従来技術では、圧電トランスの負荷に短絡電流や過電流が発生した時の保護として、直ちに出力を遮断していた。しかし、直ちに出力を遮断しては、次のように不具合を生ずる場合がある。第一例として、電子写真装置の転写器の動作中に圧電トランスの出力が直ちに遮断されると、用紙の一部にトナーを載せることができなくなるので、始めから転写動作をやり直さなければならないばかりか用紙も無駄になってしまう。第二例として、空気清浄機等の電極が汚れることによって過電流が発生した場合に、電極の性能と過電流との間には密接な関係があるにもかかわらず、過電流を適切に制御する術がなかった。
そこで、本発明の目的は、圧電トランスの負荷に短絡電流又は過電流が流れた時に出力を遮断する場合の不具合を解決し得る、圧電トランスを用いた電源装置を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決する技術について研究を重ねた結果、圧電トランスの負荷短絡時にすぐに出力を遮断するのではなく、徐々に出力電圧及び出力電流を低下させるいわゆるフの字型垂下特性を実現すればよいことに思い至った。本発明は、この知見に基づきなされたものである。
すなわち、本発明に係る電源装置は、印加された駆動電圧を変圧して交流電圧を発生させる圧電トランスと、圧電トランスで発生した交流電圧を直流電圧に変換して負荷へ供給する整流部と、負荷に印加される電圧である出力電圧と負荷を流れる電流である出力電流とを検出する出力検出部と、出力検出部で検出された出力電圧及び出力電流に基づき駆動電圧を制御する駆動電圧制御部と、駆動電圧制御部で制御された駆動電圧を圧電トランスに印加する駆動部と、を備えたものである。そして、駆動電圧制御部は、出力電圧及び出力電流が設定値に達すると出力電圧と出力電流との絶対値が一定比率で低下するように駆動電圧を制御する垂下特性設定部を有する(請求項1〜6)。「一定比率」とは、例えば出力電圧が100Vに対して出力電流が0.1μAという意味である。「絶対値」としたのは、出力電圧及び出力電流に正(プラス)と負(マイナス)があるからである。
本発明では、負荷に短絡電流又は過電流が流れたとき、出力電圧及び出力電流が直ちに遮断されるのではなくそれらの絶対値が一定比率で低下する。したがって、第一例として、電子写真装置の転写器の動作中に圧電トランスの出力が遮断されても、徐々に出力電圧及び出力電流が低下するので、用紙の一部にもトナーを載せることができ、これにより動作のやり直し及び用紙の無駄を救済できる場合が増える。第二例として、空気清浄機等の電極の性能と過電流との関係を予め調べておき、過電流を適切に制御することにより、電極の交換時期や洗浄時期を延ばすことができる。
請求項1記載の電源装置は、次のように構成したものである。整流部は、正の直流電圧を出力する。駆動電圧制御部は、出力電圧を第一電圧設定値に維持しているときに、出力電流が上昇して第一電流設定値に達すると、出力電流を第一電流設定値に維持し、この状態で出力電圧が低下して第二電圧設定値に達すると、垂下特性設定部を用いて出力電圧と出力電流とが一定比率で低下するように、駆動電圧を制御する。
駆動電圧制御部は、次のような出力電圧及び出力電流が得られるように、駆動電圧を制御する。出力電圧が第一電圧設定値を維持しているときに、負荷に短絡電流又は過電流が流れることにより、出力電流が上昇して第一電流設定値に達したとする。このとき、出力電流を第一電流設定値に維持しても、負荷が低インピーダンスになることにより、出力電圧が低下する。そして、出力電圧が低下して第二電圧設定値に達すると、垂下特性設定部を用いて出力電圧と出力電流とを一定比率で低下させる。その結果、出力電圧が低下するほど出力電流が低下することにより、フの字型垂下特性が実現される。このフの字型垂下特性は、定電流制御の領域を有するので、ある程度の出力電流を要する用途に好適である。
請求項2記載の電源装置は、請求項1記載の電源装置において、次のように構成したものである。垂下特性設定部は、出力電圧が第二電圧設定値以下になると、出力検出部で検出される出力電流を出力電圧が低下するほど見かけ上上昇させるとともに、出力検出部で検出される出力電圧を出力電圧が低下するほど見かけ上上昇させる。駆動電圧制御部は、出力電圧が低下して第二電圧設定値に達すると、見かけ上の出力電流が第一電流設定値を維持するように、かつ見かけ上の出力電圧が第二電圧設定値を維持するように、駆動電圧を制御する。
駆動電圧制御部は、次のような出力電圧及び出力電流が得られるように、駆動電圧を制御する。出力電圧が低下して第二電圧設定値に達すると、見かけ上の出力電流及び出力電圧をそれぞれ設定値に維持する。このとき、実際の出力電流及び出力電圧は出力電圧が低下するほど低下するのに対して、見かけ上の出力電流及び出力電圧は出力電圧が低下するほど逆に上昇する。そのため、出力電圧が低下するほど、上昇する見かけ上の出力電流及び出力電圧を抑えて設定値に維持することにより、実際の出力電流及び出力電圧が低下する。その結果、出力電圧が低下するほど出力電流が低下するフの字型垂下特性が実現される。ここで、出力電圧に着目すると、実際の出力電圧が低下するほど実際の出力電圧を低下させる、という正のフィードバックが働くことになる。
請求項3記載の電源装置は、次のように構成したものである。整流部は、負の直流電圧を出力する。駆動電圧制御部は、出力電圧を第一電圧設定値に維持しているときに、出力電流が低下して第一電流設定値に達すると、出力電流を第一電流設定値に維持し、この状態で出力電圧が上昇して第二電圧設定値に達すると、垂下特性設定部を用いて出力電圧と出力電流とが一定比率で上昇するように、駆動電圧を制御する。
