JP4936585B2 - 逆洗可能な気体濾過装置 - Google Patents
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- Filtering Of Dispersed Particles In Gases (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、逆洗可能な気体濾過装置に関する。さらに詳しくは、気体濾過装置内に装備したフィルターエレメントに付着した微粒子を、逆洗によって回収・除去し易く、耐久性に優れ、かつ、濾過面積が大きい逆洗可能な気体濾過装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化学工場で使用される各種原料の気体や、化学反応によって得られる気体状の生成物などに含まれる微粒子を回収・除去する目的で、食品工場で製造された微粒子状の製品を回収する目的で、または、セメント工場、製鉄工場、発電所などの各種工場から排出される排気ガスから大気汚染の原因となる微少な塵芥を除去する目的で、種々の気体濾過装置を用いた濾過・集塵が行われている。上記のような微粒子の回収・除去の際に用いられる気体用の濾過装置としては、重力沈降室、サイクロン、電気集塵装置、フィルター装置などを挙げることができ、これらは濾過したい気体の種類、用途、気体に含まれる微粒子などの種類、量、粒径などに応じて単独で、複数個連結されて、または異なる構造の装置が組み合わせられて用いられる。
【0003】
上記濾過装置には、一般に、ケーシング(外殻)の中に、筒状、袋状または平板状に加工した濾材によって構成されたフィルターエレメントが装備されている。フィルターエレメントが筒状または袋状である場合には、ケーシングの内部は隔壁板によって濾過室と清浄室とに区画され、この隔壁板には複数個の貫通孔が穿設され、筒状または袋状のフィルターエレメントの開口部が、接続用の金属部材を介して上記隔壁板の貫通孔に接合される。この場合、上記筒状または袋状のフィルターエレメントの開口部の反対側は封止部材によって閉鎖される。また、フィルターエレメントが平板状とされている場合には、上記ケーシングの内部が、一枚または複数枚の平板状のフィルターエレメントによって濾過室と清浄室とに区画される。
【0004】
上記濾過装置によって各種気体を濾過する際には、上記フィルターエレメントに各種気体を通すことによって、この気体に含まれる微粒子などを回収・除去し、この微粒子を回収・除去した後の清浄気体を、清浄室を経由して装置外に流出させる。この濾過装置内に装備されるフィルターエレメントは、連続的、間欠的に長期間使用されるに従ってその表面に微粒子が付着・堆積し、その濾過能力が徐々に低下する。このため、定期的にフィルターエレメントにパルスジェットエアーなどの圧縮ガスを小刻みに吹きつけて洗浄したり、濾過方向と逆の方向から気体を通して、フィルターエレメントに付着した微粒子を剥離、落下させて回収・除去する方法が行われている。このような微粒子の回収・除去操作は、一般に「逆洗」と言われている。
【0005】
従来、上記の逆洗可能なフィルターエレメント用の瀘材として有機繊維製の織布または不織布が用いられている。この濾材から構成されたフィルターエレメントは、その優れた可撓性により逆洗時に変形するために付着した微粒子が除去され易く、かつ、逆洗の際の圧縮ガスの吹き付けにより一時的に変形しても直ちに元の形状に復元するため逆洗回復性にも優れている。
【0006】
しかし、上記濾材から構成されたフィルターエレメントは若干濾過能力が低く、かつ、これらの瀘材を構成する繊維が長期間の使用により疲労して損壊・剥離して繊維屑が生じ、この繊維屑が、フィルターエレメントを通過させた気体や逆洗して回収した微粒子中に同伴されることがある。このため、セラミック製、樹脂製、金属製の粉体を焼結して固めた瀘材が提案され、実用化されている。この瀘材は濾過能力が高いが、気体を通過させる際の抵抗が大きく、かつ、瀘材に付着した微粒子を除去し難いという欠点があった。
【0007】
