において標的核酸を定量化する方法を提供する。その方法は、増幅プライマーおよびプローブが標的核酸鋳型に特異的にハイブリダイズし、標的核酸を増幅するために増幅プライマーがポリメラーゼにより伸長され、プローブが標的核酸に特異的にハイブリダイズした場合に、3'ヌクレオチドがプローブから切断されるような条件の下で、標的核酸を含む鋳型を、増幅プライマー、プローブ、ポリメラーゼ、および3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有している酵素と共にインキュベートする段階;ならびに切断産物を検出し、それにより標的核酸を定量化する段階を含む。典型的には、増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応である。増幅反応は、複数の標的が同定される多重反応であってもよい。
典型的な態様において、3'ヌクレオチドは検出部分に連結される。その他の態様において、検出部分は内部ヌクレオチドに連結される。3'ヌクレオチドは、多くの場合、標的核酸配列に対して、例えば、標的核酸配列の不変性(非多形性)の位置においてミスマッチである。いくつかの態様において、付加的な3'ヌクレオチド、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、または7個、またはそれ以上の3'ヌクレオチドが、標的核酸に対してミスマッチであってもよい。いくつかの態様において、付加的なミスマッチは、標的核酸配列とのハイブリダイゼーションの前に上流プローブ配列と共にステム-ループ構造を形成する。
いくつかの態様において、プローブは、3'ミスマッチ・ヌクレオチドに隣接した3'末端にTCAGCを含む。TCAGCは、典型的には、標的核酸配列とマッチする。その他の態様において、プローブは、例えば、プローブを三等分したものの中央に、脱塩基部位を含む。その他の態様において、プローブは脱塩基部位および標識された内部ヌクレオチドを含む。プローブは、脱塩基部位、内部標識、および1個以上、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、または7個、またはそれ以上の3'ミスマッチ・ヌクレオチドを含んでいてもよい。
切断された3'ヌクレオチド、即ち、反応中に生成した切断産物の量は、多数のアッセイ法、特に、ヌクレオチドが切断された際の蛍光の変化、例えば、蛍光強度、蛍光偏光、蛍光エネルギー転移等を検出するものを使用して検出され得る。
いくつかの態様において、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有している酵素およびポリメラーゼは、同一ポリペプチドである。多くの場合、酵素は、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性およびポリメラーゼ活性の両方を供給するプルーフリーディング・ポリメラーゼである。その他の態様において、それらは異なるポリペプチドである。例示的な態様において、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性は、ポリメラーゼ活性を有していないか、または親ポリメラーゼと比較して有意に低下したポリメラーゼ活性を有している変異エラー修正ポリメラーゼ、例えば、配列番号:2もしくは配列番号:4に示されるポリメラーゼ配列を有しているポリメラーゼにより提供される。さらなる態様において、(実質的なポリメラーゼ活性を欠く)変異エラー修正ポリメラーゼは、親エラー修正ポリメラーゼと比較して、一本鎖エキソヌクレアーゼ活性に対する二本鎖エキソヌクレアーゼ活性の比率の増加を有していてもよい。特定の態様において、変異エラー修正ポリメラーゼは、親タンパク質に比べて増強された、二本鎖核酸基質に対するエキソヌクレアーゼ活性と一本鎖核酸基質に対するエキソヌクレアーゼ活性との比率をもたらす変異を、YxGGモチーフまたはdNTP結合モチーフに有している。従って、例示的な態様において、変異エラー修正ポリメラーゼは、配列番号:2または配列番号:4のポリペプチドと比べた、二本鎖核酸基質に対するエキソヌクレアーゼ活性と一本鎖核酸基質に対するエキソヌクレアーゼ活性との比率の増加をもたらす変異が、YxGGモチーフまたはdNTP結合モチーフに存在する、配列番号:2または配列番号:4に示されるようなポリメラーゼ配列を有している。
多くの場合、酵素は熱安定性である。さらに、ポリメラーゼおよび/または3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有している酵素は、ホットスタート酵素であってもよい。
本発明の方法において使用され得る例示的なポリメラーゼには、ファミリーAポリメラーゼ、例えば、いくつかの態様において、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性が欠損しているか、もしくは5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を有していないファミリーAポリメラーゼ;またはピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)のようなファミリーBポリメラーゼ;またはハイブリッド・タンパク質、例えば、親ポリメラーゼのうちの一つがPfuポリメラーゼのようなファミリーBポリメラーゼであるポリメラーゼ・ハイブリッドが含まれる。さらに、ポリメラーゼは、Sso7ドメイン、例えば、Sso7d、Sac7d、またはSac7eドメインのような配列非特異的二本鎖核酸結合ドメインを含んでいてもよい。一つの態様において、ポリメラーゼは、Sso7ドメイン、例えば、Sso7d、Sac7d、またはSac7eも含む、Pfu親ポリメラーゼから遺伝子操作されたハイブリッド・ポリメラーゼである。
プローブは、3'末端、または(10ヌクレオチド以内のような)3'末端近傍の内部残基において、例えば、蛍光部分で単一標識されてもよいが;多くの場合、2個の相互作用部分で二重標識され、そのうちの一つは、多くの場合、3'末端にある。相互作用し得る二重標識の例には、蛍光が変化するよう相互作用する二つの蛍光分子、または蛍光部分および消光部分が含まれる。蛍光標識および消光剤を利用する態様において、標識または消光剤のいずれかは、オリゴヌクレオチド・プローブの3'末端(または内部ヌクレオチド)にあり得る。従って、第二の標識は、プローブの内部またはプローブの5'末端に置かれ得る。末端、例えば、3'末端の標識は、ヌクレオチドまたは骨格に付着させられ得る。
もう一つの態様において、プローブはマイナーグルーブ結合剤(MGB)を含み得る。例示的な態様において、MGBはプローブの5'末端にある。
さらに、プローブは、任意で、一つ以上のホスホロチオエート結合を含み得る。例えば、ホスホロチオエート結合は、多くの場合、3'末端の最後のヌクレオチドと最後から2番目のヌクレオチドとの間に位置付けられる。
反応中に生成される切断産物の量は、以下に制限はされないが、蛍光強度、蛍光偏光、および質量分析を含む多数の方法によって決定され得る。多くの場合、反応混合物中に存在する出発標的核酸の量は、サイクル閾値(cycle threshold)(Ct)により定量化される。
発明の詳細な説明
本発明は、定量的PCRを実施する新たな方法を提供する。その方法は、3'末端から切断されるオリゴヌクレオチド・プローブの使用を含む。プローブは、ポリメラーゼ活性を有している酵素および3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有している酵素を利用する増幅反応の成分である。従って、多くの場合、ポリメラーゼ活性および3'→5'エキソヌクレアーゼ活性の両方を供給するプルーフリーディング・ポリメラーゼが、反応において利用され得る。本発明の一般的な原理は、図1に図示された態様において例示される。
定義
「ポリメラーゼ」とは、DNAまたはRNAを鋳型として使用したヌクレオチド鎖へのヌクレオチド単位の付加によるポリヌクレオチド合成を触媒する酵素を指す。その用語は、完全な酵素または触媒性ドメインのいずれかを指す。
「ドメイン」とは、定義された機能を有している、ポリペプチド部分配列、完全ポリペプチド配列、または複数のポリペプチド配列を含む、タンパク質またはタンパク質複合体の単位を指す。機能は、広範に定義されるものであることが理解され、リガンド結合、触媒活性であってもよいし、またはタンパク質の構造に対する安定化効果を有していてもよい。
「3'→5'エキソヌクレアーゼ」または「3'→5'エキソヌクレアーゼ活性」という用語は、DNA分子の3'末端からのモノヌクレオチドの段階的な除去を触媒するタンパク質またはタンパク質のドメインを指す。
「エラー修正活性」とは、3'→5'エキソヌクレアーゼ・プルーフリーディング活性を指す。プルーフリーディング活性は、ミスマッチ・ヌクレオチドを優先的に除去する、即ち、プルーフリーディング酵素により3'末端から除去されるヌクレオチドの量は、(同一の反応条件の下で)3'ヌクレオチドがマッチしている場合と比較して、3'ヌクレオチドがミスマッチである場合の方が大きい。典型的には、その用語は、鋳型とワトソンクリック型の塩基対を形成しないヌクレオチドが、オリゴヌクレオチド、即ち、鋳型から合成された鎖の3'末端から逐次的に除去されるような、鋳型特異的な核酸ポリメラーゼに関して使用される。エラー修正活性を有しているポリメラーゼの例には、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、およびサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)に由来するポリメラーゼが含まれる。