駆動電圧制御部は、次のような出力電圧及び出力電流が得られるように、駆動電圧を制御する。出力電圧が第一電圧設定値を維持しているときに、負荷に短絡電流又は過電流が流れることにより、出力電流が低下して第一電流設定値に達したとする。このとき、出力電流を第一電流設定値に維持しても、負荷が低インピーダンスになることにより、出力電圧が上昇する。そして、出力電圧が上昇して第二電圧設定値に達すると、垂下特性設定部を用いて出力電圧と出力電流とを一定比率で上昇させる。その結果、出力電圧が上昇するほど出力電流が上昇することにより、フの字型垂下特性が実現される。このフの字型垂下特性は、定電流制御の領域を有するので、ある程度の出力電流を要する用途に好適である。請求項3記載の電源装置は、請求項1記載の電源装置と比べて、整流部から出力される直流電圧の極性が逆であるので、各動作における極性も逆になる。
請求項4記載の電源装置は、請求項3記載の電源装置において、次のように構成したものである。垂下特性設定部は、出力電圧が第二電圧設定値以上になると、出力検出部で検出される出力電流を出力電圧が上昇するほど見かけ上低下させるとともに、出力検出部で検出される出力電圧を出力電圧が上昇するほど見かけ上低下させる。駆動電圧制御部は、出力電圧が上昇して第二電圧設定値に達すると、見かけ上の出力電流が第一電流設定値を維持するように、かつ見かけ上の出力電圧が第二電圧設定値を維持するように、駆動電圧を制御する。
駆動電圧制御部は、次のような出力電圧及び出力電流が得られるように、駆動電圧を制御する。出力電圧が上昇して第二電圧設定値に達すると、見かけ上の出力電流及び出力電圧をそれぞれ設定値に維持する。このとき、実際の出力電流及び出力電圧は出力電圧が上昇するほど上昇するのに対して、見かけ上の出力電流及び出力電圧は出力電圧が上昇するほど逆に低下する。そのため、出力電圧が上昇するほど、低下する見かけ上の出力電流及び出力電圧を抑えて設定値に維持することにより、実際の出力電流及び出力電圧が上昇する。その結果、出力電圧が上昇するほど出力電流が上昇するフの字型垂下特性が実現される。ここで、出力電圧に着目すると、実際の出力電圧が上昇するほど実際の出力電圧を上昇させる、という正のフィードバックが働くことになる。請求項5記載の電源装置は、請求項3記載の電源装置と比べて、整流部から出力される直流電圧の極性が逆であるので、各動作における極性も逆になる。
請求項5記載の電源装置は、請求項2又は4記載の電源装置において、次のように構成したものである。整流部は、直流電圧を出力する第一及び第二の出力端を有する。負荷は、第一の出力端と接地端との間に接続される。出力検出部は、出力電圧に対応する電圧検出電圧を出力する電圧検出抵抗器と、出力電流に対応する電流検出電圧を出力する電流検出抵抗器と、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する演算増幅器とを備えている。そして、反転入力端子が第二の出力端に接続され、第一の出力端と第二の出力端との間に電圧検出抵抗器が接続され、出力端子と反転入力端子との間に電流検出抵抗器が接続される。垂下特性設定部は、第二電圧設定値に対応する基準電圧から電圧検出電圧を差し引き、その差に対応する垂下制御電圧を非反転入力端子に印加する演算回路を有する。
例えば、第一の出力端から高電圧が出力され、第二の出力端から低電圧が出力され、垂下制御電圧が零すなわち非反転入力端子が接地端に接続されている状態であるとする。このとき、第一の出力端から第二の出力端へ流れる電流は、第一の出力端→負荷→接地端→演算増幅器内部→出力端子→電流検出抵抗器→第二の出力端から成る第一のループと、第一の出力端→電圧検出抵抗器→第二の出力端から成る第二のループとに分かれる。このとき、圧電トランスから出力される電流は、微小であるため、例えば演算増幅器に電圧を供給する電源回路内の接地端を介して、接地端→演算増幅器内部→出力端子と流れるのである。なお、演算増幅器の出力端子が演算増幅器の内部インピーダンスを介して接地端に接続されていれば、圧電トランスから出力される電流は、微小であるため、演算増幅器の内部インピーダンスを介して、接地端→演算増幅器内部→出力端子と流れる。
第一のループに流れる電流は、負荷に流れる電流すなわち出力電流である。一方、第二のループに流れる電流による電圧検出抵抗器での電圧降下(第一の出力端→電圧検出抵抗器→第二の出力端での電圧降下)は、負荷に印加される電圧すなわち出力電圧(第一の出力端→負荷→接地端での電圧降下)に対応する。なぜなら、第二の出力端が反転入力端子に接続され、非反転入力端子が接地端に接続されているので、反転入力端子は仮想接地によって非反転入力端子と同電位すなわち接地電位になるからである。
このとき、第一及び第二のループに流れる電流は、それぞれ独立している。つまり、電圧検出抵抗器に電流検出電流が流れてしまったり、逆に電流検出抵抗器に電圧検出電流が流れてしまったりすることがないので、出力電圧及び出力電流の検出精度が向上する。
ここで、垂下制御電圧としてある正電圧が非反転入力端子に印加されたとする。このときも、第一の出力端から第二の出力端へ流れる電流は、第一の出力端→負荷→接地端→演算増幅器内部→出力端子→電流検出抵抗器→第二の出力端から成る第一のループと、第一の出力端→電圧検出抵抗器→第二の出力端から成る第二のループとに分かれる。ただし、非反転入力端子に垂下制御電圧が印加されているので、第二の出力端は仮想接地によって非反転入力端子と同電位すなわち垂下制御電圧になる。その結果、出力電流を維持するために、演算増幅器の出力端子の電圧が垂下制御電圧の分だけ上昇する。これにより、演算増幅器の出力端子の電圧を電流検出電圧とすると、出力電流は同じでも見かけ上の出力電流を上昇できることになる。また、第二の出力端が垂下制御電圧の分だけ上昇することにより、電圧検出抵抗器から出力される電圧検出電圧も垂下制御電圧の分だけ上昇する。このとき、垂下制御電圧は、(第二電圧設定値)−(出力電圧)に対応するので、出力電圧が低下するほど上昇する。すなわち、出力電圧が低下するほど、見かけ上の出力電流及び出力電圧が上昇することになる。なお、第一の出力端から低電圧が出力され、第二の出力端から高電圧が出力される場合も、極性が逆になる点を除き同様である。
