JP4846114B2 - 不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法、および、該製造方法により製造した触媒を用いる不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法 - Google Patents
不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法、および、該製造方法により製造した触媒を用いる不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコール(以下、TBAという)、メチル-tert-ブチルエーテル(以下、MTBEという)を分子状酸素を用いて気相接触酸化し、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する際に用いられる、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法、および、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロピレン、イソブチレン、TBAまたはMTBEを気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒やその製造方法については数多くの提案がなされている。
【0003】
このような触媒の多くは、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む組成を有しており、工業的にはこのような組成の成形触媒が使用される。これらはその成形方法により押出成形触媒や担持成形触媒等に分類される。通常、押出成形触媒は触媒成分を含む粒子を混練りし、押出成形する工程を経て製造され、担持成形触媒は触媒成分を含む粉体を担体に担持させる工程を経て製造される。
【0004】
押出成形触媒に関しては、例えば、製造の際にグラファイトを添加して物理的強度や選択率を向上させる方法(特開昭60−150834号公報)、成形体の形状および物性を特定したもの(特公昭62−36740号公報)等が提案されている。また、特開平7−16464号公報には、触媒を押出成形する際にある種のセルロース誘導体を添加する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、これら公知の方法で得られる触媒は、触媒活性、目的生成物の選択性などの点で工業触媒としては必ずしも十分ではなく、一般に工業的見地からさらなる改良が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、触媒活性と、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸選択性とに優れた不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法、および、前記製造方法を用いて触媒を予め製造し、予め製造された触媒を用いる、高活性、高選択性の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により解決できる。
本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法は、下記(1)あるいは(2)に記載する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造に利用される。
(1)プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する際に用いられる、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒であって、モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子に、β−1,3−グルカンおよび液体を加えて混練りしたものを押出成形した不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒。
(2)プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する際に用いられる、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒であって、モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子に、β−1,3−グルカン、セルロース誘導体および液体を加えて混練りしたものを押出成形した不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒。
本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法は、下記の(3)あるいは(4)に記載する製造方法である。
(3)プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する際に用いられる、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒の製造方法であって、モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子に、β−1,3−グルカンおよび液体を加えて混練りしたものを押出成形することを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。
(4)プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する際に用いられる、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒の製造方法であって、モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子に、β−1,3−グルカン、セルロース誘導体および液体を加えて混練りしたものを押出成形することを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。
本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法を用いて触媒を予め製造し、予め製造された触媒を用いる、高活性、高選択性の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法は、下記の(5)に記載する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法である。
