以下、本発明の一実施形態について、
1.インクジェットプリンタの概略構成
2.記録部の詳細な構成
の順に図面を参照しながら説明する。
<1.インクジェットプリンタの概略構成>
以下では、本発明の一実施形態に係る「記録装置」、「液体噴射装置」としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の概略構成について図1乃至図8を参照しながら説明する。ここで、図1はプリンタ1の外観斜視図、図2はプリンタ1の外観を構成するカバー体を取り外した状態における外観斜視図、図3はプリンタ1の側断面概略図、図4はプリンタ1の要部平面図である。また、図5乃至図7は図3の部分拡大図であり、プリンタ1における用紙搬送(用紙排出)経路のバリエーションを示すもの(要部側断面図)である。更に、図8は、Fd用紙排出口500の斜視図である。
図1において、「被記録媒体」、「被噴射媒体」の一例としての印刷用紙(主として単票紙:以下「用紙P」と言う。)に、「液体」の一例としてのインク滴を吐出して記録を行うプリンタ1は、装置本体1aと、該装置本体1aの下に、オプション給紙ユニット(以下「OPTユニット」と言う)3とを連結可能な様に構成されている。装置本体1aは給紙部、記録部、排紙部等(詳細は後述)を有し、一方でOPTユニット3は、上部の装置本体1aに向けて、セットされた用紙Pを1枚ずつ給紙する給紙部(図示せず)を備えている。
このプリンタ1は、装置本体1aに給紙トレイ200を、OPTユニット3に給紙トレイ300を有し、双方の給紙トレイに、多数枚(本実施形態では、それぞれ500枚)の用紙Pを積層状態でセット可能となっている。そして、装置本体1aの側においては、給紙トレイ200の上部に、任意のサイズの用紙Pを手差し給紙可能な手差し給紙口202を備えている。更に、OPTユニット3の側においては、給紙トレイ300がOPTユニット3に対して着脱可能に設けられ、OPTユニット3から取り外した状態で用紙Pのセットが可能となっている。
次に、プリンタ1は、装置本体1aの上部に、記録の行われた用紙Pを装置前方側に向けて排出するフェイスダウン(以下「Fd」と略称する)用紙排出口500と、これとは逆に装置後方側に向けて排出するフェイスアップ(以下「Fu」と略称する)用紙排出口600と、を有している。Fd用紙排出口500の側においては、装置手前側に設けられた回動軸を中心にして回動することにより、装置手前側に向けて開くことのできるカバー150が設けられている。
図1は、カバー150を開いた状態を示すものであり、当該開いた状態においては、カバー150は、Fd用紙排出口500から排出される用紙Pをスタックする排紙スタッカとしての機能を果たす。また、閉じた状態においては、装置上部の外観を構成するとともに装置内部への塵埃等の進入を防止する機能を果たす。更に、Fu用紙排出口600の側においては、排紙スタッカ601が傾斜姿勢で設けられていて、Fu用紙排出口600から排出された用紙Pは、排紙スタッカ601上に傾斜姿勢で順次積層される。
続いて、図2は、プリンタ1の外観を構成するカバー体を取り外した状態を示すものである。図2において、装置本体1aの上部前方側には、インク・カートリッジ105をプリンタ1の幅方向(後述するインクジェット記録ヘッド100の主走査方向)に複数個(本実施形態では4個)セットする為のカートリッジ取付フレーム110が設けられている。本実施形態に係るプリンタ1においては、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー用の、計4個のインク・カートリッジ105が、プリンタ1の幅方向に並んで配設される。このインク・カートリッジ105は、プリンタ1の外観を構成するカートリッジカバー151(図1参照)を開放することで露呈する様になっている。そして、カートリッジカバー151を開放した状態において装置前方側から後方側に向けて差し込む様にして装着可能となり、装置前方側に引き出すことで取り外すことができる様になっている。
次に、図3を参照しながらプリンタ1の用紙搬送経路について概説する。プリンタ1は、装置下部前方側から装置上部後方側に向けて斜めに用紙Pを搬送し、傾斜した搬送経路上において用紙Pにインクジェット記録を行い、記録の行われた用紙Pを斜め上方(前方側(Fd用紙排出口500))又は後方側(Fu用紙排出口600))に向けて排出する構成を有している。また、プリンタ1は、用紙Pの表面と裏面の両面にインクジェット記録を行うべく、表面にインクジェット記録の行われた用紙Pを反転させ、そして裏面を上にした状態で記録部へと搬送する為の反転経路を有している。
より詳しくは、プリンタ1の用紙搬送経路は、給紙部2と、記録部11と、フェイスダウン(Fd)排出部(フェイスダウン排出手段)5と、フェイスアップ(Fu)排出部6と、用紙反転部(被記録媒体反転手段)4と、から大略構成される。尚、図3では図示を省略するが、給紙部2の下には上述したOPTユニット3が装着されることにより、記録部11へと用紙を給紙する給紙部が更に追加される。図3におけるローラ61及びローラ62は、OPTユニット3から装置本体1aへ用紙Pを給送する為のものである。
以下、上記用紙搬送経路の各構成毎に説明する。尚、以下では用紙搬送経路の上流側を単に「上流側」と言い、用紙搬送経路の下流側を単に「下流側」と言うこととする。
[給紙部2]
給紙部2は、ホッパ203と、手差しトレイ201と、ピックアップローラ25と、給紙ローラ21と、リバースローラ23とを有している。ホッパ203は給紙トレイ200(図1)にセットされる複数枚の用紙Pを積層状態で支持し、且つ、回動軸203aを中心にして、図示を省略するホッパ駆動手段によって図の時計方向及び反時計方向に揺動可能に構成されている。ホッパ203には用紙幅方向にスライド可能な可動エッジガイド204(図2)が設けられ、給紙カセット200(図1)にセットされた用紙Pは、フレーム206(図2)と可動エッジガイド204とによって側端をガイドされる。ホッパ203の上方に設けられた手差しトレイ201にも同様に用紙幅方向にスライド可能な可動エッジガイド201aが設けられ、手差し給紙口202(図1)から給送される用紙Pは、フレーム206と可動エッジガイド201aとによって側端をガイドされる。
