本発明の液晶表示装置は、図1に示すように、液晶セルLCと、該液晶セルの視認側に、視認側偏光子として第1偏光子Pと、該偏光子よりさらに視認側に位置する光学素子Rと、を備える。光学素子Rは、第1偏光子Pから視認側に出射された直線偏光を円偏光に変換するものである。
図2に示すように、一般の液晶表示装置は、液晶セルによって、光の偏光状態が変換され、その変換された光r1,r2,r3が視認側偏光子である第1偏光子Pに入射される。入射光r1,r2,r3は、その偏光状態に応じて、それぞれ強度の異なる直線偏光r4,r5,r6に変換される、液晶表示装置の使用者(観者)は、この直線偏光r4,r5,r6を観ることとなる。偏光サングラスを装着した状態において、直線偏光r4,r5,r6の振動方向、すなわち、第1偏光子Pの透過軸方向と、偏光サングラスの透過軸方向が平行である場合は、直線偏光r4,r5,r6は偏光サングラスを透過するため、観者は液晶表示装置からの画像を視認することができる。それに対して、直線偏光r4,r5,r6の振動方向と、偏光サングラスの透過軸方向が垂直である場合は、直線偏光r4,r5,r6は偏光サングラスにより吸収されるため、表示が暗くなり、画像の視認性に劣る。
それに対して、本発明の液晶表示装置においては、図3に示すように、液晶セルLCからの光r11,r12,r13が第1偏光子Pに入射され、それぞれ、それぞれ強度の異なる直線偏光r14,r15,r16に変換される。さらに、その直線偏光は、光学素子Rによって、その指向性が緩和され、直線偏光の強度に応じた強度を有する円偏光r17,r18,r19に変換される。これを、偏光サングラスを装着した状態で観察すると、第1偏光子Pの透過軸方向と、偏光サングラスの透過軸方向が平行、垂直、あるいはその中間のいずれの場合においても、円偏光r17,r18,r19の一部は偏光サングラスによって吸収され、一部は偏光サングラスを透過する。そのため、本発明の液晶表示装置によれば、偏光サングラスを装着した状態でも、画面の向きに関わらず、観者は液晶表示装置の画面を視認することができる。
なお、図2および図3においては、液晶セルLCからの出射光r1〜r3、r11〜r13を、便宜上、振動方向の異なる直線偏光で表しているが、これらが円偏光や楕円偏光であっても、第1偏光子によって、強度の異なる直線偏光に変換されることに変わりはない。
前記光学素子Rは、直線偏光を円偏光に変換するものであれば、特に限定されない。ここで、本願明細書および特許請求の範囲において、「円偏光」とは、完全な円偏光のみならず、完全な円偏光に近い、すなわち楕円率が1に近い楕円偏光をも含み得る。このような楕円偏光としては、例えば、直線偏光が、その振動方向に対して遅相軸が45°の角度をなし、正面レターデーションが100〜180nmである位相差板を透過した場合に得られる楕円偏光を含むものである。なお、本願明細書および特許請求の範囲においては、特に断りのない限り、偏光状態やレターデーション等はいずれも、画面を正面方向、すなわち、画面の法線方向から観察した場合の、波長550nmでの偏光状態、レターデーション等をさす。また、円偏光および楕円偏光は、右回りであるか左回りであるかを問わない。さらに、偏光状態としては、必ずしも完全偏光であることを要さず、一部偏光していない状態を含む部分偏光であってもよい。
このように直線偏光を円偏光に変換する光学素子Rとしては、例えば、上記のように、レターデーションが100〜180nmの範囲の位相差フィルムを用い得る。この場合、レターデーションは、好ましくは110〜170nmであり、より好ましくは、120〜150nmである。また、直線偏光を円偏光に変換するという観点において、光学素子Rは、その遅相軸(面内の屈折率が最大となる方向)と、第1偏光子の吸収軸のなす角が40〜50°となるように配置されていることが好ましく、42〜48°となるように配置されていることがより好ましく、43〜47°となるように配置されていることがさらに好ましく、44〜46°となるように配置されていることが最も好ましい。
また、このような位相差フィルムとしては、三次元屈折率を種々に調整したものを用いることができる。ここで、三次元屈折率とは、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内の進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとして定義されるものである。
三次元屈折率は、フィルムの成型方法や、延伸等の加工方法により適宜調整することができる。三次元屈折率を種々に制御した位相差板としては、(i)nx>ny≒nzの関係を有するポジティブAプレート)、(ii)nx≒nz>nyの関係を有するネガティブAプレート、(iii)nx>ny>nz、または、(iv)nz>nx>nyの関係を満たす二軸プレート、(v)nx>nz>nyの関係を満たすZ型二軸プレート等が挙げられる。
なお、上記の「nx≒nz」、「ny≒nz」とは、nxとnz、あるいはnyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれる。例えば、(nx−nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、−10〜10nm、好ましくは−5〜5nmの場合も「nx≒nz」に含まれ、(ny−nz)×dが、−10〜10nm、好ましくは−5〜5nmの場合も「ny≒nz」に含まれる。
前記(i)のポジティブAプレートや、(iii)の二軸プレートは、一般に正の複屈折を有するポリマーを延伸したものが用いられる。
ここで、「正の複屈折を有する」とは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に大きくなるものをいい、多くのポリマーがこれに該当する。正の複屈折を有するポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等のセルロース脂肪酸エステル、あるいは、セルロースエーテル等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンの如きポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。特に、非晶質で耐熱性に優れるポリマーを好ましく用いることができる。これらのポリマーは一種を単独で用いることもできるし、二種以上を混合して用いることもできる。
前記(ii)のネガティブAプレートや、前記(iv)二軸プレートは、一般に負の複屈折を有するポリマーを延伸したものが用いられる。
ここで、「負の複屈折を有する」とは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に小さくなる、換言すると、配向方向と直交する方向の屈折率が大きくなるものをいう。このようなポリマーとしては、例えば、芳香族やカルボニル基などの分極異方性の大きい化学結合ならびに官能基が、ポリマーの側鎖に導入されているものが挙げられる。具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂等が挙げられる。
