以下、本発明の実施の形態に係るステアバイワイヤシステムを図面を参照しつつ説明する。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係るステアバイワイヤシステムを搭載した車両の平面模式図である。
本実施の形態では、大略的には、直動式のアクチュエータを用いず、ピットマンアーム2を回転(揺動)させる転舵用アクチュエータ1(ロータリーアクチュエータ)を用いて、タイロッドアーム3やナックルアーム4を動かし、前輪(転舵輪)を転舵させる。また、転舵用アクチュエータ1を、一対用いることで、左右それぞれの前輪を転舵させる。
このように、転舵用アクチュエータ1を用いた転舵方式により、車両中央部分には、ステアリング機構はなくなるため、エンジンなど他部品のレイアウト性が向上する。
また、一対の転舵用アクチュエータ1によって、左右独立に操舵が可能となるため、左右それぞれのコーナリング力が最大に得られるように、タイヤ角度を変化させて操舵し、車両の運動性能を向上させることができる。
図2(a)は、ピットマンアームの角度と前輪の角度との関係を示す平面模式図である。
左右一対の転舵用アクチュエータ1を、同じ角度だけ回転させた時に、左右の車輪がアッカーマン条件(それぞれの車軸の延長線がある一点(車両の回転中心近傍)を通る条件)をおおよそ満たすように設計しておくと、制御が容易で安定した転舵ができる。
さらに、一方の転舵用アクチュエータ1の動きを、他方の転舵用アクチュエータ1に機械的に伝える構成とすることが望ましい。これにより、一つの転舵用アクチュエータ1が故障しても、転舵が可能なフェールセーフな特性とすることができる。
また、左右輪の独立操舵が可能なように、接続機構にある程度の不感帯(小さい角度変化は伝えない機構)を設けることも可能である。
図2(b)は、変形例に係り、ピットマンアームと前輪の位置関係を示す平面模式図である。
図2(c)は、他の変形例に係り、ピットマンアームと前輪の位置関係を示す正面模式図である。
転舵用アクチュエータ1の配置方法としては、図2(a)以外にも、図2(b)のような方法があり、座席やエンジン、駆動系のレイアウトに合わせて、転舵用アクチュエータ1の配置の選択が可能である。
タイロッドアーム3が車軸より後方か前方か交互かの組み合わせがあり、また、転舵用アクチュエータ1がタイロッドアーム3より軸側か反軸側かの組み合わせがあり、さらに、図2(c)に示すように、転舵用アクチュエータ1の立体配置の組み合わせがあり、その組み合わせは、多数(32通り)が可能である。
また、左右独立に制御が可能なため、トーイン、トーアウト(ハの字もしくは逆ハの字に前輪が向くこと)や、左右転舵角比率をアクティブに変更することが可能である。
例えば、前輪駆動車では、駆動力とサスペンション弾性によって生じるトーインをアクティブ補正し、前輪の転がり抵抗を減らし、燃費を向上させることも可能である。
サスペンション・ストロークによって前輪の角度が変化してしまうバンプステアを補正することや、左右輪のコーナリング力に応じて転舵角比を変更して、旋回性能を向上することも可能である。
図3は、本発明の第1実施の形態に係るステアバイワイヤシステムの背面模式図である。図3は、前輪の操舵装置であり、後方から前方を見た図である。
操舵入力装置10(ステアリングホイールやジョイスティック)と、転舵輪の転舵角を変える転舵用アクチュエータ1とは、電気的につながっているステアバイワイヤの構成となっている。右、左の転舵輪の角度を変えるために、それぞれ個別に、転舵用アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)が接続されている。
一対の転舵用アクチュエータ1は、操舵制御駆動装置20によって、電気的に駆動され、操舵入力装置10の入力角度、トルク信号および車速等の車両情報に従って制御される。
また、操舵制御駆動装置20は、軸力センサ21や転舵用アクチュエータ1の電流信号、角度信号から得られる路面反力情報を、車両情報を加味して、反カアクチュエータ11にフィードバックし、運転者へ適切な情報を送る。
操舵制御駆動装置20は、また、転舵用アクチュエータ1の摩擦や慣性を補償し、操舵系の見かけの慣性などインピーダンスを変更する制御を行い、運転者の操舵感や車両の運動性能を向上させる制御を行うこともできる。