ピックアップローラ25は外周面が高摩擦材(例えば、ゴム材)によって構成され、ホッパ203が揺動することにより、ホッパ203上に積重された用紙Pの最上位のものと接触する。そして、当該接触状態で回転することにより、最上位の用紙Pを下流側の給紙ローラ21及びリバースローラ23へと送り出す。
給紙ローラ21及びリバースローラ23は、ピックアップローラ25と同様に外周面が高摩擦材によって構成されている。給紙ローラ21及びリバースローラ23は、図4に示す様に主走査方向において0桁側(図4の左側)に偏倚した位置に設けられている。尚、上述したピックアップローラ25も同様に、図4に示す様に0桁側に偏倚した位置に設けられている。図3に戻って、給紙ローラ21は用紙Pを下流側に給送する回転方向(図3の反時計方向)に回転駆動され、リバースローラ23は、用紙Pを上流側に戻す様な回転方向(図3の反時計方向)に回転駆動される。ピックアップローラ25によってホッパ203上から送出された最上位の用紙Pは、給紙ローラ21とリバースローラ23とにニップされた状態で、給紙ローラ21が回転することにより、下流側の第1駆動ローラ28へと給送される。
ここで、リバースローラ23は、図3では図示を省略する駆動機構により、給紙ローラ21に圧接する状態(図3の状態)と給紙ローラ21から離間する状態とを切り換え可能に設けられている。リバースローラ23は、給紙ローラ21に圧接した状態において、給送されるべきホッパ203上の最上位の用紙Pと、これにつられて重送されようとする次位以降の用紙Pとを分離する機能を果たす。即ち、給紙ローラ21と用紙Pとの間の摩擦係数をμ1、用紙P間の摩擦係数をμ2、用紙Pとリバースローラ23との間の摩擦係数をμ3とすると、μ1>μ3>μ2の関係が成立する様に、給紙ローラ21及びリバースローラ23の外周面を形成する高摩擦材が選定されている。
そして、リバースローラ23は、用紙Pを上流側に戻す方向に回転することにより、重送されようとする次位以降の用紙Pを、給紙ローラ21とリバースローラ23とのニップ点で確実に止める。一方で、リバースローラ23は、用紙P先端が第1駆動ローラ28と第1従動ローラ29とにニップされた後は、第1駆動ローラ28による用紙Pの搬送動作を阻害しない様に、つまり、搬送負荷(バックテンション)を与えない様に、給紙ローラ21から離間する。
尚、以下では、用紙Pに搬送力を与えるローラ対に対し、当該ローラ対の上流側で用紙Pに与えられる搬送負荷(主に、用紙Pを引っ張ろうとする様な力)を「バックテンション」と言い、逆に下流側で用紙Pに与えられる搬送負荷(主に、用紙Pを下流側から上流側へ押し戻そうとする様な力)を「フロントテンション」と言うこととする。
[記録部11]
給紙部2の下流側に設けられた記録部11は、「第1ローラ」を構成する第1駆動ローラ28及び第1従動ローラ29(以下必要に応じてこのローラ対を「第1ローラ」と言う)と、「液体噴射ヘッド」の一例としてのインクジェット記録ヘッド(以下「記録ヘッド」と言う)100と、プラテン65と、「第2ローラ」を構成する第2駆動ローラ32及び第2従動ローラ33(以下必要に応じてこのローラ対を「第2ローラ」と言う)と、補助ローラ35と、「第3ローラ」を構成する第3駆動ローラ36及び第3従動ローラ37(以下必要に応じてこのローラ対を「第3ローラ」と言う)と、を有している。
第1駆動ローラ28は図示しない駆動モータによって回転駆動され、第1従動ローラ29は、第1駆動ローラ28に接して従動回転する。第1従動ローラ29は、本実施形態では図4に示す様に1つの第1従動ローラホルダ26の下流側(図4の上側)に2つ軸支され、また、第1従動ローラホルダ26は、主走査方向(図4の左右方向)に4つ並設されている。ここで、第1従動ローラ29の回転中心は、第1駆動ローラ28の回転中心に対して搬送方向下流側に配置されることにより、両ローラのニップ点における接線がプラテン65に向かう様に構成されている(図9参照)。従ってこれにより、第1ローラを通過した用紙Pはプラテン65に押し付けられ、プラテン65からの浮き上がりが防止される様になっている。また、1つの第1従動ローラホルダ26において第1従動ローラ29の下流側近傍には、用紙Pをプラテン65に向けて押圧する押圧部材82が設けられている。この押圧部材82は、用紙Pのプラテン65からの浮き上がりを防止する機能を果たすものであるが、これについては後に詳説する。
次に、第1駆動ローラ28の下流側には、用紙搬送経路の上側に記録ヘッド100が、用紙搬送経路の下側に、記録ヘッド100と対向する様にプラテン65が、それぞれ設けられている。ここで、記録部11における用紙搬送経路は図示する様に傾斜角を有し、本実施形態においては、水平面に対して約60°の傾斜角を有する様に、用紙搬送経路が構成されている。従って、プラテン65と記録ヘッド100とは、図示する様に傾斜姿勢で設けられている。記録ヘッド100はキャリッジ101の下部に設けられ、キャリッジ101は、主走査方向(図3の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸103を挿通する様に設けられ、キャリッジガイド軸103によってガイドされながら、図示しない駆動手段の動力を受けて主走査方向に往復動する。
プラテン65においてプラテン面(プラテン65において記録ヘッド100と対向する面)65cには、記録ヘッド100に向けて突出するとともに図4に示す様に副走査方向(図4の上下方向)に延びる第1リブ65a及び第2リブ65b(以下適宜これらをまとめて「リブ」と言う)が、主走査方向に所定の間隔を置いて形成されていて、用紙Pは、リブによって記録ヘッド100との距離を規制される。また、プラテン65には、主走査方向に延びる長穴65eが形成されている。この長穴65eは、用紙Pのサイズ(幅寸法)をより適切に検出する為に設けられている。即ち、キャリッジ101においてプラテン65と対向する面には、プラテン65へ向けて放射する光の反射成分を検出する光学センサ(図示せず)が設けられていて、用紙Pとプラテン65との反射率差を利用して、用紙Pの幅寸法を検出することができる様に構成されている。しかし、用紙Pとプラテン65とが同色である場合には、用紙Pの幅寸法を適切に検出することができない。そこで、本実施形態においては、前記放射光を、長穴65eに向けて放射する様に構成し、これによって用紙Pの幅寸法をより一層正確に検出可能としている。
