JP4752173B2 - 微小流路構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学反応あるいは微小液滴生成を行なう複数の微小流路を有する微小流路構造体において、前記複数の微小流路に均一に流体を分配する微小流路形状を有する微小流路構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、数cm角のガラス基板上に長さが数cm程度で、幅と深さがサブμmから数百μmの微小流路をを有する微小流路構造体を用い、流体を微小流路へ導入することにより化学反応あるいは微小液滴生成を行う研究が注目されている。このような微小流路は、微小空間の短い分子間距離および大きな比界面積の効果により、効率の良い化学反応を行なう事ができる。また、界面張力の異なる2種類の液体を、交差部分が存在する流路に導入することにより極めて粒径が均一な微小液滴を生成することができる。
【0003】
このような微小空間の特性を生かしたまま、微小流路での化学反応、微小液滴を工業生産に適用しようとする試みも行われている。この場合、微小空間の小ささ故に、単一の微小流路では、単位時間当りの生成量が少なくならざるを得ないが、多数の微小流路を並列に配置する事ができれば、前記微小流路の特性を生かしたまま単位時間当たりの生成量を増加させる事ができる。例えば、1本の微小流路を有する微小流路基板を、反応溶液の入り口や反応生成物の出口などの共通部分を貫通した縦穴でつないで積層することなどが試みられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このように、微小空間の特徴を生かしたまま、大量に化学合成や微小液滴生成を行なう場合には、最小単位である微小流路の集積度を平面的に高める、あるいは立体的に積層することで可能であると言われているが、同時に2本以上の微小流路、たとえば平面的あるいは立体的に配置された微小流路へ均一に流体を分配することは、従来非常に困難であった。
【非特許文献1】
菊谷ら、「パイルアップマイクロリアクターによる高収量マイクロチャンネル内合成」、第3回化学とマイクロシステム研究会公演予稿集、9頁、2001年5月発行
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来の実状に鑑みて提案されたものであり、微小流路構造体に平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を分配することが可能となり、さらに化学反応あるいは微小液滴生成を効率的に行なうことができる微小流路構造体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するものとして、2以上の流体を導入するための導入口及びこれに連通する導入流路と、前記導入流路より導入された流体が合流する合流部と、前記合流部より流体を排出させるための排出口に至るまでの処理流路と、を有した構造体であって、前記処理流路には流路断面積が周期的に増減している部分を有する微小流路構造体とすることで、上記の従来技術による課題を解決することができ、遂に本発明を完成することができた。
【0007】
さらに本発明は、このような構造体の内でも、導入流路が導入口より2以上に分岐していることでより均一に流体を送液できること、流路配置において所定の基線に対し対称構造とすることでその均一送液性に優れること、導入流路のいずれにも処理流路中の断面積の最小部よりも狭い断面積を有する部分を一部あるいは全体に有していることで流体の合流部分における異物等の混入による流路形状変化や目詰まりを回避することができること、また、導入流路と処理流路とが交差する部分の流路配置構造を、導入流路二本が交差したY字構造、一本の流体導入流路の両側に別の流体が送液される二本の導入流路が挟むような構造をとる両側Y字構造、あるいは一本の流体導入流路の両側に別の流体が送液される二本の導入流路が別の合流部を有するような構造をとる両側Y字状構造、といったような各種のY字状構造とすることで、その交差角度を変動させて液滴の粒径や化学反応効率を制御することができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明の微小流路構造体は、2以上の流体を導入するための導入口及びこれに連通する導入流路と、前記導入流路より導入された流体が合流する合流部と、前記合流部より流体を排出させるための排出口に至るまでの処理流路と、を有した構造体であって、前記処理流路には流路断面積が周期的に増減している部分を有すること、あるいは、2以上の流体を導入するための導入口及びこれに連通する導入流路と、前記導入流路より導入された流体が合流する合流部と、前記合流部より流体を排出させるための排出口に至るまでの処理流路と、を有した構造体であって、前記導入流路が導入口より2以上に分岐しており、かつ、前記導入流路のいずれにも前記処理流路中の断面積の最小部よりも狭い断面積を有する部分を有していることを特徴とする微小流路構造体である。
