ところで、改質部を加熱するための燃焼部においてアノードオフガスを触媒燃焼させる構成を採る場合、上記の如く比較的高温で供給されるアノードオフガスが燃焼用空気(支燃ガス)との接触によって自己着火し、燃焼部で気相燃焼が生じてしまうことが懸念される。この気相燃焼は、アノードオフガスの供給側に伝播する(いわゆる逆火を生じる)ので、燃焼に伴う発熱が改質部で消費されなくなり、触媒燃焼を行う場合と比較して燃焼温度が高温になる。このため、気相燃焼を生じさせるアノードオフガスの自己着火は、燃焼部等の構成部品に損傷を与えたり、構成材料の劣化を促進したりする原因となる。
本発明は、上記事実を考慮して、改質部を加熱するための加熱部において可燃ガスの自己着火が生じることを防止することができる水素供給装置を得ることが目的である。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る水素供給装置は、供給された原料から水素を含有する燃料ガスを生成する改質工程を行う改質部と、供給された可燃ガスと支燃ガスとを触媒に接触させて触媒燃焼を生じさせ、該触媒燃焼に伴って生じた熱を前記改質工程を行うための熱として前記改質部に供給する加熱部と、前記可燃ガスと支燃ガスとを前記加熱部に供給される前に混合する混合器と、前記混合器又は加熱部で前記可燃ガスと前記支燃ガスとの混合ガスの温度を検出する温度センサと、前記温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、前記混合器に導入される前の前記可燃ガスの可燃成分の分圧又は前記混合器に導入される前の前記支燃ガスの酸素分圧が減少するように、該可燃ガス又は支燃ガスを前記加熱部の燃焼排ガスにて希釈するガス希釈装置と、を備えている。
請求項1記載の水素供給装置では、改質部は加熱部から熱の供給を受けて改質工程を維持し、水素を含有する燃料ガスを生成する。可燃ガス及び支燃ガスは、混合器にて混合されて混合ガスとして加熱部に供給される。このため、可燃ガス及び支燃ガスは、混合器を備えない構成と比較して、混合時間すなわち触媒への接触前の混合のために気相で接触する気相滞在時間を短縮することができる。これにより、本水素供給装置では、可燃ガスの自己着火による気相燃焼の発生が防止又は効果的に抑制される。
また、温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合には、ガス希釈装置が作動し、水素供給装置を可燃ガスの自己着火が生じ難い状態にする。可燃ガスの自己着火が生じ難い状態としては、例えば、混合ガス温度が可燃ガスの自己着火温度以下である状態、混合ガス中の可燃ガス(可燃成分)又は酸素の分圧が低い状態等を挙げることができる。本水素供給装置では、可燃ガスの自己着火が生じ易い条件が成立した場合に、この可燃ガス又は支燃ガスが希釈ガスにて希釈されることで、混合器に導入される前の可燃ガス中の可燃成分の分圧又は支燃ガス中の酸素分圧が低くなる。これにより、混合器又は加熱部での可燃ガスの自己着火の発生が効果的に抑制また防止される。また、混合ガス中の可燃成分分圧又は酸素分圧が低減されるので、仮に自己着火による気相燃焼が生じた場合でも、発熱量の低下及び熱容量(燃焼ガスの顕熱)の増大によって燃焼温度が比較的低く抑えられる。
このように、請求項1記載の水素供給装置では、改質部を加熱するための加熱部において可燃ガスの自己着火が生じることを防止することができる。このため、本水素供給装置では、可燃ガス及び支燃ガスの少なくとも一方を該可燃ガスの自己着火を生じ得る温度で加熱部(混合器)に導入して、加熱部での顕熱ロスが少ない熱効率の高い構成を実現することが可能である。
請求項2記載の発明に係る水素供給装置は、所定作動温度で作動する水素消費装置に水素含有の燃料ガスを供給するための水素供給装置であって、供給された原料から水素を含有する燃料ガスを生成する改質工程を行う改質部と、供給された可燃ガスと支燃ガスとを触媒に接触させて触媒燃焼を生じさせ、該触媒燃焼によって生じた熱を前記改質部に前記改質工程を行うための熱として供給する加熱部と、前記燃料ガスのうち前記水素消費装置で消費されない成分を前記可燃ガスとして前記加熱部に導入する可燃ガス導入路と、前記可燃ガス導入路に設けられ、前記可燃ガスと支燃ガスとを混合する混合器と、前記混合器又は加熱部で前記可燃ガスと前記支燃ガスとの混合ガスの温度を検出する温度センサと、前記温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、前記混合器に導入される前の前記可燃ガスの可燃成分の分圧又は前記混合器に導入される前の前記支燃ガスの酸素分圧が減少するように、該可燃ガス又は支燃ガスを前記加熱部の燃焼排ガスにて希釈するガス希釈装置と、を備えている。
請求項2記載の水素供給装置では、改質部は加熱部から熱の供給を受けて改質工程を維持し、水素を含有する燃料ガスを生成する。この燃料ガスは水素消費装置に供給されて主に水素が消費され、この燃料ガスの可燃性ガスを含む残余の成分は、ほぼ水素消費装置の作動温度で可燃ガスとして混合器に導入される。可燃ガスは、混合器で支燃ガスと混合され、混合ガスとして加熱部に供給される。このため、可燃ガス及び支燃ガスは、混合器を備えない構成と比較して、混合時間すなわち触媒への接触前の混合のために気相で接触する気相滞在時間を短縮することができる。これにより、本水素供給装置では、可燃ガスの自己着火による気相燃焼の発生が防止又は効果的に抑制される。
また、温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合には、ガス希釈装置が作動し、水素供給装置を可燃ガスの自己着火が生じ難い状態にする。可燃ガスの自己着火が生じ難い状態としては、例えば、混合ガス温度が可燃ガスの自己着火温度以下である状態、混合ガス中の可燃ガス(可燃成分)又は酸素の分圧が低い状態等を挙げることができる。本水素供給装置では、可燃ガスの自己着火が生じ易い条件が成立した場合に、この可燃ガス又は支燃ガスが希釈ガスにて希釈されることで、混合器に導入される前の可燃ガス中の可燃成分の分圧又は支燃ガス中の酸素分圧が低くなる。これにより、混合器又は加熱部での可燃ガスの自己着火の発生が効果的に抑制また防止される。また、混合ガス中の可燃成分分圧又は酸素分圧が低減されるので、仮に自己着火による気相燃焼が生じた場合でも、発熱量の低下及び熱容量(燃焼ガスの顕熱)の増大によって燃焼温度が比較的低く抑えられる。
このように、請求項2記載の水素供給装置では、改質部を加熱するための加熱部において可燃ガスの自己着火が生じることを防止することができる。このため、本水素供給装置では、可燃ガスを水素消費装置の作動温度で加熱部(混合器)に導入して、加熱部での顕熱ロスが少ない熱効率の高い構成を実現することが可能である。また、改質部で生成される燃料ガスの温度域が、水素消費装置の作動温度域と略同域にあるように構成して、水素消費装置とを含んで構成されるシステムの熱効率が高い構成を実現することも可能である。
請求項3記載の発明に係る水素供給装置は、所定作動温度で作動する水素消費装置に水素含有の燃料ガスを供給するための水素供給装置であって、供給された原料から水素を含有する燃料ガスを生成する改質工程を行う改質部と、供給された可燃ガスと支燃ガスとを触媒に接触させて触媒燃焼を生じさせ、該触媒燃焼によって生じた熱を前記改質部に前記改質工程を行うための熱として供給する加熱部と、水素消費装置を前記所定の作動温度で作動させるために該水素消費装置を冷却した後の酸素含有の冷媒を、前記支燃ガスとして前記加熱部に導入する支燃ガス導入路と、前記支燃ガス導入路に設けられ、前記可燃ガスと支燃ガスとを混合する混合器と、前記混合器又は加熱部で前記可燃ガスと前記支燃ガスとの混合ガスの温度を検出する温度センサと、前記温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、前記混合器に導入される前の前記可燃ガスの可燃成分の分圧又は前記混合器に導入される前の前記支燃ガスの酸素分圧が減少するように、該可燃ガス又は支燃ガスを前記加熱部の燃焼排ガスにて希釈するガス希釈装置と、を備えている。
