以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
この実施形態の椅子は、ロッキング時の背もたれ反力を適切に調整するための機能を備えたもので、基本構成は、図1に示すように脚羽根1に図示しない支柱を介して支持基部2を回転可能に支持させ、この支持基部2に座受3及び背支桿4を取り付けて、支持基部2と背支桿4の間に反力装置5を組み込むとともに、その反力を第1の反力調整機構(第1の調節部)6によって調整可能としたものである。
具体的に説明すると、支持基部2は、図1〜図3に示すように、底壁21の前後左右に前壁22、後壁23及び側壁24を一体に形成してなるダイキャスト製のもので、この支持基部2の後部内空に、左右の側壁24、24間に亘って後支軸25を架設し、この後支軸25の両端部に背支桿4の基端部41を一体回転可能に支持させている。
支持基部2の前部内空には、左右の側壁24、24間に亘って前支軸26が架設してあり、この前支軸26と背支桿2との間に、背支桿2の後傾動作に座受3を連動させるためのリンク機構7を構成している。リンク機構7は、基端71aを前記前支軸26の円柱部分に回転可能に枢着した第1リンク71と、この第1リンク71の先端部71b間に架設した遊動軸72に前端73aを枢結し後端73bを背支桿4の中間部に軸74を介して枢結した第2リンク73とを具備し、背支桿4の起立状態時(人が着座していない時)に図3に示すように第1リンク71にやや起立前傾姿勢を与え且つ第2リンク73に略水平姿勢を与えるとともに、図8に示すように背支桿4を後傾させた際に第2リンク73の後端を後下方に回動させ且つこの第2リンク73を介して第1リンク71をやや起立後傾姿勢にまで移行させて、第2リンク73に後方に沈み込んだ状態をとらせるようにしている。この第2リンク73の上部に座受3が形成されるため座はロッキング状態となる。
反力装置5は、弾性体51を主体として構成されるもので、この実施形態の弾性体51は図2及び図4等に示すように内筒51aと外筒51bの間にラバー等の弾性素材51cを介在させた構成からなり、内筒51aは前支軸26及び弾性素材51cの内層部とともに一体回転可能に構成され、外筒51bは弾性素材51cの外層部とともに一体回転可能に構成され、内層部と外層部の間で弾性素材51cがねじり変形可能とされる。本発明の一端側に相当する外筒51bを固定し、本発明の他端側に相当する内筒51aに前支軸26を介して回転力が加えられることにより、弾性素材51cに弾性変形が生じ、復帰トルクの元となるねじり弾性に基づく反発力が蓄積される。前支軸26の角柱部分には基端52cを一体回転可能に固定し先端52bをねじり方向と略直交する方向に延出させてなるアーム状の入出力部52が設けてあり、この入出力部52が延出方向と略直交する方向に移動することによって前支軸26に回転力が加えられる。一方、弾性体51と背支桿4との間で反発力の入出力を行なうために、背支桿4に関連づけて当該背支桿4の回動動作に伴って移動する軸状の作用部53を設け、その作用部53を前記入出力部52に係合させている。すなわち、背支桿4から作用部53を介して入力される操作力で入出力部52を回動させ、これにより弾性体51を弾性変形させつつ反発力を蓄勢するとともに、弾性体51が弾性変形に応じた反発力を入出力部52から作用部53を介して出力し、この反発力で背支桿4を起立方向に付勢するようにしている。
その際、作用部53と入出力部52との係合には、反発力を調整するために必要な構造が採り入れてある。具体的には、前記入出力部52に反発力が蓄勢または放出される方向(図3中矢印Z参照)と略直交する方向に長孔状の第2ガイド部52aを設け、この第2ガイド部52aに作用部53をスライド可能に係合させて、係合位置を前支軸26に近づけるほどモーメントの腕rが短くなって反発力が大きくなり(図9参照)、前支軸26から遠ざけるほどモーメントの腕rが長くなって反発力が小さくなる(図10参照)ように構成してある。
そして、第1の反力調整機構6を、図3に示す背支桿4の起立状態時に入出力部52の第2ガイド部52aに沿って作用部53を相対移動させ得るものとし、このとき弾性体51の弾性変形を生じることなく入出力部52上における作用部53の初期係合位置を連続的に変化させるようにしている。具体的には、図3、図5及び図6等に示すように、背支桿4とともに一体回転可能する後支軸25の円柱部分に回転体61を回転自在に設け、この回転体61から一対のリンク62を介して作用部53を持ち出すとともに、後支軸25に長孔状の第1ガイド部63aを有する駆動アーム63を一体回転可能に取り付け、その第1ガイド部63aに前記作用部53をスライド移動可能に係合させている。リンク62はアングル状のもので、基端を前記回転体61の後支軸25から変位した部位に当該後支軸25と平行な軸62aを介して枢着してあり、回転体61の位相が変化し、これによりリンク62の基端が移動すると、リンク62の先端部間に架設した前記作用部53が第1ガイド部63aに沿って移動する結果、作用部53の後支軸25からの距離が変化し、ひいては入出力部52の延出方向に沿った作用部53の初期係合位置が変化するようにしている。
