以下、本発明に係る好適な実施形態の炊飯器について、添付の図面を参照しつつ説明する。
《第1実施形態》
図1は、本発明に係る第1実施形態の炊飯器の主要部の構成を示す断面図である。図2は、第1実施形態の炊飯器における蓋体の一部を切り欠いた状態を示す平面図である。図3は、第1実施形態の炊飯器の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態の炊飯器は、鍋3を着脱可能に収納する炊飯器本体1と、この炊飯器本体1の上部開口部を開閉する蓋本体2とを有して構成されている。蓋本体2は、炊飯器本体1の上部開口部の縁部の一部に設けられたヒンジ部19より開閉可能に構成されている。炊飯器本体1において、鍋3を収納する略有底筒状の鍋収納部5には、鍋3を誘導加熱する複数の鍋加熱部4と、炊飯器本体1に収納された鍋3の温度を検知する鍋温度検出部である鍋温度センサ6が設けられている。鍋加熱部4は、鍋収納部5を介して鍋3の底部の中央部分の周囲に対向するように配置された第1の誘導加熱コイル7と、鍋収納部5を介して鍋3のコーナー部に対向するように配置された第2の誘導加熱コイル8とを有している。鍋温度検出部である鍋温度センサ6は、炊飯器本体1に収納された鍋3の底部に接触するように配設され、サーミスタで構成された温度センサである。
蓋本体2において、炊飯器本体1に収納された鍋3の開口部と対向する面には、蓋本体2が閉状態であるとき、鍋3の開口部を密閉する略円盤状の内蓋9が蓋本体2に対して着脱可能に取り付けられている。内蓋9は、誘導加熱が可能なステンレス等の金属で構成されている。また、蓋本体2には、内蓋9を誘導加熱する内蓋加熱部10と、内蓋9の温度を検知する内蓋温度検出部である内蓋温度センサ11が設けられている。内蓋温度センサ11は、内蓋9に接触するよう配設され、サーミスタで構成された温度センサである。内蓋加熱装置10は、内蓋9の上部空間に配置され、内蓋9に対向するように配置された誘導加熱コイルである。
また、蓋本体2には、炊飯時に鍋内に発生した蒸気と常温である外気とを混合して炊飯器外部に排気する送風装置12と、炊飯時に鍋内に発生した蒸気を吸気し、吸気した蒸気を蒸気循環経路32を介して再び鍋内に導くための循環ポンプ13と、当該炊飯器における各駆動要素の制御を行う制御部14と、が設けられている。
なお、内蓋9には、鍋内において炊飯時に発生した蒸気を炊飯器外部へ排出するための蒸気排気口9aと、鍋内において炊飯時に発生した蒸気を吸気して、循環ポンプ13を含む蒸気循環経路32を介して鍋内に戻すための蒸気吸気口9bが設けられている。
送風装置12は、蓋本体2の外壁に形成された複数の吸気口15(図2参照)を通じて外気を吸気し、その外気を炊飯時に鍋内において生じた蒸気と混合した後、蓋本体2の天壁に形成された排気口16を通じて排気するものである。したがって、蓋本体2の内部には、送風装置12により吸気された外気を排気口16に誘導する送風経路18と、鍋内で発生した蒸気を送風経路18内に誘導する蒸気経路17と、が設けられている。第1実施形態においては、送風装置12、吸気口15、排気口16、蒸気経路17及び送風経路18により排気温度冷却部が構成されている。
蒸気経路17の入口は、内蓋9の蒸気排気口9aを通じて鍋3の内部と連通しており、蒸気経路17の出口は、ダクト状の送風経路18と連通している。この構成により、炊飯中において鍋内で発生した約100℃の蒸気は、蒸気経路17を通って送風経路18に流入する。
図2に示すように、送風経路18は、蓋本体2において、ヒンジ部19に近い後側部分の空間内に配設されており、送風装置12の送風口とヒンジ部18近傍の排気口16とをつなぐものである。このように構成された送風装置12、蒸気経路17及び送風経路18により、蒸気経路17から送風経路18に流入した約100℃の蒸気は、送風装置12により吸気された常温の外気(例えば、25℃)と混合されて低温化され、排気口16から排出される。
送風装置12としては、軸流ファン、シロッコファン、スクロールファン、ターボファン等の空気流を発生する手段であればどの手段を用いてもよい。なお、コストの観点においては、軸流ファンを用いることが好ましい。また、蓋本体2の大型化を最小限に抑え、且つ風路圧損による風量低下を防ぐ観点においては、シロッコファンを用いることが好ましい。
蓋本体2に設けられた循環ポンプ13は、図1に示すように、内蓋9に形成された蒸気吸気口9bから、鍋内において炊飯時に発生した蒸気を吸気し、その吸気された蒸気を循環ポンプ13を含む蒸気循環経路32を介して再び内蓋9の上面に吐出するように構成されている。ここで、蒸気吸気口9b、蒸気吐出口20a及び循環ポンプ13を含む蒸気循環経路32は、蒸気循環強制部を構成している。循環ポンプ13からの蒸気が吐出される蒸気吐出口20aは、蓋本体2における内蓋9が脱着される内面壁20に形成されている。したがって、蒸気吐出口20aから吐出された蒸気は、内蓋加熱装置10により加熱された内蓋9に吹き付けられて、加熱され、過熱蒸気となり内蓋9に形成された複数の吐出口(図示省略)から鍋内に吐出される。
また、蓋本体2には、マイクロコンピュータで構成された制御部14が設けられている。制御部14は、米を炊飯するための各種炊飯プログラム及び保温プログラム等を記憶する記憶部を備えている。各種炊飯プログラム及び保温プログラムは、使用者が設定した米の種類、炊き方等に対応するものである。制御部14は、蓋本体2に設けられた操作部22により使用者が設定した炊飯条件に従って、当該炊飯条件に対応する炊飯プログラムや保温プログラムに応じて各要素の制御を行い、炊飯動作を実行するものである。蓋本体2に設けられた表示部23には、使用者が設定する際の炊飯条件を表示するとともに、炊飯メニュー、炊飯時間等の各種情報が表示される。
蓋本体2に設けられて、内蓋9の温度を検出する内蓋温度センサ11は、その検出データを制御部14に伝送するよう構成されている。また、蓋本体2には、炊飯器外部に排出される蒸気温度を検出し、その検出データを制御部14に伝送する排気温度検出部である排気温度センサ21が設けられている。内蓋温度センサ11は、内面壁20に固定されており、その一部が内蓋9の上面に接触するよう配設されている。排気温度センサ21は、送風経路18における排気口16の近傍に配設されている。
図3に示すように、第1実施形態の炊飯器においては、交流電源27からの電力が直流電源形成部28と加熱駆動部33に供給される。直流電源形成部28では、交流が直流に変換されて、送風装置12を駆動する送風駆動部29、循環ポンプ13を駆動する循環ポンプ駆動部30、及び当該炊飯器における各要素を制御するマイクロコンピュータである制御部14に対して所望の直流電圧を供給する。ここで、送風駆動部29及び循環ポンプ駆動部30により蒸気駆動部34が構成されている。
制御部14は、炊飯及び保温動作を制御する炊飯制御部24、送風装置12を駆動制御するための送風制御部25、及び循環ポンプ13を駆動制御するための循環ポンプ制御部26を含んでいる。また、制御部14の炊飯制御部24には、鍋温度センサ6、内蓋温度センサ11、排気温度センサ21等の温度検出部である各センサからの各種検出データが入力されて、使用者が選択した選択メニューの炊飯プログラム及び保温プログラム等に従った炊飯動作が実行される。
送風制御部25からの制御信号は送風駆動部29に入力されて、炊飯プログラム及び保温プログラムに従って、送風装置12に対する所望の駆動信号が形成される。また、循環ポンプ制御部26からの制御信号は循環ポンプ駆動部30に入力されて、炊飯プログラム及び保温プログラムに従って、循環ポンプ13に対する所望の駆動信号が形成される。
加熱駆動部33は、炊飯制御部24からの制御信号に基づいて、加熱部である鍋加熱部4及び内蓋加熱部10を炊飯プログラム及び保温プログラムに従って駆動する。なお、実施の形態1の炊飯器において、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10は同様のオンオフデューティサイクル(オンオフデューティ比)で駆動制御されている。
前述したように、蓋本体2の外表面には、炊飯メニューの選択、炊飯の開始、取り消し、予約等の各種炊飯条件を設定するための操作部22と、炊飯メニュー、炊飯時間等の各種炊飯情報を表示する表示部23と、が設けられている。操作部22と表示部23は、蓋本体2における前側部分、すなわち、蒸気経路17及び送風経路18が設けられている位置より前側(ヒンジ部19から離れる側)に配置されている。操作部22は、炊飯開始ボタン、炊飯メニュー選択ボタン等の複数のボタンで構成されている。使用者は、表示部23の表示内容を参照しつつ、操作部22にて炊飯開始を指示することによって、当該炊飯器に炊飯動作を開始させることができる。炊飯開始の指示を受けた制御部14は、記憶した炊飯プログラムと保温プログラム、及び鍋温度センサ6と内蓋温度センサ11と排気温度センサ21等の検出温度に基づいて、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10による鍋3に対する加熱動作を制御し、使用者が設定した炊飯条件に応じた炊飯動作及び保温動作が実行される。
第1実施形態の炊飯器においては、制御部14は、送風装置12及び循環ポンプ13に対してPWM(Pulse Width Modulation)制御を行っている。送風装置12及び循環ポンプ13に駆動電源を供給する送風駆動部29及び循環ポンプ駆動部30が設けられており、炊飯プログラムと保温プログラム、並びに鍋温度センサ6、内蓋温度センサ11及び排気温度センサ21等の検出温度に基づいてPWM通電率を制御して、送風装置12及び循環ポンプ13の駆動源である電動機の回転速度が制御されている。したがって、送風装置12及び循環ポンプ13は効率の高い駆動制御が行われる。以下、その具体的なPWM制御方法について説明する。
