図1は本発明に係る非可逆回路素子の一実施形態を示す分解斜視図、図2は支持基板と配線基板との組立関係を拡大して示す斜視図、図3は、支持基板及び配線基板と、磁気回転子との組立関係を拡大して示す斜視図、図4は、支持基板及び配線基板と、回路部品との組立関係を拡大して示す斜視図、図5は、支持基板及び配線基板に対して回路部品を搭載した状態を拡大して示す斜視図、図6は、支持基板及び配線基板に対して、フェライト基板及び回路部品を搭載した状態を拡大して示す斜視図、図7は、支持基板及び配線基板に対して、磁気回転子及び回路部品を搭載した状態を拡大して示す斜視図、図8は、本発明に係る非可逆回路素子の完成状態を拡大して示す斜視図、図9は、図1〜図8に示した非可逆回路素子の電気的等価回路図である。図1〜図9を通して、同一構成部分については、同一の参照符号を付してある。以下、基本的には、図1を参照し、各部の詳細については、随時、図2〜図9を併せ参照しながら説明する。
図示された非可逆回路素子は、とり得る2つのタイプ、即ち、アイソレータ又はサーキュレータのうち、アイソレータを例示している。図示された非可逆回路素子は、支持基板4と、配線基板5と、磁気回転子1と、回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)と、マグネット6と、ヨーク部材7とを含む。回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)は、第1乃至第3キャパシタC1〜C3と、第1及び第2抵抗器R1、R2から構成されている。
支持基板4は、平板状の導電性磁性基板40の外面に、絶縁膜400によって覆われた絶縁パターンと、絶縁膜400によって覆われていない第1乃至第5露出パターン41〜45とを有している。導電性磁性基板40は、具体的には、Feなどを主成分とし、ヨーク部材7と共に、マグネット6に対する磁路を構成するヨークとして用いられる。
支持基板4の周辺など、適当な位置に、第1凹部47及び第2凹部48を有している。第1及び第2凹部47、48は、周辺を切り欠いたものであってもよいし、貫通孔、又は、非貫通孔として、導電性磁性基板40の面内に形成されたものであってもよい。その個数、大きさ、形成位置などは任意でよい。図示実施例において、第1及び第2凹部47、48は、導電性磁性基板40の周辺の相対向する位置に設けられている。
絶縁膜400は、電着膜でなり、第1乃至第5露出パターン41〜45を除く他、第1及び第2凹部47、48の内壁面を含む導電性磁性基板40の全面を覆っている。電着膜形成手段の代表例は、静電塗装である。第1乃至第5露出パターン41〜45の数、大きさ、形状等は、搭載される機能部品の数、大きさ、形状などにしたがうもので、図示に限定されない。
図示実施例において、第1露出パターン41は、支持基板4の表面における中央部領域に形成されており、第2及び第3露出パターン42、43は、第1露出パターン41の幅方向Xの両側に形成されている。第4露出パターン44は、長さ方向Yの一端側において突出する第1突出部403の表面に形成されている。第1突出部403の幅方向の両側には、第1段部401及び第2段部402が設けられている。
第5露出パターン45は、長さ方向Yの他端側において突出する第2突出部406の表面に形成されている。第2突出部406の幅方向Xの両側には、第3段部404及び第4段部405が形成されている。
配線基板5は、誘電体フィルム50の表面及び裏面に導体パターンを形成したものである。図示実施例において、配線基板5の表面の中央部領域に第1表導体パターン51が形成されており、その幅方向Xの両側に第2表導体パターン52及び第3表導体パターン53が形成されている。第2表導体パターン52及び第3表導体パターン53は、配線基板5の幅方向Xの中間部で、端部がギャップを隔てて互いに向き合っている。
配線基板5は、支持基板4に設けられた第1及び第2凹部47、48と重なる第3及び第4凹部57、58を有している。第2表導体パターン52は、第3凹部57を囲むように配置されており、第3表導体パターン53は、第4凹部58を囲むように配置されている。
また、配線基板5の表面には、その長さ方向Yの一端側において、第1表導体パターン51の両側に、第4表導体パターン54及び第5表導体パターン55が形成されている。第4表導体パターン54及び第5表導体パターン55は、第1表導体パターン51からギャップを隔てて配置されている。
更に、配線基板5の表面には、その長さ方向Yの他端側において、第2表導体パターン52及び第3表導体パターン53に跨るように延びる第6表導体パターン56が形成されている。第1乃至第6表導体パターン51〜56のそれぞれは、ギャップを隔てて互いに独立している。第1乃至第6表導体パターン51〜56の平面形状、大きさなどは、搭載される部品に応じて任意に選定される。