尚、長穴65eによってリブが上流側と下流側とに分断されたことにより、第1駆動ローラ28の下流側近傍に位置する第1リブ65aと、当該第1リブ65aの下流側に位置する第2リブ65bとによって用紙Pを支持するリブが構成されている。
次に、図3に戻ってキャリッジ101は、本実施形態においてはインク・カートリッジを搭載せず、前述した様に、インク・カートリッジ取付フレーム110に装着されたインク・カートリッジ105から、図3では図示を省略するインクチューブを介して記録ヘッド100へとインクが供給される様に構成されている。また、各色のインク・カートリッジ105には、各インク・カートリッジに関する情報を保持したICチップ107がそれぞれ装着されている。このICチップ107には、インクの色などの固定情報の他、インク残量などの変動情報を記憶する記憶装置が内蔵されている。各ICチップ107には、受信アンテナ(図示せず)がそれぞれ接続されており、一方で主走査方向に往復動するキャリッジ101には、前記受信アンテナへ無線信号を送信する送信アンテナ(図示せず)を備えたアンテナ基板109が略垂直に立設されている。
そして、アンテナ基板109は、キャリッジ101が主走査方向に移動することにより、主走査方向に並んで複数配設されたインク・カートリッジ105のうちの、1つのインク・カートリッジ105のICチップ107と対向する。そして、ICチップ107と通信することにより、ICチップ107に記憶された各種情報を、図示しないプリンタ1の制御部へと送信することができる様になっている。
次に、記録ヘッド100の下流側には、回転駆動される第2駆動ローラ32と、該第2駆動ローラ32に接して従動回転する第2従動ローラ33とを備えて構成された第2ローラが設けられ、記録ヘッド100によって記録の行われた用紙Pは、第2ローラの回転によって下流側へ搬送される。また、第2ローラ33の上流側には、補助ローラ35が設けられていて、これにより、用紙Pのプラテン65からの浮き上がりがより一層防止されているが、これについては後に詳説する。尚、第2従動ローラ33と、補助ローラ35は、インク滴が吐出された用紙Pの記録面と接することから、インクの転着や白ヌケを防止する為に記録面と点接触する歯付きローラによって構成されている。
ここで、第2駆動ローラ32及び第2従動ローラ33は、図4に示す様に主走査方向の配置位置が、リブの形成位置と一致する様に成されている。加えて、複数配置された補助ローラ35の中で、符号35cで示す補助ローラの配置位置は、隣り合う2つのリブのほぼ中間となる様に成され、且つ、用紙Pの記録面と接触する接触点が、リブの頂部よりもやや下に位置する(即ち用紙搬送経路を側視してリブとオーバーラップする)様に設けられている。従ってこれにより、用紙Pがインク滴を吸収することにより膨潤した際に、その伸び分が隣り合う2つのリブの間に逃げ、結果として用紙Pには規則的な波打ち状態(コックリング)が形成される。即ち、リブの位置で山となり、補助ローラ35cの位置で谷となるコックリングが形成され、これによって用紙Pと記録ヘッド100との距離が著しく不均一となったり、或いはリブとリブとの間で用紙Pが浮き上がって記録ヘッド100と擦れたりするといった不具合を防止している。加えて、コックリングが形成されることによって搬送方向の見かけ上の剛性が増し、フロントテンションが発生しても、記録ヘッド100において用紙Pが浮き上がり難い(撓み難い)という作用効果も奏することができる。尚、用紙Pの両側端位置に配置された「側端押さえローラ」としての補助ローラ35a、35b、35dについては後に詳説する。
次に、第2ローラの下流には、第3駆動ローラ36及び第3従動ローラ37を備えて構成された第3ローラが設けられている。この第3ローラは、上流側の第2ローラが発揮する用紙搬送力を補助して記録済みの用紙Pを確実に下流側に搬送する機能を果たす他、第2ローラとの間で用紙Pに湾曲姿勢を形成することで、用紙Pを円滑に湾曲反転させる機能を果たす(詳細は後述)。
[フェイスダウン(Fd)排出部5]
次に、記録部11の下流側に設けられたFd排出部5は、第3駆動ローラ36及び第3従動ローラ37と、Fd排出駆動ローラ41と、Fd排出従動ローラ43と、を備え、記録の行われた用紙Pの記録面を内側にして湾曲反転させることにより、用紙Pを記録面を下にした状態で排出する。
より詳しくは、第3ローラの下流側には、第3ローラによって記録部11から搬送された用紙Pを、フェイスダウン(Fd)排出経路またはフェイスアップ(Fu)排出経路のいずれかに切り替えるFd/Fu切替部材503が設けられている。Fd排出経路は用紙PをFd用紙排出口500(図1)から排出する為の用紙排出経路、Fu排出経路はFu用紙排出口600(図1)から排出する為の用紙排出経路である。
Fd/Fu切替部材503は、揺動軸503aを中心にして、用紙排出経路を側視して揺動(図3の時計方向及び反時計方向)可能に設けられ、揺動することにより、記録部11から下流側に送られる用紙Pの進行方向を切り替える。また、Fd/Fu切替部材503は、Fd排出経路における湾曲反転経路の外側に設けられ、湾曲面503bによって用紙Pを湾曲反転させる。尚、湾曲面503bは、用紙Pとの間の摩擦抵抗を軽減してフロントテンションの増大を防止すべく、滑らかに形成されている。また、湾曲面503bは、用紙Pの幅方向(図3の紙面表裏方向)に複数のリブ(図示せず)が所定の間隔を置いて設けられることによって形成されていて、つまり、一様な面でないので、これによっても、用紙Pとの間の摩擦抵抗を軽減している。
