以下に、本発明によるFM−CW(周波数変調連続波:Frequency−Modulated Continuous Wave)方式準拠の物体検出装置および物体検出方法の最良の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
一般に、物体検出装置としては、赤外光を用いる光レーダや電波を用いる電波レーダなどがある。レーダ方式には、短時間のパルス信号を送信し、物標に反射して戻ってきたパルス信号を受信するまでの時間を測定して距離を算出するパルス方式や、周波数変調もしくは振幅変調された連続波(Continuous Wave)を送信し、受信信号の周波数変位や位相変位により反射物体までの距離を算出するCW方式がある。
本発明は、車両などの移動体に搭載される物体検出装置として、三角波により周波数変調された連続波を用いるFM−CW方式準拠の物体検出装置に特に好適に適用されるものであり、以下の実施形態についても、FM−CW方式の物体検出装置について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明による物体検出装置および物体検出方法の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る物体検出装置のブロック構成の一例を示すブロック構成図である。図1に示すように、物体検出装置1は、レーダヘッド2と信号処理装置3とを少なくとも有し、車両の走行を制御する車両制御装置4に対して、検出結果として先行車に関する情報や走行環境に関する情報を出力している。
レーダヘッド2は、前方方向の空間に送信信号を送信する信号送信手段21と、前方の物体(物標)からの反射信号を受信する信号受信手段22と、を少なくとも有し、三角波で周波数変調された送信信号を用いるFM−CW方式のレーダ装置を形成している。
ここで、FM−CW方式とは、前述したように、一般的に、電波レーダとして三角波で周波数変調した送信信号を用い、周波数上昇変調時の反射信号周波数と周波数下降変調時の反射信号周波数との格差より、反射物体までの距離と反射物体の相対速度(自車両との速度差)とを検出する方式である。
しかし、本発明においては、本物体検出装置を搭載した自車両(移動体)の走行速度情報に基づいて算出した周波数オフセット量を用いて、反射信号(受信信号)と送信信号とから得た受信IF信号(上昇周波数スペクトルと下降周波数スペクトル)を周波数オフセットすることにより、建物の壁や駐停車車両のように、地表面に対して絶対速度が零となる移動していない静止物体と、走行車両(移動体)のように、地表面に対して絶対速度を有する移動を伴う移動物体とを区別して検出することを可能としている。
信号送信手段21は、送信アンテナ211と電力分配器212とVCO(Voltage Controlled Oscillator)213とを少なくとも有している。VCO213は、たとえば信号処理装置3側の三角波発生手段31から送られてきた三角波信号で周波数変調した送信信号を生成する。電力分配器212は、VCO213で生成した送信信号を所定の電力比で2分岐に電力分配し、一方を、送信信号として送信アンテナ211から送信し、他方を信号受信手段22のミキサ回路222に入力するローカル信号とする。送信アンテナ211は送信信号を前方方向の空間に送信する。
信号受信手段22は、受信アンテナ221とミキサ回路222と増幅回路223とを少なくとも有する。受信アンテナ221は、送信アンテナ211から送出された送信信号が前方方向の物体(物標)で反射して戻ってきた反射信号を受信する。ミキサ回路222は、電力分配器212で分岐された送信信号の一部と受信アンテナ221で受信した受信信号とをミキシングしてビート信号すなわち受信IF(Intermediate Frequency)信号を生成する。増幅回路223は、ミキサ回路222で生成された受信IF信号を増幅して、信号処理装置3側のFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理手段32に向けて出力する。
本実施形態におけるレーダヘッド2は、さらに送受信方位走査手段23を備える。送受信方位走査手段23は、自車両の走行方向とは異なる方位に対しても信号の送受信ができるように、送信アンテナ211と受信アンテナ221とをそれぞれ機械的に車両の走行面に対して水平方向に沿って任意の方位に回頭動作させることにより、走行方向とは異なる任意の送出方位へ向けて送信信号を送出させるとともに、該送出方位から受信信号を受信させるものである。送信アンテナ211および受信アンテナ221の回頭方向(角度)は、送信信号の送信方位情報または受信信号の受信方位情報として、信号処理装置3側の周波数オフセット量算出手段33に向けて送出され、周波数オフセット量の算出時に参照される。
なお、本発明による物体検出装置1に適用するレーダヘッド2すなわち方位検出型のFM−CWレーダヘッドとしては、レーダヘッド2全体を機械的に任意の方位に回頭動作させて送受信方位軸を変更するものに限定されず、送信アンテナ211や受信アンテナ221を単独で回頭させる機構を有するものであってもよいし、あるいは、サーキュレータを追加して信号の送信と受信とを一つの送受信アンテナで行い、この送受信アンテナを横方向に回頭させて送受信方位を変更する機構を有するものであってもよい。さらには、送受信アンテナをアレイアンテナ構造とし、アレイ毎に位相器を用いてビーム方位を制御するフェイズドアレイアンテナを用いるものであってもよい。
また、信号処理装置3は、三角波発生手段31と、FFT処理手段32と、周波数オフセット量算出手段33と、周波数オフセット手段34と、差分演算手段37と、波形積分手段38と、移動物体検出手段39と、速度検出手段41と、を少なくとも備えている。また、本実施形態の信号処理装置3は、静止物体の検出を行うために、さらに、加算演算手段35と、静止物体検出手段36とを備えているが、移動物体のみの検出を行うような場合には、加算演算手段35、静止物体検出手段36を含まない形で構成することもできる。また、本実施形態の信号処理装置3は、さらに、記憶手段40を有することが好ましい。
なお、信号処理装置3は、具体的構成例の一つとして、プログラム処理装置として構成するようにしてもよい。すなわち、三角波発生手段31、高速FFT処理手段32、周波数オフセット量算出手段33、周波数オフセット手段34、加算演算手段35、差分演算手段37、波形積分手段38、速度検出手段41のいずれか1乃至複数の手段における各演算処理を実行する演算処理プログラム、さらに、静止物体検出手段36として静止物体を検出する検出プログラム、移動物体検出手段39として移動物体を検出する検出プログラムのそれぞれのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)等を備えて構成するようにしている。
さらに、このROM等に格納された各演算処理プログラム、各検出プログラムをコンピュータとして実行することにより、三角波発生手段31、高速FFT処理手段32、周波数オフセット量算出手段33、周波数オフセット手段34、加算演算手段35、差分演算手段37、波形積分手段38、移動物体検出手段39、静止物体検出手段36、速度検出手段41のいずれか1乃至複数の手段としてそれぞれ機能する演算制御部たとえば汎用処理装置PU(Processing Unit)等と、ランダムに読み書き動作を実行できるランダムアクセス可能な記憶手段40として機能するRAM(Random Access Memory)等と、を、前記ROM等とともに備えたプログラム処理装置として構成するようにする。
なお、このようなプログラム処理装置として構成する場合、三角波発生手段31、速度検出手段41は、物体検出装置1に内蔵されていればよく、必ずしも、信号処理装置3に内蔵する形態でなくてもよく、それぞれ、信号処理装置3から指示された波形の三角波の発生を行ったり、自車両の速度情報を信号処理装置3に向けて出力するように構成されていればよい。