これに対し、金属繊維製の不織布や金網を単独でまたはこれらを組み合わせて焼結したりバインダーを使用して瀘紙状とした濾材は、濾過能力が高く、極めて細かい微粒子まで回収でき、かつ、気体を通過させる際の抵抗が小さいという利点がある。しかしながら、これら金属繊維製の不織布や金網からなるフィルターエレメントは可撓性に劣るため、これに付着した微粒子を逆洗によって除去し難く、この微粒子を完全に除去することを目的として強く逆洗すると、このフィルターエレメントに過大な応力が時には反復的に負荷し、経時的に劣化・破損してしまうという欠点があった。また、一般に、フィルターエレメントが平板状構造とされている場合には濾過面積が小さく濾過能力も小さいので、フィルターエレメントを大型にする必要があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記した状況に鑑み、従来の金属繊維製の不織布や金網からなるフィルターエレメントに付着した微粒子を、逆洗によって除去し難いという欠点を解決するとともに、装置が小型であるにも拘らず濾過能力が高く、製作も容易な気体濾過装置を提供すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
本発明の目的は、次のとおりである。
1.フィルターエレメントに付着した微粒子を、逆洗によって容易に除去することができる、逆洗可能な気体濾過装置を提供すること。
2.逆洗する際にフィルターエレメントに負荷される過大な応力や反復的な応力に対しても優れた耐久性を発揮する、逆洗可能な気体濾過装置を提供すること。
3.装置を小型とした場合にも所要の濾過能力を発揮し、しかも製作も容易な逆洗可能な気体濾過装置を提供すること。
【0010】
【課題を解決する手段】
上記の課題を解決するため、本発明では、逆洗可能な気体集塵装置において、この気体集塵装置には、パルスジェットガス供給用の加圧タンク、パルスジェットガス噴出ノズルを備えたパルス逆洗機構、および、金属素材製の濾材から構成されたフィルターエレメントが装備されてなり、フィルターエレメントは、外側面および/または内側面に保護具が装備され、濾材は、コルゲート状構造が繰り返された構造にされ、かつ、山部および谷部の延在する方向に対して直角に切断した際の切断面が円弧状とされた曲面部同士の組み合わせ、または、円弧状とされた曲面部同士をつなぐ直線状の部分との組み合わせより形成され、山部の曲面部の曲率半径をr(mm)、谷部の曲面部の曲率半径をr´(mm)、濾材の厚さをt(mm)とし、山部の曲面部とこれに隣接する谷部の曲面部をつなぐ部分の長さをL(mm)とするとき、L≦2.7(r+r´)、r≧3t、r´≧3t、なる関係を満たすことを特徴とする逆洗可能な気体集塵装置を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置は、装置のケーシング(外殻)の内部に、コルゲート状構造の濾材から構成されたフィルターエレメントを装備している。このフィルターエレメントは、濾過したい気体に混在する微粒子などを付着させてこの微粒子を回収・除去し、清浄気体とするという機能を果たす。このフィルターエレメントは、平板状の濾材をコルゲート状に加工したものを主部材として調製されたものであり、その外観は筒状、袋状または平板状とされる。上記コルゲート状構造に加工される濾材を、金網や金属繊維製の不織布から調製すると、目の大きさを任意に調整することができ、濾過または微粒子を回収したい気体が濾材を通過する際の抵抗を小さくしながら、高い濾過能力を維持することができるので好ましい。
【0012】
金網のみから上記瀘材を調製する場合には、金属線の直径や穴の大きさなどの異なる金網を複数枚重ね合わせたり、同じ大きさの穴の金網を複数枚重ね合わせ、要すれば焼結またはバインダーによって相互に接合させて形成する。金属繊維製の不織布のみから上記瀘材を調製する場合には、この不織布を構成する金属繊維の繊維径が同一または異なるものよりなる不織布を、同一径のもの同士または異なる径のものを組み合わせて複数枚重ね合わせ、要すれば焼結したり、またはバインダーを使用して相互に接合させて形成する。金網と金属繊維製の不織布とから瀘材を調製する場合には、金網と金属繊維製の不織布とを焼結したり、またはバインダーを使用して相互に接合させて形成する。
【0013】
