JP4848204B2 - 構造物の肉盛溶接装置 - Google Patents

構造物の肉盛溶接装置

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Description

本発明は、垂直又は斜めに設けられた中空長尺で大型の構造物の内面に、例えば、現地で、肉盛溶接層を形成する構造物の肉盛溶接装置に関する。なお、大型の構造物とは、例えば、内寸法が2〜20mとなる構造物を指す。
転炉内で発生した転炉ガスを回収する転炉ガス排出装置の転炉フードや排ガス流路、ごみ焼却炉で発生した排ガスを外部に放出する煙道、熱交換器の熱交換チューブパネル等では、高温に曝される部位の耐熱性を高めるために、溶接トーチ(例えば、特許文献1参照)を用いて耐熱金属の肉盛溶接層を形成している。
特開平6−344142号公報
例えば、排ガス流路の内面に耐熱金属の肉盛溶接層を形成する場合、排ガス流路内に足場を組むかゴンドラを吊り下げてその上に作業者が乗り、溶接トーチ先端の電極と排ガス流路内面との距離を調整しながら溶接トーチを排ガス流路の内面に沿って移動させている。しかし、排ガス流路内の作業環境は一般に劣悪なため、肉盛溶接の作業能率が低下すると共に、均質な肉盛溶接層を形成することが困難であるという問題が生じる。更に、作業能率が低いために肉盛溶接の作業に要する時間が長くなり、設備の休止期間が長くなるという問題も生じる。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、垂直又は斜めに設けられた中空長尺の大型構造物の内面に短時間でしかも均質な肉盛溶接層を形成することが可能な構造物の肉盛溶接装置を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る構造物の肉盛溶接装置は、中空長尺で断面円形の大型の構造物の内面にそれぞれ複数の支持金具を介して周方向に取付けられ、しかも、それぞれは上下方向に距離を有した枠状の第1、第2のレールと、前記第1、第2のレールに沿って移動する対となる走行台車に連結された縦ガイド部材と、前記縦ガイド部材に沿って上下動する昇降台車と、前記昇降台車に取付けられて該昇降台車に対して水平方向(縦ガイド部材に対して直交する場合を含む)に進退する水平ロッド部材と、前記水平ロッド部材の一端部の取付け金具に前記構造物の内面の溶接部に向けて進退機構及び傾動機構を介して進退及び傾動可能に設けられた溶接トーチと、これら(対となる走行台車、昇降台車、水平ロッド部材、進退機構、及び傾動機構)の制御装置及び前記溶接トーチに溶接ワイヤ及び電力を供給する溶接機とを有し、
前記対となる走行台車は、前記第1、第2のレールの上下方向両端部を、ローラーベアリングを介して上下方向からそれぞれ挟持するフレーム部と、該フレーム部にそれぞれ設けられ、前記第1、第2のレールの内側面に設けられたチェーンに噛合し、減速機付き電動機に垂直配置された回転軸に連結されて回転駆動するスプロケットとを備える。
第1の発明に係る構造物の肉盛溶接装置において、前記溶接トーチには、オシレート機構が設けられていることが好ましい。
第1の発明に係る構造物の肉盛溶接装置において、前記第1、第2のレールには、前記縦ガイド部材、前記昇降台車、前記水平ロッド部材、前記溶接トーチがそれぞれ複数任意位置、好ましくは複数均等位置に設けられていることが好ましい。
第1の発明に係る構造物の肉盛溶接装置において、前記溶接トーチと前記構造物の内面との距離を測定する距離センサーを設けることができる。また、前記溶接機は、パルス溶接機であることが好ましい。
請求項1〜4記載の構造物の肉盛溶接装置においては、構造物の内面に支持金具を介して周方向に取付けられ、上下方向に距離を有して枠状の第1、第2のレールを取付けることで、溶接トーチを構造物の内面の溶接部に向けて移動させ、更に、溶接トーチを溶接部方向に向けることができ、例えば、構造物を据え付けた現地において、短時間でしかも均質な肉盛溶接層を形成することが可能になる。
