JP4970502B2 - 反射型液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は,反射型液晶表示装置及びその製造方法に関し,特に,簡単なプロセスで高い反射率を有する散乱反射板構造を有する反射型液晶表示装置及びその製造方法に関する。
近年,アクティブマトリックスを用いた液晶パネルにおいて,軽量,薄型,低消費電力化が実現できる反射型液晶表示装置が注目されている。反射型液晶表示装置は,外部からの光を表示パネル内に取り込み背面側に設けた反射板により反射させることにより,バックライトを不要にし,低消費電力化を図ることができる。従って,携帯情報端末や携帯電話の表示装置として有用である。
外部の光は,表示装置が使用される環境により異なる。従って,表示パネル内に設けられる反射板は,ランダムな方向から入る光をランダムな方向に反射させる光散乱反射構造であることが望まれる。
かかる反射型液晶表示装置として,凹凸を形成した膜状に画素電極を形成して,凹凸を有する画素電極により外光を乱反射させる構造が提案されている。例えば,特開平5-232465号,特開平8-338993号などである。これらの公報に記載された反射型液晶表示装置は,画素電極に凹凸を形成するために,マスクパターンを利用したフォトリソグラフィプロセスを利用したり,研磨工程とエッチング工程の組合せを利用したりしている。
これらの従来例においては,反射電極に任意凹凸パターンを形成することにより,高い反射率を得ることができる。しかし,フォトリソグラフィを用いて反射電極の形状を制御することは,プロセスが煩雑である。さらに,露光条件により形状が変化すると反射特性が大きく変化するため,製造プロセスのマージンが狭い問題がある。
これを改善する方法として,反射電極と熱膨張率の異なる薄膜樹脂層を用いることでプロセスを簡略化する方法が,特開平5-80327号に開示されている。しかし,本方法においては,有機膜形成後,加熱スパッタ法で金属膜を形成することにより画素電極の表面に凹凸を形成するものである。しかし,この方法は,真空中での加熱工程中に有機膜から脱ガスが発生し,反射膜の膜質変化が起きたり,反射膜に反射特性を低下する微小な凹凸が形成されるおそれがあり,実用的なプロセスではない。
また,特開2000-193807号には,主鎖にフッ素脂肪族環構造を有するフッ素樹脂を用いて,有機膜に微細な凹凸形状を形成する技術が開示されている。しかし,この方法は,特殊な樹脂を用いる上に350℃と高温でのベイク工程が必要である。さらに,本公知例で示されているように,この樹脂自体に感光性がないため,薄膜トランジスタに接続される画素電極に凹凸を形成する場合,別途,レジストをコートしてフォトリソグラフィ工程により,コンタクトホールを形成する必要があり,プロセスが複雑になる。
更に,特願平10-253977号には,コヒーレント光を照射したときに生じるスペックルの強度分布を利用して,深さ方向の変異分布を有する凹凸を形成して,ランダムな凹凸分布を有する反射板を形成することが記載されている。しかし,この方法では,特殊な露光装置が必要であり,露光装置自体が大がかりで高コストになり,現実的ではない。
特開平5−232465号 特開平8−338993号 特開平5−80327号 特開2000−193807 特開平11−259018号公報 特開平08−227071号公報 特開昭56−156865号公報 特開平6−175126号公報 特開平11−295750号公報 特開平11−337935号公報 特開平11−337964号公報 特開平5−281533号公報
以上の様に,散乱反射電極を画素電極に利用した反射型液晶表示装置が種々提案されているが,いずれの場合も簡単な製造プロセスで十分な反射率を有する散乱反射電極を形成することができない。更に,最適な反射電極構造を形成するためには,例えば,凹凸の平均傾斜角度や,傾斜角度分布などを最適な範囲に制御することが必要であるが,そのような最適な構造に再現性良く制御することができる製造プロセスは提案されていない。
更に,従来の反射型液晶表示装置における反射板の凹凸の傾斜角は,特定方向からの入射光に対して最大の反射率が得られるように選択されている。そして,従来提案されている反射板は,凹凸の傾斜角度を例えば10°〜20°に設定すること(特開平11-259018号公報),反射板の凹凸の傾斜角を5°〜25°の均一な角度にすること(特開平08-227071号公報),反射板の凹凸の平均傾斜角度が30°以下であること(特開昭56-156865号公報),凹凸の高さがガウス分布であり,このときの凹凸の平均傾斜角度が10°であること(Tohru Koizumi and Tatsuo Uchida, Proceedings of the SID, vol.29, p.157, 1988),反射板表面はなめらかな凹凸面でありかつ凹凸平均傾斜角度が4〜15°に選ばれること(特開平6-175126号公報)などである。
しかしながら,これらの従来例には,表示パネルに対してあらゆる方向から外部の光が入射する場合に最も反射率が高くなるかについての検討はなされていない。従って,従来例には,種々の環境化においても高い反射率で外部光が反射して明るくなる反射型液晶表示装置は提案されていない。
更に,従来例では,ノート型パソコン等の表示パネルに入射される外部光が,ある方向においては全方位,それとは異なる方向においては特定の方位の場合を想定して,反射率を高くする凹凸形状については提案されていない。
更に,レジスト膜を形成し所定のマスクパターンで露光・現像した後に,ベーキング処理してレジスト膜の断面構造をなだらかにし,所望の傾斜面を形成する反射板構造が,従来提案されている。しかし,かかる製造プロセスにおいて,最適なパターン形状の提案がなされていない。また,同じ画素領域内に指向性と散乱性を兼ね備えた反射用凹凸形状の形成方法も提案されていない。
更に,反射型液晶表示装置は,外部の光を利用するので,暗い場所で使用するためには,光源を設ける必要がある。しかし,この光源からの光を散乱させて表示パネル側に入射させる構造を採用すると,その散乱構造により表示画像がぼけて,コントラストが悪くなるという課題がある。
そこで,本発明の目的は,製造プロセスの間略化,歩留まり向上,製造コストの削減を実現でき,さらに,安定して高い反射特性を実現できる反射板を形成することができる液晶表示装置の製造方法を提供することにある。
更に,本発明の別の目的は,種々の方向から外部光が入射しても高い反射率を有する反射板を有する反射型液晶表示装置を提供することにある。
更に,本発明の別の目的は,ノート型パソコンなどの表示画面において高い反射率を有する反射板を有する反射型液晶表示装置を提供することにある。
更に,本発明の別の目的は,反射用凹凸を形成するための最適なレジスト膜のパターン形状を有する反射型液晶表示装置を提供することにある。
更に,本発明の別の目的は,暗い場所での使用を可能にすると共に,通常使用時の表示画面のぼけをなくしてコントラストを向上させたフロントライト付き反射型液晶表示装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために,本発明の第1の側面は,液晶表示装置の製造方法において,所定の膜厚を有する感光性樹脂層の表面に露光エネルギーを有する光を照射して,感光性樹脂層の厚さ方向(または平面方向)に熱的変形特性の分布を形成した後,熱処理を行って感光性樹脂層の表面にランダムな凹凸(マイクログルーブ,微細な溝,或いは微細な皺)を形成することを特徴とする。
感光性樹脂層に例えば遠紫外線(Deep Ultra Violet: DUV)などの露光エネルギーを有する光を照射し,部分的に感光させて,感光性樹脂層を部分的に変質させる。それにより,感光性樹脂層の厚さ方向(または平面方向)に熱的変形特性の分布を形成することができる。その後,ガラス転移温度以上の熱処理を行うことにより,感光性樹脂層の表面にランダムな凹凸を形成することができる。
DUV照射は,感光性樹脂層の深さ方向の表面側一部のみが感光する程度のエネルギー照射に制御されることが好ましい。その結果,感光性樹脂層の表面側の一定の深さまでが架橋・分解反応により変質し,表面側領域と背面側領域とで異なる熱的変形特性を有することになる。その為,その後の熱処理時に,感光性樹脂層の表面側と背面側との間の熱的変形特性の違いによって,表面にランダムな凹凸が形成される。
或いは,DUV照射を,感光性樹脂層の表面の一部の領域にのみ感光する程度のエネルギー照射を行っても良い。その場合は,マスク膜を利用した露光工程が必要になる。平面方向に熱的変形特性の分布を形成しても,その後の熱処理工程で平面方向に異なる熱的変形が生じ,表面にランダムな凹凸が形成される。
上記のランダムな凹凸形状の溝と嶺のピッチや高低差(凹凸の荒さと細かさ)は,感光性樹脂層の膜厚,照射エネルギーなどにより再現性良くコントロールすることができる。更に,エネルギー光照射前の感光性樹脂層への熱処理温度や時間によっても,凹凸形状をコントロールすることができる。
例えば,感光性樹脂層の膜厚が小さいと,凹凸の高低差は小さくピッチも小さくなり,感光性樹脂層の膜厚が大きいと,凹凸の高低差は大きくピッチも大きくなる。また,照射エネルギーが小さいと,凹凸の高低差は小さくピッチも小さくなり,照射エネルギーが大きいと,凹凸の高低差は大きくピッチも大きくなる。更に,エネルギー光照射前の熱処理温度が低く時間が短いと,凹凸の高低差は大きくピッチも大きくなり,熱処理温度が高く時間が長いと,凹凸の高低差は小さくピッチも小さくなる。
従って,上記の条件を適宜選択することにより,ランダムな凹凸形状を所望の形状に加工することができる。しかも,そのプロセスは,エネルギー光を照射してその後熱処理を行うという,極めて簡単なプロセスであり,大いに実用的である。
本発明の感光性樹脂層は,画素電極を駆動するための薄膜トランジスタのソース電極と画素電極との間の絶縁膜に利用することが好ましい。その場合,画素電極とソース電極とを接続するためのコンタクトホールを形成する必要があるが,感光性樹脂層にフォトリソグラフィ工程を施して,部分的に露光,現像することで,コンタクトホールを形成することができる。そして,その感光性樹脂層に,上記のエネルギー光の照射とその後の熱処理を行うことで,表面に所望のランダムな凹凸形状を形成することができる。かかる感光性樹脂層上に画素電極を形成することで,所望のランダムな凹凸を有する反射型画素電極を形成することができる。
上記の感光エネルギーを有する光の照射に代えて,酸,アルカリ溶液,4級アンモニウム塩溶液,HMDS(Hexa-methyl-di-silazane)のうちいずれかの薬液によるウエット処理を利用することもできる。かかる薬液に感光性樹脂層を浸すことにより,感光性樹脂層の表面に化学反応を起こさせ,異なる熱的変形特性を有する物質に変質させることができる。
上記の目的を達成するために,本発明の第2の側面は,反射型液晶表示装置において,液晶層が形成された基板を有し,前記基板の液晶層側に形成される反射用凹凸の傾斜角が少なくとも0°〜20°の範囲に分布し,前記傾斜角の存在確率が15°〜19°の範囲でピークになることを特徴とする。
上記の反射用凹凸の傾斜角の分布を有する場合,表示面に対してあらゆる方向から外部光が入射する環境化において,最も高い反射率を有することができる。即ち,表示面に対してあらゆる方向から外部光が入射する積分球からの拡散光を考えた場合,液晶層内への入射光強度は,液晶層内の入射角が30°〜38°の範囲で最も強くなり,それ以外の入射角の範囲では入射強度が低くなる。従って,最も入射光強度が高くなる入射角30°〜38°の範囲の入射光を表示面の法線方向に反射できるようにするためには,反射用凹凸の傾斜角の存在確率が15°〜19°の範囲でピークになることが必要である。
但し,入射角30°〜38°以外の範囲の入射角も存在するので,それに応じて反射用凹凸の傾斜角は,少なくとも0°〜20°の範囲にも分布することが好ましい。
その場合の傾斜角の分布は,液晶層内の入射光の入射強度に対応した分布をとることがより好ましい。例えば,表示パネルが使用される環境下の外部光の入射状況により特定される液晶層内の入射光の入射強度分布に対応して,反射用凹凸の傾斜角の分布を設定することで,最も高い反射光量を得ることができる。
上記の目的を達成するために,本発明の第3の側面は,反射型液晶表示装置において,液晶層が形成された基板を有し,前記基板の液晶層側に形成される反射用凹凸の傾斜角が,第1の方向に沿ってその存在確率が1つのピークを有し,前記第1の方向と異なる第2の方向に沿ってその存在確率が2つのピークを有するように分布することを特徴とする。
上記の発明によれば,例えばノート型パソコンの表示パネルのように一定の方向に傾けて使用される場合,表示パネルの水平方向では比較的広い範囲の入射角で外部光が入射するが,表示パネルの垂直方向ではキーボードにより遮られて比較的狭い範囲の入射角で外部光が入射する。その様な環境下では,表示パネルの水平方向に沿っては,反射用凹凸の傾斜角分布は,存在確率が例えば15°〜19°の範囲でピークを有し,表示パネルの垂直方向に沿っては,反射用凹凸の傾斜角分布は,存在確率が2つの範囲でピークを有することが好ましい。このように入射角の方向に応じて,反射用凹凸の傾斜角分布を代えることで,最高の反射光量を実現することができる。