【0009】
ここで、本発明に用いられる2以上の流体とは、液滴を生成させる場合には、水と油のような、互いに実質的に相溶性がない流体である液状物であり、本発明の微小流路構造体中の流路を送液できるものであれば特に制限されず、さらに液滴を形成させることができればその成分は特に制限されない。一方、化学反応を行う場合には、反応物を一方あるいは両方に含むものであり、これらは微小な粉末を含むようなスラリー状のものや、流体に相溶性のない液滴を含むものであっても差し支えない。
【0010】
本発明の微小流路構造体中の処理流路には流路断面積が周期的に増減している部分が備わっているが、このような構造を有した流路構成により、本発明の目的である、均一送液を達成できるものである。
【0011】
また、本発明の微小流路構造体は、上記した2以上の流体を導入するための導入口及びこれに連通する導入流路、導入流路より導入された流体が合流する合流部、合流部より流体を排出させるための排出口、合流部より流体を排出させるための排出口に至るまでに備えられる流路であって、液滴の生成や、化学反応を効率的に行うための処理流路を有したものであるが、これらの詳細は以下に図面を使って説明する。
【0012】
図1に本発明の微小流路構造体の一例を示す。この微小流路構造体は、微小流路基板(1)上に、第一の流体の導入口(2)から等価な2つの微小流路(4)及び(5)が、また、第二の流体の導入口(3)から等価な2つの微小流路(7)及び(8)が、形成されている。このように導入流路が導入口より2以上に分岐していることで、導入口より導入され、微小流路構造体内の流路を送液される流体をより均一に送液することができる。そして、(2)、(3)までは第一の流体、および第二の流体をそれぞれの微小流路へ供給するため、共通の流路または構造となっている。
【0013】
第一の流体を導入するための導入口(2)から、それぞれ等価な流路へ2本に分かれた流路(4)と(5)とが交差する交差部(6)が形成されている。また、第二の流体を導入するための導入口(3)から、それぞれ等価な流路へ2本に分かれた流路(7)と(8)とが交差する交差部(9)が形成され、さらに第一の流体と第二の流体が合流する合流部(10)が形成されている。合流部(10)から流路(11)は化学反応を行う場あるいは微小液滴が生成する場である。
【0014】
第一の流体の導入口(2)から合流部(10)までと、第二の流体の導入口(3)から合流部(10)までとは、流路(11)およびその外挿線からなるX−X’の線、すなわち所定の基線に対し、対称的となる構造を有する。このような対称構造を有した流路構成とすることで、送液される流体をより均一に送液することができる。
【0015】
図1中、流路(4)、(5)、(7)、(8)の合流部(10)寄りの部分には、それぞれ、流路(4’)、(5’)、(7’)、(8’)として示されるような、液滴生成や化学反応を行わせるための処理流路(11)中の断面積の最小部よりも狭い断面積を有する部分を有している。このような狭い部分は、図1中の流路(4’)、(5’)、(7’)、(8’)の一部断面として示されるA−A’断面及びB−B’断面と、合流部(6)あるいは(9)から合流部(10)までの流路の断面であるC−C’を比較すればわかるものである。このような狭い部分を設けるのは、通常、微小流路径以上の夾雑物が微小流路に進入するのを防ぐために微小流路以下のメッシュでフィルタリングするが、繊維状の不純物がごくまれに通過したり、共通流路内で発生した固形物が、微小流路内に進入し、均一な送液を妨げる場合があり、微小流路の上流側に細いところを設けることによりこの目詰まりなどを防ぐことが出来るからである。また、導入口(2)、(3)より流路が2本以上あることにより、十分な流体流量が確保出来るからである。
【0016】