なお、転舵用アクチュエータ1は、車体5に固定してある。車両制御装置30は、サスペンションセンサ31やハブセンサ32からの信号などを受け、車速、車輪速、ヨーレートなどを制御し、操舵制御駆動装置20に、転舵角などの信号を送るようになっている。
転舵用アクチュエータ1によりピットマンアーム2は、図3のように、約±60°回転し、その回転がボールジョイント結合されたタイロッドアーム3、ナックルアーム4のリンク機構を介して転舵輪に伝わり、転舵角度が約−40°〜+33°変化する。なお、符号のプラスは、旋回における外側車輪の角度を意味する。
一対の転舵用アクチュエータ1は、同じ特性のものが左右に配され、リンクが左右対称に配されている。
前述の−40〜+33°の角度は、左右の転舵用アクチュエータ1が同じ角度作動すると、アッカーマン条件をほぼ満たすように設計されたものであり、これにより、左右の転舵用アクチュエータ1を同じ角度回転させると、通常の転舵、旋回が可能となる。
なお、前述の−40〜+33°の角度は、車両の最小回転半径や輪間距離で変わる設計パラメータであり、一例にすぎない。
図4は、本発明の第1実施の形態に係るステアバイワイヤシステムの操舵用アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)の断面図である。
ピットマンアームを回転させるためには、非常に大きなトルクが必要であるが、モータを小型にするため、1/200程度の減速比で大きなトルクを得る必要がある。
本実施の形態では、通常の遊星減速機(2KH型)と3K型遊星減速機を組み合わせることにより、それをコンパクトな構成にて実現している。
減速部について説明する。電動モータ40の出力は、通常の遊星減速機構である第一段部の入力太陽歯車41に接続されて減速される。その出力が次段の3K型遊星減速部の太陽歯車42に接続されている。なお、符号43は、第一段遊星歯車であり、符号44は、第1段出力キャリアである。
太陽歯車42が回転すると、第1外輪歯車45は、固定されているので、第1遊星歯車46は、太陽歯車42と第1外輪歯車45の歯数比にしたがって自転しながら公転する。
第2遊星歯車47は、弾性キー48を介して第1遊星歯車46と一体の運動をする。
第2遊星歯車47の歯数は、第1遊星歯車46の歯数と異なるため、第2遊星歯車47に外接する第2外輪歯車49が減速されて回転することとなり、第2外輪歯車49に接続された出力軸50が回転する。これにより、ピットマンアーム2を揺動回転運動することができる。
ここで、弾性キー48は、複数の遊星歯車のうち、1つの歯車だけに大きな力がかからないようにするためのもので、さらにはバックラッシを低減若しくは除去するために用いている。
第1遊星歯車46と第2遊星歯車47の回転位相が弾性キー48の弾性で捩れることが可能なため、円周上における複数の歯車の応力が平均化される。
第1遊星歯車46と第2遊星歯車47のある一対(もしくは複数の対)の回転位相を理想値よりも僅かにずらして、弾性キー48で接続すると、バックラッシを低減・除去することが可能である。バックラッシを低減・除去を除去し、遊びをなくすことは、操舵安定性の向上と歯あたり音(ラトル音)の低減に有効である。
3K型の減速比は、後述する図5に示すように、歯数をZ1(入力太陽歯車41)、Z2(第1遊星歯車46)、Z3(第1外輪歯車45)、Z4(第2遊星歯車47)、Z5(第2外輪歯車49)とすると、
減速比= 2*Z2*Z5/(Z2−Z4)/Z1
となる。Z2とZ4の差を小さくすると、非常に大きな減速比が得られる。本実施の形態では、減速比を、1段目で6.5、2段目の3K型で37.1、総合で約240としている。
なお、符号51は、ニードル軸受を示し、符号52は、モーメントキャリアピンを示し、符号53は、ニードル軸受を示し、符号54は、電動モータの駆動軸を示し、符号55は、ニードル軸受を示し、符号56は、固定されるハウジングを示し、符号57は、モーメントキャリアを示し、符号58は、ボールジョイントを示している。また、フェールセーフ機構に関しては、後に詳述する。
以上のように、遊星歯車式減速機構を用いると、コンパクトで高減速が可能な減速装置が得られるため、転舵用アクチュエータ1の小型、軽量化が可能となる。