上記のアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂の製法としては、例えば、それぞれ、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、マレイミド系モノマー等を付加重合させることによって得ることができる。また、重合後に、側鎖を置換したり、マレイミド化やグラフト化反応をおこなう等によって、複屈折特性を制御することもできる。
上記アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
上記スチレン系樹脂の原料モノマーであるスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレン、2,5−ジクロロスチレン、p−t−ブチルスチレン等が挙げられる。
上記マレイミド系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジプロピルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル−6−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジクロロフェニル)、N−(2−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジブロモフェニル)マレイミド、N−(2−ビフェニル)マレイミド、N−(2−シアノフェニル)マレイミド、等が挙げられる。上記マレイミド系モノマーは、例えば、東京化成工業(株)等から入手することができる。
上記負の複屈折を示すポリマーは、脆性や成型加工性、耐熱性の改善等を目的として、他のモノマーが共重合されているものでもよい、このような目的で用いられる他のモノマー成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。
上記、負の複屈折を示すポリマーが、スチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体である場合、スチレン系モノマー成分の含有率は、好ましくは50〜80モル%である。上記負の複屈折を示すポリマーが、マレイミド系モノマーと他のモノマーとの共重合体である場合、マレイミド系モノマー成分の含有率は、好ましくは2〜50モル%である。モノマー成分の含有率が上記範囲であれば、靭性や成型加工性に優れたフィルムとすることができる。
上記負の複屈折を示すポリマーの中でも、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクロロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ビニルエステル−マレイミド共重合体、オレフィン−マレイミド共重合体を好適に用いることができる。これらは一種を単独で用いることもできるし、二種以上を混合して用いることもできる。これらのポリマーは、高い負の複屈折発現性を示し、かつ、耐熱性に優れる。これらのポリマーは、例えばノヴァ・ケミカル・ジャパンや荒川化学工業(株)等から入手することができる。
また、負の複屈折を示すポリマーとして、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーも好適に用いることができる。このようなポリマーは、出発原料のマレイミド系モノマーとして、N置換基として、少なくともオルト位置に置換基を有するフェニル基を導入したN−フェニル置換マレイミドを用いることにより得ることができる。このようなポリマーは、より一層、高い負の複屈折性を有し、かつ、耐熱性、機械強度に優れる。
上記一般式(I)中、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、カルボン酸、カルボン酸エステル、水酸基、ニトロ基、又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分枝のアルキル基若しくはアルコキシ基を表し(ただし、R1及びR5は同時に水素原子ではない)、R6およびR7は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分枝のアルキル基若しくはアルコキシ基を表し、nは2以上の整数を表す。
また、負の複屈折を示すポリマーとしては、上記したものに限定されるものではなく、例えば特開2005−350544号公報等に開示されているような環状オレフィン系共重合体等を用いることもできる。さらには、特開2005−156862号公報や、特開2005−227427号公報等に開示されているような、ポリマーと無機微粒子の組成物も好適に用いることができる。
ところで、光学素子Rは、高温、高湿環境下では寸法変化を生じる場合があるが、偏光子等の他の部材と積層して用いられた場合には、部材によってその寸法変化量が異なること等に起因して、フィルム界面において応力が生じ、その応力による光弾性複屈折によって、レターデーションが変化したり、遅相軸の方向が変化することがある。光学素子Rのレターデーションや遅相軸の方向が変化すると、光学素子Rから出射される光の偏光状態が変化するため、偏光サングラスを装着した状態での画面の視認性が変化するという問題を生じ得る。本発明の液晶表示装置においては、光学素子Rは、液晶表示装置の表面側に配置されることから、外部環境の影響を受けやすく、特にモバイル機器として用いられる場合は、高温高湿環境に曝されることが多いことから、その影響が顕著となりやすい。かかる観点から、光学素子Rを形成する材料としては、応力によるレターデーションの変化が少ない、すなわち、光弾性係数の小さい材料が好適に用いられる。光弾性係数は、20×10−12m2/N以下であることが好ましく、10×10−12m2/N以下であることがより好ましい。また、光弾性係数は小さいほど好ましいが、一般には、0.5×10−12m2/N以上である。光弾性係数が小さいものとして、前記した材料の中でも、環状ポリオレフィン系樹脂や、アクリル系樹脂を好適に用いることができる。また、光弾性係数の正負が異なる複数の成分を共重合、あるいは混合することによって、光弾性係数を低く抑制すること等も有効である。
また、本発明の液晶表示装置における光学素子Rと第1偏光子Pの位置関係や積層方法の詳細については後述するが、光学素子Rと第1偏光子Pが、他のフィルムを介さずに接着層を介して積層されている場合には、光学素子Rを形成する材料として、透湿度の小さい材料を好適に用いることができる。光学素子Rの透湿度が過度に大きいと、高温高湿の環境下において、偏光子の特性が低下する傾向がある。光学素子Rの透湿度は、10〜150g/m2・24hであることが好ましく、30〜120g/m2・24hであることがより好ましく、50〜100g/m2・24hであることがさらに好ましい。一般に透湿度は小さい方が好ましいが、過度に小さいと、粘着剤を介して偏光子と光学素子を積層、乾燥する際に、粘着剤の剥がれを生じる場合がある。フィルムの透湿度はJIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定し、40℃、90%の相対湿度差で、面積1m2の試料を24時間で透過する水蒸気のグラム数である。