上記の目的を達成するために,本発明の第4の側面は,反射型液晶表示装置において,基板上に反射用凹凸を有し,単一の画素領域内に,反射光について第1の指向性と第1の散乱性を有する第1の凸部と,前記反射光について前記第1の指向性より弱い第2の指向性と前記第1の散乱性より強い第2の散乱性を有する第2の凸部とがランダムに混在することを特徴とする。
上記の発明によれば,単一の画素領域内に,指向性が強い凸部と散乱性が強い凸部とを混在させることにより,入射光に対する反射光を効率的に反射することができる。
上記の目的を達成するために,本発明の第5の側面は,反射型液晶表示装置において,基板上に反射用凹凸を有し,前記凹凸は,感光性樹脂膜により形成され,第1の円形パターン同士が第1の距離以上離間して配置され,前記第1の円形パターンより小さい第2の円形パターンが前記第1の円形パターンと前記第1の距離未満離間して配置されていることを特徴とする。
上記の発明によれば,比較的大きな円形パターンが,感光性樹脂膜の露光・現像後のポストベーク時に合体しない程度に離間して配置されているので,設計通りの傾斜面を形成することができる。また,大きな円形パターンに近接して比較的小さな円形パターンを配置しているので,傾斜面の密度を高くすることができる。小さな円形パターンと大きな円形パターンとがポストベーク時に合体しても,合体領域が狭いので,それによる悪影響は限られている。
上記の目的を達成するために,本発明の第6の側面は,反射型液晶表示装置において,基板上に反射用凹凸を有し,前記凹凸は,感光性樹脂膜により形成され,複数の多角形パターンが隣接する多角形の辺どうしが平行になるように配置されていることを特徴とする。
上記の発明によれば,感光性樹脂膜の露光・現像後のポストベーク時に隣接するパターンが合体しないように,対向する辺が平行になるように配置される。そして,傾斜面が複数の方向に向くような多角形パターンが高密度に配置されるので,傾斜面の方向のランダム性を円形パターンと同等にすることができる。
上記の目的を達成するために,本発明の第7の側面は,反射型液晶表示装置において,反射型液晶表示パネルと,前記反射型液晶表示パネル上に設けられ,導光板と,該導光板の端部に配置した光源と,前記光源が点灯した時に該導光板を伝わる光に対して光散乱性を発現し,前記光源が非点灯時に前記光散乱性が減少する光散乱手段とを有するフロントライトとを有することを特徴とする。
上記の発明によれば,暗い状態で使用する時は,光源が点灯してその散乱光の入射により表示画面を明るくし,明るい状態で使用する時は,光源が非点灯になり外光により表示画面を明るくすると共に,光源の光を散乱する光散乱性が減少し,それによる表示画像がぼけたり歪んだりすることが防止される。
以上,本発明によれば,反射型液晶表示装置の反射用凹凸を,簡単なプロセスで形成することができ,しかも,所望の凹凸による傾斜面分布を制御性良く形成することができる。更に,本発明によれば,最適な反射用凹凸による傾斜面分布を得ることができ,反射率を向上させることができる。
本実施の形態例が適用される液晶表示装置の回路図の例である。 本実施の形態例が適用される反射型液晶表示装置の断面図の例を示す図である。 本実施の形態例における反射型液晶表示装置の製造プロセスの一部を示す断面図である。 感光性樹脂層20の膜厚とUV照射エネルギーを変化させて形成された反射パネルのマイクログルーブの表面形状の顕微鏡写真を示す図である。 感光性樹脂層20の膜厚とUV照射エネルギーを変化させて形成された反射パネルのマイクログルーブの表面形状の顕微鏡写真を示す図である。 感光性樹脂層20の膜厚とUV照射エネルギーを変化させて形成された反射パネルのマイクログルーブの表面形状の顕微鏡写真を示す図である。 感光性樹脂層20の膜厚とUV照射エネルギーを変化させて形成された反射パネルのマイクログルーブの表面形状の顕微鏡写真を示す図である。 3つの反射パネルのサンプルのAFM像を示す図である。 拡散光源に対する反射膜の平均傾斜角と反射率との関係を示すグラフ図である。 図8の3つのサンプルに対するレジスト膜厚と反射率との関係を示すグラフ図である。 本実施の形態例により形成される樹脂層のマイクログルーブの凹凸形状を模式的に示す図である。 本実施の形態例により形成されるマイクログルーブの平面パターン例を示す図である。 マイクログルーブを形成するために必要なUV照射例を示す図である。 第1のサンプルの製造プロセスを示す断面図である。 第1,第2,第3のサンプルに積分球の拡散光源を照射した時の反射率を比較したグラフ図である。 感光性樹脂層の分離を説明する図である。 感光性樹脂層の分離ラインを形成するプロセスを示す断面図である。 分離ラインを形成した場合と形成しない場合のマイクログルーブの顕微鏡写真を示す図である。 本実施の形態例が想定する反射型液晶表示装置が使用される実環境を示す図である。 入射光の入射角θiと方位角φiを示す図である。 反射型表示装置に光が入射して反射する場合を示す図である。 反射板に入射する光の強度f(θi')と入射角θi'との関係を示す図である。 図23の入射光強度が最大となる入射角θi'と媒体の屈折率nとの関係を示す図である。 反射凹凸の傾斜面に対する入射角,反射角,傾斜角との関係を示す図である。 図22の入射光強度分布に対応した傾斜角の存在確率の分布を示す図である。 反射特性のシミュレーション結果を示す図である。 実際に試作したサンプルを使って,積分球の均一な拡散光に対する反射率を測定した結果を示す図である。 試作した反射板の形成方法を示す断面図である。 反射板の凹凸を形成するための,マスク64のパターン例を示す図である。 積分球の拡散光に対して高い反射率が得られる反射板の凹凸の傾斜角分布を示す図である。 反射型液晶表示装置がノート型パーソナルコンピュータのモニターとして搭載された状態を示す図である。 ノート型パーソナルコンピュータの表示装置として利用される場合の,高い反射率を有するXY面方向およびXZ面方向の傾斜角の分布を示す図である。 図32の傾斜角分布を,傾斜角0°を中心に折り返した分布を示す図である。 サンプルの反射板の形成方法を示す断面図である。 図34のマスクパターンの例を示す図である。 図34の凸部の平面,断面形状の例を示す図である。 試作した反射板の傾斜角分布の測定結果を示す。 試作した反射板を用いて作成した反射型液晶表示装置の概略断面図である。 図38の反射型液晶表示装置の反射率の測定結果を示す図である。 反射型液晶表示装置の傾き角度と,液晶層の屈折率に対する,存在確率が極大になる傾斜角範囲を示す図である。 画素領域内に混在する2つの反射凹凸形状を示す断面図である。 本実施の形態例における画素領域PKの平面図である。 図42の反射用凹凸を形成する製造プロセスを示す断面図である。 従来のレジストの円形パターン例を示す図である。 本実施の形態例におけるレジストの円形パターン例を示す図である。 図45の円形パターンを説明するための図である。 本実施の形態例におけるレジストの多角形パターン例を示す図である。 本実施の形態例におけるレジストの多角形パターン例を示す図である。 従来提案されているフロントライト付き反射型液晶表示パネルの構成図である。 フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第1の例を示す図である。 フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第2の例を示す図である。 フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第3の例を示す図である。 フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第4の例を示す図である。 フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第5の例を示す図である。 フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第6の例を示す図である。 フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第7の例を示す図である。
以下,図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら,かかる実施の形態例が,本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は,本実施の形態例が適用される液晶表示装置の回路図の例である。背面側の絶縁基板10の表示領域11内に,画素がマトリクス状に形成される。画素は,駆動トランジスタT00〜Tmnと画素電極P00〜Pmnとを有し,駆動トランジスタT00〜Tmnは,行方向に配置された走査線S0〜Smと,列方向に配置されたデータ線D0〜Dnとにそれぞれ接続される。表示領域11の外側には,走査線を駆動する走査線駆動回路12とデータ線を駆動するデータ線駆動回路13とが設けられる。
図2は,本実施の形態例が適用される反射型液晶表示装置の断面図の例を示す図である。反射型液晶表示装置は,背面側の絶縁基板10と表示側の透明基板30との間に液晶層34が設けられ,更に,背面側の絶縁基板10に反射電極22が形成され,表示側から入射した外光が,反射電極22の表面で反射され,液晶層34を通過して再度表示側に出射される構造になっている。
絶縁基板10上には,図示しない走査線に接続されるゲート電極15と,絶縁層16と,半導体層19及びデータ線に接続されるドレイン電極17とソース電極18とが形成される。そして,更に,層間絶縁膜の樹脂層20上に,画素電極である反射電極22が形成され,反射電極22はコンタクトホールCHを介してソース電極18に接続される。樹脂層20及び反射電極22の上にはポリイミドなどからなる配向膜23が形成される。樹脂層22の表面には,入射光を乱反射するためのランダムな凹凸が形成され,それに伴いその上にデポジットされる画素電極(反射電極)22の表面にもランダムな凹凸が形成される。
表示側の透明基板30には,全面にITO(酸化インジウムを主成分とする材料)などの透明電極31と配向膜32が一方に,偏光板33が他方に形成される。そして,表示側の配向膜32と背面側の配向膜23との間に,液晶層34が挿入される。液晶層34の液晶分子の配向方向は,配向膜32,23の表面形状やその特性に応じた方向になる。
[マイクログルーブの形成方法]
図3は,本実施の形態例における反射型液晶表示装置の製造プロセスの一部を示す断面図である。図3には,図2で示した薄膜トランジスタのソース電極18の一部が示されている。図3(A)に示される通り,絶縁基板10上に絶縁層16や薄膜トランジスタの各電極,半導体層を形成した後,感光性樹脂20,例えばシプレイ社製汎用レジストであるLC200(ノボラック系樹脂),が塗布される。樹脂層20は,スピナーにより膜厚0.5〜2.0μm程度スピンコートされる。その場合の回転塗布方法は,例えば回転数約350rpmで3秒間の回転塗布で最初のレジスト層を形成し,更に回線数約800rpmで20秒間の回転塗布で更にレジスト層を形成する。
樹脂層20の膜厚は,表面に形成されるマイクログルーブの凹凸の荒さ(高低差,ピッチ長)に影響するので,適切な膜厚が選択される。後述するとおり,感光性樹脂層20の膜厚が大きいと,凹凸はより荒くなり(高低差大,ピッチ長大),膜厚が小さいと,凹凸はより細かく(高低差小,ピッチ長小)なる。
その後,温度約90℃,30分間のプリベーク処理を行う。このプリベーク処理では,レジストが反応するほど温度は高くなく,多少溶剤が飛ばされる程度である。これにより,後述するポストベーク時にレジスト層が熱によりだれるのを防止する。
図3(B)に示される通り,表示電極のコンタクトホールを形成するために,マスク基板40を利用した公知のステッパ露光処理,現像処理を行う。その結果,樹脂層20のソース電極18上にコンタクトホールCHが形成される。
コンタクトホールCHの形成後,感光性樹脂層20には,ポストベーク処理が施される。ポストベーク処理は,例えば120℃,40分の熱処理であり,感光性樹脂の溶剤を十分に飛ばすことが目的である。ポストベーク処理の温度は,感光性樹脂の感光剤が反応する温度(例えば200℃程度)より低く,ポストベーク処理では感光剤が反応しないようにする必要がある。また,ポストベーク処理の温度は,樹脂のガラス転移温度(例えば200℃程度)より低く,樹脂が硬化しないようにする必要がある。
ポストベーク処理の温度が高く時間が長いと,残留溶剤の量が少なくなり,マイクログルーブの凹凸が細かくなり,逆に温度が低く時間が長いと,マイクログルーブの凹凸が荒くなる。従って,最適なマイクログルーブの形状が形成できるように,適宜ポストベーク処理の条件が選択される。
次に,図3(C)に示される通り,感光性樹脂層20の表面全面に,感光するに十分な高いエネルギーを有する光,例えば波長λ=360nm以下の遠紫外線(DUV)を,エネルギー約2600mj/cm2で照射する。このDUV照射により,感光性樹脂層20の表面部分(膜厚方向の表面側)から,感光剤が感光反応,ノボラック系樹脂が架橋反応して,樹脂層の上層部分が変質する。その結果,樹脂層20の表面側と裏面側とで,熱的変形特性が異なる物質になる。このDUV照射は,例えばORC製UV照射装置を用いて行った。
UV照射のエネルギーも,マイクログルーブの形状に影響を与える。エネルギーが低すぎるとマイクログルーブ自体が形成されないが,ある程度の閾値を越えるエネルギーが照射されると,マイクログルーブが形成される。その場合,照射エネルギー(単位時間当たりのエネルギー×照射時間)が低いとマイクログルーブが細かく,高いと荒く形成される。従って,最適なマイクログルーブ形状に応じて,照射エネルギー量も選択される。
