JP4744200B2 - 平滑化した造形端面を有する立体造形物 - Google Patents
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Description
多数の硬化樹脂層の積み重ねよりなるこの立体造形物では、各硬化樹脂層(例えばL1,L2,L3,L4,L5)における造形端部、すなわち光硬化性樹脂組成物よりなる造形面において光が照射されない部分(樹脂組成物の硬化が行われない部分)と接する造形端部(例えば層L1のL1e、層L2のL2e、層L3のL3e、層L4のL4e、層L5のL5e)では、図4に示すように、厚さが硬化樹脂層の内側部分と異なっていたり、端部形状が設計どおりにきちんと形成されにくい。その結果、そのような多数の造形端部の積み重ねからなる立体造形物の造形端面(図4におけるZ方向の面Sz)は、多数の微細な凹凸部を有する面となり、平滑性の不足したものになり易い。
さらに、本発明の目的は、複数の硬化樹脂層が積み重なった前記立体造形物が、透明な光硬化樹脂から形成されている場合に、その造形端面の微細な凹凸部の凹凸度合が従来よりも低減して平滑化されていて、該造形端面における光の乱反射が防止または抑制されて、立体造形物全体の透明性が向上した立体造形物、その製造方法およびそのための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することである。
さらに、本発明者らは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物よりなる、硬化樹脂層の形成時に硬化樹脂層の造形端部に偏析する成分と共に、該偏析する成分とは異なるカチオン重合性有機化合物、ラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いると、また該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にオキセタンモノアルコール化合物および/またはオキセタン環を有する(メタ)アクリレート系化合物を含有させると、前記化合物および/またはそれに由来する物質の偏析により造形端面の凹凸度合が低減して造形端面が平滑化された立体造形物が円滑に得られること、立体造形時の造形速度が向上すること、更に得られる立体造形物の力学的特性、造形精度などが良好になることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
(1) 下記の(A)〜(E);
(A) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有する(メタ)アクリレート系化合物;
(B) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有するエポキシ化合物;
(C) ヒンダードフェノール系化合物;
(D) アルキル基の炭素数が8以上であるジアルキルフタレート系化合物;および、
(E) アルキル基の炭素数が8以上であるトリアルキルトリメリテート系化合物;
から選ばれる1種以上の化合物を1〜10質量%の割合で含有し、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるカチオン重合性有機化合物、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有し、更にオキセタンモノアルコールおよび/またはオキセタン環を有する(メタ)アクリレート系化合物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して形成した所定の形状パターンを有する硬化樹脂層が複数層積み重なった立体造形物であって、該立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析により、その凹凸度合が低減して平滑化していることを特徴とする立体造形物である。
(2) 立体造形物の造形端面の凹凸部の全部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析により、その凹凸度合が低減して平滑化している前記(1)の立体造形物である。
(3) 立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析により、その表面粗度Raが4000Å以下になっている前記(1)または(2)の立体造形物である。
(4) 下記の(A)〜(E);
(A) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有する(メタ)アクリレート系化合物;
(B) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有するエポキシ化合物;
(C) ヒンダードフェノール系化合物;
(D) アルキル基の炭素数が8以上であるジアルキルフタレート系化合物;および、
(E) アルキル基の炭素数が8以上であるトリアルキルトリメリテート系化合物;
から選ばれる1種以上の化合物を1〜10質量%の割合で含有し、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるカチオン重合性有機化合物、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有し、更にオキセタンモノアルコールおよび/またはオキセタン環を有する(メタ)アクリレート系化合物を含有する、硬化樹脂層が複数層積み重なった立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれている前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析によりその凹凸度合が低減して平滑化している立体造形物を製造するための、立体造形用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
(5) 前記(4)の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて造形面を形成し、該造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成させた後、該硬化樹脂層の上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を施して造形面を形成し、その造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成する造形操作を繰り返すことを特徴とする、複数の硬化樹脂層が積み重なりからなり、造形端面の凹凸部の少なくとも一部で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/または前記成分に由来する物質の偏析により、その凹凸度合が低減して平滑化している立体造形物の製造方法である。
