以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアロック装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1および図2は、本発明の実施の形態であるドアロック装置を示したものである。ここで例示するドアロック装置は、四輪自動車の前席右側に配置された前方ヒンジのサイドドア(右ハンドル車においては運転席側のドアD)においてアウトサイドハンドル1とラッチ機構20との間に設けられるもので、主ケース2および副ケース3を備えている。これら主ケース2および副ケース3は、例えば、それぞれを合成樹脂によって成形したもので、互いに接合した後、ネジ等の締結手段(図示せず)によって相互に締結することによりハウジング10を構成する。なお、主ケース2と副ケース3との接合面には、O−リング(図示せず)を介在させてあり、所望の水密性が確保してある。
これら主ケース2および副ケース3によって構成されるハウジング10は、ドアDの左右方向に沿って延在するラッチ機構収容部11と、このラッチ機構収容部11の室内側に位置する端部からドアDの前後方向に沿って延在するロック機構収容部12とを備え、上方から見た場合にほぼL字状を呈している。
ラッチ機構収容部11は、その高さ方向のほぼ中央となる位置に、室内側から室外側に向けて略水平に延在する水平切欠溝13を有したもので、上述したラッチ機構20を内部に収容している。
ラッチ機構20は、従前のものと同様に、四輪自動車の車両本体側に設けたストライカSを噛合保持するためのもので、図3に示すように、ラッチ21とラチェット22とを備えて構成してある。
ラッチ21は、ラッチ機構収容部11の水平切欠溝13よりも上方となる位置に、車両本体の前後方向に沿って略水平に延在するラッチ軸23を介して回転可能に配設したもので、噛合溝21a、フック部21bおよび係止部21cを有している。
噛合溝21aは、ラッチ21の外周面からラッチ軸23に向けて形成したもので、ストライカSを収容することのできる幅に形成してある。
フック部21bは、噛合溝21aを下方に向けて開口させた場合に該噛合溝21aよりも室内側に位置する部分である。このフック部21bは、図3−3に示すように、ラッチ21を反時計回りに回転させた場合にラッチ機構収容部11の水平切欠溝13を横切る位置(ラッチ位置)で停止する一方、図3−1に示すように、ラッチ21を時計回りに回転させた場合に水平切欠溝13を開放する位置(開放位置)で停止するように構成してある。
係止部21cは、噛合溝21aを下方に向けて開口させた場合に該噛合溝21aよりも室外側に位置する部分である。この係止部21cは、図3−1に示すように、ラッチ21を時計回りに回転させた場合に水平切欠溝13を横切り、かつ、この水平切欠溝13の奥方(室外側)に向けて漸次上方に傾斜する状態で停止するように構成してある。なお、図には明示していないが、ラッチ21とラッチ機構収容部11との間には、図3においてラッチ21を常時時計回りに向けて付勢するラッチバネが設けてある。
ラチェット22は、ラッチ機構収容部11の水平切欠溝13よりも下方、かつ、ラッチ軸23よりも室内側となる位置に、車両本体の前後方向に沿って略水平に延在するラチェット軸24を介して回転可能に配設したもので、係合部22aおよび作用部22bを有している。
係合部22aは、ラチェット軸24から室外側に向けて径外方向に延在する部分であり、ラチェット22が図3において反時計回りに回転した場合にその突出端面を介して上述したラッチ21のフック部21bおよび係止部21cに係合することが可能である。
作用部22bは、ラチェット軸24から室内側に向けて径外方向に延在する部分である。このラチェット22には、車両前側となる位置に当該ラチェット22とともに一体的となってラチェット軸24の軸心回りに回転するラチェットレバー25が設けてある。ラチェットレバー25は、ラチェット軸24からラチェット22の作用部22bと同一方向に向けて延在した当接部25aを有したもので、連結ピン26によってラチェット22と連結してある。また、図には明示していないが、ラチェット22とラッチ機構収容部11との間には、図3においてラチェット22を常時反時計回りに向けて付勢するラチェットバネが設けてある。