上述したパターン配置は、配線基板5の表面で見たものであるが、図2に図示するように、配線基板5の裏面側にも、表面側に対応するパターンが配置されている。図2を参照すると、配線基板5の裏面側には、第1表導体パターン51と対向する第1裏導体パターン512が形成されている。第1表導体パターン51及び第1裏導体パターン512は、互いに重なり合うパターンであり、誘電体フィルム50を誘電体層とする第4キャパシタC4(図9参照)を構成する。
配線基板5の裏面側には、第2表導体パターン52及び第4表導体パターン54に跨って両者と重なり合う第2裏導体パターン542と、第3表導体パターン53及び第5表導体パターン55に跨って両者と重なり合う第3裏導体パターン553が形成されている。更に、配線基板5の裏面側には、第6表導体パターン56と対向する第4裏導体パターン562が形成されている。
配線基板5の裏導体パターンは、支持基板4の露出パターンと一致している。即ち、配線基板5が支持基板4の一面に重ねられた(図2、図3参照)とき、第1裏導体パターン512が第1露出パターン41に重なり、第2裏導体パターン542が第2露出パターン42に重なり、第3裏導体パターン553が第3露出パターン43に重なり、第4裏導体パターン562が第5露出パターン45に重なる。
支持基板4及び配線基板5には、第1入出力端子31及び第2入出力端子32が取り付けられる。第1及び第2入出力端子31、32は、略T状の導電性部材でなり、支持基板4及び配線基板5の幅方向Xの両辺において、相対向する位置に設けられた第1凹部47と第3凹部57、及び、第2凹部48と第4凹部48の内部に、それぞれ埋め込まれている。第1乃至第4凹部(47、57)、(48、58)の内部に埋め込まれた状態では、第1入出力端子31が第2表導体パターン52に導通し、第2入出力端子32が第3表導体パターン53に導通する。
第1及び第2入出力端子31、32は、外部との接続に用いられるものであるが、導電性磁性基板40の面内に形成された第1凹部乃至第4凹部(47、48)、(57、58)の内部に埋め込まれているので、充分に大きな機械的強度を確保できる。第1及び第2入出力端子31、32は、略T状の導電性部材でなり、第1ヨーク部材4及び配線基板5の幅方向Xの両辺において、相対向する位置に設けられた第1凹部47と第3凹部57、及び、第2凹部48と第4凹部48の内部に、それぞれ、緩く埋め込まれている。第1乃至第4凹部(47、57)、(48、58)の内部に埋め込まれた状態では、第1入出力端子31が第2表導体パターン52に導通し、第2入出力端子32が第3表導体パターン53に導通する。
第1及び第2入出力端子31、32は、外部との接続に用いられるものであるが、導電性磁性基板40の面内に形成された第1凹部乃至第4凹部(47、48)、(57、58)の内部に嵌め込まれているので、充分に大きな機械的強度を確保できる。しかも、実施例の場合、第1及び第2入出力端子31、32は、T状であって、第1ヨーク部材4及び配線基板5に設けられた第1凹部乃至第4凹部(47、48)、(57、58)に緩くはめ込まれるとともに、配線基板5の表面に掛け止められ、表面に設けられた導体パターン52、53に、例えばはんだ付けなどの手段によって接合されている。この構造によれば、第1ヨーク部材4及び配線基板5の組立体に対する第1及び第2入出力端子31、32の接合強度を得る。電鋳処理によると、第1及び第2入出力端子31、32の表面を、強度の高い電極膜によって覆うことができる。
また、第1及び第2入出力端子31、32は、第1凹部乃至第4凹部(47、48)、(57、58)の内部に埋め込まれた状態で、第1及び第2凹部47、48の内壁面に付着された絶縁膜400によって、導電性磁性基板40から電気的に絶縁されているから、第1凹部乃至第4凹部(47、48)、(57、58)の内部への埋め込みと同時に、第1及び第2入出力端子31、32に対する電気絶縁処理が完了する。
磁気回転子1は、フェライト基板2と、中心導体組立体11とを含んでいる。フェライト基板2は、円板状、角板状などの任意の形状に形成され得る。図1及び図2とともに、図3を参照すると、フェライト基板2は全体として四角形状であって、その表面に、第1乃至第6表端子21〜26を備える。第1乃至第6表端子21〜26は導体膜である。第1表端子21及び第2表端子22は、フェライト基板2の幅方向Xの両隅部において、その表面に配置され、両隅部の側面を通る第1側面導体211及び第2側面導体221により裏面側に導かれ、裏面側の両隅部に設けられた第1裏端子212及び第2裏端子222に接続されている。第3表端子23は、フェライト基板2の表面の中央部に配置され、第1側面導体211及び第2側面導体221の間のほぼ中間位置を通る第3側面導体231によって裏面側に導かれ、裏面の中央部に設けられた第3裏端子232に接続されている。第3裏端子232は接地用端子を構成する。