次に、図5は、Fd/Fu切替部材503が、記録部11から下流側に送られた用紙Pの進行方向をFd排出経路に切り替える状態を示している。記録部11から下流側に送られた用紙P先端は、Fd/Fu切替部材503に形成された滑らかな湾曲面503bに当接する。用紙P先端は、湾曲面503bと、湾曲面503bの下流側に設けられたガイド部材505に接しながら進み、やがてFd排出駆動ローラ41とFd排出従動ローラ43とによってニップされる。Fd排出駆動ローラ41はゴムローラによって成され、図示しない駆動手段によって回転駆動される。Fd排出従動ローラ43は歯付きローラによって成され、Fd排出駆動ローラ41に接して従動回転する。そして、Fd排出駆動ローラ41が回転駆動されることにより、Fd用紙排出口500(図1)から装置前方(矢印「Fd」で示す方向)に向けて記録の行われた用紙Pが排出される。
尚、図8に示す様に用紙排出口500にはスタックレバー509が用紙Pの側端位置近傍(本実施形態では、A4サイズ及びB5サイズの側端位置)に配置されている。スタックレバー509は、図3及び図5乃至図7に示す様にFd排出駆動ローラ41の回転軸41aに、当該回転軸41aを中心にして揺動可能に取り付けられ、Fd用紙排出口500から排出される用紙Pを上方から押さえる機能を果たす。これは、用紙Pがインクを吸収して膨潤すると、記録面を上にして凸形状となる様にカールする傾向があるが、この状態でFd排出経路の湾曲反転経路を経由すると、用紙Pに掛かる負荷によって前記カールが助長されてしまい、その結果Fd用紙排出口500から排出される際には用紙Pの両側端が上方に跳ね上がった状態となり、後続の用紙Pが排出される際に障害となってしまうからである。そこで、用紙Pの両側端を上方から押さえるスタックレバー509を配設することにより、インクジェット記録を行った後に当該用紙Pを湾曲反転させる構成を備えるプリンタ特有の問題、即ち前記カールの問題を解消することができる。尚、スタックレバー509は、必要に応じて付勢手段(例えば、捻りばね等)を用いて上記押さえ付けの力を調節する様に構成することも好ましい。
用紙Pが上記Fd排出経路を進行して排出される場合には、用紙Pは記録面を内側にして略U字形の形状に湾曲させられて排出される。従って、Fd排出経路を進行して排出される場合には、排紙スタッカ150(図1)に積重される用紙Pは、ページ順に順序良く積重されることになり、ユーザの利便性が向上する。
[フェイスアップ(Fu)排出部6]
図3に戻って、記録部11の下流側であって装置本体1aの後部(図3の右側)に設けられたFu排出部6は、Fu排出駆動ローラ45と、Fu排出従動ローラ47と、Fu補助ローラ49と、凹凸ローラ48(図6参照)とを備えている。用紙PがFu排出経路を進行して排出される場合には、Fd/Fu切替部材503は、図5に示す状態から時計方向に揺動する。そしてこれにより、図6に示す様に記録部11から下流側に送られる用紙Pが斜め上方(図6の右上方向)に真っ直ぐに進む用紙搬送経路が形成される。記録部11から下流側に送られた用紙Pは、Fu排出駆動ローラ45とFu排出従動ローラ47とによってニップされ、Fu排出駆動ローラ45が回転駆動されることにより、Fu用紙排出口600(図1参照)から装置後方(矢印「Fu」で示す方向)に向けて排出される。
尚、Fu排出従動ローラ47は歯付きローラからなり、ゴムローラによって成されたFu排出駆動ローラ45に接して従動回動する様構成されている。また、Fu排出駆動ローラ45は、用紙Pの排出方向側(図6の右側:プリンタ1の後方側)に設けられている。更に、Fu排出従動ローラ47の下流側近傍には歯付きローラからなるFu補助ローラ49が設けられ、凹凸ローラ48とともに用紙Pの排出動作を補助する。
尚、Fd/Fu切替部材503に設けられた従動ローラ44は、用紙Pの記録面がFd/Fu切替部材503に接触して記録品質を低下させることが無い様に自由回転可能に設けられたものであり、用紙Pと点接触する歯付きローラによって成されている。
用紙Pが上記Fu排出経路を進行して排出される場合には、用紙Pには湾曲状態は形成されず、記録面を上にして記録部11から下流側がほぼ真っ直ぐに排出される。従って、上記Fu排出経路を利用することにより、厚手の用紙や腰の強い用紙でも、無理なく記録を行い、且つ適切に排出することが可能となる。
[用紙反転部4]
図3に戻って、プリンタ1の後部(図3の右側)に設けられた用紙反転部4は、上述したFu排出駆動ローラ45と、Fu排出従動ローラ47等のFu排出部6を構成するローラ群を含み、更にガイド駆動ローラ51と、可動ガイド従動ローラ52と、ガイド駆動ローラ53と、ガイド従動ローラ54と、反転駆動ローラ55と、反転従動ローラ57と、ガイドローラ59と、を備えている。
用紙反転部4は、図7に示す様に、上記Fu排出経路を進んできた用紙Pの後端部分を略垂直方向に沿う様に押さえ付け、且つ、Fu排出駆動ローラ45及びガイド駆動ローラ51を図の反時計方向に回転駆動することにより、用紙PをFu用紙排出口600(図1)から排出せずに、用紙反転部4内へと引き込む。
より詳しくは、図7において第3ローラの下流側には、歯付きローラからなる可動ガイド従動ローラ52を自由回転可能に軸支するFu/R第1切替部材401が設けられ、該Fu/R第1切替部材401と対向する位置に、Fu/R第2切替部材405が設けられている。Fu/R第1切替部材401は、図示しない回動中心を中心に揺動可能に設けられるとともに、可動ガイド従動ローラ52がガイド駆動ローラ51から離間する状態(図6に示す状態)と、ガイド駆動ローラ51に接する状態(図7に示す状態)とを、図示しない駆動機構によって変化可能に設けられている。Fu/R第2切替部材405は、Fu排出駆動ローラ45の回動中心を中心にして揺動可能に設けられるとともに、傾斜姿勢(図6に示す状態)と略垂直な姿勢(図7に示す状態)とを、図示しない駆動機構によって変化可能に設けられている。
以上の構成により、用紙Pが図6に示した様にFu排出経路を進み、そして用紙Pの後端がガイド部材501を通過した後に、Fu/R第1切替部材401と、Fu/R第2切替部材405とを、図6に示す状態から図7に示す状態に切り替える。これによって、用紙P後端部分がガイド駆動ローラ51と可動ガイド従動ローラ52とにニップされるとともに、この状態で逆転(図の反時計方向)駆動されるFu排出駆動ローラ45と、ガイド駆動ローラ51との搬送力を受けて、用紙P後端を先頭にして鉛直下方向へと進んでいく。