この減速機構は、3K型の遊星歯車減速機構と呼ばれ、公知(機械の研究(養研堂)vol49,Noll,1179頁−1181頁)の構成ではあるが、考察すると、大きなトルクを受ける歯が外輪歯車(内歯車)との噛み合い部のみで歯面接触面圧および応力が小さくなるため、歯車の小型化が可能である。構成部品も通常の遊星歯車減速機構(2KH型の2段)より少ないことがわかる。
本減速機構を特に小型化、コンパクト化が必要なステアリング装置に適用する効果は大きい。
また、ステアリングに用いる場合には、車両の自己操舵安定性(直進方向への復元特性)のために、逆作動(タイロッドアーム3からの軸力の入力に対してピットマンアーム2が回転すること)の逆作動効率がよいことが望ましいが、本減速機構は、適切に設計することで、このような条件も満たすことができる。
図5は、本発明の第1実施の形態に係り、3K型と通常型(2KH型)の遊星歯車減速機の釣り合いを説明する模式図である。
本実施の形態では、3K型減速機を用いて小型化を図っている。その点について説明する。図5は、減速機における力の釣り合いを考え、ギアおよびキャリアが受ける反力をあらわした図である。
通常の遊星減速機(2KH型)では、出力ギアZ3が受ける接線力Fout と入力ギアZ1が受ける接線力Finは、同一である(トルクは、減速比倍されるが)。
この場合、入力ギアZ1の歯面応力が大きくなるため、減速比を小さくしてZ1の直径を大きくするか、装置を大型にする(Z3を大きくするか、軸方向に長くする)必要がある。
さらには、キャリアがうける反力は、Foutの2倍であるため、キャリアも、高強度のものを用意する必要があるので、装置の小型化が難しい。
それに対し、3K型のギアが受ける力では、出力段の接線力Foutに対し、ギアZ2の接線力Frc、入力ギアの接線力Finは、次式のように小さくなる。
Frc=(Z2+Z4)÷(2×Z2)×Fout
Fin=(Z2−Z4)÷(2×Z2)×Fout
式からもわかるように、入力ギアの接線力は、Foutの1/2以下となり、Z2とZ4の差によっては、非常に小さな値になる。
大きな力のかかるFre部とFout部は、内歯歯車と外歯車とのかみ合いなので、かみ合い率も大きく、歯元曲げ応力や歯面面圧も小さくなり、小型化には有利である。
キャリアには、FoutとRrcが軸方向にずれていることによるモーメント荷重Fml,Fm2(軸方向距離に依存する値)が発生するが、値が小さいため、キャリアも小型化できる。
3K型は、高減速比が得られる上、応力の面から見ても非常に有利である。
ただし、3K型では、あまり減速比を大きくすると、大きな力を受ける歯面が高速でかみ合うことになるため、効率が悪くなる欠点がある。
そこで、本実施の形態では、1段目に通常の遊星減速機(2KH型)を用いて減速を行ってから、3K型を用いて減速を行っている。
図6は、一対の歯車の効率を98%としてエネルギバランスより減速機の効率を求めた結果である。
本装置の歯車は、平歯車で、一般に適切に設計を行うと、一対の歯車の効率を、98〜99%にすることが可能である。
正効率とは、通常の減速機の効率、逆効率とは、減速機を増速機として使用した場合の効率である。
3K型のみの構成では、シンプルでコンパクトな減速機とすることができるが、高減速比では、効率が低く、特に、減速比140以上では、逆効率が0つまり逆作動が不可能でステアリング機構には使用不能である。
これに対して、本実施の形態の3K型+通常の遊星減速機(2KH型)の構成では、多段の2KH型遊星減速機よりは若干効率は劣るものの、ほとんど同等の効率が達成できる上、減速機の質量を約半分に抑えることができる。
図7は、本発明の第1実施の形態に係り、フェールセーフ機構を示す平面模式図である。
左右の転舵用アクチュエータ1は、フェールセーフワイヤ60によって接続されている。
フェールセーフワイヤ60は、自転車のブレーキワイヤのように、ケーブルスリーブ61の中にワイヤ62が通っているボーデンケーブルであり、右回転、左回転で、それぞれ引っ張り力を伝達する2本のワイヤ62で接続されている。
これにより、一方の転舵用アクチュエータ1が故障して出力トルクを発生しない場合でも、他方のアクチュエータの動きが伝わり、左右輪が正常に転舵されるフェールセーフな構成となっている。