第4表端子24及び第5表端子25は、フェライト基板2の幅方向Xの両側において、その表面に配置され、幅方向Xの両側面を通る第4側面導体241及び第5側面導体251により裏面側に導かれ、裏面側の第3裏端子232に接続されている。
第6表端子26は、フェライト基板2の表面側では、第1乃至第3表端子21〜23のある長さ方向Yの一端側とは反対側に位置する他端側において、幅方向Xに延びるように形成され、幅方向Xの両端側において、側面を通る第6側面導体261及び第7側面導体262により、裏面側に導かれ、裏面側に個別に配置された第6裏端子263及び第7裏端子264にそれぞれ接続されている。
フェライト基板2は、支持基板4に重ねられた配線基板5の一面上に搭載される。搭載状態では、第1裏端子212が第2表導体パターン52に面接触し、第2裏端子222が第3表導体パターン53に面接触し、第3裏端子232が第1表導体パターン51に面接触し、第6裏端子263が第4表導体パターン54に面接触し、第7裏端子264が第5表導体パターン55に面接触して重なる。
中心導体組立体11は、絶縁基板111と、第1乃至第3中心導体L1〜L3(複数)とを含み、フェライト基板2に組み合わされている。第1乃至第3中心導体L1〜L3は、電気導電度及び高周波特性の良好な金属材料、例えばCuによって構成されるもので、Cu板の他、Cuを主成分とする導体性ペーストの塗布焼付など、従来より知られた構造をとり得る。これらの第1乃至第3中心導体L1〜L3は、互いに所定の角度で交差するように、互いに絶縁して、絶縁基板111の一面(表面)上に取り付けられている。
絶縁基板111の他面(裏面)には、第1乃至第3中心導体L1〜L3の両端部(P11、P12)〜(P31、P32)と重なる位置に、第1裏端子乃至第6裏端子(P13、P14)〜(P33、P34)が設けられている。第1裏端P13は、第1中心導体L1の一端P11と対向する位置に設けられ、スルーホール導体などにより、第1中心導体L1の一端P11と接続されている。第2裏端P14は、第1中心導体L1の他端P12と対向する位置に設けられ、スルーホール導体などにより、第1中心導体L1の他端P12と接続されている。
第3裏端P23は、第2中心導体L2の一端P21と対向する位置に設けられ、スルーホール導体などにより、第2中心導体L2の一端P21と接続されている。第4裏端P24は、第2中心導体L2の他端P22と対向する位置に設けられ、スルーホール導体などにより、第2中心導体L2の他端P22と接続されている。
第5裏端P33は、第3中心導体L3の一端P31と対向する位置に設けられ、スルーホール導体などにより、第3中心導体L3の一端P31と接続されている。第6裏端P34は、第3中心導体L3の他端P32と対向する位置に設けられ、スルーホール導体などにより、第3中心導体L3の他端P32と接続されている。
中心導体組立体11は、図7に図示するように、裏面側がフェライト基板2の一面と向き合う関係で、フェライト基板2の一面上に配置される。この配置状態では、第1中心導体L1の一端P11と導通する第1裏端P13が、フェライト基板2に設けられた第1表端子21に面接触して重なり、第1中心導体L1の他端P12と導通する第2裏端P14がフェライト基板2に位置に設けられた第5表端子25に面接触して重なる。
また、第2中心導体L2の一端P21と導通する第3裏端P23がフェライト基板2に設けられた第2表端子22に面接触して重なり、第2中心導体L2の他端P22と導通する第4裏端P24がフェライト基板2に設けられた第4表端子24に面接触して重なる。
更に、第3中心導体L3の一端P31と導通する第5裏端P33が、フェライト基板2に設けられた第3表端子23に面接触して重なり、第3中心導体L3の他端P32と導通する第6裏端P34がフェライト基板2に設けられた第6表端子26に面接触して重なる。
回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)は、第1乃至第3キャパシタC1〜C3、第1抵抗器R1及び第2抵抗器R2を含んでいる。第1乃至第3キャパシタC1〜C3、第1抵抗器R1及び第2抵抗器R2は、何れも相対する両端に端子電極を有するチップ部品であって、支持基板4に組み付けられた配線基板5の一面上に搭載される。その搭載の具体的構成について述べると次の通りである。
まず、第1キャパシタC1は、両端子電極が第2表導体パターン52及び第3表導体パターン53にそれぞれ接続されている。図示実施例では、第2表導体パターン52に第1入出力端子31が接続され、第3表導体パターン53に第2入出力端子32が接続されている。したがって、第1キャパシタC1は、第1入出力端子31と第2入出力端子32との間に接続されることになる。