そして、その後支軸25から作用部53までの距離を、図3、図6に示す操作部64を通じて調整し、図7に示す固定部65を通じて一定に保つようにしている。その前提として、前記回転体61を外周に歯を周回形成した平歯車状のものとし、この回転体61の外周に駆動歯車66を噛合させて、この駆動歯車66を操作軸66aに回転可能に軸着している。そして、この操作軸66aの外方端に設けたグリップ状の操作部64を回転操作することにより、駆動歯車66を介して回転体61を回転させ得るようにしている。
一方、固定部65は、図6及び図7に示すように、対をなす駆動アーム63の後端に設けた接続壁63xにガイド65dを介して進退可能に取り付けたストッパ65aと、このストッパ65aを付勢して当該ストッパ65aの前面に形成した歯を前記回転体61の外周に噛合させる付勢バネ65bとを備える。前述した操作部64による操作を可能とするためには、このストッパ65aの歯を回転体61の外周から離反させておく必要があるが、例えば操作部64とストッパ65aとの間をワイヤ伝達要素65cを介して接続しておき、操作部64を引くとワイヤ伝達要素65cのワイヤが牽引されて付勢バネ65bに抗しストッパ65aを後退させ得るように構成しておくとよい。
しかして、操作部64を引いた状態でこれを回転操作すると、操作軸66aを介して駆動歯車66が回転し、これと噛合する回転体61に回転変位が与えられてリンク62の枢着点62aが後支軸25の回りに回転する結果、作用部53が第1ガイド部63aに沿って移動する。そして、所要の位置で操作部64を押し込むか若しくは操作力を解除すると、ストッパ65aが付勢バネ65bに付勢されて前面の歯が回転体61の外周に噛合し、回転体61がストッパ65a、ガイド65d、接続壁63x及び駆動アーム63を介して後支軸25に一体回転可能に固定される。
回転体61が後支軸25に一体回転可能に固定されると、駆動アーム63も後支軸25に一体回転可能に固定されているため、基端側を回転体61に枢着し自由端側を作用部53を介して駆動アーム63の第1ガイド部63aに係合させているリンク62も後支軸25と一体的となり、後支軸25が回転するとこのリンク62も回転体61とともに一体回動し、背支桿4が傾動ても作用部53の後支軸25からの距離は一定に保たれることとなる。
この間、駆動歯車66と回転体61とは噛合したままなので、回転体61が後支軸25とともに一体回転する際、駆動歯車66は操作軸66a及び操作部64とともに空転しながら回転体61の回転を許容することとなる。
このようにして作用部53は、図8に示すように背支桿4とともに後支軸25の回りに軌跡P上を一体的に回転し、入出力部52(例えば先端)は前支軸26の回りに軌跡R上を回転することになる。
なお、図3に示す背支桿4の起立状態時には、入出力部52若しくは駆動アーム63の少なくとも一方に、例えば支持基部2に螺合させてなるボルト等の反力支持部材67を当接させて、背支桿4のそれ以上の前傾動作を禁止すると同時に作用部53に反発力が作用しないようにしてある。また、このとき図5に示すように第1ガイド部63aと第2ガイド部52aが平行であるように設定して、回転体61が回転した際、作用部53をスムーズに両ガイド部63a、52aに沿ってスライド移動させ、弾性体51に弾性変形が引き起こされないようにしている。
またこの実施形態は、図3、図11等に示すように、弾性体51の一端側の固定位置を当該弾性体51のねじり方向に可変とする第2の反力調整機構8を設けている。この第2の反力調整機構8は、弾性体51の一端側に相当する外筒51bに受圧突起51b1を設け、この受圧突起51b1に支持基部2の底壁21に螺合させたボルト状の調節部材81を当接させてこれを固定し、且つこの調節部材81を螺進退操作することによって内筒51aに対する外筒51bの初期位相、したがって初期捩り量を調整できるようにしたものである。