本実施形態においては、かかるプログラム処理装置として信号処理装置3を構成する場合を例にとって、以下に、さらに説明する。また、本実施形態では、説明の便宜のため、三角波発生手段31、FFT処理手段32、周波数オフセット量算出手段33、周波数オフセット手段34、加算演算手段35、静止物体検出手段36、差分演算手段37、波形積分手段38、移動物体検出手段39、速度検出手段41における各演算処理をそれぞれ別の演算制御部(汎用処理装置PU等)で構成し、それぞれの並列演算を可能とする構成について説明することとする。
しかし、これらの各手段は、三角波発生機能、FFT処理機能、周波数オフセット量算出機能周波数オフセット機能、加算演算機能、静止物体検出機能、差分演算機能、波形積分機能、移動物体検出機能、速度検出機能を有する1または2以上の演算制御部として構成し、1つの演算制御部に搭載された機能については、逐次演算処理形式で順次処理を行う形態としてもよい。
以下、信号処理装置3の各手段についてさらに説明する。
速度検出手段41は、自車両(移動体)の速度を速度情報として検出する。速度検出に当たっては、車両に搭載された速度計を利用して、該速度計を読み取るようにしてもよい。
周波数オフセット量算出手段33は、速度検出手段41により検出された自車両の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量を算出する。ここで、自車両の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量を算出する際に、レーダヘッド2の送受信方位走査手段23から入力されてくる送受信信号の送出方位を参照し、該送出方位が、自車両の走行方向と異なっている場合は、まず、自車両の速度情報から、信号の送出方位に対応する速度ベクトル成分を抽出し、次いで、抽出した速度ベクトル成分に応じたドップラシフト量を算出し、該ドップラシフト量に基づく周波数オフセット量を算出する。
周波数オフセット手段34は、周波数オフセット量算出手段33により算出された周波数オフセット量を用いて、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを算出する。
具体的には、送信信号と受信信号とからミキサ回路222と増幅手段23とによって得られた受信IF信号をFFT処理手段32によりフーリエ変換して受信IF信号の周波数スペクトルを取得し、周波数オフセット手段34において、送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに、周波数オフセット量算出手段33により算出された周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量算出手段33により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める。
この結果、自車両の速度情報あるいは速度ベクトル成分に基づいた周波数オフセット量によって受信IF信号の周波数スペクトルの補正が施されることになり、自車両の走行速度から生じるドップラシフト量の影響を除去した受信IF信号に関する周波数スペクトルが得られる。
差分演算手段37は、周波数オフセット手段34により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの差を求めて、その差分値として差分周波数スペクトルを求める。この差分周波数スペクトルの波形は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの両者で同一周波数となる静止物体(すなわち、地表面に対して静止状態にある物体)からの信号については、互いに打ち消しあってピーク成分が消滅し、一方、両者のピーク成分の周波数が異なる移動物体(すなわち、地表面に対して移動を伴う物体)からの信号については、互いに隣接する周波数領域において逆符号の2つのピーク成分として、そのまま残っている状態になる。
波形積分手段38は、差分演算手段37により求められた差分周波数スペクトルを波形積分して積分周波数スペクトルを求める。この積分周波数スペクトルの波形は、波形積分された結果として、差分周波数スペクトルにおいて移動物体に関するピーク成分として残っていた逆符号の2つのピーク成分について、1つの強調されたピーク成分に変換された波形となる。
移動物体検出手段39は、波形積分手段38により求められた積分周波数スペクトルの波形を解析する波形解析手段(図示していない)を備えており、該波形解析手段により解析された積分周波数スペクトルの波形解析結果に基づいて移動物体の検出を行う。
具体的には、積分周波数スペクトルにおいて特徴的なピークを示すスペクトルは、移動物体からの反射信号であるとして、移動物体の存在を検出し、その特徴的なピーク成分の中央周波数値、ピーク成分の正負情報、および、ピーク成分の半値幅から、それぞれ、検出した移動物体までの距離、該移動物体の接近離脱の移動方向、および、該移動物体の移動速度(地表面との間の絶対移動速度)を求め、また、その積分周波数スペクトルが得られたときの信号送受信方向から移動物体の存在方向を求めることができる。
なお、波形解析手段として、ピーク成分の中央周波数値、ピーク成分の正負情報、ピーク成分の半値幅のすべてを求める場合のみに限るものではなく、必要に応じて、いずれか1乃至複数を求め、対応する移動物体に関する情報を算出するようにしても良い。
また、本実施形態の物体検出装置1の信号処理装置3は、前述のように、加算演算手段35と静止物体検出手段36とをさらに備えている。
加算演算手段35は、周波数オフセット手段34により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める。この加算周波数スペクトルの波形は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの両者で同一周波数となる静止物体からの信号については、ほぼ2倍に強調されたピーク成分となり、一方、両者のピーク成分の周波数が異なる移動物体からの信号については、それぞれのピーク成分がそのまま残るものの、静止物体におけるピーク成分のように強調された形にはならない。
静止物体検出手段36は、加算演算手段35により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う。
具体的には、加算周波数スペクトルにおいて、あらかじめ定めた所定の加算しきい値以上となった特徴的なピーク成分を示すスペクトルは、静止物体からの反射信号であるとして、静止物体の存在を検出し、その加算周波数スペクトルが得られたときの信号送受信方向から、静止物体の存在方向を求め、また、その特徴的なピーク成分の存在する中央周波数値より、静止物体までの距離を求めることができる。
次に、本実施形態の物体検出装置1の動作について、図2のフローチャート、および、図3〜図9のそれぞれの信号状態図、周波数スペクトル図を用いてさらに説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る物体検出装置1の信号処理装置3における制御手順の一例を示すフローチャートである。また、図3は、本実施形態に係る物体検出装置1のレーダヘッド2から送出した送信信号と該レーダヘッド2との速度差がない物体からの反射信号との各信号状態を説明するための信号状態図であり、また、図4は、本実施形態に係る物体検出装置1のレーダヘッド2から送出した送信信号と該レーダヘッド2との速度差がある物体からの反射信号との各信号状態を説明するための信号状態図である。