次に,図3(D)に示される通り,レジスト20に対して最終ベークを行う。この熱処理は,例えば温度200℃,時間40分程度で行われる。最終ベークでの熱処理の温度は,UV照射前の加熱処理(ポストベーク)の温度よりも高い温度である必要がある。そして,最終ベークでの加熱処理を行うことにより,樹脂層20の表面には,図示される通り,ランダムなマイクログルーブMGが形成される。
最終ベークの熱処理温度は,ポストベーク以上の温度であることが必要であり,更に,後の熱処理工程である配向膜の焼成温度よりも十分高く,樹脂層20が十分に硬化することが望ましい。
その後は,図2に示される通り,アルミニウムをスパッタ法または加熱蒸着法により約2000Å程度成長させて,公知のフォトリソグラフィ法によりパターンニングして画素電極22を形成する。その結果,画素電極22の表面には,ランダムな凹凸が形成され,光を散乱反射する反射電極として機能することになる。そして,更に,その上全面に,例えば5000Å程度のポリイミドからなる配向膜23が,スピンコート及び焼成(約120℃)により形成される。この配向膜23の表面にも凹凸が形成され,その上に挿入される液晶層34の液晶分子の配向方向が凹凸の溝方向に従って配向することになる。
マイクログルーブが形成される理由は,未だ確かではないが,発明者等の知見によれば,DUV照射により樹脂層20の表層部分が変質し,最終ベークの熱処理で樹脂層20の表面側と背面側とが異なる熱的変形を行い,上層と下層間のストレスに起因して,表面にマイクログルーブ(微細溝),又はマイクロリンクス(微細皺)が形成されるのもと思われる。例えば,熱処理により,樹脂層20の背面側が収縮することにより,表面側にマイクログルーブが形成されると考えられる。これは,UV照射により,樹脂層への厚さ方向における樹脂の架橋反応レベルが異なることに起因するものと思われる。
このようにして形成されるマイクログルーブは,発明者等の実験によれば,後述するとおり入射される外光を乱反射するに必要なランダムな凹凸が形成されたことが確認されている。
上記プロセスにおけるUV照射は,樹脂層20の全面に行う代わりに,所定のマスクパターンを利用して,平面方向の一部領域にのみ行うことでも良い。その結果,樹脂層20には,平面方向において一部変質し,平面方向に熱的変形特性の分布が形成される。かかる水平方向の熱的変形特性の分布により,その後の最終ベークでの熱処理で,同様のマイクログルーブが形成される。
更に,上記プロセスにおけるUV照射に代えて,酸,アルカリ溶液,4級アンモニウム塩溶液,HMDSのうちいずれかの薬液によるウエット処理を利用することもできる。かかる薬液に感光性樹脂層を浸すことにより,感光性樹脂層の表面に化学反応を起こさせ,異なる熱的変形特性を有する物質に変質させることができる。
本実施の形態例において,マイクログルーブの荒さが樹脂層20の膜厚とUV照射エネルギーによって制御される。図4〜図7は,感光性樹脂層20の膜厚とUV照射エネルギーを変化させて形成されたマイクログルーブの表面形状の顕微鏡写真(約20倍)を示す図である。この顕微鏡写真の反射パネルのサンプルは,次のプロセスにより試作したものである。
パネル上にレジスト(例えばシプレイ社製汎用レジストLC200)をスピンコート法(350rpmを3秒間,800rpmで20秒間の二回コーティング)により形成し,90℃,30分間のプリベークの後,パネルを全面露光,現像して,所望の膜厚(2.0μm,1.7μm,1.4μm,1.0μm)にする。そして,120℃,40分間のポストベーク後に,所望のエネルギー(5200mj/cm2,3900 mj/cm2,2600 mj/cm2,1300 mj/cm2,0 mj/cm2)のDUV照射を行い,200℃,40分間の最終ベークを行った。最後に,レジスト膜上に反射膜としてアルミニウムを2000Å程度蒸着法にて形成した。
図4は,感光性樹脂層20の膜厚を2.0μmにして,UV照射エネルギーを,5200mj/cm2,3900 mj/cm2,2600 mj/cm2,1300 mj/cm2,ゼロにした5個のサンプルの顕微鏡写真である。UV照射していない場合や照射エネルギーが1300 mj/cm2と小さいと,樹脂層の表面にマイクログルーブが形成されていない。しかし,照射エネルギーが1300 mj/cm2より大きい場合は,樹脂層の表面にマイクログルーブが形成されていることが確認される。その場合,マイクログルーブの高低差やピッチ長(荒さ)は,UV照射エネルギーが高いほうが荒く(高低差大,ピッチ長大)で,照射エネルギーが低いほうが細かい(高低差小,ピッチ長小)であることが確認される。
樹脂層20の表面に形成されたマイクログルーブの形状は,ランダムである。そして,その形状は,写真に示される通り,緩やかな曲線の湾曲形,シャープな角度の屈曲形,閉じたループ形状,Y字状の分岐形状などが少なくとも2つ以上は混在する。本実施の形態例のマイクログルーブは,従来の人為的に作成した一定のマスクパターンを利用したリソグラフィ工程による凹凸では得られない形状である。
そして,このマイクログルーブの荒さをコントロールすることにより,凹凸の平均傾斜角や傾斜角分布を適宜コントロールすることができる。
図5は,感光性樹脂層20の膜厚を1.7μmにして,UV照射エネルギーを,5200mj/cm2,3900 mj/cm2,2600 mj/cm2,1300 mj/cm2,ゼロにした5個のサンプルの顕微鏡写真である。レジスト層の膜厚を図4のサンプルより小さくしたので,形成されるマイクログルーブがより細かくなっていることが確認される。UV照射エネルギーが低すぎるとマイクログルーブが形成されないのは,図4のサンプルと同じである。
図6は,感光性樹脂層20の膜厚を1.4μmにして,UV照射エネルギーを,5200mj/cm2,3900 mj/cm2,2600 mj/cm2,1300 mj/cm2,ゼロにした5個のサンプルの顕微鏡写真である。この場合は,更にマイクログルーブが細かくなっている。
そして,図7は,感光性樹脂層20の膜厚を1.0μmにして,UV照射エネルギーを,5200mj/cm2,3900 mj/cm2,2600 mj/cm2,1300 mj/cm2,ゼロにした5個のサンプルの顕微鏡写真である。この場合は,更にマイクログルーブが細かくなり,UV照射エネルギーが2600 mj/cm2でもマイクログルーブの形成が十分とは言えなくなっていることが確認される。
以上の通り,上記20個のサンプルの表面写真から明らかな通り,UV照射エネルギーが低くなるに従い,マイクログルーブの凹凸形状が小さくなる。更に,一定の基準値以上の照射エネルギーを与えないとマイクログルーブ自体が形成されない。また,最終ベーク後のレジストの膜厚依存性もあり,膜厚が薄いほどマイクログルーブの凹凸形状が小さくなる。
図8は,更に3つの反射パネルのサンプルのAFM像を示す図である。このサンプルは,上記と同じ反射パネルサンプルであって,UV照射エネルギーを5200mj/cm2一定にし,レジストの膜厚を1.7μm,1.4μm,1.0μmにし,更に2000Åのアルミニウムの反射膜をレジスト層上に形成したものである。
図8(A)に示されるように,感光樹脂層であるレジスト膜の膜厚を1.7μmにしたサンプルでは,表面のマイクログルーブの形状が大きく,凹凸の高低差が1.3μm,平均傾斜角度が13°であることが測定された。
図8(B)に示されるように,感光樹脂層であるレジスト膜の膜厚を1.4μmにしたサンプルでは,表面のマイクログルーブの形状がやや小さく,凹凸の高低差が1.1μm,平均傾斜角度が11°であることが測定された。
更に,図8(C)に示されるように,感光樹脂層であるレジスト膜の膜厚を1.0μmにしたサンプルでは,表面のマイクログルーブの形状がさらに小さく,凹凸の高低差が0.5μm,平均傾斜角度が8°であることが測定された。
図8の観察結果から明らかな通り,マイクログルーブの形状の大小により,凹凸による平均傾斜角も変化することが理解される。つまり,レジスト膜が薄くなるに従い,凹凸の高低差,平均傾斜角が小さくなる。従って,本実施の形態例の製造プロセスによれば,平均傾斜角をコントロールすることもできる。平均傾斜角は,反射パネルの反射率を高めるための重要な要因である。従って,本実施の形態例の製造プロセスによりその平均傾斜角がコントロールできることは,実用上重要な意味を持つ。
図9は,拡散光源に対する反射膜の平均傾斜角と反射率との関係を示すグラフ図である。図9には,反射パネルに入射する拡散光源として,反射パネルに対する入射角が0°,15°,30°,45°及び0°〜±90°の範囲の入射角分布を有する積分球の5種類に対して,反射率Yがその反射膜の凹凸の平均傾斜角kに依存することが示される。この依存性は,後述する理論式から求められる。尚,凹凸による傾斜角分布は,正規分布であり,その正規分布の平均傾斜角が理論的に設定される。
図9の理論値から理解されるように,平均傾斜角が15°を越えるほど大きくなると,反射膜で反射した反射光は,反射パネルの表面側の液晶とガラス基板との境界での角度が臨界角度を超える場合が多くなり,反射率が低下する。一方,入射角が0°や15°の場合は,平均傾斜角が5°より小さいほうが,反射率が高くなるが,入射角が0°や15°の環境下で表示パネルが利用されることはそれほど多くない。そこで,図9の理論値からは,特に15°以下,好ましくは8°〜13°の平均傾斜角を有する反射膜が,いかなる入射光に対しても比較的高い反射率を有することが理解される。
そこで,図8に示した3つのサンプルは,全て平均傾斜角が8°〜13°の範囲内に入っている。従って,本実施の形態例の製造プロセスを利用して平均傾斜角を,反射率が高くなる範囲に制御することができることが理解される。
図10は,図8の3つのサンプルに対して,ポストベークを行った場合(黒丸)と行わなかった場合(白丸)のレジスト膜厚と反射率との関係を示すグラフ図である。この場合の拡散光は,積分球が使用されている。最初に,図8の3つのサンプルで説明した通り,ポストベークを行った場合について見ると,従来のプロセスにより凹凸を形成した時の反射率のトップデータに比較して,レジスト膜厚が1.7μm,1.4μm,1.0μmの本実施の形態例によるサンプルは,いずれも高い反射率を有することが実証されている。即ち,図9の理論値に示された通り,平均傾斜角が8°〜15°の領域に入るように形成されたサンプルは,従来例のトップデータより高い反射率が実現されている。
次に,図10の白丸に示されるポストベークを行わなかったサンプルを見ると,レジスト膜厚が厚い領域では,従来のトップデータより低い反射率になっているが,レジスト膜厚が薄い領域では高くなっている。この実験結果から,ポストベーク処理が反射率を上げる上で重要であることが理解される。その理由は,おそらく,ポストベークを行わない場合は,露光現像後のレジスト膜内に溶剤が多く残留し,UV照射後の最終ベーク工程でその残留溶剤が脱ガスとして発生し,凹凸表面に欠陥が発生したものと推測される。
更に,最終ベークの温度は,その後の配向膜形成の焼成温度よりも高く設定することが必要であると推察される。即ち,最終ベーク工程で,レジスト層内の溶剤を完全に取り去るようにして,その後の熱処理で脱ガス現象が生じないようにする必要があることが,図10のポストベークなしのサンプル結果から推測されるからである。
図11は,本実施の形態例により形成される樹脂層のマイクログルーブの凹凸形状を模式的に示す図である。図11(A)の凹凸が荒い場合は,樹脂層20の表面のうねりが大きく,ピッチ長Lが長く,凹凸の高低差Hも大きくなる。その結果,傾斜角kも大きくなる傾向にある。一方,図11(B)の凹凸が細かい場合は,樹脂層20の表面のうねりが小さく,ピッチ長Lが短く,凹凸の高低差Hも小さくなる。その結果,傾斜角kも小さくなる傾向にある。
図12は,本実施の形態例により形成されるマイクログルーブの平面パターン例を示す図である。前述の通り,本実施の形態例によれば,図12(A)の湾曲パターン,図12(B)の屈曲パターン,図12(C)のループパターン,図12(D)の分岐パターンなどが混在したマイクログルーブが,樹脂膜の表面に形成される。
図13は,マイクログルーブを形成するために必要なUV照射例を示す図である。図13(A)の例は,樹脂層20の表面全面にUV照射される場合であり,その場合は,斜線で示された表面から深さ方向の一定の深さの領域が,UV照射による感光反応により変質する。従って,その後の最終ベークによる加熱処理により,変質層と非変質層の熱変形特性の違いにより,表面にマイクログルーブが形成されるものと思われる。
一方,図13(B)の例は,樹脂層20のにマスクを利用したUV照射により,斜線で示した領域が変質化される。その結果,横方向に変質層と非変質層との分布が形成される。従って,その後の最終ベークによる加熱処理により,変質層と非変質層の熱変形特性の違いにより,表面にマイクログルーブが形成されるものと思われる。いずれの方法でも樹脂層表面にマイクログルーブが形成されるが,図13(A)のプロセスのほうが,UV照射工程でマスクを必要としないので有利である。
本発明らは,従来のマスクを利用したハーフ露光による凹凸形成プロセスに,本実施の形態例のUV照射して最終ベークするプロセスを適用した場合について,比較検討を行った。即ち,(1)ハーフ露光による凹凸を表面に形成して更にUV照射して最終ベークする第1のサンプルと,(2)ハーフ露光せずにUV照射して最終ベークする第2のサンプルと,(3)従来のハーフ露光により凹凸を形成しUV照射は行わない第3のサンプルとを試作し,それぞれの反射率を比較した。