次に、第2キャパシタC2は、両端子電極が、第2表導体パターン52及び第4表導体パターン54にそれぞれ接続される。第3キャパシタC3は、両端子電極が、第1表導体パターン51及び第5表導体パターン55にそれぞれ接続される。
第1抵抗器R1は、両端子電極が、第4表導体パターン54及び第1表導体パターン51にそれぞれ接続されている。第2抵抗器R2は、両端子電極が、第5表導体パターン55及び第1表導体パターン51にそれぞれ接続されている。第1抵抗器R1及び第2抵抗器R2は、一つの抵抗器として実現することもできる。もっとも、配線基板5に対する磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)の搭載順序は、特に問わない。
上述のようにして、支持基板4に組み付けられた配線基板5の一面上に、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)を実装した後、図8に図示するように、磁気回転子1の上にマグネット6を配置し、更に、配線基板5、磁気回転子1、回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)及びマグネット6を内包するようにして、ヨーク部材7を支持基板4に結合する。
ヨーク部材7は、天面板73の相対する両辺に第1側面板71及び第2側面板72を備え、天面板73から配線基板5、磁気回転子1、回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)及びマグネット6に対して拘束力を加えるようになっている。
第1側面板71は、幅方向Xの両端部に、それぞれ、突状の第1接地用端子711及び第2接地用端子712を備えている。第1接地用端子711及び第2接地用端子712は、支持基板4の幅方向Xの両端部に設けられた第1段部401及び第2段部402にはめ込まれる。第1接地用端子711及び第2接地用端子712の間に生じる凹部713の端面は、配線基板5に設けられた第6表導体パターン56に電気的に導通した状態で接合される。
第2側面板72は、幅方向Xの両端部に突状の第3接地用端子721及び第4接地用端子722(図示しない)を備えている。第3接地用端子721及び第4接地用端子722は、支持基板4の幅方向Xの両端部に設けられた第3段部404及び第4段部405にはめ込まれる。第3接地用端子721及び第4接地用端子722の間に生じる凹部723の端面は、支持基板4に設けられた第5露出パターン45に電気的に導通した状態で、接合される。第1乃至第4接地用端子711、712、721、722の個数及び形状などは任意であり、図示に限定するものではない。
図9は、図1〜図8に示した非可逆回路素子の電気的等価回路図である。図を参照すると、第1乃至第3中心導体L1〜L3は、一端が、共通電位にある共通ノードP0で結合され、フェライト基板2に組み合わされている。第1キャパシタC1は、第1中心導体L1の一端P11と、第2中心導体L2の一端P21との間に接続されている。図示実施例では、第1中心導体L1の一端P11は、第1入出力端子31に導かれ、第2中心導体L2の一端P21は、第2入出力端子32に導かれている。
第2キャパシタC2は、第1中心導体L1の一端P11と、第3中心導体L3の一端P31との間に接続されている。第3キャパシタC3は、第2中心導体L2の一端P21と、第3中心導体L3の一端P31との間に接続されている。
この実施例では、更に、第4キャパシタC4を備えており、第4キャパシタC4は、共通電位の位置、即ち、共通ノードP0と、接地用端子との間に接続されている。したがって、共通ノードP0が、第4キャパシタC4によって、接地電位から浮かされた状態にある。
第1及び第2抵抗器R1、R2は、第3中心導体L3の一端P31と、第4キャパシタC4のキャパシタ電極の一つとの間に接続されている。
上述したように、配線基板5は、裏面が、支持基板4の表面に対面して重ねられているから、配線基板5及び支持基板4の組立体は、配線基板5を構成する誘電体フィルム50の厚みと、支持基板4を構成する平板状導電性磁性基板40の厚みの和で与えられる薄い厚みになる。支持基板4は、平板状導電性磁性基板40の外面に、絶縁膜400によって覆われた絶縁パターンと、絶縁膜400によって覆われていない露出パターンとを有しているから、配線基板5の裏面の導体パターンを、支持基板4における表面の露出パターンに面接触させ、又は、絶縁膜400によって絶縁して、配線基板5の導体パターンと、支持基板4を構成する平板状導電性磁性基板40の露出パターンとの間に必要な接地回路を実現することができる。