図4は、第1実施形態の炊飯器において用いた送風装置12における電動機であるモータに対するPWM通電率[%]と、そのモータの回転数[rpm]との関係を示すグラフである。この送風装置12のモータにおいては、PWM通電率100%のときの回転数が3800[rpm]であり、PWM通電率30%のときの回転数が1450[rpm]であった。なお、図4に示したモータの特性グラフは一例であり、本発明の範囲を限定するものではなく、炊飯器の仕様に応じた予め知られている特性のモータを用いることができる。
図5は、第1実施形態の炊飯器において用いた循環ポンプ13に対するPWM通電率[%]と、この循環ポンプ13が吐出する流量[ml/min]との関係を示すグラフである。循環ポンプ13においては、PWM通電率100%のときの流量が220[ml/min]であり、PWM通電率70%のときの流量が150[ml/min]であった。なお、図5に示した、循環ポンプ13の特性グラフは一例であり、本発明の範囲を限定するものではなく、炊飯器の仕様に応じた予め知られている流量特性の循環ポンプを用いることができる。
次に、第1実施形態の炊飯器における具体的な炊飯動作について説明する。図6は、炊飯動作における鍋3の温度変化、並びに鍋加熱部4、送風装置12及び循環ポンプ13の駆動状態を示す図である。図6に示す鍋3の温度変化は、鍋温度センサ6が検出した温度を示したものである。
まず、使用者により、鍋内に米と水がセットされ、操作部22において炊飯メニューが選択されて、炊飯開始が指示されると、選択された炊飯メニューの炊飯プログラムに従って当該炊飯器は炊飯動作を開始する。
ここで、炊飯動作とは、前炊き工程、昇温工程(炊き上げ工程)、沸騰維持工程、及び蒸らし工程の4つの工程が主工程として構成されるものである。なお、このほかの工程としては、炊飯予約を行ったときに生じる予約待機工程や、炊きあがった後の保温工程があり、これらの動作は予約プログラムや保温プログラムにより実行される。
炊飯動作が開始すると、まず、前炊き工程が開始される。前炊き工程は、水を略一定温度に保って、米に水を吸収させる工程である。この前炊き工程において、炊飯制御部24は、鍋内の水の温度が米の糊化が始まる温度(約60℃)以上にならないように、鍋温度センサ6の検出温度に基づいて鍋加熱部4の鍋加熱動作を制御する。このとき、炊飯制御部24は、鍋加熱部4のオンオフを繰り返すデューティー制御を行い、鍋3を間欠加熱して、鍋温度を一定温度を保つように制御している。このように制御された前炊き工程において、米の吸水が促進される。
第1実施形態の炊飯器において、例えば、前炊き工程では、送風装置12がPWM通電率が30%で駆動され、循環ポンプ13は停止している(PWM通電率:0%)。このときに鍋内において発生する蒸気の温度は60℃以下であり、高温度ではなく、発生量も少ないため、送風装置12はPWM通電率30%で駆動される。なお、以下に述べる各工程における具体的なPWM通電率の数値は、一例であり、炊飯条件等に応じて適宜好ましい値が設定される。
前炊き工程の開始から予め設定された時間が経過すると、昇温工程に移行する。昇温工程は、鍋3を鍋加熱部4により一気に加熱して、鍋内の水を沸騰状態(約100℃)にする工程である。この昇温工程において、炊飯制御部24は、鍋3を急速に加熟して鍋内の水を沸騰状態にするように、鍋加熱部4を制御する。この昇温工程において、送風装置12はPWM通電率が70%で駆動され、循環ポンプ13は停止している(PWM通電率:0%)。このときに鍋内において発生する蒸気の温度は徐々に高くなるため、送風装置12はPWM通電率が70%で駆動される。なお、第1実施形態の炊飯器において、昇温工程における送風装置12はPWM通電率を70%の一定値で駆動したが、温度上昇とともに徐々にPWM通電率を高くしてもよい。
上記のように昇温工程を実行することにより、鍋温度センサ6の検知温度若しくは内蓋温度センサ11の検知温度(図示せず)が約100℃に到達すると、沸騰維持工程に移行する。沸騰維持工程は、米の澱粉を糊化させて、糊化度を50%〜60%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、炊飯制御部24は、鍋内の水の沸騰状態を維持するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10を制御する。より具体的には、炊飯制御部24は、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10のオンオフを一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋3及び内蓋9を間欠加熱する。
沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、約100℃の蒸気が大量に発生する。沸騰維持工程において発生した蒸気が鍋内に充満して、余分な蒸気が、蒸気排気口9aから蒸気経路17を通って送風経路18に流れ込む。この沸騰維持工程においては、送風装置12がPWM通電率100%で駆動され、循環ポンプ13は停止している(PWM通電率:0%)。このように送風装置12を駆動することにより、吸気口15から吸い込まれた外気が、送風経路18を通って排気口16に向けて送風される。一方、蒸気経路17から送風経路18に流れ込んだ高温度の蒸気は、送風装置12により吸い込まれた外気と送風経路18内で混合される。このように送風経路18における外気と蒸気との混合流体は、送風装置12の風力により、蓋本体2の後側に形成された排気口16から炊飯器外部へと排出される。高温度の蒸気(約100℃)と常温の外気(例えば約25℃)とを混合することにより、排出される混合流体の温度は、蒸気の温度よりも確実に低下させることができる。当該炊飯器においては、排気された蒸気温度は50℃以下であった。
上記の沸騰維持工程を継続して実行することにより、鍋内の水がほとんど無くなり、鍋3の温度が水の沸点以上に上昇する。鍋温度センサ6は、鍋3の温度が水の沸点以上の特定温度(例えば約130℃)に到達したことを検知すると、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程は、予熱を利用して余分な水分を蒸発させ、米の糊化度を100%近くまで更に引き上げる工程である。この蒸らし工程において、炊飯制御部24は、鍋3の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を制御する。より具体的には、炊飯制御部24は、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10のオンオフを繰り返すデューティー制御を行い、鍋3及び内蓋9を間欠加熱して、鍋温度を約100℃に保持する。また、この蒸らし工程においても、蒸気経路17から蒸気が排出されるので、炊飯制御部24は、送風装置12をPWM通電率50%で駆動制御する。ここでは、蒸らし工程は、鍋3の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を制御する方式を記載したが、一定の時間加熱を停止する休止時間と、一定の時間鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を行う追炊き時間とを繰り返す方式としてもよい。
なお、上記のように、蒸気経路17から送風経路18に流れ込んだ蒸気と、送風装置12により吸い込まれた外気とを送風経路18内で混合される動作は、前記の昇温工程及び沸騰維持工程における動作と同じである。但し、鍋内で発生する蒸気(湯気)は予熱を利用して余分な水分を蒸発させているので、量も少ないために、送風装置12のPWM通電率は低く設定されている。
蒸らし工程においては、上記のように排気温度冷却部の送風装置12が駆動制御されるとともに、蒸気循環強制部の循環ポンプ13がPWM通電率70%で駆動されている。このように循環ポンプ13が駆動されることにより、内蓋9に形成された蒸気吸気口9bから、鍋内において発生した蒸気を吸気し、その吸気された蒸気が循環ポンプ13を含む蒸気循環経路32を介して再び内蓋9の上面に吐出される。このとき、内蓋9は内蓋加熱部10により加熱されて高温度となっているため、蒸気循環経路32からの蒸気が加熱されて過熱蒸気となり内蓋9に形成された吐出口(図示省略)から鍋内に吐出される。このように過熱蒸気が蒸らし工程の鍋内の米に吐出されて、鍋内の米粒の乾燥を防止しつつ、米粒を所望の温度に加熱することが可能となり、優れた食味を形成することができる高い炊飯性能を有する炊飯器となる。
蒸らし工程の開始から予め設定された時間が経過すると、蒸らし工程が終了し、全ての炊飯動作が終了する。第1実施形態の炊飯器においては、炊飯動作が終了すると自動的に保温工程に移行するよう構成されている。