尚、用紙反転部4を進む用紙Pは、最初の記録面(表面)の記録時とは進行方向が逆になる。即ち、最初の記録時には先端であった側が後端側となり、後端であった側が先端側となるので、以下では用紙反転部4を進む際に先端となる側を「用紙P先端(R)」、後端となる側を「用紙P後端(R)」と表記することとする。
続いて、図3に戻ってガイド駆動ローラ51の下流側には、回転駆動されるガイド駆動ローラ53と、これに接して従動回転する、歯付きローラからなるガイド従動ローラ54とが設けられていて、用紙P先端(R)が当該ローラ対にニップされることにより、更に下流側に搬送される。
ガイド駆動ローラ53の下流側には、大径のガイドローラ59が設けられるとともに、該ガイドローラ59を中心にした略U字形の形状をなす湾曲反転経路が形成されている。ガイドローラ59と対向する側には、回転駆動される反転駆動ローラ55が設けられ、該反転駆動ローラ55と、該反転駆動ローラ55に接して従動回転する反転従動ローラ57とよって用紙P先端(R)がニップされることにより、用紙Pは前記湾曲反転経路を更に進む。
ここで、ガイドローラ59は、表面が滑らかであり、且つ、自由回転可能な様に構成されている。これは、ガイドローラ59と対向する用紙Pの面が、既にインク滴の吐出された記録面(表面)であることから、この様な既記録面に対して例えば回転駆動されるゴムローラ等を配すると、既記録面と擦れることによって記録品質を低下させるからである。
また、反転従動ローラ57は、図示しない付勢手段によって反転駆動ローラ55に軽く接する様に設けられている。一方、用紙P先端(R)はやがて第1駆動ローラ28と第1従動ローラ29とにニップされて、記録ヘッド100へと搬送されるが、第1駆動ローラ28と第1従動ローラ29とによる用紙Pの搬送力は、他のローラ対に比して強力である。従って、用紙P先端(R)が第1駆動ローラ28と第1従動ローラ29とにニップされると、用紙Pが引っ張られることにより、反転従動ローラ57が前記付勢手段の付勢力に抗して反転駆動ローラ55から離間する場合がある。すると、前記湾曲反転経路の形状が変化し、安定した用紙Pの搬送動作を実現できないといった不具合が生じる。しかし、ガイドローラ59は、回転軸方向と直交する方向には変位しない様に設けられているので、これにより、既記録面を適切に保護しながら、前記湾曲反転経路を一定に維持して安定した用紙Pの搬送動作を実現可能となっている。
尚、反転従動ローラ57は歯付きローラではなく、用紙Pと面接触する、表面が滑らかなローラによって構成されている。これは、反転従動ローラ57は用紙Pを湾曲反転させる部分に設けられている為、用紙Pが反転湾曲ローラ57に強く接する場合があるとともに、反転従動ローラ57と接触する用紙Pの面が、既にインク滴の吐出された既記録面(表面)であるので、既記録面を保護する必要がある為である。
また、反転従動ローラ57は、図4に示す様に用紙Pの両側端位置近傍(本実施形態ではA4サイズ及びB5サイズ)に配置しながら、その間のローラ配置数を必要最低限とすることも好適である。本実施形態では、符号57aと57dとで示す反転従動ローラ57はA4サイズの用紙Pの両側端に位置し、符号57bと57dとで示す反転従動ローラ57はB5サイズの用紙Pの両側端に位置する。また、符号57cで示す反転従動ローラは、用紙Pの両側端に配置された反転従動ローラ57の間に位置する。これにより、用紙Pの第1面に記録を行ったことで両側端に反り傾向が発生しても、当該両側端部を反転駆動ローラ55と反転従動ローラ57とでニップするので、前記反り傾向を低減させて円滑に用紙Pを下流側に搬送させることができるとともに、下流側の搬送駆動ローラ28と搬送従動ローラ29とによる用紙P搬送時の搬送負荷を低減させることができ、良好な記録結果を得ることができる。
ガイドローラ59によって形成された湾曲反転経路を通過し、用紙P先端(R)が第1駆動ローラ28と第1従動ローラ29とにニップされると、用紙Pは記録ヘッド100へ搬送され、用紙Pの裏面への記録が実行される。そして、用紙反転部4を経由した用紙Pは、本実施形態においては上述のFu排出経路(Fu排出部6)を通り、Fu用紙排出口600(図1)から斜め上方に排出される。
以上が、プリンタ1の全体構成についての概略である。
<2.記録部の詳細な構成>
続いて、図9乃至図13を参照しながら、記録部11の詳細な構成について詳説する。ここで、図9は第1ローラから第3ローラに至る用紙搬送経路の側面図、図10は押圧部材82の側面図、図11はプラテン65の側面図、図12はプラテン65の正面図、図13(A)−1及び(B)−1は第2ローラ及び第3ローラの平面図であり、(A)−2及び(B)−2はローラ通過跡の様子を説明する為の模式図である。尚、図9及び図11では、説明の便宜上傾斜した搬送経路を水平にして示しており、実際には、図3に示した様に用紙Pの搬送経路は斜め上方に傾斜する様に構成されている。
記録部11において、用紙Pのプラテン65からの浮き上がり(以下「用紙浮き」と言う)が発生すると、記録ヘッド100と擦れたり、記録ヘッド100との距離(ペーパーギャップ:以下「PG」と言う)が変化することによって記録品質が低下する。また、インクジェット記録を行ってコックリングが形成された用紙Pを、Fd排出経路を経由させて、即ち湾曲反転させて排出する場合には、記録面にダメージを与える場合がある(詳細は後述)。更に、記録品質をより一層向上させる為に、PGをより一層均一なものとすることが望ましい。従って本実施形態に係るプリンタ1は、用紙浮きを防止する手段、記録面へのダメージを防止する手段、PGをより一層均一なものとする手段、を備えている。
先ず、用紙浮きを防止する第1の手段として、押圧部材82が設けられている。押圧部材82は、図10に詳しく示す様に側面視においてプラテン面65cと対向する面がフラットな面であるとともに下流側に突出する様な押圧部82aを有するとともに、揺動軸82bを中心にして図の時計方向及び反時計方向に揺動可能に設けられている。
