JP4743195B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
このようなライン走査型インクジェット記録装置には、コンティニュアスインクジェット方式の記録ヘッドを使用するものと、オンデマンドインクジェット方式の記録ヘッドを使用するものがある。オンデマンド方式のインクジェット記録装置はコンティニュアス方式の記録装置に比べて記録速度では及ばないが、インクシステムが非常に簡単である等のため、普及型の高速記録装置を提供するのに適している。
特開平11−78013号公報には、オンデマンド方式のインクジェット記録装置で使用される代表的な記録ヘッドが開示されている。該記録ヘッドには、記録用紙の各主走査線に1:1で対応するように、すなわち主走査線の数だけのノズルが列状(ライン状)に形成されている。各ノズルはノズル孔を開口とするインク室を有する。そして圧電素子或いは発熱素子へ駆動電圧を印加することにより、該インク室中のインクに圧力を加え、ノズル孔からインク粒子を吐出させる。このような構成により、高速記録装置を簡便に構成できる。
しかしながら、主走査線数分のノズルを使用するため、例えば18インチ幅の記録用紙に300dpiの記録ドット密度で記録するには、5400本の主走査線が必用となる。従って、1色印刷用の記録装置でも5400個のノズルが必要となる。また、4色インクで記録するカラー記録装置においては21600個のノズルを搭載する必要がある。
オンデマンドインクジェット方式記録ヘッドでは、ノズルを高集積度で作成できるため、このような多数のノズル配置を実現することは可能である。しかし、このような多数のノズルのうち1ノズルでも故障すると、記録できない主走査線が生じてしまい、記録すべき情報が欠落してしまう致命的な問題を起こしていた。
故障の要因としては、ノズル孔目詰まりやノズルへの気泡滞留によるインク粒子吐出不能、あるいはノズル孔半詰まりやノズル孔周辺部のインクによる不均一な濡れに伴うインク吐出方向の曲がり等様々な要因が考えられる。
また、記録画像の品質を確保する上での問題も生じていた。つまり、上記多数のノズルを同一寸法に製作することは困難であり、製造バラツキ等の要因で各ノズルのインク吐出特性にバラツキが出る。
例えば、隣接するノズル孔から吐出するインク粒子について大きさや形状等に無視できない不揃いがあると、筋ムラや濃度ムラ等記録ムラが生じる。シリアル型記録ヘッドであれば、記録ヘッドのスキャン領域を変更するなどして、インク粒子の大きさの不揃いを目立たないように対策することは可能である。しかし、ライン型記録ヘッドのようにヘッドを固定して使用する場合、隣接するノズルは固定されているため、このような不揃いノズルを有する記録ヘッドを使用することはできない。
一方、米国特許第5、975、683号明細書(特開平8−332724号公報に対応)にはインク粒子を電界操作するライン走査型インクジェット記録装置が開示されている。この装置では、電界走査によって、吐出されたインク粒子を左右方向に偏向させることによって、一つの画素内にある水平方向のドット数を増加させ、高解像度の画像を形成している。以下、添付の図面を参照して詳述する。
図1に示す印字ヘッド18は、アクチュエータ11によって開口部13からインク粒子10を印刷基面15に向けて噴射する。このとき、インク中の正イオンは印刷基面15の背後に設けられた電極14の高い負電圧(−1000V)に反応して、インク表面12に集中し、インク粒子10がインク表面12から分離する時点でインク粒子10は正に帯電している。それぞれの開口部13を挟む両側には一対の方向制御電極16,17が設けられている。
しかしながら、このように印刷基面15と方向制御電極16,17間の電界を制御する偏向電界制御方式においては、個々のインク粒子を独立に偏向制御することができない。これは、偏向制御電界が及ぶ範囲に先に偏向制御したインク粒子が存在する場合には、それらのインク粒子にも現在印加中の偏向電界の作用が及んでしまうためである。そのため、偏向作用の独立性に劣り、高速記録や、記録精度の上で不利である。
また、このような記録装置においても、1ノズルでも故障すると、記録できない主走査線が生じてしまい、記録すべき情報が欠落してしまう点においては、前述の装置と変わらない。