透湿度が小さい熱可塑性樹脂の具体例としては、たとえば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、等が挙げられる。中でも、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂を用いることが好ましく、中でも環状ポリオレフィン系樹脂、が最も好ましい。
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、20000〜500000の範囲にあることが好ましい。ただし、重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)溶媒による、ゲル・パーミッション・クロマトグラフ(GPC)法により、ポリスチレン換算で測定した値である。分子量が過度に小さいと、フィルムの機械強度が不十分となる場合があり、分子量が過度に大きいと、フィルムの成形性や、延伸等の加工性に劣る場合がある。
また、ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、100〜200℃であることが好ましく、110℃〜185℃であることがより好ましい。ガラス転移温度は、JIS K 7121に準じたDSC法の中間点から求めることができる。ガラス転移温度が低すぎると、高温環境に曝された場合に光学特性が変化する等、耐熱性が不十分となる場合がある。ガラス転移温度が過度に高いと、延伸等の加工性に劣る場合がある。
ポリマーフィルムは、例えば流延法等のキャスティング法や押出法などの適宜な方式で形成することができる。フィルムの厚さは、一般には10〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは40〜200μmである。
光学素子Rに用いるフィルムの三次元屈折率は、フィルムの成型方法や、延伸等の加工方法により適宜調整することができる。フィルムに位相差を付与する場合において、その延伸方法は特に限定されず、一般にはロール延伸機や、テンター延伸機が用いられる。例えば、前記(i)のポジティブAプレート、(ii)のネガティブAプレートは、それぞれ、正の複屈折を有するポリマーフィルム、負の複屈折を有するポリマーフィルムを、ロール延伸機による縦一軸延伸することによって得られる。また、前記(iii)、(iv)の二軸プレートは、それぞれ、正の複屈折を有するポリマーフィルム、負の複屈折を有するポリマーフィルムを、テンター延伸機による横延伸、あるいは、逐次若しくは同時二軸延伸することによって得られる。前記(v)のZ型二軸プレートは、例えば、特開平5−157911号公報等に開示されているような、収縮フィルムの応力によって、厚み方向に分子を配向させる方法等を用いることができる。また、負の複屈折を有するポリマーを同様に延伸することによっても、前記(v)のZ型二軸プレートを得ることができる。
また、延伸方法として、特開2000−9912号公報、特開2003−342384号公報、特開2002−22944号公報等に開示されているような、斜め方向の延伸を用いることもできる。このような斜め延伸の場合は、フィルムの搬送方向(「機械方向」、「MD方向」等と称する場合がある)と平行でも垂直でもない角度に遅相軸を有する位相差フィルムが得られ、例えば搬送方向と遅相軸が略45°である長尺の位相差フィルムを得ることができる。
通常の一軸延伸によって得られた位相差フィルムは、搬送方向と平行または垂直方向に遅相軸を有するため、その遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角が45°となるように積層するためには、位相差フィルムと偏光子のうち少なくともいずれか一方を切り出して1枚ずつ積層する必要がある。それに対して、前述のような搬送方向と遅相軸のなす角が略45°となるような長尺位相差フィルムは、長尺の偏光子と、その搬送方向が平行となるように、例えば、ロール・トゥー・ロール法等によって積層することで、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角が略45°の積層体を連続的に得ることができるため、生産性に優れている。
本発明の液晶表示装置において、光学素子Rは、波長550nm直線偏光を、円偏光に変換するのみならず、可視光の広い帯域、すなわち、波長400〜800nm、中でも特に450〜750nmの範囲において、直線偏光を円偏光に変換することが好ましい。可視光の全波長領域で円偏光に変換されることで、偏光サングラスを装着した状態でも、色調の変化のない画像が視認可能となる。さらに、偏光サングラスを装着した状態で液晶表示装置の画面の向きを変えた場合、例えば、画面を90°回転させて、横長のランドスケープモードから、縦長のポートレートモードとした場合でも、画面の色変化を小さくすることができる。
このように、可視光の全領域において円偏光に変換するためには、光学素子Rが、可視光の広い帯域において波長の約1/4のレターデーションを有する、換言すれば、可視光の広い帯域において、約π/2の位相差を有することが好ましい。かかる観点からは、光学素子Rは、波長(λ)nmにおけるレターデーションを(Re(λ))としたとき、Re(450)/Re(550)が0.70〜1.03あることが好ましく、0.73〜1.00であることがより好ましく、0.75〜0.95であることがさらに好ましい。また、Re(650)/Re(550)が0.98〜1.30であることが好ましく、1.02〜1.25であることがより好ましく、1.05〜1.23であることがさらに好ましい。
レターデーションの波長依存性を前記範囲とするためには、光学素子Rのポリマーとして、一般に波長によるレターデーションの変化が小さい(この特性を「低波長分散」と称する場合がある)環状ポリオレフィン等を好適に用いることができる。さらには、特開2000−137116号公報等に開示されている所定の置換度を有するセルロース誘導体、WO00/26705号国際公開パンフレット等に開示されている共重合ポリカーボネート、特開2006−171235号公報、特開2006−89696号公報等に開示されているポリビニルアセタール系ポリマー等のように、長波長ほど大きなレターデーションを有する(この特性を「逆波長分散」と称する場合がある)ポリマーを用いることもできる。
光学素子Rとしては、単独のフィルムを用いてもよいし、2枚以上のフィルムを用いることもできる。2枚以上のフィルムを用いる場合、同一の特性を有するものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
光学素子Rとして、2枚以上のフィルムを用いる場合において、可視光の広い帯域において逆波長分散の特性を有するフィルムを得ることを目的として、例えば、特開平5−27118号公報や、特開平5−27119号公報等に開示されているように、遅相軸のなす角が垂直となるように積層した積層位相差板や、特開平5−100114号公報、特開平10−68816号公報、特開平11−149015号公報、特開2006−171713号公報等に開示されているように、遅相軸が平行でも垂直でもない角をなすように積層した積層位相差板等を好適に用いることができる。