そして、チェーン及びスプロケットを用いるので、枠状の第1、第2のレールに沿って走行台車を容易に移動させることが可能になる。
特に、請求項2記載の構造物の肉盛溶接装置においては、溶接トーチにオシレート機構を設けているので、溶接トーチを移動させながら一定幅の肉盛溶接層を容易に形成することが可能になる。
請求項記載の構造物の肉盛溶接装置においては、溶接トーチと構造物の内面との距離を距離センサーで把握することができ、構造物の内面に均質な肉盛溶接層を形成することが可能になる。
請求項記載の構造物の肉盛溶接装置においては、溶接機がパルス溶接機なので、肉盛溶接時に構造物の内面に対する入熱を少なくすることができ、溶接金属の構造物の表層部への溶け込みを少なくすることが可能になる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る構造物の肉盛溶接装置のブロック図、図2は同構造物の肉盛溶接装置の一部省略された部分正断面図、図3は同構造物の肉盛溶接装置の一部省略された部分側断面図、図4は同構造物の肉盛溶接装置の一部省略された部分平断面図、図5は同構造物の肉盛溶接装置の溶接トーチの取付け状態を示す平面図、図6は同溶接トーチの取付け状態を示す正面図、図7は同溶接トーチの取付け状態を示す側面図、図8は第1の変形例に係る縦ガイド部材の説明図、図9は第2の変形例に係る縦ガイド部材の説明図、図10は本発明の変形例に係る構造物の肉盛溶接装置の説明図である。
図1〜図4に示すように、本発明の一実施の形態に係る構造物の肉盛溶接装置(以下、単に肉盛溶接装置という)10は、垂直に設けられた中空長尺で大型の構造物の一例であって、転炉ガス排出装置に設けられた垂直に延びる断面が円形の排ガス流路の内面11(以下、単に内面11ということもある)にそれぞれ複数の支持金具12を介して周方向に取付けられ、しかも、それぞれは上下方向に距離を有した枠状の第1、第2のレール13、14と、第1、第2のレール13、14に沿って移動する対となる走行台車15、16に連結された縦ガイド部材17と、縦ガイド部材17に沿って上下動する昇降台車18と、昇降台車18に取付けられて昇降台車18に対して水平方向に進退する水平ロッド部材19とを有している。更に、肉盛溶接装置10は、水平ロッド部材19の一端部の取付け金具20に排ガス流路の内面11の溶接部に向けて進退機構21及び傾動機構22を介して進退及び傾動可能に設けられたオシレート機構23付きの溶接トーチ24と、これらの制御装置25及び溶接トーチ24に溶接ワイヤ26及び電力を供給する溶接機27とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
図3、図4に示すように、支持金具12は、排ガス流路の内面11に取付けられる固定部28と、固定部28の先側にそれぞれ連結され先部に隣り合うレール部材29の端部がそれぞれ支持され固定される座板部材30が設けられたレール受け部31とを有している。このような構成とすることにより、内面11の周方向にそれぞれ固定部28を取付け、更にレール受け部31を連結すると、座板部材30上に隣り合うレール部材29の端部同士を対向させながら固定することができる。これにより、排ガス流路の内面11の肉盛溶接層を形成する領域を上、下から挟むように内面11の全周に渡って枠状の第1、第2のレール13、14を配置することができる。ここで、第1、第2のレール13、14の内側面の全周にはチェーン32が取付けられている。
走行台車15、16は、それぞれ第1、第2のレール13、14の上下両端部を、それぞれ摺動機構の一例であるローラーベアリング33を介して上下方向から挟持するフレーム部34と、フレーム部34内に設けられチェーン32に噛合して回転駆動するスプロケット35と、フレーム部34に設けられた軸受36により両側が回転可能に支持されスプロケット35と連結してスプロケット35に回転駆動力を伝達する回転軸37と、回転軸37に回転駆動力を与える減速機付き電動機38とを有している。