上記金属繊維製の不織布および金網の材料となる金属は、鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅、銅合金など濾過したい気体の種類に応じ適宜決めるのが好ましい。例えば、腐食性を有する気体を濾過する場合、気体中に含まれる粒状の食品を回収する場合、または、150〜400℃の気体を濾過する場合などには、耐食性、耐熱性に優れたステンレス鋼が好適であり、400℃を超える高温気体を濾過する場合には、特に耐熱性に優れたニッケル合金が適当である。上記金属繊錐製の不織布を構成する金属繊維は、その直径を0.5μm〜100μmの範囲とし、また、上記金網を構成する金属線の直径は0.05mm〜2mm程度とすることができる。
【0014】
上記フィルターエレメントの山部および谷部、すなわち、このフィルターエレメントの主部材である濾材のコルゲートを構成する山部および谷部は、(1)その延在する方向に対して直角に切断した際の切断面が円弧状または楕円弧状とされた曲面部同士の組み合わせ、または、(2)これら曲面部とこれら曲面部同士をつなぐ部分との組み合わせにより形成される。上記(1)の構成の場合は、後記するL(山部の曲面部とこれに隣接する谷部の曲面部とをつなぐ部分の長さ)が0となる。上記(2)の構成の場合は、上記(1)の場合と比較すると、Lが0ではないので山部の高さは高く、谷部の深さは深くされることとなる。
【0015】
本発明者らの実験によれば、図4に示すように、山部21aの曲面部の曲率半径をr(mm)、谷部21bの曲面部の曲率半径をr´(mm)とし、山部の曲面部とこれに隣接する谷部の曲面部とをつなぐ部分の長さをL(mm)とするとき、L≦2.7(r+r´)、なる関係を満たすフィルターエレメントが、発明の目的を効果的に達成することが分かった。
【0016】
r、r´およびLが上記関係を満たさない場合、すなわち、(1)r、r´に対してLが長すぎる場合、(2)Lに対してr、r´が小さすぎる場合には、濾過時にフィルターエレメントに濾過したい気体を流す際や、逆洗時に圧縮ガスを吹き付ける際に、これら流体の圧力が山部、谷部、および、山部の曲面部と谷部の曲面部とをつなぐ部分に作用し、山部を軸にして谷部がまたは谷部を軸にして山部が相互に振動して、山部および谷部の双方の曲面部に反復的に曲げ応力が負荷されることとなる。
【0017】
特に、(1)のように直線部が相対的に長い場合には、この直線部が過剰に撓み、(2)のように曲面部の曲率半径が相対的に小さい場合には、上記振動が激しくなり、双方とも、山部の曲面部および谷部の曲面部にその曲げ応力が集中して、場合によってはこれら曲面部に割れが生じることがある。なお、上記関係を満たすフィルターエレメントの中でも、L≦2(r+r´)、なる関係を満たすものが特に好ましい。
【0018】
また、本発明者らの実験によれば、濾材の厚さをt(mm)とするとき、このtと上記のr、r´とが、r≧3t、r´≧3t、なる関係を満たすフィルターエレメントが、発明の目的を効果的に達成することが分かった。r、r´およびtが上記関係を満たさない場合、すなわち、濾材の厚さに対して山部の曲面部の曲率半径が小さい場合には、前記したr、r´およびLの関係を満たさない場合と同様に、山部の曲面部および谷部の曲面部に曲げ応力が集中することとなるため、これら曲面部の濾材が過度に変形して濾過精度が低下したり、場合によってはこの曲面部に割れが生じることがある。特に、過大な曲げ応力が負荷されたり、反復的に曲げ応力が負荷された場合には、これら双方の曲面部に割れが生じ易くなる。
【0019】
さらに、本発明者らの実験によれば、図4に示すように、一の山部を形成する曲面部の一方の端点Aと、この端点Aに近い側に隣接する他の山部を形成する曲面部の端点A´との最短距離をDとし、上記端点Aからこれら山部に挟まれた谷部を経由して上記端点A´へと至る距離をHとすると、0.1<D/H<0.5、なる関係を満たすフィルターエレメントが、発明の目的を効果的に達成することが分かった。D/Hが0.1以下であると、谷部に付着・堆積した捕集ダストが逆洗によっても十分に除去されず残存するので好ましくない。また、D/Hが0.5以上であると、フィルターエレメントの単位体積当たりの濾過面積が小さくなって、所用の濾過能力が得られにくくなるので好ましくない。
【0020】