上記のように、炊飯動作において、鍋内から蒸気が発生するのは、主に沸騰維持工程である。蒸気の発生量は、鍋内の水の残存量に依存するので、沸騰維持工程の前半が最も多く、それ以後は徐々に減少する。より具体的には、沸騰維持工程の継続時間が約15分とすると、沸騰維持工程の開始から約5分間における蒸気の発生量が最も多い。一方、蒸らし工程においては、鍋内のほとんどの水が米により吸水されたか、又は蒸発した状態であるため、蒸気の発生量は沸騰維持工程に比べると格段に少なくなる。したがって、炊飯動作の進行状況に従って、送風装置12の駆動制御を行って送風量を調整し、排気口16から排気される蒸気温度を適切に低温化することができる。
また、蒸らし工程においては送風装置12のPWM通電率が50%であるため、この蒸らし工程において循環ポンプ13をPWM通電率70%で駆動しても、電源能力を大きくする必要がなく、送風装置12及び循環ポンプ13の両方を同時に駆動することが可能となる。この蒸らし工程においては、排気温度冷却部の送風装置12の電動機及び蒸気循環強制部の循環ポンプ13の電動機が同時に駆動されているが、それぞれの電動機の総合消費電力は、直流電源形成部28が形成する直流電源の電力容量以下となるよう設定されている。即ち、第1実施形態の炊飯器において、各電動機に対するPWM通電率は、各電動機の総合消費電力が直流電源形成部28の出力電力容量以下となるように、制御されている。
次に、第1実施形態の炊飯器における上記の炊飯動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。図7及び図8は、第1実施形態の炊飯器の炊飯動作を示すフローチャートである。図7は前炊き工程から昇温工程までを示しており、図8は沸騰維持工程から炊飯動作終了までを示している。
まず、使用者により、鍋内に米と水がセットされ、炊飯メニューが選択されて、炊飯設定が実行される(ステップ101)。使用者が炊飯開始ボタンを押圧すると炊飯動作が開始する(ステップ102)。
炊飯動作が開始すると、加熱部である鍋加熱部4が駆動され(オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図6参照)、前炊き工程が開始される(ステップ103)。第1実施形態の炊飯器において、鍋加熱部4は同様のオンオフデューティサイクルで駆動制御されている。このとき、前炊き工程の経過時間が計測され(ステップ104)、前炊き工程の時間が予め設定されている所定時間(例えば25分)を経過すると昇温工程に移行する(ステップ105)。前炊き工程が所定時間を経過するまでは、送風装置12がPWM通電率30%で駆動される(ステップ106)。このとき、前炊き工程における鍋温度が計測されており、鍋温度が60℃を超えたことを検知したとき(ステップ107)、鍋加熱部4の駆動が停止される(ステップ108)。
上記のように前炊き工程が所定時間を経過すると昇温工程に移行して、再び鍋加熱部4が駆動される(ステップ109:オンデューティ比100%の加熱動作:図6参照)。このとき、送風装置12はPWM通電率70%で駆動される(ステップ110)。ステップ111において、鍋温度が100℃を超えたことを検知したとき、沸騰維持工程へ移行する。昇温工程においては、鍋温度が100℃を超えるまで加熱動作及び送風動作(PWM通電率70%)が継続される。
図8に示すように、沸騰維持工程においては、加熱部である鍋加熱部4及び内蓋加熱部10が駆動され(ステップ112:オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図6参照)、送風装置12がPWM通電率100%で駆動される(ステップ113)。このとき、沸騰維持工程における鍋温度が計測されており、鍋温度が136℃を超えたことを検知したとき(ステップ114)、蒸らし工程へ移行する。沸騰維持工程においては、鍋温度が136℃を超えるまで加熱動作及び送風動作(PWM通電率100%)が継続される。
蒸らし工程においては、加熱部である鍋加熱部4及び内蓋加熱部10が駆動(ステップ115:オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図6参照)、送風装置12がPWM通電率50%で駆動される(ステップ116)。このとき、蒸らし工程の経過時間が計測される(ステップ117)。蒸らし工程が所定の時間、例えば13分を経過したとき、当該炊飯動作は終了する(ステップ119)。蒸らし工程において、排気温度が55℃以上か否かが判断される(ステップ120)。排気温度が55℃以上であれば、送風装置12をPWM通電率100%で駆動し、循環ポンプ13の駆動を停止する(ステップ124)。この状態において、鍋温度が100℃以上か否かが判断され(ステップ125)、鍋温度が100℃以上となったとき加熱部の駆動が停止されて(ステップ126)、ステップ117以降の蒸らし工程が実行される。一方、鍋温度が100℃未満であれば、そのままの状態でステップ117以降の蒸らし工程が実行される。そして、蒸らし工程が所定時間、例えば13分間経過したとき、炊飯動作は終了する(ステップ119)。
一方、ステップ120において排気温度が55℃未満であれば、そのまま送風装置12をPWM通電率50%で駆動し、循環ポンプ13をPWM通電率70%で駆動する(ステップ121)。この状態において、鍋温度が100℃以上となったとき加熱部の駆動が停止されて(ステップ123)、ステップ117以降の蒸らし工程が実行される。一方、鍋温度が100℃未満であれば、そのままの状態でステップ117以降の蒸らし工程が実行される。そして、蒸らし工程が所定時間、例えば13分間経過したとき、炊飯動作は終了する(ステップ119)。ここでは、蒸らし工程は、鍋3の温度が100℃以上か否かが判断され、100℃以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を制御する方式を記載したが、一定の時間加熱を停止する休止時間と、一定の時間鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を行う追炊き時間とを繰り返す方式としてもよい。
第1実施形態の炊飯器において、炊飯動作中の前炊き工程では鍋内の温度が約60℃を維持するよう鍋底温度を検知して、加熱部を駆動している。従って、鍋内の温度は約60℃までしか上昇しないため、蒸気経路17から排出される蒸気はほとんどなく、蒸気の排気温度も60℃であるため、制御部14は送風装置12に対してPWM通電率30%の駆動信号を出力する。送風装置12がPWM通電率30%の駆動信号に相当する回転数で駆動動作することにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させている。
昇温工程においては、鍋内の水を沸騰させる工程であるため、昇温工程の途中で蒸気が発生し、その蒸気温度は100℃である。しかし、この昇温工程における全体的な蒸気量は極少量であるので、制御部14は送風装置12にPWM通電率70%の駆動信号を出力する。送風装置12がPWM通電率70%の駆動信号に相当する回転数で駆動することにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させている。
沸騰維持工程においては、鍋内の水を沸騰させ、鍋内の水分を米粒に十分吸水させて、残りの余分な水分を蒸発させる工程であり、この沸騰維持工程中において多量の蒸気が発生する。従って、蒸気経路17からの蒸気は100℃で蒸気量も多量になるため、制御部14は送風装置12にPWM通電率100%の駆動信号を出力する。送風装置12がPWM通電率100%の駆動信号に相当する回転数で駆動することにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させている。
蒸らし工程では、余分な水分がない状態で米粒を加熱することで、米粒が吸水した水分を蒸発させて乾燥させている。この状態で炊飯器から排出される蒸気は、米粒が吸水した水分と、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気である。このとき、循環ポンプ13を動作させることにより、米粒から蒸発した水分を鍋内で循環させ、米粒を加熱しながら再度吸水させることができる。従って、外部に排出される蒸気は、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気であり、送風装置12の回転数を低下させても、排出される蒸気温度を十分に低温化することができる。このとき、制御部14は送風装置12にPWM通電率50%の駆動信号を出力する。送風装置12がPWM通電率50%の駆動信号に相当する回転数で駆動動作されることにより、排気口16から排出される排気温度を50℃以下に低下させることができる。
第1実施形態の炊飯器においては、送風装置12がPWM制御機能付きであり、送風装置12を駆動する工程で循環ポンプ13を駆動する場合、送風装置12へのPWM通電率を低下させている。このため、第1実施形態の炊飯器において、送風装置12と循環ポンプ13を同時駆動するとき、モータの消費電流を低下させるために送風装置12を駆動する電源電圧を下げる必要がなく、送風装置12と循環ポンプ13とを同時駆動しても、電源回路を省電力化でコンパクト化することが可能な構成となる。
また、第1実施形態の炊飯器においては、送風装置12を連続動作させているため、送風装置12の停止時から動作時に発生する動作音が使用者に対して不快感を与えるような気になる音源となることがない。また、循環ポンプ13は連続通電動作させることができるため、本来必要な排気循環能力で確実にポンプ動作させることが可能となる。