上記の第2のサンプルは,図3等でその製造プロセスを説明した。従って,第1のサンプルと第2のサンプルの製造プロセスを説明する。図14は,第1のサンプルの製造プロセスを示す断面図である。第1のサンプルは,基板10上に前述のレジスト膜20をスピンコートで塗布し,プリベークされる。そして,図14(A)に示される通り,所定のパターンを有するマスク42を利用して,レジスト膜20がハーフ露光される。ハーフ露光は,レジスト膜20の膜厚方向全てを感光しない程度のエネルギーが弱い露光である。その後,現像すると,図14(B)に示される通り,マスク42のパターン形状の凹部がレジスト膜の表面に形成される。
そこで,第1のサンプルには,ポストベークの後,本実施の形態例のUV照射(例えば5200mj/cm2)が全面に行われ,表面が変質される。そして,前述の最終ベークが行われると,図14(C)に示される通り,レジスト膜20の表面は,ハーフ露光によるパターンに対応した凹凸のうねりに加えて,UV照射とポストベークによるマイクログルーブが形成される。
第3のサンプルは,図14(B)の現像工程の後,マイクログルーブが形成されない程度の少ないエネルギーのUV照射(例えば1300mj/cm2)が全面に行われる。その後最終ベークを行うと,図14(C)の表面にマイクログルーブが形成されない凹凸が形成される。上記の小さいエネルギーのUV照射により,レジスト膜20のごく表面のみが変質化されるので,最終ベークの加熱工程で,レジスト膜の凹凸がだれて平坦化されるのが防止される。但し,UV照射エネルギーが小さいので,マイクログルーブは形成されない。
図15は,上記のプロセスにより形成した第1,第2,第3のサンプルに積分球の拡散光源を照射した時の反射率を比較したグラフ図である。図中,第1のサンプルSM1には,複数種類のパターン形状(八角形,四角形,十字形,五角形,ドーナツ形,三角形,楕円,扇,八の字形)でハーフ露光したサンプルが含まれる。第2のサンプルSM2は,ハーフ露光で露光されなかった領域が利用されている。第3のサンプルSM3も,第1のサンプルと同様に複数種類のパターン形状でハーフ露光したサンプルが含まれる。
図15の比較例から理解されるとおり,ハーフ露光工程を追加して本実施の形態例を適用した場合も,従来のプロセスのトップデータよりも高い反射率が得られる場合がある。但し,第2のサンプルSM2のように,ハーフ露光を行わないで本実施の形態例を適用した場合が,最も反射率が高くなっている。ハーフ露光工程のみで凹凸を形成した第3のサンプルSM3は,いずれのパターンでも反射率が低くなっている。このように,本実施の形態例のUV照射して最終ベークするプロセスは,所定のパターンを利用したハーフ露光工程と現像工程が付加されても,その高い反射率を実現することができる。
本実施の形態例のマイクログルーブは,できるだけランダムな凹凸が形成されることが好ましい。本発明者らの実験によれば,感光性樹脂層表面にUV照射して最終ベークすると,所々に太い溝または嶺が長く延びて形成されることが観察された。かかる凹凸は,反射方向が一定方向に集中するなど,反射電極の乱反射機能としては好ましくない場合がある。そこで,マイクログルーブの方向や長さをある程度制御できる方法が望まれる。
一方,反射電極として,本実施の形態例では画素電極を利用している。画素電極は画素毎に分離して形成され,独立して電圧が印加される。そこで,本発明者らは,感光性樹脂層を画素単位あるいはライン単位で分離することで,上記の太い溝又は嶺が長く延びて形成されることが防止され,画素電極内ではより均一性をもったマイクログルーブを形成できることを見いだした。感光性樹脂層の分離は,完全に分離してもよく,表面に一定の深さの溝を形成して分離してもよく,さらには,膜厚が一部薄くなるように形成して分離してもよい。ただし,画素電極は,データ線や走査線,ゲート電極との間の容量が所定の範囲になるように設計されるので,かかる条件を満たす範囲で感光性樹脂層を分離する必要がある。
図16は,感光性樹脂層の分離を説明する図である。図16(A)(B)は,背面側基板の平面図である。図16(A)に示される通り,背面基板表面には,データ線Dと走査線Sとが形成され,その交差位置に半導体層19とソース・ドレイン電極17,18とが形成される。そして,データ線Dと走査線Sとで区画された領域が画素領域PXになる。従って,図16(B)に示される通り,ソース電極18と画素電極22とを接続するためのコンタクトホールCHが形成され,画素電極22は,各画素領域毎に分離して設けられる。
図16(C)〜(F)は,感光性樹脂層を分離するための分離ラインの例を示す。(C)は,走査線Sとデータ線Dに沿って分離ライン50が形成され,感光性樹脂層がピクセル単位(画素電極領域単位)に分離される例である。(D)は,分離ライン50がデータ線Dに沿って形成され,感光性樹脂層がデータ線単位に分離される例である。(E)は,分離ライン50がデータ線Dに沿って形成されると共に,それと直交する方向にも分離ライン50が形成される。この場合は,感光性樹脂層の分離単位は,画素電極とは無関係である。(F)は,分離ライン50が走査線Sに沿って形成される例である。
図17は,感光性樹脂層の分離ラインを形成するプロセスを示す断面図である。図17(A)は,絶縁基板10上に,ゲート電極15,絶縁膜16,半導体層19,ドレイン・ソース電極17,18を形成し,更に,レジストからなる感光性樹脂層20をスピンコートしてプリベークした状態を示す。この状態で,感光性樹脂層20にコンタクトホールを形成するための露光工程が行われる。そのときの露光マスク51は,コンタクトホールに対応する領域53は光を完全に透過し,分離ラインに対応する領域55は光を一部透過し,それ以外の領域54は光を完全に遮断するマスクパターンを透明基板52上に形成したものである。例えば,領域54はクロムからなる遮光膜で形成され,領域55はモリブデンシリサイドからなるハーフ露光膜で形成されることができる。かかる露光マスクを利用して露光すると,感光性樹脂層20は,コンタクトホールの位置は完全に露光され,分離ラインに対応する領域はハーフ露光される。
その後,現像を行うと,図17(B)に示される通り,感光性樹脂層20には,樹脂層を貫通するコンタクトホールCHがソース電極18に対応する位置に形成され,樹脂層表面に一定の深さを持つ溝が分離ライン50として形成される。コンタクトホールCHは,狭い領域にのみ形成され,樹脂層20を分離する機能はあまりない。しかし,分離ライン50は,少なくとも樹脂層20の表面を分離するので,その後のUV照射して最終ベークする工程により形成されるマイクログルーブに,長く延在する溝や嶺が発生するのを防止することができる。
図17(A)では,特殊な露光マスク51を利用した。しかし,コンタクトホール形成用マスクで通常の露光を行い,分離ライン形成用マスクでハーフ露光を行うことによっても,図17(B)に示される樹脂層のパターンニングを行うことができる。更に,分離ライン形成用マスクで通常の露光を行って,分離ライン50で樹脂層20を完全に分離しても良い。
また,分離ライン50は,必ずしも樹脂層20の表面側に形成する必要はない。例えば,裏面側に形成することも可能である。その場合,絶縁層16上に形成されるデータ線Dの存在自体が,分離ライン50の機能を有する場合がある。データ線Dが存在する部分で樹脂層20の厚みが一部薄くなるからである。それにより,マイクログルーブの形成が分断され,長く延在する溝や嶺が形成されるのが防止される。
図17(B)に示される通り,分離ライン50は,樹脂層20上に形成される画素電極22(図中破線で示される)の分離領域に形成されることが望ましい。これにより,画素電極22とゲート電極15やその他の電極との間の寄生容量への影響を最小限に止めることができるからである。
図18は,分離ラインを形成した場合と形成しない場合のマイクログルーブの顕微鏡写真を示す図である。このサンプルは,前述の図6〜9のサンプルと同じ反射板に,分離ラインを形成したものと形成しないものである。図18(A)が分離ラインを形成した場合のマイクログルーブの例であり,図18(B)が分離ラインを形成しない場合のマイクログルーブの例である。
この写真から分かるとおり,分離ラインを形成しない例(B)は,一部に長く延在する溝または嶺が存在するのに対して,分離ラインを形成した例(A)は,かかる延在する溝または嶺が存在せず,より均一なマイクログルーブ形状になっている。
上記の実施の形態例のサンプルでは,感光性樹脂層としてシプレイ社製汎用レジストLP200を利用した。それ以外の感光性樹脂として,クラリアントジャパン社製のレジストAFP750を利用しても,同様にマイクログルーブが形成されることが確認された。
以上の通り,本実施の形態例では,感光性樹脂層にUV照射などで一部変質領域を形成し,その後熱処理を行うという簡単なプロセスで,その表面にランダムな凹凸を有するマイクログルーブを形成することができる。しかも,そのマイクログルーブの形状や方向を種々のプロセス条件により比較的容易にコントロールすることも可能である。従って,かかるマイクログルーブを有する樹脂層上に反射層を形成することで,反射型液晶表示装置に有効な反射機能を実現することができる。反射層に画素電極を利用することで,よりシンプルな反射型液晶表示装置を実現できる。
[反射板の傾斜角分布の制御]
図19は,本実施の形態例が想定する反射型液晶表示装置が使用される実環境を示す図である。反射型液晶表示装置を使用する環境は,様々な場所に光源が存在する。従って,あらゆる使用環境を考えると,図19に示すように,反射型液晶表示装置が半球内面に配置された均一な拡散光源下に置かれた場合を想定することが必要である。かかる使用環境下では,表示パネルには,半球の立体角内に存在する全ての入射光が照射されることになる。
そこで,反射型液晶表示装置に入射する光強度Lを求めるために,図20に示されるとおり,X−Y−Z軸と入射角θiと方位角φiとが定義される。入射角θiは,Z軸と入射光との間の角,方位角は入射光とX軸との間の角である。今仮に図19に示した半球(以下積分球)の単位面積当たりの光強度をI(θii)とすると,その光強度dLは,
dL=I(θi, φi)・dω
=I(θi, φi)・ds/r2
となる。但しωは立体角を,dsは積分球の球面の単位面積を,rは積分球の半径を表し,積分球が均一の拡散光とすると,上記光強度Iは定数になる。
更に,入射光は入射角θiだけ斜め方向から表示パネルに照射されるので,表示パネルにはsinθiだけ減衰した光強度になり,
Figure 0004970502
となる。単位面積dsは,図20に示される通り,
Figure 0004970502
であるので,(1)式に(2)式を代入して,光強度dLを入射角θiを0〜π/2,方位角φiを0〜2πに渡って積分すれば,表示パネルの入射光強度Lは,次のように表される。
Figure 0004970502
従って,極角θi方向から入射する光強度f(θi)は(3)式の積分内の関数
で表され,それは次のようになる。
Figure 0004970502
この(4)式のsinθiは,単位入射角θi毎の積分球の拡散光源の面積に起因するものであり,表示パネルの真上(入射角θi=0)からの入射光の光源面積は狭く(sinθi=0),表示パネルの横方向(入射角θi=π/2)からの入射光の光源面積が広い(sinθi=1)ことを意味する。また,(4)式のcosθiは,入射角による減衰成分であり,表示パネルの真上(入射角θi=0)からの入射光の減衰度は殆どなく(cosθi=1),表示パネルの横方向(入射角θi=π/2)からの入射光の減衰度が大きい(cosθi=0)ことを意味する。
図21は,反射型表示装置に光が入射して反射する場合を示す図である。図2で示した反射型液晶表示装置では,表示側ガラス基板および液晶層の屈折率nはほぼ1.5程度の値を有しているので,図21に示される通り,の反射電極を有する基板からなる反射板60を,その上に形成される液晶層や表示側基板からなる屈折率nの媒体61が覆う構造と仮定することができる。すると,空気層から入射角θiで入射された入射光は,媒体61内で入射角θi'となり,反射板60で反射角θo'で反射し,空気層内で反射角θoで出ていくことになる。
空気層から媒体61に入る時,その一部が反射光Rとなって媒体内に入射されないので,それを考慮すると,反射板61に入射角θi'で入射する光の強度f(θi')は,次のように表すことができる。
Figure 0004970502
ただし,R(θi)は上記の空気層と屈折率nの媒体61の界面で反射する光の反射率である。そして,空気層での入射角θiと媒体61内での入射角θi'との間には次のような関係が成り立つ。
Figure 0004970502
ここで,空気層の屈折率を1,ガラスおよび液晶の屈折率をnとした。θiは空気層での入射角,θi'は液晶層内での入射角である。
図22は,反射板61に入射する光の強度f(θi')と入射角θi'との関係を示す図であり,上記式(5)に式(6)を代入して計算した。ただし,光強度はI(θi, φi)=1として計算した。図22より理解されるとおり,積分球からの均一な拡散光を仮定した場合,反射板60に対しては,入射角θi'=0から入射角が増大するに従い入射光強度が増大し,ある入射角θi'の範囲で入射光強度が最大となり,入射角45°付近で入射光強度が大きく減衰する。つまり,入射光強度が最大となる入射角θi'が存在し,媒体の屈折率nによってその入射