以上の構成を反力調整時における操作力の観点から見ると、かかる構成は操作力軽減効果をもたらす構成と言える。すなわち、図3に示したように背支桿4の起立状態時に弾性体51の弾性変形を生じることなく、換言すれば弾性体51を捩ることなく、入出力部52上における作用部53の初期係合位置を可変とするので、図17(A)a1のように反力調整につれて操作力が大きくなる従来のものとは異なり、操作力は同図a2のように略一定となる。しかも、反力装置5の反発力を反力支持部材67により受け止めた状態で入出力部52上における作用部53の初期係合位置を可変とするので、リンク62や回転体61ひいては操作部6に反発力が及ぶことがなく、調整に必要な操作力は終始僅かなもので足りる。そして、入出力部52上における作用部53の係合位置が異なると、図9及び図10に示すように背支桿4の傾動角度が同じでもモーメントの腕の長さrに応じて作用部53を介し図17(B)b1〜b3のように蓄勢または放出される反発力の大きさが異なる値をとるので(正確には弾性変位量(角度)φも変わるので各曲線b1〜b3は実際には同図b4のような形になるが、これについては後述する)、僅かな操作力を通じて背もたれ反力の強弱調整を適切に行い得るものとなる。
また、上記の構成を反力特性の観点から見ると、かかる構成は背支桿4の傾動に伴って漸次反力増大の割合を減じる反力緩和特性をもたらす構成と言える。すなわち、背支桿4の傾動に伴って作用部53が図8に示すように後支軸25回りに軌跡P上を移動し、入出力部52(例えば先端)が前支軸26回りに軌跡R上を移動する結果、入出力部52と作用部53とが背支桿4の傾動に伴って異なる方向に移動することとなる。すなわち、反力装置5が、仮に図28に示すように作用部aの係合位置を一旦決めればその作用部aを入出力部b上で移動させることなく当該入出力部bとともに背支桿cの支軸d回りを回転するようなものであれば、背支桿の傾動角度に略比例して図17(B)b1のように背もたれ反力が大きくなるが、本実施形態では図4や図5に示すように背支桿4の傾動に伴って入出力部52上における作用部53の係合位置も変化するので、図17(B)において弾性変位(反力)が本来辿るb1の履歴よりも漸次減少方向に緩やかにカーブしたb4のごとき履歴を辿ることになる。このように、ロッキングの後半で反力が緩和されるため、体重を載せるように無理に背もたれに凭れずともスムーズなロッキング動作を行えるものとなる。
ところで、反力調整機構7による作用部53の初期係合位置が異なると、その後の背支桿4の傾動に伴う作用部53の係合位置もずれてくるため、背支桿4の傾動角度と作用部53の係合位置とにより規定される弾性体の変位(背もたれ反力)が図17(C)c1〜c3のように変化する。したがって、背支桿4を後傾させた際にc3のごとく後半で反力緩和作用が得たいのかc2或いはc1のように中盤ないし前半から反力緩和作用が得たいのか等を適宜調整することが可能となる。但し、このような調整を行うと初期反力も変化するので、この実施形態に備わる第2の反力調整機構8を利用して更に反力特性を調整することができる。すなわち、この第2の反力調整機構8は、図18(A)のように特性曲線を上下に平行移動させて初期反力を変化させることができるので、これら両反力調整機構7、8の調節機能を組み合わせれば、図18(B)に示すように初期反力が同じでもその後の背もたれ反力が辿る履歴が異なるといった種々の特性等も有効に追求することができるようになる。
さらに、上記の構成を調節レンジの観点から見ると、かかる構成は僅かな操作で反力を大幅に変化させるワイドレンジ調整機能をもたらす構成と言える。すなわち、本実施形態に係る第1の反力調整機構7により作用部53を図10に示すように入出力部52の先端に向かう方向に調整した際は、バネトルクのトルクアームが大きくなって作用部53における弾性体51の反発力が小さくなり、同時に負荷トルクのトルクアームが小さくなって作用部53に受力体である背支桿4から作用する力が大きくなる結果、背凭れ荷重に対して弾性体が相乗的に弾性変形し易くなる。見方を変えれば、蓄勢または放出される反発力が小さく(つまりモーメントの腕r2が長く)且つ受力体である背支桿の移動量(kθ)に対して弾性変位量(角度)φ2が小さくなることで、弾性体51の反発力の蓄勢が減って低負荷の受力に適した状態(低負荷受力状態)となる。逆に、作用部53を図9に示すように入出力部52の基端に向かう方向に調整した際は、バネトルクのトルクアームが小さくなって作用部53における弾性体の反発力が大きくなり、同時に負荷トルクのトルクアームが大きくなって作用部53に受力体である背支桿4から作用する力が小さくなる結果、背凭れ荷重に対して弾性体51が相乗的に弾性変形し難くなる。