(5)不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の存在下で、プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する方法であって、
不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒を、前記(3)または(4)に記載する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法により予め製造し、
予め製造された前記不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の存在下で、プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する
ことを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の触媒は、プロピレン、イソブチレン、TBAまたはMTBEを反応原料とし、この反応原料を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成するために用いられるものである。反応原料は1種を用いても、これら2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒は、触媒活性、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸選択性に優れており、この触媒を用いることで収率よく不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造することができる。
【0009】
ここで、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸とは、具体的には、反応原料がプロピレンの場合にはアクロレインおよびアクリル酸を指し、それ以外の反応原料の場合にはメタクロレインおよびメタクリル酸を指す。なお、触媒組成や反応条件によっては不飽和アルデヒドまたは不飽和カルボン酸のいずれかのみが生成する場合もあるが、本発明はこのような場合も含んでいる。
【0010】
本発明の触媒は、触媒成分として少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒である。触媒成分としては、他に、ケイ素、コバルト、ニッケル、クロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタル、亜鉛、リン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモン、チタン、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム等を含んでいてもよい。
【0011】
このような少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒は、一般に(1)触媒成分を含む粒子を製造する工程、(2)得られた触媒成分を含む粒子等を混練りする工程、(3)得られた混練り品を押出成形する工程、(4)乾燥および/または熱処理する工程を経て製造される。
【0012】
本発明において、(1)の工程は特に限定されず、従来公知の種々の方法が適用できるが、通常、少なくともモリブデン、ビスマス、鉄を含む水性スラリーを乾燥し、必要に応じてさらに粉砕して粒子状にする。
【0013】
少なくともモリブデン、ビスマス、鉄を含む水性スラリーを製造する方法は特に限定されず、成分の著しい偏在を伴わない限り、従来からよく知られている沈殿法、酸化物混合法等の種々の方法を用いることができる。
【0014】
水性スラリーに溶解する触媒成分の原料としては、各元素の酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、アンモニウム塩、ハロゲン化物等を使用することができる。例えば、モリブデン原料としてはパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン等が挙げられる。触媒成分の原料は各元素に対して1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0015】
水性スラリーを乾燥して粒子状にする方法は特に限定されず、例えば、スプレー乾燥機を用いて乾燥する方法、スラリードライヤーを用いて乾燥する方法、ドラムドライヤーを用いて乾燥する方法、蒸発乾固して塊状の乾燥物を粉砕する方法等が適用できる。中でも、乾燥と同時に粒子が得られること、得られる粒子の形状が整った球形であることから、スプレー乾燥機を用いて乾燥球状粒子を得ることが好ましい。乾燥条件は乾燥方法により異なるが、スプレー乾燥機を用いる場合、入口温度は通常100〜500℃、出口温度は通常100℃以上、好ましくは105〜200℃である。
【0016】
このようにして得られた乾燥粒子は触媒原料等に由来する硝酸等の塩を含んでいることがあり、これらの塩を粒子の成形後に焼成により分解すると成形品の強度が低下する恐れがある。このため、粒子は乾燥するだけではなく、この時点で焼成して焼成粒子としておくことが好ましい。焼成条件は特に限定されず、公知の焼成条件を適用することができる。通常、焼成は、酸素、空気、窒素、窒素酸化物等の存在下、200〜600℃の温度範囲で行われ、焼成時間は目的とする触媒によって適宜選択される。
【0017】
触媒成分を含む粒子の平均粒子直径は、大きくなると成形後の粒子間に大きな空隙、すなわち大きな細孔が形成されて選択率が向上する傾向があり、小さくなると単位体積当たりの粒子同士の接触点が増加するので得られる触媒成形体の機械的強度が向上する傾向がある。これらを考慮すると、平均粒子直径は10μm以上、特に20μm以上が好ましく、150μm以下、特に100μm以下が好ましい。
【0018】
次に(2)の工程では、(1)の工程で得られた粒子、液体およびβ−1,3−グルカンを混合したものを混練りする。
【0019】
混練りに使用する装置は特に限定されず、例えば、双腕型の攪拌羽根を使用するバッチ式の混練り機、軸回転往復式やセルフクリーニング型等の連続式の混練り機等が使用できるが、混練り品の状態を確認しながら混練りを行うことができる点ではバッチ式が好ましい。また、混練りの終点は、通常目視または手触りによって判断する。
【0020】