「配列非特異的核酸結合ドメイン」とは、同一のヌクレオチド組成を有するが異なるヌクレオチド配列を有するもう一つの核酸より100倍超大きい親和性でそのタンパク質ドメインに結合する既知の核酸が存在しないような、核酸と有意な親和性で結合するタンパク質ドメインを指す。
「融合した」とは、共有結合性の結合による連結を指す。
「異種」とは、タンパク質の一部に関して使用された場合、タンパク質が、自然界においては相互に同一の関係で見出されない2個以上のドメインを含むことを示す。そのようなタンパク質、例えば、融合タンパク質は、新たな機能性タンパク質を作成するために配置された、無関係なタンパク質に由来する2個以上のドメインを含有している。
「接合する」とは、以下に制限はされないが、介在ドメインを含む、または含まない組換え融合、インテインにより媒介された融合、非共有結合、ならびにジスルフィド結合;水素結合;静電結合を含む共有結合;ならびに三次元的結合、例えば、抗体-抗原結合およびビオチン-アビジン結合を含む、タンパク質ドメインを機能的に接続するための当技術分野において既知の任意の方法を指す。
「熱安定性ポリメラーゼ」とは、本明細書において使用されるように、DNAまたはRNAを鋳型として使用したヌクレオチド鎖へのヌクレオチド単位の付加によるポリヌクレオチド合成を触媒し、かつ45℃を超える温度において最適な活性を有している任意の酵素を指す。
「増幅反応」という用語は、核酸の標的配列のコピー数を増大させるための任意のインビトロの手段を指す。
「増幅」とは、反応の成分が全て完全である場合にポリヌクレオチドの増幅を可能にするのに十分な条件に、溶液を供する工程を指す。増幅反応の成分には、例えば、プライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ポリメラーゼ、ヌクレオチド等が含まれる。「増幅」という用語は、典型的には、標的核酸の「指数関数的な」増加を指す。しかしながら、「増幅」とは、本明細書において使用されるように、核酸の選択された標的配列の数の直線的な増加も指す。
「増幅反応混合物」という用語は、標的核酸を増幅するために使用される様々な試薬を含む水性溶液を指す。これらは、酵素、水性緩衝液、塩、増幅プライマー、標的核酸、およびヌクレオシド三リン酸のような成分を含む。状況に依って、混合物は、完全な増幅反応混合物であってもよいし、または不完全な増幅反応混合物であってもよい。
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」とは、標的二本鎖DNAの特定のセグメントまたは部分配列が幾何級数的に増幅される方法を指す。PCRは当業者に周知であり;例えば、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号;ならびにPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.,eds, 1990;Sambrook and Russell, MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL(3rd ed. 2001);ならびにCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Ausubel et al.,eds., John Wiley & Sons,Inc. 1994-1997, 2001 version)を参照のこと。
「プライマー」とは、標的核酸鋳型上の配列にハイブリダイズし、核酸合成開始の起点としてはたらくポリヌクレオチド配列を指す。本発明に関して、プライマーは、標的核酸の増幅に参与する増幅反応の成分である。プライマーは、多様な長さであってよく、多くの場合、50ヌクレオチド長未満、例えば、12〜25ヌクレオチド長である。PCRにおいて使用するためのプライマーの長さおよび配列は、当業者に既知の原理に基づいて設計され得、例えば、Innis et al. 前記を参照のこと。
「プローブ」とは、関心対象の標的ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができ、選択のポリヌクレオチド配列の特異的な検出を可能にするポリヌクレオチド配列を指す。例えば、「プローブ」は、蛍光試薬または消光試薬に連結され、それにより、これらの試薬の検出を可能にするポリヌクレオチドを含み得る。
「ミスマッチ・ヌクレオチド」または「ミスマッチ」とは、その位置において標的配列に相補的でないヌクレオチドを指す。
「部分配列」という用語は、第二の配列内で隣接しているが、第二の配列のヌクレオチドの全てを含んではいないヌクレオチドの配列を指す。
「標的」または「標的核酸配列」とは、増幅反応において増幅されようとしている一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチド配列を指す。二つの標的配列は、同一でないポリヌクレオチド配列を含む場合、異なっている。標的核酸配列は、典型的には、増幅反応においてプライマー・セットにより増幅される。
「温度プロファイル」とは、PCR反応の変性、アニーリング、および/または伸長の工程の温度および時間の長さを指す。PCR反応のための温度プロファイルは、典型的には、類似または同一の比較的短い温度プロファイルの10〜60回の反復からなり;これらの比較的短いプロファイルの各々は、典型的には、2工程または3工程のPCR反応を定義する。「温度プロファイル」の選択は、当業者に既知の様々な考慮に基づいており、例えば、Innis et al. 前記を参照のこと。本明細書に記載されるようなロング(long)PCR反応においては、5kb長以上の増幅産物を入手するために必要とされる伸長時間が、従来のポリメラーゼ混合物と比較して短縮されている。
増幅またはPCRの「感度」とは、低いコピー数で存在する標的核酸を増幅する能力を指す。「低いコピー数」とは、増幅される核酸試料中の標的配列の、105、多くの場合、104、103、102、またはそれ未満のコピー数を指す。
「鋳型」とは、プライマー・ハイブリダイゼーション部位が両側に隣接している増幅すべき標的ポリヌクレオチドを含む二本鎖ポリヌクレオチド配列を指す。従って、「標的鋳型」は、標的ポリヌクレオチド配列ならびに両側に隣接する5'プライマーおよび3'プライマーのためのハイブリダイゼーション部位を含む。
「多重増幅」とは、同一の反応における複数のポリヌクレオチド断片の増幅を指す(例えば、PCR PRIMER, A LABORATORY MANUAL (Dieffenbach,ed. 1995) Cold Spring Harbor Press, p.157-171を参照のこと)。
「多形」とは、対立遺伝子変種である。多型には、一塩基多型も、単純な配列長多型も含まれ得る。多型は、一つの対立遺伝子における、もう一つの対立遺伝子と比較した一つ以上のヌクレオチド置換によるものであってもよいし、または挿入もしくは欠失によるものであってもよい。
序論
定量的増幅を実施するための先行技術は、3'標識または二重標識されたハイブリダイゼーション・プローブ、および3'エキソヌクレアーゼ活性を有している酵素を含む反応を利用していない。例えば、以前の出願においては、増幅産物がまず入手され、次いで、増幅産物にハイブリダイズしたプローブからの3'標識放出の量を測定することにより定量化されるか(例えば、米国特許第6,653,078号参照);または3'標識されたオリゴヌクレオチドが、特定のヌクレオチドをクエリーし(queries)、プライマーとして増幅(またはプライマー伸長)反応に参与する(例えば、米国特許第5,391,480号;米国特許第6,248,526号;米国特許出願第20020142336号)。本発明においては、プローブが、鋳型を増幅するプライマーと共に増幅反応に含まれる。さらに、プローブは特定の核酸位置をクエリーせず、典型的には、任意の関心対象の核酸配列を検出するために設計される。本発明のポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、およびプローブ成分を、さらに詳細に以下に記載する。
本発明において有用なポリメラーゼ
多様なポリメラーゼが、本発明の方法において使用され得る。少なくとも5つのDNA依存性DNAポリメラーゼのファミリーが既知であるが、大部分はファミリーA、B、およびCに属する。様々なファミリーの間には構造または配列の類似性はほとんどまたは全く存在しない。大部分のファミリーAポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性、および5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を含む複数の酵素機能を含有しているかもしれない単鎖タンパク質である。ファミリーBポリメラーゼは、典型的には、ポリメラーゼ活性および3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有する単一触媒ドメイン、ならびに補助因子を有している。ファミリーCポリメラーゼは、典型的には、重合活性および3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有するマルチ・サブユニット・タンパク質である。大腸菌においては、DNAポリメラーゼI(ファミリーA)、II(ファミリーB)、およびIII(ファミリーC)という三つの型のDNAポリメラーゼが見出されている。真核細胞においては、三つの異なるファミリーBポリメラーゼ、DNAポリメラーゼα、δ、およびεが、核複製に関与しており、ファミリーAポリメラーゼ、ポリメラーゼγが、ミトコンドリアDNA複製のために使用されている。その他の型のDNAポリメラーゼには、ファージ・ポリメラーゼが含まれる。