見方を変えれば、蓄勢または放出される反発力が大きく(つまりモーメントの腕r1が短く)且つ背支桿4の同じ移動量kθに対して弾性変位量(角度)φ1が大きくなることで、反発力の蓄勢が増えて高負荷の受力に適した状態(高負荷受力状態)となる。したがって、外部負荷が小さい場合に低負荷受力状態とし、外部負荷が大きい場合に高負荷受力状態とすることで、外部負荷が異なっても背支桿4をほぼ同じ位置に静止させることになり、着座者の体格によらずに背支桿4を同等に傾動させて荷重を有効に支持することが可能となる。しかも、バネのトルクアームのみが変化する場合や負荷トルクのトルクアームのみが変化する場合に比べると、本実施形態はこれらを連動変化させることで、僅かな調節量でも反力の強弱調整の効果が掛け算的に倍増して、ワイドレンジに反力調整が行えるものとなる。図18(C)を見ても明らかなように、φが一定でrを変化させる場合と、φ及びrともに変化させる場合とで反力調整の大きさに顕著な差が生じるものである。
特に、本実施形態は第2の反力調整機構8を設けており、必要であれば初期反力を更に調整することができるので、第1の反力調整機構7による調節レンジを超えてさらに広いレンジで反力調整を行うことが可能となる。
以下、上記実施形態の変形例1について説明する。
図12に示す変形例は、前記実施形態のように回転体及びリンクを介して作用部を持ち出すのではなく、第1ガイド部63a及び第2ガイド部52aに沿って移動可能に設けた固定部165に作用部53を付帯させ、その固定部165を、初期係合位置において第1ガイド部63aが設けられている駆動アーム63に固定し得るようにしたものである。
このものも、入出力部52が弾性体51より捩り方向と直交する方向に延出しており、作用部53の係合位置に応じ当該作用部53を介して蓄勢または放出される反発力が異なってくるものである。また、背支桿4の起立状態時に両ガイド部63a、52aが平行をなすように設定してあり、作用部53を軸状にして両ガイド部63a、52aに貫通させている点も同様である。
一方、固定部165は一対の駆動アーム63の外側に配置した挟持板165aに作用部53を貫通させ、下端側に垂下させたグリップ状の操作部164を操作することで両ガイド部63a、53aに沿って作用部53を移動操作できるとともに、所定位置で操作部164を操作することで、挟持板165a、165a間に駆動アーム63を締め付けて作用部63を駆動アーム63に対して所望の初期係合位置に固定できるようにしている。
なお、背支桿4の起立状態時には同図(b)に示すように操作部164を座カバー20よりも下方に突出するように構成することにより、手動操作タイプのものであっても操作の便は簡単に確保されることとなる。
このように構成しても、背支桿4の起立状態時に弾性体51を弾性変位させることがないので、一定の操作力で反力調整を行なうことが可能となる。また背支桿4の傾動に伴って入出力部52と作用部53とが互いに異なる方向に移動し、具体的には入出力部52に対する作用部53の係合位置が徐々に当該入出力部52の延出方向に移動していくため、傾動に伴う反力緩和特性も得ることができる。さらに、作用部53の初期係合位置を入出力部52の基端側に近づけるほどバネトルクのトルクアームが小さくかつ負荷トルクのトルクアームが大きくなり(弾性体51を捩る際のモーメントの腕が短くかつ同じ背支桿4の傾動角度に対して弾性体51の弾性変位量(角度)が大きくなり)、逆に入出力部52の先端側に位置づけるほどバネトルクのトルクアームが大きくかつ負荷トルクのトルクアームが小さくなるので(弾性体51を捩る際のモーメントの腕が長くかつ同じ背支桿4の傾動角度に対して弾性体51の弾性変位量(角度)が小さくなる)ので、ワイドレンジ調整機能も備わることとなる。
そして、何よりも前記実施形態に比べて構造簡素なものとなり、コンパクトに構成できてコストダウンの効果も期待できるものとなる。
勿論、駆動アーム63の両側に入出力部52を一対に設け、この入出力部52に固定部165を取り付けるように構成することを妨げるものではない。
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。