また、流路(11)は周期的に流路断面積が増減するような部分が設けてある。このような周期的な面積の増減は、流路の幅や深さなどによって制御され、流路の幅による増減は、例えばエッチング前のマスク図に周期的に作製しておくことによって幅を制御でき、深さによる増減は、例えば、湿式エッチングにおいては波線状の流路マスクを作製し、点がそれぞれ連結する程度までエッチングしたとき、深さに増減を与えることができ、また、機械加工や2重のエッチング処理などによっても流路部分の溝幅の増減を制御することができる。また、流路の角度、幅、周期や長さは目的の化学処理あるいは液滴を生成させることが出来れば特に限定されない。
【0017】
このような周期的な面積の増減を有する流路としては、図1(a)の流路(11)に示され、また、D−D’断面、E−E’断面にそれぞれ対応する断面図として図1(d)、図1(e)のような構造となっている。図1(d)、図1(e)では、流路(11)中の周期的な面積の増減を有する流路の内、D−D’断面相当部分が極小的に断面積が小さくなる部分であり、E−E’断面相当部分が極大的に断面積が大きくなる部分であり、流路(11)においては、断面積の変動が周期的となるような構造を呈しているのである。
【0018】
さらに具体的には、このような微小流路の片側、両側、底面などに関係なく流路断面積を増減すればよい。このような構造を有する流路において液滴を生成させる場合には、流体の流れ方向に垂直な壁を形成するような構造でないことが望ましい。これは、流路中に鋭角となるような部分がある場合には液滴が損傷を受けたり破壊される可能性があるためである。
【0019】
また、流路(11)の上流部分となる、導入口(2)より合流部(6)、(3)より合流部(6)の流路には、(4’)、(5’)、(7’)、(8’)に示されるような、一部もしくは複数箇所、あるいは全部にわたり、流路(11)の最小となる流路断面積以下の狭い部分があればよく、その数は何本でも良い。
【0020】
また、導入された2以上の流体が合流する合流部近傍における流路の配置としては、図7に示すように、上記したように導入流路二本が交差したY字構造(図7(a))、一本の流体導入流路の両側に別の流体が送液される二本の導入流路が挟むような構造をとる両側Y字構造(図7(b))、あるいは一本の流体導入流路の両側に別の流体が送液される二本の導入流路が別の合流部を有するような構造をとる両側Y字状構造(図7(c))、といったような各種のY字状構造とすることで、その交差角度を変動させて液滴の粒径や化学反応効率を制御することができる。
【0021】
以上のような微小流路を有する微小流路基板は、例えばガラスや石英、セラミック、シリコン、あるいは金属や樹脂等の基板材料を、機械加工やレーザー加工、エッチングなどにより直接加工する事によって製作できる。また、基板材料がセラミックや樹脂の場合は、流路形状を有する金属等の鋳型を用いて成形することで製作することもできる。また、薄膜シートであれば、打ち抜きやX線リソグラフィーによって目的の流路形状に穴を空け、貫通口のある基板やシートと圧着して微小流路を形成しても良い。なお一般的に、前記微小流路基板は、流体導入口、流体排出口、および各微小流路の排出口に対応する位置に直径数mm程度の小穴を設けたカバー体と積層一体化させた微小流路構造体として使用する。カバー体と微小流路基板を接合したり、図3に示すように、複数の微小流路基板を積層一体化させるときの接合方法としては、基板材料がセラミックスや金属の場合は、ハンダ付けや接着剤を用いたり、基板材料がガラスや石英、樹脂の場合は、百度〜千数百度の高温下で荷重をかけて熱接合させたり、基板材料がシリコンの場合は洗浄により表面を活性化させて常温で接合させるなどそれぞれの基板材料に適した接合方法が用いられる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
(実施例1)
第1の実施例として、図2に示すような2本の流路が並列に並んでいる微小流路構造体を製作した。形成した微小流路の図2のF−F’断面、G−G’断面の流路幅と深さはそれぞれ幅72μmと深さ33μm、H−H’断面の流路幅は82μm〜150μmの波状の形状が周期120μmで10回繰り返している部分を有している。第一の流体の導入口(2)及び第二の流体の導入口(3)から合流部(10a)、(10b)に至る流路は、図2にY−Y’で示される線に対し、対称的となる構造を有する。
【0023】