上記のように構成したラッチ機構20では、ドアDが車両本体に対して開成状態にある場合、図3−1に示すように、ラッチ21が開放位置に配置されることになる(開放状態)。この状態からドアDを閉動作させると、車体本体側に設けたストライカSがラッチ機構収容部11の水平切欠溝13に進入し、やがてストライカSがラッチ21の係止部21cに当接することになる。この結果、ラッチ21がラッチバネ(図示せず)の弾性力に抗して図3において反時計回りに回転する。この間、ラチェット22は、ラチェットバネ(図示せず)の弾性力によって係合部22aの突出端面がラッチ21の外周面に摺接することになり、該ラッチ21の外周面形状に応じて適宜ラチェット軸24の軸心回りに回転する。
上述した状態からさらにドアDを閉動作すると、水平切欠溝13に対するストライカSの進入量が漸次増大するため、ラッチ21が反時計回りにさらに回転するようになり、図3−2に示すように、やがてラチェット22の係合部22aがラッチ21の噛合溝21aに至る。この状態においては、ラッチ21の係止部21cがラチェット22の係合部22aに当接することになるため、ラッチバネ(図示せず)の弾性復元力に抗して当該ラッチ21の時計回りの回転が阻止されることになる。しかも、ラッチ21のフック部21bが水平切欠溝13を横切るように配置されるため、該フック部21bによってストライカSが水平切欠溝13から離脱する方向に移動する事態、つまりドアDの車両本体に対する開動作が阻止されるようになる(半ラッチ状態)。
上述した半ラッチ状態からドアDをさらに閉動作させると、水平切欠溝13を進入するストライカSにより、係止部21cを介してラッチ21が反時計回りにさらに回転し、ストライカSが水平切欠溝13の奥方(室外側)に至る。この間、ラチェット22は、係合部22aの上面にラッチ21のフック部21bが当接することによりラチェットバネ(図示せず)の弾性力に抗して図3において時計回りに回転し、ラッチ21のフック部21bが通過した時点でラチェットバネ(図示せず)の弾性復元力により直ちに反時計回りに回転するようになる。この結果、図3−3に示すように、ラッチ21のフック部21bがラチェット22の係合部22aに当接することになるため、ラッチバネ(図示せず)の弾性復元力に抗して当該ラッチ21の時計回りの回転が阻止されることになる。この状態においても、ラッチ21のフック部21bが水平切欠溝13を横切るように配置されるため、該フック部21bによってストライカSが水平切欠溝13の奥方(室外側)から離脱する方向に移動する事態が阻止されるようになり、結局、ドアDが車両本体に対して閉じた状態に維持される(フルラッチ状態)。
さらに、上述したフルラッチ状態からラチェットバネ(図示せず)の弾性力に抗してラチェット22の作用部22b、もしくはラチェットレバー25の当接部25aを図3において上方に回転させると、ラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態が解除され、ラッチ21がラッチバネ(図示せず)の弾性復元力により図3において時計回りに回転する。この結果、図3−1に示すように、水平切欠溝13が開放され、ストライカSが水平切欠溝13から離脱する方向に移動可能となり、ドアDを車両本体に対して開動作させることができるようになる。
一方、ハウジング10のロック機構収容部12には、図1および図2に示すように、オープンレバー30、インナーハンドルレバー(図示せず)およびロック機構500が収容してある。
オープンレバー30は、ラッチ機構20のラチェット22よりもさらに下方となる位置に、車両本体の前後方向に沿って略水平に延在するオープンレバー軸31を介して回転可能に配設したもので、非操作位置から操作位置に変位可能となっている。オープンレバー30は、オープン作用端部30a、オープン動作端部30bおよび受圧部30cを有している。
オープン作用端部30aは、オープンレバー軸31から室外側に向けて径外方向に延在した部分であり、その延在端部がハウジング10の外部に突出している。このオープン作用端部30aにおいてハウジング10の外部に突出する部分には、ドアDに設けたアウトサイドハンドル1との間を連係するリンクやワイヤ等のアウトサイドハンドル連係手段32を接続してある。より詳細には、アウトサイドハンドル1を開ドア操作した場合に、オープンレバー30が図1において反時計回りに回転動作することにより、非操作位置から操作位置に移動するようにアウトサイドハンドル連係手段32を接続してある。
オープン動作端部30bは、オープンレバー軸31から室内側に向けて径外方向に延在した部分であり、その延在端部がハウジング10の内部においてラチェットレバー25における当接部25aの下方域に位置している。