より詳しくは、図4に示す様に、第1従動ローラホルダ26の平面視において、押圧部材82は第1従動ローラホルダ26とほぼ同じ幅寸法によって形成され、プラテン65に形成された第1リブ65aを避ける様な切り欠き部が設けられている。従ってこれにより、押圧部材82の回動軸82bを中心にした回動によって、先端の押圧部82aが、隣合う2つの第1リブ65aの間に入り込んでプラテン面65c側に近接したり、逆に符号82a’で示す様にプラテン面65cから離間したりすることが可能となっているとともに、図示しない付勢手段によって、プラテン面65cに向けて付勢された状態に設けられている。
以下、押圧部材82の奏する作用効果について説明する。用紙Pの第1面(おもて面)に記録を行った後、上述した用紙反転部4によって用紙Pを反転させて第2面(うら面)に記録を行う際には、用紙Pはインク滴を吸収したことによって、第1面を上にした凸形状となる様に椀状に反り返る場合がある。すると、第2面の記録時においては、特に用紙Pの両側端がリブから浮き上がり、これによって第2面記録時にヘッド擦れやPG変化を招来して記録品質を低下させる虞がある。
押圧部材82aは、この様に用紙Pのリブからの浮き上がりを、第1リブ65aとの協働作用によって防止する機能を果たす。即ち、用紙Pが第1ローラによるニップ状態から解放されて下流側に進む際には、用紙Pの側端が第1リブ65aと押圧部82aとによってプラテン面65cに向けて湾曲(カール)した様な状態となり、これによって用紙P側端の見かけ上の剛性が向上するので、ヘッド擦れやPG変化を防止でき、記録品質の低下を防止することができる。またこのカールは、押圧部82aの下流側にも波及することから、従って押圧部82aから下流側に離れた場所においても、確実に上述した浮き防止効果を得ることができる。
ところで、押圧部材82の回動軸82b近傍に用紙Pが接し、そして下流側に進む際には、押圧部材82には用紙Pとの摩擦力によって押圧部82aがプラテン面65cから離間する方向の回転モーメントが付与されてしまい、上記押圧効果が低減してしまう虞がある。そこで、押圧部材82の回動軸82b近傍において用紙Pと接する部分を自由回転可能な接触ローラ83によって構成し、これによって上記回転モーメントの発生を防止することで、用紙Pをプラテン面65cに向けて確実に押圧している。
次に、用紙浮きを防止する第2の手段として、第1リブ65aのプラテン面65cからの突出高さ(記録ヘッド100側への突出高さ)を、第2リブ65bの同突出高さよりも高く成している。即ち、図11(A)は第1リブ65a’と第2リブ65bの突出高さが同じ状態を示すものであり、第1ローラによって搬送される用紙Pは、第1リブ65a’から第2リブ65bに到達する際に、第1リブ65a’と第2リブ65bとの間に落ち込むことで、符号P’で示す様に第2リブ65bから浮き上がろうとする。従ってこれにより、ヘッド擦れやPG変化が発生し、記録品質が低下する虞がある。また、用紙P先端が第2ローラに到達し、第2ローラにニップされた後でも、用紙Pが第1リブ65a’と第2リブ65bとの間に落ち込むことで、やはり第2リブ65bからの浮き上がりが発生する。
そこで本実施形態では、図11(B)に示す様に、第1リブ65aの突出高さを第2リブ65bの突出高さよりも高く成すことにより、第1リブ65aと第2リブ65bとの間におけるに用紙Pの落ち込みを低減或いは防止して、図11(A)の符号P’で示す様な用紙P先端の浮き上がりを防止している。また、用紙P先端が下流側の第2ローラにニップされた後でも、第1リブ65aと第2リブ65bとの間の、用紙Pの落ち込みの程度を軽減或いは防止できるので、同様に用紙Pの第2リブ65bからの浮き上がりを軽減或いは防止でき、記録品質の低下を防止できる。
加えて、以下のような作用効果も奏する。即ち、用紙Pはリブ65a、65bによって主走査方向に一定振幅の規則的なコックリングが形成されるが、一般には、用紙Pの先端が下流側の第2ローラに到達してニップされるまでは、一定振幅の規則的なコックリングが形成され難く、従ってPGが均一となり難い。しかし、本実施形態においては第1リブ65aの突出高さが高く、そしてこの様に突出高さの高い第1リブ65aの上流側近傍に、用紙Pをプラテン65に向けて押し付ける第1ローラ及び押圧部材82(図11では図示せず)が配設されているので、これによって用紙P先端がプラテン下流の第2ローラに到達する前においてもコックリングが形成され易くなり、従ってPGの不均一化を防止して記録品質の低下を防止することができる。
尚、図11において符号Aは記録ヘッド100によるインク吐出領域を示しており、図示する様に第1リブ65aは記録ヘッド100のインク吐出領域の外側に配置されている。従ってこれにより、第1リブ65aの突出高さを第2リブ65bの突出高さよりも高く成してもPGが著しく不均一とならず、記録品質の低下を防止できる様になっている。
続いて、用紙浮きを防止する第3の手段として、「側端押さえローラ」としての補助ローラ35a、35b、35dを設けている。補助ローラ35a、35b、35dは、図4及び図9に示すように副走査方向では第1ローラと第2ローラとの間、より具体的には記録ヘッド100と第2ローラとの間に配置され、主走査方向では用紙Pの両側端位置(本実施形態では、A4サイズ及びB5サイズの用紙側端位置)に配置されるとともに、それぞれの補助ローラ35a、35b、35dの内側(用紙内側)近傍には、補助ローラ35a、35b、35dと所定の間隔を置いて、リブ65bが位置している。更にこの補助ローラ35a、35b、35dは、用紙搬送経路を側視して第2リブ65bとオーバーラップする様に設けられている(図9において符号aで示すオーバーラップ量:本実施形態では0mmより大きく0.6mm以下)。尚、図4において符号E1で示す破線は、全てのサイズの用紙Pの側端が通過するラインを示しており、同様に符号E2で示す破線はB5サイズ、符号E3で示す破線はA4サイズの用紙P側端が通過するラインを示している。また、本実施形態では補助ローラ35dは全てのサイズの用紙Pの側端に位置し、補助ローラ35aはA4サイズ及びこれより若干幅の異なるサイズ(例えば、レターサイズ)の側端に位置し、補助ローラ35bはB5サイズ及びこれより若干幅の異なるサイズの側端に位置している。