なお、図3、図4において、図3(1)、図4(1)は、いずれも、三角波発生手段31で発生された三角波信号の信号状態を示し、図3(2)、図4(2)は、いずれも、送信アンテナ211から送信された送信信号の信号状態を示している。また、図3(3)、図4(3)は、それぞれ、静止物体、移動物体からの反射信号の信号状態を示し、図3(4)、図4(4)は、それぞれ、静止物体、移動物体からの反射信号から生成された受信IF信号の信号状態を示している。
また、図5は、自車両が走行しているときに、前方方向の物体(物標)から反射された反射信号を受信した場合の受信IF信号における上昇周波数スペクトルAと下降周波数スペクトルBとの一例を示す周波数スペクトル図であり、図6は、本実施形態に係る物体検出装置1の周波数オフセット手段34により周波数オフセット量だけオフセットされた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの一例を示す周波数スペクトル図である。
また、図7は、本実施形態に係る物体検出装置1の周波数オフセット手段34が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの差分を差分演算手段37にて算出した差分周波数スペクトルの一例を示す周波数スペクトル図である。また、図8は、本実施形態に係る物体検出装置1の差分演算手段37が求めた差分周波数スペクトルを波形積分手段38にて波形積分して算出した積分周波数スペクトルの一例を示す周波数スペクトル図であり、さらに、図9は、本実施形態に係る物体検出装置1の周波数オフセット手段34が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算演算手段35にて加算した加算周波数スペクトルの一例を示す周波数スペクトル図である。
図2のフローチャートについて、図3、図4の信号状態図、図5乃至図9の周波数スペクトル図を参照しながら説明する。
まず、信号送信手段21は、三角波発生手段31により発生された三角波信号によりVCO213で搬送波を周波数変換して送信信号を生成し、電力分配器212、送信アンテナ211を介して送出する(ステップS1)。一方、信号受信手段22は、信号送信手段21が送信した送信信号が物体から反射して生じた反射信号を受信アンテナ221にて受信信号として受信し、ミキサ回路222にて送信信号の一部とミキシングした後、増幅回路223にて増幅し、受信IF信号として出力する(ステップS2)。次いで、周波数オフセット手段34は、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を信号受信手段22から取得する(ステップS3)。
ちなみに、周波数オフセット手段34が取得する受信IF信号は、電力分配器212にて分岐された送信信号の一部と、受信アンテナ221で受信された受信信号とがミキサ回路222によりミキシングされ、しかる後、増幅回路223により増幅され、FFT処理手段32により、スペクトル解析され高速フーリエ変換された情報である。なお、FFT処理手段32の代わりに、スペクトルアナライザを用いてスペクトル解析するようにしてもかまわない。
図3は、前述したように、レーダヘッド2が搭載された自車両との速度差がない物体すなわち相対速度が零の物体から反射された反射信号を受信した場合の信号状態の例を示している。三角波発生手段31で生成された図3(1)に示すような三角波信号により周波数変換されて、図3(2)に示すような送信信号が、VCO213から電力分配器212、送信アンテナ211を介して出力される。
前方方向の物体(物標)が、自車両との速度差がない物体すなわち相対速度が零の物体の場合、図3(3)の実線に示すように、該物体で反射された受信信号(反射信号)は、破線で示す送信信号から周波数シフトされることなく、距離に応じて送信信号の位相よりも時間が遅れた受信信号として受信アンテナ221で受信される。したがって、ミキサ回路222で送信信号と受信信号とをミキシングし、増幅回路223で増幅して得られる受信IF信号としては、図3(4)に示すような波形となる。
ここで、三角波による周波数変調の傾きが分かっているので、図3(4)に示す受信IF信号の周波数f0を検出すれば、前方方向の反射物体までの距離に応じた時間遅延を算出することができ、該反射物体までの距離を検出することができる。
一方、図4は、前述したように、レーダヘッド2が搭載された自車両との速度差がある物体すなわち相対速度が零ではない物体から反射された反射信号を受信した場合の信号状態の例を示している。図4(1)乃至図4(4)の各信号状態の構成は、前述の図3(1)乃至図3(4)のそれぞれと同じである。
前方方向の物体(物標)が、自車両との速度差がある物体すなわち相対速度が零ではない物体の場合、図4(3)の実線に示すように、相対速度を有する該物体で反射された受信信号(反射信号)には、距離に応じた時間遅延と相対的な移動速度によるドップラ効果とのため、破線で示す送信信号に対して周波数シフトが発生した状態で受信される。したがって、ミキサ回路222で送信信号と受信信号とをミキシングし、増幅回路223で増幅して得られる受信IF信号としては、図4(4)に示すような波形となり、周波数上昇変調時の受信IF信号は、周波数f1で観測され、周波数下降変調時の受信IF信号は、周波数f1とは異なる周波数f2として観測される。
よって、この受信IF信号の二つの周波数f1、f2の平均値に基づいて、時間遅延量を検出すれば、前方方向の反射物体までの距離を検出することができる。また、二つの周波数f1、f2の周波数差からドップラ周波数を算出すれば、該反射物体の相対速度を検出することができる。
ここで、自車両の速度情報によって周波数オフセット量を求めて、受信IF信号に関するオフセットを施すことにより、自車両の走行速度による影響を除去することができ、図3に示す信号状態は、地表面に対して移動がない絶対速度が零の静止物体の信号状態と同様の信号状態を説明した図となり、該静止物体においては、上昇オフセット周波数成分と下降オフセット周波数成分とが、送信信号に対して周波数シフトがない信号波形となる。一方、図4に示す信号状態は、地表面に対して移動がある絶対速度が零ではない移動物体の信号状態と同様の信号状態を説明した図となり、該移動物体においては、上昇オフセット周波数成分と下降オフセット周波数成分とが、送信信号に対して周波数シフトを伴う信号波形となる。
次に、図2のフローチャートに戻って以降の処理について説明する。ステップS1からステップS3までの処理と並行して、速度検出手段41は、自車両(移動体)の速度情報を検出する(ステップS21)。周波数オフセット量算出手段33は、速度検出手段41により検出された自車両の速度情報に応じたドップラシフト量を求め(ステップS22)、さらに、求めたドップラシフト量に基づいて、受信IF信号の周波数をオフセットするための周波数オフセット量を算出し、周波数オフセット手段34に向けて出力する(ステップS23)。さらに詳細に説明すれば、周波数オフセット量算出手段33は、ステップS22において、速度検出手段41にて検出された自車両の速度情報と、送受信方位走査手段23にて設定された送信信号の送出方位と、に基づいて、該送出方位に対応する速度情報の速度ベクトル成分を求めて、該速度ベクトル成分に応じたドップラシフト量を算出し、ステップS23において、該ドップラシフト量に基づく周波数オフセット量を求める。
ここで、具体的には、周波数オフセット量算出手段33は、たとえば、速度検出手段41により検出された自車両の速度Vと送受信方位走査手段23から取得した送信信号の送出方位θ(自車両の走行方向との角度)とに基づいて、送信信号の送出方位に対応する速度ベクトル成分(=V・cosθ)を算出する。次いで、送出方位に対する該速度ベクトル成分に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量Δfを、次の式(1)により算出する。
Δf=F・V・cosθ/C … (1)
(但し、Fは送信信号の周波数、Cは光速)