筒状または袋状のフィルターエレメントは、その長さ方向の一端に開口部が設けられ、他端は閉鎖される。筒状のフィルターエレメントの構造の例としては、コルゲート状に加工した濾材を、長さ方向に直角に切断した際の断面形状が円形、楕円形、矩形、多角形とした筒状体に成形し、この筒状体の一端に保形用の環状部材を装備して開口部とし、他端に封止部材を装備した構造を挙げることができる。これら環状部材および封止部材の材料は、各種金属や各種合成樹脂などの中から、除塵したい気体の種類に応じて適宜選ぶことができる。例えば、腐食性を有する気体を濾過する場合、気体中に含まれる粒状や粉状の食品を回収する場合、または、150〜400℃の気体を濾過する場合などには、耐食性、耐熱性に優れたステンレス鋼が好適であり、400℃を超える高温気体を濾過する場合には、特に耐熱性に優れたニッケル合金が適当である。
【0021】
袋状のフィルターエレメントの構造の例としては、コルゲート状に加工した濾材を平板状または若干湾曲させて曲面状として、直方体状の枠部材の各側面部や、平面矩形状の枠部材の広い平面部に取り付けた構造を挙げることができる。また、平板状のフィルターエレメントの構造の例としては、コルゲート状に加工した濾材を平板状のままブランキングして円形状、楕円形状、矩形状、多角形状とし、外縁に枠部材を設けた構造を挙げることができる。これらフィルターエレメントの種類、数、形状、大きさなどは、気体濾過装置の使用目的、付与する性能、ケーシングの大きさ、濾過したい気体の種類などに応じて適宜決めることができる。例えば、筒状のフィルターエレメントの場合には、外径は30mm〜1000mmの範囲で、長さは5000mm以内で各々選ぶことができる。
【0022】
コルゲート状に加工した濾材を成形して得た筒状体の端部に環状部材や封止部材を接合して筒状のフィルターエレメントとする際や、枠部材にコルゲート状に加工した濾材を接合して袋状または平板状のフィルターエレメントとする際には、上記環状部材、封止部材、枠部材などの各種部材の外面または内面をコルゲートの山・谷に合わせて加工して凹凸を設け、溶接・ろう付け・接着剤などによってコルゲート状に加工した濾材に接合したり、コルゲート状に加工した濾材の端部(外縁)付近の山部を一部潰して平坦にし、溶接・ろう付け・接着剤などによって上記各種部材を接合する、という手法によることができる。
【0023】
筒状、袋状または平板状のフィルターエレメントの外側面および/または内側面には、これらフィルターエレメントの保管、輸送、気体濾過装置への取り付けの際などの破損を防ぎ、かつ、濾過・逆洗の際にこれらフィルターエレメントが変形するのを防ぐための保護具を装備することができる。この保護具は、フィルターエレメントの外側面のみ、内側面のみ、外側面と内側面の双方に設けることができる。
【0024】
例えば、円筒状フィルターエレメント用の外側保護具としては、多数の貫通孔を設けた円筒状のパンチングプレートや、複数個の細い環状部材またはコイル状部材と棒状部材とを格子状に組み合わせて形成した円筒状の骨組を挙げることができる。また、平板状フィルターエレメント用の外側保護具としては、複数個の棒状部材を縦横に格子状に組み合わせて形成した網体を挙げることができる。代表的な内側保護具としては、多数の貫通孔を設けた筒状のパンチングプレートを挙げることができる。
【0025】
上記保護具をフィルターエレメントに装備するには、この保護具の端部を、フィルターエレメントの端部(外縁)に装備された各種部材に溶接、ろう付け、接着剤などによって接合したり、この保護具全体を、上記フィルターエレメントの中央部に装備されたコルゲート状濾材に接合する。この際、外側(内側)保護具をフィルターエレメントの外側(内側)面に密着させてもよいし、若干の隙間を設けてもよい。
【0026】
上記保護具の材料は、鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅、銅合金などの各種金属や各種合成樹脂などの中から、濾過したい気体の種類に応じて適宜選ぶことができる。例えば、腐食性を有する気体を濾過する場合や気体中に含まれる粒状や粉状の食品を回収する場合、または、150〜400℃の気体を濾過する場合などには、耐食性、耐熱性に優れたステンレス鋼が好適であり、濾過したい気体が400℃以上の高温である場合には、特に耐熱性に優れたニッケル合金が好適である。
【0027】