また、配線基板5の表面上に、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)を配置する構造であるから、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)は、互いに積み重ねられることなく、フィルム状の薄い配線基板5の同一平面上に存在することになる。この構造の下では、配線基板5、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)の組立体の厚みは、配線基板5を構成する誘電体フィルム50の厚さと、磁気回転子1又は回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)の厚さの和になるから、薄型の非可逆回路素子が実現される。
また、配線基板5の表面上に、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)を配置する構造であるから、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)が同一平面上に配置されることになり、組立の途中又は組立後にオープン不良やショート不良を、視覚的に容易に視認しえる。
しかも、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)は、配線基板5の表面に形成された導体パターンに接続されているから、当該導体パターンのパターン設計によって、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)の間に必要な電気回路を実現することができる。したがって、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)で構成される機能部品の接合構造を簡素化し、接合箇所の接合不良による回路的オープン不良や、機能部品間短絡によるショート不良などが発生しにくい構造の非可逆回路素子を実現することができる。
更に、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)は、配線基板5の表面に形成された導体パターンに接続されており、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)などを、容器内部において垂直方向に積み重ねる従来品と異なって、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)に荷重を印加する必要がないから、組立工程、又は、組立後の荷重によって、磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)に亀裂が入ったり、破損したりすることもない。
本発明に係る非可逆回路素子において、ヨーク部材7は、配線基板5、磁気回転子1、回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)及びマグネット6を内包し、支持基板4に結合されているから、ヨーク部材7及び支持基板4により、マグネット6に対する磁路を構成し、磁気効率を高めると共に、全体を拘束する組立構造を実現することができる。
図10は、図1〜9に示した非可逆回路素子を、回路基板上に実装した状態を示す図である。図10を参照すると、ヨーク部材7は、第1側面板71に設けられた凹部713の両側にある第1接地用端子711及び第2接地用端子712が、回路基板91上の接地導体92に対してはんだ付け94などの手段によって固定されている。第1入出力端子31(及び第2入出力端子32)は、同じく回路基板91上の導体パターン93にはんだ付け94などの手段によって接続されている。第2側面板72に設けられた凹部723の両側にある第3接地用端子721及び第4接地用端子722も同様にはんだ付け処理される。
図10に図示するように、本発明に係る非可逆回路素子は、回路基板91への実装に当たって、第1乃至第4接地用端子(711、712、721、722)を、回路基板91上の接地導体92に対してはんだ付け94などの手段によって固定して接地をとると共に、非可逆回路素子全体を回路基板91へ固定する固定端子としても兼用することができる。このため、補強用樹脂充填など、特別の補強構造を有することなく、充分な機械的強度を確保して、非可逆回路素子を回路基板91上に実装することができる。
図11は回路基板への実装時の接続構造の違いによる引き剥がし強度のデータを示す図である。図11のサンプルS1は、図10において、第3接地用端子713及び第1突出部403を回路基板91にはんだ付けした場合の引き剥がし強度、サンプルS2は、サンプルS1のはんだ付け構造において、ヨーク部材7によって囲まれた内部に補強用樹脂を充填した場合の引き剥がし強度、サンプルS3は第3接地用端子713及び403を回路基板91に溶接した場合の引き剥がし強度を示している。本発明とあるのは、本発明に係る非可逆回路素子を、図10に示したように、第1乃至第4接地用端子(711、712、721、722)ではんだ付け94した場合の引き剥がし強度を示している。