また、第1実施形態の炊飯器においては、排気口16の排気温度を検出して、制御部14に検出温度を出力する排気温度検出部である排気温度センサ21を備えている。制御部14は、排気温度検出センサ21が検出した排気温度が一定温度以上(例えば、55℃以上)であると判断すると、送風装置12へのPWM通電率を上昇させ、且つ循環ポンプ13を停止させている。このため、第1実施形態の炊飯器は、排出される蒸気温度が低温化されていない状態を検知した場合には、送風装置12のPWM通電率を上昇させて、送風装置12の回転数を上げ、排気口16から排出される蒸気温度を確実に低温化することができる構成である。
また、第1実施形態の炊飯器は、蒸らし工程において、排気温度検出部である排気温度センサ21により排気口16から排気される蒸気温度を検出する構成を有している。このため、第1実施形態の炊飯器においては、吸気口の目詰まりや、循環ポンプ13の不具合により、送風装置12により排気口16から排出される蒸気の排気温度が、所定温度以上(例えば、55℃以上)になった場合には、炊飯制御部24は、送風装置12へのPWM通電率を最高通電率である100%まで通電率をあげて排気温度を低下させている。このとき、循環ポンプ13の通電を停止することにより、直流電源形成部28の電源供給能力内で送風装置12のPWM通電率100%の稼働が可能となる。
また、第1実施形態の炊飯器において、循環ポンプ13をPWM制御機能付きとすることにより、制御部14は、排気温度検出部である排気温度センサ21が検出した排気温度が一定温度以上(例えば、50℃以上)であると判断すると、送風装置12へのPWM通電率を上昇し、且つ循環ポンプ13のPWM通電率を下降するよう構成してもよい。このように構成された炊飯器においては、排出される蒸気温度が低温化されていない状態を検知したとき、送風装置12のPWM通電率を上昇して、送風装置12の回転数を上昇させ、且つ環ポンプ13のPWM通電率を下降させて、排気される蒸気温度をさらに低温化することが可能な構成となる。このように構成された炊飯器においては、当該炊飯器の直流電源形成部28の電源供給能力内で、送風装置12及び循環ポンプ13の動作を制御することにより、炊飯性能の改善を図ることができる構成となる。
また、第1実施形態の炊飯器においては、鍋温度を検知する鍋温度検知部である鍋温度センサ6を備えており、制御部14が炊飯メニューに対応する炊飯プログラム及び鍋温度検知センサ6による検知温度とに基づいて加熱部を制御することにより、前炊き工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程等を含む炊飯動作を行っている。そして、当該炊飯器においては、送風装置12を少なくとも昇温工程、沸騰工程、及び蒸らし工程において駆動させており、かつ、蒸らし工程においては、循環ポンプ13を駆動させるよう構成している。このように構成された第1実施形態の炊飯器において、蒸らし工程は、鍋内の水分が米粒に完全に吸水され、余分な水分を蒸発させる工程であり、沸騰維持工程を継続して実行することにより、鍋内の水がほとんど無くなり、鍋3の温度が水の沸点以上の特定温度に上昇したことを、鍋温度検知センサ6が検知した検知温度が一定温度以上になったことにより、制御部14が検知して、蒸らし工程に移行している。蒸らし工程では、余分な水分がない状態で米粒を加熱することにより、米粒が吸水した水分を蒸発させて乾燥させている。この状態で当該炊飯器から排出される蒸気は、米粒が吸水した水分と、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気である。このときに、蒸気循環強制部の循環ポンプ13を動作させることにより、米粒から蒸発した水分を鍋内で循環させ米粒を加熱しながら再度吸水させることが可能となる。従って、外部に排出される蒸気は、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気であり、送風装置12の回転数を低下させても、排出される蒸気温度を十分に低温化することができる。
第1実施形態の炊飯器は、炊飯動作の各工程において、排気温度冷却部の送風装置12の電動機及び蒸気循環強制部の循環ポンプ13の電動機が同時に駆動されたとしても、それぞれの電動機の総合消費電力は、直流電源形成部28が形成する直流電源の電力容量以下となるようPWM制御されている。
上記のように、第1実施形態の炊飯器においては、炊飯動作の各工程において、送風装置12及び循環ポンプ13を所望の値でPWM制御を行う構成であるため、各工程において送風装置12と循環ポンプ13を適切な駆動状態となるように容易に制御することが可能であり、且つ電源電力の容量を考慮した駆動制御を行うことが可能となる。従って、第1実施形態の炊飯器においては、炊飯中に鍋内に生じる高温度の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成して、生成された過熱蒸気を鍋内に導いて炊飯性能を高めることと、炊飯器外部に排出される蒸気の低温化を図って安全性を高めることを同時に達成することができるとともに、且つエネルギー効率を高めて省エネルギー化を図った炊飯器を提供することができる。
なお、第1実施形態の炊飯器においては、送風制御部25が炊飯動作の各工程において送風装置12を駆動制御する構成で説明したが、蒸気経路17を通る蒸気の量を判定し、その判定結果に応じて送風装置12の風力(ファンの回転数)を制御するよう構成してもよい。蒸気経路17を通る蒸気の量の判定方法については、上記のように各工程により判定する方法の他に、白米、無洗米、玄米、おかゆ等の米の種類や炊き方を示す炊飯メニューに基づいて判定する方法、ふきこぼれ回数を検出する手段を設けて、そのふきこぼれ回数に基づいて判定する方法、加熱部による加熱状態に基づいて判定する方法、等がある。
また、蓋本体2の天壁の内側面に、送風制御部25に接続された外気温度を検出する外気温度センサを設置して、その外気温度センサからの外気温度情報に基づいて送風装置12の風力(ファンの回転数)を各工程において制御してもよい。第1実施形態の炊飯器においては、送風装置12及び循環ポンプ13を所望の値でPWM制御を行うことが可能であるため、各種の環境情報に応じて各工程における送風装置12及び循環ポンプ13を適切な駆動状態で制御することが可能である。
《第2実施形態》
以下、本発明に係る第2実施形態の炊飯器について説明する。第2実施形態の炊飯器において、前述の第1実施形態の炊飯器と異なる点は、送風装置及び循環ポンプの制御方法であり、その他の点は前述の第1実施形態の炊飯器と同じである。このため、第2実施形態の炊飯器においては、図1及び図2に示した炊飯器を参照し、第1実施形態の炊飯器と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は第1実施形態における説明を適用する。
図9は、第2実施形態の炊飯器の炊飯動作における鍋3の温度変化、及び鍋加熱部4と送風装置12と循環ポンプ13の駆動状態を示す図である。図9に示す鍋3の温度変化は、鍋温度センサ6が検出した温度を示している。
第2実施形態の炊飯器においては、送風装置12及び循環ポンプ13の駆動においてパターン制御を行っている。図10は、送風装置12及び循環ポンプ13に対するパターン制御において用いられる具体的な駆動パターンを示す図である。第2実施形態の炊飯器においては、4つの駆動パターンにより送風装置12及び循環ポンプ13が駆動制御されているが、本発明はこれらの駆動パターンに限定されるものではなく、送風装置12及び循環ポンプ13は炊飯条件等に応じて各種の駆動パターンにより駆動制御される。
図10に示すように、送風装置12及び循環ポンプ13は8秒周期のオンオフデューティサイクルで制御されている(間欠動作)。パターン1は、送風装置12が5秒間オン状態で駆動され、循環ポンプ13が常時オフ状態である。パターン2は、送風装置12が6秒間オン状態で駆動され、循環ポンプ13が常時オフ状態である。パターン3は、送風装置12が7秒間オン状態で駆動され、循環ポンプ13が常時オフ状態である。そして、パターン4は、送風装置12が4秒間オン状態で駆動され、循環ポンプ13が4秒間オン状態で駆動される。このとき、循環ポンプ13は、送風装置12のオフ状態の時にオン通電されており、送風装置12と循環ポンプ13に対して同時に電圧印加されることがないように、デッド時間が設定されている。このため、第2実施形態の炊飯器においては、送風装置12と循環ポンプ13の実質的な通電時間が4秒未満(約3.8秒)に設定されている。
第2実施形態の炊飯器においては、図10に示すパターン1〜4で駆動するための駆動制御プログラムが記憶部に記憶されており、炊飯動作における各工程において制御部14の送風制御部25及び循環ポンプ制御部26が適切なパターンを適宜設定して、送風装置12及び循環ポンプ13が駆動制御される。
次に、第2実施形態の炊飯器における具体的な炊飯動作について説明する。
まず、使用者により、鍋内に米と水がセットされ、操作部22において炊飯メニューが選択されて、炊飯開始が指示されると、選択された炊飯メニューに応じた炊飯プログラムに従って当該炊飯器は炊飯動作を開始する。
炊飯動作が開始されると、前炊き工程が開始し、この前炊き工程において、炊飯制御部24は、鍋内の水の温度が米の糊化が始まる温度(約60℃)以上にならないように、鍋温度センサ6の検出温度に基づいて加熱部である鍋加熱部4の鍋加熱動作を制御する。前炊き工程において、送風装置12及び循環ポンプ13はパターン1で駆動制御される。即ち、送風装置12は5秒間オン状態で間欠駆動され、循環ポンプ13はオフ状態である。このときに鍋内において発生する蒸気の温度は60℃以下であり、高温度ではなく、発生量も少ないため、送風装置12は5秒間オン状態の間欠駆動である。なお、以下に述べる各工程における具体的なオン通電時間は、一例であり、炊飯条件等に応じて適宜好ましい値が設定される。