積層位相差板を用いる場合においては、光学素子Rと、第1偏光子Pのなす角は、光学素子Rが第1偏光子Pから出射した直線偏光を円偏光に変換するという本願の目的を達成し得る範囲で任意に設定し得る。例えば、遅相軸のなす角が垂直となるように積層した積層位相差板を用いる場合、第1偏光子の吸収軸は、積層位相差板中の各々の位相差板の遅相軸とのなす角が略45°となるように配置することができる。また、複数の位相差板が、遅相軸が平行でも垂直でもない角をなすように積層された積層位相差板を用いる場合は、第1偏光子と光学素子のなす角は各々の位相差板のレターデーションや、遅相軸のなす角によって適宜決定される。一例を挙げると、特開平5−100114号公報に開示されているように、第1偏光子Pの透過軸方向を基準(0°)にして、位相差πを有する位相差板(λ/2板)の使用数をnとしてそれらをλ/2(1,2,・・・n)で表し、λ/2(1,2,・・・n)の遅相軸の角度をそれぞれθ1、θ2、・・・θnとすると、2(θ1+θ2+・・・+θn)±45°の角度で位相差π/2を有する位相差板(λ/4板)を配置して積層位相差板たる光学素子Rを形成する方法が挙げられる。より具体的な例としては、第1偏光子Pの透過軸とλ/2板の遅相軸のなす角が時計回りに15°となるように配置され、さらに、その上に、第1偏光子Pの透過軸と、λ/4板の遅相軸のなす角が時計回りに75°(λ/2板とλ/4板の遅相軸のなす角が60°)となるように配置することによって、第1偏光子Pから出射した直線偏光を、光学素子Rによって、可視光の広帯域において円偏光に変換することができる。
光学素子Rの、第1偏光子側と逆の面、すなわち、視認側の面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
ハードコート処理は光学素子表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜をフィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は液晶表示装置表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。
またアンチグレア処理は液晶表示装置表面で外光が反射して表示の視認性が阻害されることを防止すること等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にてフィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、光学素子を構成する位相差フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として別体のものとして設けることもできる。
次に本発明の液晶表示装置に用いられる第1偏光子Pについて説明する。第1偏光子としては、直交する直線偏光のうち、透過軸に平行な振動面を有する偏光をそのまま透過させ、吸収軸に平行な振動面を有する偏光を選択的に吸収するものを用いることができる。このような偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムに二色性物質を吸着させて幅方向に延伸処理したものや、リオトロピック液晶性を示す二色性色素が配向しているもの、ホモジニアス配向したサーモトロピック液晶ポリマーやホモジニアス配向した架橋性液晶ポリマーのマトリックス中に二色性色素が配向しているもの等が挙げられる。
このような偏光子の中でも、高い偏光度を有するという観点から、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系偏光子が好適に用いられる。偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料には、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸や、そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコールの重合度は、1000〜10000程度、ケン化度は80〜100モル%程度のものが一般に用いられる。
前記ポリビニルアルコール系フィルム中には可塑剤等の添加剤を含有することもできる。可塑剤としては、ポリオールおよびその縮合物等があげられ、たとえばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。可塑剤の使用量は、特に制限されないがポリビニルアルコール系フィルム中20重量%以下とするのが好適である。
前記ポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は、常法に従って、一軸延伸処理、ヨウ素染色処理が少なくとも施される。さらには、ホウ酸処理、ヨウ素イオン処理を施すことができる。また前記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って乾燥されて偏光子となる。
一軸延伸処理における延伸方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。乾式延伸法の延伸手段としては、たとえば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等が挙げられる。延伸は多段で行うこともできる。前記延伸手段において、未延伸フィルムは、通常、加熱状態とされる。通常、未延伸フィルムは30〜150μm程度のものが用いられる。延伸フィルムの延伸倍率は目的に応じて適宜に設定できるが、延伸倍率(総延伸倍率)は2〜8倍程度、好ましくは3〜6.5倍、さらに好ましくは3.5〜6倍とするのが望ましい。延伸フィルムの厚さは5〜40μm程度が好適である。
ヨウ素染色処理は、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムを含有するヨウ素溶液に浸漬することにより行われる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であり、ヨウ素および溶解助剤としてヨウ化カリウムを含有する。ヨウ素濃度は0.01〜1重量%程度、好ましくは0.02〜0.5重量%であり、ヨウ化カリウム濃度は0.01〜10重量%程度、さらには0.02〜8重量%で用いるのが好ましい。
ヨウ素染色処理にあたり、ヨウ素溶液の温度は、通常20〜50℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は通常10〜300秒間程度、好ましくは20〜240秒間の範囲である。ヨウ素染色処理にあたっては、ヨウ素溶液の濃度、ポリビニルアルコール系フィルムのヨウ素溶液への浸漬温度、浸漬時間等の条件を調整することによりポリビニルアルコール系フィルムにおけるヨウ素含有量およびカリウム含有量が前記範囲になるように調整する。ヨウ素染色処理は、一軸延伸処理の前、一軸延伸処理中、一軸延伸処理の後の何れの段階で行ってもよい。