フェールセーフワイヤ60は、転舵用アクチュエータ1が正常に作動しているとき、僅かに遊びがあるよう調整されていて、左右の転舵用アクチュエータ1は、ある程度の独立した出力が可能となっている。
図4に戻って、フェールセーフワイヤ60について説明する。
フェールセーフワイヤ60は、ケーブルスリーブ61の中にワイヤ62が通っており、引っ張り力を伝達することができるボーデンワイヤであり、ケーブルスリーブ61の一端が転舵用アクチュエータ1の側方に取り付けられている。
ワイヤ62は、3K型減速部のモーメントキャリアの外周に形成されたプーリーに巻きつけられている。図示例では、モーメントキャリア兼ワイヤープーリー63に巻回してある。
ワイヤ62は、右回転、左回転のそれぞれに張力が発生するように、図7のように、一対、出力されている。
ケーブルスリーブ61の反対端は、反対側の転舵用アクチュエータ1に、右回転、左回転の関係を逆にして、同様に取り付けられている。
通常、モーメントキャリア(63)は、第1及び第2遊星歯車46,47の公転と共に回転して、モーメントによる歯車の傾きをなくすことを目的としている。
ところが、モーメントキャリア(63)を回転させれば、出力軸50を回転させることも可能であるため、これをフェールセーフワイヤ60に利用している。余分な部品を付加せずフェールセーフ機構の提供することができる。
モーメントキャリア(63)の回転は、3K型の減速機では、
キャリア対出力軸減速比=Z2×Z5/(Z2−Z4)/(Z1+Z2)
の減速比で減速出力される。
この減速比とピットマンアーム2の旋回半径、プーリー半径の関係より、ピットマンアーム推力に対するワイヤの発生張力が定まる。
本実施の形態では、ピットマンアーム推力に対するワイヤ張力の比率(張力比)は、2/5程度となっている。
ワイヤ張力は、小さいほど、ケーブルスリーブ61を細くできるが、あまり張力比を小さくすると、ワイヤ長が長くなり、プーリーが大型化(軸長が増大)するので、張力比は、1/2〜1/5程度が望ましい。
また、ワイヤ62のたるみを調整するためケーブルアジャスター64が設けられている。本実施の形態では、ケーブルアジャスター64をねじ込むと、ワイヤがたるむ仕組みになっている。左右独立制御のために、ある程度(ピットマンアーム角度で1〜5度程度)のたるみを設けておくことが望ましい。
以上のように、一対の転舵用アクチュエータ1を機械的接続機構(フェールセーフ機構)によって接続している。
これにより、万一、一方の転舵用アクチュエータ1が故障して、出力が不能となっても、他方の転舵用アクチュエータ1の動きが伝わるため、操舵不能といった重大な事態を招くことがなく、フェールセーフな構成とすることができる。
さらに、機械的な接続機構としては、従来のピットマンアーム方式のステアリングのように、リレーロッドを用いてもよいが、ワイヤ(ボーデンケーブル)や油圧を用いることが望ましく、これにより、他部品のレイアウト性をほとんど犠牲にすることなく、一対の転舵用アクチュエータ1の接続が可能となる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
上述した実施の形態に於いて、電動モータ40は、DCブラシレスモータであり、モータ内部には、レゾルバ式の角度センサが内蔵されており、操舵制御駆動装置30より、トルクや速度、位置の制御がなされる。また、電流を検知して、ピットマンアーム2のトルクの推定も行われる。
減速装置によって大きく減速されているため、電動モータ40の出力トルクは、比較的少なくすみ、2N.m程度の出力トルクで、ピットマンアーム2で、400N.mの大トルクを出力することができる。1.5ton程度の乗用車に適用できる。
出力軸50には、ピットマンアーム2がタイロッドアーム3からうける大きな反力を支えるため、ニードル軸受55と玉軸受59が使用され、ギアには余分な力が働かないよう設計されている。
次に、図8は、本発明の第1実施の形態の変形例に係るステアバイワイヤシステムの操舵用アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)の断面図である。
本変形例は、ハウジング56に、複数の歪ゲージ70を貼り、軸カセンサ21(図3)の代替としたものである。