前炊き工程の開始から予め設定された時間が経過すると、昇温工程に移行する。昇温工程においては、鍋3を加熱部である鍋加熱部4により一気に加熱して、鍋内の水を沸騰状態(約100℃)にする工程であるため、送風装置12及び循環ポンプ13はパターン2で駆動制御される。即ち、送風装置12は6秒間オン状態で間欠駆動され、循環ポンプ13はオフ状態である。なお、昇温工程においては蒸気の温度が徐々に高くなるため、昇温工程の後半においてはパターン3により送風装置12を駆動制御してもよい。
上記のように昇温工程を実行することにより、鍋温度センサ6の検知温度若しくは内蓋温度センサ11の検知温度(図示せず)が約100℃に到達すると、沸騰維持工程に移行する。沸騰維持工程は、米の澱粉を糊化させて、糊化度を50%〜60%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、炊飯制御部24は、鍋内の水の沸騰状態を維持するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10を制御する。このとき、炊飯制御部24は、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10のオンオフを繰り返すデューティーサイクルで制御を行い、鍋3及び内蓋9を間欠加熱する。
沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、約100℃の蒸気が大量に発生する。沸騰維持工程において発生した蒸気が鍋内に充満して、余分な蒸気が、蒸気排気口9aから蒸気経路17を通って送風経路18に流れ込む。この沸騰維持工程においては、送風装置12及び循環ポンプ13がパターン3で駆動される。即ち、送風装置12は7秒間オン状態で間欠駆動され、循環ポンプ13はオフ状態である。このように送風装置12を駆動することにより、吸気口15から吸い込まれた外気が、送風経路18を通って排気口16に向けて送風される。一方、蒸気経路17から送風経路18に流れ込んだ高温度の蒸気は、送風装置12により吸い込まれた外気と送風経路18内で混合される。このように送風経路18における外気と蒸気との混合流体は、送風装置12の風力により、蓋本体2の後側に形成された排気口16から炊飯器外部へと排出される。高温度の蒸気(約100℃)と常温の外気(例えば約25℃)とを混合することにより、排出される混合流体の温度は、炊飯時に生じる高温度の蒸気の温度よりも確実に低下させることができる。当該炊飯器においては、排気された蒸気温度は50℃以下であった。
上記の沸騰維持工程を継続して実行することにより、鍋内の水がほとんど無くなり、鍋3の温度が水の沸点以上に上昇する。鍋温度センサ6は、鍋温度が水の沸点以上の特定温度(例えば約130℃)に到達したことを検知すると、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程は、予熱を利用して余分な水分を蒸発させ、米の糊化度を100%近くまで更に引き上げる工程である。この蒸らし工程において、炊飯制御部24は、鍋3の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10を制御する。より具体的には、炊飯制御部24は、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10のオンオフを繰り返すデューティー制御を行い、鍋3及び内蓋9を間欠加熱する。また、この蒸らし工程においても、蒸気経路17から蒸気が排出されるので、炊飯制御部24は、送風装置12及び循環ポンプ13をパターン制御する。蒸らし工程においては、送風装置12が3.8秒間オン状態で間欠駆動され、循環ポンプ13が3.8秒間オン状態で間欠駆動されるパターン4で駆動される。ここでは、蒸らし工程は、鍋3の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を制御する方式を記載したが、一定の時間加熱を停止する休止時間と、一定の時間鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を行う追炊き時間とを繰り返す方式としてもよい。
なお、上記のように、蒸気経路17から送風経路18に流れ込んだ蒸気と、送風装置12により吸い込まれた外気とを送風経路18内で混合される動作は、前記の昇温工程及び沸騰維持工程における動作と同じである。但し、鍋内で発生する蒸気は予熱を利用して余分な水分を蒸発させているので、量も少ないために、送風装置12の駆動パターンはオン時間が短く設定されている。
また、蒸らし工程においては、上記のように排気温度冷却部の送風装置12が駆動制御されるとともに、蒸気循環強制部の循環ポンプ13が3.8秒間オン状態で間欠駆動されることにより、内蓋9に形成された蒸気吸気口9bから、鍋内において発生した蒸気を吸気し、その吸気された蒸気が循環ポンプ13を含む蒸気循環経路を介して再び内蓋9の上面に吐出される。このとき、内蓋9は内蓋加熱部10により加熱されて高温度となっているため、循環ポンプ13からの蒸気が加熱されて過熱蒸気となり内蓋9に形成された吐出口(図示省略)から鍋内に吐出される。このように過熱蒸気が蒸らし工程の鍋内の米に吐出されて、鍋内の米粒の乾燥を防止しつつ、米粒を所望の温度に加熱することにより、優れた食味を形成する高い炊飯性能を有する炊飯器となる。
蒸らし工程の開始から予め設定された時間が経過すると、蒸らし工程が終了し、全ての炊飯動作が終了する。第2実施形態の炊飯器においては、炊飯動作が終了すると自動的に保温工程に移行するよう構成されている。
上記のように、第2実施の形態の炊飯器において、炊飯動作の進行状況に従って、送風装置12の駆動制御を行って送風量を調整し、排気口16から排気される蒸気温度を適切に低温化することができるとともに、蒸らし工程において循環ポンプ13をパターン制御することにより、鍋内の米粒の乾燥を防止しつつ、米粒を所望の温度に加熱することにより、高い炊飯性能を保有する炊飯器となる。
また、蒸らし工程においては送風装置12及び循環ポンプ13が間欠駆動されるパターン4で駆動制御されるため、この蒸らし工程において送風装置12及び循環ポンプ13を実質的に同時に駆動することが可能となる。この蒸らし工程においては、排気温度冷却部の送風装置12の電動機及び蒸気循環強制部の循環ポンプ13の電動機が実質的に同時に駆動されているが、そのときの各電動機に対するオンオフ通電時間が交互になっているため、直流電源形成部28が形成する直流電源の電力容量は、それぞれの電動機を同時にオン通電したときの総合消費電力より低く設定されている。
次に、第2実施形態の炊飯器における上記の炊飯動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。図11及び図12は、第2実施形態の炊飯器の炊飯動作を示すフローチャートである。図11は前炊き工程から昇温工程までを示しており、図12は沸騰維持工程から炊飯動作終了までを示している。
まず、使用者により、鍋内に米と水がセットされ、炊飯メニューが選択されて、炊飯設定が実行される(ステップ201)。使用者が炊飯開始ボタンを押圧すると炊飯動作が開始する(ステップ202)。
炊飯動作が開始すると、加熱部である鍋加熱部4が駆動され(オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図9参照)、前炊き工程が開始される(ステップ203)。第2実施形態の炊飯器において、鍋加熱部4は同様のオンオフデューティサイクルで駆動制御されている。このとき、前炊き工程の経過時間が計測され(ステップ204)、前炊き工程の時間が予め設定されている所定時間(例えば25分)を経過すると昇温工程に移行する(ステップ205)。ステップ205において前炊き工程が所定時間を経過する前は送風装置12及び循環ポンプ13がパターン1で駆動される(ステップ206)。即ち、送風装置12のみが5秒間オン状態の間欠状態で駆動される。このとき、前炊き工程における鍋温度が計測されており、鍋温度が60℃を超えたことを検知したとき(ステップ207)、鍋加熱部4の駆動が停止される(ステップ208)。
上記のように前炊き工程が所定時間を経過すると昇温工程に移行して、再び鍋加熱部4が駆動される(ステップ209:オンデューティ比100%の加熱動作:図9参照)。このとき、送風装置12及び循環ポンプ13がパターン2で駆動される(ステップ210)。即ち、送風装置12のみが6秒間オン状態で間欠駆動される。ステップ211において、鍋温度が100℃を超えたことを検知したとき、沸騰維持工程へ移行する。昇温工程においては、鍋温度が100℃を超えるまで加熱動作及び送風動作(パターン2)が継続される。
図12に示すように、沸騰維持工程においては、加熱部である鍋加熱部4及び内蓋加熱部10が駆動され(ステップ212:オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図9参照)、送風装置12及び循環ポンプ13がパターン3で駆動される(ステップ213)。即ち、送風装置12のみが7秒間オン状態で間欠駆動される。このとき、沸騰維持工程における鍋温度が計測されており、鍋温度が136℃を超えたことを検知したとき(ステップ214)、蒸らし工程へ移行する。沸騰維持工程においては、鍋温度が136℃を超えるまで加熱動作及び送風動作(パターン3)が継続される。