ホウ酸処理は、ホウ酸水溶液へポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。ホウ酸水溶液中のホウ酸濃度は、2〜15重量%程度、好ましくは3〜10重量%である。ホウ酸水溶液中には、ヨウ化カリウムによりカリウムイオンおよびヨウ素イオンを含有させることができる。ホウ酸水溶液中のヨウ化カリウム濃度は0.5〜10重量%程度、さらには1〜8重量%とするのが好ましい。ヨウ化カリウムを含有するホウ酸水溶液は、着色の少ない偏光子、即ち可視光のほぼ全波長域に亘って吸光度がほぼ一定のいわゆるニュートラルグレーの偏光子を得ることができる。
ヨウ素イオン処理には、たとえば、ヨウ化カリウム等によりヨウ素イオンを含有させた水溶液を用いる。ヨウ化カリウム濃度は0.5〜10重量%程度、さらには1〜8重量%とするのが好ましい。ヨウ素イオン含浸処理にあたり、その水溶液の温度は、通常15〜60℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は通常1〜120秒程度、好ましくは3〜90秒間の範囲である。ヨウ素イオン処理の段階は、乾燥工程前であれば特に制限はない。後述の水洗浄後に行うこともできる。
また、偏光子には亜鉛を含有させることもできる。偏光子に亜鉛を含有させることは、加熱耐久時における色相劣化抑制の点で好ましい。偏光子中の亜鉛の含有量は、亜鉛元素が、偏光子中に0.002〜2重量%含有される程度に調整することが好ましい。さらには、0.01〜1重量%に調整することが好ましい。偏光子中の亜鉛含有量が前記範囲において、耐久性向上効果がよく、色相の劣化を抑えるうえで好ましい。
亜鉛含浸処理には、亜鉛塩溶液が用いられる。亜鉛塩としては、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの水溶液の無機塩化合物が好適である。これらのなかでも、硫酸亜鉛が亜鉛の偏光子中における保持率を高めることができることから好ましい。また、亜鉛含浸処理には、各種亜鉛錯体化合物を用いることができる。亜鉛塩水溶液中の亜鉛イオンの濃度は、0.1〜10重量%程度、好ましくは0.3〜7重量%の範囲である。また、亜鉛塩溶液はヨウ化カリウム等によりカリウムイオンおよびヨウ素イオンを含有させた水溶液を用いるのが亜鉛イオンを含浸させやすく好ましい。亜鉛塩溶液中のヨウ化カリウム濃度は0.5〜10重量%程度、さらには1〜8重量%とするのが好ましい。
亜鉛含浸処理にあたり、亜鉛塩溶液の温度は、通常15〜85℃程度、好ましくは25〜70℃である。浸漬時間は通常1〜120秒程度、好ましくは3〜90秒間の範囲である。亜鉛含浸処理にあたっては、亜鉛塩溶液の濃度、ポリビニルアルコール系フィルムの亜鉛塩溶液への浸漬温度、浸漬時間等の条件を調整することによりポリビニルアルコール系フィルムにおける亜鉛含有量を調整することができる。亜鉛含浸処理の段階は特に制限されず、ヨウ素染色処理の前でもよく、ヨウ素染色処理後のホウ酸水溶液への浸漬処理の前、ホウ酸処理中、ホウ酸処理後でもよい。またヨウ素染色溶液中に亜鉛塩を共存させておいて、ヨウ素染色処理と同時に行ってもよい。亜鉛含浸処理は、ホウ酸処理とともに行なうのが好ましい。また亜鉛含浸処理とともに一軸延伸処理を行なうこともできうる。また、亜鉛含浸処理は複数回行なってもよい。
前記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って、水洗浄工程、乾燥工程に供することができる。
水洗浄工程は、通常、純水にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。水洗浄温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃、さらに好ましくは15〜40℃の範囲である。浸漬時間は、通常、10〜300秒間、好ましくは20〜240秒間程度である。
乾燥工程は、任意の適切な乾燥方法、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等を採用しうる。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的に20〜80℃、好ましくは25〜70℃であり、乾燥時間は代表的には1〜10分間程度であることが好ましい。また、乾燥後の偏光子の水分率は10〜30重量%とすることが好ましく、12〜28重量%とすることがより好ましく、16〜25重量%とすることがさらに好ましい。水分率が過度に大きいと、後述するように接着層を介して偏光子と光学素子や透明保護フィルムとを貼り合わせた積層貼合体、すなわち偏光板を乾燥する際に、偏光子の乾燥に伴って偏光度が低下する傾向がある。特に500nm以下の短波長領域における直交透過率が増大する、すなわち、短波長の光が漏れるために、黒表示が青色に着色する傾向がある。逆に、偏光子の水分率が過度に小さいと、局所的な凹凸欠陥(クニック欠陥)が発生しやすい等の問題を生じる場合がある。
本発明の液晶表示装置においては、図4に示すように、第1偏光子Pの両面に透明保護フィルムS1、S2を有していてもよい。透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。また、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることもできる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
透明保護フィルムに光学等方性、すなわち、面内レターデーションが10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下の特性が要求される場合には、セルロース系樹脂が一般に用いられる。セルロース系樹脂としては、セルロースと脂肪酸のエステルが好ましい。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フィルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等が挙げられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内レターデーション(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向レターデーション(Rth)は、〜60nm程度を有している。
なお、厚み方向レターデーションが小さいセルロース系樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース系樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース系樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などが挙げられる。
