JP4774621B2 - グラビア印刷版およびその作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はグラビア印刷の技術分野に属する。特に、印刷物のハイライトにおける階調再現範囲を広げるグラビア印刷版およびその作成方法に関する。
【0002】
【従来技術】
グラビア印刷においては着肉不良が問題となる。着肉不良は、ハイライトにおいて印刷版にはセルが存在するのに、印刷物にはそのセルからインキが転移せず印刷画像が形成されない不良である。着肉不良は、ハイライトにおいてセルが小さいために、インキが転移する際に印刷用紙に平滑性の影響を受け易く、また、小さいセルではセル内のインキの乾燥が速くなることによって生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ハイライトにおける着肉性を良くするためには、▲1▼彫刻線数を下げ、セルを大きくすること、▲2▼インキ粘度を下げてインキの流動性を良くすること、▲3▼インキの乾燥速度を遅くすることが有効である。しかしながら、彫刻線数を下げると絵柄の粒状感、文字品質の劣化が目立つという問題がある。また、粘度を下げると、ミドル〜ベタにかけての濃度が得られないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ハイライトにおける着肉性を良くし、ハイライトにおける階調再現性を良くすることにある。しかも、絵柄の粒状感、文字品質の劣化がなく、ミドル〜ベタにかけての濃度が得られるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は下記の本発明によって解決される。すなわち、本発明の請求項1に係るグラビア印刷版は、セルの寸法を変化させることで階調を再現する寸法変調部分と、セルの配置密度を変化させることで階調を再現する密度変調部分とを有するグラビア印刷版であって、印刷において着肉が不完全な網点に相当する寸法のセルを着肉が可能な寸法のセルに印刷濃度が同一となる配置密度で置き換えて、印刷版作成用の原画像におけるハイライト領域を前記密度変調部分とするようにしたものである。本発明によれば、グラビア印刷版のハイライト部分を、着肉するセルによる密度変調部分とすることができる。したがって、ハイライトにおける着肉性を良くし、ハイライトにおける階調再現性を良くすることができる。
【0006】
また本発明の請求項2に係るグラビア印刷版は、請求項1に係るグラビア印刷版において、前記密度変調部分のセルとして印刷によって着肉する最小寸法のセルが適用されるようにしたものである。本発明によれば、大きな寸法のセルが適用された場合と比較して、同一濃度であればセルの配置密度が高くなり、精細な再現性を得ることができる。
【0008】
また本発明の請求項3に係るグラビア印刷版は、請求項1〜3のいずれかに係るグラビア印刷版において、前記密度変調部におけるセルの配置がランダムであるようにしたものである。本発明によれば、セルの配置がランダムで規則性がないから、モアレや亀甲模様(ロゼッタ・パターン)等の発生がない。
【0009】
また本発明の請求項4に係るグラビア印刷版は、セルの寸法を変化させることで階調を再現する寸法変調部分と、セルの配置密度を変化させることで階調を再現する密度変調部分とを有するグラビア印刷版の作成方法であって、印刷において着肉が不完全な網点に相当する寸法のセルを着肉が可能な寸法のセルに印刷濃度が同一となる配置密度で置き換えて、印刷版作成用の原画像におけるハイライト領域を前記密度変調部分として版面に形成するようにしたものである。本発明によれば、グラビア印刷版のハイライト部分を、着肉するセルによる密度変調部分とすることができる。したがって、ハイライトにおける着肉性を良くし、ハイライトにおける階調再現性を良くするグラビア印刷版を作成することができる。
【0010】
【実施の形態】
次に、本発明のグラビア印刷版およびその作成方法について実施の形態により説明を行なう。まず、グラビアシリンダーの周面にセルを彫刻により形成するグラビア電子彫刻システムに本発明のグラビア印刷版の作成方法を適用した一例について説明する。グラビア電子彫刻システムにも各種のものが存在し、ここで説明するグラビア電子彫刻システムもその一例である。
【0011】
グラビア電子彫刻システムはデータ処理部と彫刻部とを有する。データ処理部はグラビア印刷版の原画像データに基づいて彫刻データを生成する処理を行なう。また、彫刻部は彫刻データに基づいて彫刻ヘッドを駆動しグラビア印刷版の周面を彫刻してセルを形成する。
【0012】
原画像データは、印刷物を構成する個々の情報である文字情報、画像情報、付加情報、等を編集して得られる印刷物の画像そのものに対応するデータである。原画像データは刷版工程の前の製版工程において作成されるデータである。原画像データにはセルに関するデータは含まれていない。
【0013】
その原画像データから彫刻データを生成するときに、コンプレスト、エロンゲート、コアース、ファインといった、セル形状やセル配列方向の情報が付加される。彫刻データには、彫刻するセル1つ1つの寸法や配列に関するデータが含まれている。したがって、その彫刻データにおいて彫刻するセル1つ1つの寸法を既定値から変更することができる。