このような構成とすることにより、減速機付き電動機38を駆動させて回転軸37を回転させるとスプロケット35をチェーン32に噛合させながら回転させることができる。これにより、第1、第2のレール13、14の上下両端部に対してフレーム部34をローラーベアリング33を介して摺動させることができる。その結果、第1、第2のレール13、14に沿って走行台車15、16をそれぞれ移動させることができる。なお、符号39はローラーベアリング33をフレーム部34に取付ける固定用ノブである。
縦ガイド部材17は、走行台車15、16にそれぞれ取付け部材40、41を介して両側が固定される連結部42と、連結部42に取付け台43を介して両側がそれぞれ固定される縦レール44を有している。ここで、縦レール44の前側面にはラック歯45が取付けられている。昇降台車18は、縦レール44の水平方向の両端部を、それぞれ摺動機構の一例であるローラーベアリング46を介して左右方向から挟持するフレーム部47と、フレーム部47内に設けられラック歯45に噛合して回転駆動するピニオン48と、フレーム部47に設けられた図示しない軸受により回転可能に支持されピニオン48と連結してピニオン48に回転駆動力を伝達する図示しない回転軸と、回転軸に回転駆動力を与える減速機付き電動機49とを有している。なお、符号50はローラーベアリング46をフレーム部47に取付ける固定用ノブである。
このような構成とすることにより、減速機付き電動機49を駆動させて回転軸を回転させるとピニオン48をラック歯45に噛合させながら回転させることができる。これにより、縦レール44の左右両端部に対してフレーム部47をローラーベアリング46を介して摺動させることができる。その結果、縦レール44に沿って昇降台車18を移動させることができる。
水平ロッド部材19は、昇降台車18のフレーム部47に固定され水平方向の両側に開口を備えた筒体51内を水平方向に貫通して設けられ、筒体51の天井面及び底面にそれぞれ配置された摺動機構の一例であるローラーベアリング52を介して上下両端部が摺動可能に支持された水平レール53と、水平レール53の裏面側に取付けられた水平フレーム54と、水平レール53の表面側に取付けられたラック歯55とを有している。そして、筒体51内にはラック歯55に噛合して回転するピニオン56が設けられ、ピニオン56は図示しない回転軸を介して減速機付き電動機57の回転軸と連結している。なお、符号58はローラーベアリング52を筒体51に取付ける固定用ノブである。
このような構成とすることにより、減速機付き電動機57を駆動させて回転軸を回転させるとピニオン56をラック歯55に噛合させながら回転させることができる。これにより、水平レール53をその上下両端部をローラーベアリング52で支えられながら水平方向に移動させることができ、水平レール53と共に水平フレーム54を移動させることができる。
図5〜図7に示すように、水平ロッド部材19の水平フレーム54の一端部には、溶接トーチ24を取付ける取付け金具20が設けられている。ここで、取付け金具20は水平フレーム54の一端部に取付けられた連結部59と、連結部59に対して水平フレーム54の軸心に直交して取付けられた固定板60と、固定板60の一側に距離を開けて平行に立設され先側が平面視して円板状となった対となる取付け板61、62を有している。