また、厚み方向レターデーションが小さいセルロース系樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
また、光学等方性を有する保護フィルムとして、特開2001−343529号公報(WO01/37007)等に記載の側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を含有するポリマーフィルムや、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報、特開2006−171464号公報等に記載のラクトン環構造を有するアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルム、特開2004−70290号公報、特開2004−70296号公報、特開2004−163924号公報、特開2004−292812号公報、特開2005−314534号公報、特開2006−131898号公報、特開2006−206881号公報、特開2006−265532号公報、特開2006−283013号公報、特開2006−299005号公報、特開2006−335902号公報等に記載の不飽和カルボン酸アルキルエステルの構造単位およびグルタル酸無水物の構造単位を有するアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルム、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報等に記載のグルタルイミド構造を有する熱可塑性樹脂含有するフィルム等を用いることもできる。これらのフィルムはレターデーションが小さく、かつ、光弾性係数が小さいため、偏光板の歪みによるムラ等の不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる点で好ましい。
また、光学等方性を有する保護フィルムとして、環状ポリオレフィン系樹脂を用いることも好ましい。環状ポリオレフィン系樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「アペル」が挙げられる。
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。保護フィルムの厚みが過度に小さいと、偏光子が高温高湿環境での耐久性に劣ったり、局所的な凹凸欠陥(クニック欠陥)が発生しやすい等の問題を生じる場合がある。
透明保護フィルムS1、S2は、偏光子の液晶セル側(以下、「第1保護フィルム」と称する)と、視認側(以下、「第2保護フィルム」と称する)で同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。また、第1保護フィルムS1、第2保護フィルムS2として、それぞれ少なくとも1層の保護フィルムを有していればよく、2層以上の積層物を用いることもできる。
また、第2保護フィルムS2として、光学等方性を有するものを用いる代わりに、図5に示すように、前記光学素子Rとして作用するものを用いる、すなわち、偏光子保護フィルムが、光学素子Rの機能を兼ね備えることが好ましい構成である。このような構成とすることで、部材の数を減らし、低コスト化に寄与させることができる。特に、薄型、軽量が強く求められるモバイル用途の液晶表示装置においては、かかる構成とすることが好ましい。
前記第1偏光子Pと第1保護フィルムS1、第2保護フィルムS2の積層方法は特に限定されないが、作業性や、光の利用効率の観点からは、接着剤を用いて各層を空気間隙なく積層することが望ましい。接着剤を用いる場合、その種類は特に制限されず、種々のものを用い得る。
特に、本発明においては、第1偏光子Pと第2保護フィルムS2との接着層に、接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイドを含有してなる樹脂溶液を用いることが好ましい。偏光子と保護フィルムは、接着層を介して接着した後に乾燥することが一般的であるが、この際に凹凸欠陥(クニック)が発生しやすい傾向がある。特に偏光サングラスを装着した場合は、第1偏光子Pと第2保護フィルムS2の積層により生じたクニック欠陥が光抜けして見えやすい傾向がある等、視認性に影響を与えやすい。また、図5のように、第2保護フィルムS2として、光学素子Rとして作用するものを用いる場合は、その傾向が顕著である。中でも、光学素子Rとして、環状ポリオレフィン樹脂等の透湿度の小さいポリマーフィルムを用いた場合はクニックが発生しやすい傾向があるため、上記組成の接着剤を用いることが好ましい。
接着剤に用いるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂や、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上するため好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独でまたは二種以上を併用することができる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜5000程度、好ましくは1000〜4000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等が挙げられる。またポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不充分となる傾向がある。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると、耐水性の向上効果を十分に得られない場合がある。アセトアセチル基変性度はNMRにより定量することができる。
接着剤に用いる架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物が挙げられる。これらのなかでもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好ましく、ジアルデヒド類としてはグリオキザールが好適である。なかでもメチロール基を有する化合物である、メチロールメラミンが特に好適である。
前記架橋剤の配合量は、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の種類等に応じて適宜設計できるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常、10〜60重量部程度、好ましくは20〜50重量部である。かかる範囲において、良好な接着性が得られる。
耐久性を向上させるには、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることが好ましい。この場合にも、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、架橋剤を10〜60重量部、さらには20〜50重量部の範囲で用いるのが好ましい。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤がゲル化する傾向がある。その結果、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難となる場合がある。かかる観点からは、架橋剤の配合量は、上記配合量で用いられるが、本発明の樹脂溶液は、金属化合物コロイドを含有しているため、前記のように架橋剤の配合量が多い場合であっても、安定性よく用いることができる。