受圧部30cは、オープン動作端部30bとオープンレバー軸31との間においてオープンレバー30の下縁部から前方に向けて屈曲した部分である。なお、図には明示していないが、オープンレバー30とロック機構収容部12との間には、図1においてオープンレバー30を常時時計回りに向けて付勢するオープンレバーバネが設けてある。
インナーハンドルレバー(図示せず)は、オープンレバー30の下方域に、車両本体の左右方向に沿って略水平に延在するインナーレバー軸(図示せず)を介して揺動可能に配設したもので、インナー作用端部(図示せず)および押圧部(図示せず)を有している。
インナー作用端部(図示せず)は、インナーレバー軸(図示せず)から車両前方側に向けて下方に傾斜延在する部分であり、その延在端部がハウジング10の外部に突出している。このインナー作用端部(図示せず)においてハウジング10の外部に突出する部分には、ドアDの室内側に設けたインサイドハンドル(図示せず)との間を連係するリンクやワイヤ等のインサイドハンドル連係手段(図示せず)を接続してある。より詳細には、インサイドハンドル(図示せず)を開ドア操作した場合に、インナーハンドルレバー(図示せず)が揺動するようにインサイドハンドル連係手段(図示せず)を接続してある。
押圧部(図示せず)は、インナーハンドルレバー(図示せず)を時計回りに揺動させた場合にオープンレバー30の受圧部30cに当接してこれを押圧する部分である。なお、インナーハンドルレバー(図示せず)とロック機構収容部12との間には、インナーハンドルレバー(図示せず)を常時付勢するインナーレバーバネ(図示せず)が設けてある。
ロック機構500は、アウトサイドハンドル1の開ドア操作によるオープンレバー30の回転動作をラッチ機構20に伝達するアンロック状態(図4参照)と、アウトサイドハンドル1の開ドア操作によるオープンレバー30の回転動作をラッチ機構20に伝達しないロック状態(図5参照)とに切り換わるもので、主ケース2における副ケース3との対向面、つまり主ケース2において副ケース3によって覆われる面に、ロックレバー510、コネクトレバー520、パニックレバー530、オープンリンク540、キーサブレバー550およびキーレバー560を備えている。
図4〜図9に示すように、ロックレバー510は、オープンレバー30におけるオープン動作端部30bの側方域に、車両本体の左右方向に沿って略水平に延在するロックレバー軸511を介して回動可能に配設したもので、コネクトレバー連結部512、ボタン連結部513およびドリブンギア部514を有している。
コネクトレバー連結部512は、ロックレバー軸511から径外方向に延在する部分であり、コネクトレバー連結孔515が形成してある(図7参照)。コネクトレバー連結孔515は、コネクトレバー連結部512の先端部において該コネクトレバー連結部512の延在方向に沿って形成した長孔である。
ボタン連結部513は、ロックレバー軸511からコネクトレバー連結部512とは逆方向に向けて径外方向に延在する部分である。このボタン連結部513には、ドアDの室内側に設けたインサイドロックボタン(図示せず)との間を連係するリンクやワイヤ等のロックボタン連係手段(図示せず)を接続してある。より詳細には、インサイドロックボタン(図示せず)をロック操作した場合に、ロックレバー510が図4において反時計回りに回転動作する一方、インサイドロックボタン(図示せず)をアンロック操作した場合に、ロックレバー510が図5において時計回りに回転動作するようにロックボタン連係手段(図示せず)を接続してある。
ドリブンギア部514は、図4に示すように、ロックレバー軸511を中心としてコネクトレバー連結部512およびボタン連結部513の間に扇形状に形成したもので、間欠歯車(図示せず)との間において一方向の動力伝達手段を構成している。
これらドリブンギア部514および間欠歯車(図示せず)による動力伝達手段では、ロックレバー510を図4に示す位置(以下、単にアンロック位置という)から図5に示す位置(以下、単にロック位置という)まで反時計回りに回転させた場合、ドリブンギア部514が間欠歯車(図示せず)に歯合しないため、間欠歯車(図示せず)を駆動する駆動モータ(図示せず)を回転させることはない。同様に、ロック位置からアンロック位置までロックレバー510を時計回りに回転させた場合にも、間欠歯車(図示せず)を駆動する駆動モータが回転することはない。
これに対して、例えば間欠歯車(図示せず)を一方向に回転させた場合には、間欠歯車(図示せず)がドリブンギア部514を介してロックレバー510を反時計回りに回転させてロック位置に変位させることになる。なお、間欠歯車(図示せず)の回転によってロックレバー510をアンロック位置からロック位置に変位させた後においては、もはや間欠歯車(図示せず)によってロックレバー510を回転させることができず、中立復帰バネ(図示せず)の弾性復元力により、ロックレバー510を回転させることなく間欠歯車(図示せず)が中立状態に復帰する。