また、傾動機構22は、一側が円板状となって取付け板61、62に外側から当接し第1のピン65を介して回動可能に取付けられるガイド板63、64を備えた第1の傾動部66を有している。なお、ガイド板63、64の他端部は、それぞれ連結板67の両側に連結しており、ガイド板64には、第1のピン65の中心位置を中心とする異なる2つの半径の円弧(中心角が90〜100度)で挟まれた弧状孔68、69が第1のピン65の中心位置に対して対称に形成され、弧状孔68、69には取付け板62に立設された第2のピン70、71がそれぞれ嵌入している。更に、傾動機構22は、連結板67の中央部に形成された図示しない挿通孔を挿通する第3のピン72を中央部に備えて連結板67の下面側に当接し回動可能なトーチ取付け板73と、トーチ取付け板73の第3のピン72の先側に形成された雌ねじ部に螺合し連結板67に対して任意の角度位置まで回動した状態のトーチ取付け板73を固定する固定用ノブ74とを備えた第2の傾動部75を有している。
進退機構21は、トーチ取付け板73の下面側に取付けられ、平面視して矩形状のフレーム部76と、フレーム部76の長手方向に沿って電動機77の回転駆動力により進退する図示しないスライド台と、スライド台の下面側に取付けられた架台部78とを有している。更に、フレーム部76には、架台部78を突出させた状態でスライド台の進退範囲を覆ってフレーム部76内に埃が進入するのを防止する伸縮性のカバー部材79が設けられている。そして、架台部78の上側にはオシレート機構23が取付けられ、オシレート機構23に取付け部材80を介して溶接トーチ24が取付けられている。更に、図6に示すように、架台部78の下側には、センサー収納部81が取付けられ、センサー収納部81内には溶接トーチ24と排ガス流路の内面11との距離を測定する距離センサーの一例である超音波センサー82が設けられている。ここで、超音波センサー82では、非接触式で距離を測定することができるので、溶接トーチ24を制約を比較的受けずに移動させることが可能になる。なお、溶接トーチ24を比較的自由に移動させることができる場合は、例えば、検出部に差動トランスを用いた接触式の距離センサーを使用することができる。
以上の構成により、傾動機構22の第1の傾動部66を用いて連結板67を水平ロッド部材19の軸方向に対して傾斜させることができ、第2の傾動部75を用いて連結板67に対してトーチ取付け板73を連結板67面内で傾動させることができる。その結果、水平ロッド部材19の一端部で、溶接トーチ24を任意の方向に向けることができる。更に、進退機構21により、溶接トーチ24と排ガス流路の内面11との距離を任意に調整できる。これにより、排ガス流路の内面11の溶接部に対して、溶接トーチ24の方向を所定の溶接方向になるように調整すると共に、溶接部と溶接トーチ24との距離を、設定した溶接距離に調整できる。
なお、第1、第2のレール13、14、走行台車15、16、縦ガイド部材17、昇降台車18、水平ロッド部材19、取付け金具20、進退機構21、傾動機構22、オシレート機構23、及び溶接トーチ24は、いずれも、主要部材にアルミ材質を使用し、例えば重量が20kg以下の構成部品に分解可能な構成となっている。これによって、現地において構造物の肉盛溶接装置10を容易に組み立てることができ、作業終了後には素早く分解することが可能になる。
図1に示すように、制御装置25には、第1、第2のレール13、14に沿って移動する対となる走行台車15、16の走行を制御する走行台車制御部、縦ガイド部材17に沿って上下動する昇降台車18の移動を制御する昇降台車制御部、昇降台車18に対して水平方向に水平ロッド部材19を進退させる水平ロッド制御部、超音波センサー82からの信号に基づいて溶接トーチ24を排ガス流路の内面11の溶接部方向に対してさせる進退機構21の動作を制御するトーチ進退制御部が設けられている。これによって、排ガス流路の内面11の溶接部及び溶接部に対する溶接距離を決めて、溶接部に対して溶接トーチ24の方向を傾動機構22により予め設定しておくと、溶接トーチ24を自動で溶接部位に向けて移動させ、溶接部から設定された溶接距離を有して溶接トーチ24を配置することができる。これによって、溶接部の凹凸に応じて溶接トーチ24を進退させること(倣い制御)が可能になる。