接着剤に用いる金属化合物コロイドは、微粒子が分散媒中に分散しているものであり、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものである。金属化合物コロイド(微粒子)の平均粒径は1〜100nmである。前記コロイドの平均粒径が前記範囲であれば、接着剤層中において、金属化合物を略均一に分散させることができ、接着性を確保し、かつクニックを抑えることができる。前記平均粒径の範囲は、可視光の波長領域よりもかなり小さく、形成される接着剤層中において、金属化合物によって透過光が散乱したとしても、偏光特性には悪影響を及ぼさない。金属化合物コロイドの平均粒径は、1〜100nm、さらには1〜50nmであるのが好ましい。
金属化合物コロイドとしては、各種のものを用いることができる。例えば、金属化合物コロイドとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の金属酸化物のコロイド;炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩のコロイド;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物のコロイドが挙げられる。
金属化合物コロイドは、分散媒に分散してコロイド溶液の状態で存在している。分散媒は、主として水である。水の他に、アルコール類等の他の分散媒を用いることもできる。コロイド溶液中の金属化合物コロイドの固形分濃度は、特に制限されないが、通常、1〜50重量%程度、さらには、1〜30重量%のものが一般的である。また、金属化合物コロイドは、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有するものを用いることができる。
金属化合物コロイドは、静電的に安定化しており、正電荷を有するものと、負電荷を有するものに分けられるが、金属化合物コロイドは非導電性の材料である。正電荷と負電荷とは、接着剤調製後の溶液におけるコロイド表面電荷の電荷状態により、区別される。金属化合物コロイドの電荷は、例えば、ゼータ電位測定機により、ゼータ電位を測定することにより確認できる。金属化合物コロイドの表面電荷は、一般に、pHにより変化する。従って、本願のコロイド溶液の状態の電荷は、調製された接着剤溶液のpHにより影響される。接着剤溶液のpHは、通常、2〜6、好ましくは2.5〜5、さらに好ましくは3〜5、さらには3.5〜4.5の範囲に設定される。本発明では、正電荷を有する金属化合物コロイドが、負電荷を有する金属化合物コロイドに比べて、クニックの発生を抑える効果が大きい。正電荷を有する金属化合物コロイドとしては、アルミナコロイド、チタニアコロイド等が挙げられる。これらのなかでも、特に、アルミナコロイドが好適である。
金属化合物コロイドは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、200重量部以下の割合(固形分の換算値)で配合することが好ましい。属化合物コロイドの配合割合を前記範囲とすることで、偏光子と保護フィルムとの接着性を確保しながら、クニックの発生を抑えることができる。金属化合物コロイドの配合割合は、10〜200重量部であるのが好ましく、さらには20〜175重量部、さらには30〜150重量部であるのが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂に対する金属化合物コロイドの配合割合が過剰であると接着性に劣る場合があり、金属化合物コロイドの配合割合が小さいと、クニック発生を抑止する効果を十分に得られない場合がある。
このような接着剤は、通常、水溶液として用いられる。樹脂溶液濃度は特に制限はないが、塗工性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
接着剤としての樹脂溶液の粘度は特に制限されないが、1〜50mPa・sの範囲のものを好適に用いることができる。偏光子と透明保護フィルムの接着にあたって、接着剤の粘度が下がるに従って、クニックの発生が多くなるのが一般的であるが、接着剤を前述のような組成とすることで、樹脂溶液の粘度に拘らず、1〜20mPa・sの範囲のような低粘度の範囲においても、クニックの発生を抑えることができる。アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、一般的なポリビニルアルコール樹脂に比べて、重合度を高くすることができず、前記のような低粘度で用いられていたが、接着剤をこのような組成とすることで、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合にも、樹脂溶液の低粘度によって生じるクニックの発生を抑えることができる。
接着剤としての樹脂溶液の調製法は特に制限されない。通常は、ポリビニルアルコール系樹脂および架橋剤を混合し、適宜に濃度を調製したものに、金属化合物コロイドを配合することで、樹脂溶液が調製される。また、ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いたり、架橋剤の配合量が多いような場合には、溶液の安定性を考慮して、ポリビニルアルコール系樹脂と金属化合物コロイドを混合した後に、架橋剤を、得られる樹脂溶液の使用時期等を考慮しながら、混合することができる。なお、偏光板用接着剤である樹脂溶液の濃度は、樹脂溶液を調製した後に適宜に調整することもできる。
なお、接着剤には、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。また、本願における、金属化合物コロイドは非導電性の材料であるが、導電性物質の微粒子を含有することもできる。
前記偏光子と前記透明保護フィルムとを、接着剤を用いて積層する場合において、接着剤の塗布は、保護フィルム、偏光子のいずれにおこなってもよく、両者におこなってもよい。接着剤の塗布は、乾燥後の接着剤層の厚みが10〜300nm程度になるように行なうのが好ましい。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る点から、10〜200nmであることがより好ましく、20〜150nmであることがさらに好ましい。また、接着剤として、前述のポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイドを含有してなる樹脂溶液を用場合、接着剤層の厚みは、偏光板用接着剤に含有されている金属化合物コロイドの平均粒径よりも大きくなるように設計することが好ましい。