請求項3記載の水素供給装置では、改質部は加熱部から熱の供給を受けて改質工程を維持し、水素を含有する燃料ガスを生成する。この燃料ガスは水素消費装置に供給されて主に水素が消費される。このとき、水素消費装置は、酸素を含有する冷媒(例えば空気)によって冷却されて作動温度が所定温度(一定範囲)に維持されている。水素消費装置を冷却した後の冷媒(オフガス)は、ほぼ水素消費装置の作動温度で支燃ガスとして混合器に導入される。
この支燃ガスは、混合器で可燃ガスと混合され、混合ガスとして加熱部に供給される。このため、可燃ガス及び支燃ガスは、混合器を備えない構成と比較して、混合時間すなわち触媒への接触前の混合のために気相で接触する気相滞在時間を短縮することができる。これにより、本水素供給装置では、可燃ガスの自己着火による気相燃焼の発生が防止又は効果的に抑制される。また、温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合には、ガス希釈装置が作動し、水素供給装置を可燃ガスの自己着火が生じ難い状態にする。可燃ガスの自己着火が生じ難い状態としては、例えば、混合ガス温度が可燃ガスの自己着火温度以下である状態、混合ガス中の可燃ガス(可燃成分)又は酸素の分圧が低い状態等を挙げることができる。本水素供給装置では、可燃ガスの自己着火が生じ易い条件が成立した場合に、この可燃ガス又は支燃ガスが希釈ガスにて希釈されることで、混合器に導入される前の可燃ガス中の可燃成分の分圧又は支燃ガス中の酸素分圧が低くなる。これにより、混合器又は加熱部での可燃ガスの自己着火の発生が効果的に抑制また防止される。また、混合ガス中の可燃成分分圧又は酸素分圧が低減されるので、仮に自己着火による気相燃焼が生じた場合でも、発熱量の低下及び熱容量(燃焼ガスの顕熱)の増大によって燃焼温度が比較的低く抑えられる。
このように、請求項3記載の水素供給装置では、改質部を加熱するための加熱部において可燃ガスの自己着火が生じることを防止することができる。このため、本水素供給装置では、支燃ガスを水素消費装置の作動温度で加熱部(混合器)に導入して、加熱部での顕熱ロスが少ない熱効率の高い構成を実現することが可能である。また、改質部で生成される燃料ガスの温度域が、水素消費装置の作動温度域と略同域にあるように構成して、水素消費装置とを含んで構成されるシステムの熱効率が高い構成を実現することも可能である。
請求項4記載の発明に係る水素供給装置は、請求項3記載の水素供給装置において、前記燃料ガスのうち前記水素消費装置で消費されない成分を前記可燃ガスとして前記加熱部に導入する可燃ガス導入路をさらに備え、該可燃ガス導入路と前記支燃ガス導入路との合流部に前記混合器を配置した。
請求項4記載の水素供給装置では、改質部で生成され水素消費装置にて主に水素が消費された燃料ガス(可燃性ガスを含む残余の成分)は、ほぼ所定の作動温度で可燃ガスとして混合器に導入される。可燃ガスは、混合器で支燃ガスと混合され、混合ガスとして加熱部に供給される。このため、混合器では、ほぼ同温(水素消費装置の作動温度)の可燃ガスと支燃ガスとが混合される。すなわち、この構成では、混合ガスの温度が水素消費装置の作動温度と同域となり、該作動温度と同域の温度の燃料ガスを改質部にて生成するように設定することで、熱効率が一層高い構成を実現することができる。一方、可燃ガスが支燃ガスによって冷却されることがないので、該可燃ガスの自己着火を生じ易いが、上記の通り混合器によって混合ガスの気相滞在時間を短縮する構成とすることで、可燃ガスの自己着火による気相燃焼の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
請求項5記載の発明に係る水素供給装置は、請求項4記載の水素供給装置において、前記水素消費装置の作動温度が300℃から600℃の範囲内である。
請求項5記載の水素供給装置では、水素消費装置の作動温度域が300℃乃至600℃の温度域にあるので、改質部は、300℃乃至600℃の中温域の燃料ガスを生成して水素消費装置に供給すれば効率が良い。このように燃料ガス温度が水素消費装置の作動温度と同域になるように構成すれば、水素供給装置と水素消費装置とを含んで構成されるシステムの熱効率が高くなる。そして、このような構成では、混合器に導入される混合ガスの温度が300℃乃至600℃となり、可燃ガスの組成によっては自己着火を生じ得る温度域であるが、上記の通り混合器によって混合ガスの気相滞在時間が短縮される構成とすると共に自己着火抑制手段としてガス希釈装置を設けることで、可燃ガスの自己着火による気相燃焼の発生が防止又は効果的に抑制される。なお、300℃乃至600℃の中温域で作動する水素消費装置としては、例えば、中温域で作動するタイプの燃料電池等を挙げることができる。また、水素消費装置の作動温度域を、より安定した範囲である400℃乃至500℃程度の範囲とすることができる。
請求項6記載の発明に係る水素供給装置は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の水素供給装置において、前記ガス希釈装置は、前記加熱部の燃焼排ガスを前記混合器に導入される前の前記支燃ガスに合流させる希釈ガス流路と、前記希釈ガス流路を開閉可能な希釈ガス流路開閉装置と、前記温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、前記希釈ガス流路が開放されるように前記希釈ガス流路開閉装置を作動する制御装置と、を含んで構成されている。
請求項6記載の水素供給装置では、温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出したと判断した制御装置は、希釈ガス流路開閉装置を作動して希釈ガス流路を開放させる。これにより、加熱部燃焼排ガスの少なくとも一部が支燃ガスと合流して混合器に導入され、希釈ガス流路開閉装置の作動前と比較して支燃ガスの酸素分圧が低下する。これにより、混合器による混合の際に、混合ガス中に局所的に酸素濃度が高い部分が生じることが抑制されるので、可燃ガスの自己着火の発生が効果的に抑制また防止される。
請求項7記載の発明に係る水素供給装置は、請求項6記載の水素供給装置において、前記希釈ガス流路開閉装置は、前記希釈ガス流路の開度を調節可能であり、前記制御装置は、前記温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、該温度センサによる検出温度が高いほど前記希釈ガス流路の開度が大きくなるように前記希釈ガス流路開閉装置を制御する。
請求項7記載の水素供給装置では、制御装置は、温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、自己着火の生じ易さに応じて、すなわち温度センサによる検出温度が高いほど前記希釈ガス流路の開度が大きくなるように、希釈ガス流路の開度を調節する。これにより、支燃ガスに合流する燃焼排ガス量が調節され、加熱部での適正状態に近い燃焼(改質部への供給熱量)を維持しつつ可燃ガスの自己着火を抑制することができる。
請求項8記載の発明に係る水素供給装置は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の水素供給装置において、前記ガス希釈装置は、前記加熱部の燃焼排ガスを前記混合器に導入される前の前記可燃ガスに合流させる希釈ガス流路と、前記希釈ガス流路を開閉可能な希釈ガス流路開閉装置と、前記温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、前記希釈ガス流路が開放されるように前記希釈ガス流路開閉装置を作動する制御装置と、を含んで構成されている。