多くの場合、プルーフリーディング・ポリメラーゼが、本発明において使用される。前述のように、プルーフリーディング・ポリメラーゼは、鋳型により指示されたデオキシリボヌクレオチド三リン酸からのDNAの合成を触媒する能力を有し、かつ3'→5'プルーフリーディング・エキソヌクレアーゼ活性も有しており、従って、ミスマッチ・ヌクレオチドが標的配列とハイブリダイズした場合には、オリゴヌクレオチドの3'末端またはその近傍においてそれを切除することができる。プルーフリーディング酵素は、典型的には、B型ポリメラーゼである。熱安定性B型ポリメラーゼは、サイクリング反応において特に有用であり、これらには、ピロコッカス・ポリメラーゼ、例えば、Pfu、Pwo、Pho、Pab、Pko、Pglポリメラーゼ;サーモコッカス・ポリメラーゼ、例えば、サーモコッカス・リトラリス、サーモコッカス・バロッシイ(barossii)、およびサーモコッカス・ゴルゴナリウス(gorgonarius)のポリメラーゼ;ならびにピロジクチウム種(Pyrodictium sp.)に由来するポリメラーゼが含まれる。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有している熱安定性ポリメラーゼは、サーモトガ(Thermotoga)のような真正細菌株からも単離され得る。
A型ポリメラーゼも、単独で、またはもう一つのポリメラーゼ、例えば、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有しているポリメラーゼと併せて、反応において使用され得る。本発明において使用するためのA型ポリメラーゼは、多くの場合、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を欠くか、または欠損している。例えば、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性が欠失しているTaqポリメラーゼのN末端欠失変異体(ΔTaq)が使用され得る。当業者により認識されるように、Taqポリメラーゼは、3'→5'エラー修正活性も欠いており;従って、この変異Taqを利用した本発明の反応は、エラー修正活性を有しているポリメラーゼ、または3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有しているもう一つの分子も含むであろう。
さらに、いくつかの態様において、非熱安定性のポリメラーゼが有用である。例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIのラージ・フラグメント(Klenow)は、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有しており、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を欠いている。この酵素または等価な酵素は、増幅反応が高温で実施されない態様において使用され得る。
ポリメラーゼおよび/または3'→5'エキソヌクレアーゼは、ハイブリッド・タンパク質であってもよい。「ハイブリッド・タンパク質」という用語は、複数の親配列に由来するアミノ酸残基を含むタンパク質を記載するために本明細書において使用される。ハイブリッド・ポリメラーゼ・タンパク質およびハイブリッド・タンパク質の製造法の例は、WO2004011605に開示されている。従って、そのようなポリメラーゼは、天然には存在しないポリメラーゼの変種である。
いくつかの態様において、例えば、ハイブリッド・ポリメラーゼのような、伸長活性を提供するポリメラーゼは、実質的な3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を欠く変異型エキソヌクレアーゼ・ドメインを含んでいてもよい。そのような酵素は、親ポリメラーゼ・エキソヌクレアーゼ・ドメインと比較して低下したエキソヌクレアーゼ活性を有している。
いくつかの態様において、増強されたプロセッシビティ(processivity)を有しているポリメラーゼ、「改良型ポリメラーゼ」を使用することが好都合である。これらの例には、WO01/92501および同時係属中の米国出願第10/280,139号に記載されたものが含まれる。これらの改良型ポリメラーゼは、ポリメラーゼまたはポリメラーゼの酵素ドメインに接合された配列非特異的二本鎖DNA結合ドメインの存在により、増強されたプロセッシビティを示す)。多くの場合、結合ドメインは、熱安定性生物に由来し、比較的高い温度、例えば、45℃を超える温度において増強された活性を提供する。例えば、Sso7dおよびSac7dは、それぞれ、超好熱性の古細菌(archaeabacteria)スルフォロブス・ソルファタリクス(Sulfolobus solfataricus)およびS.アシドカルダリウス(acidocaldarius)に由来する小さい(約7,000kd MW)塩基性の染色体タンパク質である(例えば、Choli et al.,Biochimica et Biophysica Acta 950:193-203,1988;Baumann et al., Structural Biol. 1:808-819,1994;およびGao et al., Nature Struc.Biol. 5:782-786,1998を参照のこと)。これらのタンパク質は、配列非依存的にDNAと結合し、結合した場合、いくつかの条件の下で最大40℃、DNAのTMを増加させる(McAfee et al., Biochemistry 34:10063-10077,1995)。これらのタンパク質およびそれらの相同体は、多くの場合、改良型ポリメラーゼ融合タンパク質において、配列非特異的DNA結合ドメインとして使用されている。Sso7d、Sac7d、Sac7e、および関連配列(本明細書において「Sso7配列」または「Sso7ドメイン」と呼ばれる)は、当技術分野において既知である(例えば、アクセッション番号(P39476(Sso7d);P13123(Sac7d);およびP13125(Sac7e)を参照のこと)。これらの配列は、典型的には、少なくとも75%以上、80%、85%、90%、または95%以上のアミノ酸配列同一性を有している。例えば、Sso7タンパク質は、典型的には、Sso7d配列との少なくとも75%の同一性を有している。
その他の配列非特異的二本鎖核酸結合タンパク質は、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、またはPCNAである。付加的な例は、Motz et al., J Biol Chem. 277:16179-88, 2002;Pavlov et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:13510-13515, 2002に記載されている)。
ポリメラーゼの混合物も、長い断片を合成する能力のような反応の特定の局面を増強するため、いくつかの適用において使用され得る。例えば、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を欠く変異Taqは、エラー修正ポリメラーゼと共に使用され得る。
エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素
本発明は、3'→5'末端核酸分解(exonucleolytic)活性を有している酵素を利用する。さらに、典型的な態様において、3'→5'エキソヌクレアーゼは、優先的に3'ミスマッチ・ヌクレオチドを切断する、即ち、標的DNAにハイブリダイズした際、オリゴヌクレオチドの3'末端においてマッチまたはミスマッチのヌクレオチドを異なった形で切除する能力を有している、(典型的には、プルーフリーディング・ポリメラーゼに由来する)プルーフリーディング活性である。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性は、ポリメラーゼ、例えば、プルーフリーディング・ポリメラーゼまたはその他のエキソヌクレアーゼ分子により提供され得る。適当な酵素には、上記のプルーフリーディングDNAポリメラーゼ、ならびに大腸菌のエキソヌクレアーゼIIIおよびその他の生物から単離された類似の酵素が含まれる。
エキソヌクレアーゼIIIは、二重鎖DNAの3'ヒドロキシ末端からのモノヌクレオチドの段階的な除去を触媒する。好ましい基質は、3'の平滑末端または陥凹末端であるが、その酵素は、ニックおよび二重鎖DNAにおいても一本鎖ギャップを生ずるよう作用する。その酵素は、一本鎖DNAに対しては活性がなく、従って、3'突出末端は、切断に対して抵抗性である。抵抗性の程度は、伸長の長さに依り、4塩基以上の伸長が、本質的に切断に対して抵抗性である。