請求項6記載の電源装置は、請求項5記載の電源装置において、垂下特性設定部は、垂下制御電圧を分圧して非反転入力端子に印加する分圧用抵抗器を有する、というものである。
垂下制御電圧を例えば1/2に分圧した場合は、垂下制御電圧を1/4に分圧した場合に比べて、垂下制御電圧の変化分に対する電流検出電圧及び電圧検出電圧の変化分が二倍になる。したがって、分圧用抵抗器の分圧比を設定することにより、所望の垂下特性が得られる。
換言すると、本発明は、圧電トランスを使い、正常時に定電圧定電流で動作し、垂下時に定電流で動作後、任意の出力電圧において垂下を開始し、任意の出力電流及び出力電圧で垂下し、遂には出力電流を0にし、垂下の条件が解除されれば自動復帰できるような回路を提供する。これにより、アーキング時の過負荷を抑制するとともに、各負荷に合った垂下特性の回路を作製することで、製品の付加価値を上げることができる。つまり、本発明は、出力が定電圧かつ定電流になるように動作させ、過負荷時に任意に垂下電圧及び垂下電流を決定できる、圧電トランスの制御方法を提供するものである。
本発明に係る電源装置によれば、圧電トランスの負荷に短絡電流又は過電流が流れたとき、出力電圧及び出力電流を直ちに遮断するのではなくそれらの絶対値を一定比率で低下させることにより、徐々に出力電圧及び出力電流が低下するので、出力電圧及び出力電流を直ちに遮断する場合の不都合を解決できる。本発明に係る電源装置によれば、各請求項ごとに次の効果も奏する。
請求項1記載の電源装置によれば、正の出力電圧を一定に維持しているときに出力電流が上昇して設定値に達すると、出力電流を設定値に維持し、この状態で出力電圧が低下して設定値に達すると、出力電圧と出力電流とを一定比率で低下させることにより、定電流制御の領域を有するフの字型垂下特性を実現できるので、圧電トランスの出力の遮断時にある程度の出力電流を要する場合に好適に用いることができる。
請求項2記載の電源装置によれば、正の出力電圧が設定値以下になると、出力電圧が低下するほど見かけ上の出力電流及び出力電圧を上昇させ、見かけ上の出力電流及び出力電圧を設定値に維持することにより、出力電圧が低下するほど出力電流も低下するフの字型垂下特性を容易に実現できる。
請求項3記載の電源装置によれば、負の出力電圧を一定に維持しているときに出力電流が低下して設定値に達すると、出力電流を設定値に維持し、この状態で出力電圧が上昇して設定値に達すると、出力電圧と出力電流とを一定比率で上昇させることにより、定電流制御の領域を有するフの字型垂下特性を実現できるので、圧電トランスの出力の遮断時にある程度の出力電流を要する場合に好適に用いることができる。
請求項4記載の電源装置によれば、負の出力電圧が設定値以下になると、出力電圧が上昇するほど見かけ上の出力電流及び出力電圧を低下させ、見かけ上の出力電流及び出力電圧を設定値に維持することにより、出力電圧が上昇するほど出力電流も上昇するフの字型垂下特性を容易に実現できる。
請求項5記載の電源装置によれば、例えば整流部の第一の出力端から高電圧が出力され、整流部の第二の出力端から低電圧が出力されるとき、第一の出力端→負荷→接地端→演算増幅器内部→出力端子→電流検出抵抗器→第二の出力端から成る電流検出電流のループと、第一の出力端→電圧検出抵抗器→第二の出力端から成る電圧検出電流のループとに完全に分かれることにより、電圧検出抵抗器に電流検出電流が流れてしまったり、逆に電流検出抵抗器に電圧検出電流が流れてしまったりすることがないので、出力電圧及び出力電流の検出精度を向上できる。
請求項6記載の電源装置によれば、垂下制御電圧を分圧して非反転入力端子に印加する分圧用抵抗器を有することにより、分圧用抵抗器の分圧比を設定して垂下制御電圧の変化分に対する電流検出電圧及び電圧検出電圧の変化分を変えることができるので、所望の垂下特性を容易に得ることができる。
図1は、本発明に係る電源装置の第一実施形態を示す回路図(圧電トランスの出力側)である。図2は、一般的な演算増幅器の等価回路の一例を示す回路図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
本実施形態の電源装置100における圧電トランス20の出力側には、出力検出部10、整流部30、及び、駆動電圧制御部120の一部である垂下特性設定部80が設けられている。
出力検出部10は、圧電トランス20で発生した交流電圧Vo’を正の直流電圧に変換して、出力電圧Vo及び出力電流Ioとして出力端31,32から出力する整流部30に付設される。そして、出力検出部10は、出力端31と接地端91との間に接続された負荷90に印加される電圧である出力電圧Voを検出する電圧検出抵抗器11,12と、負荷90に流れる電流である出力電流Ioを検出する電流検出抵抗器13と、反転入力端子141、非反転入力端子142及び出力端子143を有する演算増幅器14とを備えている。かつ、非反転入力端子142が抵抗器87を介して接地端91に接続され、反転入力端子141が出力端32に接続され、出力端31と出力端32との間に電圧検出抵抗器11,12が接続され、出力端子143と反転入力端子141との間に電流検出抵抗器13が接続されている。
電流検出抵抗器13には並列に交流成分吸収用兼ノイズ吸収用のコンデンサ15が接続され、電圧検出抵抗器11の両端と接地端91との間にはそれぞれノイズ吸収用のコンデンサ16,17が接続されている。また、電圧検出抵抗器11,12は出力電圧Voを分圧する。電圧検出抵抗器11での電圧降下分を含む電圧が、出力電圧Voに対応する電圧検出電圧Vvとして出力される。電流検出抵抗器13には後述するように出力電流Ioが流れる。電流検出抵抗器13での電圧降下分を含む電圧が、出力電流Ioに対応する電流検出電圧Viとして出力される。
演算増幅器14は、入力インピーダンスRiが極めて大きく、出力インピーダンスRoが極めて小さく、オープンループ利得Anが極めて大きい。出力端子143は、演算増幅器14の出力インピーダンスRo等から成る内部インピーダンスを介して、接地端91に接続されている。