【0014】
ここで既定値とは、原画像データに基づいて、通常の彫刻条件に基づいて決まる彫刻データのことである。通常の彫刻条件とは、コンプレスト、エロンゲート、等の彫刻セルの形状指定とともに、トーン変換テーブル指定、ハイライト設定、シャドウ設定、等の彫刻条件が含まれている。言い換えると、既定値とは、本発明のグラビア印刷版の作成方法に特徴的な部分を含まない通常の彫刻条件だけで生成された彫刻データのことである。また言い換えると、既定値とは、セルの寸法を変化させることで階調を再現する寸法変調部分だけを有するグラビア印刷版の彫刻データのことである。
【0015】
本発明においては、上述の既定値である彫刻データをグラビア電子彫刻システムから取り出し、その彫刻データにおける彫刻するセル1つ1つの寸法を既定値から変更する処理を所定の規則(後述する)の下で行なって新彫刻データを生成する。そして、その新彫刻データをグラビア電子彫刻システムに戻し、その彫刻部における彫刻ヘッドを駆動しグラビア印刷版の周面を彫刻してセルを形成する。このように本発明のグラビア印刷版は、本発明の作成方法を適用することで得ることができる。
【0016】
上述においては、機械的彫刻方式であるグラビア電子彫刻システムを一例として説明した。他のグラビア印刷版を作成する方式においても本発明を適用することができる。たとえば腐食方式では、グラビアシリンダーに密着焼き付けする原版フィルムまたはその基である原版データにおける腐食するセル(網点)1つ1つの寸法を既定値から変更する処理を行なって新原版フィルム得ることで適用することができる。また、たとえばレーザ方式(腐食レジストにレーザ露光する方式、レーザでシリンダー周面を直接彫刻する方式)においても、そのレーザを駆動する基となるデータにおいて、セル(網点)1つ1つの寸法を既定値から変更する処理を行なって新原版フィルム得ることで適用することができる。
【0017】
次に、本発明におけるグラビア印刷版の作成方法について、具体的な事例により説明する。本発明は印刷絵柄のすべての部分に適用することができるが、濃淡絵柄部分よりも平網部分の方が判り易いから、網点面積率が3%の平網においてセルの寸法、配置を変えた場合を一例として説明する。印刷用紙の種類や印刷条件にもよるが、網点面積率が3%の平網は、印刷物においては全く着肉しないセルや、着肉が不完全なセルが発生し、完全な形態で着肉させることは一般に困難である。
【0018】
そこで、印刷において着肉が不完全な網点面積率が3%の平網に相当する寸法のセル(単に「3%のセル」と呼ぶ)を、着肉が可能な寸法の網点面積率が5%に相当する寸法のセル(単に「5%のセル」と呼ぶ)で置き換え、また、その5%のセルの配置密度を変えることで、3%のセルの濃度が得られるようにする。そのためには、セルの配置密度と濃度の関係、および、網点面積率と濃度の関係をあらかじめ得ておく。
【0019】
セルの配置密度と濃度の関係は、次のようにして得る。
まず、網点面積率が5%の平網に相当する寸法のセルの配置密度を変えた階調スケールを有するグラビア印刷版を用意する。
次に、そのグラビア印刷版により標準の条件で印刷を行なう。
次に、印刷された階調スケールの濃度を計測する。このようにして得られるセルの配置密度と濃度の関係の一例をグラフとして図1に示す。
【0020】
図1において左側の半分のグラフがセルの配置密度と濃度の関係を示すグラフである。上述の計測により得られるデータは、とびとびの値を有するデータである。図1においては、計測データを「+」で示してある。それらのとびとびのデータに対して、周知の補間法を適用することにより、データが得られていない部分におけるセルの配置密度と濃度の関係を得ることができる。
【0021】
なお、図1において右側の半分のグラフはセルの寸法、すなわち相当する網点面積率と濃度の関係を示すグラフである。この網点面積率と濃度の関係も上述と同様にして得ることができる。
まず、網点面積率を変えた階調スケールを有するグラビア印刷版を用意する。
次に、そのグラビア印刷版により標準の条件で印刷を行なう。
次に、印刷された階調スケールの濃度を計測する。
【0022】
図1においては、網点面積率が3%以下のグラフの部分を点線で示してある。その理由は、すでに説明しているように、網点面積率が3%以下の平網は、印刷物において完全な形態で着肉させることは一般に困難であり、計測して得た濃度のデータも不完全であるためである。図1における点線の部分は、網点面積率が3%以上の平網について計測して得られる濃度のデータに基づいて、補間法(外挿法)を適用して得たものである。
【0023】
上述のようにして得たセルの配置密度と濃度の関係、および、網点面積率と濃度の関係を参照することにより、3%のセルを5%のセルで置き換え、しかも3%のセルの濃度が得られるようにすることができる。すなわち、図1に示すように、3%のセルの濃度はaである。また、図1に示すように、濃度がaである5%のセルの配置密度はa’である。したがって、網点面積率が3%の平網は、セルの配置密度がa’である5%のセルで置き換えればよいことが判る。このようにして、5%のセルの配置密度を変えることにより、3%以下の連続階調を再現することができる。
【0024】