請求項8記載の水素供給装置では、温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出と判断した制御装置は、希釈ガス流路開閉装置を作動して希釈ガス流路を開放させる。これにより、加熱部燃焼排ガスの少なくとも一部が可燃ガスと合流して混合器に導入され、希釈ガス流路開閉装置の作動前と比較して可燃ガスの可燃成分分圧が低下する。これにより、混合器による混合の際に、混合ガス中に局所的に可燃成分濃度が高い部分が生じることが抑制されるので、可燃ガスの自己着火の発生が効果的に抑制また防止される。
請求項9記載の発明に係る水素供給装置は、請求項8記載の水素供給装置において、前記希釈ガス流路開閉装置は、前記希釈ガス流路の開度を調節可能であり、前記制御装置は、前記温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、該温度センサによる検出温度が高いほど前記希釈ガス流路の開度が大きくなるように前記希釈ガス流路開閉装置を制御する。
請求項9記載の水素供給装置では、制御装置は、温度センサが前記可燃ガスの自己着火温度に対応して設定された設定温度を超えたことを検出した場合に、自己着火の生じ易さに応じて、すなわち温度センサによる検出温度が高いほど前記希釈ガス流路の開度が大きくなるように、希釈ガス流路の開度を調節する。これにより、可燃ガスに合流する燃焼排ガス量が調節され、加熱部での適正状態に近い燃焼(改質部への供給熱量)を維持しつつ可燃ガスの自己着火を抑制することができる。
請求項10記載の発明に係る水素供給装置は、請求項6〜請求項9の何れか1項記載の水素供給装置において、前記ガス希釈装置は、前記燃焼排ガスを前記混合器に導入される前の前記支燃ガス又は前記可燃ガスの流路に導入する希釈ガス駆動装置をさらに備える。
請求項10記載の水素供給装置では、希釈ガスである燃焼排ガスは、希釈ガス駆動装置の作用(機械的な作動や流体力学的作用等)によって、混合器に対する上流で支燃ガス又は可燃ガスに合流する。これにより、支燃ガス又は可燃ガスは確実に希釈され、可燃ガスの自己着火が抑制される。
以上説明したように本発明に係る水素供給装置は、改質部を加熱するための加熱部において可燃ガスの自己着火が生じることを防止することができるという優れた効果を有する。
本発明の第1の実施形態に係る水素供給装置10について、図1乃至図11に基づいて説明する。
図1には、水素供給装置10が適用された燃料電池システム12のシステム構成図(プロセスフローシート)が示されている。この図に示される如く、水素供給装置10は、水素を含有する燃料ガスを燃料電池14に供給するようになっている。
燃料電池14は、水素を含有する燃料ガスをアノード電極に導入するためのアノード流路16と、酸化ガスとしての酸素を含有するカソード用空気をカソード電極に導入するためのカソード流路18とを備えており、アノード電極に供給された水素とカソード電極に供給された酸素とが電気化学的に反応することで、起電力が生じるようになっている。具体的には、燃料電池14は、図5に示す単セル20が積層されたスタックを有して構成されている。単セル20は、電解質層22を一対のセパレータ24、26にて両側から挟み込んで構成されている。各セパレータ24、26は、導電性でかつガス不透過性の材料(例えばカーボン)等で構成されている。一方のセパレータ24には、電解質層22側に開口してカソード流路18が形成されており、他方のセパレータ24には、電解質層22側に開口してアノード流路16が形成されている。
電解質層22は、固体酸化物である電解質膜22Aと、電解質膜22Aのセパレータ24側に配置されたカソード22Bと、電解質膜22Aのセパレータ26側に配置されたアノード22Cとで構成されている。電解質膜22Aは、例えばBaCeO3系、SrCeO3系等のペロブスカイト系電解質膜とすることができる。また、カソード22B(カソード触媒)としては、例えば白金(Pt)系の拡散層を有するものが用いられる。
アノード22Cは、セパレータ26側の水素分子解離層28と、電解質膜22A側の水素分離膜30とを積層して構成されている。水素分子解離層28としては、例えばパラジウム薄膜が用いられ、このパラジウム薄膜がアノード電極の触媒としても機能するようになっている。なお、アノード電極の触媒として、必要に応じて白金系の触媒を採用しても良い。水素分離膜30は、例えば、バナジウム膜等の水素の選択的透過性を有する金属が用いられる。なお、水素分子解離層28と水素分離膜30との積層膜を水素分離膜として把握することも可能である。
以上説明した燃料電池14(単セル20)では、アノード流路16に導入された燃料ガス中の水素がアノード22C(水素分子解離層28)においてプロトン化され、このプロトンが水素分離膜30を透過して電解質膜22Aに至り、さらにカソード22Bに移動する。このカソード22Bにおいて、このプロトンとカソード流路18に導入された酸素とが反応して水(水蒸気)が生成される。このプロトンの移動に伴って電子がアノード22C(セパレータ26)から外部導体を通じてカソード(セパレータ24)に向けて流れ、発電が行われる。
これにより、燃料電池14は、アノード流路16に水素含有の燃料ガスを供給すると共にカソード流路18にカソード用空気を供給することで、発電を行う構成が実現されている。すなわち、燃料電池システム12では、燃料電池14に供給する前の燃料ガスから水素のみを分離することなく、水素と他のガスとの混合ガスをアノード流路に供給して発電を行うことができる構成とされている。
この水素分離膜30を備えた燃料電池14は、水素分離膜30が高温になると拡散を生じ、また低温の水素分離膜30が水素と接触すると水素脆化によって劣化する恐れがあるため、運転温度を所定の温度範囲(例えば、200℃〜700℃、好ましくは300℃〜600℃、より好ましくは400℃〜500℃)に保つようになっている。具体的には、燃料電池システム12では、図1に模式的に示す如く、燃料電池14内(単セル20間)に冷媒流路32が設けられており、この冷媒流路32を通過する冷媒(この実施形態では、空気)によって燃料電池14の運転温度を上記した所定の温度範囲内に保つ構成とされている。
燃料電池システム12は、燃料電池14のカソード流路18に酸素含有ガスとしてのカソード用空気を供給するためのカソード用空気ポンプ34を備えている。カソード用空気ポンプ34の吐出部は、下流端がカソード流路18のカソード用空気入口18Aに接続されたカソード用空気供給ライン36の上流端が接続されている。一方、カソード流路18のカソードオフガス出口18Bには、カソードオフガスライン38の上流端が接続されている。この実施形態では、水蒸気及び酸素(空気)を含むカソードオフガスを水素供給装置10の改質器45(後述)で改質用ガスとして利用するために、カソードオフガスライン38の下流端は水素供給装置10に導入されている。この構成については後述する。
また、燃料電池システム12は、燃料電池14の冷媒流路32に冷媒として冷却用空気を供給するための冷却用空気ポンプ40を備えている。冷却用空気ポンプ40の吐出部は、下流端が冷媒流路32の冷媒入口32Aに接続された冷媒ライン42の上流端が接続されている。一方、冷媒流路32の冷媒出口32Bには、冷却オフガスライン44の上流端が接続されている。この実施形態では、酸素を含む冷却オフガスを水素供給装置10の改質器45で支燃ガスとして利用するために、冷却オフガスライン44の下流端は水素供給装置10に導入されている。この構成については後述する。