更に、制御装置25には、オシレート機構23の動作を制御するオシレート制御部が設けられている。一方、パルス溶接機である溶接機27には、溶接トーチ24に不活性ガス(例えば、二酸化炭素とアルゴンガスの混合ガス)を供給しながらパルス電力を供給するガス電力供給部86と、ガス電力供給部86からのパルス電力供給に同期して溶接トーチ24に溶接ワイヤ26を供給するワイヤ供給部87とを有している。このような構成とすることにより、排ガス流路の内面11の溶接部に対して溶接トーチ24を向けて、オシレート制御部により溶接トーチ24を単位時間当たり設定した回数で一定の振幅となるように水平面内で振動させながら溶接機27を駆動させると、溶接部に一定幅の溶接肉盛層を形成することができる。
続いて、本発明の一実施の形態に係る構造物の肉盛溶接装置10を使用した肉盛溶接方法について説明する。
先ず、転炉ガス排出装置が設置されている現地で、垂直に設けられた断面が円形の排ガス流路の内面11で肉盛溶接層を形成する領域を上下から挟むように枠状の第1、第2のレール13、14をそれぞれ配置する。そして、第1、第2のレール13、14にそれぞれ走行台車15、16を取付け、走行台車15、16を縦ガイド部材17で連結する。また、縦ガイド部材17に昇降台車18を取付け、昇降台車18に水平ロッド部材19を取付ける。更に、水平ロッド部材19の一端部に取付け金具20を取付け、取付け金具20に進退機構21及び傾動機構22を介してオシレート機構23付きの溶接トーチ24を固定する。続いて、走行台車15、16、昇降台車18、及び水平ロッド部材19にそれぞれ設けられた減速機付き電動機38、49、57、並びに進退機構21に設けられた電動機77を、制御装置25に設けられた走行台車制御部、昇降台車制御部、水平ロッド制御部、トーチ進退制御部と接続し、オシレート機構23はオシレート制御部と接続する。そして、溶接トーチ24をガス電力供給部86と接続すると共に、溶接トーチ24にワイヤ供給部87から溶接ワイヤ26を供給する。これによって、排ガス流路内への溶接肉盛装置10の配置が完了する。
次いで、排ガス流路の内面11における肉盛溶接を開始する位置(内面11の任意の周方向角度位置で肉盛溶接領域の上端)を決め、制御装置25の走行台車制御部により対となる走行台車15、16を第1、第2のレール13、14に沿って移動させ、次いで昇降台車制御部により昇降台車18を縦ガイド部材17に沿って上昇させる。そして、水平ロッド制御部により昇降台車18に対して水平方向に水平ロッド部材19を移動させ、更に、超音波センサー82による溶接トーチ24と内面11との距離を測定しながらトーチ進退制御部を介して進退機構21を電動機77を駆動させて操作し水平ロッド部材19の一端部の取付け金具20に取付けられた溶接トーチ24と内面11の溶接部との距離を予め設定された溶接距離に調整すると共に、傾動機構22を手動で操作して溶接部に対する溶接トーチ24の方向を調整する。以上の操作により、肉盛溶接を開始する位置の溶接部に対する溶接トーチ24の位置決め作業が終了する。
続いて、オシレート機構23を駆動させると共に溶接機27を稼動させながら昇降台車制御部により昇降台車18を縦ガイド部材17に沿って下降させる。これにより、溶接トーチ24に不活性ガス(二酸化炭素とアルゴンガスの混合ガス)を供給しパルス電力供給に同期して溶接トーチ24に溶接ワイヤ26を供給すると共に、溶接トーチ24を水平面内で振動させながら徐々に下降させることができ、MAG溶接により肉盛溶接を開始する位置から下方に向けて、一定幅の肉盛溶接層が徐々に形成されていく。ここで、溶接トーチ24を下方に移動させる、すなわち下進溶接することにより、溶接ワイヤ26の溶解により形成された肉盛溶接層の一部は溶接部から垂れて溶接部の下側の内面11上に溶着金属層が形成されるので、溶接ワイヤ26と溶着金属層の間にアークが発生するため、内面11の表層部がアークにより溶融する深さが浅くなる。これにより、内面11を構成する母材の溶け込みが少ない肉盛溶接層を一筋内面11上に効果的に形成することができる。