蒸らし工程においては、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10が駆動(オンオフオンデューティ制御の加熱動作:図9参照)され(ステップ215)、送風装置12及び循環ポンプ13がパターン4で駆動される(ステップ216)。即ち、送風装置12及び循環ポンプ13が、4秒間(実質3.8秒)オン状態で交互に駆動される。このとき、蒸らし工程の経過時間が計測される(ステップ217)。蒸らし工程が所定の時間、例えば13分を経過したとき、当該炊飯動作は終了する(ステップ219)。蒸らし工程においては、排気温度が検知されている(ステップ220)。ステップ221において、排気温度が55℃以上か否かが判断される。排気温度が55℃未満であれば、送風装置12及び循環ポンプ13がパターン4で駆動される(ステップ222)。この状態において、鍋温度が100℃以上となったことを検知したとき(ステップ223)、加熱部の駆動が停止されて(ステップ224)、ステップ217以降の蒸らし工程が実行される。鍋温度が100℃未満であれば、そのままの状態でステップ217以降の蒸らし工程が実行される。そして、蒸らし工程が所定時間、例えば13分間経過したとき、炊飯動作は終了する(ステップ219)。
一方、ステップ221において排気温度が55℃以上であれば、送風装置12がパターン3で駆動される(ステップ225)。即ち、送風装置12のみが7秒間オン状態で間欠駆動される。この状態において、鍋温度が100℃以上となったことを検知したとき(ステップ226)、加熱部の駆動が停止されて(ステップ227)、ステップ217以降の蒸らし工程が実行される。鍋温度が100℃未満であれば、そのままの状態でステップ217以降の蒸らし工程が実行される。そして、蒸らし工程が所定時間、例えば13分間経過したとき、炊飯動作は終了する(ステップ219)。ここでは、蒸らし工程は、鍋3の温度が100℃以上か否かが判断され、100℃以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を制御する方式を記載したが、一定の時間加熱を停止する休止時間と、一定の時間鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を行う追炊き時間とを繰り返す方式としてもよい。
第2実施形態の炊飯器においては、炊飯動作中の前炊き工程で鍋内の温度を約60℃になるよう鍋底温度を検知して、加熱部を駆動制御している。従って、鍋内の温度は約60℃までしか上昇しないため、蒸気経路17から排出される蒸気はほとんどなく、蒸気の排気温度も約60℃であるため、送風装置12はパターン1の5秒間オン時間−3秒間オフ時間の繰り返しで、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
昇温工程においては、鍋内の水を沸騰させる工程であるため、昇温工程の途中で蒸気が発生するが、全体的には蒸気量は極少量であるため、送風装置12はパターン2の6秒間オン時間−2秒間オフ時間の繰り返し駆動で、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
沸騰維持工程においては、鍋内の水を沸騰させ、鍋内の水分を米粒に十分吸水させて、残りの余分な水分を蒸発させる工程であり、この沸騰維持工程中において多量の蒸気が発生する。従って、蒸気経路17からの蒸気は100℃で蒸気量も多量になるので、送風装置12はパターン3の7秒間オン時間−1秒間オフ時間の繰り返し駆動で、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
蒸らし工程では、余分な水分がない状態で米粒を加熱することで、米粒が吸水した水分を蒸発させて乾燥させている。この状態で炊飯器から排出される蒸気は、米粒が吸水した水分と、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気である。このとき、循環ポンプ13を動作させることにより、米粒から蒸発した水分を鍋内で循環させ、米粒を加熱しながら再度吸水させることができる。従って、外部に排出される蒸気は、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気であり、送風装置12の回転数を低下させても、排出される蒸気温度を十分に低温化することができる。このとき、送風装置12はパターン4の4秒間オン時間−4秒間オフ時間の繰り返しで駆動され、循環ポンプ13は同じくパターン4の4秒間オフ時間−4秒間オン時間の繰り返しで駆動されることにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
上記のように、第2実施形態の炊飯器においては、制御部14は、送風装置12及び循環ポンプ13のそれぞれに対してデューティー制御を行っている。送風装置12を駆動する工程において循環ポンプ13を駆動する場合には、送風装置12を駆動する時間比率(デューティー通電率)を下げて、送風装置12を駆動しないオフ時間に循環ポンプ13を駆動するよう構成されている。従って、第2実施形態の炊飯器においては、送風装置12及び循環ポンプ13に対して同時に電源を供給する駆動を行わないため、直流電力を供給する直流電源形成部は省電力化でコンパクト化することが可能となる。
上記のように、第2実施形態の炊飯器においては、炊飯動作の各工程において、送風装置12及び循環ポンプ13を予め設定した駆動パターンにより制御する構成であるため、各工程において送風装置12及び循環ポンプ13を容易に制御することが可能であり、且つ電源電力の容量を考慮した適切な駆動制御を行うことが可能となる。従って、第2実施形態の炊飯器においては、炊飯中に鍋内に生じる高温度の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成して、生成された過熱蒸気を鍋内に導いて炊飯性能を高めることと、炊飯器外部に排出される蒸気の低温化を図って安全性を高めることを同時に達成することができ、且つエネルギー効率を高めて省エネルギー化を図った炊飯器を提供することができる。
《第3実施形態》
以下、本発明に係る第3実施形態の炊飯器について説明する。第3実施形態の炊飯器において、前述の第1実施形態の炊飯器と異なる点は、直流電源形成部からの直流電源の電圧を変更する電源電圧変更部を設けたことと、送風装置及び循環ポンプの制御方法である。その他の点は前述の第1実施形態の炊飯器と同じであるため、第3実施形態の炊飯器においては、図1及び図2に示した炊飯器を参照し、第1実施形態の炊飯器と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は第1実施形態における説明を適用する。
図13は、第3実施形態の炊飯器の構成を示すブロック図である。図13に示すように、第3実施形態の炊飯器は、交流電源27からの電力が直流電源形成部28と加熱駆動部33に供給される。交流電源27からの電力は、直流電源形成部28において直流に変換されて電源電圧変更部31及び当該炊飯器における各要素を制御するマイクロコンピュータである制御部14等に対して所望の直流電圧を供給している。そして、電源電圧変更部31においては、所望の電源電圧を形成して、送風装置12を駆動する送風駆動部29、循環ポンプ13を駆動する循環ポンプ駆動部30に対して所望の直流電圧を供給している。
制御部14は、炊飯及び保温動作を制御する炊飯制御部24、送風装置12を駆動制御する送風制御部25、及び循環ポンプ13を駆動制御する循環ポンプ制御部26を含んでいる。また、制御部14の炊飯制御部24には、鍋温度センサ6、内蓋温度センサ11、排気温度センサ21等の温度検出部である各センサからの各種検出データが入力されて、炊飯プログラム及び保温プログラム等に従った炊飯動作が実行される。
送風制御部25からの制御信号は、送風駆動部29に入力されて、使用者が選択した炊飯メニューの炊飯プログラムに従った送風装置12に対する所望の駆動信号が形成される。また、循環ポンプ制御部26からの制御信号は、循環ポンプ駆動部30に入力されて、使用者が選択した炊飯メニューの炊飯プログラムに従った循環ポンプ13に対する所望の駆動信号が形成される。
以上のように、第3実施形態の炊飯器においては、直流電源形成部28からの直流電源の電圧を変更する電源電圧変更部31が設けられており、送風装置12及び循環ポンプ13に対する電源電圧が制御されるよう構成されている。
図14は、第3実施形態の炊飯器の炊飯動作における鍋3の温度変化、及び鍋加熱部4と送風装置12と循環ポンプ13の駆動状態を示す図である。図14に示す鍋3の温度変化は、鍋温度センサ6が検出した温度を示している。
第3実施形態の炊飯器においては、各工程において送風装置12及び循環ポンプ13の電源電圧の制御が行われている。
次に、第3実施形態の炊飯器における具体的な炊飯動作について説明する。
まず、使用者により、鍋内に米と水がセットされ、操作部22において炊飯メニューが選択されて、炊飯開始が指示されると、選択された炊飯メニューに応じた炊飯プログラムに従って当該炊飯器は炊飯動作を開始する。