角が異なることがわかる。
図23は,図22の入射光強度が最大となる入射角θi'と媒体の屈折率nとの関係を示す図である。図23より,液晶の屈折率nが大きいほど入射光強度が最大となる入射角θi'が小さくなることがわかる。そして,典型的な液晶の屈折率は1.4〜1.8程度であることから,入射光強度が最大となる入射角θi'は約30〜38°となる。
次に,図22のような入射光強度分布を有する入射光が,反射板61の凹凸の傾斜面で反射することを検討する。図24は,反射凹凸の傾斜面に対する入射角,反射角,傾斜角との関係を示す図である。入射光と反射光は,傾斜面に垂直な線に左右対称であり,ミクロな鏡面における局所的な入射角αは局所的な反射角βと等しいので,傾斜角ξ,入射角θi',反射角θo'は次のような関係になる。
Figure 0004970502
そして,一般には表示パネルに垂直方向から表示を観察することが多い。そこで,凹凸を有する反射板に入射角iθ'で入射する光を0°方向に反射させることを考えると,上記(7)式は,ξ=θi'/2となる。つまり,傾斜角ξを入射角θi'の1/2にすれば表示パネルに垂直な方向に反射させることができるのである。
図22に示した通り,積分球の拡散光に対して反射板の凹凸面に入射する入射光の分布は,入射角0〜45°の領域であるピークを有する。従って,反射板の凹凸面の傾斜面分布も図22の光強度分布に対応した分布にすることが望ましい。つまり,光強度が高い入射角に対応する傾斜角の存在確率を高くし,光強度が低い入射角に対応する傾斜角の存在確率を低くして,全体で反射光強度を高くすることが望ましい。
図25は,図22の入射光強度分布に対応した傾斜角の存在確率の分布を示す図である。図25の例は,図22の屈折率n=1.5の場合を示し,確率の総和が1になるように規格化した。横軸が反射凹凸面の傾斜角ξを,縦軸が存在確率(%)を示す。そこで,図25に示したような傾斜角の存在確率分布を有するサンプルにおいて,存在確率が最大となる傾斜角を変化させた場合の,反射率を求める。図26は,かかる反射特性のシミュレーション結果を示す図である。具体的には,図25に示した分布の幅wを変化させて存在確率が最大となる傾斜角を変化させ,そのときの反射率Yを演算した。
図26から明らかな通り,存在確率が最大になる傾斜角ξ(=θi'/2)の範囲が,ξ=約15〜19°(θi'=約30〜38°)の領域で反射率が最も高くなることが理解される。つまり,図22に示した入射光強度がピーク値を持つ入射角θi'=30〜38°の入射光を,表示パネルに垂直な方向に反射できる傾斜角ξ=15〜19°の存在確率を最も高くすることが,全体の反射率を高めるために望ましいのである。
以上のとおり,積分球の均一な拡散光下において有効に光を反射させるためには,反射用凹凸による傾斜角は約15〜19°の領域でその存在確率が最大になる必要があることが理論的に明らかになった。
図27は,実際に試作したサンプルを使って,積分球の均一な拡散光に対する反射率を測定した結果を示す図である。試作した反射板において,存在確率が最大の傾斜角ξpと,測定された反射率との関係が示される。
図28は,その試作した反射板の形成方法を示す断面図である。まず,図28(a)に示したように,ガラス基板62上にレジスト(シプレイ社製LC-200)63を1000〜2000rpmで20秒間スピンコートする。そして,90℃で30分間プリベークした後,図28(b)に示すように,マスク64を用いて紫外線露光を行う。次に,現像液(シプレイ社製MF319)を用いて現像を行い,図28(c)のようにガラス基板上に凸部を形成する。次に,図28(d)に示すように120〜200℃で60分間のポストベークを行い,凸部に丸みを持たせた。その後,図28(e)に示すようにアルミニウム層65を200nm蒸着して,反射板を作製した。
上記のように形成した反射板とガラス基板との間に液晶層を形成し,図28(f)に示されるような反射型液晶表示装置を作製した。ここで,液晶層は,メルク社製液晶材料MJ961213を使用し,その厚みを3.5μm径のスペーサで制御した。このように試作した反射型液晶表示装置に,積分球を使用して,拡散光を入射させた場合の反射率を測定した。更に,その試作品の反射板の凹凸の傾斜角分布を測定し,存在確率が最大となる傾斜角ξpも求めた。その結果が,前述の図27に示される。
この実験結果から,存在確率が最大になる傾斜角ξpを16〜19°付近にすることで,最大の反射率が得られていることがわかる。この実験結果は,図26に示したシミュレーション結果を概ね裏付けている。従来,最適値といわれてきた傾斜角が10°の場合と比較しても,存在確率が最大になる傾斜角ξpを16〜19°付近にしたサンプルがより高い反射率を有することがわかる。
図29は,反射板の凹凸を形成するための,マスク64のパターン例を示す図である。図29(a)はサイズが異なる大小の円のパターンを混在させた例であり,図29(b)は三角形,四角形,六角形,八角形などの多角形を混在させた例である。但し,本発明はこれらのパターンに限定されるわけではない。
反射用凹凸の別の形成例として,図3〜6で示したUV照射して熱変形特性の分布を形成しその後最終ベークしてマイクログルーブを形成するプロセスを採用することができる。マイクログルーブの凹凸形状は,前述したプロセス条件でコントロールすることができるので,存在確率が最大になる傾斜角ξpが15〜19°付近になるようにその凹凸形状が制御される。
以上,本実施の形態例では,反射板の凹凸による傾斜角は,少なくとも0°〜25°の範囲に分布し,15〜19°付近でその存在確率が最大になるように分布することで,種々の環境化において,より高い反射率を有する反射型液晶表示装置を提供することができる。
[反射板の傾斜角分布の制御(その2)]
図30は,上記した積分球の拡散光に対して高い反射率が得られる反射板の凹凸の傾斜角分布を示す図である。横軸が傾斜角ξを,縦軸はその存在確率を示す。即ち,すでに説明した通り,傾斜角の存在確率は,反射板への入射強度が高い入射角の入射光をより多く表示パネルに垂直な方向に反射させるような分布にすることが望ましい。図30には,+15〜19°付近の傾斜角と−15〜19°付近の傾斜角の存在確率が最大になるような分布を示す。+側と−側が存在するのは,表示パネルの一定方向に沿って傾斜角を見た場合,一方向からの入射光に対応した傾斜角を+側,反対方向からの入射光に対応した傾斜角を−側に示した。従って,図30の分布図を傾斜角0°を中心に折り曲げると,図25に示したような傾斜角分布になる。
ところで,液晶表示装置は,ノート型パーソナルコンピュータの表示パネルとして使用される場合が多い。図31は,反射型液晶表示装置がノート型パーソナルコンピュータのモニターとして搭載された状態を示す図である。図示されるとおり,反射型液晶表示装置70が,水平方向に対してを角度αだけ傾けた状態で使用されることが多い。その場合,図31に示される通り,表示装置70は紙面に垂直な面である。そして,図示されるとおりX−Y−Z軸の方向を定義する。
表示装置70への入射光を検討すると,座標のXY面に沿った入射角θi分布は,何も入射光を遮るものがないので,θi =-90〜90°となる。一方,座標のXZ面に沿った入射角分布は,キーボード部分により入射光が遮られるので,必ずしもθi =-90〜90°とはならない。つまり,表示装置70の最も高い位置70Aと最も低い位置70Bとで,入射角範囲が異なる。最も高い位置70Aが,最も広い入射角範囲でθi =-90〜α+β°となり,最も低い位置70Bが,最も狭い入射角範囲でθi =-90〜α°になる。
従って,表示パネルの垂直方向に沿うXZ面方向の入射光は,入射角度α〜90°(またはα+β°〜90°)の角度から入射する光がほとんど存在しない。従って,表示パネルのXZ面方向に配列したミクロの鏡面の傾斜角には,この角度範囲から入射する光を表示パネルの法線(0°)方向に反射させる傾斜角は必要ないことになる。
例えば,表示パネルの傾きα=30°および液晶層とガラス基板の屈折率nLC=1.5であれば,30〜90°に入射される光を0°方向に反射させる傾斜角は,前述の(6)式および(7)式より10〜21°となる。つまり,表示パネルの垂直方向(XZ面方向)を向いた凹凸の傾斜分布には,10〜21°の傾斜角は必要ない。
従って,XY面方向およびXZ面方向の傾斜角の分布は,図32に示されるとおりにすることが望ましい。即ち,XY面方向の傾斜角分布は,図30に示したのと同じ分布であり,XZ面方向の傾斜角分布は,マイナス側は図30と同じであり,プラス側は10〜21°の範囲に存在しない分布となる。図32の分布を,傾斜角0°を中心に折り返すと,図33のようになる。
図33は,反射板の凹凸により形成される傾斜角分布について,XY面方向の傾斜面の分布とXZ面方向の傾斜面の分布とが示される。この図から明らかな通り,ノート型パーソナルコンピュータなど傾けて使用される場合は,表示パネルにおける水平方向の傾斜面の分布は,傾斜角15〜19°の範囲で存在確率が最大になるようにし,表示パネルの垂直方向の傾斜面の分布は,傾斜角8〜10°の範囲と傾斜角15〜19°の範囲で存在確率がピークを持つようにすることが望ましい。このように,表示パネルの方向に応じて,反射用凹凸による傾斜面の角度分布を,一つの方向は1つの存在確率のピークを有し,別の方向は2つの存在確率のピークを有することで,入射光方向に異方性がある環境下で使用されても,最大の反射率を実現することができる。
本発明者らは,上記の傾斜面分布の反射板を試作して,その反射率を確認した。図34は,サンプルの反射板の形成方法を示す断面図である。まず,図34(a)に示したように,ガラス基板62上にレジスト(例えばシプレイ社製のLC-200)63を1000rpmで20秒間スピンコートして形成する。そして90℃で20分間プリベークした後,図34(b)に示すようにマスク64を用いて紫外線露光を行う。次に現像液(例えばシプレイ社製MF319)を用いて現像を行い,図34(c)のようにガラス基板上にレジストによる凸部を形成する。図34(a)〜(c)の工程を,図35に示したマスクパターン(a)〜(d)を順次使用して4回繰り返し,図34(d)のような傾斜角が異なる凸部を形成する。次に,図34(e)のように,200℃で80分間のポストベークを行い,凸部に丸みを持たせた。その後,図34(f)のようにアルミニウム66を200nm蒸着して,反射板を作製した。
図36は,上記のように形成された反射板の凸部の平面形状及び断面形状を示す図である。凸部67の平面形状は,基板62の垂直方向Vについては,異なる傾斜面を有し,基板62の水平方向Hについては同じ傾斜面を有する。図36に示された平面図には,凸部67に等高線を示し,その傾斜面形状が示される。ポストベークにより凸部は丸みを持たせているので,その傾斜角分布は,およそ0〜20°の範囲に分布する。そして,基板の垂直方向Vにおいては,傾斜面(ξ1>ξ2)が異なるので,図33に示した通り,存在確率がピークになる領域が2つあり,基板の水平方向Hにおいては,傾斜面(ξ1)が左右対称であるので,図33に示した通り,存在確率がピークになる領域が1つ存在することになる。
以上の様に,反射用凹凸の形状を水平方向と垂直方向とで異ならせることで,水平方向の傾斜角の分布と,垂直方向の傾斜角の分布とを異ならせることができる。また,図36に示される通り,半円形と半楕円形とを組み合わせた形状にすることで,水平方向の傾斜角と垂直方向の傾斜角の分布をそれぞれ異ならせることができる。
本発明者らは,菱光社製の非接触3次元形状測定装置nh-3を用いて形状を測定し,試作した反射板の傾斜分布を求めた。図37は,その試作した反射板の傾斜角分布の測定結果を示す。図に示される通り,試作した反射板は,絶対値で8°と18°に存在確率の極大が存在していた。また,比較のために,図37には存在確率の極大が0°および10°にある反射板,それぞれ従来例1および従来例2,の傾斜角分布も示されている。
図38は,上記反射板を用いて作成した反射型液晶表示装置の概略断面図である。液晶層(例えばメルク社製液晶材料MJ961213)を,3.5μm径のスペーサで厚みを制御して,反射板とガラス基板の間に注入した。そして,その反射型液晶表示装置を鉛直方向から30°傾けた状態で固定し,積分球の均一拡散光を照射して,輝度計(例えばトプコン社製のBM-5)を用いて反射率を測定した。図39は,その反射率の測定結果を示す図である。この図表より明らかな通り,本発明の反射板を用いると反射率が61%となり,従来例1,2の31%,53%に比較して10〜25%の反射率向上が実現されていることが確認された。
図33には理想的な傾斜角分布を示したが,その前提として,液晶層やガラス基板の屈折率nを1.5とし,反射型液晶表示装置の水平線に対する角度(図31に示した傾きα)をα=30°とした。そこで,液晶層の屈折率nLCと反射型液晶表示装置の傾き角度αを変化させた場合に,理想的な反射用凹凸において存在確率が極大になる傾斜角範囲をそれぞれ調べた。
図40は,反射型液晶表示装置の傾き角度と,液晶層の屈折率に対する,存在確率が極大になる傾斜角範囲を示す図である。典型的な液晶材料の屈折率nLCが1.4〜1.8程度であるので,屈折率nLCを1.4〜1.8で変化させた。一般的な使用状態では,反射型液晶表示装置のサイズが小さいほど傾きαが大きくなる傾向にあり,表示パネルの傾きαを0〜45°の範囲で変化させることにした。