同様に、間欠歯車を他方向に回転させた場合には、間欠歯車(図示せず)がドリブンギア部514を介してロックレバー510を時計回りに回転させてアンロック位置に変位させることになる。なお、間欠歯車(図示せず)の回転によってロックレバー510をロック位置からアンロック位置に変位させた後においては、もはや間欠歯車(図示せず)によってロックレバー510を回転させることができず、中立復帰バネ(図示せず)の弾性復元力により、ロックレバー510を回転させることなく間欠歯車(図示せず)が中立状態に復帰する。
コネクトレバー520は、ロック機構収容部12の上部に、車両本体の左右方向に沿って略水平に延在するコネクトレバー軸521を介して揺動可能に配設し、該コネクトレバー軸521から下方に向けて延在する部分である。このコネクトレバー520には、連結用凸部522および切換用受圧部523を設けてある。連結用凸部522は、コネクトレバー520の先端部において室内側に位置する面から車両本体の左右方向に沿って略水平に突出した円柱状部分であり、上述したロックレバー510のコネクトレバー連結孔515に装着してある。切換用受圧部523は、コネクトレバー520の基端部において室外側に位置する面に形成した段部であり、コネクトレバー軸521を中心とした径方向に沿って延在する2つの受圧面(押圧面)を有している。
パニックレバー530は、上述したコネクトレバー軸521を介して揺動可能に配設し、該コネクトレバー軸521から下方に向けて延在する部分である。このパニックレバー530には、連結用凸部531および切換用受圧部532が設けてある。連結用凸部531は、パニックレバー530の先端部において室内側に位置する面から車両本体の左右方向に沿って略水平に突出した円柱状部分である。切換用受圧部532は、パニックレバー530の基端部において室外側に位置する面に形成した段部であり、コネクトレバー軸521を中心とした径方向に沿って延在する二つの受圧面(押圧面)を有している。
コネクトレバー520とパニックレバー530との間には、図4〜図9においてパニックレバー530を常時反時計回りに向けて付勢するパニックスプリング533が設けてある。
オープンリンク540は、その基端部に装着孔541を有したもので、該装着孔541にオープンレバー30のオープン動作端部30bを挿通させることにより、このオープン動作端部30bと共に上下動可能、かつ該オープン動作端部30bに対して車両本体の左右方向に沿った軸心回りに揺動可能に支承させてある。このオープンリンク540には、パニックレバー連結部542およびラチェット駆動部543を設けてある。
パニックレバー連結部542は、装着孔541の軸心に対して径外方向に延在する部分であり、その延在端部に形成した連結用溝孔544にパニックレバー530の連結用凸部531を装着することにより、該パニックレバー530に連結してある。具体的には、上述したロックレバー510をアンロック位置に配置した場合、図4に示すように、オープンリンク540のパニックレバー連結部542がほぼ鉛直上方に沿って延在する一方、ロックレバー510をロック位置に配置した場合、オープンリンク540が反時計回りに揺動し、図5に示すように、そのパニックレバー連結部542が左斜め上方に向けて延在されるように連結してある。
ラチェット駆動部543は、図4に示すように、上述したコネクトレバー520をコネクトアンロック位置に配置した場合、ラチェットレバー25における当接部25aの下方域(オープンレバーの操作力がラチェットに伝達可能となる伝達可能位置)に配置される一方、コネクトレバー520をコネクトロック位置に配置した場合、図5に示すように、ラチェットレバー25における当接部25aの下方域から逸脱する位置(オープンレバーの操作力がラチェットに伝達不能となる伝達不能位置)に配置される部分である。
キーサブレバー550は、上述したコネクトレバー軸521を介して揺動可能に配設し、該コネクトレバー軸521から上方に向けて延在する部分である。このキーサブレバー550には、キーレバー連結孔551、ロック位置切換用突起552およびアンロック位置切換用突起553を設けてある。キーレバー連結孔551は、キーサブレバー550の先端部において該キーサブレバー550の延在方向に沿って形成した長孔である。ロック位置切換用突起552およびアンロック位置切換用突起553は、それぞれキーサブレバー550の基端部においてコネクトレバー軸521の中心から径外方向に延在した部分である。これらロック位置切換用突起552およびアンロック位置切換用突起553は、互いの間に上述したコネクトレバー520の切換用受圧部523およびパニックレバー530の切換用受圧部532を介在させた状態で設けてある。