この補助ローラ35a、35b、35dは、用紙P側端に配置されたことで以下の様な作用効果を奏する。即ち、用紙PがFd排出経路における湾曲反転経路に突入すると、これによって負荷(フロントテンション)が発生するが、このとき用紙Pの幅方向中央部はFd/Fu切替部材503の湾曲面503b(図3)に強く接し、一方で両側端はフリーな状態であるので、中央部に比して湾曲面503bに強く接することなく、そのかわりに内側にカールする(湾曲面503bから浮き上がる)傾向が生じる。
すると、これにより印刷用紙の幅方向中央部分と両側端部分とで経路差が発生し、即ち湾曲反転経路では中央部分よりも両側端部分が経路長が短くなるので、当該経路差が第1ローラと第2ローラとの間に波及し、図5において符号Fで示す様に用紙Pの両側端がプラテン65から浮き上がる傾向が発生する。従ってこの場合PG変化或いはヘッド擦れによって記録品質が低下する。これは、湾曲反転経路では、用紙Pは湾曲姿勢をとることからその姿勢が拘束され、従って上記経路差を吸収できる様な搬送方向の湾曲部が湾曲反転経路では形成されないことに起因する。
しかし、本実施形態では補助ローラ35a、35b、35dが単に用紙Pを上方から押さえるのではなく、リブ65bとの協働作用によって用紙Pの両側端にカールを形成し、これにより搬送方向の見かけ上の剛性を向上させて、プラテン65からの浮き上がりを確実に防止している。また、用紙Pの両側端にカールを形成することで両側端の浮き上がりを防止するので、補助ローラ35a、35b、35dの近傍のみならず、その上流側或いは下流側にも上記浮き上がり防止効果を波及させることができる。従って以上により、フェイスダウン排出時における特有の課題を確実に解決することができる。
尚、本実施形態では、用紙Pの両側端を支持する最も外側のリブの、更に外側に補助ローラ35a、35b、35dを配置しているので、用紙Pの両側端に形成されるカールはプラテン65に向かう。即ち、記録ヘッド100にカール方向が向かわないので、用紙P両側端の記録ヘッド100との擦れを防止することができる様になっている。また、補助ローラ35a、35b、35dの内側近傍にリブが位置していることから、確実に用紙P両側端にカールを形成することができる。
尚、用紙Pの両面にインクジェット記録を行う場合、第1面に記録が行われた後においては、用紙Pがインク滴を吸収して膨潤することにより、上述した様に第1面を上にした凸形状となる様に、椀状に反り返る傾向がある。そしてこの様な状態の用紙Pが用紙反転部4によって反転され、第2面を上にして再び記録ヘッド100の下へ搬送されると、用紙Pの両側端がプラテン65から浮き上がり、ヘッド擦れやPG変化を招く虞がある。しかし、上記補助ローラ35a、35b、35dによって上記用紙浮き防止効果が得られるので、この様な両面記録時に特有の課題を確実に解決することができる。
ところで、本実施形態では、補助ローラ35a、35bは、回転軸方向に複数(本実施形態では、2枚)の歯付きローラを備えて構成されている。従ってこれにより、用紙Pの幅寸法にばらつきがある場合や、幅寸法が多少異なる用紙を用いる場合でも、リブ65bとの協働作用によって用紙側端に確実にカールを形成することができる。
尚、第2ローラの下流側に本実施形態の様な用紙Pの湾曲反転経路を備えていない構成であっても、補助ローラ35a、35b、35dとリブ65bとの協働作用によって用紙Pの両側端にカールが形成されるので、これによって種々の要因による用紙Pのプラテン65からの浮き上がりを防止でき、記録品質の低下を防止することができる。
続いて、用紙浮きを防止する第4の手段及び記録面へのダメージを防止する手段として、プリンタ1は第2ローラと第3ローラとによって、用紙Pに形成されたコックリングを除去するコックリング除去手段を備えている。
即ち、コックリングが形成された状態では用紙Pは搬送方向の見かけ上の剛性が増していることから、この様な用紙PがFd排出経路における湾曲反転経路(湾曲面503b:図3)に突入すると、コックリングの山の部分が潰れ、その潰れた跡に皺が形成されてしまうといった問題が発生する場合がある。また、用紙Pが湾曲反転経路に突入した際に円滑に湾曲しないと負荷(フロントテンション)が発生するので、これによって記録品質の低下を招く虞もある。
加えて、用紙Pはプラテン65の上流側に設けられた第1ローラと下流側に設けられた第2ローラとによってニップされ、その姿勢が拘束されるとともに、上述した様に第1ローラによってプラテン65に押し付けられてプラテン65からの浮き上がりが防止される様になっている。しかし、用紙Pの後端が第1ローラから外れると、前記拘束状態が解除されてしまい、用紙P後端はプラテン65から浮き上がり易くなる。
そこで本実施形態では第2ローラとFd排出経路との間に第3ローラを設けるとともに、第2ローラでの用紙Pのニップ点(符号P2で示す)における接線(図9において符号T1で示す)に対し、第3ローラによる用紙Pのニップ点(符号P3で示す)を、Fd排出経路の湾曲反転経路側(図9では上側)に配置した。尚、図9において符号T2で示す線は、第3ローラによる用紙Pのニップ点P3の位置を示す為に、ニップ点P3を通過する接線T1と平行な線を示している。また、符号cは接線T1と接線T2の間隔を示しており、本実施形態では約2mmに設定している。
以上の構成によって、第2ローラと第3ローラとの間で用紙Pに湾曲姿勢(用紙搬送経路を側視した場合の湾曲姿勢)が形成されるので、これによってコックリングが除去されて用紙Pは平坦となり、そしてこの状態で用紙Pは前記湾曲反転経路に突入するので、上述した皺の発生を防止することが可能となるとともに、円滑に湾曲反転させられるので負荷(フロントテンション)の増大を防止して記録品質の低下を防止できる。また、用紙Pに形成される前記湾曲姿勢は用紙Pをプラテン65に押し付ける傾向を付与する湾曲姿勢であるので、用紙P後端が第1ローラを外れた後でも、用紙Pのプラテン65からの浮き上がりが防止でき、これによっても記録品質の低下を防止することができる。