水素供給装置10は、炭化水素原料を改質して水素を含有する燃料ガスを得る改質式の水素供給源とされている。したがって、水素供給装置10は、改質反応を行うための改質器45を備えており、改質器45は、改質反応を行う改質部46と該改質部46に改質用の熱を付与する加熱部48とを備えている。以下、具体的に説明する。
改質部46は、供給される炭化水素ガス(ガソリン、メタノール、天然ガス等)と改質用ガス(水蒸気、酸素)を触媒反応させることで、水素ガスを含む燃料ガスを生成する(改質反応を行う)ようになっている。改質反応は、以下の式(1)乃至(4)で表される各反応を含む。したがって、改質工程で得た燃料ガスには、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、分解炭化水素や未反応の原料炭化水素(CxHy)等の可燃性ガス、及び二酸化炭素(CO2)、水(H2O)等の不燃性ガスを含むようになっている。
CnHm+nH2O → nCO +(n+m/2)H2 … (1)
CnHm+n/2O2 → nCO + m/2H2 … (2)
CO+H2O ⇔ CO2+H2 … (3)
CO+3H2 ⇔ CH4+H2O … (4)
この改質反応は、吸熱反応であり、かつ所定の温度以上(本実施形態では、700℃〜800℃程度)で行われることで、燃料電池14の運転温度と略同域である400℃〜500℃の燃料ガスを生成するようになっている。このため、改質器45は、改質部46に改質反応を行い得る熱を供給して改質反応を維持させる加熱部48を有している。加熱部48は、内部に酸化触媒49(図4参照)を有して改質部46に隣接して設けられており、燃料を触媒燃焼させて得た熱を隔壁部50を介して改質部46に供給するようになっている。このため、燃焼ガス等の熱媒(流体)を介して改質部を加熱する構成のように熱量を温度に変換することなく、改質部46に熱量を直接的に付与することができる構成とされている。この実施形態では、改質器45は、図4に示される如く、改質部46と加熱部48とが隔壁部50を介して交互に積層された形式の熱交換器の如く構成されている。この図4に示される如く、酸化触媒49は、加熱部48の内面すなわち隔壁部50に固定的に支持されている。
この水素供給装置10は、図示しない燃料タンクに貯留している炭化水素原料を改質器45の改質部46に供給するための原料ポンプ52を備えており、原料ポンプ52の吐出部は原料供給ライン54を介して改質部46の原料入口46Aに接続されている。また、この原料供給ライン54には、上記したカソードオフガスライン38の下流端が合流している。これにより、改質部46には、原料入口46Aから炭化水素原料及び改質用ガスとしてのカソードオフガス(水蒸気及び酸素)が共に供給される構成とされている。なお、原料供給ライン54とカソードオフガスライン38との合流部に混合器やインジェクタなどを設けて炭化水素原料と改質用ガスとの混合を促進するように構成しても良い。
さらに、改質部46の燃料ガス出口46Bは、下流端が燃料電池14の燃料ガス入口16Aに接続された燃料ガス供給ライン56の上流端に接続されている。これにより、改質部46において炭化水素原料とカソードオフガスとを反応させて生成された水素含有の燃料ガスが燃料電池14のアノード流路16に供給されるようになっている。一方、上記の通り水素分離膜30を備えた燃料電池14は、燃料ガスのうち水素のみを消費して発電を行うようになっている。このため、アノードオフガスには、一酸化炭素(CO)や炭化水素(CxHy)等の可燃性ガスが含まれており、水素供給装置10(改質器45)は、燃料電池14のアノードオフガスを加熱部48の燃料として利用する構成とされている。すなわち、上流端がアノード流路16のアノードオフガス出口16Bに接続されたアノードオフガスライン58は、その下流端が水素供給装置10に導入されている。
したがって、水素供給装置10すなわち改質器45では、可燃ガスであるアノードオフガスを、冷却オフガス(中の酸素)を支燃ガスとして加熱部48にて触媒燃焼させ、改質部46の改質反応を維持する熱を確保する構成とされている。アノードオフガス及び冷却オフガスは、それぞれ燃料電池14の運転温度に相当する温度(400℃〜500℃程度)で供給され、600℃〜800℃程度の温度域での触媒燃焼を生じる構成とされている。この加熱部48から熱量供給を受けて、改質部46は、上記の通り燃料電池14の運転温度域と略同域の温度とされた燃料ガスを生成し、燃料電池14に供給するようになっている。これにより、燃料電池システム12では、熱交換器等を備えることなく熱効率の高い構成が実現されている。なお、運転状況に応じて(発熱量を制御するために)、カソードオフガス、冷却オフガスの一部を系外に排出する(改質部46、加熱部48への供給量を調節する)ように構成しても良い。
そして、本発明の第1の実施形態に係る水素供給装置10は、アノードオフガスと冷却オフガスとを加熱部48に供給する前に混合するための混合器60を備えている。すなわち、混合器60は、その可燃ガス入口60Aにアノードオフガスライン58の下流端が接続されると共に、その支燃ガス入口60Bに冷却オフガスライン44の下流端が接続されている。また、混合器60は、その混合ガス出口60Cが加熱部48の混合ガス入口48Aに接続されている。これにより、加熱部48は、アノードオフガスと冷却オフガスとが略均一に混合された混合ガスが混合器60から供給されるようになっている。また、加熱部48の燃焼排ガス出口48Bは、排気ライン62を介して排気部64に接続されている。排気部64は、燃焼排ガスを浄化して系外(大気中)にする構成とされている。
以下、混合器60について詳細に説明する。図2に示される如く、混合器60は、可燃ガス入口60Aが設けられた可燃ガス導入管部66と、支燃ガス入口60Bが設けられた支燃ガス導入管部68と、混合ガス出口60Cが設けられた混合ガス導出管部70とが三叉状に連通して構成された混合器本体72を備えている。混合器本体72は、可燃ガス導入管部66、支燃ガス導入管部68、混合ガス導出管部70の各軸直角断面がそれぞれ矩形枠状(この実施形態では略正方形枠状)に形成されている。
そして、混合器本体72内には、可燃ガス導入管部66と支燃ガス導入管部68との合流部から混合ガス導出管部70の一部にかけて、ガス流分割部74が設けられている。ガス流分割部74は、可燃ガス導入管部66を経由して導入されたアノードオフガスを多数の微小流に分割すると共に、支燃ガス導入管部68を経由して導入された冷却オフガスを多数の微小流に分割するようになっている。また、混合ガス導出管部70内におけるガス流分割部74の下流側部分は、それぞれ多数の微小流に分割されたアノードオフガスと冷却オフガスとを混合する混合するための混合空間76とされている。
ガス流分割部74は、図3に示される如く、それぞれ略五角形の板状に形成された複数の可燃ガス流分割プレート78及び支燃ガス流分割プレート80が交互に積層されて構成されている。可燃ガス流分割プレート78からは、支燃ガス導入管部68のガス流れ方向に対し交差する方向に長手とされた複数の立壁78Aと、混合ガス導出管部70の管壁に沿う複数の立壁78Bとが立設されている。また、支燃ガス流分割プレート80からは、可燃ガス導入管部66のガス流れ方向に対し交差する方向に長手とされた複数の立壁80Aと、混合ガス導出管部70の管壁に沿う複数の立壁80Bとが立設されている。
可燃ガス流分割プレート78の各立壁78A、78Bは、支燃ガス流分割プレート80における立壁80A、80B立設側とは反対側の面に当接してスリット状の可燃ガス分割流路78C(図4参照)を形成しており、複数の立壁78Aのうち最も支燃ガス導入管部68側に位置する立壁78Aは、可燃ガス分割流路78Cへの冷却オフガスの混入を防止するようになっている。また、各立壁78A、78Bは、可燃ガス流分割プレート78と支燃ガス流分割プレート80との間に形成された可燃ガス分割流路78Cをさらに(積層方向との直角方向にも)分割するようになっている。