上述した図3の軸カセンサ21は、可動部であるタイロッドアーム3に取り付けられており、配線が切れないよう注意する必要がある。ハウジング56にセンサ(歪ゲージ70)を取り付けると、センサ(歪ゲージ70)は動かないため、そのような心配はなく、信頼性の高い荷重測定ができる。
なお、歪ゲージ70の貼り付け位置は、高精度の測定を行うため、図8に図示したような応力が大きくなる部分を適当に選定する。
また、タイロッドアーム3の軸力と歪ゲージ70の歪量の関係は、ピットマンアーム2の角度に依存して変化するが、あらかじめ関係を把握しておき演算により算出してもよい。
次いで、図9は、本発明の第1実施の形態の他の変形例に係るステアバイワイヤシステムの操舵用アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)の断面図である。
本変形例は、1段目の減速機に、歯車機構ではなく、トラクションドライブ減速機80(例えば、遊星ローラ減速機)を用いている。
転舵用アクチュエータ1の減速比は、240と大きいため、一段目の入力軸回転速度は、3000〜5000min−1と高速になる。このため、歯車を使用すると騒音が問題となる。
上述した図4では、これに対応するため1段目のみ歯面の研磨を行ったり、樹脂のギアを用いる工夫をしている。
しかし、より高い静粛性を求められる場合には、本変形例のように、1段目をトラクションドライブ減速機80(例えば、遊星ローラ減速機)とする。かみ合いがなく、転がり接触のため、高い静粛性が得られる。
図9では、トラクションドライブ減速機80として、遊星ローラ減速機を用いている。他に、くさび効果を用いたトラクションドライブ減速機も使用可能である。
さらに、出力軸50には、回転角センサとしてレゾルバ90(出力軸角センサ)を用いている。
本レゾルバ90は、いわゆる3Xのレゾルバであり、120°範囲で絶対角度を検出できる。士60°のピットマンアーム2の絶対角度位置を知ることができ、制御の信頼性が上がる。
本変形例では、トラクションドライブ減速機80が使用されており、トラクションドライブの減速比の変動(すべりや温度による寸法変化による変動)があっても、本レゾルバ90によって、それを補正することが可能である。
また、このような構成した場合、一対の転舵用アクチュエータ1について考えると、角度センサ(電動モータ40の内部の角度センサ(レゾルバ)と出力角センサ)が合計4個となる。
これにより、多数決論理によるセンサの異常判定ができ、センサのいずれか1つが故障しても操舵が可能なフェールセーフの構成とすることもできる。
(第2実施の形態)
図12は、従来例に係るステアバイワイヤシステムのピットマンアーム式操舵用アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)の断面図である。
図12の従来例では、電動モータ201の回転を、波動歯車減速装置203によって減速し、ピットマンアーム209で揺動回転出力を得る。電動モータ201の駆動軸202と出力軸207が同軸上にあり、出力軸207には、角度センサ208(レゾルバ)もあるため、軸方向に長い構成となっている。軸方向に長いと、車両に搭載する上で、エンジンや駆動部品との干渉で問題が生じていた。なお、符号204は、ウェーブジェネレータであり、符号205は、サーキュラスプラインであり、符号206は、フレックススプラインである。
また、ピットマンアーム式アクチュエータは、大トルクを得るため、減速比が大きく、電動モータは、高速回転するが、その際、ギアの噛み合い音が発生する問題もあった。
図12の従来例では、バックラッシのない波動歯車減速装置203を用いている。バックラッシの問題はないが、衝撃荷重に対する歯飛び(ラチェッテイング現象)が起きる場合があり、一度歯飛びを起こすと、耐荷重性が落ち安定した走行が不可能になる問題もある。
一方、上述した第1実施の形態(図4)の遊星歯車機構では、歯飛びもしくは歯の欠損といった現象は発生しないが、バックラッシを低減するのが難しかった。
すなわち、上述した第1実施の形態(図4)の遊星歯車機構では、相関のある3つの噛み合い(入力の太陽歯車42と第一段遊星歯車43の噛み合い、第一段遊星歯車43と第1外輪歯車45との噛み合い、第2遊星歯車47と出力軸50の第2外輪歯車49の噛み合い)を同時に調整して、バックラッシを減少させる必要があり、バックラッシの低減が困難であった。