エキソヌクレアーゼ活性が熱安定性である場合、それは好都合である。例えば、EP-A-1088891は、二本鎖DNAにおいて3'→5'方向にプライマーまたはポリヌクレオチドのミスマッチ末端の分解を触媒するアーカエオルゴブス・フルギダス(Archaeolgobus fulgidus)に由来する熱安定性酵素を開示している。関連酵素は、その他のアーカエ(Archae)種および好熱性の真正細菌からも入手され得る。
いくつかの態様において、エキソヌクレアーゼ活性は、不活性のポリメラーゼ・ドメイン、または出発ポリメラーゼ・ドメインの活性と比較して実質的に低下したポリメラーゼ・ドメインの活性をもたらす一つ以上の変異を有しているポリメラーゼ・ドメインを有しているプルーフリーディングDNAポリメラーゼ分子により供給され得る。そのようなタンパク質は、多くの場合、本明細書においてpol-exo+と呼ばれる。この状況において、増幅反応混合物中のポリメラーゼ活性は、主に、活性ポリメラーゼ・ドメインを有している異なるポリメラーゼ分子により提供される。欠損ポリメラーゼ活性を有しているが、エキソヌクレアーゼ活性は保持しているポリメラーゼ・ポリペプチドおよび付加的なそのような分子の製造法の例は、例えば、WO2004011605に提供される。
実質的に低下したポリメラーゼ活性を有しているポリメラーゼとは、一般的に、親酵素と比較して20%未満のポリメラーゼ活性、即ち、伸長活性、最も多くの場合、10%未満の伸長活性を有しているポリメラーゼを指す。従って、本発明の増幅反応中に存在するpol-exo+タンパク質が寄与する伸長活性は、反応中の伸長活性の10%未満、通常5%未満、または1%を表す。例えば、総伸長ポリメラーゼ活性が20U/mlである、ポリメラーゼおよび(エキソヌクレアーゼ活性を提供する)pol-exo+タンパク質を含む本発明の増幅反応において;pol-exo+タンパク質に由来する伸長活性は、通常、総伸長活性のうちの2U/ml、1U/ml、0.2U/ml、またはそれ未満である。ポリメラーゼ伸長活性をほとんどまたは全く有していないが、エキソヌクレアーゼ活性は保持している(pol-exo+)例示的なポリメラーゼ配列は、配列番号:2および4に提供される。
いくつかの態様において、本発明において使用するためのエキソヌクレアーゼ活性は、好ましくは、一本鎖(exoss)核酸に対するエキソヌクレアーゼ活性と比較して、二本鎖(exods)核酸分子に対してより大きなエキソヌクレアーゼ活性を示す。exossに対するexodsの比率は、二つの酵素を比較するために使用される。同一の基質を使用した場合に、より高い比率を有している酵素の方が、多くの場合、本発明において使用するのに適している。ss核酸基質に対する活性に対して、ds核酸基質に対する活性が、測定され得る。例えば、二本鎖型の所定のプローブに対するエキソヌクレアーゼのexo活性を、一本鎖型の同一プローブに対するものと比べて測定するためのアッセイ法が、使用され得る。
異なるファミリーBポリメラーゼは、同一プローブによる異なるexods/exoss比率をもたらし得る。いくつかの態様において、他のポリメラーゼと比較してより高いexods/exoss比率を有しているポリメラーゼは、より低いexods/exossを有しているポリメラーゼより、優れている、即ち、より高感度であり、かつより少ないバックグラウンドを生じるかもしれない。一本鎖核酸基質に対するエキソヌクレアーゼ活性に対する、二本鎖核酸基質に対するエキソヌクレアーゼ活性の比率を決定するための例示的なアッセイ法は、実施例の欄に提供される。本明細書において使用されるように、二本鎖核酸基質に対するエキソヌクレアーゼ活性は、時には、「二本鎖」エキソヌクレアーゼ活性と呼ばれ、一本鎖核酸基質に対する活性は「一本鎖」エキソヌクレアーゼ活性と呼ばれる。二本鎖エキソヌクレアーゼ活性は、エキソヌクレアーゼ・プルーフリーディング(exoPfr)活性とも呼ばれ、即ち、3'ヌクレオチドが標的配列に対してミスマッチである。
ホットスタート増幅反応
いくつかの態様において、環境温度におけるプライマー二量体および非特異的な増幅産物の生成を減少させる「ホットスタート」法を利用することが有益である。多数のホットスタート法が既知である。これらには、ポリメラーゼの物理的分離、低温における伸長反応を阻害する核酸添加剤の使用、およびポリメラーゼの活性部位に対する修飾が含まれる。多くの場合、「ホットスタート」ポリメラーゼを使用することが望ましいかもしれない。ホットスタート・ポリメラーゼにおいては、典型的には、ある分子が活性部位において酵素と結合している。その分子は、高温(例えば、95℃)で除去される。その分子は、抗体、ペプチド、または小さな有機分子であり得る。例えば、ホットスタートは、環境温度において高い親和性で阻害的にポリメラーゼと結合する抗体を使用して達成され得る。複合体は、高温の予備加熱工程において解離させられる。
ホットスタートのためにポリメラーゼを化学的に修飾することもできる。室温においては酵素を不活性にする熱不安定な保護基がポリメラーゼへ導入される。これらの保護基は、サイクリングの前に、酵素が活性化されるよう高温で除去される。熱不安定な修飾には、酵素のリジン残基へのシトラコン酸無水物またはアコニチン酸(aconitric)無水物のカップリングが含まれる(例えば、米国特許第5,677,152号)。
米国特許出願第20030119150号も、熱安定性のエキソヌクレアーゼおよびポリメラーゼを利用したホットスタートPCRの概念を開示している。この方法は、少なくとも一つのプライマーの3'末端に化学的修飾を導入することによる、低温におけるプライマー伸長の防止に基づく。環境温度以下においては不活性である熱安定性のエキソヌクレアーゼが使用される。温度が上昇すると、エキソヌクレアーゼが活性となり、プライマーの3'修飾を除去することができるようになり、プライマーが増幅反応に参与することを可能にする。米国特許出願第20030119150号は、リアル・タイム・モニタリングのためのハイブリダイゼーション・プローブ、例えば、TaqManハイブリダイゼーション・プローブ、Molecular Beaconオリゴヌクレオチド(oligojucleotides)、またはツー・オリゴヌクレオチド(two oligonucletide)ハイブリダイゼーション法が使用される場合には、熱安定性のエキソヌクレアーゼIIIの存在が、3'消化を回避するための検出プローブの3'末端の適当な保護法を必要とすることをさらに教示している。
オリゴヌクレオチド・プローブおよびポリメラーゼ反応
オリゴヌクレオチド・プライマーおよびプローブは、例えば、当業者に周知のホスホトリエステルおよびホスホジエステルを使用した方法のような任意の適当な方法を使用して調製され得る。いくつかの態様において、一つ以上のホスホロチオエート(phosporotioate)結合が、プローブに含まれてもよい。オリゴヌクレオチドは、マイナーグルーブ結合剤(さらに後述される)、挿入剤等により、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格において修飾されてもよい。
増幅反応のためのプライマーは、既知のアルゴリズムに従って設計される。プライマーは、標的核酸の両側に隣接する配列とハイブリダイズするよう設計される。典型的には、市販またはカスタムのソフトウェアは、アニーリング温度が融解温度に近くなるようにプライマーを設計するアルゴリズムを使用する。増幅プライマーは、通常少なくとも12塩基、より多くの場合、約15、18、または20塩基の長さである。プライマーは、典型的には、特定の反応に参与する全てのプライマーが、相互に5℃以内、最も好ましくは2℃以内の融解温度を有するよう設計される。プライマーは、さらに、それら自体または相互に対するプライミングを回避するように設計される。プライマー濃度は、増幅された配列の量の正確な査定を提供するような量の増幅された標的配列と結合するのに十分なものであるべきである。当業者は、プライマーの濃度の量が、プライマーの結合親和性によっても、結合すべき配列の量によっても変動することを認識するであろう。典型的なプライマー濃度は、0.01μM〜1.0μMの範囲内であろう。
ポリメラーゼ反応物は、プライマーが標的配列鋳型にハイブリダイズし、ポリメラーゼにより伸長されるような条件の下でインキュベートされる。当業者により認識されるように、そのような反応条件は、関心対象の標的核酸およびプライマーの組成に依って変動し得る。増幅反応サイクル条件は、プライマーが標的鋳型配列に特異的にハイブリダイズし伸長されるよう選択される。標的鋳型に特異的にハイブリダイズするプライマーは、分析される試料の中に存在し得る他の核酸と比較して優先的に標的配列を増幅する。特定のプライマー・セットのための例示的なPCR条件は、実施例に提供される。
ハイブリダイゼーション・プローブ
本発明において使用するためのプローブ・オリゴヌクレオチドは、任意の適当なサイズであり得、多くの場合、約6〜約100ヌクレオチド、より多くの場合、約6〜約80ヌクレオチド、高頻度には約10〜約40ヌクレオチドの範囲である。オリゴヌクレオチド・プローブの正確な配列および長さは、一部、それが結合する標的ポリヌクレオチドの性質に依る。結合位置および長さは、特定の態様にとって適切なアニーリングおよび融解の特性を達成するために変動させられ得る。そのような設計選択を行なうための案内は、当技術分野において認識されている多くの参照に見出され得る。鋳型を増幅するためのプライマーによる標的配列の増幅と併せた、プローブのハイブリダイゼーションは、試料中の標的核酸配列の量の定量的決定を提供する。