図11に図示するように、本発明に係る非可逆回路素子によれば、サンプルS1〜S3の何れよりも大きい約37(N)の引き剥がし強度を確保することができる。
また、磁気回転子1において、フェライト基板2と組み合わされる第1乃至第3中心導体L1〜L3の一端が、共通ノードP0となる第3裏端子232でまとめられ共通電位にあり、第1中心導体L1の他端P12と、第2中心導体L2の他端P22との間に第1キャパシタC1が接続され、第1中心導体L1の他端P12と第3中心導体L3の他端P32との間に第2キャパシタC2が接続され、第2中心導体L2の他端P22と、第3中心導体L3の他端P32との間に第3キャパシタC3が接続されているから、第1乃至第3中心導体L1〜L3の有するインダクタンス成分と共振回路を構成する第1乃至第3キャパシタC1〜C3の容量値を大幅に低下させることができる。このため、第1乃至第3キャパシタC1〜C3の小型化、薄型化を図り、延いては、非可逆回路素子の小型化、薄型化に資することができる。
更に、図1〜図9に示した実施例では、配線基板5の一形態として、誘電体フィルム50の表面に形成された第1表導体パターン51と第1裏導体パターン512が、互いに対向し、第4キャパシタC4を構成している。もっとも、第4キャパシタC4の第1裏導体パターン512は、支持基板4によって構成してもよい。
上述した構成によれば、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、減衰量、挿入損失、動作周波数、10dBアイソレーション比帯域及び要求される動作磁場などを、容易、かつ、確実に調整することができる。しかも、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、帯域外の減衰、例えば、2倍波、3倍波などの高調波を減衰させることができる。
図12は、図1〜図9に示した非可逆回路素子において、第4キャパシタC4の容量値を変えた場合の2倍波2F及び3倍波3Fの減衰特性を示す図である。減衰量(dB)は、図9の回路構成において、第1入出力端子31から第2入出力端子32に伝送される信号の減衰量を示している。図12を参照すると、2倍波2Fの場合は、第4キャパシタC4の容量値が、4(pF)よりも小さい範囲で、減衰量が急激に増大する。3倍波3Fの場合は、第4キャパシタC4の容量値6(pF)〜3.5(pF)の範囲で、減衰量が急激に増大する。このデータに徴すれば、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、帯域外の減衰、例えば、2倍波2F、3倍波3Fなどの高調波を減衰させることができることは明らかである。
しかも、上記構成によれば、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、挿入損失、動作周波数、10dBアイソレーション比帯域及び要求される動作磁場などを、容易、かつ、確実に調整することができる。この点について、図13〜図16を参照し、更に具体的に説明する。
まず、図13は、第4キャパシタC4の容量値と挿入損失(最小値)との関係を示す図である。図13のグラフは、図9の回路において、他の回路定数値を変えずに第4キャパシタC4の容量値だけを変えた場合のデータを示している。図13を参照すると、第4キャパシタC4が大きくなるにしたがって、挿入損失が増える。従って、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、挿入損失を、容易、かつ、確実に調整することができる。
次に、図14は、第4キャパシタC4の容量値と動作周波数との関係を示す図である。図14を参照すると、第4キャパシタC4が大きくなるにしたがって、動作周波数が高くなる。従って、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、動作周波数を、容易、かつ、確実に調整することができる。
図15は、第4キャパシタC4の容量値と10dBアイソレーション比帯域との関係を示す図である。図15を参照すると、第4キャパシタC4の容量値が大きくなるにしたがって、10dBアイソレーション比帯域が大きくなる。従って、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、10dBアイソレーション比帯域を、容易、かつ、確実に調整することができる。