同様に、支燃ガス流分割プレート80の各立壁80A、80Bは、可燃ガス流分割プレート78における立壁78A、78B立設側とは反対側の面に当接してスリット状の支燃ガス分割流路80C(図4参照)を形成しており、複数の立壁80Aのうち最も可燃ガス導入管部66側に位置する立壁80Aは、支燃ガス分割流路80Cへのアノードオフガスの混入を防止するようになっている。また、各立壁80A、80Bは、支燃ガス流分割プレート80と可燃ガス流分割プレート78との間に形成された支燃ガス分割流路80Cをさらに分割するようになっている。
すなわち、各立壁78A、78B、80A、80Bは、それぞれスペーサとしての機能と、仕切板としての機能とを果たす構成とされている。この実施形態では、各立壁78A、78B、80A、80Bの突出高すなわち可燃ガス分割流路78C、支燃ガス分割流路80Cの短手寸法は略200〜700μm(例えば、500μm)とされ、各立壁78A、78B、80A、80Bの立設間隔は略2〜5mmとされている。したがって、ガス流分割部74は、扁平状の可燃ガス分割流路78C、支燃ガス分割流路80Cが短手方向に積層(この実施形態では、ガス種毎に交互に積層)された所謂マイクロチャネル構造とされている。
図4に示される如く、混合ガス導出管部70すなわち混合空間76の最下流部である混合ガス出口60Cは、複数の改質部46と交互に積層された複数の加熱部48の混合ガス入口48Aにそれぞれ直接的に連通している。すなわち、混合空間76は、各加熱部48の混合ガス入口ヘッダとしても機能している。これにより、配管等で混合ガス入口48Aと混合ガス出口60Cとを接続する構成と比較して、ガス流分割部74の出口から各加熱部48の入口までの距離が短い構成としている。
以上説明した混合器60の性能を図6及び図7を参照して説明する。なお、以下の説明では、混合空間76側からガス流分割部74を見て、各可燃ガス流分割プレート78及び支燃ガス流分割プレート80の積層方向をY方向、Y方向に直角な方向をX方向とする。
図6(A)は、ガス流分割部74のX方向中央部におけるY方向各部から混合空間76に噴出したガスの流速分布を示す線図である。ここでは、ガス流分割部74をY方向に略6等分する5箇所を流速測定点とした。また、流速センサは、ガス流分割部74のY方向各部におけるガス流分割部74の下流端から3mmの位置に配置した。なお、この実験では、水素含有のアノードオフガスに代えて、常温のヘリウムガスを用いた。一方、図6(B)は、図6(A)の流速測定点のX方向及びY方向の同じ位置におけるヘリウムと空気(常温)との混合ガス中のヘリウムガス濃度の分布を示す線図である。ガスセンサは、Y方向各部におけるガス流分割部74の下流端から0.5mmの位置に配置した。
そして、図6(A)及び図6(B)において、黒塗りの丸プロットは、ヘリウムと空気との混合ガスの平均流速が流速V1、平均ヘリウム濃度(マクロ的な濃度)が濃度D1になるように設定した場合の実験結果を示す。また、黒塗りの三角形プロットは、ヘリウムと空気との混合ガスの平均流速が流速V2、平均ヘリウム濃度が濃度D2になるように設定した場合の実験結果を示す。さらに、白抜きの丸プロットは、ヘリウムと空気との混合ガスの平均流速が流速V3、平均ヘリウム濃度が濃度D1になるように設定した場合の実験結果を示す。さらにまた、白抜きの三角形プロットは、ヘリウムと空気との混合ガスの平均流速が流速V4、平均ヘリウム濃度が目標濃度D2になるように設定した場合の実験結果を示す。
混合器60では、上記した4つの各条件(設定)の何れの場合にも、Y方向の各部において、流速、ヘリウムガス濃度共にほぼ一定となることがわかる。すなわち、混合器60では、ヘリウムガス(アノードオフガス)及び空気の各流れをY方向の各部に略均一に分割すること、またガス流分割部74の直下流(0.5mmのポイント)でヘリウムガスと空気とがほぼ目標通りに均一に混合されることが確かめられた。
また、図7(A)は、ガス流分割部74のY方向中央部におけるX方向各部から混合空間76に噴出したガスの流速分布を示す線図である。ここでは、ガス流分割部74をX方向に略6等分する5箇所を流速測定点とした。また、流速センサは、X方向各部におけるガス流分割部74の下流端から3mmの位置に配置した。なお、この実験では、水素含有のアノードオフガスに代えて、常温のヘリウムガスを用いた。一方、図7(B)は、図7(A)の流速測定点のX方向及びY方向の同じ位置におけるヘリウムと空気との混合ガス中のヘリウムガス濃度の分布を示す線図である。ガスセンサは、X方向各部におけるガス流分割部74の下流端から0.5mmの位置に配置した。図7(A)及び図7(B)における各プロットの実験条件(設定)は、図6の同じプロットの実験条件と同じである。
混合器60では、上記した上記4つの各条件(設定)の何れの場合にも、X方向の各部において、流速、ヘリウムガス濃度共にほぼ一定となることがわかる。すなわち、混合器60では、ヘリウムガス(アノードオフガス)及び空気の各流れをX方向の各部に略均一に分割すること、またガス流分割部74の直下流(0.5mmのポイント)でヘリウムガスと空気とがほぼ目標通りに均一に混合されることが確かめられた。
以上により、混合器60では、X方向、Y方向の各部においてほぼ均一なガス流分割効果、及びこれに伴う均一のガス混合効果が得られる構成を実現している。したがって、この混合器60では、それぞれ400℃〜500℃のアノードオフガスと冷却オフガスとをほぼ均一に混合することができる。この実施形態では、加熱部48は、空気過剰率が略2〜4となる設定とされており、混合器60には、アノードオフガスよりも多量の冷却オフガスが導入されるようになっている。上記した濃度D1、D2は、アノードオフガスが純水素であると仮定した場合における空気過剰率が略2、略4となる濃度として設定されている。
また、図1に示される如く、水素供給装置10は、排気ライン62と冷却オフガスライン44とを連通する排気戻しライン82を備えている。冷却オフガスライン44における排気戻しライン82の合流部分には、希釈ガス駆動装置としてのエジェクタ(ジェットポンプ)92が配設されている。エジェクタ92は、冷却オフガスが冷却オフガスライン44を流れることに伴って生じる負圧によって、排気戻しライン82から冷却オフガスライン44に燃焼排ガスを導入するようになっている。
また、排気戻しライン82には、該排気戻しライン82を開閉可能なバルブ84と、バルブ84の冷却オフガスライン44側で該冷却オフガスライン44から排気ライン62へのガス流通を阻止する逆止弁86とが設けられている。バルブ84は、弁開度を変化させ得る調節弁とされており、電気的に接続された制御装置88からの指令に基づいて弁開度を変化させる(調節される)ようになっている。したがって、水素供給装置10では、バルブ84(排気戻しライン82)が開放されると、加熱部48での燃焼量及びバルブ84の弁開度に応じた量の燃焼排ガスがエジェクタ92の作用によって冷却オフガスライン44に循環されるようになっている。なお、エジェクタ92を設ける構成に代えて、例えば、バルブ84の開放時に作動されるガスポンプ(コンプレッサ)等を排気戻しライン86に設けた構成としても良い。
制御装置88には、検出器としての温度センサ90が電気的に接続されており、該温度センサ90の出力信号が入力されるようになっている。温度センサ90は、加熱部48の混合ガス入口48A近傍に配置されており、該混合ガス入口48A近傍における混合ガス温度に応じた信号を出力する構成とされている。制御装置88は、温度センサ90の出力信号が所定の閾値を超える場合、すなわち混合ガス入口48A近傍の混合ガス温度が設定温度を超えることに対応する信号が入力された場合に、後述するようにバルブ84を制御するようになっている。