いくつかの態様において、以下のことを考慮に入れてプローブを設計することが望ましいかもしれない。本発明の増幅法において非特異的なシグナルが生成し得るいくつかのシナリオが存在する。例えば、プローブの3'末端が、プライマー、例えば、逆方向プライマーの3'末端にアニールまたは部分的にアニールし、プローブの3'ヌクレオチドがミスマッチとして残った場合、ポリメラーゼ酵素が、これを基質として認識し、プローブを切断する可能性がある。その場合、切断されたプローブは、露出した3'末端ヒドロキシル基を有することになり、プライマーとしてはたらくことが可能になるであろう。この例においては、プライマーへと転化したプローブは、逆方向プライマー上で延長され得る。次のサイクルにおいて、伸長されたプライマーへと転化したプローブは、逆方向プライマーのための鋳型としてはたらき、コピーされ得る。従って、生成する二重鎖は、全て、鋳型、プライマー二量体ではなく、プローブおよび逆方向プライマーから生成した配列を有しているかもしれない。従って、この問題を有していないプローブを設計することが望ましいかもしれない。これは、配列情報に基づき達成されてもよいし;さらに、プローブ内に脱塩基部位が組み込まれるようプローブを設計することもできる。
当業者により理解されるように、脱塩基部位は、オリゴヌクレオチド・プローブ内のある位置において塩基を欠いている、即ち、プローブ内のその位置には、糖残基は存在するが塩基は存在しない。脱塩基部位を有しているオリゴヌクレオチド・プローブは、典型的には、脱塩基部位を用いて合成され、市販されている(例えば、Integrated DNA Technologies,Inc.,"IDT")。従って、例えば、図10において、プローブ配列内のその位置は「0」と表示されている。プローブ内に存在する脱塩基部位は、プローブの切断または延長は妨げないが、それ以降のサイクルにおいて逆方向プライマーがその末端へと伸長されることを妨げる。最終結果として、不要な産物の指数関数的な増幅は起こらない。脱塩基部位は、典型的には、プローブの内部位置に含まれる。その位置は、プローブの標的核酸との結合を不安定にしないよう選択される。例えば、脱塩基部位は、プローブ配列を三等分したものの中央に位置付けられ得る。その他の態様において、脱塩基部位は、プローブの3'末端から少なくとも3ヌクレオチドに位置付けられ;またはプローブの5'末端付近、例えば5'末端から3ヌクレオチドに位置付けられる。
いくつかの態様において、ハイブリダイゼーション・プローブは、分子の3'末端に一つ以上のミスマッチ・ヌクレオチドを含有している。従って、プローブは、典型的には、3'末端に少なくとも一つのミスマッチを有しているが、2個、3個、4個、5個、6個、または7個、またはそれ以上のミスマッチ・ヌクレオチドを有していてもよい。いくつかの態様において、追加のミスマッチ塩基が折り畳まれプローブの5'領域と共に塩基対を形成することができるステム-ループ構造を、配列が形成するよう、プローブのミスマッチ配列を設計することが望ましい。これは、例えば、標的とのハイブリダイゼーションが起こる前の、エキソヌクレアーゼによるプローブの加水分解を最小限に抑えることができる。
当業者により理解されるように、プローブは、下記の実施例の欄において説明されるようにして、感度および特異性に関して評価され得る。本発明の多くのリアルタイム法において、3'ミスマッチ・ヌクレオチドは、試料中に存在する任意の標的核酸の存在を検出するために設計される、即ち、プローブは、ミスマッチ残基が、標的核酸内の多形性ではなく不変性のヌクレオチドに対するものであるよう設計される。
本発明において使用するためのプローブは、少なくとも一つの検出可能部分で標識される。検出可能部分はプローブの3'末端にあり得る。内部ヌクレオチドに検出可能部分を位置付けることも望ましいかもしれず、例えば、標識は、プローブの3'末端ではなく内部ヌクレオチドにあってもよい。標識が、プローブの3'末端ヌクレオチド上にある場合、その標識は、塩基または骨格のいずれかに位置付けられ得る。いくつかの態様において、例えば、一本鎖基質を標的とするエキソヌクレアーゼ活性に対する部分的な「ブロック」としてはたらくよう、骨格上に3'末端標識を位置付けることが望ましいかもしれない。
いくつかの態様において、3'末端に特定の配列を有しているプローブを設計することが望ましいかもしれない。例えば、3'→5'エキソヌクレアーゼは、一つ以上の特定の配列に対して選択的に活性であるかもしれない。従って、プローブは、実務者がプローブの3'末端に位置付けることを望む特定の配列に相補的な配列を含む標的核酸配列の領域にハイブリダイズするよう設計される。例えば、いくつかの態様において、3'→5'エキソヌクレアーゼは、3'ヌクレオチドが鋳型配列に対してミスマッチであり、即ち、プローブの3'末端の配列がTAGCN(ここで、Nは標的核酸に対するミスマッチである)であるような、3'ヌクレオチドに隣接したTCAGC配列に対して選択的な活性を示すかもしれない。従って、プローブ内に存在するであろうTCAGCに対する相補鎖を含む標的核酸内の配列が、好ましくは、プローブが結合する標的領域として選択されるであろう。
いくつかの態様において、TCAGCN配列のような配列の「変種」、例えば、TCAACN、TCACCN、またはTCAGGNが、利用され得る。付加的な態様において、TCAGC内の一つ以上の位置、例えば1〜3つの位置が、標的配列に対してミスマッチなヌクレオチドに交換される。例えば、プローブは、TCANNNまたはTCAGNN(ここで、Nは標的核酸に対するミスマッチを意味する)である3'末端を有するよう設計され得る。
ハイブリダイゼーション・プローブは、3'ヌクレオチドの切断により増幅の間に伸長されるかもしれない。しかしながら、ハイブリダイゼーション・プローブは、本明細書に記載されたような増幅プライマーではない。ハイブリダイゼーション・プローブは、増幅プライマーが結合する配列が両側に隣接している領域に結合する。
標識
ハイブリダイゼーション・プローブは、典型的には、検出可能部分により標識される。検出可能部分は、切断された場合に、直接的または間接的にシグナルの変化をもたらす任意の部分であり得る。典型的には、ハイブリダイゼーション・プローブは、蛍光分子で標識される。蛍光標識の例には、以下に制限はされないが、Alexa Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、およびAlexa Fluor 680)、AMCA、AMCA-S、BODIPY色素(BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、カルボキシローダミン(Carboxyrhodamine)6G、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、カスケード・ブルー(Cascade Blue)、カスケード・イエロー(Cascade Yellow)、シアニン(Cyanine)色素(Cy3、Cy5、Cy3.5、Cy5.5)、ダンシル(Dansyl)、ダポキシル(Dapoxyl)、ジアルキルアミノクマリン(Dialkylaminocoumarin)、4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシ-フルオレセイン、DM-NERF、エオシン(Eosin)、エリスロシン(Erythrosin)、フルオレセイン(Fluorescein)、FAM、ヒドロキシクマリン(Hydroxycoumarin)、IR色素(IRD40、IRD700、IRD800)、JOE、リサミン・ローダミン(Lissamine rhodamine)B、マリーナ・ブルー(Marina Blue)、メトキシクマリン(Methoxycoumarin)、ナフトフルオレセイン(Naphthofluorescein)、オレゴン・グリーン(Oregon Green)488、オレゴン・グリーン500、オレゴン・グリーン514、パシフィック・ブルー(Pacific Blue)、PyMPO、ピレン(Pyrene)、ローダミン6G、ローダミン・グリーン(Rhodamine Green)、ローダミン・レッド(Rhodamine Red)、ロードール・グリーン(Rhodol Green)、2',4',5',7'-テトラ-ブロモスルホン-フルオレセイン、テトラメチル-ローダミン(TMR)、カルボキシテトラメチルローダミン(Carboxytetramethylrhodamine)(TAMRA)、テキサス・レッド(Texas Red)、ならびにテキサス・レッド-Xが含まれる。