(2)の工程で用いる液体としては、水やアルコールが好ましく、このようなアルコールとしては、例えばエタノール、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。中でも、経済性と取り扱い性の点から、水が特に好ましい。これらの液体は1種を用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
液体の使用量は、粒子の種類や大きさ、液体の種類等により適宜選択されるが、通常は(1)の工程で得られた乾燥粒子または焼成粒子100質量部に対して10〜70質量部であり、好ましくは20質量部以上または60質量部以下である。
【0022】
(2)の工程で用いるβ−1,3−グルカンの起源は特に限定されないが、微生物起源、植物起源および動物起源のものが好ましい。これらβ−1,3−グルカンは保水性を有しており、成形体により多くの水分を含めることができるので、最終的な触媒中に好ましい細孔が発現し、より選択性の高い触媒を製造することができる。また、これらβ−1,3−グルカンの添加により成形性を向上させることができる。
【0023】
上記したβ−1,3−グルカンとしては、例えば、カードラン、ラミナラン、パラミロン、カロース、パキマン、スクレログルカン等を挙げることができる。
【0024】
特に、本発明においては、微生物起源のβ−1,3−グルカンが好ましく、したがってカードランやパラミロン等が好ましく用いられ、特にカードランが好ましく用いられる。
【0025】
β−1,3−グルカンは1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0026】
(2)の工程においてこれらのβ−1,3−グルカンを用いた場合、最終的な触媒中に好ましい細孔が発現し、触媒活性、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の選択性に優れた触媒が得られる。
【0027】
β−1,3−グルカンは、未精製のまま用いてもよく、精製して用いてもよいが、不純物としての金属や強熱残分は、触媒性能を低下させることがあるため、より少ない方が好ましい。
【0028】
β−1,3−グルカンの使用量は、粒子の種類や大きさ、液体の種類等により適宜選択されるが、通常は(1)の工程で得られた粒子100質量部に対して0.05〜15質量部であり、好ましくは0.1質量部以上または10質量部以下である。β−1,3−グルカンの添加量が多くなるほど成形性が向上する傾向があり、少なくなるほど成形後の熱処理等の後処理が簡単になる傾向がある。
【0029】
(2)の工程においては、上述したようなβ−1,3−グルカンとともに、成形助剤を用いることができる。本発明においては、前記β−1,3−グルカンとともに、成形助剤としてセルロース誘導体を用いた場合、さらに活性、選択性に優れた触媒が得られる。
【0030】
このようなセルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。中でも、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましい。セルロース誘導体は1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0031】
これらは、2%水溶液、20℃における粘度が1000〜10000Pam・sの範囲のものが、成形性がよいため、好ましい。
【0032】
セルロース誘導体の使用量は、粒子の種類や大きさ、液体の種類等により適宜選択されるが、通常は(1)の工程で得られた粒子100質量部に対して0.05〜15質量部であり、好ましくは0.1質量部以上または10質量部以下である。セルロース誘導体の添加量が多くなるほど成形性が向上する傾向があり、少なくなるほど成形後の熱処理等の後処理が簡単になる傾向がある。
【0033】
β−1,3−グルカンとセルロース誘導体との合計使用量は、通常、(1)の工程で得られた粒子100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、また、20質量部以下が好ましい。
【0034】
次に(3)の工程では、(2)の工程で得られた混練り品を押出成形する。
【0035】
触媒成分を含む粒子にβ−1,3−グルカン、セルロース誘導体および液体を添加して混練後、押出成形する際には、オーガー式押出成形機、ピストン式押出成形機などを用いることができる。
【0036】
押出成形による成形体の形状としては特に限定はなく、リング状、円柱状、星型状などの任意の形状に成形することができる。
【0037】
次に(4)の工程では、(3)の工程で得られた触媒成形体を乾燥、焼成して触媒(製品)を得る。
【0038】
乾燥方法は特に限定されず、一般的に知られている熱風乾燥、湿度乾燥、遠赤外線乾燥またはマイクロ波乾燥などの方法を任意に用いることができる。乾燥条件は、目的とする含水率とすることができれば適宜選択することができる。
【0039】
乾燥成形品は通常焼成するが、(1)の工程で粒子を焼成している場合等は省略することも可能である。焼成条件については特に限定はなく、公知の焼成条件を適用することができる。通常は200〜600℃の温度範囲で行われる。
【0040】
また、乾燥工程を省略し、焼成のみを行なってもよい。
【0041】
本発明の方法で製造される少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む触媒は、下記一般式(I)で表される組成を有することが好ましい。
【0042】
MoaBibFecMdXeYfZgSihOi (I)
式中、Mo、Bi、Fe、SiおよびOはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素および酸素を示し、Mはコバルトおよびニッケルからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Xはクロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタルおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Yはリン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモンおよびチタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。
【0043】
a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比率を表し、a=12のときb=0.01〜3、c=0.01〜5、d=1〜12、e=0〜8、f=0〜5、g=0.001〜2、h=0〜20であり、iは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比率である。