炊飯動作が開始されると、前炊き工程が開始し、この前炊き工程において、炊飯制御部24は、鍋内の水の温度が米の糊化が始まる温度(約60℃)以上にならないように、鍋温度センサ6の検出温度に基づいて加熱部である鍋加熱部4の鍋加熱動作を制御する。このとき、炊飯制御部24は、鍋加熱部4のオンオフを繰り返すデューティー制御を行い、鍋3を間欠加熱して、鍋温度を一定温度に保つように制御している。このように制御された前炊き工程において、米の吸水が促進される。
前炊き工程において、送風装置12は12Vの電源電圧にて駆動され、循環ポンプ13は0Vの電源電圧であり、オフ状態である。このときに鍋内において発生する蒸気の温度は60℃以下であり、高温度ではなく、発生量も少ないため、送風装置12は12Vで駆動される。
前炊き工程の開始から予め設定された時間が経過すると、昇温工程に移行する。昇温工程においては、鍋3を加熱部である鍋加熱部4により一気に加熱して、鍋内の水を沸騰状態(約100℃)にする工程であるため、送風装置12は14Vで駆動される。このとき、循環ポンプ13はオフ状態である。なお、昇温工程においては蒸気の温度が徐々に高くなるため、昇温工程の後半においては、送風装置12の電源電圧を上昇させてもよい。
上記のように昇温工程を実行することにより、鍋温度センサ6の検知温度若しくは内蓋温度センサ11の検知温度(図示せず)が約100℃に到達すると、沸騰維持工程に移行する。沸騰維持工程は、米の澱粉を糊化させて、糊化度を50%〜60%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、炊飯制御部24は、鍋内の水の沸騰状態を維持するように、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10のオンオフを繰り返すデューティー制御を行い、鍋3及び内蓋9を間欠加熱する。
沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、約100℃の蒸気が大量に発生する。沸騰維持工程において発生した蒸気が鍋内に充満して、余分な蒸気が、蒸気排気口9aから蒸気経路17を通って送風経路18に流れ込む。送風装置12は最大入力電圧である16Vの電源電圧で駆動される。一方、循環ポンプ13の入力電圧は0Vであり、オフ状態である。このように送風装置12を駆動することにより、吸気口15から吸い込まれた外気が、送風経路18を通って排気口16に向けて送風される。一方、蒸気経路17から送風経路18に流れ込んだ高温度の蒸気は、送風装置12により吸い込まれた外気と送風経路18内で混合される。このように送風経路18における外気と蒸気との混合流体は、送風装置12の風力により、蓋本体2の後側に形成された排気口16から炊飯器外部へと排出される。
上記の沸騰維持工程を継続して実行することにより、鍋内の水がほとんど無くなり、鍋3の温度が水の沸点以上に上昇する。鍋温度センサ6は、鍋温度が水の沸点以上の特定温度(例えば約130℃)に到達したことを検知すると、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程は、予熱を利用して余分な水分を蒸発させ、米の糊化度を100%近くまで更に引き上げる工程である。この蒸らし工程において、炊飯制御部24は、鍋加熱部4及び内蓋加熱部10のオンオフを繰り返すデューティー制御を行い、鍋3の温度が100℃に維持されるように間欠加熱される。また、この蒸らし工程において、蒸気経路17から蒸気が排出されるので、炊飯制御部24は、送風装置12を10Vで駆動し、循環ポンプ13を20Vの入力電源で駆動する。
蒸らし工程では、鍋内で発生する蒸気は、予熱を利用して余分な水分を蒸発させているので、量も少ないために、送風装置12の駆動電圧は低く設定されている。ここでは、蒸らし工程は、鍋3の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を制御する方式を記載したが、一定の時間加熱を停止する休止時間と、一定の時間鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を行う追炊き時間とを繰り返す方式としてもよい。
上記のように、蒸らし工程において、上記のように排気温度冷却部の送風装置12が駆動制御されるとともに、蒸気循環強制部の循環ポンプ13が20Vで駆動されるため、内蓋9に形成された蒸気吸気口9bから、鍋内において発生した蒸気が吸気され、その吸気された蒸気が循環ポンプ13を含む蒸気循環経路32を介して再び内蓋9の上面に吐出される。このとき、内蓋9は内蓋加熱部10により加熱されて高温度となっているため、循環ポンプ13からの蒸気が加熱されて過熱蒸気となり内蓋9に形成された吐出口(図示省略)から鍋内に吐出される。このように過熱蒸気が蒸らし工程の鍋内の米に吐出されて、鍋内の米粒の乾燥を防止しつつ、米粒を所望の温度に加熱することにより、高い炊飯性能を保有する炊飯器となる。
上記のように、蒸らし工程においては、排気温度冷却部の送風装置12の電動機及び蒸気循環強制部の循環ポンプ13の電動機を同時駆動しているが、それぞれの電動機の総合消費電力は直流電源形成部28が形成する直流電源の電力容量以下となるよう、それぞれの電動機に対する印加電圧が制御されている。
蒸らし工程の開始から予め設定された時間が経過すると、蒸らし工程が終了し、全ての炊飯動作が終了する。第3実施形態の炊飯器においては、炊飯動作が終了すると自動的に保温工程に移行するよう構成されている。
上記のように、第3実施の形態の炊飯器において、炊飯動作の各工程に従って、送風装置12の駆動制御を行って送風量を調整し、排気口16から排気される蒸気温度を適切に低温化することができるとともに、蒸らし工程において循環ポンプ13を駆動することにより、鍋内の米粒の乾燥を防止しつつ、米粒を所望の温度に加熱することにより、優れた食味を形成する高い炊飯性能を有する炊飯器となる。
また、蒸らし工程においては送風装置12及び循環ポンプ13のそれぞれの入力電源電圧が制御され、送風装置12の入力電源電圧を低下させることで消費電流を下げているため、直流電源形成部28が形成する直流電源の電力容量は、それぞれの電動機を同時にオン通電したときの総合消費電力より低く設定することができ、この蒸らし工程において送風装置12及び循環ポンプ13を同時に駆動することが可能となる。
次に、第3実施形態の炊飯器における上記の炊飯動作についてフローチャートを参照しつつ説明する。図15及び図16は、第3実施形態の炊飯器の炊飯動作を示すフローチャートである。図15は前炊き工程から昇温工程までを示しており、図16は沸騰維持工程から炊飯動作終了までを示している。
まず、使用者により、鍋内に米と水がセットされ、炊飯メニューが選択されて、炊飯設定が実行される(ステップ301)。使用者が炊飯開始ボタンを押圧すると炊飯動作が開始する(ステップ302)。
炊飯動作が開始すると、加熱部である鍋加熱部4が駆動され(オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図14参照)、前炊き工程が開始される(ステップ303)。第3実施形態の炊飯器において、鍋加熱部4は同様のオンオフデューティサイクルで駆動制御されている。このとき、前炊き工程の経過時間が計測され(ステップ304)、前炊き工程の経過時間が予め設定されている所定時間(例えば25分)を経過したか否かが判定される(ステップ305)。前炊き工程の経過時間が所定時間を経過すると昇温工程に移行する。ステップ305において、前炊き工程が所定時間を経過する前は、電源電圧変更部31からの電源(12V)が送風装置12に入力される。このとき、循環ポンプ13の入力電源は0Vである(ステップ306)。このとき、前炊き工程における鍋温度が計測されており、鍋温度が60℃を超えたことを検知したとき(ステップ307)、加熱部である鍋加熱部4の駆動が停止される(ステップ308)。
上記のように前炊き工程が所定時間を経過すると昇温工程に移行して、再び鍋加熱部4が駆動される(ステップ309:オンデューティ比100%の加熱動作:図14参照)。このとき、電源電圧変更部31から送風装置12への入力電源が14Vに変更される(ステップ310)。このとき、送風装置12のみが駆動され、循環ポンプ13の入力電源は0Vのままである。ステップ311において、鍋温度が100℃を超えたことを検知したとき、沸騰維持工程へ移行する。昇温工程においては、鍋温度が100℃を超えるまで加熱動作及び送風動作が継続される。
図16に示すように、沸騰維持工程においては、加熱部である鍋加熱部4及び内蓋加熱部10が駆動される(ステップ312:オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図14参照)。このとき、電源電圧変更部31から送風装置12への入力電源が16Vに変更される(ステップ313)。このときにおいても、送風装置12のみが駆動され、循環ポンプ13の入力電源は0Vのままである。沸騰維持工程において、鍋温度が計測されており、鍋温度が136℃を超えたことを検知したとき(ステップ314)、蒸らし工程へ移行する。沸騰維持工程においては、鍋温度が136℃を超えるまで加熱動作及び送風動作が継続される。