多くの場合、蛍光標識は、分子内でそれと相互作用する第二の標識と併せて利用される。従って、蛍光に基づくアッセイは、相互作用する共鳴エネルギー・アクセプター、もう一つのフルオロフォアまたは消光剤から第一のフルオロフォアを隔てている距離の変化により、蛍光の変化が引き起こされる、蛍光共鳴エネルギー転移または「FRET」によるシグナル生成に頼ることもできる。フルオロフォアと、消光分子または消光部分を含む相互作用分子または相互作用部分との組み合わせは、「FRET対」として既知である。FRET対相互作用のメカニズムは、対の一方のメンバーの吸収スペクトルが、他方のメンバー、第一のフルオロフォアの放射スペクトルとオーバラップすることを必要とする。相互作用分子または相互作用部分が消光剤である場合、その吸収スペクトルは、フルオロフォアの放射スペクトルとオーバラップしなければならない。Stryer,L., Ann.Rev.Biochem.47:819-846(1978);BIOPHYSICAL CHEMISTRY part II, Techniques for the Study of Biological Structure and Function, C.R.Cantor and P.R.Schimmel, p.448-455(W.H.Freeman and Co., San Francisco,U.S.A.,1980);およびSelvin,P.R.,Methods in Enzymology 246:300-335(1995)。効率的なFRET相互作用は、対の吸収スペクトルと放射スペクトルとが、大きなオーバラップの程度を有していることを必要とする。FRET相互作用の効率は、そのオーバラップに直線的に比例する。Haugland,R.P.et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63:24-30(1969)を参照のこと。典型的には、シグナルの大きな振幅(即ち、高度のオーバラップ)が必要とされる。従って、フルオロフォア-消光剤対を含むFRET対は、典型的には、それに基づき選択される。
消光剤には、蛍光標識に近接して置かれた場合に、励起された蛍光標識のエネルギーを吸収することができ、かつ可視光を放射することなく、そのエネルギーを散逸することができる任意の部分が含まれる。消光剤の例には、以下に制限はされないが、DABCYL(4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸)スクシンイミジル・エステル、ジアリールローダミンカルボン酸スクシンイミジル・エステル(QSY-7)、および4',5'-ジニトロフルオレセインカルボン酸スクシンイミジル・エステル(QSY-33)(全て、Molecular Probesから入手可能)、クエンチャー(quencher)1(Q1;Epochから入手可能)、またはアイオワ・ブラック(Iowa Black)(商標)クエンチャー(Integrated DNA Technologies)、ならびに「ブラック・ホール(Black hole)クエンチャー」BHQ-1、BHQ-2およびBHQ-3(BioSearch,Inc.より入手可能)が含まれる。
二重標識されたプローブの第二の標識は、5'末端に存在してもよいが、そうである必要はない。例えば、プローブが標的にハイブリダイズした場合に、二つの標識が相互作用することを可能にする距離である限り、消光剤部分は、フルオロフォア標識から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド、またはそれ以上、離れていてもよい。
塩基に連結されたフルオア(fluors)および消光剤は、当技術分野において周知である。それらは、例えば、Life Technologies(Gaithersburg,MD)、Sigma-Genosys(The Woodlands,TX)、Genset Corp.(La Jolla,CA)、またはSynthetic Genetics(San Diego,CA)から入手され得る。いくつかの場合、塩基に連結されたフルオアは、塩基に連結された反応基による合成されたオリゴヌクレオチドの合成後修飾により、オリゴヌクレオチドへ組み込まれる。フルオアは、糖または塩基の3'OHに付着させられ得る。
特定のプローブのための適切なドナー-アクセプター対を選択するための実務的な案内は、以下の参照により例示されるような文献において容易に入手可能である:Pesce et al.,Eds., Fluorescence Spectroscopy(Marcel Dekker, New York,1971);White et al., Fluorescence Analysis:A Practical Approach(Marcel Dekker,New York,1970)。文献は、蛍光分子および発色分子、ならびにレポーター-消光剤対を選択するためのそれらの関連する光学的特性の網羅的なリストを提供する参照も含んでいる(例えば、Berlman, Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules, 2nd Edition(Academic Press, New York,1971);Griffiths, Colour and Constitution of Organic Molecules(Academic Press, New York,1976);Bishop,Ed.,Indicators(Pergamon Press,Oxford,1972);Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(Molecular Probes,Eugene,1992)Pringsheim,Fluorescence and Phosphorescence(Interscience Publishers,New York,1949を参照のこと)。さらに、文献は、オリゴヌクレオチドに付加され得る一般的な反応基を介した共有結合性付着のためレポーター分子および消光分子を誘導体化するための豊富な手引きを提供している(例えば、Haugland(前記);米国特許第3,996,345号;および米国特許第4,351,760号を参照のこと)。
本発明において使用され得るその他の蛍光標識されたプローブは、消光部分を含有していない。そのような蛍光オリゴヌクレオチド・プローブは、配列情況に基づき自己消光するように設計されている。これらのプローブ(LUX(商標)プローブ)は、溶液中に遊離している場合には消光し、変性した場合には弱く蛍光を発し、DNAへ組み込まれた場合には強く光を放射する。
当業者により認識されるように、蛍光以外のエネルギー転移メカニズムに基づく、その他のエネルギー・ドナー分子およびエネルギー・アクセプター分子も、本発明の実施において使用され得る。それらには、放射性同位体/シンチラント、nmr感受性核/不対電子等のようなドナー/アクセプター対が含まれる。
Ct決定
典型的な適用において、反応中に3'エキソヌクレアーゼ活性により生じた切断産物の量は、検出可能な量のDNAを生じるために必要とされるサイクル数を表す、閾サイクル数(Ct)の値に基づき決定される。Ct値の決定は、当技術分野において周知である。簡単に説明すると、PCR中、形成されたアンプリコンの量が増加するにつれ、シグナル強度が測定可能なレベルにまで増加し、後期のサイクルにはプラトーに達し、そこで反応は非対数期へと入る。反応の対数期の間、サイクル数に対してシグナル強度をプロットすることにより、測定可能なシグナルが入手される特定のサイクルが推定され得、PCRの開始前の標的の量を計算するために使用され得る。Ctを決定する例示的な方法は、例えば、加水分解プローブに関して、Heid et al., Genome Methods 6:986-94,1996に記載されている。
付加的なプローブ成分
プローブは、付加的な成分も含み得る。これらには、マイナーグルーブ結合タンパク質および/または修飾された塩基DNAプローブが含まれる。コンジュゲートされたマイナーグルーブ結合(MGB)基は、一本鎖DNA標的と共に極めて安定的な二重鎖を形成し、より短いプローブがハイブリダイゼーションに基づくアッセイのために使用されることを可能にする(例えば、米国特許第5,801,155号)。従って、いくつかの態様において、マイナーグルーブ結合基も、プローブに、例えば、プローブの5'末端に含まれる。多様な適当なマイナーグルーブ結合剤が文献に記載されている。例えば、米国特許第5,801,155号;Wemmer & Dervan,Current Opinon in Structural Biology 7:355-361(1997);Walker,et al., Biopolymers 44:323-334(1997);Zimmer & Wahnert, Prog.Biophys.Molec.Bio.47:31-112(1986);およびReddy,et al., Pharmacol.Therap.84:1-111(1999)を参照のこと。リンカーを通してMGB(およびその他の部分)をオリゴヌクレオチドに付着させるための適当な方法は、例えば、米国特許第5,512,677号;第5,419,966号;第5,696,251号;第5,585,481号;第5,942,610号、および第5,736,626号に記載されている。
多重反応
本発明の増幅反応は、多重反応条件下でも実施され得る。多重反応は、複数のハイブリダイゼーション・プローブを使用して、複数の標的核酸配列の存在を検出することができる。各プローブは、別個のシグナルを提供する異なる標識、例えば、フルオロフォア(fluorophor)で標識される。
実施例
これらの実施例は、リアルタイムqPCR反応においてプルーフリーディングDNAポリメラーゼが使用され得ることを示す。
実施例1 プルーフリーディング活性を有しているポリメラーゼおよび二重標識されたプローブを使用した定量的PCR