図13に示すものは、弾性体51を座の後端側に設けた後支軸125に取り付け、この弾性体51から前方に向けて捩り方向と直交するように入出力部52を延出させるとともに、背支桿4の基端をこの弾性体51を通過して座の前端側に設けた前支軸126に取り付けている。そして、背支桿4それ自体に設けた第1ガイド部63axに沿って軸状の作用部53をスライド移動可能に構成するとともに、その作用部53を、入出力部52に設けられて背支桿4の起立状態時に前記第1ガイド部63axと略平行をなす第2ガイド部52axにスライド可能に係合させるようにしている。作用部53を固定するために、例えば背支桿4にボルト及びナットからなる操作部を兼ねた固定部165xを設け、この固定部165xにより作用部53を背支桿4に固定して、入出力部52に対する作用部53の初期係合位置を決定するようにしている。
このように構成しても、前記変形例1と全く同等の作用効果を奏するものであり、しかも背支桿4それ自体を駆動アームとして用いることができるため、更なる構造の簡素化を図ることが可能となる。
さらに、上記実施形態の変形例3について説明する。
図14〜図16に示す変形例は、上記実施形態の構成を若干変更するだけで、反力の大きさを体感しながら正確に反力調整を行うための第1の反力調整機構106を実現するようにしたものである。なお、図14〜図16において上記第1実施形態と共通する部分には必要に応じて同一符号を付し、特に説明を要しない部分についてはその説明を省略する。
この第1の反力調整機構106は、背支桿4の後支軸25回りに回転可能に設けた回転体61からリンク62を介して作用部53を持ち出し、その作用部53を背支桿4と一体的に回転する駆動アーム63の第1ガイド部63aに沿ってスライド移動可能とすることで背支桿4の支軸25から作用部53までの距離を変化させて入出力部52に対する作用部53の係合位置を可変とする点において上記実施形態と同様である。但し、その作用部53がスライド可能に係合する先の入出力部52の第2ガイド部152aは、上記実施形態のように背支桿4の起立状態時に第1ガイド部63aと平行をなすものではなく、第1ガイド部63aに対して所定角度αをなす方向にガイド方向がずらしてある。
図5の構成は第1ガイド部63aと第2ガイド部52aが平行なため、作用部53が移動しても弾性体51に変位(圧縮)が生じることはなかったが、図14〜図16の構成は第1ガイド部63aと第2ガイド部152aが非平行であり、第2ガイド部152aが背支桿4の起立状態時に反発力の蓄勢または放出される方向(図16における矢印Z方向)と直交する方向に対して所定角度αをなす方向に作用部53をスライドさせるため、例えば作用部53を図14及び図15に矢印で示すように背もたれ反力が増大する方向(入出力部52の基端側)へ移動させて初期係合位置を変化させると、入出力部52を介して弾性体51が圧縮方向に徐々に微小変位することとなる。この反発力は回転体61及び駆動歯車66を介して図6及び図7に示した操作部64に負荷トルクとして伝わるため、操作者は背もたれ反力に比例した操作力を体感しながら操作を行なうことになり、的確な調整が行えるものとなる。しかも、反力支持部材67を入出力部52又は駆動アーム63の少なくとも一方に当接させて反力を受け止めた状態にすれば、コイルスプリングのリテーナを直接圧縮方向に操作するときのような大きな操作力を受けずに済むので、依然として操作力を大幅に軽減した状態を維持できることとなる。
次に、上記第1実施形態と種類の異なる弾性体を反力装置105に用いた第2実施形態を、図19〜図21を参照して説明する。なお、図19〜図21において上記実施形態と共通する部分には必要に応じて同一符号を付し、特に説明を要しない部分についてはその説明を省略する。
この実施形態の反力装置105は、一端側151aを固定板150を用いて支持基部2に固定し他端側151bを自由端とした板バネ状の弾性体151を用いたもので、この弾性体151の一端側151aの近傍を後述する押圧部材281により押圧して他端側151bを所定角度で延出させており、その他端側151bに外力を加えることで図19に矢印で示す厚み方向に撓み変形を引き起こすものである。そして、その弾性体151の撓み方向と略直交する面(弾性体151の下面)を入出力部152として利用し、背支桿4とともに回転する作用部53をその入出力部152に係合させている。入出力部152が前記実施形態のように長孔状をなしていないため、係合は単に添接するだけであり、本発明に言う第2ガイド部は、この場合入出力部152そのものとなる。この構造では、弾性体151の延出角度が深くなるほど入出力部152が作用部53に強く押し付けられて、当該入出力部152から作用部53を介して蓄勢または放出される反発力が大きくなる。