一方、周波数オフセット手段34は、送信周波数の上昇部分の受信IF信号を取得するとともに(ステップS4)、送信周波数の下降部分の受信IF信号を取得する(ステップS5)。しかる後、送信信号の周波数の上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに対して、周波数オフセット量算出手段33により算出された周波数オフセット量を加えて、上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数の下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから、周波数オフセット量算出手段33により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める(ステップS6)。
周波数オフセット手段34は、求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを、差分演算手段37および/または加算演算手段35に向けて出力する。
図5は、前述したように、自車両が走行しているときに、前方方向の物体(物標)から反射される反射信号を受信した場合の受信IF信号における上昇周波数スペクトル(Up−Signal)Aと下降周波数スペクトル(Dn-Signal)Bとの例を示している。図5においては、送信信号を送出した送出方向に複数(図5の場合、静止物体と移動物体との2個)の物体(物標)が存在している場合を示している。図5の2個の各物体から反射されてきた反射信号として、近距離に存在している一方の物体を示す周波数X1近傍には2つのピークP1およびP2が観測され、また、遠距離に存在している他方の物体を示す周波数X2近傍には2つのピークQ1およびQ2が観測されている。
ここで、周波数オフセット量算出手段33にて自車両の走行速度情報に基づいて算出された周波数オフセット量を用いて、図5に示す上昇周波数スペクトル(Up−Signal)Aと下降周波数スペクトル(Dn−Signal)Bとについて周波数オフセット手段34により周波数オフセットされた上昇オフセット周波数スペクトル(Up−Oft)と下降オフセット周波数スペクトル(Dn-Oft)とを求めると、たとえば、図6に示すようになる。図6に示す例においては、オフセット処理後におけるピークP1とP2とのように、上昇オフセット周波数スペクトル(Up−Oft)と下降オフセット周波数スペクトル(Dn-Oft)との両者の周波数がほぼ一致しているピーク成分と、ピークQ1とQ2とのように、両者の周波数が異なっているピーク成分とが存在する。
ピークP1とP2とのように、両者の周波数がほぼ一致している場合には、ピークP1およびP2は、走行路面近傍に存在する建物の壁や路面上に存在する駐停車車両のような絶対速度が零の静止物体(地表面に対する移動がない物体)からの反射信号に対応するものと推測することができる。一方、ピークQ1とQ2とのように、両者の周波数が異なっている場合には、ピークQ1およびQ2は、走行車両のような絶対速度が零ではない移動物体(地表面に対する移動を伴う物体)からの反射信号に対応するものと推測することができる。
次に、ステップS8において、自車両(移動体)の走行速度情報に基づいてオフセットした上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを周波数オフセット手段34から受信した差分演算手段37では、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの差分を算出して差分周波数スペクトルを求める(ステップS9)。
図7は、前述のように、差分周波数スペクトル(sub(oft))の波形を示す周波数スペクトル図であり、周波数オフセット手段34にて求められた、図6に示すような上昇オフセット周波数スペクトル(Up-Oft)と下降オフセット周波数スペクトル(Dn-Oft)との差分を算出した例を示している。
図5および図6において周波数X1近傍で観測された近距離の静止物体からの反射信号P1,P2のピークは、相互に打ち消されて、図7ではピークが目立たなくなっているが、一方、周波数X2近傍で観測された遠距離の移動物体からの反射信号Q1,Q2のピークは図7でも互いに逆符号のピーク成分として残存し、ピークQ1からピークQ2へと、移動物体からの反射信号の信号レベルをより強調させた周波数スペクトルとして得ることができる。差分演算手段37は、求めた差分周波数スペクトルを波形積分手段38に向けて出力する。
波形積分手段38では、差分演算手段37により求められた、差分周波数スペクトル(sub(oft))の波形積分処理を行い、積分周波数スペクトルを求める(ステップS10)。図8は、前述のように、差分周波数スペクトルを波形積分した積分周波数スペクトルの波形を示す周波数スペクトル図であり、図7において周波数X2近傍の隣接周波数領域で観測された移動物体からの反射信号を示すピークQ1、Q2が合成されて、信号強度がより強調された1つのピークQ3に変換されている。波形積分手段38は、求めた積分周波数スペクトルを移動体検出手段9に向けて出力する。
移動物体検出手段39では、図8に示したような積分周波数スペクトルのピークQ3に基づいて、周波数X2近傍で観測された遠距離の移動物体を検出する(ステップS11)。ここに、積分周波数スペクトルでは、上昇オフセット周波数スペクトル(Up-Oft)や下降オフセット周波数スペクトル(Dn-Oft)の周波数X1近傍で観測されていた近距離の静止物体のピーク(たとえばP1,P2)が、差分周波数スペクトルを求めた際にキャンセルされていて、積分周波数スペクトルには存在していないため、移動物体のみを、静止物体から区別して検出することができる。
移動物体検出手段39は、かくのごとく、積分周波数スペクトルの波形内に存在するピーク成分に基づいて、前方方向の複数の物体(物標)の中から移動物体のみを検出するとともに、図示していない波形解析手段によって、図8に示すような積分周波数スペクトルのピークQ3の中央周波数値、ピークQ3の正負、ピークQ3の半値幅のいずれか1乃至複数(すべてを含む)の情報に基づいて、それぞれ、移動物体までの距離、該移動物体の移動方向、該移動物体の移動速度のいずれか1乃至複数(すべてを含む)の検出情報を算出し、その結果を記憶手段40に記憶する(ステップS12)。さらには、必要に応じて、自車両の走行を制御する車両制御装置4へ向けて出力し、自車両の走行を制御する。
一方、ステップS8において、自車両の走行速度情報に基づいてオフセットした上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを周波数オフセット手段34から受信した加算演算手段35では、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める(ステップS7)。
図9は、前述のように、加算周波数スペクトル(add(oft))の波形を示す周波数スペクトル図であり、周波数オフセット手段34にて求められた、図6に示すような上昇オフセット周波数スペクトル(Up-Oft)と下降オフセット周波数スペクトル(Dn-Oft)とを加算した例を示している。
図5および図6において周波数X2近傍で観測された遠距離の移動物体からの反射信号Q1,Q2のピークは、図9の加算演算結果でもほとんど変化しないで、そのままの信号強度であるが、一方、周波数X1近傍で観測された近距離の静止物体からの反射信号P1,P2のピークは、図9ではほぼ2倍のピークP3の信号強度となっており、静止物体の信号レベルが、より強調された周波数スペクトルを得ることができる。加算演算手段35は、求めた加算周波数スペクトルを静止物体検出手段36に向けて出力する。