【0044】
また、本発明においては、従来公知のグラファイトやケイソウ土などの無機化合物、ガラス繊維、セラミックファイバーや炭素繊維などの無機ファイバーなどを添加することができる。添加は(2)の工程、混練りする際に行なえばよい。
【0045】
本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法では、本発明の方法で製造した触媒の存在下、反応原料であるプロピレン、イソブチレン、TBAまたはMTBEと分子状酸素とを含む原料ガスを気相接触酸化する。反応は、通常、固定床で行なう。また、触媒層は1層でも2層以上でもよい。
【0046】
この際、反応管内において、触媒はシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、チタニア、マグネシア、セラミックボールやステンレス鋼等の不活性担体で希釈されていてもよい。また、(2)の工程、混練りする際にこれらの不活性担体を添加してもよい。
【0047】
原料ガス中の反応原料であるプロピレン、イソブチレン、TBAまたはMTBEの濃度は、広い範囲で変えることができるが、1〜20容量%が好ましい。
【0048】
分子状酸素源としては空気を用いることが経済的であるが、必要ならば純酸素で富化した空気等も用いうる。原料ガス中の反応原料と酸素のモル比(容量比)は1:0.5〜1:3の範囲が好ましい。
【0049】
原料ガスは反応原料と分子状酸素以外に水を含んでいることが好ましく、また窒素、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して用いることが好ましい。原料ガス中の水の濃度は、1〜45容量%が好ましい。
【0050】
反応圧力は常圧から数100kPaまでが好ましい。反応温度は通常200〜450℃の範囲で選ぶことができるが、特に250〜400℃の範囲が好ましい。接触時間は1.5〜15秒が好ましい。
【0051】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。
【0052】
実施例および比較例中の「部」は質量部であり、混練りにはバッチ式の双腕型の攪拌羽根を備えた混練り機を使用した。また、原料ガスおよび反応ガスの分析はガスクロマトグラフィーにより行った。触媒組成は触媒原料の仕込み量から求めた。
【0053】
実施例および比較例中の原料オレフィン、TBAまたはMTBEの反応率(以下、反応率という)、生成する不飽和アルデヒドまたは不飽和カルボン酸の選択率は次式により算出した。
【0054】
反応率(%)=A/B×100
不飽和アルデヒドの選択率(%)=C/A×100
不飽和カルボン酸の選択率(%)=D/A×100
ここで、Aは反応した原料オレフィン、TBAまたはMTBEのモル数、Bは供給した原料オレフィン、TBAまたはMTBEのモル数、Cは生成した不飽和アルデヒドのモル数、Dは生成した不飽和カルボン酸のモル数である。
【0055】
<実施例1>
純水1000部に、パラモリブデン酸アンモニウム500部、パラタングステン酸アンモニウム6.2部、硝酸カリウム1.4部、三酸化アンチモン27.5部および三酸化ビスマス55.0部を加え、加熱攪拌した(A液)。別に純水1000部に、硝酸第二鉄114.4部、硝酸コバルト295.3部および硝酸亜鉛35.1部を順次加え、溶解した(B液)。A液にB液を加えて水性スラリーとした後、この水性スラリーをスプレー乾燥機を用いて平均粒径60μmの乾燥球状粒子とした。そして、この乾燥球状粒子を300℃で1時間焼成を行い、触媒焼成物とした。
【0056】
このようにして得られた触媒焼成物500部に対してカードラン25部を加え、乾式混合した。ここに純水160部を混合し、混練り機で粘土状物質になるまで混合(混練り)した後、オーガー式押出し成形機を用いて押し出し成形し、外径5mm、内径2mm、長さ5mmの触媒成形体を得た。
【0057】
次いで、得られた触媒成形体を110℃熱風乾燥機を用いて乾燥を行い、触媒成形体の乾燥品を得た。そして、この触媒成形体を510℃で3時間再度焼成を行い、触媒成形体の最終焼成品を得た。
【0058】
得られた触媒成形体の酸素以外の元素の組成(以下同じ)は、
Mo12W0.1Bi1.0Fe1.2Sb0.8Co4.3Zn0.5K0.06
であった。
【0059】
この触媒成形体をステンレス製反応管に充填し、プロピレン5%、酸素12%、水蒸気10%および窒素73%(容量%)の原料ガスを用い、常圧下、接触時間3.6秒、反応温度310℃で反応させた。その反応結果は、プロピレンの反応率99.0%、アクロレインの選択率91.1%、アクリル酸の選択率6.5%であった。目的物以外の副生率は2.4%であった。
【0060】
<実施例2>
実施例1において、カードラン25部の代わりに、カードラン5部とメチルセルロース25部とを加えた以外は、実施例1と同様に触媒成形体を製造し、反応を行った。その反応結果は、プロピレンの反応率99.0%、アクロレインの選択率91.1%、アクリル酸の選択率6.6%であった。目的物以外の副生率は2.3%であった。
【0061】
<比較例1>
実施例1において、カードランを加えずに、得られた触媒焼成物500部に対して純水160部だけを添加した以外は、実施例1と同様に触媒成形体を製造し、反応を行った。得られた成形体は非常に保形性の低いものであった。その反応結果は、プロピレンの反応率98.6%、アクロレインの選択率87.0%、アクリル酸の選択率6.1%であった。目的物以外の副生率は6.9%であった。
【0062】
<比較例2>
実施例1において、カードラン25部の代わりに、メチルセルロース25部を加えた以外は、実施例1と同様に触媒成形体を製造し、反応を行った。その反応結果は、プロピレンの反応率98.9%、アクロレインの選択率90.4%、アクリル酸の選択率6.2%であった。目的物以外の副生率は3.4%であった。
【0063】
<実施例3>
純水1000部に、パラモリブデン酸アンモニウム500部、パラタングステン酸アンモニウム6.2部、硝酸セシウム23.0部、三酸化アンチモン24.0部および三酸化ビスマス33.0部を加え、加熱攪拌した(A液)。別に純水1000部に、硝酸第二鉄190.7部、硝酸ニッケル75.5部、硝酸コバルト453.3部、硝酸鉛31.3部および85%リン酸2.8部を順次加え、溶解した(B液)。A液にB液を加えて水性スラリーとした後、この水性スラリーをスプレー乾燥機を用いて平均粒径60μmの乾燥球状粒子とした。そして、この乾燥球状粒子を300℃で1時間、510℃で3時間焼成を行い、触媒焼成物とした。
【0064】