ところで、加熱部48では、混合ガスが酸化触媒49に接触する直前の温度が可燃ガス(アノードオフガス中の可燃成分)の自己着火温度以上である場合、該可燃ガスの自己着火を生じる恐れがあり、この自己着火温度以上の領域では、温度が高いほど可燃ガスの自己着火が生じ易いことがわかっている。したがって、温度センサ90の上記した自己着火温度に対応する出力信号よりも大きな信号(上記閾値を超える信号)が本発明における検出信号とされる。
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
上記構成の水素供給装置10を備えた燃料電池システム12では、この水素供給装置10の改質器45において改質部46が加熱部48からの熱供給を受けつつ行う改質反応によって生成した水素含有の燃料ガスが、燃料ガス供給ライン56を通じて燃料電池14のアノード流路16に供給される。この燃料電池14のカソード流路18には、カソード用空気供給ライン36を通じてカソード用空気ポンプ34からのカソード用空気が常時供給されている。そして、燃料電池14では、アノード流路16に導入された燃料ガス中の水素がアノード22C(水素分子解離層28)においてプロトン化され、このプロトンが水素分離膜30を透過して電解質膜22Aに至り、さらにカソード22Bに移動する。このプロトンの移動に伴って電子がアノード22C(セパレータ26)から外部導体を通じてカソード(セパレータ24)に向けて流れ、発電が行われる。また、カソード22Bにおいて、プロトンとカソード流路18に導入された酸素とが反応して水(水蒸気)が生成される。またこのとき、燃料電池14は、冷媒ライン42を通じて供給される冷却用空気ポンプ40の冷却用空気によって冷却され、発電(発熱反応)に伴う温度上昇が防止され、運転温度が一定の範囲に維持される。
そして、上記の通りカソード22Bで生成した水蒸気を含むカソードオフガスは、カソードオフガスライン38を経由して原料供給ライン54に合流し、原料ポンプ52からの炭化水素原料と共に改質用ガスとして改質部46に供給される。改質部46では、炭化水素原料及びカソードオフガス(の水素及び酸素)が改質触媒と接触することで上式(1)乃至(4)の反応を含む改質反応が行われて、水素、一酸化炭素等を含む燃料ガスが生成され、この燃料ガスは上記の通り燃料電池14に供給される。
また、燃料電池14のアノードオフガスは、アノードオフガスライン58を通じて混合器60の可燃ガス導入管部66に導入され、燃料電池14の冷却オフガスは、冷却オフガスライン44を通じて混合器60の支燃ガス導入管部68に導入される。アノードオフガス及び冷却オフガスは、それぞれ独立してガス流分割部74で微小流に分割され、混合空間76で混合される。このとき、図4に模式的に示す如く、断面視扁平状の多数の微小流路を通過するアノードオフガスA及び冷却オフガスCには、それぞれせん断力が作用し、またアノードオフガスAと冷却オフガスCとには、混合空間76への突出流速の差に基づく高いせん断力が作用する。このため、混合空間76に突出したアノードオフガスA及び冷却オフガスCは、それぞれ流れ方向に拡散したり渦を形成して相手方ガスと効率的に混合し、混合ガスMになる。
そして、混合器60の混合空間76で混合された混合ガスMは、各加熱部48に導入されて酸化触媒49に接触して触媒燃焼を生じる。この触媒燃焼に伴う発熱が隔壁部50を介して隣接する改質部46に供給され、改質部46における吸熱反応である改質反応が維持される。すなわち、燃料電池14への水素供給、燃料電池14による発電が維持される。加熱部48で生成された燃焼排ガスは、排気ライン62を経由して導入された排気部64にて浄化され、系外に排気される。
ここで、水素供給装置10では、アノードオフガス及び冷却オフガスを加熱部48に供給する前に混合する混合器60を設けたため、このような混合器を備えない構成と比較して、アノードオフガスと冷却オフガスとの混合時間、すなわち酸化触媒49への接触前の混合のためにアノードオフガスと冷却オフガスとが気相で接触する気相滞在時間が短縮される。
特に、混合器60は、それぞれ独立して(混合前に)多数の微小流に分割されたアノードオフガスと冷却オフガスとが混合空間76で混合される構成であるため、均一の混合が促進され易く、局所的に可燃ガス濃度が高い部位が生じることが抑制される。また特に、混合器60のガス流分割部は、それぞれ扁平状に形成された多数の可燃ガス分割流路と支燃ガス分割流路とが交互に積層されて構成されているため、上記の通りアノードオフガス及び冷却オフガスには高いせん断力が作用し、これらのガスが効率的に混合される。すなわち、混合空間76の混合ガスは、アノードオフガスと冷却オフガスとのマクロ的に混合比にほぼ一致する混合比をミクロ的にも確保した微小混合ガスの集合のように、局所的な高濃度部分が存在しないきわめて均一に混合される。しかも、それぞれ微小量に分割されたガスを上記の如く高いせん断力の作用によって混合するため、アノードオフガスと冷却オフガスとの上記均一な混合に要する空間的距離及び混合時間、すなわち混合ガスの気相滞在時間が短縮される。
このため、水素供給装置10では、アノードオフガスと冷却オフガスとを短距離の混合空間76で確実に混合しつつ短時間で通過させることができ、アノードオフガス(中の可燃成分)の自己着火を抑制することができる。これにより、水素供給装置10では、400℃〜500℃で混合器60(加熱部48)に導入されるアノードオフガスが、同域の温度の冷却オフガスに接触することによる自己着火に伴う気相燃焼の発生が抑制される。また、仮に気相燃焼が生じた場合でも、混合器60によってアノードオフガスと冷却オフガスとが均一に混合されることで、可燃成分が局所的に高濃度となる部分が生じることが防止され、加熱部48での燃焼温度が抑制される。
ところで、例えば燃料電池14の運転変動時(出力急増時等)において、加熱部48に供給される混合ガスに局所的に生じた可燃成分の高濃度部分が酸化触媒49に接触して異常燃焼(局所的に高温な触媒燃焼)を生じた場合などには、加熱部48内の温度分布は、図8に実線にて示す状態から想像線にて示すように混合ガス入口48Aの温度が高い状態に移行することがある。このように混合ガス入口48Aの温度が上昇すると、温度センサ90の出力信号が上記閾値を超える。すると、制御装置88は、アノードオフガスの自己着火を抑制するために、バルブ84を制御する。以下この制御について、図9に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
制御装置88は、ステップS10で温度センサ90の出力信号を入力し、ステップS12に進む。ステップS12では、温度センサ90の出力信号に基づいて、加熱部48の混合ガス入口48A近傍における混合ガス温度Tが設定温度Tbを超えるか否か(直接的には温度センサ90の出力信号が閾値を超えるか否か)を判断する。混合ガス温度Tが設定温度Tb以下であると判断した場合には、ステップS14に進み、バルブ84が全閉であるか否かを判断する。バルブ84が全閉ではない場合にはステップS16に進んでバルブ84を全閉してから、バルブ84が全閉である場合にはステップS14から直接にステップS10に戻る。
一方、混合ガス温度Tが設定温度Tbを超えると判断した場合には、制御装置88は、ステップS16に進んでバルブ84を開駆動してステップS18に進み、混合ガス温度Tに応じた開度にバルブ84を開放する。例えば、制御装置88は、予め記憶している混合ガス温度とバルブ84の開度との関係に基づいて、バルブ84に開指令を出力して、該バルブを所定開度に開放させる。次いで制御装置88は、ステップS10に戻る。したがって、ステップS14で混合ガス温度Tが設定温度Tbを超えると判断されている期間中、バルブ84は混合ガス温度Tに応じて開度を変化させる。すなわち、混合ガス温度が上昇すれば弁開度を大きくし、混合ガス温度が低下すれば弁開度を小さくし、混合ガス温度が設定温度Tbを下回ればバルブ84を全閉する。