静止物体検出手段36では、図9に示したような加算周波数スペクトルのピークP3に基づいて、周波数X1近傍で観測された近距離の静止物体を検出する(ステップS8)。ここに、静止物体検出手段36では、加算周波数スペクトルについて、あらかじめ定めた所定の加算しきい値以上のピーク成分が存在しているか否かを判別することにより、静止物体の存在を、移動物体と区別して検出するものである。図9に示す加算周波数スペクトルの場合は、周波数X1近傍で観測された近距離の静止物体のピークP3は、強調された結果として、前記加算しきい値以上となっているが、周波数X2近傍で観測された遠距離の移動物体のピーク(たとえばQ1,Q2)は強調されないため、前記加算しきい値未満の信号強度であり、静止物体のみを、移動物体から区別して検出することができる。
静止物体検出手段36は、かくのごとく、前方方向の物体の中から静止物体のみを検出するとともに、図示していない距離算出手段によって、図9に示すような加算周波数スペクトルのピークP3の中央周波数値に基づいて、静止物体までの距離を算出し、その結果を記憶手段40に記憶する(ステップS12)。なお、静止物体と接近または離反する自車両の走行速度は、速度検出手段41により検出されており、この走行速度を記憶手段41に記憶するようにしてもよい。しかる後、必要に応じて、自車両の走行を制御する車両制御装置4へ向けて出力し、自車両の走行を制御する。
以上のように、周波数オフセット量に応じてオフセットされた、上昇オフセット周波数スペクトル(Up−Oft)と下降オフセット周波数スペクトル(Dn−Oft)とに基づいて、加算周波数スペクトルや差分周波数スペクトルを求めることにより、静止物体からの反射信号を強調させ、あるいは、移動物体からの反射信号を強調させることができる。
ちなみに、ステップS1からS3までの処理ステップとステップS21からS23までの処理ステップ、ステップS4とステップS5の処理ステップ、あるいは、ステップS7からS8までの処理ステップとステップS9からS11までの処理ステップは、それぞれ並行して処理されてもよいし、独立に別個に処理されてもよいし、あるいは、任意の順番で逐次処理されるようにしてもよい。
最後に、送信アンテナ211と受信アンテナ221との走査が全方位について終了したか否かを判断する(ステップS13)。終了していない場合は(ステップS13のNO)、送受信方位走査手段23によって、送信アンテナ211と受信アンテナ221とを異なる任意の方位に回動させた後(ステップS14)、ステップS1に復帰して、全方位について終了するまで、ステップS1からS14までの処理を繰り返す。
一方、全方位の観測が終了したと判断された場合には(ステップS14のYES)、前方方向に存在するすべての物体について、静止物体や移動物体に関する検出が終了したものと判定されて、静止物体や移動物体に関するすべての検出情報が、記憶手段40から車両制御装置4へ向けて出力され(ステップS15)、自車両の走行が制御される。
このように、静止物体からの反射受信信号が除去されて、移動物体からの反射受信信号のみが強調された差分周波数スペクトルさらには積分周波数スペクトルに基づいて、前方方向に存在する複数の物体の中から、移動物体のみを検出し、一方、移動物体からの反射受信信号が強調されずに、静止物体からの反射受信信号のみが強調された加算周波数スペクトルに基づいて、複数の物体の中から、静止物体のみを検出することができる。この結果として、市街地における走行路面のように、たとえ、移動物体や静止物体などが複数混在して存在しているような場合であっても、移動物体および静止物体の双方を同時にそれぞれ区別して検出することも可能であるし、あるいは、いずれか一方のみを単独で検出することもできる。
また、波形積分手段38において、差分周波数スペクトルの波形積分による積分周波数スペクトルの波形に含まれている可能性がある直流分を除去するフィルタ機能すなわち直流分排除手段を付加することにより、上昇周波数変調時の反射信号強度と下降周波数変調時の反射信号強度との信号レベルに不均衡が生じても、直流分を除去して、移動物体からの反射信号がない周波数領域の信号レベルを零レベルに揃えることができ、移動物体からの反射信号をより検出しやすくすることができる。
なお、直流分やノイズ成分を除去する手段を、差分周波数スペクトルを求める差分演算手段37側にもさらに備えるようにして、移動物体からの反射信号をより容易に検出できるようにしてもよいし、さらには、加算周波数スペクトルを求める加算演算手段35にも備えるようにして、加算周波数スペクトルから直流分やノイズ成分を除去して、静止物体からの反射信号をより容易に検出できるようにしてもよい。あるいは、これらの差分周波数スペクトルや加算周波数スペクトルの直流分やノイズ成分を除去する手段を備える代わりに、周波数オフセット手段34側に直流分やノイズ成分の除去手段を備えるようにして、差分周波数スペクトルや加算周波数スペクトルを求める基の周波数スペクトルとして用いられている上昇オフセット周波数スペクトル、下降オフセット周波数スペクトルに含まれている可能性がある直流分やノイズ成分を除去するように構成してもよい。
以上のように、本実施形態によれば、たとえば三角波により周波数変調した電磁波を送受信して物体の検出を行うFM−CW方式に準拠の物体検出装置において、周波数上昇部分および周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルを自車両の速度情報から得られる周波数オフセット量に基づいてオフセット(シフト)させることにより、建物の壁や駐停車車両などの絶対速度が零の移動しない静止物体からの反射信号によって生じる周波数上昇部分と周波数下降部分との二つの周波数スペクトルについては、受信IF信号の周波数成分を等しい周波数にすることができる。
もって、この二つの周波数スペクトルに対して差分演算処理を行うことにより、静止物体からの反射信号を除去した差分周波数スペクトルを得ることができ、静止物体と区別して移動物体のみを検出することができる。
また、並行して、この二つの周波数スペクトルに対して加算演算処理を行うことにより、移動物体からの反射信号以上に静止物体からの反射信号を強調した加算周波数スペクトルを得ることができ、あらかじめ定めた所定の加算しきい値を用いることにより、移動物体とは区別して静止物体のみを検出することもできる。
したがって、一つの測定結果を用いて、複数の物体の中から、移動物体のみの検出、静止物体のみの検出を同時に区別して行うことができるし、あるいは、複数の物体の中から、移動物体と静止物体のいずれか一方のみを検出することもできる。
さらに説明すれば、本実施形態においては、三角波で周波数変調した電磁波を送受信して物体検出を行うFM−CWレーダ方式の物体検出装置1において、送信周波数上昇変調部分の受信IF信号については高速フーリエ変換して得られる周波数スペクトルを自車両の速度情報から得られるドップラシフト量で正の方向に周波数をシフトし、送信周波数下降変調部分の受信IF信号については前記ドップラシフト量で負の方向に周波数をシフトさせることにより、移動がない静止物体からの反射信号によって生じる周波数上昇部分と周波数下降部分のIF信号の周波数成分を等しい周波数にすることができる。
もって、この二つの周波数スペクトルを差分演算することにより、壁や駐車車両などの静止物体からの反射信号を除去することができ、さらに、差分演算結果を波形積分することにより、移動物体の反射信号を1つのパルス波形に変換することができ、複数の物体からのそれぞれの反射信号の中から、移動物体の反射信号のみを効率良く抽出することができ、移動物体を確実に検出することができるようになる。
また、差分演算結果を積分した波形に含まれるピーク成分の頂点の中央周波数値、ピーク成分の正・負、ピーク成分の半値幅を検出することにより、それぞれ、移動物体までの距離、移動物体の移動方向、移動物体の移動速度を検出することができる。
さらに、加算演算結果の加算周波数スペクトルの波形に含まれるピーク成分の頂点の信号強度が予め定めた所定の加算しきい値以上になっているか否かを判別することにより、複数の物体からのそれぞれの反射信号の中から、静止物体からの反射信号を正確に抽出することができ、静止物体を検出することができるようになる。また、加算演算結果における前記加算しきい値以上のピーク成分の頂点の中央周波数値から、静止物体までの距離を検出することもできる。