尚、コックリングを除去する観点からは、第3ローラのニップ点P3は、本実施形態とは異なり接線T1に対し前記湾曲反転経路の反対側(図9の下側)に配置しても構わない。しかし、本実施形態の様に前記湾曲反転経路がプラテン65の上方に位置する場合、換言すれば前記湾曲反転経路が用紙Pの記録面を内側にして湾曲反転させる経路である場合に、第3ローラのニップ点P3を接線T1に対し前記湾曲反転経路側に配置することにより、用紙Pのコックリングを除去するとともに用紙Pをプラテン65に押し付ける傾向を付与することができ、皺の発生防止とともに用紙Pのプラテン65からの浮き上がりを防止することができる。
また、第3ローラの下流側に用紙Pを湾曲させる経路(用紙Pの反転を行う場合と行わない場合の双方を含む)を有する場合には、上述の通り用紙Pへの皺の形成を防止できるとともにプラテン65からの浮き上がりを防止できるが、第3ローラの下流側に前記湾曲経路を有さない場合であっても、プラテン65からの浮き防止効果を得ることができる。
尚、本実施形態では第2ローラと第3ローラの位置関係を調整することで第2ローラとフェイスダウン排出手段との間で用紙Pに湾曲姿勢を形成し、これによってコックリングを除去する様にしているが、コックリングを除去できる手段(コックリング除去手段)或いは湾曲状態を形成可能な手段(湾曲形成手段)であれば、どの様な構成であっても構わない。
ところで、第2ローラを構成する第2従動ローラ35と、第3ローラを構成する第3従動ローラ33とは、ともに用紙Pの記録面と接することからインクの転着、白ヌケを防止する為に外周に歯を有する歯付きローラによって成されている。しかしその反面、記録面に僅かに点状の通過跡が残る場合もあり、特に第2従動ローラ35と第3従動ローラ33との主走査方向位置が、図13(A)−1に示す様に一致していると、図13(A)−2の破線で囲った部分に示すように前記通過跡が連なって形成されてしまい、前記通過跡が目立ち易くなる虞がある。
そこで、本実施形態では図13(B)−1に示す様に第2従動ローラ35と第3従動ローラ33との主走査方向位置が一致しない様に両ローラを配置している。従ってこれにより、図13(B)−2に示すように第2従動ローラ35によって形成される通過跡と第3従動ローラ33によって形成される通過跡とが連なることなく分散され、通過跡が目立ち易くなるといった問題を解消することが可能となる。
続いて、PGをより一層均一なものとする手段について説明する。
用紙Pがインク滴を吸収して膨潤した際に、主走査方向に不規則な振幅の波打ち現象が発生するとPGが不均一となって記録品質が低下したりヘッド擦れを招く虞がある。そこで上述した様に、プラテン面65cに、副走査方向に延びるリブ(65a、65b)を主走査方向に所定の間隔を置いて複数形成して、主走査方向に一定振幅のコックリング(山部と谷部)を形成する様に構成しているが、図12において符号P’で示すように隣り合う2つのリブの間に用紙Pが必要以上に落ち込む(谷部が深くなる)とPGが不均一となり、記録品質が低下する。また、記録ヘッド100からインク滴を吐出することによってインクミストが発生するが、このインクミストがプラテン面65cに付着すると、谷部がプラテン面65cと接した際に用紙Pの裏面を汚損する虞がある。尚、本実施形態では縁無し印刷を行う構成とはなっていないが、用紙Pの端部から外れた部分にもインク滴を吐出することによって縁無し印刷を行う構成においてはより一層多くのインクミストが発生し、上記汚損の問題が生じ易くなる。
加えて、用紙Pの第1面(おもて面)のみにインクジェット記録を行う場合は、第2面(うら面)がインク滴によって汚損されても、例えばコート層を有する厚手の専用紙の第2面に僅かにインクが付着した場合等、第1面の記録品質に与える影響が小さい場合もあり得るが、本実施形態の様に用紙反転部4を備えることによって第1面に加えて第2面に記録を行う場合には、第1面記録時の第2面の汚損は致命的な問題となる。同様に、第2面記録時に第1面が汚損されると、第1面の記録品質を著しく低下させてしまうことになる。
そこで、本実施形態においては、図4、図9、図12に示すように、隣り合う二つのリブ65b、65bの間に、プラテン65において記録ヘッド100と対向する面即ちプラテン面65cからの突出高さがリブ65bよりも低い、副走査方向に延びる補助リブ65dが設けられている。従ってこれにより、特に図12に示すように隣り合う2つのリブ65b、65bの間において、用紙Pに形成された谷部(図12において符号Vで示す部分)が補助リブ65dによって支持されることとなり、谷部の落ち込みの程度が小さくなってPGが均一化され、記録品質の低下を防止することができるとともに、谷部がプラテン面65cに接触せず、記録面に対して反対側の面の汚損を防止することができる。
また、本実施形態では隣り合う2つのリブ65b、65bの間に補助リブ65dが複数(本実施形態では2つ)設けられているので、谷部が均一に支持され、コックリング(特に、谷部の形状)をより均一な形状にすることができ、より確実に記録品質の低下を防止することができる。
尚、本実施形態では隣り合う2つのリブ65b、65bの間に補助リブ65dを設けることで谷部を支持する様に構成したが、プラテン面65cへの接触を防止できる接触防止手段であれば、どの様な構成であっても構わない。例えば、隣り合う2つのリブ65b、65bの間に複数の突起を設け、これによってプラテン面65cへの谷部の接触を防止することができる。
更に、谷部を支持する支持手段であればどの様なものであっても構わない。例えば、上述の様に隣り合う2つのリブ65b、65bの間に複数の突起を設け、これによって谷部を支持しても良いし、その他用紙Pに形成された谷部と面接触以外の手段によって接触し、そして支持することができるものであれば、どの様なものでも構わない。
1 インクジェットプリンタ、1a 装置本体、2 給紙部、3 オプション給紙ユニット、4 反転部、5 フェイスダウン(Fd)排出部、6 フェイスアップ(Fu)排出部、11 記録部、28 第1駆動ローラ、29 第1従動ローラ、32 第2駆動ローラ、33 第2従動ローラ、35 補助ローラ、36 第3駆動ローラ、37 第3従動ローラ、65 プラテン、65a 第1リブ、65b 第2リブ、65c プラテン面、65d 補助リブ、82 押圧部材、82a 押圧部、83 接触ローラ、100 インクジェット記録ヘッド、500 Fd排出口、600 Fu排出口、P 印刷用紙