まず,表示パネルの傾斜角αが30°の場合は,図32,33で示した通り,一方で15〜19°の範囲で凹凸の傾斜角の存在確率が極大になり,他方では8〜10°の範囲と15〜19°の範囲との2つの範囲で凹凸の傾斜角の存在確率が極大になるのが望ましい。また,表示パネルの傾斜角αが0°の場合は,表示パネルが垂直に置かれた場合であり,表示パネルの垂直方向の傾斜角ξは,主に上方からの入射光を垂直方向に反射するために15〜19°の範囲で凹凸の傾斜角の存在確率が極大になり,下方からの入射光はあまりないので下方側を向いた傾斜面は必要ない。そして,表示パネルの傾斜角αが90°の場合は,表示パネルが水平に置かれた場合であり,図40に示されないが,15〜19°の範囲で凹凸の傾斜角の存在確率が極大になることが望ましい。表示パネルが水平の場合は,図30に示した分布例と同じである。
図40に示される通り,表示パネルの傾斜角αが0°〜45°の範囲であれば,反射用凹凸における存在確率が極大となる一方の傾斜角は0〜16°,他方の傾斜角は14〜19°の範囲内に存在すれば,反射率を最大にすることができることが判明した。屈折率nLCが小さいほどそれぞれ極大になる傾斜角は大きくなる傾向にある。
ノート型パーソナルコンピュータは,オペレータの好みによって,その表示パネルの傾きが異なる。そこで,複数の傾きにおいて最大の反射率が実現できるように,画素領域内に,反射用凹凸の傾斜角の存在確率が極大になる領域が異なる複数の領域を形成することが望ましい。例えば,図40に示される通り,表示装置の傾斜角αが30°と40°に対応して求められた,存在確率が極大になる傾斜角領域が,8〜10°と15〜19°の第1の組合せと,10〜12°と15〜19°の第2の組合せとを,同じ画素領域内に併存させる。或いは,表示装置の傾斜角αが30°,35°,40°に対応して求められた,3つの組合せの領域を併存させる。或いは,3種類の凸パターンを併存させる。それにより,表示パネルの傾きがある程度異なっても,比較的大きな反射率を実現することができる。
以上説明した反射用凹凸の傾斜角分布を有する反射電極を画素電極に利用して,図2に示した構造の反射型液晶表示装置を形成し,液晶層34に画素電極と表示側の透明電極とから所定の電界をかけることで,当該液晶層34に複屈折作用を持たせて,所望の表示を行うことができる。即ち,液晶層34が電界効果複屈折モードで駆動される。また,液晶層34に色素を含ませて,ゲストホスト型の液晶表示装置にすることもできる。
[異なる指向性が混在する反射用凹凸の例]
特開平11-295750号公報には,画素電極を反射電極として利用する反射型液晶表示装置が記載されている。この公報には,画素電極内を2つの領域に分割して,一方の領域に指向性の強い反射特性を有する凹凸形状を形成し,他方の領域に拡散性の強い反射特性を有する凹凸形状を形成する。
しかし,より高精細な液晶表示装置の場合は,画素領域がより狭くなり,上記従来例のように画素領域を2つの領域に分けて異なる凹凸形状をそれぞれに形成することはより困難になることが予想される。
そこで,本実施の形態例では,画素領域内に指向性の強い反射特性を有する凹凸形状と拡散性の強い反射特性を有する凹凸形状とを混在させるようにする。図41は,かかる画素領域内に混在する2つの反射凹凸形状を示す断面図である。凹凸Aは,膜厚が薄くなだらかな傾斜面を有し上面が比較的平らになっているので,反射光の方向は垂直方向に指向性を有する。一方,凹凸Bは,膜厚が厚く急な傾斜面を有し上面が突起状になっているので,反射光は広く拡散する。
図42は,本実施の形態例における画素領域PXの平面図である。図示される通り,画素領域PX内に,図41に示した凹凸Aと凹凸Bとが混在して設けられる。
図43は,図42の反射用凹凸を形成する製造プロセスを示す断面図である。まず,図42(a)に示すように,ガラス基板62上に感光性樹脂であるレジスト(例えばシプレイ社製のLC-200)を2000rpmで20秒間スピンコートする。そして,90℃で20分間プリベークした後,図42(b)に示すようにマスク64Aを用いて紫外線露光を行う。次に,現像液(例えばシプレイ社製MF319)を用いて現像を行い,図42(c)のようにガラス基板62上に凹凸Aに対応する凸部を形成する。その後,図42(d)のように200°で80分間のポストベークを行い,凸部に丸みを持たせて凹凸Aを形成する。
次に,図42(e)に示すように,前記レジストを1000rpmで20秒間スピンコートする。これにより,前述のレジストよりもより厚いレジスト層を形成することができる。そして,90℃で20分間プリベークした後,図42(f)に示すように,マスク64Bを用いて紫外線露光を行う。次に前記の現像液を用いて現像を行い,図42(g)のようにガラス基板に凹凸Bに対応する凸部を形成する。そして,図42(h)のように120℃で80分間のポストベークを行い,凸部に丸みを持たせて,凹凸Bを形成する。このポストベークは,凹凸Aを形成するよりも低い温度であるので,厚いレジスト膜の加熱によるダレの程度が少なく,より拡散性の強い凹凸Bが形成される。
その後,図42(i)のように,アルミニウム64を200nm蒸着して反射板(画素電極)を作製した。上記のように,凹凸Aと凹凸Bとでレジストの膜厚およびポストベークの温度を変えることで,凹凸の丸みを変えることができ,散乱の際の指向性が異なる凹凸が混在する反射面を構成することができた。
前述の通り,反射型液晶表示装置の反射板は,あらゆる方向からの入射光を表示面に垂直な方向に反射することが望ましい。そのため,レジスト層をパターニングしてベーキングにより丸みを付けて傾斜面を形成する場合,傾斜面が360°の方向に向いているのが好ましい。そこで,従来,レジスト膜のパターンとして,円形のパターンが提案されている。例えば,特開平11-337935号公報,特開平11-337964号公報,特開平5-281533号公報などである。これらの公報には,円形のパターンをランダムに形成して反射光の干渉によるモアレ模様が形成されることを防止したり,半径が大きいドーナツ型パターンと半径が小さい円形パターンとをランダムに形成して反射特性を改善することなどが提案されている。
特開平5-281533号は,大きい円形パターンと小さい円形パターンとをランダムに混在させることが示されている。例えば,図44に示される通りである。しかし,半径が大きい円形パターンをランダムに配置すると,近接するレジストパターンが,露光・現像後のポストベーキング工程の時に加熱による断面形状のダレによって,合体する現象が生じる。図44の斜線で示した円形パターンは,近接しすぎてベーキング時に合体してしまった状態を示す。
そこで,本実施の形態例では,図45に示される通り,レジストのパターンを,半径が大きい円形パターンと半径が小さい円形パターンとを混在させたものにし,且つ,大きい円形パターンと小さい円形パターンとの距離が,大きい円形パターン同士の距離よりも常に小さくなるように配置する。つまり,大きい円形パターンに対して,別の大きい円形パターンを近接させることを禁止するようにする。できれば,大きい円形パターンの周囲には小さい円形パターンを配置し,大きい円形パターン同士が近接することがないようにする。それにより,傾斜面の密度を高くすると共に,ベーキング時にパターン同士が合体する領域を少なくすることができる。
図46は,本実施の形態例におけるレジストのパターンを説明する図である。
図46(A)は,比較的大きい円形パターンを配置した例である。画素領域PX内に大きい円形パターンP1が4個配置される。レジストパターンは,ある程度の大きさを有することが必要である。パターンが小さすぎると,ポストベーク時の断面形状のダレで傾斜角度が十分な大きさにならないからである。但し,図46(A)のパターンでは,形成される傾斜面の密度が薄く,反射率を高めることができない。
そこで,図46(B)に示される通り,大きい円形パターンP1の密度を高くすることが考えられる。しかし,大きな円形パターンP1が近接しあうと,ポストベーク時の熱によるダレで,斜線で示される通り,円形パターンの周縁部が合体することがある。かかる合体は,設計通りの傾斜面の面積を減らしてしまい,好ましくない。
そこで,本実施の形態例では,図45で説明した通り,図46(C)に示されるように,比較的大きな円形パターンP1の密度は図46(A)のように疎な状態にして,パターンP1間の距離L1を比較的大きいままに保ち,その大きな円形パターンP1の隙間に比較的小さい円形パターンP2を配置し,傾斜面密度を高くするようにする。これにより,比較的大きな円形パターン同士の合体は少なくなり,合体が生じても大きな円形パターンP1と小さい円形パターンP2との間(図46(C)中の斜線)だけに限定されるようにする。このような合体の領域は,大きい円形パターンP1同士の合体領域に比較して狭くなり,傾斜面領域の減少を最小限に抑えることができる。
図46(C)に示される通り,大きな円形パターンP1間の距離L1は,合体が生じない程度に長くし,それら円形パターンP1の間の領域に,小さな円形パターンP2を配置する。その結果,大きい円形パターンP1とそれに最も近接する小さい円形パターンP2との間の距離L2は,その大きい円形パターンP1とそれに最も近接する大きい円形パターンP1との間の距離L1より常に短くなる。
図47は,別のレジストパターンを示す図である。上記の例は,反射用凹凸の傾斜面が360°の方向に向くように円形パターンを利用したが,円形でなくても,各辺の方向が複数,好ましくは3つ以上存在する多角形であっても,同様の高い反射率を実現することができる。
図47は,画素領域PX内に,多数の六角形を,互いに隣接する辺が平行になるように近接させたレジストのパターン例である。画素領域PXの周縁には,六角形全体が収納できずに,台形や5角形になっているが,基本的には,六角形がタイルのように敷き詰められたレジストパターンである。各辺が平行になるようにすることで,各六角形パターンをできるだけ近接させても,ポストベーク時の合体を防止することができる。
このようなマスクパターンを利用してレジスト層を露光現像して,ポストベークを行うことにより,断面形状が熱によりダレて,少なくとも3つの方向を向いた傾斜面を有する反射用凹凸を形成することができる。
図48は,他のレジストパターンを示す図である。図48の例は,画素領域内に六角形ではなく,複数の正三角形を,各辺が平行に近接するように配置している。この場合も,レジスト層を露光・現像して,ポストベークを行うことにより,断面形状が熱によりダレて,傾斜面が少なくとも3つの方向を向いた反射用凹凸を形成することができる。本実施の形態例は,他の多角形形状であっても,同様に高密度の傾斜面を有する反射用凹凸を形成することができる。
図45,47,48のパターンを利用した場合の反射用凹凸の形成プロセスは,図28に示したプロセスと同じである。レジスト層の露光工程のマスク64に,図45,47,48のパターンが利用される。それにより,ポストベーク工程で,パターン同士が合体することなく,高密度の傾斜面分布を形成することができ,反射板の反射率を高くすることができる。
[フロントライト構造]
反射型液晶表示装置は,バックライトを設けずに外光を反射して表示面を明るくする。従って,消費電力が少なく,携帯用の情報端末,携帯電話などの表示パネルとして有用である。しかしながら,外光を利用するので,明るい場所での使用に限定される問題がある。そこで,暗いところで使用する時のみ点灯させるフロントライト付きの液晶表示装置が提案されている。
図49は,従来提案されているフロントライト付き反射型液晶表示パネルの構成図である。図示される通り,反射型液晶表示パネル73の表示側にフロントライト70が設けられる。反射型液晶表示パネル73は,反射板構造を有する背面側基板73Bと表示側基板73Aとの間に,図示しない液晶層が挿入されている。そして,表示側基板73Aの上には,フロントライト70が設けられ,フロントライト70は,光源71と,その光源からの光を表示面全面に導き,表面に形成した散乱層またはプリズム層により表示パネル73側に散乱する透明基板72とを有する。透明基板72の表面に形成された散乱層またはプリズム層と空気層との間の屈折率の違いにより,光源71の光が散乱し,その一部が表示パネル73側に散乱する。
しかし,図49のように構成された反射型液晶表示装置は,透明基板72の表面に散乱層またはプリズム層が形成されており,観察者は,この散乱層やプリズム層を介して表示パネル73の文字や画像を見ることになる。そのため,散乱層やプリズム層により文字や画像が歪んだりぼやけたりすることになり,画質の低下を招いている。
そこで,本実施の形態例では,フロントライト構造を光源が点灯した時のみ光を導く透明基板に散乱性を持たせ,光源が点灯しない時は透明基板の散乱性がなくなるようにする。かかる構成にすることで,外光を利用する通常の使用時には,フロントライト構造が,散乱機能を有しないので,観察される表示パネルの文字や画像の歪み,ぼけはなくなる。一方,暗い場所で使用する時などの限定された場合には,フロントライト構造が光源からの光を与えるので,多少文字や画像に歪み,ぼけが生じても,表示パネルを明るくして表示パネルとしての最低限の機能を確保することができる。