プロセッシビティ増強ドメインを有するピロコッカス・ポリメラーゼであるプルーフリーディングDNAポリメラーゼPhusion(商標)を、二重標識されたプローブを用いたリアルタイムqPCR反応において使用した。このアッセイ法を、TaqMan(商標)プローブを使用したアッセイ法と比較した。プローブは以下に示される。プローブは、5'末端を蛍光色素(Cy5)で、3'末端を消光剤(BHQ-2)で標識されている。プルーフリーディング・アッセイ法において使用されたプローブは、ミスマッチ3'ヌクレオチドを有している。それは、最後の二つの塩基間にホスホロチオエート結合も有しているが、そのような結合の包含は任意である。
TaqMan(商標)プローブ:
(配列番号:20)
プルーフリーディング・アッセイ・プローブ:
(配列番号:21)
プローブは、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)鋳型を使用したqPCR反応の中にあった。PCR反応において使用されたプライマーおよびプローブの相対位置は、図2に示される。
PCR増幅反応混合物は、以下のものを含有していた:
Phusionを用いたプルーフリーディングPCR:
1×Phusion緩衝液A
0.2mM dNTP
20U/ml Phusion
0.3μM 順方向プライマー
0.3μM 逆方向プライマー
0.3μM 二重標識されたプローブ
10
7、10
6、10
5、または0コピーのpGAPDH鋳型
反応条件は以下の通りであった:
偽ホットスタート
98℃ 30s
45×(98℃ 10s、60℃ 30s、読み取り、72℃ 15s)
72℃ 10分
TaqMan qPCR::
1×ユニバーサル(Universal)PCRマスター・ミックス(Master Mix)
0.3μM プライマー5
0.3μM プライマー6
0.3μM 二重標識されたプローブ
10
7、10
6、10
5、または0コピーのpGAPDH鋳型
反応条件は以下の通りであった:
95℃ 10分
45×(95℃ 15s、60℃ 1分、読み取り)
72℃ 10分
様々なプライマー・セットを使用した、107、106、および105コピーの鋳型を検出するプルーフリーディング・プローブの能力が、図3に示される。プライマー5および6を使用したTaqMan(商標)qPCRとの比較は、図4に示される。結果は、蛍光シグナルおよびCtが、TaqMan(商標)アッセイ法とプルーフリーディング・アッセイ法とで同程度であったことを示している。
実施例2 二重標識されたプローブを使用し、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性を分離した定量的PCR
この実施例は、ポリメラーゼおよび3'→5'エキソヌクレアーゼ活性が、別々のタンパク質により提供される反応の例示を提供する。
5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を欠くホットスタートDNAポリメラーゼ(HS DyNAmo)を使用してPCRを実施した。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性は、ポリメラーゼ活性を実質的に欠いている(親のうちの一つとしてPfuポリメラーゼを有する)ハイブリッド・ポリメラーゼ(exo+pol-ポリメラーゼ)により提供される。その反応物は、以下のものを含有していた:
1×HS DyNAmoミックス
112U/ml exo+pol-酵素
0.3μM 順方向プライマー
0.3μM 逆方向プライマー
0.3μM 二重標識されたプローブ
107、106、105、または0コピーのpGAPDH鋳型
反応条件は以下の通りであった:
1. 95℃10分
2. 95℃15秒
3. 60℃30秒
4. 読み取り
5. 72℃30秒
6. 読み取り
9. 49回、2へ戻る
10. 72℃10分
結果(図5)は、二酵素(HS DyNAmoおよび3'→5'exo+,pol-酵素)PCR増幅反応において、非特異的なシグナルが排除されたことを示している(0コピー反応に留意されたい)。二重標識されたプローブが切断され、蛍光シグナルが60℃および72℃の両方において検出され得た。比較のため(図6)、HS DyNAmoのみを使用して実施されたPCRにおいては、60℃では、ハイブリダイゼーションによるプローブの脱消光(dequenching)により低レベルの蛍光シグナルが検出され得るが、72℃では蛍光シグナルが検出されない。
実施例3 3'末端に優先部分配列を有するプローブを使用した定量的qPCR
プローブ配列選択性が3'→5'エキソヌクレアーゼ活性により示されるか否かを試験するために、異なる3'末端を有しているプローブを、本発明のqPCR反応において試験した。この実施例におけるエキソヌクレアーゼ活性は、実施例2において利用されたもののようなexo+pol-酵素であった。まず、異なる3'末端を有するプローブに対する3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を試験するために、3'→5'エキソヌクレアーゼ・アッセイ法を使用した。結果は、プローブの最後の10塩基、例えば、最後の5塩基の配列が、exo+pol-酵素の3'→5'エキソヌクレアーゼ活性に影響を与えることを示した。結果は、TCAGCという(ミスマッチ前の)3'末端配列を有しているプローブが、最も高いexo活性を有しており、他の配列と比較して本発明のqPCR反応における改良された性能を提供することを証明した。5塩基DNAエレメントには1024通りの可能な配列が存在するため、付加的な配列も、qPCR反応における改良された性能パラメータを提供するかもしれない。鋳型とミスマッチである3'末端ヌクレオチドの前にTCAGCを有するよう設計されたプローブの例は、図7に提供される。プローブは、以下の標的配列に対するものである:GUSB:ベータ・グルクロニダーゼ;PGK:ホスホグリセリン酸キナーゼI;TFRC:トランスフェリン(transferrrin)受容体;RPLP:ラージ・リボソーマル・プロテイン(large ribosomal protein);GAPD:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ。
従って、プローブは、プローブが、TCAGCN(ここで、TCAGは標的核酸とマッチする塩基であり、かつNは標的核酸に対してミスマッチの塩基である)で(即ち、3'末端において)終わるよう設計され得る。Nは、A、T、G、またはCであり得;多くの場合、NはAまたはTであり、時にはGであり、いくつかの態様においてはCである。
(以下に一般的に記載される)二本鎖エキソヌクレアーゼ活性を評価する研究は、TCAACNまたはTCACCNで終わるプローブが優れており;TTAGCNまたはTCAGGNで終わるプローブも比較的優れているが、TCAGCNで終わるプローブほどではないことも示した。
二本鎖エキソヌクレアーゼ活性の査定に基づく付加的なプローブ設計実験において、プローブおよび鋳型が、TCAGCNまたはTCAGNN(ここで、Gに隣接したNはミスマッチのC残基である)のような1個または2個のミスマッチを有するよう、あるプローブを用いて異なる鋳型オリゴを試験したところ、2個のミスマッチを有するプローブと鋳型との組み合わせは、1個のミスマッチを有するプローブと鋳型との組み合わせ(TCAGCN)と比較して、少なくとも2倍の二本鎖エキソヌクレアーゼ活性の増加をもたらした。3個のミスマッチを有するプローブと鋳型との組み合わせ(例えば、Aと隣接しているNN配列がミスマッチのGCである、TCANNN)は、二本鎖エキソヌクレアーゼ・アッセイ法に関して、1個のミスマッチを有するプローブと鋳型との組み合わせ(TCAGCN)と類似していた。従って、いくつかの態様において、3'末端に2個または3個のミスマッチを有するプローブが、望ましいかもしれない。従って、要約すると、本発明のいくつかの態様において、TCAGCN、TCAACN、TCACCN、TTAGCN、TCAGGN、またはその他の順列で終わるプローブを使用することが、望ましいかもしれず、TCAGCNは、多くの場合、TCAACNまたはTCACCNより優先的であり、TCAACNまたはTCACCNは、TTAGCNまたはTCAGGNより優先的であるかもしれない。その他の態様においては、TCAGNNまたはTCANNNで終わるプローブを利用することが望ましいかもしれない。
図7に示されるプローブを、本発明の(即ち、3'→5'ヌクレアーゼ活性を利用した)定量的PCR増幅の特異性および感度に関して評価した。全てのプローブが、標的核酸の高感度かつ定量的な検出を提供した。ヒトRPLP0(ラージ・リボソーマル・プロテイン)cDNAを検出するために実施されたqPCRの結果の例は、図8に示される。ヒト肝臓全RNAに由来する段階希釈された(10×段階希釈された)cDNAを鋳型として使用した。増幅反応において利用されたプローブは、
という配列
(配列番号:8)を有していた。反応は、実施例2に記載された方法を用いて実施された。RPLP cDNAの様々な希釈物の検出を示す増幅グラフは、
図8の左パネルに示される。Ct値と対数(cDNA量)値との直線的な関係は、図8の右パネルに示される。
上記の3'末端配列(TCAGC)が必要とされないこと、およびそれがこの適用において高いシグナルを生ずる唯一のヌクレオチド組み合わせではないことを証明するためにも、プローブを試験した。TCAGC配列のバリエーションを有するβ2-ミクログロブリン(B2M)に対するプローブを設計した。そのプローブを使用した本発明のqPCRの結果は図9に示される。ヒト肝臓polyA