さらに、本発明の立体造形物が透明な硬化樹脂から形成されている場合は、前記成分および/またはそれに由来する物質の偏析によって立体造形物の造形端面が平滑化したことにより、該造形端面が立体造形物の外周面(外壁)にある場合だけでなく、中空部などの内壁(内周面)として立体造形物の内側にある場合にも、造形端面での光の乱反射が防止されて、立体造形物全体が透明になる。
本発明の立体造形物は、その造形端面が上記のように偏析によって平滑化しているため、立体造形物の造形端面を平滑化するための研磨処理のような手間のかかる後処理を施す必要がない。また、研磨処理などを行う場合には、従来よりも簡単に済ませることができる。
本発明の立体造形物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して形成した所定の形状パターンを有する硬化樹脂層が複数層積み重なった立体造形物であって、該立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/または前記成分に由来する物質の偏析により、立体造形物の造形端面の凹凸部が埋められてその凹凸度合が低減して平滑化している。
ここで、本明細書でいう「立体造形物の造形端面」とは、複数の硬化樹脂層の積み重ねよりなる立体造形物において、所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層における造形端部、すなわち活性エネルギー線硬化性樹脂組成物よりなる造形面において光が照射されず樹脂組成物が硬化していない部分と接する造形端部の積み重なりから形成されている立体造形物における造形端面をいう。
また、本発明における「立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/または前記成分に由来する物質が偏析している」とは、立体造形物の造形端面の凹凸部の一部または全部で、前記成分および/または該成分に由来する物質(例えば該成分の反応生成物など)が、立体造形物の他の箇所(例えば立体造形物の内部など)よりも多い量(高濃度)で存在または顕在していることを意味する。
図1〜図3は本発明の立体造形物の例を模式的に示したものであり、図1〜図3における層L1のL1e、層L2のL2e、層L3のL3e、層L4のL4e、層L5のL5e、・・・図3における層L1のL1e’、層L2のL2e’、層L3のL3e’、層L4のL4e’、層L5のL5e’、・・・・が各硬化樹脂層における造形端部に相当する。また、前記した造形端部L1e、L2e、L3e、L4e、L5e、・・・の積み重なりにより形成される面(Sz)および造形端部L1e’、L2e’、L3e’、L4e’、L5e’、・・・の積み重なりにより形成される面(Sz’)が本発明でいう立体造形物の造形端面である。そのことは、図4〜図6を参照して前述した立体造形物(従来の立体造形物に相当)の場合と同じである。
図1〜図6にみるように、立体造形物の形状や構造に応じて、立体造形物の外周面(外壁面)にのみ造形端面がある場合(図1、図2、図4および図5)もあれば、立体造形物の外周面(外壁面)と内部(内周面、内壁面)の両方にある場合がある(図3と図6)。
本発明の立体造形物では、立体造形物の造形端面の凹凸部の一部にのみ活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/または該成分に由来する物質が偏析して該一部の凹凸度合が低減して造形端面の一部が平滑化されていても、または立体造形物の造形端面の凹凸部の全部に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/または前記成分に由来する物質が偏析して造形端面全体の凹凸度合が低減して造形端面全体が平滑化されていてもよい。そのうちでも、立体造形物の造形端面の凹凸部の全体に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/または前記成分に由来する物質が偏析して、造形端面全体が平滑化していることが好ましい。
(なお、以下、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた造形端面に偏析する成分を「偏析成分」といい、造形端面に偏析した前記成分および該成分に由来する物質を総称して「偏析物」ということがある。)
(1) 本発明の立体造形物の造形端面を、X線光電子分光法(ESCA)により立体造形物の表面の組成分析を行ったところ、偏析成分を含有しない以外は組成を同じくする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて製造した立体造形物(従来の立体造形物)に比べて、造形端面での特定の元素(炭素、酸素)の濃度が高くなっていたこと;
(2) 本発明の立体造形物(造形端面の研磨処理を行っていない立体造形物)では、造形端面の表面粗度Raが、一般に4000Å以下、好ましくは3000Å以下、より好ましくは2000Å以下、更に好ましくは1000Å以下であるのに対して、偏析のない従来の立体造形物(造形端面の研磨処理を行う前の従来の立体造形物)における造形端面の表面粗度Raは通常5000Å〜10000Åであって、本発明の立体造形物の造形端面の表面粗度Raが従来の立体造形物の造形端面の表面粗度Raよりも小さくなっていること;
(3) 本発明の立体造形物の造形端面の透明度が、従来の立体造形物の造形端面の透明度に比べて明らかに高いこと;
などにより確認される。
ここで、本明細書でいう造形端面の表面粗度Raとは、JIS B0601に準じて求めた表面粗度Ra(すなわち「算術平均粗さRa」)をいい、その具体的な測定方法などは以下の実施例の項に記載するとおりである。
本発明の立体造形物において、その造形端面の凹凸部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/またはそれに由来する物質の偏析が生じた理由は明確ではないが、前記成分が各硬化樹脂層を形成するための活性エネルギー線の照射時に各硬化樹脂層の造形端部にマイグレートしたことに起因するものと推測される。
本発明における立体造形物の造形端面に偏析する成分は、立体造形物を製造するための造形工程で、立体造形物の造形端面に偏析し且つ造形して得られた立体造形物の造形端面から容易に分離または脱落しない、活性エネルギー線の照射によって反応する基を有する化合物および活性エネルギー線の照射によって反応する基を持たない化合物の1種または2種以上および/または前記化合物に由来する物質である。
(A) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有する(メタ)アクリレート系化合物[以下「(メタ)アクリレート系化合物(A)」という];
(B) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有するエポキシ化合物[以下「エポキシ化合物(B)」という];
(C) ヒンダードフェノール系化合物[以下「ヒンダードフェノール系化合物(C)」という];
(D) アルキル基の炭素数が8以上であるジアルキルフタレート系化合物[以下「ジアルキルフタレート系化合物(D)」という];および、
(E) アルキル基の炭素数が8以上であるトリアルキルトリメリテート系化合物[以下「トリアルキルトリメリテート系化合物(E)」という];