図50は,フロントライトの第1の例を示す図である。図50に示されるフロントライト70は,例えばアクリル製の透明基板の表面をサンドブラスト加工して表面に散乱層75を設けた透明基板74と,アクリル製透明基板76と,それら基板の間に充填されるシリコーン・オイルなどの流動体77と,流動体ポンプ78と,流動体タンク79とを有する。フロントライト70は,更に,冷陰極蛍光管による線状光源71を有する。基板74,76との間には,流動体タンク79に収納されている流動体が流動体ポンプ78により充填されたり,抜き取られたりする。そして,この流動体77の屈折率は透明基板74,76と概ね同じn=1.5である。
図50(a)に示される通り,明るい場所で反射型液晶表示パネルを使用する場合は,光源71がオフ状態にあり,両透明基板74,76の間隙に流動体77が充填される。これにより,散乱層75は流動体77と屈折率に差がないため,観視者側からは見えない。従って,明るい場所で使用される時は,表示パネル73の文字や画像がぼけたり,歪んだりすることがない。
一方,図50(b)に示される通り,暗い場所で反射型表示パネルを使用する場合は,光源がオン状態になり,流動体77は両透明基板74,76の間隙から,流動体ポンプ78により抜き取られ,基板の間隙には空気層が充填されている。このため,散乱層75では透明基板材料のアクリル(屈折率約1.5)と空気(屈折率1.0)との間に屈折率差が生じ,本来の散乱層としての機能を有する。従って,透明基板74,76の端にある光源71から内部反射を繰り返して導光してきた光は,この散乱層75で散乱され,反射型液晶表示パネル73を照明する。従って,暗い場所であっても,明るい表示パネルが実現できる。
但し,観視者側からこのフロントライト70を眺めると,透明基板74の散乱層75が見え,反射型液晶表示パネル73の表示は歪む。しかし,かかる歪みは,従来のフロントライト付反射型液晶表示パネルと同等である。
以上のとおり,明るい場所で使用される時は,フロントライトがない反射型表示パネルと同じ表示が得られ,また,暗い場所で使用される時は,点灯した光源からの光を有効に反射型液晶表示パネルの照明に使うことができ,明るい表示が実現できる。
図51は,本実施の形態例におけるフロントライト付き反射型液晶表示パネルの第2の例を示す図である。この例では,ガラスなどの2枚の透明基板74,76の表面に酸化インジウムを主成分とする透明電極(ITO)81を形成し,その間隙に電界により状態が変化する液晶層80を挟み込んでいる。そして,スイッチSWにより透明電極81間に電圧V1が印加されたりされなかったりする。通常,このような液晶層80は,透明電極間に電圧V1を印加した場合に透明状態になり,透明電極間の電圧を0にした場合に散乱状態になる。従って,明るい場所では,スイッチSWをオンにして,液晶層80を透明にし,暗い場所では,スイッチSWをオフにして,液晶層80を散乱状態にする。
散乱状態と透過状態とが切り替え可能な液晶材料としては,(1)動的散乱効果を利用した液晶,(2)コレステリック相とネマティック相との間の相転移効果を利用した液晶,(3)ポリマー分散型液晶があり,いずれかの液晶が利用可能である。
図51の例は,図50の例に比較して,散乱層を付けた透明基板,ポンプ,タンクなどが不要であり,また,流動体を充填したり引き抜いたりする時間が不要である。更に,ポリマー分散型液晶の場合は,ポリマー内の球形液晶体の屈折率異方性の程度を,印加電圧で調整することができる。従って,印加電圧を調整することで,液晶層80の散乱度を調整することができ,光源71の光に対する散乱度を上げて明るくするか,散乱度を下げて表示画面の歪みを抑えるかを,観察者の好みで調整させることができる。
図51の例でも,光源71がオンして液晶層80が散乱性を有している時は,反射型液晶表示パネルの表示が曇りガラスを通したように見えるが,それは,従来のフロントライト付反射型液晶表示パネルと同等である。そして,光源71がオフの明るい状態では,液晶層80が透明になり,表示がぼけたり歪んだりすることはない。すなわち,この例は,フロントライト付反射型液晶表示パネルであるが,フロントライト未点灯時はフロントライトなし反射型液晶表示パネルと同等の表示品質を可能とし,フロントライト点灯時は通常のフロントライト付反射型液晶表示パネルと同等の表示品質を有する。
図52は,フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第3の例を示す図である。この例では,ガラスなどの透明基板74,76の内面に透明電極81を形成し,更に,透明基板74の内側に,プリズム状の細かい凹凸を有するプリズム層82を形成する。そして,透明基板74,76との間に,屈折率異方性を持つ液晶層80を封入する。屈折率異方性を有する液晶分子は,電界によって分子の配向方向が変わり,屈折率異方性の方向が変わる。そこで,屈折率異方性を持つ液晶層80の一方の屈折率にプリズム層82の屈折率を一致させる。
図52(a)に示されるとおり,明るい場所での使用では,液晶層80に電圧を印加し,あるいは電圧無印加にし,表示側から反射型表示パネル73に向かう方向において,プリズム層82の屈折率と液晶層80の屈折率とを一致させる。この状態では,表示側から反射型表示パネル73に向かう方向において,プリズム層82と液晶層80との間で屈折率が一致し,プリズム層82による散乱状態がなくなり,フロントライト構造は透明になる。その結果,フロントライトが設けられいない反射型液晶表示パネルと同じ状態になり,表示画面がぼけたり歪んだりすることがなくなる。
一方,図52(b)に示されるとおり,暗い場所での使用では,液晶層80には電圧無印加状態,あるいは印加状態にし,表示側から反射型表示パネル73に向かう方向において,プリズム層82の屈折率と液晶層80の屈折率とを異ならせる。これにより,プリズム層82と液晶層80との界面で両者に屈折率差が生じ,光源71からの光が屈折する。この屈折光が,反射型液晶表示パネル73の照明光となり,明るい表示が実現できる。
この例では,透明基板74の表面にプリズム形状を形成しているが,サンドブラスト工程により透明基板74の表面に散乱層を形成しても同様の効果が期待できる。
本構造を適用することにより,上記例2と同様の効果があり,更に,液晶層80の性質上,透過状態と散乱状態との切り替えスピードをより一層改善することができる。また,上記例2のポリマー分散型液晶に比較すると,液晶層80への印加電圧は液晶層80に直接電圧を印加できるので,ポリマー分散型液晶を利用するより,印加電圧をより低く抑えられる。そして,液晶層80への電圧を印加しない状態で,液晶層の屈折率をプリズム層82の屈折率と一致させることにより,明るい場所での使用時には,光源71と透明電極81への電圧印加が不要になり,より一層の低電力化を図ることができる。
図53は,フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第4の例を示す図である。この例では,フロントライト70の導光板である透明基板74に形成した透明電極81Aを短冊状に分割し,それぞれに対して電圧印加81A-1,電圧無印加81A-2を選択できる構造となっている。そして,透明基板74,76の間に,電圧の印加により状態が変化する液晶層が充填される。図53(a)は,断面構造を示し,図53(b)は分割された透明電極81Aの平面構造を示す。
この構造にすることにより,電圧を印加する透明電極81Aの本数を変えることで,散乱状態になる液晶層の面積を適宜変更することが可能となり,照明光量をある程度調整することができる。従って,本構成では,散乱度の調整のできない散乱型液晶,動的散乱効果を利用した液晶,コレステリック相とネマティック相との間の相転移効果を利用した液晶などを液晶層80に利用しても,電圧を印加する透明電極を選択することで,その散乱度を調整することができる。
フロントライト付きの反射型液晶表示パネルは,フロントライトの液晶層による散乱度が大きいと,光源71からの光をよく散乱し,反射型液晶表示パネル73をよく照明できるため,反射型液晶表示パネルを高輝度化できる。しかし,観察者と反射型液晶表示パネルとの間に散乱層が入るため,表示画像が曇り,解像度が低下して見える。したがって,散乱度の調整が可能であれば,これを観察者が調整して,観察者にとって最適な表示品質にすることができる。
図54は,フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第5の例を示す図である。この例では,フロントライト70が,図52で示した第2の例と同様に,2つの透明基板74,76の内側に透明電極81が形成され,それらの間に液晶層80が充填されている。そして,この液晶層80は,ポリマー分散型液晶であって,ポリマーに屈折率異方性樹脂が用いられ,液晶粒90の常光屈折率と異常光屈折率が,透明電極間に電圧が印加されない状態でポリマーの二方向の屈折率と一致するように構成されている。
ポリマー分散型液晶の詳細が,図54の右側に示される。ポリマー分散型液晶Aは,屈折率異方性のないポリマー内に屈折率異方性を有する液晶粒90が分散されているのに対して,ポリマー分散型液晶Bは,屈折率異方性があるポリマー内に屈折率異方性を有する液晶粒90が分散されている。
結晶粒90が,透明電極間に電圧を印加しない状態で,フロントライト70の厚み方向に分子が配列して,フロントライトの厚み方向の屈折率がポリマー92や透明基板74,76と一致し,透明電極間に電圧を印加した状態で,同屈折率が不一致になると仮定する。
その場合,ポリマー分散型液晶Aは,図示されるとおり,液晶粒90の上下方向の屈折率がポリマー92と透明基板74,76に一致し,上下方向の光線には屈折率差がないため,屈折,散乱が起こらない。しかし,ポリマー92と液晶粒90との間には水平方向の屈折率に差があるため,水平の光だけではなく,斜めからの光でも若干の,すなわち,光線の水平方向ベクトル成分に対し,屈折が生じる。このため,斜めからこの反射型液晶表示パネル73を見た場合,この屈折によりフロントパネル70が曇ってみえる。
それに対して,ポリマー分散型液晶Bを透明基板74,76間に充填すると,透明電極間に電圧を印加しない状態で,フロントライトの厚み方向に液晶分子が配列して,液晶粒90の屈折率異方性の方向とポリマー92の屈折率異方性の方向とが一致する。従って,この状態では,液晶粒90とポリマー92との屈折率差がどの方向からも全くなくなり,フロントライトはどの方向からも透明になる。そのため,ポリマー分散型液晶Aを利用する場合に比較して,明るいところでの使用時において斜めからの画像の歪み,曇りを防止することが可能となる。
一方,暗い場所で使用する場合に,透明電極間に電圧を印加すると,図中に示されるとおり,液晶粒90の屈折率異方性の方向が,ポリマー92の屈折率異方性の方向と不一致状態になる。ポリマー92の異方性の方向は,電界により変化しないからである。そのため,フロントライト70は散乱状態になり,光源71からの光が反射型液晶表示パネル73側に散乱し,液晶表示面を明るくする。但し,液晶層80がクリーム色になり,表示画面にボケや歪みが生じる。
その場合,透明電極間に印加する電圧を調整することにより,液晶粒90の屈折率異方性の方向を調整することができる。つまり,印加電圧を上げると,液晶層での散乱度が大きくなり,反射型液晶表示パネル73への入射光が多くなり画面が明るくなるが,画面が白くなりすぎて見えにくくなる。一方,印加電圧を下げると,液晶層での散乱度が小さくなり,画面が暗くなるが,画面の透明度が増すことになる。そこで,この印加電圧を調整することにより,画面の輝度の程度と,コントラストの程度を観察者の好みに応じて設定することができる。
図55は,フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第6の例を示す図である。図50〜54の従前の例では,光源71のからの光を2枚の透明基板内を導光させている。それに対して,図55の例では,2枚の透明基板の内,表示面側の基板74の側面に光源71を配置し,その表示面側基板74内を主に光を導光させる。そして,この基板74の反射型液晶表示パネル73側面に配置したプリズム状凹凸82により光を散乱させ,反射型液晶表示パネル73を照明する。透明基板74,76には,図示しない透明電極が形成され,その間に液晶層80が充填されている。
図50〜54のように,上下2枚の透明基板74,76に光を導光させた場合,プリズム状凹凸82へは上下の透明基板から導光する光が当たる。その場合,上方の透明基板74からの光は屈折散乱を起こして下方側に透過し,下方の透明基板76からの光は反射散乱を起こしてやはり下方側に反射することが望まれる。しかし,実際には,光は屈折散乱して透過するほうが,反射散乱して下方側に向かうよりも多く,下方側の基板からの光を効率的に反射散乱させることは困難である。
それに対して,図55の構成の場合は,プリズム層82が,光源からの光を伝わる透明基板74の表示パネル73側に設けられている。従って,プリズム層82に照射される光は,上方の透明基板74を伝わってきた光であり,プリズム層82を屈折散乱してより多くの光が反射型液晶表示パネル73側に入射する。従って,プリズム状凹凸82を,屈折散乱形状とすればよく,形状の簡単化,照明効率の向上を図ることができる。
同様に,散乱性を発現する液晶層80を封入した場合も,その液晶層80に対して,上方から光のより多くが散乱して下方側に通過し,反射散乱する光の量は少ない。従って,上記の構造のほうが,照明効率を高くすることができる。また,光源71からの光は,1枚の透明基板74しか導光せず光源からの入射量が減るが,透明基板74の厚みを厚くすることにより,光源71からの光の入射量を改善することができる。