さらに、差分演算結果を波形積分した積分周波数スペクトルの直流分を排除することにより、上昇周波数変調時に得られる反射信号強度と下降周波数変調時に得られる反射信号強度との不均衡によって生じる雑音レベルのオフセットを除去することでき、両者の反射信号強度の検出において、不均衡な検出状況が発生したとしても、直流分を除去した積分周波数スペクトルを用いて、移動物体をより容易に検出することができ、さらに、静止物体を検出する際に、検出された移動物体が存在する周波数領域を含まない残りの周波数領域を、静止物体を検出する対象とする周波数領域とすることにより、静止物体の検出領域を適正なものにすることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明による物体検出装置および物体検出方法の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態において説明した積分周波数スペクトルのピーク成分について、その絶対値を算出し、移動物体の存在を示す所定の積分しきい値をあらかじめ定めることによって、移動物体の検出をより確実にするとともに、静止物体を検出するための加算周波数スペクトルから、移動物体を示すピーク成分の周波数領域を除去することにより、静止物体の検出についても、より確実に行うことを特徴としている。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る物体検出装置のブロック構成の一例を示すブロック構成図である。図10に示すように、物体検出装置1Aは、図1の物体検出装置1と同様、レーダヘッド2と信号処理装置3Aとを少なくとも有し、車両の走行を制御する車両制御装置4に対して、検出結果として先行車に関する情報や走行環境に関する情報を出力している。図10に示す物体検出装置1Aは、第1の実施形態の図1に示した物体検出装置1に対して、信号処理装置3Aの波形積分手段38Aに絶対値検出手段381をさらに備え、加算演算手段35の代わりに加算演算手段35Aを備えて構成している点が、図1に示した物体検出装置1と異なっているのみである。
図10の物体検出装置1Aのその他の各構成部分については、図1に示した物体検出装置1と基本的に全く同様の構成であり、図1と同じ符号を付して、ここでの詳細な説明は重複するので省略する。以下では、図1の物体検出装置1と異なる部分について詳細に説明する。なお、三角波発生手段31、速度検出手段41は、図1の場合と同様、物体検出装置1に内蔵されていればよく、必ずしも、信号処理装置3に内蔵する形態でなくてもよく、それぞれ、信号処理装置3から指示された波形の三角波の発生を行ったり、自車両の速度情報を信号処理装置3に向けて出力するように構成されていればよい。
波形積分手段38Aは、図1の波形積分手段38と同様、差分演算手段37により求められた差分周波数スペクトルを波形積分して積分周波数スペクトルを求めるものであるが、さらに、求められた積分周波数スペクトルに関する信号強度絶対値を絶対値算出手段381において求めるように構成されている。
すなわち、移動物体検出手段39において、波形積分手段38Aにおいて求められた積分周波数スペクトルの波形内に存在するピーク成分から移動物体を検出する際に、第1の実施形態の場合とは異なり、さらに、絶対値検出手段381により求められた積分周波数スペクトルの信号強度の絶対値があらかじめ定めた所定の積分しきい値以上となるピーク成分となっているか否かを判別し、該積分しきい値以上の信号強度の絶対値を有するピーク成分によって、移動物体を検出する構成としている。この結果、第1の実施形態の場合よりも、さらに正確に移動物体を検出することが可能となる。
なお、波形積分手段38Aにおいても、第1の実施形態と同様、差分周波数スペクトルの波形積分による積分周波数スペクトルの波形に含まれている可能性がある直流分を除去するフィルタ機能すなわち直流分排除手段を付加することにより、上昇周波数変調時の反射信号強度と下降周波数変調時の反射信号強度との信号レベルに不均衡が生じても、直流分を除去して、移動物体からの反射信号がない周波数領域の信号レベルを零レベルに揃えることができ、移動物体の反射信号をより検出しやすくすることができる。
加算演算手段35Aは、図1の加算演算手段35と同様、周波数オフセット手段34により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算するとともに、さらに、積分算出手段17の絶対値算出手段381により求められた積分周波数スペクトルの信号強度絶対値が、前述のように、移動物体の存在を示す、あらかじめ定めた所定の積分しきい値以上となるピーク成分を有する周波数領域を抽出して、抽出された該周波数領域に存在する加算演算結果におけるピーク成分に関する波形を除去した残りの周波数スペクトルを、加算周波数スペクトルとして求める。
すなわち、本実施形態の加算演算手段35Aは、上昇オフセット周波数スペクトル(Up−Oft)と下降オフセット周波数スペクトル(Dn−Oft)とを加算する処理に加えて、積分周波数スペクトルによって移動物体が検出された周波数領域の信号成分(たとえば、第1の実施形態における図8に示す積分波形のピークQ3に相当する図9の加算周波数スペクトルのピークQ1,Q2の波形成分)を加算演算結果から除去した残りの周波数スペクトルとして、加算周波数スペクトルを得る処理を行う。
ここで、第1の実施形態において説明したように、図7に示す差分周波数スペクトルおよび図8に示す積分周波数スペクトルは、周波数X1近傍で観測される静止物体に対応する周波数スペクトルが除去され、移動物体に対応する周波数スペクトルのみが残存したものである。しかし、加算周波数スペクトルは、図9にて説明したように、静止物体に対応する周波数スペクトルはピークP3として2倍程度に強調されてはいるが、ピークQ1およびQ2のように、移動物体を示す周波数スペクトルのピーク成分についても、ピークP3よりも信号強度が小さいものの、弱いピーク成分が相変わらず残存している。
このため、第1の実施形態においては、信号強度が強調された静止物体からの反射信号のみを抽出することができるように、あらかじめ加算しきい値を定めておき、静止物体検出手段36において、前記加算しきい値以上のピーク成分が存在しているか否かに基づいて、静止物体を検出するように処理していた。
しかし、本実施形態では、積分周波数スペクトルにおいてあらかじめ定めた所定の積分しきい値以上の信号強度となるピーク成分を有する周波数領域は、移動物体からの反射信号の周波数領域を示すものとして、図9に示す加算周波数スペクトルから除去することにしており、これにより、ピークQ1およびQ2に示す移動物体に対応する周波数スペクトルを除去するようにしている。もって、最終的な加算周波数スペクトルとしては、たとえ、移動物体と静止物体とが混在しているような環境下であっても、周波数X2近傍で観測される移動物体に対応する周波数スペクトルが除去され、静止物体に対応する周波数スペクトルのみが残存したものとなる。
なお、積分周波数スペクトルは、図12に示すように、移動物体の移動方向によって、正のスペクトルピークもしくは負のスペクトルピークとして出現する。ここで、図8の積分周波数スペクトルの場合は、正のピーク成分であり、移動物体が自車両の走行方向と同一方向に移動している場合を示している。もし、移動物体が自車両の走行方向と逆方向に移動している場合は、負のピーク成分になって表示される。