+RNAに由来する10倍段階希釈cDNAを鋳型として使用した。増幅プロットは図9の左パネルに示される。Ct値と対数(cDNA量)値との直線的な関係は、図9の右パネルに示した。B2Mプローブ配列は
(配列番号:22)であった。
塩基または骨格に3'末端標識を位置付ける効果も試験した。3'末端標識が骨格ではなく塩基の上にある場合、より少ないエキソヌクレアーゼ・プルーフリーディング(exoPfr)活性による配列依存性が見出された。しかしながら、この構築物のプローブは、一本鎖エキソヌクレアーゼ(exoss)活性にとっても、より良好な基質になった(例えば、下記実施例4を参照のこと)。試験された内部標識されたプローブのうち、ミスマッチ・フラップ(flap)が2〜4塩基であり、内部標識が(5'末端から)最初のミスマッチ塩基の上にある場合に、exossに対するexoPfrの最も高い比率が見出された。
選択的部分配列を含んでいないプローブも試験した。これらの実験において、プローブは、脱塩基部位および内部標識(「T」ヌクレオチド)を含んでいる。評価された特定の標的配列を検出するそのようなプローブの例は、図10に示される。プローブは、以下の標的核酸を検出する:SDHA:コハク酸デヒドロゲナーゼ・サブユニットA;HMBS:ヒドロキシメチルビラン・シンターゼ;TBP:TATAボックス結合タンパク質;UBC:ユビキチンC;RRM:リボヌクレオチド・レダクターゼM1ポリペプチド。
図10に示されたプローブを利用した定量的増幅反応を、感度および特異性を評価するために実施した。各プローブは、高感度の特異的な結果を提供した。例示的なアッセイ法の結果は図11に示される。アッセイ法は、プラスミドの10倍段階希釈物がUBC断片を含有しているとを検出した。希釈された標的核酸は、10mMトリスpH8.2、50mM KCl、2.5mM MgC1
2、各0.25mMのdNTP、40単位/mLのSSt(V)、および25単位/mLのPfuを含有している反応緩衝液において増幅された。サイクリング計画は以下の通りであった:95℃15秒、60℃30秒、および72℃15秒の50サイクル。蛍光は60℃でモニタリングされた。使用されたプライマーは、
であった(ここで、*はフランキング塩基間の
ホスホロチオール化結合を表す。プローブは、
であった(ここで、/5IabFQ/は、5'末端アイオワ・ブラック・クエンチャーFQであり、/idSp/は、内部脱塩基部位であり、かつ/iFluorT/は、塩基に付着したフルオレセインを有するdTを表す)。結果は図11に示される。アッセイ法は高感度かつ特異的であり、脱塩基部位および内部標識されたヌクレオチドを含むよう設計されたプローブも、この適用において機能することを示す。
実施例4 二本鎖基質対一本鎖基質に対するエキソヌクレアーゼ活性の査定
いくつかの態様において、ある種のプローブは、他のものより効率的にエキソヌクレアーゼ活性により切断される。これは、プローブの配列に一部関係しているかもしれず、異なるエキソヌクレアーゼ活性も、他のものより効率的であるかもしれない。この実施例においては、異なるファミリーBポリメラーゼを評価した。以下にさらに記載される結果は、異なるファミリーBポリメラーゼが同一プローブにより異なるexods/exoss比率をもたらすことを示した。いくつかの態様において、より高いexods/exoss比率を有するポリメラーゼは、本発明のqPCRにおいて、低いexods/exoss比率を有するものより優れていた。
exo
ds/exo
ssの比率を、様々なエキソヌクレアーゼに関して評価した。この分析において、エキソヌクレアーゼは、ポリメラーゼ活性が欠損しているファミリーBポリメラーゼであるタンパク質であった。これらのタンパク質のうちの二つ(配列番号:2および配列番号:4)、ならびにエキソヌクレアーゼ活性に影響を及ぼすと予測される領域に変異が導入された誘導体タンパク質(表1に示される)をアッセイした。二本鎖基質活性に関するアッセイ法(DS-Exoアッセイ法)は以下のプロトコルに従って実施された。
DS-Exo反応物の内容物:
50mM トリス(pH8.5)
15mM (NH
4)
2SO
4
2.5mM MgCl
2
5% DMSO
0.3μM 二重標識されたプローブ
1.2μM 相補的オリゴ
エキソヌクレアーゼ
アニールした場合、プローブおよび相補オリゴヌクレオチドは、以下のような二本鎖DNAを形成する。プローブの3'ヌクレオチドは、その相補ヌクレオチドに対してミスマッチである。
プローブ(GAPD-G):
(配列番号:27)
相補的オリゴ:
(配列番号:28)
50μlの反応を、以下のプログラムを用いてChromo4 Continuous Fluorescence Detectorにおいてモニタリングした:
55度10秒
72度10秒
プレート読み取り
20回繰り返す
図12は、出力の例を示す。DS-Exo活性は線の勾配である。
一本鎖基質に対するエキソヌクレアーゼの活性(SS-Exoアッセイ法)は、以下のプロトコルに従って実施された。
SS-Exo反応物の内容物:
50mM トリス(pH8.5)
15mM (NH
4)
2SO
4
2.5mM MgCl
2
5% DMSO
0.3μM 二重標識されたプローブ
エキソヌクレアーゼ
50μlの反応を、以下のプログラムを用いて、Chromo4 Continuous Fluorescence Detectorにおいてモニタリングした:
72度5秒
プレート読み取り
20回繰り返す
図13は、出力の例を示す。SS-Exo活性は線の勾配である。
結果(表1)は、タンパク質のYxGGドメインの変異を有している三つのpol-exo+タンパク質、A6YX1、A6YX3、およびF11YX2が、その他の変異タンパク質(A6YX2、F11YX3、およびF11SNL1)ならびに親タンパク質より有意に高いexods/exoss比率を示すことを示した。
より高いexods/exoss比率を有する変異ポリメラーゼを、本発明のqPCRにおいて使用したところ、野生型YxGGモチーフを含有しており、より低いexods/exoss比率を有しているexo酵素では機能しなかったプローブに関して、exo酵素の効率を反映するより高いシグナル・レベルが入手された(表1に要約)。
dNTP結合モチーフの変異を有する(エキソヌクレアーゼ活性を提供する)ポリメラーゼ・タンパク質も評価した。dNTP結合モチーフは、ポリメラーゼの構造から容易に確認され得る。この実施例においては、(一つまたは複数の)変異の導入によりdNTP結合親和性が低下するであろうと予想される、三つのアミノ酸、K487、N491、およびY494を、ファミリーBポリメラーゼの三次元構造に基づき、部位特異的変異誘発のための標的として選択した。F11ΔKおよびF11ΔY、F11ΔYX2KNY、ならびにF11ΔYX2Y。exods/exoss比率アッセイ法(表1)は、四つの変異タンパク質が、全て、dNTP結合部位に変異を含有していないタンパク質のものより有意に高いexods/exoss比率を示すことを明らかにした。F11ΔKおよびF11ΔYの両方が、親カウンターパートと比較して、本発明のqPCRにおける改良された性能を示した。既にYxGGモチーフに変異を含有しているF11ΔYX2KNYおよびF11ΔYX2Yは、qPCRの性能の有意なさらなる改良を示さなかった。さらに、保護されていない3'末端を有する内部標識されたプローブが本発明のqPCRにおいて使用された場合、最も高いexods/exoss比率を有しているF11ΔYX2KNYおよびF11ΔYX2Yにより、一本鎖状態のプローブの切断によるバックグラウンド・シグナルの有意な低下も観察された。
(表1に要約される)これらの結果は、YxGGモチーフおよびdNTP結合モチーフの変異を通してexods/exoss比率が改変され得ることを証明した。二つの型の変異の効果は相加的であった。
(表1)変異ポリメラーゼの配列および活性に関する情報
a ΔはSso7d欠失バージョンを表す。この分析において、Ssoドメインを欠くexo酵素は、それを含有しているものより優れていた。A6は、遺伝子の3'末端におけるフレーム・シフト変異のため天然にSso7dドメインを欠いている。
b A6およびF11Δは、同一の基質に対して類似のexo
ds/exo
ss比率を示すことが以前に示された。
本明細書中に引用された刊行物、特許、アクセッション番号、および特許出願は、全て、個々の刊行物または特許出願が各々参照により組み入れられると特別に個々に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。
前述の発明は、理解を明瞭にする目的のための例示および例によってある程度詳細に記載されたが、添付の特許請求の範囲の本旨または範囲から逸脱することなく、ある種の変化および修飾がそれらになされ得ることが、本発明の開示を考慮すれば、当業者には容易に明らかとなると思われる。
エキソヌクレアーゼ活性を有しているが、ポリメラーゼ活性を実質的に欠いている例示的なハイブリッド・ポリメラーゼ酵素の核酸配列およびポリペプチド配列が、以下に提供される。配列番号:2および4において、拡大フォントの太字の配列は、配列内のYxGGモチーフの位置を示す。
1.ハイブリッド酵素A6(終止コドンを含む2274bp)をコードする遺伝子のDNA配列(配列番号:1)
2.ハイブリッド酵素A6のアミノ酸配列(757aa)(配列番号:2)
3.ハイブリッド酵素F11(終止を含む2535bp)をコードする遺伝子のDNA配列(配列番号:3)
4.ハイブリッド酵素F11のアミノ酸配列(844aa)(配列番号:4)