図56は,フロントライト付き反射型液晶表示パネルの第7の例を示す図である。図56の構成は,図55の構成を改良したものである。即ち,図56は,側面に光源71を配置した透明導光板94と,2枚の透明基板74,76に散乱性を発現する要素を封入した基板を貼り合せた構造である。具体的には,ガラスなどからなる透明基板74,76の間に,プリズム層82を形成し,電界により屈折率状態が変化する液晶層80を充填した散乱用基板が,透明の導光板94に光学接着96により張り合わされる。この構造の場合は,散乱性を発現する要素を封入した2枚の透明基板74,76の製造と,光源付導光板94の製造を分離することができ,製造工程の分離,歩留まりの向上が可能となる。また,液晶層80を挟むガラス基板74,76は,例えば0.5〜0.7mmと薄型しており,その分前記光源71を配置した透明導光板94の板厚を厚くして,光源からの光の入射効率を改善することも容易になる。
以上,本実施の形態例におけるフロントライト構造は,暗い場所で光源を点灯したて使用するときのみ,光源からの照射光を散乱させて反射型液晶表示パネル側に入射させ,光源を点灯しない通常使用時は,散乱性がなくなる。従って,通常使用時の,表示画面の文字や画像のボケや歪みをなくすことができ,コントラストを向上させることができる。しかも,暗い場所でも明るい表示画面を実現することができる。
以上の実施の形態をまとめると以下の付記の通りになる。
(付記1)反射型液晶表示装置の製造方法において,
(a)所定の膜厚を有する感光性樹脂層の表面に露光エネルギーを有する光を照射して,感光性樹脂層の厚さ方向または平面方向に熱的変形特性の分布を形成する工程と,
(b)その後熱処理を行って感光性樹脂層の表面にランダムな凹凸を形成する工程とを有することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記2)反射型液晶表示装置の製造方法において,
(a)所定の膜厚を有する感光性樹脂層を,酸,アルカリ溶液,4級アンモニウム塩溶液,HMDSのいずれかを有する薬液に浸して,感光性樹脂層の厚さ方向または平面方向に熱的変形特性の分布を形成する工程と,
(b)その後熱処理を行って感光性樹脂層の表面にランダムな凹凸を形成する工程とを有することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記3)付記1において,
前記工程(a)において,前記露光エネルギーを有する光は,遠紫外線であることを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記4)付記1において,
前記工程(a)において,前記露光エネルギーを有する光を,感光性樹脂層の表面全面に照射して変質させ,感光性樹脂層の厚さ方向に熱的変形特性の分布を形成することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記5)付記1において,
前記工程(a)において,前記露光エネルギーを有する光を,感光性樹脂層の表面の一部の領域に照射して変質させ,感光性樹脂層の平面方向に熱的変形特性の分布を形成することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記6)付記1または2において,
前記工程(a)の前に,前記感光性樹脂層にその膜厚が少なくなる分離ラインを形成する工程を更に有することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記7)反射型液晶表示装置の製造方法において,
(a)表面にトランジスタが形成された基板上に,所定の膜厚を有する感光性樹脂層を形成する工程と,
(b)前記感光性樹脂層を一部露光,現像するフォトリソグラフィ工程により前記トランジスタの電極へのコンタクトホールを形成する工程と,
(c)前記感光性樹脂層を第1の温度に加熱するポストベーク工程と,
(d)前記感光性樹脂層の表面に露光エネルギーを有する光を照射して,感光性樹脂層の厚さ方向または平面方向に熱的変形特性の分布を形成する工程と,
(e)その後前記第1の温度以上の高い第2の温度で熱処理を行って前記感光性樹脂層の表面にランダムな凹凸を形成する最終ベーク工程とを有することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記8)付記7において,
前記工程(e)の後に,前記トランジスタの電極に前記スルーホールを介して接続される画素電極を前記感光性樹脂層の上に形成する工程を更に有することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記9)付記7において,
前記工程(c)の前に,前記感光性樹脂層を所定のパターンで露光またはハーフ露光し,現像して,該感光性樹脂層を分離する分離ラインを形成する工程を更に有することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記10)付記7において,
前記工程(a)における感光性樹脂層の膜厚,前記工程(c)におけるポストベーク温度及び時間,前記工程(d)における照射エネルギー量を制御して,前記凹凸の平均傾斜角が0〜15°になるようにすることを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記11)付記10において,
前記画素電極を形成する工程の後に,配向膜を形成し,表示側基板の配向膜との間に液晶層を形成する工程とを有することを特徴とする反射型液晶表示装置の形成方法。
(付記12)反射型液晶表示装置において,
液晶層が形成された基板を有し,前記基板の液晶層側に形成される反射用凹凸の傾斜角が少なくとも0°〜20°の範囲に分布し,前記傾斜角の存在確率が15°〜19°の範囲でピークになることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記13)付記12において,
前記反射用凹凸の平面パターンが,円形,多角形,ストライプ形状またはこれらの組み合わせを有することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記14)反射型液晶表示装置において,
液晶層が形成された基板を有し,前記基板の液晶層側に形成される反射用凹凸の傾斜角が,第1の方向に沿ってその存在確率が1つのピークを有し,前記第1の方向と異なる第2の方向に沿ってその存在確率が2つのピークを有するように分布することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記15)付記14において,
前記反射型液晶表示装置の表示面が傾けて配置され,
前記第1の方向が水平方向であり,前記第2の方向が垂直方向であることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記16)付記14または15において,
前記第1の方向に沿った存在確率が,15°〜19°の範囲で1回ピークになり,前記第2の方向に沿った存在確率が,15°〜19°の範囲と0°〜14°の範囲それぞれでピークになることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記17)付記14または15において,
表示面内の画素領域それぞれにおいて,第1の領域では前記第2の方向に沿った存在確率が第1の角度範囲と第2の角度範囲でピークを有し,第2の領域では前記第2の方向に沿った存在確率が該第1の角度範囲と第3の角度範囲でピークを有することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記18)付記12乃至15のいずれかにおいて,
更に,前記基板と共に前記液晶層を挟む表示側基板と,当該表示側基板の表示側に形成された偏光板を有し,前記液晶層が電界効果複屈折モードで駆動されることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記19)反射型液晶表示装置において,
基板上に反射用凹凸を有し,単一の画素領域内に,反射光について第1の指向性と第1の散乱性を有する第1の凸部と,前記反射光について前記第1の指向性より弱い第2の指向性と前記第1の散乱性より強い第2の散乱性を有する第2の凸部とがランダムに混在することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記20)反射型液晶表示装置において,
基板上に反射用凹凸を有し,前記凹凸は,感光性樹脂膜により形成され,第1の円形パターン同士が第1の距離以上離間して配置され,前記第1の円形パターンより小さい第2の円形パターンが前記第1の円形パターンと前記第1の距離未満離間して配置されていることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記21)反射型液晶表示装置において,
基板上に反射用凹凸を有し,前記凹凸は,感光性樹脂膜により形成され,複数の多角形パターンが隣接する多角形の辺どうしが平行になるように配置されていることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記22)反射型液晶表示装置において,
反射型液晶表示パネルと,
前記反射型液晶表示パネル上に設けられ,導光板と,該導光板の端部に配置した光源と,前記光源が点灯した時に該導光板を伝わる光に対して光散乱性を発現し,前記光源が非点灯時に前記光散乱性が減少する光散乱手段とを有するフロントライトとを有することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記23)付記22において,
前記導光板及び光散乱手段は,1対の透明基板と,その対向面に形成された透明電極と,前記透明基板対間に形成された液晶層とを有する液晶パネルを有し,前記液晶層は,前記透明電極間に印加される電界に応じて光散乱性を発現することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記24)付記23において,
前記光源が,前記1対の透明基板のうち表示側の透明基板の側面に配置され,
前記液晶層が,当該表示側の透明基板と前記反射型液晶表示パネル側の透明基板との間に設けられていることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記25)付記22において,
前記光散乱手段は,1対の透明基板と,その対向面に形成された透明電極と,前記透明基板対間に形成された液晶層とを有する液晶パネルを有し,前記液晶層は,前記透明電極間に印加される電界に応じて光散乱性を発現し,前記1対の透明基板が前記導光板に張り合わされていることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記26)付記23乃至25のいずれかにおいて,
前記液晶層は,印加される電界に応じて屈折率異方性の方向が変化し,
前記透明基板のいずれか一方と前記液晶層との間に,透明なプリズム状の凹凸層が設けられ,前記凹凸層の屈折率が,液晶層の一方の屈折率と整合することを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記27)付記23乃至25のいずれかにおいて,
前記透明電極が複数に分離され,当該分離された透明電極に選択的に電圧を印加して,前記液晶層の光散乱の程度が調整されることを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記28)付記23乃至25のいずれかにおいて,
前記液晶層は,動的散乱効果を利用した液晶材料,コレステリック相とネマティック相との間の相転換効果を利用した液晶材料,ポリマー内に屈折率異方性を有する液晶粒を有する第1のポリマー分散型液晶材料,屈折率異方性を有するポリマー内に屈折率異方性を有する液晶粒を有する第2のポリマー分散型液晶材料のうち,いずれかであることを特徴とする反射型液晶表示装置。
10 絶縁基板
20 感光性樹脂層(レジスト層)
22 反射電極
34 液晶層
60 反射板
CH コンタクトホール
MG マイクログルーブ,反射用凹凸

Claims (4)

  1. 反射型液晶表示装置において,
    液晶層が形成された基板を有し,前記基板の液晶層側に形成される反射用凹凸の傾斜角が,入射光を遮るものがない第1の方向に沿ってその存在確率が1つのピークを有し,前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿ってその存在確率が2つのピークを有するように分布することを特徴とする反射型液晶表示装置。
  2. 請求項1において,
    前記入射光は,前記第2の方向でキーボードにより遮られることを特徴とする反射型液晶表示装置。
  3. 請求項1又は2において,
    前記反射型液晶表示装置は,ノート型パーソナルコンピュータの表示パネルであることを特徴とする反射型液晶表示装置。
  4. 請求項2又は3において,
    前記第1の方向に沿った存在確率が,15°〜19°の範囲で1回ピークになり,前記第2の方向に沿った存在確率が,15°〜19°の範囲と0°〜14°の範囲それぞれでピークになることを特徴とする反射型液晶表示装置。
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