溶接トーチ24を下降させて、排ガス流路の内面11における肉盛溶接の終了の位置(内肉盛溶接を開始した位置と同一の周方向角度位置で肉盛溶接領域の下端)まで肉盛溶接層が形成されると、昇降台車18を停止させると共に、オシレート機構23及び溶接機27を停止させる。次いで、排ガス流路の内面11における肉盛溶接層を形成した周方向角度位置から離れた周方向角度位置(例えば、周方向角度差が90〜180度となる位置)で肉盛溶接領域の上端となる位置に向けて、走行台車15、16、昇降台車18、及び水平ロッド部材19を操作することで溶接トーチ24を移動させ、更に、進退機構21及び傾動機構22を操作して、溶接トーチ24と内面11の溶接部との溶接距離及び溶接部に対する溶接トーチ24の方向を調整する。そして、オシレート機構23を駆動させると共に溶接機27を稼動させながら昇降台車制御部により昇降台車18を縦ガイド部材17に沿って下降させ、肉盛溶接領域の下端となる位置まで肉盛溶接層を形成すると、昇降台車18を停止させると共に、オシレート機構23及び溶接機27を停止させる。これにより、内面11に二筋目の肉盛溶接層が形成される。二筋目の肉盛溶接層を一筋目の肉盛溶接層を形成した場所から離れた位置に形成することにより、排ガス流路の内面11に対する肉盛溶接に伴う入熱を分散させることができ、排ガス流路の熱変形を防止することができる。
内面11への二筋目の肉盛溶接層の形成が終了すると、溶接トーチ24を三筋目の肉盛溶接層を開始する位置まで移動させ、溶接トーチ24と内面11の溶接部との溶接距離及び溶接部に対する溶接トーチ24の方向を調整して、肉盛溶接を開始する。以上の肉盛溶接作業を繰り返すことにより、排ガス流路の内面11全周に肉盛溶接層を形成することができる。
ここで、走行台車15、16にそれぞれ距離計を設けると共に、走行台車制御部に、走行台車15、16の移動機能、走行台車15、16の停止機能、走行台車15、16の移動速度調整機能、走行台車15、16の移動距離計測機能、走行台車15、16の移動(停止)回数の計数機能、及び各機能を組み合わせて走行台車15、16に複合動作を行なわせるプログラム機能を設けることにより、予め、溶接開始位置、すなわち走行台車15、16の初期位置、走行台車15、16の移動速度、走行台車15、16の移動距離、走行台車15、16の移動(停止)回数のデータを走行台車制御部に入力することで、一つの肉盛溶接作業が終了すると、自動で次の肉盛溶接位置に向けて溶接トーチ24を移動させることができる。
また、昇降台車18に距離計を設けると共に、昇降台車制御部に、昇降台車18の移動機能、停止機能、移動速度調整機能、移動距離計測機能、及び各機能を組み合わせて昇降台車18に複合動作を行なわせるプログラム機能を設けることにより、予め、溶接開始位置、すなわち昇降台車18の初期位置、昇降台車18の移動速度、移動距離のデータを昇降台車制御部に入力することで、一つの肉盛溶接作業を自動で行なうことができる。
更に、制御装置25に、走行台車15、16及び昇降台車18を連携させて移動させた際に走行台車15、16及び昇降台車18の位置をそれぞれ記憶する位置記憶機能、位置記憶機能に記憶された走行台車15、16及び昇降台車18の各位置データに基づいて走行台車制御部及び昇降台車制御部を介して走行台車15、16及び昇降台車18を連携動作させる連携動作機能を備えた連携動作制御部を設けることにより、予め、肉盛溶接を行なう経路に沿って溶接トーチ24を移動させて溶接経路を教えておくと、教えた溶接経路に沿って自動で溶接トーチ24を移動させることができる。これによって、曲線状の肉盛溶接が可能になる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の構造物の肉盛溶接装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、第1、第2のレール上に、縦ガイド部材、昇降台車、水平ロッド部材、溶接トーチをそれぞれ複数任意位置、好ましくは複数均等位置に配置してもよい。これによって、同時に複数筋の肉盛溶接層を排ガス流路の内面に形成することができ、排ガス流路の内面全周に肉盛溶接層を短時間で形成することができる。