流体導入口(2)(3)からの流体が合流する部分(10a)、(10b)での微小流路は50°の角度(図2中、θa、θbで示された部分)で合流させた。このような構造を持つ微小流路基板(1)は、70mm×38mm×1mm(厚さ)のパイレックス(登録商標)基板に一般的なフォトリソグラフィーとウエットエッチングにより形成して微小流路基板とした。
【0024】
この2つの流体導入口(2)(3)と2つの流体排出口(12)(13)の位置に直径1.0mmの貫通した小穴を機械的加工手段により設けた同サイズのパイレックス(登録商標)基板をカバー体(14)として熱融着により接合することで図3のように微小流路(1)を密閉した。
【0025】
この微小流路の流体導入口(2)から第一の流体として純水を送液し、流体導入口(3)から第二の流体としてドデカンを送液した。送液は図4に示すように、マイクロシリンジ(15)(16)に注入し、マイクロシリンジポンプ(17)で送液を行った。
【0026】
送液流速は(2)(3)からともに8μl/minである。送液流速が共に安定した状態で、(12)と(13)から排出液をそれぞれ捕集したところ、(12)からドデカンが4.0μl/min、純水が3.9μl/minであった。また、(13)からドデカンが3.8μl/min、純水が4.1μl/minであった。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
(比較例1)
第1の比較例として、図5に示すような2本の流路が並列に並んでいる微小流路構造体を製作した。形成した微小流路の図5のI−I’断面、J−J’断面の流路幅と深さはそれぞれ幅71μmと深さ31μm、K−K’断面の流路幅は71μmと深さ31μmである。第一の流体の導入口(2)及び第二の流体の導入口(3)から合流部(10a)、(10b)に至る流路は、図2にZ−Z’で示される線に対し、対称的となる構造を有する。
【0028】
流体導入口(2)(3)からの流体が合流する部分(10a)、(10b)での微小流路は50°の角度(図5中、θa’、θb’で示された部分)で合流させた。このような構造を持つ微小流路基板(1)は、70mm×38mm×1mm(厚さ)のパイレックス(登録商標)基板に一般的なフォトリソグラフィーとウエットエッチングにより形成して微小流路基板とし、2つの流体導入口(2)(3)と2つの流体排出口(12)(13)の位置に直径1.0mmの貫通した小穴を機械的加工手段により設けた同サイズのパイレックス(登録商標)基板をカバー体(14)として熱融着により接合することで基板に形成された微小流路が図5のものである以外は図6のように微小流路(1)を密閉した。
【0029】
この微小流路の流体導入口(2)から第一の流体として純水を送液し、流体導入口(3)から第二の流体としてドデカンを送液した。送液は図4に示すように、マイクロシリンジ(15)(16)に注入し、マイクロシリンジポンプ(17)で送液を行った。送液流速は(2)(3)からともに8μl/minである。送液流速が共に安定した状態で、(12)と(13)から排出液をそれぞれ捕集したところ、(12)からドデカンが4.7μl/min、純水が3.1μl/minであった。また、(13)からドデカンが3.3μl/min、純水が4.9μl/minであり、各流路での流体の流量に大きな差があった。結果を表1に示す。
【0030】
実施例1においては排出口(12)及び(13)のいずれにおいても、導入されたドデカン及び純水はほぼ同じ流速となり均一に送液されていることが分かる。これに対し比較例1においては流速に変動が認められ、均一に送液できなかった。このことから、流体を均一に送液するには実施例1に用いた微小流路構造体を用いることが有用であることが分かり、化学反応に用いる場合には2以上の反応液を均一に接触させることができるため、混合比が一定となって混合液のpHなど反応条件を制御することができ、反応収率の向上等が見込まれる。
(実施例2)
第2の実施例として、実施例1と同じ微小流路構造体を用いて、流体導入口(2)から第一の流体としてポリビニルアルコール2.0%水溶液を送液し、流体導入口(3)から第二の流体として酢酸ブチルを送液した。送液は図4に示すように、マイクロシリンジ(15)、(16)に注入し、マイクロシリンジポンプ(17)で送液を行った。送液流速は(2)からは20μl/min、(3)は10μl/minであった。送液流速が共に安定した状態で、合流部(10a)、(10b)で液滴生成を確認した。(12)と(13)より排出された液滴を観察するとそれぞれ平均粒子径39μm、分散度6.5%と平均粒子径38μm、分散度7.2%(分散度=標準偏差/平均粒子径)の均一な粒子であった。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