バルブ84が開放されると、エジェクタ92の吸引作用によって、加熱部48で生じた燃焼排ガスの一部がバルブ84の開度に応じて排気戻しライン82を経由して冷却オフガスライン44に合流する。燃焼排ガスは、加熱部48に導入した冷却オフガス(及び排気戻しライン82から戻した燃焼排ガス)の空気過剰率に依存した未使用酸素(支燃ガス)と、二酸化炭素、水蒸気、窒素を含む非支燃ガスを含み、空気(冷却オフガス)と比較して酸素分圧(濃度)が低いガスであるので、支燃ガス導入管部68から混合器60に供給されるガスの酸素分圧が低下する。すなわち、混合空間76に突出する前の冷却オフガス中の酸素が希釈される。これにより、混合器60の混合空間76に突出した直後に局所的に酸素リッチの領域が生成されることが回避され、アノードオフガスの自己着火が抑制される。
また、混合ガスの酸素分圧が低下するため、加熱部48内における燃焼反応の反応速度が遅くなり、換言すれば、混合ガスの燃焼開始位置が混合ガス入口48Aから離間した(奥側の)位置となり、加熱部48の混合ガス入り口48A近傍での温度が低下する。図10は、混合ガスの酸素分圧と加熱部48の入口温度(最高温度)との関係を示す。この図から酸素分圧が低下すると加熱部48の入口温度も低下することがわかる。以上により、アノードオフガスの自己着火が一層効果的に抑制される。なお、図10は、混合器60の可燃ガス導入管部66に水素と二酸化炭素との混合ガスを供給すると共に、支燃ガス導入管部68に空気(上記水素に対する空気過剰率1相当)と二酸化炭素との混合ガスを供給し、かつ空気と共に支燃ガス導入管部68に供給する二酸化炭素量を減じつつ水素と共に可燃ガス導入部66に供給する二酸化炭素量を増やすことで、加熱部48に供給される混合ガスの組成が(マクロ的には)一定になるように酸素分圧を変化させた場合の、加熱部48の入口温度の変化を測定した結果である。
そして、この加熱部48の温度抑制効果は、混合器60を備えた構成に燃焼排ガス循環(酸素分圧低下)制御を適用することで効果的に実現される。ここで 図11は、混合器60による加熱部48内の最高温度(入口温度)の低減効果を示す実験結果である。混合器60を設けた構成では、図10の場合と同様に、可燃ガス導入管部66に水素と二酸化炭素との混合ガスを供給すると共に、支燃ガス導入管部68に空気(上記水素に対する空気過剰率1相当)と二酸化炭素との混合ガスを供給した。四角プロットは、水素と共に可燃ガス導入部66に導入する二酸化炭素量を熱容量相当で空気過剰率が2の場合に対応する量とし、空気と共に支燃ガス導入部68に導入する二酸化炭素量を熱容量相当で空気過剰率が1の場合に対応する量とした場合、すなわち燃焼排ガス循環制御を行っていないことに相当する場合の加熱部48の入口温度を示す。また、丸プロットは、水素と共に可燃ガス導入部66に導入する二酸化炭素量を熱容量相当で空気過剰率が0.8の場合に対応する量とし、空気と共に支燃ガス導入部68に導入する二酸化炭素量を熱容量相当で空気過剰率が1.2の場合に対応する量とした場合、すなわち燃焼排ガス循環制御を行ったこと(酸素分圧低下結果)に相当する場合の加熱部48の入口温度を示す。一方、混合器を備えない構成では、混合ガスの量及び組成が混合器60を備えた場合と同じになるように、水素、空気(水素に対する空気過剰率1相当)、二酸化炭素(熱容量相当で空気過剰率が3の場合に対応する量)を一括して加熱部48に供給した。すなわち、図11に示す各プロットの実験条件は、加熱部48に供給される混合ガスの組成が一定になるように決められている。このため、混合器60を備えない構成では、燃焼排ガス循環制御の有無による差異はない。
以上説明した図11から判るように、混合器60を備えた構成では、燃焼排ガス循環制御を行うことで、丸プロットと四角プロットとの差として示される如く、加熱部48内の最高温度が著しく低減(抑制)されることが確かめられた。逆に言えば、燃焼排ガス循環制御を行う構成においては、混合器60の有無による差として示される如く、混合器60を備えることで加熱部48内の最高温度が著しく低減されることが確かめられた。これにより、水素供給装置10では、加熱部48、改質部46を構成する部品、部材(隔壁部50を有する反応器等)の溶損、構成材料の劣化、酸化触媒49又は改質触媒の劣化などを防止又は抑止することができる。
他方、燃焼排ガスは、加熱部48の燃焼温度相当の温度を有するため、合流した冷却オフガスの温度(平均温度)を低下させてしまうことがない。このため、例えば系外から希釈ガスを導入する構成と比較して、水素供給装置10及び燃料電池システム12の熱効率を低下させることが防止される。特に、この実施形態では、制御装置88が混合ガスの温度(加熱部48内の最後温度)に応じてバルブ84の弁開度、すなわち支燃ガスである酸素分圧を調節するため、混合器60又は加熱部48での自己着火を抑制しつつ加熱部48から改質部46への適正量に近い熱流束が確保される。すなわち、燃焼排ガスの過供給によって加熱部48から改質部46に供給される熱量(通過熱量)が減少したり、燃焼排ガスの循環量不足のために自己着火抑制効果が低減したりすることが防止される。また、加熱部48での燃焼排ガスを希釈ガスとして利用することで、燃料電池システム12の系外への排出熱量が低減される。
以上により、水素供給装置10では、それぞれ燃料電池14の運転温度相当の温度のアノードオフガス及び冷却オフガスを可燃ガス(燃料)及び支燃ガスとして加熱部48(混合器60)に導入して、加熱部48でのガス温度上昇に伴う顕熱ロスが少ない熱効率の高い構成が実現された。しかも、水素供給装置10では、改質部46で生成される燃料ガスの温度域を燃料電池14の運転温度域と略同域とすることで、該水素消費装置10を含む燃料電池システム12の熱効率を向上する構成が実現された。
このように、本実施形態に係る水素供給装置10では、改質部46を加熱するための加熱部48において可燃ガスの自己着火が生じることを防止することができる。
なお、水素供給装置10は、バルブ84を開放して燃焼排ガスを冷却オフガスライン44に循環する際に、冷却オフガスの流量を低減(一部を系外に排出)するように構成(制御)されても良い。特に、燃焼排ガスにも未使用の酸素が含まれるため、冷却オフガス(支燃ガス)の供給量を大きく低減することができる。この構成は、例えば、支燃ガスを系外から導入する構成(燃料電池14を液冷媒にて冷却する構成など)において、導入支燃ガス量及びこの支燃ガスを加熱する熱を節約することが可能になり、水素供給装置10の効率向上が図られる。また、上記のように支燃ガス(空気)の供給量を低減することで、空気供給用のポンプの負荷(エネルギ消費)が低減され、装置全体としての効率向上が可能である。また、流量低減に伴う圧力損失の低減も有効に作用する。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
(第2の実施形態)
図12には、第2の実施形態に係る水素供給装置100が適用された燃料電池システム102が示されている。この図に示される如く、水素供給装置100は、排気戻しライン82に代えて、排気ライン62とアノードオフガスライン58とを連通する排気戻しライン104を備えている。エジェクタ92は、アノードオフガスライン58における排気戻しライン104の合流部に配設されている。また、排気戻しライン104には、バルブ84、逆止弁86が配設されている。また、水素供給装置100は、冷却オフガスライン44と排気部64とを連通するバイパスライン106を備えており、バイパスライン106には排気部64から冷却オフガスラインへのガス流を阻止する逆止弁108、及びバルブ84と同様の調節弁であるバルブ110が配設されている。バルブ110は、温度センサ90、バルブ84と共に、制御装置88に代えて設けられた制御装置112に電気的に接続されている。