本実施の形態では、中空長尺で大型の構造物の一例として、転炉ガス排出装置の排ガス流路内に肉盛溶接層を形成したが、転炉ガス排出装置の転炉フードの内面、ごみ焼却炉の煙道の内面、排ガス流路内の熱交換チューブの外面等のように、第1、第2のレールが取付け可能であれば断面が任意形状の構造体の内面又は外面に対しても、更に、熱交換器の熱交換チューブパネルの内面のように平面状の構造体に対しても本発明を適用して肉盛溶接層を形成することができる。
制御装置にオシレート機構の動作を制御するオシレート制御部を設けたが、溶接機にオシレート制御部を設けてもよい。また、溶接トーチに不活性ガス(二酸化炭素とアルゴンガスの混合ガス)を供給してMAG溶接により肉盛溶接層を形成したが、MIG溶接又はTIG溶接により肉盛溶接層を形成することもできる。更に、本実施の形態では、下進溶接を行なう場合について説明したが、上進溶接、水平溶接、斜め上進溶接、又は斜め下進溶接、すなわち全姿勢溶接を行なう場合であっても、本発明を適用できる。
本実施の形態では、図2に示すように、縦ガイド部材17の縦レール44が第1、第2のレール13、14の間に配置されるようにしたが、図8に示す縦ガイド部材17aのように、連結部83を長くして、縦レール84の両側が第1、第2のレール13、14の外側にそれぞれ突出するようにしてもよい。これによって、ラック歯85の長さを長くでき、昇降台車18を第1、第2のレール13、14の外側領域まで移動させて、第1、第2のレール13、14の外側領域に肉盛溶接層を形成することができる。
また、各走行台車15、16に設けた取付け部材40、41に連結部の両側をそれぞれ固定したが、図9に示す縦ガイド部材17bのように、連結部88に伸縮機構89を設けて連結部88の長さを可変にすると共に、連結部88の両側を取付け部材40、41にそれぞれピン部材90を用いてピン結合することもできる。これによって、各走行台車15、16を第1、第2のレール13、14上で単独動作させることで、連結部88を手動操作により傾斜させることができる。その結果、肉盛ビード芯が傾斜している場合、縦レール44の軸方向を肉盛ビード芯の軸方向に実質的に一致させて昇降台車18を肉盛ビード芯の軸方向に沿って斜行させることができ、スカート等の末広がり構造の構造物の内面又は外面に肉盛溶接層を形成することができる。
更に、図10に示すように、排ガス流路が斜めに設けられている場合は、排ガス流路の内面91の肉盛溶接層を形成する領域を斜め上と斜め下から挟むように排ガス流路の内面91の全周に渡って枠状の第1、第2のレール92、93を配置する。そして、第1、第2のレール92、93にそれぞれ走行台車15、16を設け、走行台車15、16を縦ガイド部材17で連結し、縦ガイド部材17には縦ガイド部材17の軸方向に移動する昇降台車18を設け、昇降台車18には昇降台車18に対して水平方向、すなわち、縦ガイド部材17と直交する方向に進退する水平ロッド部材19を取付け、水平ロッド部材19の一端部に設けられた取付け金具20に進退機構21及び傾動機構22を介して進退及び傾動可能にオシレート機構23付きの溶接トーチ24を設けるようにすればよい。なお、走行台車15、16には、それぞれ駆動源として減速機付きの電動機(図示せず)を搭載させ、各減速機付きの電動機は同調運転させる。これにより、第1、第2のレール92、93上を、走行台車15、16は安定して走行することができ、斜めに設けられた排ガス流路の内面91の任意の部位に肉盛溶接層を形成することができる。