(比較例2)
第2の比較例として、比較例1と同じ微小流路基板を用いて、流体導入口(2)から第一の流体としてポリビニルアルコール2.0%水溶液を送液し、流体導入口(3)から第二の流体として酢酸ブチルを送液した。送液は図4に示すように、マイクロシリンジ(15)、(16)に注入し、マイクロシリンジポンプ(17)で送液を行った。送液流速は(2)からは20μl/min、(3)は10μl/minである。送液流速が共に安定した状態で、一方の合流部(10a)で液滴生成を確認、もう一方の合流部(10b)では液滴生成せず層流となった。(12)より排出された液滴を観察するとそれぞれ平均粒子径32μm、分散度10.4%、(13)より排出された液滴は粒子径500μm超の大きな液滴が生成した。
【0032】
実施例2において排出口(12)及び(13)より排出された液滴は、導入された流体の送液速度が均一であるため分散性が極めて小さい均一な粒子径を有した液滴が得られることが分かる。これに対し比較例2においては流速に変動が認められ、排出口(12)から排出される液滴のばらつきは大きく、排出口(13)から排出される液滴は巨大なものとなってしまっており均一に送液できなかった。このことから、流体を均一に送液するには実施例2に用いた微小流路構造体を用いることが有用であり、均一な液滴を生成させるためには重要である。殊に液滴生成時に発生することがある微細な液滴の発生を極力抑えたり、逆に流量比が大きくずれ、層流となって大きな液滴となるのを抑えることできることが分かる。
(実施例3)
第3の実施例として、図2微小流路の内、処理流路(11a,11b)に断面積の増減がない流路を有する構造となる図8のような微小流路を作製した。形成した微小流路の図8のF−F’断面、G−G’断面の流路幅と深さはそれぞれ幅120μmと深さ55μm、H−H’断面の流路幅は150μmと深さ55μmである。第一の流体の導入口(2)及び第二の流体の導入口(3)から合流部(10a)、(10b)に至る流路は、図8にY−Y’で示される線に対し、対称的となる構造を有する。
【0033】
実施例1と同じ微小流路構造体を用いて、流体導入口(2)から第一の流体としてポリビニルアルコール3.0%水溶液を送液し、流体導入口(3)から第二の流体としてデカンを送液した。送液は図4に示すように、マイクロシリンジ(15)、(16)に注入し、マイクロシリンジポンプ(17)で送液を行った。送液流速は(2)からは40μl/min、(3)は8μl/minであった。送液に用いた溶液は、5C濾紙(直径9cm)と共にスターラーで10分攪拌したものを用いた。送液流速が共に安定した状態で、合流部(10a)、(10b)で液滴生成を確認した。(12)と(13)より排出された液滴を観察するとそれぞれ平均粒子径77μm、分散度5.3%と平均粒子径68μm、分散度4.1%(分散度=標準偏差/平均粒子径)の均一な粒子であった。結果を表3に示す。また微小流路を観察すると、(4b)F−F’部分、(7b)G−G’部分に繊維状の異物が挟まっていた。
【0034】
【表3】
(比較例3)
第2の比較例として、図5のような2本の流路が並列に並んでいる微小流路構造体を製作した。形成した微小流路の図5のI−I’断面、J−J’断面の流路幅と深さはそれぞれ幅152μmと深さ56μm、K−K’断面の流路幅は152μmと深さ56μmである。送液は実施例3と同様に行った。送液流速が共に安定した状態で、一方の合流部(10a)、(10b)で液滴生成を確認した。排出口(12)では平均粒子径が小さく、分散度の大きな多分散な液滴が生成した。合流部(10a)を観察すると、繊維状の
異物が流路(7)から(10a)にかけて挟まっていた。
【0035】