第1の反力調整機構206は、前記第1実施形態と同様の操作部を通じて操作することで、駆動歯車66を回転させ、これにより回転体61の位相を変化させて、この回転体61に軸62aを介して取り付けたリンク62の先端を後支軸25とともに一体回転する駆動アーム63の第1ガイド部63aに作用部53を介しスライドさせて、背支桿4の起立状態時における作用部53の初期係合位置を調整し得るようにしたものである。そして、前記実施形態と同様の固定部により、背支桿4が傾動した際に後支軸25から作用部53までの距離を一定に保つようにしている。
また、この実施形態も弾性体151の初期反力を調整する第2の反力調整機構(第2の調節部)208を設けている。この第2の反力調整機構は、前記固定板150に押圧部材281を螺合させ、その螺合位置に応じて弾性体151の他端側151bの延出角度を変化させて、作用部53との係合深さを弾性体151の撓み方向に可変とし、初期反力を調整し得るようにしたものである。
このような構成も、背支桿4の起立状態時に反力調整機構206がその撓み方向と略直交する方向に沿って入出力部152に対する作用部53の初期係合位置を相対的に可変とすることから、調整時に弾性体151を殆ど撓み変形させることがなく、反発力の影響を排除して略一定の操作力を確保し得る。特に、前記実施形態と同様の反力支持部材67によって駆動アーム63を支持するようにすれば、その操作力が僅かなもので足りる点も同様である。
また、このものも、背支桿4が後傾するに伴って作用部53が図21に示す後支軸25を中心とする円P上を移動するのに対して、入出力部152は押圧部材281で押圧された弾性体151の押圧点Xを中心とする円R上を移動し、これらの移動方向が異なるので、背支桿4を後傾させた際に作用部53が入出力部152の先端側に徐々に変位して反力緩和特性が得られることとなる。
さらに、作用部53を入出力部52の先端に向かう方向に調整した図21の状態では、図5及び図6と同様、蓄勢または放出される反発力が小さく(つまりモーメントの腕rが長く)且つ受力体である背支桿の移動量(kθ)に対して負荷トルクのトルクアームが小さくなることで、弾性体51の反発力の蓄勢が減って低負荷の受力に適した状態(低負荷受力状態)となり、逆に作用部53を図19の想像線で示すように入出力部52の基端に向かう方向に調整した際は、蓄勢または放出される反発力が大きく(つまりバネトルクのトルクアーム即ちモーメントの腕rが短く)且つ背支桿4の同じ移動量kθに対して負荷トルクのトルクアームが大きくなることで、反発力の蓄勢が増えて高負荷の受力に適した状態(高負荷受力状態)となるので、第1実施形態と同様のワイドレンジ調節機能も備わることとなる。
なお、この実施形態も、背支桿4の起立状態時に反力調整機構206がその撓み方向と略直交する方向に対して所定角度をなす方向に作用部53を相対移動させるように構成すれば、弾性体151を微小変位させて反力の体感できる操作性を実現することができる。
更に、上記第1実施形態と種類の異なる弾性体を反力装置205に用いた第3実施形態を、図22及び図23を参照して説明する。なお、図22及び図23において上記実施形態と共通する部分には必要に応じて同一符号を付し、特に説明を要しない部分についてはその説明を省略する。
この実施形態に係る第1の反力調整機構306は、背支桿4の後支軸25の回りに回転可能に設けた回転体61からリンク62を介して作用部53を持ち出し、その作用部53を背支桿4と一体的に回転する駆動アーム63の第1ガイド部63aに沿ってスライド移動可能とすることで入出力部52に対する作用部53の初期係合位置を可変とする点において、上記第1実施形態と同様である。また、その作用部53がスライド可能に係合する先の入出力部52が前支軸26に回転可能に支持されている点、その入出力部52の第2ガイド部52aが背支桿4の起立状態時に第1ガイド部63aと平行をなす点、背支桿4が傾動した際に後支軸25から作用部53までの距離を一定に保つ点も上記第1実施形態と同様である。
但し、この実施形態は、圧縮バネタイプの弾性体251を用いて反力装置205を構成している点が前記第1実施形態とは構成上異なる。この弾性体251は、一端側251aを固定し他端側251bに圧縮力を加えることで反発力を蓄勢するもので、その他端側251bから伸縮方向と略直交する方向に入出力部52を延出させている。入出力部52は前支軸26に軸着され、この前支軸26の前端側に受圧突起252が一体に延出していて、この受圧突起252に弾性体251の他端側251bが弾接させてある。前支軸26回りの入出力部52の回転動作と弾性体251の伸縮動作とは連動し、弾性体251の圧縮量が大きいほど入出力部52から作用部53を介して蓄勢または放出される反発力が大きくなる。