キーレバー560は、ロック機構収容部12におけるキーサブレバー550の延在延長域となる位置に配設してある。キーレバー560は、ドアDに設けたキーシリンダKCからの操作入力部となるもので、キーレバー560は、入力軸部561と連結用凸部562とを有している。
入力軸部561は、キーシリンダKCから延在したキーロッドKRが係合するための部分であり、図2に示すように、その軸心部分にキーロッドKRを装着するための装着穴5611を有している。装着穴5611は、入力軸部561の先端面に開口した有底の穴であり、例えばキーロッドKRの先端部がマイナス(−)となるように形成してある場合、これに嵌合するべく横断面がマイナス(−)となるように形成してある。
連結用凸部562は、キーサブレバー550のキーレバー連結孔551に装着することのできる外径を有した円柱状を成すもので、キーレバー560の先端部上面から突設してある。
このロック機構500においては、入力軸部561の装着穴5611にキーシリンダKCのキーロッドKRが装着してあり、キー操作によるキーシリンダKCの回転が入力軸部561の回転となって入力され、さらにこの入力軸部561の回転が、該入力軸部561の軸心を中心としたキーレバー560の揺動となってキーサブレバー550に伝達される。したがって、キー操作によってキーシリンダKCを所望の方向に回転させることにより、ロック機構500をアンロック状態とロック状態とに切り換えることが可能になる。
上記のように構成したドアロック装置によれば、ロック機構500、並びにこのロック機構500の操作入力部となるキーレバー560がハウジング10の内部に収容され、キーシリンダKCからキーレバー560およびロック機構500に至るまでの間に、自己の軸心回りに回転するキーロッドKRが外部に露出するだけであるため、防盗性の点できわめて有利となる。
上記のように構成したロック機構500では、図4に示すアンロック状態にある場合、上述したように、オープンリンク540のラチェット駆動部543がラチェットレバー25における当接部25aの下方域に配置される。
したがって、アウトサイドハンドル1を開ドア操作し、オープンレバー30を図1において反時計回りに回転動作させることにより、オープンレバー30を非操作位置から操作位置に移動させれば、オープン動作端部30bの上動に伴ってオープンリンク540のラチェット駆動部543がラチェットレバー25の当接部25aを上動させることになり、ラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態が解除され、ドアDを車両本体に対して開動作させることができるようになる。
因に、ロック機構500がアンロック状態にある場合には、インサイドハンドル(図示せず)の開ドア操作によってもドアDを車両本体に対して開動作させることができる。すなわち、インサイドハンドル(図示せず)を開ドア操作した場合には、インナーハンドルレバー(図示せず)が揺動し、押圧部(図示せず)がオープンレバー30の受圧部30cを押圧することによって該オープンレバー30が図1において反時計回りに回転動作されることになり、上記と同様にラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態を解除することができる。
このアンロック状態から、図5に示すように、駆動モータ(図示せず)によってロックレバー510を反時計回りに回転動作させ、あるいは、インサイドロックボタン(図示せず)のロック操作によってロックレバー510を回転動作させることにより、ロックレバー510をアンロック位置からロック位置に回転動作させれば、ロックレバー510のコネクトレバー連結孔515およびコネクトレバー520の連結用凸部522を介して連結したコネクトレバー520が時計回りに回転動作することになり、コネクトレバー520はコネクトアンロック位置からコネクトロック位置に回転動作する。さらにコネクトレバー520の回転動作に伴ってコネクトレバー520の切換用受圧部523がパニックレバー530の切換用受圧部532を押圧し、該パニックレバー530がオープンリンク540を反時計回りに回転動作し、ロック機構500が図5に示すロック状態となる。