図16は、第4キャパシタC4の容量値と動作磁場との関係を示す図である。図16を参照すると、第4キャパシタC4の容量値が小さくなるにしたがって、より小さな動作磁場で済むようになる。従って、第4キャパシタC4の容量値を調整することによって、要求される動作磁場を、容易、かつ、確実に調整することができる。
第1及び第2抵抗器R1、R2と第4キャパシタC4との接続に関しては、2つのとり得る態様がある。図1〜図9は、そのうちの一つの態様を示し、第1及び第2抵抗器R1、R2は、一端が第4キャパシタC4のキャパシタ電極の他方、即ち、接地用端子の側のキャパシタ電極に接続されている。
図17は、別の態様を示し、第1及び第2抵抗器R1、R2は、一端が第4キャパシタC4のキャパシタ電極の一方、即ち、共通ノードP0に導かれているキャパシタ電極に接続されている。したがって、共通ノードP0のみならず、第1及び第2抵抗器R1、R2も、第4キャパシタC4によって、接地から浮かされた状態にある。図17に示す電気的等価回路は、図1〜図9の構造に若干の変更を加えるだけで、容易に実現できる。
図18は、本発明に係る非可逆回路及び非可逆回路素子の別の実施形態を示す電気回路図である。図において、図1〜図9に現れた構成部分と対応する構成部分については、同一の参照符号を付し、重複説明はこれを省略する。図18の特徴は、第1キャパシタC1を省略したことである。即ち、本発明では、第2及び第3キャパシタC2、C3は必須であるが、第1キャパシタC1はなくてもよい。
図1〜図8に示した実施の形態では、支持基板4は、平板状の導電性磁性基板40の外面に、絶縁膜400によって覆われた絶縁パターンと、絶縁膜400によって覆われていない第1乃至第5露出パターン41〜45とを有していて、その上に配線基板5を重ね、更に、配線基板5の上に磁気回転子1と、回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)を配置した構造となっているが、支持基板4及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)に関しては、様々な形態をとることができる。その一例を、図19、図20に示す。
まず、図19の実施の形態では、支持基板4は、磁性基板410と、配線基板420とを含んでいる。配線基板420は、誘電体フィルム421の表面又は裏面に導体パターン422が形成され、磁性基板410の上に重ねられている。配線基板420は磁性基板410からは独立するフィルム状とすることが好ましい。磁気回転子1及び回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)は、とともに、配線基板420の表面に配置され、導体パターン422にはんだ付けなどの手段によって接続されている。
次に、図20の実施の形態では、支持基板4は、低温同時焼成セラミック基板(LTCC)430によって構成されており、その内部又は外部に設けた電極431、432によって、回路部品(C1〜C3)、(R1、R2)を構成してある。図示は省略してあるが、更に、ヨーク部材7と共にヨークとなる磁性基板を、支持基板4に付設してもよい。
図19及び図20に図示された非可逆回路素子の何れの場合も、ヨーク部材7は、回路基板への実装時にはんだ付けされる第1乃至第4接地用端子(711、712、721、722)を有しており、従って、図1〜図8に示した実施の形態と同様に、回路基板へのはんだ付け実装に当たり、補強用樹脂充填など、特別の補強構造を有することなく、充分な機械的強度を確保し得る。
本発明に係る非可逆回路素子は、通信装置の構成要素して用いられる。図21は本発明に係る非可逆回路素子を用いた通信装置であり、携帯電話のような移動体無線機器の構成を示している。図示された通信装置は、アンテナ81と、送信回路85と、受信回路84と、非可逆回路素子83とを含む。参照符号82はデュプレクサである。送信回路85及び受信回路84は、アンテナ81を共用して送受信を行う。
非可逆回路素子83は、本発明に係るものであって、デュプレクサ82から送信回路85に到る回路内に組み込まれている。非可逆回路素子83は受信回路84に到る回路に組み込んでもよい。送信回路85、受信回路84、非可逆回路素子83及びデュプレクサ82の働きは周知であるので、特に説明は要しない。
ただ、非可逆回路素子83は、本発明に係る非可逆回路素子であるから、先に述べた作用効果が、通信装置の上でも得られることは明らかである。
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想は、ヨーク部材の一部を接地用端子として用いることにあり、この構成を満たす限り、これまで提案され、これから提案されることのある非可逆回路素子の全てに、本発明の技術的範囲が及ぶ。