本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置のケーシングの形状・大きさなどは、気体濾過装置の使用目的、通過させる濾過したい気体の種類、量、設置される場所などに応じて適宣決めることができ、例えば、その形状を円筒形状、直方体形状とすることができる。このケーシングの内部は、隔壁板または一枚ないし複数枚の平板状のフィルターエレメントによって仕切られ、濾過したい気体を流入させる濾過室と、濾過後の清浄気体を流出させる清浄室とに区画される。また、濾過室の下部には、フィルターエレメントから除去した微粒子を溜める機能を有する部分を設けるのが好ましい。
【0028】
縦型の気体濾過装置には、隔壁板または一枚ないし複数枚の平板状のフィルターエレメントを水平にして取り付けることができ、この場合には、隔壁板の上側に位置する空間を清浄室、下側に位置する空間を濾過室とする。また、横型の気体濾過装置には、隔壁板または一枚ないし複数枚の平板状のフィルターエレメントを垂直にして取り付けることができ、この場合には、隔壁板などによって区画された2室のうち、気体の流入側を濾過室、清浄気体の流出側を清浄室とする。なお、濾過室と清浄室の体積比も、気体濾過装置や濾過したい気体の種類に応じて、適宜決めることができる。
【0029】
上記ケーシングの内部に隔壁板を設ける場合には、隔壁板に少なくとも一個の貫通孔が穿設され、この貫通孔には、筒状または袋状のフィルターエレメントの開口部が接続される。濾過室に流入した濾過したい気体は、瀘材を加工して筒状または袋状とされたフィルターエレメントを通過して濾過され、濾過された清浄気体が清浄室に送られる際に上記貫通孔を通過する。この隔壁板の厚さや材料は、濾過される気体の種類、温度、接合される筒状または袋状のフィルターエレメントの数、濾過時および逆洗時に負荷される応力などを勘案して、適宜決めることができる。
【0030】
本発明に係る気体濾過装置の清浄室には、フィルターエレメントを逆洗するための逆洗機構を設けるものとする。この逆洗機構としては、この種の気体濾過装置に設ける従来から知られている機構を活用することができる。その機構の例としては、高圧供給用のマニホールドのノズルから、フィルターエレメントの開口部に向けて、瞬間的に高圧空気をパルス状に噴射して逆洗する機構(実開昭61−178916号公報参照)や、隔壁板に垂直な軸を中心に回転可能にされた外部エアー導入ダクトと、この下端に連設された末広がりのエアー吹き出しノズルとから構成された回転移動型の逆洗機構(特公平6−16808号公報参照)、などを挙げることができる。逆洗機構は、これら例示したものに限定されるものではない。
【0031】
本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置を用いて各種気体を濾過するには、濾過したい気体を濾過室へと流入させ、フィルターエレメントの外側(濾過室側)から内側(清浄室側)へとこの濾過したい気体を通過させて濾過し、濾過後の清浄気体を、清浄室を経由して装置外部に放出させる。また、本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置に装備されたフィルターエレメントを逆洗するには、逆洗機構を設けておき、圧縮ガスや外部エアーなどの逆洗流体をフィルターエレメントに向かって噴射し、この逆洗流体および逆洗流体に巻き込まれた清浄気体を、フィルターエレメントの内側(清浄室側)からフィルターエレメントの外側(濾過室側)へと流出させて、付着・堆積した微粒子を剥離・落下させる。落下した微粒子は、濾過室の下部に設けられた微粒子を溜める機能を有する部分に溜め、逆洗操作終了後に外部に排出して回収・廃棄処分する。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を図面および試験例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置に装備される筒状のフィルターエレメントの一例の一部切欠き側面図である。図2は、本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置に装備される袋状のフィルターエレメントの一例の正面図であり、図3は、図2の袋状のフィルターエレメントを隔壁板に取り付けた状態の一部切欠き側面図であり、図4は、図3のIV−IV部分における部分断面図である。