図12は、積分周波数スペクトルについてその絶対値変換を施した場合の周波数スペクトルの一例を示す周波数スペクトル図である。ピークQ4は、自車両と同じ方向に移動する移動物体からの反射信号であり、そのピーク成分が正符号の信号強度で示されている。一方、ピークQ5は、自車両と逆の方向に移動する移動物体からの反射信号であり、そのピーク成分が負符号の信号強度で示されている。ここで、積分周波数スペクトルの絶対値を求めると、正符号のピークQ4は、そのままであるが、負符号のピークQ5は、図12の破線で示すように、正符号の信号強度に変換される。この結果、移動物体が存在する周波数スペクトル領域であるか、あるいは、存在しない周波数スペクトル領域であるか、を識別する場合に、あらかじめ定めた単一のしきい値すなわち積分しきい値との大小判定によって識別することができる。
したがって、積分周波数スペクトルの信号強度をあらかじめ定めた所定のしきい値と比較する場合、一旦、積分周波数スペクトルの信号強度絶対値に変換し、絶対値に変換された信号強度すなわち振幅が、1個だけ用意されている所定の積分しきい値以上となっているピーク成分を有する周波数領域については、静止物体からの反射信号ではなく、移動物体からの反射信号であると判断することができる。この移動物体からの反射信号に関する周波数領域を、静止物体の検出用に用いる加算周波数スペクトルから除去するようにしている。
なお、本実施形態では、絶対値算出部18を波形積分手段38Aに備えている場合について説明しているが、この絶対値算出部18を、波形積分手段38Aではなく、加算演算手段35A側に備えるようにしてもよい。この場合は、加算演算手段35Aが、周波数オフセット手段34により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算するとともに、波形積分手段38Aにて求められた積分周波数スペクトルについて、絶対値算出部18において信号強度絶対値を算出し、あらかじめ定めた積分しきい値以上のピーク成分を有する周波数領域の信号成分を加算演算結果から除去して、最終的な加算周波数スペクトルを得ることになる。
次に、図11のフローチャートを用いて、本実施形態の物体検出装置1Aの動作について、さらに説明する。ここに、図11は、本実施形態に係る物体検出装置1Aの信号処理装置3Aにおける制御手順の一例を示すフローチャートであり、第1の実施形態における図2のフローチャートのステップS7とS8との間、ステップS10とS11との間に、新たな処理ステップとしてステップS101とS102とを挿入している。
なお、図11のフローチャートにおいて、ステップS1乃至S15、および、ステップS21乃至S23の各処理ステップは、図2に示した第1実施形態の制御手順と基本的に共通する処理ステップである。したがって、ここでの重複する説明は省略し、図11において新たに追加した処理ステップS101、S102についてのみ以下に説明する。
図11に示すように、差分演算手段37において上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの差分を算出して求めた差分周波数スペクトル(sub(oft))について、ステップS10において、波形積分手段38Aにより積分周波数スペクトルを求めた後、制御が、図2のフローチャートの場合と同様に、ステップS11へ移行するが、さらに、それと並行して、ステップS101にも移行する。ステップS11では、図2の場合と同様、移動物体の検出を行うが、一方、ステップS101においては、加算演算手段35Aは、波形積分手段38Aが算出した積分周波数スペクトルの信号強度絶対値を取得して、取得した信号強度絶対値を、加算演算手段35Aに向けて出力する(ステップS101)。
ステップS101で取得された信号強度絶対値を受け取った加算演算手段35Aは、受け取った信号強度絶対値があらかじめ定めた所定の積分しきい値以上のピーク成分を積分周波数スペクトルにおいて有している周波数領域を求め、該当する周波数領域における信号成分を、移動物体を示す信号成分として、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算してステップS7にて求めた加算周波数スペクトル(add(oft))から除去して、最終的な加算周波数スペクトルとして静止物体検出手段36に向けて出力する(ステップS102)。かくして、ステップS102において得られた周波数スペクトルが、本実施形態の加算周波数スペクトルとして、次のステップS8に引き継がれて、図2の場合と同様、静止物体の検出に用いられる。
以上のように、積分周波数スペクトルの信号強度の絶対値を、あらかじめ定めた所定の積分しきい値と比較して、移動物体からの反射信号が存在する周波数領域の信号成分を、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとの加算演算結果から除去することにより、強調された静止物体の反射信号の特徴を損なうことなく、移動物体の反射信号を確実に除去することができ、より正確に静止物体の検出を行うことができる。
すなわち、本実施形態によれば、波形積分手段38により得られる積分波形の信号強度絶対値があらかじめ定めた所定の積分しきい値未満のピーク成分しか存在していない周波数領域(移動物体が含まれていない周波数領域)に限定する形態にして、上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルとの加算演算結果を用いた静止物体の検出を行うことにより、市街地の場合のように、たとえ、移動物体と静止物体とが混在しているような環境下であっても、移動物体の影響を完全に除外した静止物体のみの検出を、より確実に行うことができる。
また、第1の実施形態と同様、本実施形態においても、差分演算結果の積分波形の直流分を排除することにより、上昇周波数変調時に得られる反射信号強度と下降周波数変調時に得られる反射信号強度との不均衡によって生じる雑音レベルのオフセットを除去することでき、両者の反射信号強度の検出において、不均衡な検出状況が発生したとしても、直流分を除去した積分周波数スペクトルを用いて、移動物体をより容易に検出することができ、さらに、静止物体を検出する際に、検出された移動物体が存在する周波数領域を含まない残りの周波数領域を、静止物体を検出する対象とする周波数領域とすることにより、静止物体の検出領域をより適正なものにすることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明による物体検出装置および物体検出方法の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、自車両の走行速度と操舵角等の挙動情報から自車両の移動ベクトルを求めて、送信信号の送出方位に対してベクトル分解して得られる速度成分からドップラシフト量および周波数オフセット量をより正確に算出する点を特徴としている。
図13は、本発明の第3の実施形態に係る物体検出装置のブロック構成の一例を示すブロック構成図である。図13に示すように、物体検出装置1Bは、図1の物体検出装置1と同様、レーダヘッド2と信号処理装置3Bとを少なくとも有し、車両の走行を制御する車両制御装置4に対して、検出結果として先行車に関する情報や走行環境に関する情報を出力している。図13に示す物体検出装置1Bは、第1の実施形態の図1に示した物体検出装置1に対して、信号処理装置3Bに当該移動体(自車両)の挙動を検出する挙動情報取得手段42を、また、信号処理装置3Bの周波数オフセット量算出手段33Bに移動ベクトル算出手段331を、さらに備えて構成している点が、図1に示した物体検出装置1と異なっているのみである。
図13の物体検出装置1Bのその他の各構成部分については、図1に示した物体検出装置1と基本的に全く同様の構成であり、図1と同じ符号を付して、ここでの詳細な説明は重複するので省略する。以下では、図1の物体検出装置1と異なる部分について詳細に説明する。また、三角波発生手段31、速度検出手段41および挙動情報取得手段42は、物体検出装置1Bに内蔵されていればよく、必ずしも、信号処理装置3Bに内蔵する形態でなくてもよい。