圧電トランス20は、圧電振動体21に一次電極22,23と二次電極24とを設け、一次側を厚さ方向(図1上下方向)に分極し、二次側を長さ方向(図1左右方向)に分極して成る。一次電極22,23は、圧電振動体21を挟んで対向している。圧電振動体21は、PZT等の圧電セラミックスからなり、板状(直方体状)を呈している。圧電振動体21の長さ方向において、一端からその長さの例えば半分までに一次電極22,23が設けられ、他端に二次電極24が設けられている。一次側に長さ寸法で決まる固有共振周波数frの駆動電圧Vdを入力すると、逆圧電効果により強い機械振動を起こし、圧電効果によりその振動に見合った高い交流電圧Vo’が二次側から出力される。その交流電圧Vo’は、整流部30で直流正電圧の出力電圧Voに変換されて負荷90に印加される。
整流部30は、圧電トランス20の二次電極24にアノードが接続された整流ダイオード33と、二次電極24にカソードが接続された整流ダイオード34と、整流ダイオード34のアノードと整流ダイオード33のカソードとの間に接続された平滑コンデンサ35とを備え、出力端31が電流制限用の抵抗器36を介して整流ダイオード33のカソードに接続され、出力端32が整流ダイオード34のカソードに接続されたものである。整流部30は、圧電トランス20の内部容量(図示せず)とともに二倍電圧整流回路を構成し、出力端31から正の直流高電圧の出力電圧Voを出力する。
垂下電圧設定部80は、演算増幅器(演算回路)81、ボルテージフォロワ82、基準電圧部83、抵抗器84〜87等から成る。基準電圧部83は、予め設定された設定値(第二電圧設定値)Vsに対応する基準電圧Vrsの1/2を出力する。演算増幅器81の反転入力端子811には、増幅率設定用の抵抗器84及びバッファ用のボルテージフォロワ82を介して、電圧検出電圧Vvが印加される。演算増幅器81の非反転入力端子812には、基準電圧Vrsの1/2が印加される。演算増幅器81の出力端子813と反転入力端子811との間には、増幅率設定用の抵抗器85が接続されている。演算増幅器81は、基準電圧Vrsから電圧検出電圧Vvを差し引き、その差に対応する垂下制御電圧VBを出力端子813から出力する。抵抗器86,87は、垂下制御電圧VBを分圧して垂下制御電圧VCとし、垂下制御電圧VCを非反転入力端子142に印加する。
駆動電圧制御部120は、垂下電圧設定部80及び後述する構成要素を有し、出力検出部10で検出された出力電圧Vo及び出力電流Ioに基づき、圧電トランス20に印加する駆動電圧Vdを制御する。詳しく言えば、駆動電圧制御部120は、出力電圧Voを設定値(第一電圧設定値)Vo1に維持しているときに、出力電流Ioが上昇して設定値(第一電流設定値)Io1に達すると、出力電流Ioを設定値Io1に維持し、この状態で出力電圧Voが低下して設定値Vsに達すると、垂下特性設定部80を用いて出力電圧Voと出力電流Ioとが一定比率で低下するように、駆動電圧Vdを制御する。
次に、出力検出部10の動作を説明する。
電源装置100が正常に動作していれば、駆動電圧制御部120による定電圧制御によって、垂下制御電圧VC=0すなわち演算増幅器14の非反転入力端子142が接地端91に接続されている状態になる。このとき、出力検出部10に流れる電流は、平滑コンデンサ35の正極→出力端31→負荷90→接地端91→演算増幅器14の内部→出力端子143→電流検出抵抗器13→出力端32→平滑コンデンサ35の負極から成る第一のループと、平滑コンデンサ35の正極→出力端31→電圧検出抵抗器12,11→出力端32→平滑コンデンサ35の負極から成る第二のループと、圧電トランス20の一次電極23→接地端91→演算増幅器14の内部→出力端子143→電流検出抵抗器13→出力端32→整流ダイオード34→圧電トランス20の二次電極24から成る第三のループと、圧電トランス20の二次電極24→整流ダイオード33→平滑コンデンサ35→電流検出抵抗器13→出力端子143→演算増幅器14の内部→接地端91→圧電トランス20の一次電極23から成る第四のループとに分かれる。
第一のループに流れる電流は、負荷90に流れる電流すなわち出力電流Ioである。一方、第二のループに流れる電流による電圧検出抵抗器11,12での電圧降下(出力端31→電圧検出抵抗器11,12→端子端32での電圧降下)は、負荷90に印加される電圧すなわち出力電圧Vo(出力端31→負荷90→接地端91での電圧降下)に等しい。なぜなら、出力端32が反転入力端子141に接続され、非反転入力端子142が接地端91に接続されているので、反転入力端子141は仮想接地によって非反転入力端子142と同電位すなわち接地電位になるからである。
このとき、第一及び第二のループに流れる電流は、それぞれ独立している。つまり、電圧検出抵抗器11に電流検出電流が流れてしまったり、逆に電流検出抵抗器13に電圧検出電流が流れてしまったりすることがないので、出力電圧Vo及び出力電流Ioの検出精度が向上する。
第三のループに流れる電流は、圧電トランス20で発生した交流電圧Vo’の負半波によって圧電トランス20の内部容量を充電する電流である。第四のループに流れる電流は、圧電トランス20で発生した交流電圧Vo’の正半波によって、圧電トランス20の内部容量の充電電圧とともに、平滑コンデンサ35を充電する電流である。第三のループによって電流検出抵抗器13に流れる電流と第四のループによって電流検出抵抗器13に流れる電流とは、向きが逆で大きさが等しいので、電流検出抵抗器13に並列接続されたコンデンサ15によって相殺される。したがって、電流検出抵抗器13には、第一のループによる電流すなわち出力電流Ioのみによる電圧降下が生ずる。