このロック状態においては、アウトサイドハンドル1を開ドア操作し、オープンレバー30を図1において反時計回りに回転動作させた場合にも、図6に示すように、オープンリンク540のラチェット駆動部543とラチェットレバー25の当接部25aとが互いに当接することがなく、ラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態も解除されない。この結果、ドアDが車両本体に対して閉じた状態に保持されることになり、車両を施錠することが可能になる。
なお、本実施の形態で適用するロック機構500では、ロック状態にある場合、インサイドハンドル(図示せず)の開ドア操作によってもドアDが車両本体に対して閉じた状態に保持されることになる。しかしながら、ロック機構500としては、インサイドハンドル(図示せず)の開ドア操作に伴ってインナーハンドルレバー(図示せず)が揺動した場合に、該インナーハンドルレバー(図示せず)の揺動によってアンロック状態に復帰させるようにした、いわゆるワンモーション機能を備えるものを適用しても構わない。このワンモーション機能を備えるロック機構を適用した場合には、ロック状態であっても、インナーハンドルレバー(図示せず)を開ドア操作すれば、当該ロック機構がアンロック状態に復帰された後、ラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態を解除することができるようになる。
また、図4に示すアンロック状態から図5に示すロック状態への移行に関しては、必ずしも駆動モータ(図示せず)あるいはインサイドロックボタン(図示せず)のロック操作によるロックレバー510の回転動作に限らず、キーによるロック操作によってキーサブレバー550を回転動作させて行うことも可能である。
上述したロック状態から、図4に示すように、駆動モータ(図示せず)によってロックレバー510を時計回りに回転動作させ、あるいは、インサイドロックボタン(図示せず)のアンロック操作によってロックレバー510を時計回りに回転動作させることにより、ロックレバー510をロック位置からアンロック位置に回転動作させれば、ロックレバー510のコネクトレバー連結孔515およびコネクトレバー520の連結用凸部522を介して連結したコネクトレバー520が反時計回りに回転動作することになり、コネクトレバー520はコネクトロック位置からコネクトアンロック位置に回転動作する。コネクトレバー520が回転動作すると、パニックスプリング533の弾性復元力によりパニックレバー530が反時計回りに回転動作することになり、さらにこのパニックレバー530の回転に伴ってオープンリンク540が時計回りに回転動作し、ロック機構500が図4に示すアンロック状態となる。
また、図5に示すロック状態から図4に示すアンロック状態への移行に関しては、必ずしも駆動モータ(図示せず)あるいはインサイドロックボタン(図示せず)のアンロック操作によるロックレバー510の回転動作に限らず、キーによるアンロック操作によってキーサブレバー550を回転動作させて行うことも可能である。
上述したロック状態から、図6に示すように、アウトサイドハンドル1を開ドア操作し、オープンレバー30を図1において反時計回りに回転動作させた後(オープンレバーは操作位置に移動する)、図7に示すように、駆動モータ(図示せず)によってロックレバー510を時計回りに回転動作させ、あるいは、インサイドロックボタン(図示せず)のアンロック操作によってロックレバーを回転動作させると、ロックレバー510はロック位置からアンロック位置に回転動作する。すると、ロックレバー510のコネクトレバー連結孔515およびコネクトレバー520の連結用凸部522を介して連結したコネクトレバー520が反時計回りに回転動作することになり、コネクトレバー520はコネクトロック位置からコネクトアンロック位置に回転動作する。ここで、コネクトレバー520が回転動作すると、パニックスプリング533の弾性復元力によりパニックレバー530がオープンリンク540を時計回りに回転動作させようとするが、オープンリンク540は、ラチェットレバー25の当接部25aと干渉することになり、パニックスプリング533の弾性力により、オープンリンク540がラチェットレバーにおける当接部25aの下方域から逸脱する位置(伝達不能位置)に留まることになる(パニック状態)。