また、この実施形態も、初期反力調整用の第2の反力調整機構(第2の調節部)308を設けている。この第2の反力調整機構308は、支持基部2に押圧部材381を螺合させ、その螺合位置に応じ弾性体251の一端側251aの固定位置を変更して、一端側251aと他端側251bとの間の圧縮量を可変とし、初期反力を調整し得るようにしたものである。
このような構成も、背支桿4の起立状態時に反力調整機構308が弾性体251の伸縮方向と略直交する方向に沿って入出力部52に対する作用部53の初期係合位置を相対的に可変とすることから、調整時に弾性体251を殆ど圧縮することがなく、反発力の影響を排除して一定の操作力で反力調整を行うことを可能ならしめる。このものも、前記実施形態と同様の反力支持部材67によって駆動アーム63を支持するようにすれば、その操作力は僅かなもので足りる点も上記実施形態と同様である。
また、背支桿4が後傾するに伴って作用部53が図23に示すように後支軸25を中心とする円P上を移動するのに対して、入出力部152は前支軸26を中心とする円R上を移動し、これらが異なる方向に移動するので、背支桿4を後傾させた際に作用部53が入出力部52の先端側に変位していって、途中から緩和特性が得られる点も第1実施形態と同様である。
さらに、作用部53を入出力部52の先端に向かう方向に調整した際は、図5及び図6と同様、蓄勢または放出される反発力が小さく(つまりバネトルクのトルクアーム即ちモーメントの腕rが長く)且つ受力体である背支桿の移動量(kθ)に対して負荷トルクのトルクアームが小さくなることで、弾性体51の反発力の蓄勢が減って低負荷の受力に適した状態(低負荷受力状態)となり、逆に作用部53を入出力部52の基端に向かう方向に調整した際は、蓄勢または放出される反発力が大きく(つまりバネトルクのトルクアーム即ちモーメントの腕rが短く)且つ背支桿4の同じ移動量kθに対して負荷トルクのトルクアームが大きくなることで、反発力の蓄勢が増えて高負荷の受力に適した状態(高負荷受力状態)となるので、第1実施形態と同様のワイドレンジ調節機能も備わることとなる。
なお、この実施形態も、背支桿4の起立状態時に反力調整機構306がその撓み方向と略直交する方向に対して所定角度をなす方向に作用部53を相対移動させるように構成すれば、弾性体251を微小変位させて反力の体感できる操作性を実現することができる。
さらにまた、本発明の第4実施形態を、図面を参照して説明する。
一方、図24〜図27に示す椅子は、反力装置405の入出力部452に対する背支桿4の作用部453の相対的な初期係合位置を可変とするための構造が上記各実施形態とは異なるものである。
すなわち、この椅子の反力調整機構406は、反力装置405を移動させることによって当該反力装置405を構成する入出力部452に対する背支桿4の作用部453の相対的な初期係合位置を可変とするものであり、反力装置405を固定した状態で当該作用部453を背支桿4とともに一体的に回動させ得るようにしている。
反力装置405は、第1実施形態と同様の弾性体51を用いたもので、この実施形態ではこれを逆に使って弾性体51の一端側に相当する内筒451aをケース410に固定し、他端側に相当する外筒451bから捩り方向と略直交する入出力部452を延出させている。ケース410は支持基部2に対して移動可能であり、入出力部452には長孔状のガイド部452が設けてある。一方、背支桿4は支持基部2に支軸425を介して回転可能に支持され、その支軸425の近傍に軸状の作用部453を設けて、この作用部453を前記入出力部452の第2ガイド部452aに相対スライド可能に係合させている。
そして、図25に示す背支桿4の起立状態時における反力装置405と背支桿4との相対移動方向を、作用部453とガイド部452aとの相対スライド方向に対して所定角度βをなすように設定している。このβを0にとれば反力装置405と背支桿4との相対移動方向を作用部453とガイド部452aとの相対スライド方向に対して平行に保つことができ、このβを0以外のある値にすることもできる。
βを0にとった場合には、背支桿4の起立状態時に反力調整機構406が弾性体51の捩り方向と略直交する方向に沿って入出力部452に対する作用部453の初期係合位置を相対的に可変とすることから、調整時に弾性体51を殆ど圧縮することがなく、反発力の影響を排除して一定の操作力で反力調整を行うことを可能ならしめる。
また、βを0以外の値とした場合には、背支桿4の起立状態時に反力調整機構406がその捩り方向と略直交する方向に対して所定角度βをなす方向に作用部453を相対移動させるので、弾性体51を微小変位させて反力の体感できる操作性を実現することができる。