ここで、第一のループの接地端91→演算増幅器14の内部→出力端子143→電流検出抵抗器13→出力端32の経路における、演算増幅器14の動作説明を補足する。演算増幅器14は、第一のループにおいて仮想接地を維持しようとして、すなわち出力端32を接地電位にするために、出力端子143にr×Ioに相当する電圧(すなわち電流検出電圧Vi)を出力する。ここで、rは電流検出抵抗器13の抵抗値である。その結果、第一のループには、平滑コンデンサ35と演算増幅器14との二つの電圧源が存在することになる。そうなると、重ねの理によって、二つの電圧源による電流の和が、実際に流れる電流になる。しかし、平滑コンデンサ35の電圧が例えば数kVに対して、演算増幅器14の電圧が例えば数Vであることから、演算増幅器14によって流れる電流は無視できる。
図3は、本発明に係る電源装置の第一実施形態を示す回路図(圧電トランスの入力側)である。以下、図1及び図3に基づき説明する。
本実施形態の電源装置100は、印加された駆動電圧Vdを変圧して交流電圧Vo’を発生させる圧電トランス20と、圧電トランス20で発生した交流電圧Vo’を直流電圧に変換して負荷90へ供給する整流部30と、負荷90に印加される電圧である出力電圧Voと負荷90を流れる電流である出力電流Ioとを検出する出力検出部10と、出力検出部10で検出された出力電圧Vo及び出力電流Ioに基づき駆動電圧Vdを制御する駆動電圧制御部120と、駆動電圧制御部120で制御された駆動電圧Vdを圧電トランス20に印加する駆動部110と、を備えたものである。
出力検出部10、圧電トランス20、整流部30及び垂下特性設定部80については、前述したとおりであるので、詳しい説明を省略する。駆動部110は、BJT111,112、FET113、インダクタ114、コンデンサ115等から成る。BJT111,112は、コンプリメンタリ回路を構成し、バッファとして機能する。
駆動電圧制御部120は、垂下特性設定部80の他に、周波数可変の三角波電圧Vbを生成する周波数制御部60と、周波数制御部60で生成された三角波電圧Vbと電圧値可変の直流電圧Vaとを比較し、Va<Vbである時間とVa>Vbである時間とに基づきデューディ比Duを定めるデューディ比制御部70と、出力検出部10で検出された出力電圧Voに基づき、三角波電圧Vbの周波数を変える電圧制御部40と、出力検出部10で検出された出力電流Ioに基づき、直流電圧Vaの電圧値及び三角波電圧Vbの周波数を変える電流制御部50と、を備えている。
また、駆動電圧制御部120には、ツェナーダイオード121、コンデンサ122、抵抗器123等が付設されている。ツェナーダイオード121等は、直流の入力電圧Vinを降圧して供給電圧V2を生成する。
図4[1]は、図3の電源装置における周波数制御部及びデューティ比制御部の構成例を示す回路図である。図4[2]は、図1及び図3の電源装置における定電圧定電流制御を示すグラフである。図5は、図1及び図3の電源装置の各部分における波形を示す波形図である。図6は図1及び図3の電源装置の動作を示す波形図であり、図6[1]は出力電流(出力電圧)を低くする場合であり、図6[2]は出力電流(出力電圧)を高くする場合である。以下、図1乃至図6に基づき説明する。
デューディ比制御部70は、直流電圧Va(図5波形A)と三角波電圧Vb(図5波形B)とを比較し、Va<Vbである時間とVa>Vbである時間とに基づき、駆動電圧Vd(図5波形D)を印加するときに使用する周波数F及びデューティ比Du(図5波形C)を定める。周波数制御部60は、三角波電圧Vbを生成する。電圧制御部40は、出力検出部10から出力された電圧検出電圧Vvと基準電圧部46からから出力された基準電圧Vrvとに基づき、直流電圧Vaの電圧値を変えるとともに、三角波電圧Vbの周波数を変える。電流制御部50は、出力検出部10から出力された電流検出電圧Viと基準電圧部56から出力された基準電圧Vriとの差に基づき、直流電圧Vaの電圧値を変えるとともに、三角波電圧Vbの周波数を変える。基準電圧Vrvは設定値Vo1に対応し、基準電圧Vriは設定値Io1に対応する。
次に、各部の構成及び動作について、更に詳しく説明する。
供給電圧V1は、ツェナーダイオードや分圧用抵抗器(図示せず)を用いて前述の供給電圧V2を下げて得られた、所定の電圧値である。周波数制御部60は、コンパレータ61、FET62、コンデンサ63、抵抗器64〜68、ダイオード72、抵抗器74等からなる。コンパレータ61の−入力端子には、抵抗器64,65によって生成された供給電圧V1の分圧電圧V1−が印加される。コンパレータ61の+入力端子には、コンデンサ63の充電電圧V1+が印加される。充電電圧V1+は、抵抗器66等及びコンデンサ63によって決まる時定数で漸増する。充電電圧V1+が分圧電圧V1−を越えると、コンパレータ61の出力電圧がHレベルとなることによりFET62がオンとなって充電電圧V1+が放電される。この動作の繰り返しによって、連続した三角波電圧Vbが生成される。なお、抵抗器66等及びコンデンサ63によって決まる時定数は、出力電流Ioを最小値に絞ったときの周波数Fすなわち最高の周波数Fに設定する。本実施形態では、周波数Fを高くするほど、出力電流Ioが減少する。なお、ダイオード72及び抵抗器74は、温度補正用である。通常、抵抗器74として可変抵抗器を用い、共振点を超えない周波数Fになるように、その抵抗値を設定する。
デューディ比制御部70は、コンパレータ71、コンデンサ73、抵抗器75〜77等からなる。コンデンサ73はノイズ対策用である。コンパレータ71の−入力端子には、抵抗器75,76によって生成された供給電圧V1の分圧電圧である直流電圧Vaが印加される。コンパレータ71の+入力端子には、周波数制御部60から出力された三角波電圧Vbが印加される。コンパレータ71は、Va>VbであればLレベル電圧を出力し、Va<VbであればHレベル電圧を出力する。Lレベル出力時間がオフ時間であり、Hレベル出力時間がオン時間である。したがって、Hレベル出力時間/(Lレベル出力時間+Hレベル出力時間)がデューティ比Duであり、1/(Lレベル出力時間+Hレベル出力時間)が周波数Fである。