これらに対して、本実施の形態では、大略的には、ウォーム減速機構を用いて電動モータと出力軸を直交させ、アクチュエークが縦長になるのを防ぐ。また、ウォーム減速機構は、すべり接触を基本とするため、歯車機構のような噛み合い音がしないため、騒音の面で有利となる。ウォーム減速機構は、電動パワーステアリング装置でも広く使用されており、高効率(80%以上)で、高減速比(1:20程度)を得ることができる。
また、本実施の形態に係る遊星歯車機構では、上述した第1実施の形態(図4)の遊星歯車機構に対し、入力の太陽歯車をなくし、遊星歯車の公転を入力とすることで、歯車のバックラッシの発生個所を3箇所から2箇所にし、バックラッシ調整を容易にしている。
図10(a)は、本発明の第2実施の形態に係るステアバイワイヤシステムの操舵用アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)の断面図であり、(b)は、操舵用アクチュエータ(ロータリーアクチュエータ)の断面を含む斜視図である。なお、図10(b)では、出力軸は、断面化してあり、ハウジングや細かい部品は描かれていない。
出力軸110と、電動モータ100の駆動軸(ウォーム101)とは、ウォーム減速機構を介して略直交してある。
遊星歯車機構は、ハウジング120に固定された固定内歯歯車105と、出力軸110を駆動する出力軸内歯歯車108と、固定内歯歯車105と出力軸内歯歯車108に噛み合い、一体となって公転および自転する公転歯車列(第1遊星歯車106及び第2遊星歯車107)と、これら公転歯車列(第1遊星歯車106及び第2遊星歯車107)を公転させる入力キャリア102(ウォームホイール)と、を具備している。
電動モータ100は、ウォーム減速機構を介して、出力軸110に直交方向に配置されている。このようなレイアウトであると、車両の横(幅)方向に電動モータ100が配置され、従来のラックアンドピニオン方式に近いレイアウトとなり、エンジンレイアウト等、他の部品と干渉することが少ない。
電動モータ100の回転は、ウォーム101で減速され、ウォームホイール102に伝えられる。ウォームホイール102に取付けられたキャリアピン103によって、第1遊星歯車106及び第2遊星歯車107は、公転する。第1遊星歯車106及び第2遊星歯車107は、キー104で結合されている。
第2遊星歯車107は、ハウジング120に固定された固定内歯歯車105に噛み合っているので、キャリアピン103で第2遊星歯車107が公転運動すると、第2遊星歯車107は、固定内歯歯車105との歯数比にしたがって自転する。
第1遊星歯車106は、自転も公転も、第2遊星歯車107と同じ回転を行うので、出力軸内歯歯車108は、その自転と公転に見合うような回転をして、減速される。
この機構は、上述した第1実施の形態(図4)の遊星歯車機構にくらべ、入力である中央のピニオン(太陽歯車)がない構成である。ピニオン部でのバックラッシ発生がないため、バックラッシ調整の必要個所が、3箇所から2箇所(第2遊星歯車107と固定内歯歯車105、及び、第1遊星歯車106と出力軸内歯歯車108)と少なくなる。歯車の噛み合いも、内歯歯車と外歯歯車の噛み合いのみであるので、従来機構に対して、さちに応力が小さく、小型化も可能となる。
以上から、本実施の形態によれば、車両レイアウトの自由度を高めることができ、遊星歯車機構を用いた場合のバックラッシの低減を図り、騒音を低減しつつ、操縦性を向上することができる。
図11は、バックラッシ調整機構を説明するための模式図である。
本実施の形態では、バックラッシ調整機構として、以下のような方法を採っている。
図11のように、キャリア109の弾性変形により、第1及び第2遊星歯車106,107のPCDが可変となるキャリアとし、第1及び第2遊星歯車106,107を内歯歯車(固定内歯歯車105、出力軸内歯歯車108)に押し当てる構造をとしている。
ピニオン歯車を設けない構成のため、このようなバックラッシの除去が可能となる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。