から選ばれる1種以上の化合物を偏析成分として含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて立体造形物を製造すると、該(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または該化合物に由来する物質が、立体造形物の造形端面における凹凸部の少なくとも一部に偏析してその凹凸度合を低減させ、造形端面の平滑化が良好になされる。
ここで、(メタ)アクリレート系化合物(A)は、前記「分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基」および「分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルケニル基」を、(メタ)アクリル酸の長鎖アルキルエステルまたは長鎖アルケニルエステルの形態で有していてもよいしまたはその他の形態(例えば炭素数9以上の飽和または不飽和脂肪酸に由来する炭素数8以上のアルキル基またはアルケニル基の形態など)で有していてもよい。そのうちでも、(メタ)アクリレート系化合物(A)が有する前記長鎖アルキル基および/または長鎖アルケニル基は、分岐していてもよい炭素数10以上の長鎖アルキル基および/または長鎖アルケニル基であることが、(メタ)アクリレート系化合物(A)に由来する物質の造形端面での偏析が良好に行われることから好ましく用いられる。
そのうちでも、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが、立体造形物の色相、平滑性の点から好ましく用いられる。
限定されるものではないが、ジアルキルフタレート系化合物(D)の具体例としては、ジ2−エチルヘキシルフタレート、ジノルマルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジノルマルデシルフタレート、ジトリデシルフタレートなどを挙げることができる。
限定されるものではないが、トリアルキルトリメリテート系化合物(E)の具体例としては、トリ2−エチルヘキシルトリメリテート、トリノルマルオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリノルマルデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどを挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における偏析成分の含有割合は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を構成する樹脂の種類、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の組成などに応じて調整できるが、一般的には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて、1〜10質量%であり、3〜10質量%であることが好ましい。偏析成分の含有割合が少なすぎると、立体造形物の造形端面の凹凸部における偏析成分および/またはそれに由来する物質の偏析量が少なくなって、凹凸度合の低減および造形端面の平滑化が達成できにくくなる。一方、偏析成分の含有割合が多すぎると、活性エネルギー線を照射した際の硬化不良、造形精度の低下、偏析成分のブリードアウトによる立体造形物表面の汚染、洗浄性の悪化などを生ずることがある。
(a) 上記した(メタ)アクリレート系化合物(A)、エポキシ化合物(B)、ヒンダードフェノール系化合物(C)、ジアルキルフタレート系化合物(D)およびトリアルキルトリメリテート系化合物(E)の1種または2種以上よりなる造形端面に偏析する偏析成分と共に、該偏析成分とは異なるカチオン重合性有機化合物および活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物;
(b) 上記した(メタ)アクリレート系化合物(A)、エポキシ化合物(B)、ヒンダードフェノール系化合物(C)、ジアルキルフタレート系化合物(D)およびトリアルキルトリメリテート系化合物(E)の1種または2種以上よりなる造形端面に偏析する偏析成分と共に、該偏析成分とは異なるラジカル重合性有機化合物および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物;
(c) 上記した(メタ)アクリレート系化合物(A)、エポキシ化合物(B)、ヒンダードフェノール系化合物(C)、ジアルキルフタレート系化合物(D)およびトリアルキルトリメリテート系化合物(E)の1種または2種以上よりなる造形端面に偏析する偏析成分と共に、該偏析成分とは異なるカチオン重合性有機化合物、ラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物;
などを挙げることができる。
また、上記(c’)の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その全質量に基づいて、前記した化合物(A)〜(E)の1種または2種以上よりなる偏析成分を1〜10質量%、該偏析成分とは異なるカチオン重合性有機化合物を20〜80質量%、該偏析成分とは異なるラジカル重合性有機化合物を5〜60質量%、オキセタンモノアルコールおよび/またはオキセタン環を有する(メタ)アクリレート系化合物を1〜40質量%[オキセタンモノアルコールとオキセタン環を有する(メタ)アクリレート系化合物の両方を含有する場合は両者の合計]の割合で含有していることが好ましい。
そして、上記(c)および(c’)の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、組成物の粘度、反応速度、造形速度、得られる造形物の寸法精度、力学的特性などの点から、カチオン重合性有機化合物とラジカル重合性有機化合物を、カチオン重合性有機化合物:ラジカル重合性有機化合物=9:1〜1:2.5、特に8:1〜1:1.5の質量比で含有していることが好ましい。
より具体的には、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート[ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、前記したジオール、トリオール、テトラオール、ヘキサオールなどの多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
そのうちでも、アルコール類の(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応により得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
また、前記した(メタ)アクリレート化合物のうちで、メタクリレート化合物よりも、アクリレート化合物が重合速度の点から好ましく用いられる。
また、上記したポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエーテルとアクリル酸との反応により得られるポリエーテルアクリレートを挙げることができる。