なお、直流電圧Vaは、出力電流Ioの設定値が最小となる電圧値又は抵抗器64,65とで決まる分圧電圧V1−よりも高く設定する。直流電圧Vaが分圧電圧V1−と同じであれば、デューティ比Duが0%のときにコンパレータ71の出力はLレベルとなる。この状態で直流電圧Vaを下げていくとデューティ比Duが増加し、初期値の1/2まで下げるとデューティ比Duが50%となる。
電流制御部50は、コンパレータ51、ダイオード52,53、抵抗器54,55、基準電圧部56等から成る。ダイオード52及び抵抗器54はコンデンサ63の充電用であり、ダイオード53及び抵抗器55は直流電圧Vaの調整用である。コンパレータ51の−入力端子には基準電圧Vriが印加され、コンパレータ51の+入力端子には出力検出部10から出力された電流検出電圧Viが印加される。コンパレータ51は、Vi<VriであればLレベル電圧を出力し、Vi>VriであればHレベル電圧を出力する。ただし、電流検出電圧Viは、出力電流Ioが大きいほど高くなり、出力電流Ioが小さいほど低くなるように設定されている。なお、コンパレータ51の周囲には、図示しないが、位相補償用、ノイズ吸収用、発振防止用のコンデンサや、電流制限用の抵抗器が接続されている。
コンパレータ51からHレベル電圧が出力されると、抵抗器54→ダイオード52→コンデンサ63と電流が流れることにより、コンデンサ63の充電電流が増加する。その結果、三角波電圧Vbの傾きが急になるので、三角波電圧Vbの周波数Fが上昇する(図6[2]→[1])。また、コンパレータ51からHレベル電圧が出力されると、抵抗器76に流れる電流がダイオード53及び抵抗器55を介して増加することにより、直流電圧Vaが上昇するので、デューティ比Duが低下する(図6[2]→[1])。このとき、コンパレータ51からLレベル電圧が出力されると、ダイオード52,53に逆バイアス電圧が印加されて電流が流れなくなるので、三角波電圧Vbの周波数Fが低下するとともにデューティ比Duが上昇する(図6[1]→[2])。
なお、抵抗器54の抵抗値は、コンパレータ51の出力がLレベル電圧になったときに、コンデンサ63の充電時定数が共振周波数を下回らない範囲で、出力電流Ioの最大値及び最大負荷をカバーできる周波数になるように設定する。また、抵抗器55は、抵抗器75と抵抗器76との分圧電圧すなわち直流電圧Vaを変化させる。更に、コンパレータ51に代えて、増幅器を用いてもよい。この場合は、電流検出電圧Viに対応する電圧が周波数制御部60及びデューティ比制御部70へ出力される。
電圧制御部40は、コンパレータ41、ダイオード42,43、抵抗器44,45等からなる。ダイオード42及び抵抗器44はコンデンサ63の充電用である。ダイオード43及び抵抗器45は直流電圧Vaの調整用である。コンパレータ41の+入力端子には出力検出部10から出力された電圧検出電圧Vvが印加され、コンパレータ41の−入力端子には基準電圧Vrvが印加される。コンパレータ41は、Vv<VrvであればLレベル電圧を出力し、Vv>VrvであればHレベル電圧を出力する。ただし、電圧検出電圧Vvは、出力電圧Voが大きいほど高くなり、出力電圧Voが小さいほど低くなるように設定されている。なお、コンパレータ41の周囲には、図示しないが、位相補償用、ノイズ吸収用、発振防止用のコンデンサや、電流制限用の抵抗器が接続されている。
コンパレータ41からHレベル電圧が出力されると、抵抗器44→ダイオード42→コンデンサ63と電流が流れることにより、コンデンサ63の充電電流が増加する。その結果、三角波電圧Vbの傾きが急になるので、三角波電圧Vbの周波数Fが上昇する(図6[2]→[1])。また、コンパレータ41からHレベル電圧が出力されると、抵抗器76に流れる電流がダイオード43及び抵抗器45を介して増加することにより、直流電圧Vaが上昇するので、デューティ比Duが低下する(図6[2]→[1])。このとき、コンパレータ41からLレベル電圧が出力されると、ダイオード42,43に逆バイアス電圧が印加されて電流が流れなくなるので、三角波電圧Vbの周波数Fが低下するとともにデューティ比Duが上昇する(図6[1]→[2])。
次に、図1乃至図6に基づき、電源装置100の全体の動作を説明する。
まず、基準電圧Vriが出力電流Ioの設定値Io1としてコンパレータ51の+入力端子へ出力され、基準電圧Vrvが出力電圧Voの設定値Vo1としてコンパレータ41の+入力端子へ出力される。一方、入力電圧Vinから供給電圧V1,V2が生成され、更に供給電圧V1が分圧されて直流電圧Vaが生成されるとともに、周波数制御部60で三角波電圧Vbが生成される(図5波形A,B)。すると、コンパレータ71は、直流電圧Va及び三角波電圧Vbの大小を比較して、Hレベル電圧又はLレベル電圧を出力する(図5波形C)。この波形Cの周波数F及びデューティ比DuによってFET161がオン・オフし、これにより圧電トランス20に駆動電圧Vd(図5波形D)が印加される。すると、圧電トランス20は駆動電圧Vdを変圧して交流電圧Vo’(図4波形E)を出力する。この交流電圧Vo’は、整流されて直流の出力電圧Voとなって、負荷90へ供給される。出力電圧Voは、出力検出部10で検出されて、電圧検出電圧Vvとしてコンパレータ41の+入力端子へ出力される。コンパレータ41の−入力端子には、出力電圧Voの設定値Vo1に対応する基準電圧Vrvが印加されている。このときに負荷90に流れる出力電流Ioは、電流検出抵抗器13で検出されて、電流検出電圧Viとしてコンパレータ51,81の+入力端子へ出力される。コンパレータ51の−入力端子には、出力電流Ioの設定値Io1に対応する基準電圧Vriが印加されている。
ここで、出力電圧Voが負荷変動等により上昇して設定値Vo1をわずかに超えたとする。すると、出力電圧Voが上昇するほど電圧検出電圧Vvも上昇するので、コンパレータ41は、Vrv<Vvとなることにより、Hレベル電圧を出力する。これにより、三角波電圧Vbの傾きが急になるとともに直流電圧Vaが上昇することにより、周波数Fが上昇するとともにデューティ比Duが低下する(図6[2]→[1])。その結果、出力電圧Voが低下する。