このようにして得られた触媒焼成物500部に対してカードラン20部を加え、乾式混合した。ここに純水160部を混合し、混練り機で粘土状物質になるまで混合(混練り)した後、ピストン式押出し成形機を用いて押し出し成形し、外径5mm、内径2mm、長さ5mmの触媒成形体を得た。
【0065】
次いで、得られた触媒成形体を110℃熱風乾燥機を用いて乾燥を行い、触媒成形体の乾燥品を得た。そして、この触媒成形体を400℃で3時間再度焼成を行い、触媒成形体の最終焼成品を得た。
【0066】
得られた触媒成形体の酸素以外の元素の組成は、
Mo12W0.1Bi0.6Fe2Sb0.7Ni1.1Co6.6Pb0.4P0.1Cs0.5
であった。
【0067】
この触媒成形体をステンレス製反応管に充填し、イソブチレン5%、酸素12%、水蒸気10%および窒素73%(容量%)の原料ガスを用い、常圧下、接触時間3.6秒、反応温度340℃で反応させた。その反応結果は、イソブチレンの反応率97.9%、メタクロレインの選択率89.9%、メタクリル酸の選択率3.9%であった。目的物以外の副生率は6.2%であった。
【0068】
<実施例4>
実施例3おいて、カードラン20部の代わりに、カードラン5部とメチルセルロース20部とを加えた以外は、実施例3と同様に触媒成形体を製造し、反応を行った。その反応結果は、イソブチレンの反応率98.0%、メタクロレインの選択率89.9%、メタクリル酸の選択率4.0%であった。目的物以外の副生率は6.1%であった。
【0069】
<実施例5>
実施例3おいて、カードラン20部の代わりに、カードラン5部とヒドロキシプロピルメチルセルロース20部とを加えた以外は、実施例3と同様に触媒成形体を製造し、反応を行った。その反応結果は、イソブチレンの反応率98.2%、メタクロレインの選択率89.9%、メタクリル酸の選択率4.0%であった。目的物以外の副生率は6.1%であった。
【0070】
<比較例3>
実施例3おいて、カードラン20部の代わりに、メチルセルロース20部を加えた以外は、実施例3と同様に触媒成形体を製造し、反応を行った。その反応結果は、イソブチレンの反応率97.5%、メタクロレインの選択率89.5%、メタクリル酸の選択率3.5%であった。目的物以外の副生率は7.0%であった。
【0071】
【発明の効果】
本発明の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法を用いることで製造される触媒は、触媒活性、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸選択性に優れており、この触媒を用いることで、収率よく不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造することができる。
Claims (8)
- プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する際に用いられる、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒の製造方法であって、
モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子に、β−1,3−グルカンおよび液体を加えて混練りしたものを押出成形する
ことを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。 - プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する際に用いられる、少なくともモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む押出成形触媒の製造方法であって、
モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子に、β−1,3−グルカン、セルロース誘導体および液体を加えて混練りしたものを押出成形する
ことを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。 - 前記セルロース誘導体がメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロースのいずれか1種以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。 - 前記β−1,3−グルカンがカードランである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。 - 前記液体が水である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。 - 前記モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子の平均粒子直径は、10μm以上、150μm以下である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。 - 前記モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む粒子の100質量部に対して、β−1,3−グルカンの添加量は、0.1質量部以上、10質量部以下である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。 - 不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の存在下で、プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する方法であって、
不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒を、請求項1〜7のいずれか一項に記載する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法により予め製造し、
予め製造された前記不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸合成用触媒の存在下で、プロピレン、イソブチレン、tert-ブチルアルコールまたはメチル-tert-ブチルエーテルのいずれか1種以上を分子状酸素により気相接触酸化して不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を合成する
ことを特徴とする不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の合成方法。
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