そして、このものも、背支桿4が図25の状態から図27の状態に向かって後傾するに伴って作用部453が図27に示すように後支軸25を中心とする円P上を移動するのに対して、入出力部452は弾性体51の軸526を中心とする円R上を移動し、これらが異なる方向に移動するので、背支桿4を後傾させた際に作用部553が入出力部552の先端側に変位していって、途中から緩和特性が得られる点も第1実施形態と同様である。
さらに、作用部453を入出力部452の先端に向かう方向に調整した際は、図5及び図6と同様、蓄勢または放出される反発力が小さく(つまりバネトルクのトルクアーム即ちモーメントの腕rが長く)且つ受力体である背支桿の移動量(kθ)に対して負荷トルクのトルクアームが小さくなることで、弾性体51の反発力の蓄勢が減って低負荷の受力に適した状態(低負荷受力状態)となり、逆に作用部453を入出力部452の基端に向かう方向に調整した際は、蓄勢または放出される反発力が大きく(つまりバネトルクのトルクアーム即ちモーメントの腕rが短く)且つ背支桿4の同じ移動量kθに対して負荷トルクのトルクアームが大きくなることで、反発力の蓄勢が増えて高負荷の受力に適した状態(高負荷受力状態)となるので、第1実施形態と同様のワイドレンジ調節機能も備わることとなる。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、各部の構成は図示例に限定されるものではない。
例えば、本発明の反力装置は椅子以外にも、ショックアブソーバ機能を備えた荷受装置や計測装置など、種々の用途に適用することが可能である。
すなわち、受力体の一形態は背支桿以外にも外部負荷が作用する部分一般が考えられ、外部負荷は背もたれ荷重に限らず荷役荷重等があり、背支桿と弾性体の間の反発力の入出力は外部負荷と弾性体反力のバランスの維持若しくは崩壊によってもたらされるものである。そして、適用対象によっては外部負荷が入出力部を介して弾性体に作用する場合もあるが、直接作用する場合も考えられる。
このようなことを踏まえると、本発明の反力装置は、支軸回りに回転する受力体が受ける外部負荷を作用部を通じて弾性体に作用させ、受力体の移動に連動して弾性体に反発力を蓄勢させつつ外部負荷と反発力とがバランスした所で受力体を静止させる構造のものであって、
前記作用部を、その位置に応じて弾性体から当該作用部が受けるバネトルクのトルクアーム及び受力体から当該作用部に作用する負荷トルクのトルクアームが同時に変化するように可変に設けるとともに、この作用部の位置を可変とする調節部を有するものであれば、この調節部により、作用部の位置を変えることでバネトルクのトルクアームを大きくして作用部における弾性体の反発力を小さくすると同時に負荷トルクのトルクアームを小さくして作用部に受力体から作用する力を大きくすることで外部負荷に対して弾性体を相乗的に弾性変形させ易くする低負荷受力方向と、バネトルクのトルクアームを小さくして作用部における弾性体の反発力を大きくすると同時に負荷トルクのトルクアームを大きくして作用部に受力体から作用部する力を小さくすることで外部負荷に対して弾性体を相乗的に弾性変形させ難くする高負荷受力方向とに調節可能とすることで、僅かな操作でワイドレンジに反力調節を行なうことが可能となる。
高負荷受力方向に調節しても高い操作力を要しないものにするためには、調節部が、外部負荷が作用しない状態で弾性体を弾性変形させることなく、入出力部上における作用部の初期係合位置を可変とするものであることが望ましい。弾性体を圧縮等せずに調整できるため、操作力を略一定に保つことができるからである。
勿論、作用部に現われる弾性体の初期反発力を受け止めた状態で操作を行い得るようにしておけば、操作力を僅かなもので済ませることができる。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば前記第1実施形態における固定部は、回転体を支軸に一体回転可能に固定することで作用部を支軸回りに回動させるようにしたが、他の固定部として、駆動歯車を固定することで回転体を静止状態に固定し、これにより作用部を枢着点回りに回動させるようにしてもよい。このようにしても、調整した初期係合位置で背支桿の支軸から作用部までの距離を一定範囲に保って当該作用部を背支桿に連動して移動させることができるからである。
また、入出力部は弾性体の弾性変形方向と直交ないし略直交していることが本発明の作用効果を最もよく引き出す構造となるが、少なくとも交叉していれば本発明の基本的作用効果は奏されるものである。