【0034】
図1に示した筒状のフィルターエレメント10は、平板状の濾材にコルゲート加工を施し、これを巻回して円筒状にしたコルゲート状円筒濾材11を形成し、このコルゲート状円筒濾材11の一端に封止部材12を、他端に環状部材13を接合して調製したものである。この筒状のフィルターエレメント10の開口端部側には、雄ねじが形成された隔壁板接続用の金属部材14が装備されている。この筒状のフィルターエレメント10の内側面には、内側保護具としてパンチングプレート15が装備され、外側面には、外側保護具として複数個の細い環状部材と棒状部材とから構成される円筒状の骨組16が装備されている。
【0035】
図2および図3に示した袋状のフィルターエレメント20は、平板状の濾材にコルゲート加工を施したコルゲート状濾材21を2枚形成し、このコルゲート状濾材21を枠部材22の広い平面部に接合して調製したものである。図3に示すとおり、この袋状のフィルターエレメント20を構成する枠部材22には、上方に開口部23が設けられており、この開口部23には接続用部材24が装備されている。また、この袋状のフィルターエレメント20には、その内側面にパンチングプレート25が装備されている。
【0036】
図3は、図2に示した袋状のフィルターエレメント20を、本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置内の隔壁板30に取り付けた状態を示しており、隔壁板30の貫通孔31にボルト40を上方から挿入して、袋状のフィルターエレメント20に装備された接続用部材24の下側に突出させ、このボルト40の突出させた部分にナット41を螺合させ、締めて固定したものである。
【0037】
図4は、袋状のフィルターエレメント20のコルゲート状濾材21を、その山部21a(谷部21b)の延在する方向に対して直角に切断した際の断面図である。図4において矢印は、濾過したい気体がこの袋状のフィルターエレメント20に流入する方向を示している。図4では、山部21aおよび谷部21bは、この切断面が円弧状とされた曲面部とこれら曲面部同士をつなぐ直線状の部分との組み合わせにより形成されている例を示した。
【0038】
山部21aの曲面部の曲率半径はr、谷部21bの曲面部の曲率半径はr´とされており、山部21aの曲面部と谷部21bの曲面部とをつなぐ直線状の部分の長さはLとされている。なお、上記曲面部同士をつなぐ直線状の部分を介さずに(すなわち、L=0として)、山部21aの曲面部と谷部21bの曲面部とを直接組み合わせることもできるのは、前記したとおりである。また、山部21aを形成する曲面部の一方の端点Aと、これに隣接する山部21aを形成する曲面部の端点A´との最短距離はDとされ、端点Aから両山部21aに挟まれた谷部21bを経由して端点A´へと至る距離はHとされている。
【0039】
[フィルターエレメントの製作]
以下の実施例および比較例で使用する目的で、次の4種類のフィルターエレメントを製作した。
(1)フィルターエレメントA:直径12μmのステンレス鋼(SUS316)繊維からなる不織布と、直径0.1mmの金属線からなる金網とを重ね合わせ、焼結して厚さ0.3mmの濾材を調製し、この濾材に、r=r´=2mm、L=8mmのコルゲート加工を施し、その後これを巻回して円筒体を形成し、この円筒体の一端に封止部材を接合し、他端に環状部材を接合して開口部としたものであって、外径90mm、長さ390mmのものである。このフィルターエレメントAのr、r´およびLは、L≦2(r+r´)、の関係を満たす。
【0040】
(2)フィルターエレメントB:上記フィルターエレメントAにおいて、r=r´=3mm、L=16mmと変更したほかは同例におけると同様の手順で製作したものであって、外径90mm、長さ390mmのものである。このフィルターエレメントBのr、r´およびLは、L≦2.7(r+r´)、なる関係を満たすが、L≦2(r+r´)、なる関係は満たさない。
(3)フィルターエレメントC:上記フィルターエレメントAにおいて、r=r´=1.5mm、L=10mmと変更したほかは同例におけると同様の手順で製作したものであって、外径90mm、長さ390mmのものである。このフィルターエレメントCのr、r´およびLは、L≦2.7(r+r´)、なる関係を満たさない。