また、反応速度を向上させる目的で、必要に応じて、カチオン重合開始剤と共に光増感剤、例えばベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、チオキサントンなどを用いてもよい。
また、上記の一般式(1)においてnは1〜4の整数であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(c’)は前記したオキセタンモノアルコール化合物のうちの1種または2種以上を含有することができ、入手の容易性などの点から3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンおよび/または3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンを含有することが好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた活性エネルギー線を使用して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよいし、または液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に活性エネルギー線を面状に照射して硬化樹脂層を形成してもよい。
以下の例において、造形により得られた立体造形物の造形端部の表面粗度Raおよび立体造形物の造形端面方向での透明度の測定、並びに立体造形物の造形端面における偏析について検査は次のようにして行った。
また、以下の例において「部」は質量部を示す。
以下の実施例および比較例で得られた立体造形物の造形端面の表面の粗さを、表面形状測定装置(日本真空技術株式会社製「DEKTAK3」)を使用して測定し、その測定値に基づいて、JIS B0601に準じて、造形端面の表面粗度Ra(算術平均表面粗さRa)を求めた。
以下の実施例および比較例で得られた立体造形物について、その造形端面(図1および図4における右側のSz面)に直角な横方向(図1および図4におけるX方向)から可視光線[波長500〜700nm(立体造形物が吸収しない波長)]を照射し、立体造形物を透過して立体造形物のもう一方の造形端面(図1および図4における左側のSz面)から出射した可視光線の量(エネルギー強度)を分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−2400S」)を使用して測定して、該光線の透過率(%)をもって透明度とした。
以下の実施例および比較例で得られた立体造形物の造形端面の表面の組成分析をX線光電子分光法(ESCA)によって行い(使用装置:VG Scientific 社製「ESCALAB 200−S」)、測定された炭素原子の濃度および酸素原子の濃度の少なくとも一方が、立体造形物の製造に用いた光硬化性樹脂組成物の全組成から算出される炭素原子濃度の平均値および酸素原子濃度の平均値と異なっていた場合(平均値からズレていた場合)を「偏析あり」と評価し、一方が前記平均値と同じであった場合を「偏析なし」として評価した。
(1) 水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル60部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン20部、ビス−〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート(カチオン重合開始剤)4部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステルA−9530」)10部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(ラジカル重合開始剤)3部およびラウリルアクリレート6部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、超高速光造形システム(帝人製機株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、スペクトラフィジックス社製「半導体励起固体レーザーBL6型」(出力1000mW;波長355nm)を表面に対して垂直に照射して、照射エネルギー100〜120mJ/cm2の条件下に、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間2分で光学的立体造形を行って、図1に示すような四角柱状の立体造形物(縦×横×高さ=10mm×10mm×40mm)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立体造形物について、その造形端面の表面粗度Raを上記した方法で測定したところ、789Åであった。
また、上記(2)で得られた立体造形物の造形端面と直角の方向での透明度(可視光線の透過率)を上記した方法で測定したところ、95%であった。
さらに、立体造形物の造形端面における偏析についての検査を上記した方法で行ったところ、偏析が確認された。
(1) ラウリルアクリレート6部を混合しなかった以外は、実施例1の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製し、これをしたタンクに収容した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、図1に示すような四角柱状の立体造形物(縦×横×高さ=10mm×10mm×40mm)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立体造形物について、その造形端面の表面粗度Raを上記した方法で測定したところ、4194Åであった。
また、上記(2)で得られた立体造形物の造形端面と直角の方向での透明度(可視光線の透過率)を上記した方法で測定したところ、65%であった。
また、立体造形物の造形端面における偏析についての検査を上記した方法で行ったところ、立体造形物の製造に用いた光硬化性樹脂組成物の平均値と同じ炭素原子濃度および酸素原子濃度であり、偏析が生じていなかった。
(1) 下記の表1に示す成分を表1に記載した割合で混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これをしたタンクに収容した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、図1に示すような四角柱状の立体造形物(縦×横×高さ=10mm×10mm×40mm)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立体造形物について、その造形端面の表面粗度Ra、造形端面と直角の方向での透明度(可視光線の透過率)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。また、立体造形物の造形端面における偏析についての検査を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