その後、アウトサイドハンドル1の開ドア操作を中断し、オープンレバーを図1において時計回りに回転動作させると(オープンレバーは非操作位置に戻る)、パニックスプリング533の弾性復元力によりパニックレバー530が反時計回りに回転動作することになり、さらにこのパニックレバー530の回転に伴ってオープンリンク540が時計回りに回転動作し、オープンリンク540のラチェット駆動部543がラチェットレバー25における当接部25aの下方域(伝達可能位置)に移動することになる。
したがって、再び、アウトサイドハンドル1を開ドア操作し、オープンレバー30を図1において反時計回りに回転動作させれば、オープン動作端部30bの上動に伴ってオープンリンク540のラチェット駆動部543がラチェットレバー25の当接部25aを上動させることになり、ラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態が解除され、ドアDを車両本体に対して開動作させることができるようになる。
ところで、衝突事故等により、パニックスプリング533が折損した場合には、駆動モータ(図示せず)によってロックレバー510を時計回りに回転動作させ、あるいは、インサイドロックボタン(図示せず)のアンロック操作によってロックレバー510を時計回りに回転動作させ、ロックレバー510をロック位置からアンロック位置に、コネクトレバー520をコネクトロック位置からコネクトアンロック位置に回転動作させても、パニックスプリング533の弾性復元力が作用しないので、パニックレバー530が反時計回りに回転動作することがない。したがって、オープンリンク540が時計回りに回転動作し、ロック機構500がアンロック状態となることもない。このため、アウトサイドハンドル1あるいはインサイドハンドル(図示せず)を開ドア操作し、オープンレバー30を図1において反時計回りに回転動作させた場合にも、図8に示すように、オープンリンク540のラチェット駆動部543とラチェットレバー25の当接部25aとが互いに当接することがなく、ラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態も解除されない。この結果、ドアDが車両本体に対して保持されることになり、ドアDを開放することができない。
このようにパニックスプリング533が折損した場合において、図9に示すように、キーのアンロック操作によって、キーレバー560を時計回りに回転動作させると、キーレバー560の連結用凸部562およびキーレバー連結孔551を介して連結したキーサブレバー550が反時計回りに回転動作することになる。さらにキーサブレバー550の回転動作に伴ってキーサブレバー550のアンロック位置切換用突起553がパニックレバー530の切換用受圧部532を押圧し、該パニックレバー530がオープンリンク540を時計回りに回転動作し、ラチェットレバー25における当接部25aの下方域(オープンレバーの操作力がラチェットに伝達可能となる伝達可能位置)に移動する。
したがって、この状態で、アウトサイドハンドル1を開ドア操作し、オープンレバー30を図1において反時計回りに回転動作させることにより、オープンレバー30を非操作位置から操作位置に移動させれば、オープン動作端部30bの上動に伴ってオープンリンク540のラチェット駆動部543がラチェットレバー25の当接部25aを上動させることになり、ラッチ21のフック部21bとラチェット22の係合部22aとの当接係合状態が解除され、ドアDを車両本体に対して開動作させることができるようになる。
上述した実施の形態に係るドアロック装置によれば、衝突事故等により、パニックスプリング533が折損した場合であっても、キーによるアンロック操作によりオープンリンク540を伝達不能位置(ラチェットレバー25における当接部25aの下方域から逸脱する位置)から伝達可能位置(ラチェットレバー25における当接部25aの下方域)に移動させることができる。したがって、パニックスプリング533が折損した場合であっても、キーによるアンロック操作によりオープンリンク540を伝達可能位置に移動させた状態で、アウトサイドハンドル1、あるいはインサイドハンドルを開ドア操作することにより、オープンレバー30を非操作位置から操作位置に移動すれば、ドアDを開放することができる。
上述した実施の形態では、ドアロック装置の適用対象として四輪自動車のドアDを例示しているが、四輪自動車以外の車両に設けられるドアであってもよい。また、車両の横面に設けられるドアに限らず、リアドアにももちろん適用可能である。さらに、前方ヒンジである必要もなく、上方ヒンジのドア、後方ヒンジのドア、下方ヒンジのドア、スライドドア等々、その他の態様で開閉するドアに適用しても構わない。