(4)フィルターエレメントD:上記フィルターエレメントAにおいて、濾材にコルゲート加工を施さないほかは同例におけると同様の手順で製作したものであって、外径90mm、長さ390mmのものである。
【0041】
[試験用ケーシングの準備]
以下の実施例および比較例で、上記フィルターエレメントを装備するため、次の試験用ケーシングを準備した。この試験用ケーシングは、幅75cm×長さ150cm×高さ160cmの大きさの直方体状のものであり、その底壁から100cmの位置に、直径90mmの貫通孔が穿設された隔壁板が底壁に平行に取り付けられており、この隔壁板の上側には逆洗機構が装備されている。
【0042】
[実施例1]
上記フィルターエレメントAの開口端部を、雄ねじが形成された金属部材を介在させて、準備した上記試験用ケーシングの隔壁板の貫通孔に接合して試験用濾過装置とした。この試験用濾過装置の濾過室に微粒子を含んだ空気を導入し、フィルターエレメントAの外側から内側へ通過させて濾過して清浄室側に流出させ、一定時間毎に、フィルターエレメントAの開口端部に向けて、ある一定圧に調整された容積0.02m3の加圧タンクに蓄えた空気を、パルスジェットエアーにして0.2秒間噴出させ、逆洗を行った。上記濾過と逆洗とを複数回繰り返しながら、フィルターエレメントAの内外の圧力差が3.0kPaで安定的に推移するために必要な加圧タンクの空気の圧力を測定した。その結果、フィルターエレメントAの内外の圧力差が3.0kPaで安定的に推移するために必要な加圧タンク内の空気の圧力は、0.45MPaであった。
【0043】
[比較例1]
実施例1に記載した試験用濾過装置のフィルターエレメントAをフィルターエレメントDに変更したほかは、同例におけると同様に同種の空気の濾過と逆洗とを行い、かつ、同様に必要な加圧タンクの空気の圧力を測定した。その結果、フィルターエレメントDの内外の圧力差が3.0kPaで安定的に推移するために必要な加圧タンクの空気の圧力は、0.85MPaであった。
【0044】
上記実施例1の試験用濾過装置において、フィルターエレメントAの内外の圧力差が3.0kPaで安定的に推移するために要した圧力(0.45MPa)は、上記比較例1の試験用濾過装置におけるフィルターエレメントDの内外の圧力差が3.0kPaで安定的に推移するために要した圧力(0.85MPa)の53%にすぎなかった。これは、濾過装置のフィルターエレメントを、コルゲート加工を施した濾材によって構成することにより、従来のコルゲート加工を施さない濾材によって構成するよりも、大幅に少ない空気消費量で同様の逆洗効果が得られることを示すものである。
【0045】
[実施例2]
実施例1で調製したのと同じ構造の試験用濾過装置を準備し、この試験用濾過装置のフィルターエレメントAの開口端部に向けて、一定時間毎に、初期圧力が1.0MPaに維持された容積0.02m3の加圧タンクに蓄えた空気を、パルスジェットエアーにして0.2秒間噴出させ、逆洗を行った。この逆洗操作を複数回繰り返し、フィルターエレメントAの破損の有無を確認した。この結果、実用性の限界とされている約600回を大幅に超えた約1000回の噴出後にも、フィルターエレメントAを構成する円筒体と環状部材との接合部には、破損が認められなかった。すなわち、実施例2における試験用濾過装置のフィルターエレメントAのr、r´およびLは、L≦2(r+r´)、の関係を満たすので、このフィルターエレメントAに破損は認められなかった。
【0046】
[実施例3]
実施例2に記載した試験用濾過装置のフィルターエレメントAをフィルターエレメントBに変更したほかは、同例におけると同様に逆洗操作を複数回繰り返し、フィルターエレメントBの破損の有無を確認した。この結果、フィルターエレメントBは、約600回の噴出までは、フィルターエレメントBを構成する円筒体と環状部材との接合部に破損が認められず、約650回を超えた時点で、環状部材との接合部近傍に位置する円筒体のコルゲートの谷部に、その長さ方向に沿った割れが生じているのが認められた。すなわち、実施例3における試験用濾過装置のフィルターエレメントBのr、r´およびLは、L≦2(r+r´)、の関係は満たさないものの、L≦2.7(r+r´)、の関係を満たしているので、実用性の限界までの耐久性を発揮したと推測される。