実施例3と比較例3とを比較すると、実施例3において排出口(12)及び(13)より排出された液滴は、導入された流体が、処理流路上流部に設けられた2本以上に分岐した流路の途中にトラップされ、各流体の送液の乱れを最小限にすると共に各合流部での流れの乱れを防ぐことにより生成する液滴の大きさを均一にすることが出来ることがわかる。特に合流部での異物挟み込みによる流体の乱れを防ぐことにより合流流体同士の安定送液や、均一液滴の生成に効果があることが分かる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の微小流路構造体は、流体を導入するための導入口及び流体を排出するための排出口を備え、かつ、基板上に前記導入口及び排出口と連通する共通チューブまたは、共通流路を有した構造体であって、前記流体を化学処理するあるいは前記流体より液滴を生成させるための微小流路部分の一部の断面積が周期的に増減し、前記流体を化学処理するあるいは前記流体より液滴を生成させるための微小流路部分の上流部の微小流路の一部が、液滴を排出する流路より細くなっている部分を有し、またそれぞれの導入口には共通流路から少なくとも2つ以上の別の流路を経由して一つの微小流路へ流体を導入することで微小流路構造体に平面的あるいは立体的に配置された複数の微小流路に均一に流体を分配することが可能となる。
【0037】
また本発明の微小流路構造体を、2以上の流体を導入するための導入口及びこれに連通する導入流路と、導入流路より導入された流体が合流する合流部と、合流部より流体を排出させるための排出口に至るまでの処理流路と、を有した構造体であって、導入流路が導入口より2以上に分岐しており、かつ、導入流路のいずれにも処理流路中の断面積の最小部よりも狭い断面積を有する部分を有する微小流路構造体とすることで、均一に流体を送液でき、流体の合流部分における異物等の混入による流路形状変化や目詰まりを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明における最も基本的な微小流路形状を示した概念図であり、(b)は図1(a)のA−A’又はB−B’断面、(c)はC−C’断面であり、(d)は処理流路中の流路断面積が周期的に増減している部分の内の狭い部分であるD−D’断面、(e)は広い部分であるE−E’断面を示す図である。
【図2】実施例1および実施例2に示した微小流路形状の概略図であり、F−F’断面部およびG−G’断面部は、それぞれ、導入口(2)、(3)からの導入流路中に存在する狭小部分であり、H−H’断面部は、処理流路中の流路断面積が周期的に増減している部分である。
【図3】実施例1および実施例2に示した微小流路基板上に貫通口を有する蓋基板を有した流路の概略図である。
【図4】微小流路による液滴生成状況を示す概略図である。
【図5】比較例1および比較例2に示した微小流路形状の概略図である。
【図6】比較例1および比較例2に示した微小流路基板上に貫通口を有する蓋基板を有した流路の概略図である。
【図7】流路の交差する合流部近傍の概念図であり、(a)はY字構造、(b)両側Y字構造(両側剪断構造)、(c)両側Y字状構造(ずらし構造)である。
【図8】実施例3に示した微小流路形状の概略図であり、F−F’断面部およびG−G’断面部は、それぞれ、導入口(2)、(3)からの導入流路中に存在する狭小部分である。
【符号の説明】
1:微小流路基板
2:第一の流体の導入口
3:第二の流体の導入口
4、4a、4b、5、5a、5b、7、7a、7b、8、8a、8b:導入口と連通する流路
6、6a、6b、9、9a、9b:導入流路の交差する交差部
10、10a、10b:第一の流体と第二の流体の合流部
11、11a、11b:流体を化学処理するあるいは前記流体より液滴を生成させるため処理流路
12、13:排出口
14:カバー体(蓋)
15:第一の流体
16:第二の流体
Claims (3)
- 2以上の流体を導入するための導入口及びこれに連通する導入流路と、前記導入流路より導入された流体が合流する合流部と、前記合流部より流体を排出させるための排出口に至るまでの処理流路と、を有した構造体であって、前記導入流路が導入口よりそれぞれ等価な流路へ2以上に分岐しかつ合流部までに交差して交差部を形成しており、この分岐した導入流路のいずれにも、前記処理流路中の断面積の最小部よりも狭い断面積を有する部分を有しており、前記処理流路には流路断面積が周期的に増減している部分を有することを特徴とする微小流路構造体。
- 前記微小流路構造体における流路配置において、所定の基線に対し対称構造となっていることを特徴とする請求項1記載の微小流路構造体。
- 前記合流部に連通する導入流路及び処理流路における配置が、Y字状構造となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の微小流路構造体。
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