制御装置112は、バルブ110の開度を調節することで加熱部48での空気過剰率を制御するようになっている。また、制御装置112は、温度センサ90の出力信号に基づいて、加熱部48入口での混合ガス温度Tが設定温度Tbを超えると判断した場合には、バルブ84を開放する(また、バルブ84の開放によってエジェクタ92を間接的に作動させる)ようになっている。この制御については、図9に示すフローチャートによる制御と同様である。そして、制御装置112は、この制御を行ってバルブ84を開放しているときに、アノードオフガスライン58に合流する燃焼排ガス中の酸素が所定濃度以下になるようにバルブ110の開放量を増す、すなわち空気過剰率を下げて燃焼排ガス中の未使用酸素を減少するように構成されている。これにより、水素供給装置100では、燃焼排ガスをアノードオフガスに合流させた場合に、自己着火が生じないようになっている。
以上説明した第2の実施形態に係る水素供給装置100の第1の実施形態と異なる作用効果を説明する。水素供給装置100では、温度センサ90の出力信号に基づいて混合ガス温度Tが設定温度Tbを超えていると判断した制御装置112は、バルブ84を混合ガス温度Tに応じた開度に開放する。バルブ84が開放されると、加熱部48で生じた燃焼排ガスの一部がバルブ84の開度に応じて排気戻しライン82を経由してアノードオフガスライン58に合流する。これにより、可燃ガス導入管部66から混合器60に供給されるガスの可燃成分の分圧(以下、水素分圧という)が低下する。すなわち、アノードオフガス中の可燃成分が希釈される。これにより、混合器60の混合空間76に突出した直後に局所的に可燃燃料リッチの領域が生成されることが回避され、アノードオフガスの自己着火が抑制される。
また、混合ガスの水素分圧が低下するため、加熱部48内における燃焼反応の反応速度が遅くなり、換言すれば、混合ガスの燃焼開始位置が混合ガス入口48Aから離間した(奥側の)位置となり、加熱部48の混合ガス入り口48A近傍での温度が低下する。図13は、混合ガスの水素分圧と加熱部48の入口温度(最高温度)との関係を示す。この図から水素分圧が低下すると加熱部48の入口温度も低下することがわかる。以上により、アノードオフガスの自己着火が一層効果的に抑制される。なお、図13は、混合器60の可燃ガス導入管部66に水素と二酸化炭素との混合ガスを供給すると共に、支燃ガス導入管部68に空気(上記水素に対する空気過剰率1相当)と二酸化炭素との混合ガスを供給し、かつ水素と共に可燃ガス導入管部66に供給する二酸化炭素量を減じつつ空気と共に支燃ガス導入部68に供給する二酸化炭素量を増やすことで、加熱部48に供給される混合ガスの組成が(マクロ的には)一定になるように酸素分圧を変化させた場合の、加熱部48の入口温度の変化を測定した結果である。また、図示は省略するが、燃焼排ガス循環(水素分圧低下)制御を行う構成においても、第1の実施形態と同様に、混合器60を設けることで、燃焼排ガス循環制御による加熱部48の温度低下効果が得られる。
他方、燃焼排ガスは、加熱部48の燃焼温度相当の温度を有するため、合流したアノードオフガスの温度(平均温度)を低下させてしまうことがない。このため、例えば系外から希釈ガスを導入する構成と比較して、水素供給装置100及び燃料電池システム102の熱効率を低下させることが防止される。特に、この実施形態では、制御装置112が混合ガスの温度(加熱部48内の最後温度)に応じてバルブ84の弁開度、すなわち可燃ガス濃度である水素分圧を調節するため、混合器60又は加熱部48での自己着火を抑制しつつ加熱部48から改質部46への適正量に近い熱流束が確保される。すなわち、燃焼排ガスの過供給によって加熱部48から改質部46への通過熱量が減少したり、燃焼排ガスの循環量不足のために自己着火抑制効果が低減したりすることが防止される。また、加熱部48での燃焼排ガスを希釈ガスとして利用することで、燃料電池システム12の系外への排出熱量が低減される。
以上により、水素供給装置100では、それぞれ燃料電池14の運転温度相当の温度のアノードオフガス及び冷却オフガスを可燃ガス(燃料)及び支燃ガスとして加熱部48(混合器60)に導入して、加熱部48でのガス温度上昇に伴う顕熱ロスが少ない熱効率の高い構成が実現された。しかも、水素供給装置100では、改質部46で生成される燃料ガスの温度域を燃料電池14の運転温度域と略同域とすることで、該水素消費装置10を含む燃料電池システム102の熱効率を向上する構成が実現された。
このように、本実施形態に係る水素供給装置100では、改質部46を加熱するための加熱部48において可燃ガスの自己着火が生じることを防止することができる。なお、図10と図13との比較から判るように、混合器60により混合された混合ガスの組成が一定(同じ)である条件下では、酸素分圧低下制御(第1の実施形態)を行う場合の方が、水素分圧低減制御(第2の実施形態)を行う場合よりも加熱部48の最高温度低下効果が大きい。
(第3の実施形態)
図14には、第3の実施形態に係る水素供給装置120が適用された燃料電池システム122が示されている。この図に示される如く、水素供給装置120は、排気戻しライン82、104に代えて、排気ライン62と冷却オフガスライン44及びアノードオフガスライン58とを連通する排気戻しライン124を備えている。具体的には、排気戻しライン124は、冷却オフガスライン44に接続された支燃側分岐ライン124Aと、アノードオフガスライン58に接続された可燃側分岐ライン124Bとが分岐部124Cにおいて分岐している。エジェクタ92は、冷却オフガスライン44における支燃側分岐ライン124Aの合流部、及びアノードオフガスライン58における可燃側分岐ライン124Bの合流部にそれぞれ配設されている。また、この排気戻しライン124における分岐部124Cに対し排気ライン62側には、バルブ84、逆止弁86が配設されている。水素供給装置120の他の構成は、水素供給装置100の対応する構成と同じである。したがって、水素供給装置120を構成する制御装置112は、上記第2の実施形態と同様の制御を行う構成とされている。
以上説明した第3の実施形態に係る水素供給装置120では、制御装置112がバルブ84を開放した場合に希釈ガスである燃焼排ガスが冷却オフガスライン44及びアノードオフガスライン58の双方に導入される。このため、加熱部48には、酸素分圧が低下した冷却オフガスと水素分圧が低下したアノードオフガスとが混合器60にて混合された混合ガスが導入され、この混合ガスに酸素リッチの領域及び可燃燃料リッチの領域が生成されることが効果的に抑制される。これにより、水素供給装置120では、アノードオフガスの自己着火が抑制される。水素供給装置120の他の作用効果は、水素供給装置10又は水素供給装置100と同様である。
なお、上記実施形態では、水素供給装置10が水素消費装置としての燃料電池14に燃料ガスを供給する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、排気ガスを浄化(脱硫等)ための水素消費装置としての浄化装置に水素を供給する用途に本実施形態に係る水供給装置を適用しても良い。
また、水素供給装置10、100、120は、バルブ84の制御パラメータとして、加熱部48入口の混合ガス温度に代えて、バルブ84の弁開度(バルブ駆動装置の駆動量)を用いることができる。この場合、弁開度すなわち混合ガス中の不燃成分量を制御目標とすることで、この不燃成分による自己着火防止、熱容量(顕熱)増加による温度上昇抑制が可能となる。この構成では、制御装置88又は制御装置88と電気的に接続された別の制御装置が加熱部48での空気過剰率制御を行うようになっていることが望ましい。さらに、バルブ84を開閉弁とし、制御装置88は混合ガス温度Tが設定温度Tbを超えている期間にバルブ84を開放する制御を行うように構成しても良い。