【0047】
[比較例2]
実施例2に記載した試験用濾過装置のフィルターエレメントAをフィルターエレメントCに変更したほかは、同例におけると同様に逆洗操作を複数回繰り返し、フィルターエレメントCの破損の有無を確認した。この結果、フィルターエレメントCは、約400回を超えた時点で、環状部材との接合部近傍に位置する円筒体のコルゲートの谷部に、その長さ方向に沿った割れが生じているのが認められた。すなわち、比較例2における試験用濾過装置のフィルターエレメントCのr、r´およびLは、L≦2.7(r+r´)、なる関係を満たしていないので、谷部に応力が集中し、割れが生じたものと推測される。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明した通りであり、つぎのような特別に有利な効果を奏し、その産業上の効果は極めて大である。
1.本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置は、特定の形状のコルゲート状構造の濾材から構成されたフィルターエレメントを装備しているため、このフィルターエレメントに付着した微粒子を、逆洗によって容易に除去することができる。
2.本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置は、特定の形状のコルゲート状構造の濾材から構成されたフィルターエレメントを装備しているため、逆洗用の圧縮ガスの噴出による過大な応力や反復的な応力の負荷に対して、優れた耐久性を発揮する。
3.本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置は、特定の形状のコルゲート状構造の濾材から構成されたフィルターエレメントを装備しているため、コルゲート加工を施さないフィルターエレメントに比べて濾過面積を大きくすることができ、この結果、装置自体を小型にした場合でも、所要の濾過能力を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置に装備される筒状のフィルターエレメントの一例の一部切り欠き側面図である。
【図2】 本発明に係る逆洗可能な気体濾過装置に装備される袋状のフィルターエレメントの一例の平面図である。
【図3】 図2の袋状のフィルターエレメントを隔壁板に取り付けた状態の一部切欠き側面図である。
【図4】 図3のIV−IV部分の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
10:筒状のフィルターエレメント
11:コルゲート状円筒濾材
12:封止部材
13:環状部材
14:金属部材
15:パンチングプレート
16:円筒状の骨組
20:袋状のフィルターエレメント
21:コルゲート状濾材
21a:山部
21b:谷部
22:枠部材
23:開口部
24:接続用部材
25:パンチングプレート
30:隔壁板
31:貫通孔
40:ボルト
41:ナット
A、A´:山部の曲面部の端点
L:山部の曲面部と谷部の曲面部とをつなぐ部分の長さ
r:山部の曲面部の曲率半径
r´:谷部の曲面部の曲率半径
D:両端点間の最短距離
H:一方の端点から谷部を経由して他方の端点へと至る距離
Claims (1)
- 逆洗可能な気体集塵装置において、この気体集塵装置には、パルスジェットガス供給用の加圧タンク、パルスジェットガス噴出ノズルを備えたパルス逆洗機構、および、金属素材製の濾材から構成されたフィルターエレメントが装備されてなり、フィルターエレメントは、外側面および/または内側面に保護具が装備され、濾材は、コルゲート状構造が繰り返された構造にされ、かつ、山部および谷部の延在する方向に対して直角に切断した際の切断面が円弧状とされた曲面部同士の組み合わせ、または、円弧状とされた曲面部同士をつなぐ直線状の部分との組み合わせより形成され、山部の曲面部の曲率半径をr(mm)、谷部の曲面部の曲率半径をr´(mm)、濾材の厚さをt(mm)とし、山部の曲面部とこれに隣接する谷部の曲面部をつなぐ部分の長さをL(mm)とするとき、L≦2.7(r+r´)、r≧3t、r´≧3t、なる関係を満たすことを特徴とする逆洗可能な気体集塵装置。
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