(1) 下記の表2に示す成分を表2に記載した割合で混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これをしたタンクに収容した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、図1に示すような四角柱状の立体造形物(縦×横×高さ=10mm×10mm×40mm)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立体造形物について、その造形端面の表面粗度Ra、造形端面と直角の方向での透明度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。また、立体造形物の造形端面における偏析についての検査を上記した方法で行ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
(1) 下記の表3に示す成分を表3に記載した割合で混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これをしたタンクに収容した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、図1に示すような四角柱状の立体造形物(縦×横×高さ=10mm×10mm×40mm)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた立体造形物について、その造形端面の表面粗度Ra、造形端面と直角の方向での透明度を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。また、立体造形物の造形端面における偏析についての検査を上記した方法で行ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
本発明の立体造形物は、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデル、複雑な熱媒回路の設計用の部品、複雑な構造の熱媒挙動の解析企画用の部品などとして有効に使用することができる。
Claims (5)
- 下記の(A)〜(E);
(A) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有する(メタ)アクリレート系化合物;
(B) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有するエポキシ化合物;
(C) ヒンダードフェノール系化合物;
(D) アルキル基の炭素数が8以上であるジアルキルフタレート系化合物;および、
(E) アルキル基の炭素数が8以上であるトリアルキルトリメリテート系化合物;
から選ばれる1種以上の化合物を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて1〜10質量%の割合で含有し、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるカチオン重合性有機化合物、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有し、更にオキセタンモノアルコールおよび/またはオキセタン環を有する(メタ)アクリレート系化合物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して形成した所定の形状パターンを有する硬化樹脂層が複数層積み重なった立体造形物であって、当該立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析により、その凹凸度合が低減して平滑化していることを特徴とする立体造形物。 - 立体造形物の造形端面の凹凸部の全部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析により、その凹凸度合が低減して平滑化している請求項1に記載の立体造形物。
- 立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析により、その表面粗度Raが4000Å以下になっている請求項1または2に記載の立体造形物。
- 下記の(A)〜(E);
(A) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有する(メタ)アクリレート系化合物;
(B) 分岐していてもよい炭素数8以上の長鎖アルキル基および長鎖アルケニル基から選ばれる基を1個以上有するエポキシ化合物;
(C) ヒンダードフェノール系化合物;
(D) アルキル基の炭素数が8以上であるジアルキルフタレート系化合物;および、
(E) アルキル基の炭素数が8以上であるトリアルキルトリメリテート系化合物;
から選ばれる1種以上の化合物を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて1〜10質量%の割合で含有し、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるカチオン重合性有機化合物、前記(A)〜(E)の化合物とは異なるラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有し、更にオキセタンモノアルコールおよび/またはオキセタン環を有する(メタ)アクリレート系化合物を含有する、硬化樹脂層が複数層積み重なった立体造形物の造形端面の凹凸部の少なくとも一部で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれている前記(A)〜(E)から選ばれる1種以上の化合物および/または当該化合物に由来する物質の偏析によりその凹凸度合が低減して平滑化している立体造形物を製造するための、立体造形用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。 - 請求項4に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて造形面を形成し、該造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成させた後、該硬化樹脂層の上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を施して造形面を形成し、その造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成する造形操作を繰り返すことを特徴とする、複数の硬化樹脂層が積み重なりからなり、造形端面の凹凸部の少なくとも一部で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれていた成分および/または前記成分に由来する物質の偏析により、その凹凸度合が低減して平滑化している立体造形物の製造方法。
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