本発明の一実施の形態に係る構造物の肉盛溶接装置のブロック図である。 同構造物の肉盛溶接装置の一部省略された部分正断面図である。 同構造物の肉盛溶接装置の一部省略された部分側断面図である。 同構造物の肉盛溶接装置の一部省略された部分平断面図である。 同構造物の肉盛溶接装置の溶接トーチの取付け状態を示す平面図である。 同溶接トーチの取付け状態を示す正面図である。 同溶接トーチの取付け状態を示す側面図である。 第1の変形例に係る縦ガイド部材の説明図である。 第2の変形例に係る縦ガイド部材の説明図である。 本発明の変形例に係る構造物の肉盛溶接装置の説明図である。
10:構造物の肉盛溶接装置、11:排ガス流路の内面、12:支持金具、13:第1のレール、14:第2のレール、15、16:走行台車、17、17a、17b:縦ガイド部材、18:昇降台車、19:水平ロッド部材、20:取付け金具、21:進退機構、22:傾動機構、23:オシレート機構、24:溶接トーチ、25:制御装置、26:溶接ワイヤ、27:溶接機、28:固定部、29:レール部材、30:座板部材、31:レール受け部、32:チェーン、33:ローラーベアリング、34:フレーム部、35:スプロケット、36:軸受、37:回転軸、38:減速機付き電動機、39:固定用ノブ、40、41:取付け部材、42:連結部、43:取付け台、44:縦レール、45:ラック歯、46:ローラーベアリング、47:フレーム部、48:ピニオン、49:減速機付き電動機、50:固定用ノブ、51:筒体、52:ローラーベアリング、53:水平レール、54:水平フレーム、55:ラック歯、56:ピニオン、57:減速機付き電動機、58:固定用ノブ、59:連結部、60:固定板、61、62:取付け板、63、64:ガイド板、65:第1のピン、66:第1の傾動部、67:連結板、68、69:弧状孔、70、71:第2のピン、72:第3のピン、73:トーチ取付け板、74:固定用ノブ、75:第2の傾動部、76:フレーム部、77:電動機、78:架台部、79:カバー部材、80:取付け部材、81:センサー収納部、82:超音波センサー、83:連結部、84:縦レール、85:ラック歯、86:ガス電力供給部、87:ワイヤ供給部、88:連結部、89:伸縮機構、90:ピン部材、91:排ガス流路の内面、92:第1のレール、93:第2のレール

Claims (4)

  1. 中空長尺で断面円形の大型の構造物の内面にそれぞれ複数の支持金具を介して周方向に取付けられ、しかも、それぞれは上下方向に距離を有した枠状の第1、第2のレールと、前記第1、第2のレールに沿って移動する対となる走行台車に連結された縦ガイド部材と、前記縦ガイド部材に沿って上下動する昇降台車と、前記昇降台車に取付けられて該昇降台車に対して水平方向に進退する水平ロッド部材と、前記水平ロッド部材の一端部の取付け金具に前記構造物の内面の溶接部に向けて進退機構及び傾動機構を介して進退及び傾動可能に設けられた溶接トーチと、これらの制御装置及び前記溶接トーチに溶接ワイヤ及び電力を供給する溶接機とを有し、
    前記対となる走行台車は、前記第1、第2のレールの上下方向両端部を、ローラーベアリングを介して上下方向からそれぞれ挟持するフレーム部と、該フレーム部にそれぞれ設けられ、前記第1、第2のレールの内側面に設けられたチェーンに噛合し、減速機付き電動機に垂直配置された回転軸に連結されて回転駆動するスプロケットとを備えることを特徴とする構造物の肉盛溶接装置。
  2. 請求項1記載の構造物の肉盛溶接装置において、前記溶接トーチには、オシレート機構が設けられていることを特徴とする構造物の肉盛溶接装置。
  3. 請求項1又は2記載の構造物の肉盛溶接装置において、前記溶接トーチと前記構造物の内面との距離を測定する距離センサーが設けられていることを特徴とする構造物の肉盛溶接装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物の肉盛溶接装置において、前記溶接機は、パルス溶接機であることを特徴とする構造物の肉盛溶接装置。
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