なお、図13に示す本実施形態の信号送信手段21および信号受信手段22は、第1の実施形態で説明したように、送受信方位走査手段23により、当該移動体(自車両)の走行面と略水平方向に沿って往復回動しながら複数の任意の送出方向に向けて送信信号を送信する走査型の送信アンテナ211と該送出方位から反射してくる反射信号を受信信号として受信する受信アンテナ221とを有している。
なお、本実施形態の物体検出装置1Bの波形積分手段38においても、第1の実施形態の場合と同様、差分周波数スペクトルの波形積分による積分周波数スペクトルの波形に含まれている可能性がある直流分を除去するフィルタ機能すなわち直流分排除手段を付加することにより、上昇周波数変調時の反射信号強度と下降周波数変調時の反射信号強度との信号レベルに不均衡が生じても、直流分を除去して、移動物体からの反射信号がない周波数領域の信号レベルを零レベルに揃えることができ、移動物体の反射信号をより検出しやすくすることができる。
本実施形態の物体検出装置1Bに備えられている挙動情報取得手段42は、送信信号の送出方向に対応する当該移動体(自車両)の速度ベクトル成分に影響を与える、操舵角情報、左右車輪速差、横G(加速度)などの当該移動体(自車両)の挙動に関する挙動情報を取得するものである。
また、周波数オフセット量算出手段33Bは、前述のように、移動ベクトル算出部331を備えており、移動ベクトル算出部331は、自車両の速度情報と自車両の挙動情報とに基づいて、自車両の挙動に応じて変化する自車両の進行方向の情報を含んだ移動ベクトルを算出する機能を有している。
周波数オフセット量算出手段33Bは、速度検出手段41により検出された自車両の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量を算出する際に、挙動情報取得手段42により取得された当該移動体(自車両)の挙動情報を用いることにより移動ベクトル算出部331で取得した自車両の移動ベクトルを加味した送信信号の送出方位を合成方位として取得して、自車両の速度情報について、取得した該合成方位に対応する当該移動体(自車両)の速度ベクトル成分を算出する。しかる後、算出した前記合成方位に対応する当該移動体(自車両)の速度ベクトル成分に応じたドップラシフト量を算出し、該ドップラシフト量を用いて、周波数のオフセット量を算出している。
たとえば、速度検出手段41で走行速度Vが検出され、一方、自車両の移動ベクトルとして移動方向φが移動ベクトル算出部41で検出された場合、送受信方位走査手段23から取得した送信信号の送出方位θに移動ベクトルφを加味した合成方位(θ−φ)における自車両の速度ベクトル成分は、
V・cos(θ−φ)
である。而して、該速度ベクトル成分に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量Δfは、次の式(2)によって算出される。
Δf=F・V・cos(θ−φ)/C … (2)
(但し、Fは送信信号の周波数、Cは光速)
この結果、自車両の挙動情報を加味することにより、より正確な速度ベクトル成分を用いて、周波数オフセット量Δfを算出することができ、移動物体や静止物体を、より正確に検出することができる。
次に、図14のフローチャートを用いて、本実施形態の物体検出装置1Bの動作について、さらに説明する。ここに、図14は、本実施形態に係る物体検出装置1Bの信号処理装置3Bにおける制御手順の一例を示すフローチャートであり、第1の実施形態における図2のフローチャートのステップS22の代わりに、新たな処理ステップとしてステップS201,S202,S203を挿入している。
なお、図14のフローチャートにおいて、ステップS1乃至S15、および、ステップS21,S23の各処理ステップは、図2に示した第1実施形態の制御手順と基本的に共通する処理ステップである。したがって、ここでの重複する説明は省略し、図14において新たに追加した処理ステップS201,S202,S203についてのみ以下に説明する。
まず、ステップS21において、速度検出手段41により自車両(移動体)の速度情報を検出した後、挙動情報取得手段42は、自車両の速度情報に影響を与える情報として、自車両の操舵角、左右車輪速差、横G(加速度)などの自車両に関する挙動情報を取得して、周波数オフセット量算出手段33Bの移動ベクトル算出手段331に対して出力する(ステップS201)。
しかる後、移動ベクトル算出手段331は、ステップS21で取得した自車両の速度情報と、ステップS201で取得した自車両の挙動情報とに基づいて、自車両の挙動、すなわち、自車両の進行方向の情報を含んだ移動ベクトル(移動方向φ)を算出する(ステップS202)。
次に、図2のステップS22におけるドップラシフト量の算出処理とは異なり、周波数オフセット量算出手段33Bは、移動体の速度情報(V)と移動体の挙動情報とから算出された自車両の移動ベクトル(移動方向φ)と送信アンテナ211が送信信号を送信する送出方位(θ)とを用いて、移動ベクトル(移動方向φ)と移動ベクトル(移動方向φ)との合成方位(θ−φ)ごとの速度ベクトル成分(V・cos(θ−φ))を算出する(ステップS203)。
この速度ベクトル成分(V・cos(θ−φ))を用いて、ドップラシフト量を求め、ドップラシフト量に基づいた周波数のオフセット量を算出することになる。
このように、自車両の挙動情報と送信信号の送出方位とから得られる合成方位ごとに、自車両の走行速度をベクトル分解して得られる速度ベクトル成分からドップラシフト量および周波数オフセット量を算出している。したがって、自車両が直進しない場合であっても、送信信号の送出方位を自車両の挙動情報により補正して、該挙動情報を加味した合成方位とすることにより、送信信号の送出される方位をより正確に把握することができ、該合成方位に対応する自車両の速度ベクトル成分を正確に算出することができる。
而して、静止物体、移動物体と自車両とのより正確なベクトル成分を含む速度情報に基づいて、より正確な周波数オフセット量、差分周波数スペクトル、加算周波数スペクトルを算出することができ、もって、曲線路などで自車両が転舵動作を伴うようなときであっても、静止物体、移動物体からの反射信号をより正確に分別することができる。
すなわち、本実施形態によれば、操舵角や横G(加速度)等の挙動情報より自車両の移動ベクトルを求め、さらに、該移動ベクトルを加味したレーダ信号の送出方位すなわち合成方位に対応するベクトル成分に、自車両の走行速度をベクトル分解して得られる速度ベクトル成分から、ドップラシフト量を算出することにより、静止物体や移動物体からの反射信号を、前記移動ベクトルをも考慮に入れた速度ベクトル成分を加味した形でより正確に解析することができ、曲線路のように、自車両が直進以外の走行状態にあったとしても、周波数スペクトルの差分演算手段37さらには波形積分手段38と、周波数スペクトルの加算演算手段35と、を使って、移動物体と静止物体との分別をより正確に行うことができるようになる。
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、前述の各実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨であることは言うまでもない。
1A,1B…物体検出装置、2…レーダヘッド、3,3A,3B…信号処理装置、4…車両制御装置、21…信号送信手段、22…信号受信手段、23…送受信方位走査手段、31…三角波発生手段、32…FFT処理手段、33,33B…周波数オフセット量算出手段、34…周波数オフセット手段、35,35A…加算演算手段、36…静止物体検出手段、37…差分演算手段、38,38A…波形積分手段、39…移動物体検出手段、40…記憶手段、41…速度検出手段、42…挙動情報取得手段、211…送信アンテナ、212…電力分配器、213…VCO、221…受信アンテナ、222…ミキサ回路、223…増幅回路、331…移動ベクトル算出手段、381…絶対値検出手段。