蒸らし工程においては、加熱部である鍋加熱部4及び内蓋加熱部10が駆動される(ステップ315:オンオフオンデューティサイクルの加熱動作:図14参照)。また、蒸らし工程において、送風装置12は10Vで駆動され、循環ポンプ13は20Vで駆動される(ステップ316)。即ち、送風装置12の送風能力が弱められて、循環ポンプ13がオン状態となる。このとき、蒸らし工程の経過時間が計測される(ステップ317)。蒸らし工程が所定の時間、例えば13分を経過したとき、当該炊飯動作は終了する(ステップ319)。蒸らし工程においては、排気温度が検知されている(ステップ320)。ステップ321において、排気温度が55℃以上か否かが判断される。排気温度が55℃未満であれば、送風装置12及び循環ポンプ13はそのままの状態で駆動される。即ち、送風装置12は10Vで駆動され、循環ポンプ13は20Vで駆動される(ステップ322)。この状態において、鍋温度が100℃以上となったことを検知したとき(ステップ323)、加熱部の駆動が停止されて(ステップ324)、ステップ317以降の蒸らし工程が実行される。鍋温度が100℃未満であれば、そのままの状態でステップ317以降の蒸らし工程が実行される。そして、蒸らし工程が所定時間、例えば13分間経過したとき、炊飯動作は終了する(ステップ319)。
一方、ステップ321において排気温度が55℃以上であれば、送風装置12が16Vで駆動され、循環ポンプ13には0Vが入力される(ステップ325)。即ち、送風装置12のみが最大風量で駆動される。この状態において、鍋温度が100℃以上となったことを検知したとき(ステップ326)、加熱部の駆動が停止されて(ステップ327)、ステップ317以降の蒸らし工程が実行される。鍋温度が100℃未満であれば、そのままの状態でステップ317以降の蒸らし工程が実行される。そして、蒸らし工程が所定時間、例えば13分間経過したとき、炊飯動作は終了する(ステップ319)。ここでは、蒸らし工程は、鍋3の温度が100℃以上か否かが判断され、100℃以下に下がる毎に、鍋3を加熱するように鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を制御する方式を記載したが、一定の時間加熱を停止する休止時間と、一定の時間鍋加熱部4及び内蓋加熱部10の加熱動作を行う追炊き時間とを繰り返す方式としてもよい。
第3実施形態の炊飯器においては、炊飯動作中の前炊き工程で鍋内の温度が約60℃になるよう鍋底温度を検知して、加熱部を駆動している。従って、鍋内の温度は約60℃までしか上昇しないため、蒸気経路17から排出される蒸気はほとんどなく、蒸気の排気温度も約60℃であるため、送風装置12を12Vで駆動することにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
昇温工程においては、鍋内の水を沸騰させる工程であるため、昇温工程の途中で蒸気が発生し、このときの蒸気温度は100℃である。しかし、この工程における全体的には蒸気量は極少量であるため、送風装置12が駆動電圧14Vで駆動されることにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
沸騰維持工程においては、鍋内の水を沸騰させ、鍋内の水分を米粒に十分吸水させて、残りの余分な水分を蒸発させる工程であり、この沸騰維持工程中において多量の蒸気が発生する。従って、蒸気経路17からの蒸気は100℃で蒸気量も多量になるため、送風装置12を駆動電圧16Vで駆動することにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
蒸らし工程では、余分な水分がない状態で米粒を加熱することで、米粒が吸水した水分を蒸発させて乾燥させている。この状態で炊飯器から排出される蒸気は、米粒が吸水した水分と、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気である。このとき、循環ポンプ13を動作させることにより、米粒から蒸発した水分を鍋内で循環させ、米粒を加熱しながら再度吸水させることができる。従って、外部に排出される蒸気は、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気であり、送風装置12の回転数を低下させても、排出される蒸気温度を十分に低温化することができる。ことのき、送風装置12は駆動電圧10Vで駆動され、循環ポンプ13は定格電圧20Vの駆動電圧で駆動されることにより、排気口16から排出される蒸気の排気温度を50℃以下に低下させることができる。
第3実施形態の炊飯器においては、直流電源形成部28の出力に接続された電源電圧変更部31を設けて、送風装置12及び循環ポンプ13へ供給される電源電圧を変更可能に構成されている。また、制御部14は、送風装置12を駆動する工程において、循環ポンプ13を駆動する場合、電源電圧変更部31における送風装置12への出力電圧を低下させている。このように構成された第3実施形態の炊飯器においては、送風装置12と循環ポンプ13を同時駆動するとき、送風装置12を駆動する電源電圧を低下させることにより、直流電源で動作する電動機の消費電流を低減させて、送風装置12及び循環ポンプ13を同時駆動しても駆動する電源回路は省電力化でコンパクト化することが可能な構成となる。
なお、第3実施形態の炊飯器における送風装置12は、停止させることなく連続動作させているため、送風装置12の停止時から動作時に発生する動作音が使用者に対して不快感を与えるような気になる音源となることがない。また、循環ポンプ13は連続通電動作させることができるため、本来必要な排気循環能力で確実にポンプ動作させることができる。
第3実施形態の炊飯器は、炊飯動作の各工程において、排気温度冷却部の送風装置12の電動機及び蒸気循環強制部の循環ポンプ13の電動機が同時に駆動されたとしても、それぞれの電動機の総合消費電力は、直流電源形成部28が形成する直流電源の電力容量以下となるよう通電制御されている。
上記のように、第3実施形態の炊飯器においては、炊飯動作の各工程において、送風装置12及び循環ポンプ13への駆動電圧を制御する構成であるため、各工程において送風装置12及び循環ポンプ13を適切に制御することが可能である。従って、第3実施形態の炊飯器においては、炊飯中に鍋内に生じる高温度の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成して、生成された過熱蒸気を鍋内に導いて炊飯性能を高めることと、炊飯器外部に排出される蒸気の低温化を図って安全性を高めることを同時に達成することができ、且つエネルギー効率を高めて省エネルギー化を図った炊飯器を提供することができる。
以上にように、第1から第3実施形態の炊飯器においては、鍋温度を検知する温度検出部を備えており、制御部14が炊飯メニューに対応する炊飯プログラムと温度検出部により検知された温度情報とに基づいて、加熱部を駆動制御することにより、前炊き工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程等を含む炊飯動作を行っている。そして、当該炊飯器においては、排気温度冷却部の送風装置を少なくとも昇温工程、沸騰工程、及び蒸らし工程において駆動させており、かつ、蒸らし工程においては、蒸気循環強制部の循環ポンプを駆動させるよう構成されている。このように構成された第1から第3実施形態の炊飯器において、沸騰維持工程は、鍋内の水分が米粒に完全に吸水され、余分な水分を蒸発させる工程であり、余分な水分がなくなったことを、温度検出部が検知した鍋温度が一定温度以上になったことにより制御部が判断して、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程では、余分な水分がない状態で米粒を加熱することにより、米粒が吸水した水分を蒸発させて乾燥させている。この状態で当該炊飯器から排出される蒸気は、米粒が吸水した水分と、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気である。このときに、蒸気循環強制部を動作させることにより、米粒から蒸発した水分を鍋内で循環させ米粒に再度吸水させることが可能となる。従って、外部に排出される蒸気は、鍋内に残った余分な水分が蒸発した蒸気であり、送風装置の回転数を低下させても、排出される蒸気温度を十分に低温化することができる。
本発明の炊飯器においては、制御部が炊飯動作において排気温度冷却手段及び蒸気循環強制手段における各電動機に対してPWM制御、パターン制御、又は入力電力制御を行うよう構成されており、排気温度冷却手段の電動機及び蒸気循環強制手段の電動機を同時駆動するとき、各電動機の総合消費電力が直流電源形成部の直流電源の電力容量以下となるよう、それぞれの電動機に対する通電制御を行っている。このため、本発明の炊飯器においては、炊飯器外部に排出される蒸気の低温化を図って安全性を高めるとともに、炊飯中に鍋内に生じる蒸気を加熱して鍋内に導いて炊飯性能を高め、且つエネルギー効率を高めて省エネルギー化を達成することができる。
上記のように、本発明の炊飯器においては、炊飯動作の各工程において、排気温度冷却部の送風装置及び蒸気循環強制部の循環ポンプへの駆動電圧を制御する構成であるため、各工程において排気温度冷却部及び蒸気循環強制部を適切に、且つ確実に制御することが可能である。従って、本発明の炊飯器においては、炊飯器外部に排出される蒸気の低温化を図って安全性を高めること、炊飯中に鍋内に生じる高温度の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成して、生成された過熱蒸気を鍋内に導いて炊飯性能を高めることを同時に達成することができ、且つエネルギー効率を高めて省エネルギー化を図った炊飯器を提供することができる。