これとは逆に、出力電圧Voが低下して一定電圧Vo1をわずかに下回ったとする。すると、出力電圧Voが低下するほど電圧検出電圧Vvも低下するので、コンパレータ41は、Vrv>Vvとなることにより、Lレベル電圧を出力する。これにより、三角波電圧Vbの傾きが緩くなるとともに直流電圧Vaが低下することにより、周波数Fが低下するとともにデューティ比Duが増加する(図6[1]→[2])。その結果、出力電圧Voが上昇する。これにより、駆動電圧制御部120による定電圧制御が実行される。
駆動電圧制御部120が定電圧制御を実行しているときに、出力電流Ioが負荷変動等により上昇して設定値Io1をわずかに超えたとする。すると、出力電流Ioが増加するほど電流検出電圧Viが上昇するので、コンパレータ51は、Vri<Viとなることにより、Hレベル電圧を出力する。これにより、三角波電圧Vbの傾きが急になるとともに直流電圧Vaが上昇することにより、周波数Fが上昇するとともにデューティ比Duが低下する(図6[2]→[1])。その結果、出力電流Ioが低下する。
これとは逆に、出力電流Ioが低下して一定電流Io1をわずかに下回ったとする。すると、コンパレータ51は、Vri>Viとなることにより、Lレベル電圧を出力する。これにより、三角波電圧Vbの傾きが緩くなるとともに直流電圧Vaが低下することにより、周波数Fが低下するとともにデューティ比Duが増加する(図6[1]→[2])。その結果、出力電流Ioが増加する。これにより、駆動電圧制御部120による定電流制御が実行される。
なお、周波数Fを変化させたときの出力変化とデューティ比Duを変化させたときの出力変化は、周波数Fを変化させたときの方がデューティ比Duを変化させたときよりもはるかに急峻であるため、周波数FとデューティDuを同時に変化させてもあるポイントで出力が平衡する。
以上の動作によって、図4[2]に示すような定電圧定電流制御が実現できる。しかも、電源装置100によれば、出力検出部10を用いたことにより、出力電圧Vo及び出力電流Viを正確に検出できるので、高精度の定電圧定電流制御を実現できる。
次に、負荷90に短絡電流又は過電流が流れることにより、前述した定電圧制御及び定電流制御を経由して、出力電圧Voが低下して設定値Vsに達したとする。すると、(基準電圧Vrs)−(電圧検出電圧Vv)に対応する垂下制御電圧VC(>0)が、演算増幅器14の非反転入力端子142に印加される。このとき、出力端32は、仮想接地によって非反転入力端子142と同電位すなわち垂下制御電圧VCになる。その結果、出力電流Ioを維持するために、演算増幅器14の出力端子143の電圧が垂下制御電圧VCの分だけ上昇する。これにより、出力端子143の電圧が電流検出電圧Viであるから、出力電流Ioは同じでも見かけ上の出力電流Io”を上昇できることになる。また、出力端32が垂下制御電圧VCの分だけ上昇することにより、電圧検出抵抗器11から出力される電圧検出電圧Vvも垂下制御電圧VCの分だけ上昇する。つまり、出力電圧Voは同じでも見かけ上の出力電圧Vo”を上昇できることになる。このとき、垂下制御電圧VCは、(基準電圧Vrs)−(電圧検出電圧Vv)に対応するので、出力電圧Voが低下するほど上昇する。すなわち、出力電圧Voが低下するほど、見かけ上の出力電流Io”及び出力電圧Vo”が上昇することになる。
このように、垂下特性設定部80は、出力電圧Voが設定値Vs以下になると、出力検出部10で検出される出力電流Ioを出力電圧Viが低下するほど見かけ上上昇させるとともに、出力検出部10で検出される出力電圧Voを出力電圧Voが低下するほど見かけ上上昇させる機能を有する。また、駆動電圧制御部120は、出力電圧Voが低下して設定値Vsに達すると、見かけ上の出力電流Io”が設定値Io1を維持するように、かつ見かけ上の出力電圧Vo”が設定値Vsを維持するように、駆動電圧Vdを制御する機能を有する。
つまり、駆動電圧制御部120は、次のような出力電圧Vo及び出力電流Ioが得られるように、駆動電圧Vdを制御する。出力電圧Voが低下して設定値Vsに達すると、見かけ上の出力電流Io”及び出力電圧Vo”をそれぞれ設定値Io1,Vsに維持する。このとき、実際の出力電流Io及び出力電圧Voは出力電圧Voが低下するほど低下するのに対して、見かけ上の出力電流Io”及び出力電圧Vo”は出力電圧Voが低下するほど逆に上昇する。そのため、出力電圧Voが低下するほど、上昇する見かけ上の出力電流Io”及び出力電圧Vo”を抑えて設定値Io1,Vsに維持することにより、実際の出力電流Io及び出力電圧Voが低下する。その結果、図4[2]に示すような、出力電圧Voが低下するほど出力電流Ioが低下するフの字型垂下特性が実現される。ここで、出力電圧Voに着目すると、実際の出力電圧Voが低下するほど実際の出力電圧Voを低下させる、という正のフィードバックが働くことになる。
次に、電源装置100の動作を、数式を用いて解析する。
ここでは、負荷90に印加される出力電圧Vo、負荷90に流れる出力電流Io、出力電圧Voが垂下し始める設定値Vs、設定値Vsに対応する基準電圧Vrs、出力電圧Voが垂下して0になったときの出力電流Ioの設定値(第二電流設定値)Is、設定値Vo1に対応する基準電圧Vrv、垂下制御電圧VB,VC、電圧検出電圧Vv、電流検出電圧Vi、及び、抵抗器12,11,84,85,86,87,13の抵抗値R1〜R7を用いる。
まず、出力の正常時すなわち負荷90に短絡電流又は過電流が流れていない時、
Vo=Vv×(R1/R2) (ただしVo≫Vv) ・・・(1)
Io=Vi/R7 (ただしVC≒0) ・・・(2)
が成り立つ。出力が正常であれば、Vrs<Vvになるため、VB≒0かつVC≒0となる(ただしR3=R4とする。)。このとき、VvとVrvとが電圧制御部40で比較され、駆動電圧制御部120によって定電圧制御が実行される。定電流領域では、VC≒0であるので、式(2)のVi/R7で決まるIo1にIoが一致するように、駆動電圧制御部120によって定電流制御が実行される。