上述の処理を刷版データに適用して、グラビア印刷版の周面に形成したセルの一例を図2に絵図として示す。図2に示す図は、網点面積率が3%の平網を、セルの配置密度がa’である5%のセルで置き換えたセルを示している。図2において、周面に形成した5%のセルは寸法の大きい白抜きの菱形で示してある。5%のセルは、処理を行なわなかった場合に3%のセルが配置される位置に、配置密度がaとなるように間引いて配置する。
【0025】
図2において、処理を行なわなかった場合に周面に形成されるはずであった3%のセルは寸法の小さいハッチング入りの菱形で示してある。処理を行なわなかった場合には、3%のセルは、小さいハッチング入りの菱形で示してある位置だけでなく、図2における5%のセルの位置にも形成される。5%のセルに置き換える処理を行なった場合には、3%のセルは、一切形成されない。
【0026】
この図2に示したグラビア印刷版において周面に形成したセルは、その配列が規則的または等間隔となっている一例である。見かけ上は、ハイライトに対してだけ線数(スクリーン線数)を下げて彫刻したと同様となっている。配置密度で比較すると、処理を行なわなかった場合に周面に形成されるはずであった3%のセルの内から1/3を5%のセルに置き換える処理が行なわれている。すなわち、配置密度a’=1/3となっている。
【0027】
このように、配列が規則的または等間隔となっている場合には、配置密度は1/2、1/3、2/3、1/4、3/4、1/5、・・・、のようにとびとびの値しかとらないこととなる。しかし、セルの%を変化させることができる。上述においては5%のセルに置き換える処理を一例として説明したが、置き換えるセルの%は5%に限定されるものではない。すなわち、配置密度の変化と、セルの%の変化を組み合わせることができる。したがって、その組み合わせにより、ハイライトにおける階調再現性を良くすることができる。
【0028】
セルの配列は、規則的または等間隔となっている必要性はなくランダム(不規則、不等間隔)とすることができる。むしろ、セルの配置をランダムとすることにより、セルの配列が規則的であるが故に、目立ってしまうようなパターンを目立たなくすることができる。たとえば、モアレや亀甲模様(ロゼッタ・パターン)等の発生をなくすことができる。
【0029】
ランダム化する方法としては、セルの発生を乱数を用いて制御する方法を適用することができる。乱数としては、たとえば、C言語の標準関数rnd()によって発生させた整数値int(integer)を乱数とする。この場合の、乱数は白色雑音となっているが、本発明は、これに限定されない。平坦でない周波数特性(頻度分布)の雑音であってもよい。また、平均値として濃度が目標の濃度となるように、誤差拡散法を適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上のとおりであるから、本発明の請求項1に係るグラビア印刷版によれば、ハイライトにおける着肉性を良くし、ハイライトにおける階調再現性を良くすることができる。また本発明の請求項2に係るグラビア印刷版によれば、大きな寸法のセルが適用された場合と比較して、同一濃度であればセルの配置密度が高くなり、精細な再現性を得ることができる。また本発明の請求項3に係るグラビア印刷版によれば、セルの配置がランダムで規則性がないから、モアレや亀甲模様(ロゼッタ・パターン)等の発生がない。また本発明の請求項4に係るグラビア印刷版の作成方法によれば、ハイライトにおける着肉性を良くし、ハイライトにおける階調再現性を良くするグラビア印刷版を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セルの配置密度と濃度の関係および網点面積率と濃度の関係の一例を示すグラフである。
【図2】本発明のグラビア印刷版において周面に形成したセルの一例を示す図である。
Claims (4)
- セルの寸法を変化させることで階調を再現する寸法変調部分と、セルの配置密度を変化させることで階調を再現する密度変調部分とを有するグラビア印刷版であって、印刷において着肉が不完全な網点に相当する寸法のセルを着肉が可能な寸法のセルに印刷濃度が同一となる配置密度で置き換えて、印刷版作成用の原画像におけるハイライト領域を前記密度変調部分とすることを特徴とするグラビア印刷版。
- 請求項1記載のグラビア印刷版において、前記密度変調部分のセルとして印刷によって着肉する最小寸法のセルが適用されることを特徴とするグラビア印
刷版。 - 請求項1〜2のいずれかに記載のグラビア印刷版において、前記密度変調部分におけるセルの配置がランダムであることを特徴とするグラビア印刷版。
- セルの寸法を変化させることで階調を再現する寸法変調部分と、セルの配置密度を変化させることで階調を再現する密度変調部分とを有するグラビア印刷版の作成方法であって、印刷において着肉が不完全な網点に相当する寸法のセルを着肉が可能な寸法のセルに印刷濃度が同一となる配置密度で置き換えて、印刷版作成用の原画像におけるハイライト領域を前記密度変調部分として版面に形成することを特徴とするグラビア印刷版の作成方法。
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