接着剤層の厚みを調整する方法としては、特に制限されるものではないないが、例えば、接着剤溶液の固形分濃度や接着剤の塗布装置を調整する方法が挙げられる。このような接着剤層厚みの測定方法としては、特に制限されるものではないが、SEM(Scanning Electron Microscopy)や、TEM(Transmission Electron Microscopy)による断面観察測定が好ましく用いられる。接着剤の塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。
また、接着剤を塗工する前に、前記透明保護フィルムに表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としてば、例えば、保護フィルムと接着剤の親和性を向上すること等を目的として、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等を行うことができる。
接着剤を塗布した後は、偏光子と保護フィルムをロールラミネーター等により貼り合わせる。また、偏光度や色相等の光学特性を安定化する観点においては、偏光子の両面に保護フィルムを貼り合わせた後に、適切な乾燥温度で乾燥させることが好ましい。光学特性の観点から乾燥温度は90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。また、乾燥温度に下限はないが、工程の効率や実用性を考慮すると、50℃以上であることが好ましい。また、乾燥温度は上記温度範囲内で段階的に昇温して実施することもできる。
前述の偏光子や、偏光子に保護フィルムを積層した偏光板の表面には、液晶セルや、他のフィルム等の部材と積層するために、粘着層を設けることもできる。
粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学素子上や保護フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを移着する方式などが挙げられる。
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層としてフィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層を設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
なお本発明において、上記した光学素子や偏光子や透明保護フィルム、接着層、粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する等の方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
本発明の液晶表示装置は、図1の如く、前記光学素子R、前記第1偏光子P、液晶セルLCを有していれば、その他の構成は特に限定されない。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板、さらには、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護フィルム、プリズムアレイ、レンズアレイシート、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等の光学層、及び必要に応じて照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成することができる。
本発明の液晶表示装置の一態様としては、液晶セルの裏側、すなわち、第1偏光子を設けるのと反対側に、反射板、あるいは、反射型偏光板等を設け、外光を利用する反射型液晶表示装置が挙げられる。また、別の実施態様として、液晶セルの第1偏光子を設けるのと反対側に、さらに第2偏光子(または、偏光子の片面または両面に保護フィルムを設けた偏光板)、および光源を設けた透過型液晶表示装置が挙げられる。さらには、光源と外光の両方を利用しうる、半透過型液晶表示装置も好ましい実施態様である。
反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側からの入射光(外光)を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
反射型偏光板は、例えば、偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等が挙げられる。
また、各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等も挙げられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
半透過反射型偏光板は、上記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等が挙げられる。
半透過反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過反射型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、半透過反射型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等が挙げられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等が挙げられる。
液晶セルとしては、例えばツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モードや、水平配向(ECB)モード、垂直配向(VA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフイールドスイッチング(FFS)モード、ベンドネマチック(OCB)モード、ハイブリッド配向(HAN)モード、強誘電性液晶(SSFLC)モード、反強誘電液晶(AFLC)モードの液晶セルなど種々の液晶セルが挙げられる。
光源としては、直下型バックライト、サイドライト型バックライト、面状光源等を用いることができる。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散層、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
位相差フィルムとしては、前記光学素子Rと同様のもの、あるいは、位相差値等の光学特性を異なる範囲に制御したもの等を用いることができる。
視野角拡大フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に一軸に延伸され厚み方向にも延伸された厚み方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いられる。
液晶表示装置の形成においては、その製造過程で上記部材を順次別個に積層する方式にても形成することができるし、予めいくつかの部材を積層したものを用いることもできる。特に本発明の液晶表示装置においては、第1偏光子と第1、第2保護フィルムおよび光学素子Rを予め積層して用いることで、品質の安定性や組立の作業性に優れたものとすることができる。