次に、出力を垂下させる場合、垂下が始まる設定値Vsは、
Vs=Vrs×(R1/R2) ・・・(3)
となる。また、演算増幅器81の非反転入力端子812にVrs/2を印加しておくと、Vv=VrsのときにVB=0となり、Vv=0のときにVB=Vrsとなる(ただしR3=R4とする。)。つまり、VvがVrsよりも低下することによってVBが上昇し、これにより垂下が始まる。したがって、Vrsを所望の値に設定することによって、垂下し始める出力電圧Voの設定値Vsを決めることができる。
このとき、出力電圧Voが垂下して0になったときの出力電流Ioの設定値Isは、
Is=(Vi−VC)/R7 ・・・(4)
で決定することができる。VCは次の式によって与えられる。
VC=VB×{R6/(R5+R6)} ・・・(5)
VB=(Vrs/2−Vv)×(R4/R3)+Vrs/2 ・・・(6)
ここで、R3=R4であれば、式(6)は、
VB=Vrs−Vv ・・・(7)
となる。したがって、式(5),(7)を式(4)に代入することによって、次式が得られる。
∴Is={Vi−R6/(R5+R6)×(Vrs−Vv)}/R7 ・・・(8)
式(8)から明らかなように、抵抗器86,87の抵抗値R5,R6の比率を変えることによって、所望のIs及び垂下の傾き(例えば図4[2]の二点差線の直線で示すような特性)を設定することができる。
図7は、本発明に係る電源装置の第二実施形態を示す回路図(圧電トランスの出力側)である。図8は、図7の電源装置における定電圧定電流制御を示すグラフである。以下、これらの図面に基づき説明する。ただし、図1と同じ部分は同じ符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態の電源装置100’における整流部30’は、整流ダイオード33’,34’の向きが逆になっている点が第一実施形態と異なり、これにより出力端31から負の直流高電圧の出力電圧Voを出力する。出力検出部10’は、基準電圧部18を有し、抵抗器87の一端に接地端91が接続された第一実施形態に対して、抵抗器87の一端に基準電圧Vrxが印加された点で異なる。基準電圧部18は、他の基準電圧部と同様に、例えば供給電圧V1,V2等を分圧する抵抗器やツェナーダイオード等によって構成できる。垂下特性設定部80’では、演算増幅器81の出力端子813に逆流防止用のダイオード88が接続されている。
出力端31から負の出力電圧Voが出力されるため、出力電圧Vo及び出力電流Iiが増加するほど、電圧検出電圧Vv及び電流検出電圧Viが低下する。つまり、垂下制御電圧VC=0として非反転入力端子12を接地した状態にすると、電圧検出電圧Vv及び電流検出電圧Viが常に負になってしまう。そこで、非反転入力端子142に正電圧を印加することにより、電圧検出電圧Vv及び電流検出電圧Viを常に正にすることができるので、制御が容易になる。
なお、圧電トランス20の入力側は、第一実施形態とほぼ同じであるので、図示及び説明を省略する。ただし、本実施形態の電源装置100’では、電源装置100とは逆に、出力電圧Vo及び出力電流Iiが増加するほど、電圧検出電圧Vv及び電流検出電圧Viが低下するので、それに応じた改変が必要である。
次に、電源装置100’の動作を、数式を用いて解析する。
ここでは、負荷90に印加される出力電圧Vo、負荷90に流れる出力電流Io、出力電圧Voが垂下し始める設定値Vs、設定値Vsに対応する基準電圧Vrs、出力電圧Voが垂下して0になったときの出力電流Ioの設定値Is、設定値Vo1に対応する基準電圧Vrv、抵抗器87に印加される基準電圧Vrx、垂下制御電圧VB,VC、電圧検出電圧Vv、電流検出電圧Vi、及び、抵抗器12,11,84,85,86,87,13の抵抗値R1〜R7を用いる。
まず、出力の正常時すなわち負荷90に短絡電流又は過電流が流れていない時、
Vo=(Vrx−Vv)×(R1/R2) (ただしVo≪Vv) ・・・(11)
Io=(Vrx−Vi)/R7 (ただしVC≒Vrx) ・・・(12)
が成り立つ。出力が正常であれば、Vrs>VvになるためR3,R4を調整すると、VBはVrx以上となり、VC≒Vrxとなる。このとき、VvとVrvとが電圧制御部40で比較され、駆動電圧制御部120によって定電圧制御が実行される。定電流領域では、VC≒Vrxであるので、式(12)の(Vrx−Vi)/R7で決まるIo1にIoが一致するように、駆動電圧制御部120によって定電流制御が実行される。
次に、出力を垂下させる場合、垂下が始まる設定値Vsは、
Vs=(Vrx−Vrs)×(R1/R2) ・・・(13)
となる。また、R3,R4を調整するとともに、演算増幅器81の非反転入力端子812に(Vrx−Vrs)/2を印加しておく。このとき、Vv=VrsのときにVB=Vrxとなり、VvがVrsよりも上がることによってVBがVrxよりも下がり、その結果VCが下がることにより垂下が始まる。したがって、Vrsを所望の値に設定することによって、垂下し始める出力電圧Voの設定値Vsを決めることができる。
このとき、出力電圧Voが垂下して0になったときの出力電流Ioの設定値Isは、
Is=(Vi−VC)/R7 ・・・(14)
で決定することができる。VCは次の式によって与えられる。
VC=Vrx−(Vrx−VB)×{R6/(R5+R6)} ・・・(15)
VB={(Vrx+Vrs)/2−Vv}×(R4/R3)+(Vrx+Vrs)/2 ・・・(16)
ここで、R3=R4であれば、式(16)は、
VB=Vrx+Vrs−Vv ・・・(17)
となる。したがって、式(15),(17)を式(14)に代入することによって、次式が得られる。
∴Is={Vi−R6/(R5+R6)×(Vrx+Vrs−Vv)}/R7 ・・・(18)
式(18)から明らかなように、抵抗器86,87の抵抗値R5,R6の比率を変えることによって、所望のIs及び垂下の傾き(例えば図8の二点差線の直線で示すような特性)を設定することができる。