前記記録ヘッドに対する被記録媒体の相対的な移動方向を主走査方向、前記各ノズルが対向する前記被記録媒体の主走査方向に延びる線を主走査線とし、
前記記録ヘッドが少なくともAのノズルとBのノズルとCのノズルを有し、
前記各ノズルから吐出されるインク粒子の吐出方向を複数の方向に偏向させることのできる吐出方向偏向手段と、
前記Aのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1の主走査線上の第1の画素位置に着弾でき、
前記Bのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1の主走査線上の第1の画素位置と第2の主走査線上の第2の画素位置に着弾でき、
前記Cのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第2の主走査線上の第2の画素位置に着弾できるように制御する吐出制御手段を備え、
前記Bのノズルが故障したときに、
前記Bのノズルが分担していた前記第1の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Aのノズルで代替できるように、
また前記Bのノズルが分担していた前記第2の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Cのノズルで代替できるように分けて、
前記AのノズルならびにCのノズルからのインク粒子を振り向けて、前記第1の画素位置と第2の画素位置へ着弾するように、前記吐出制御手段で制御することを特徴とするものである。
前記記録ヘッドが固定されており、前記被記録媒体の幅方向において等間隔に並ぶ画素位置にインクを割り当てて記録できるように前記ノズルが多数配列されたライン走査型インクジェット記録装置であることを特徴とするものである。
本発明の第14の手段は前記第1ならびに第3ないし第13の手段において、移動中の前記被記録媒体に対して前記記録ヘッドから吐出したインクを着弾する構成になっていることを特徴とするものである。
また、故障ノズルのバックアップを行うことが可能となり、記録すべき情報が欠落するといった事態を回避することができる。
まず、本発明の第1の形態に係わるライン走査型インクジェット記録装置100について図3乃至図9を参照して説明する。図3はライン走査型インクジェット記録装置100の構成を示す斜視図及び制御ブロック図であり、図4は図3の丸で囲んだ記録部領域1を拡大した部分拡大図であって、記録動作原理を説明するものである。
ライン走査型インクジェット記録装置100は、所定記録速度で図3の矢印Bで示される主走査方向に連続移動する連続記録用紙P(以下、「記録用紙P」という。)上に、図4の主走査線110の密度を一定として(例えば、Ds=300dpi)画像を高速記録する装置である。主走査線110の密度とは、記録用紙Pの幅方向Wの単位長さ当たりの主走査線110の本数である。
図3に示すように、ライン走査型インクジェット記録装置100は、記録ヘッド200と、背面電極体300と、偏向制御信号発生回路400と、インク吐出制御回路500とを備える。
記録ヘッド200は複数個のリニア記録ヘッドモジュール210と、この複数個の記録ヘッドモジュール(以下、「モジュール」と称する)を所定の位置関係で並べて保持する枠体220を備える。複数個のモジュール210はそれぞれ同一構造を有する。
図4に示すように、各モジュール210には、一列に配置されたn個のノズル230からなるノズル列211を備える。各ノズル230にはノズル孔231が形成されており、ノズルピッチはPnである。
各ノズル230は同一構成を有し、ノズル孔231と、ノズル孔231を開口端とするインク加圧室232、このインク加圧室232にインクを導くインク流入孔233、このインク流入孔233にインクを供給するマニホールド234、アクチュエータとしてのPZT等の圧電素子235を備える。本実施の形態では、圧電素子235として、PZTが使用される。PZT235はインク加圧室232に取り付けられており、インク加圧室232の体積を記録信号の印加に応じて変化させる。
ノズル列211のノズル列方向Aは、主走査線110の主走査方向Bに対して角度θ=tan−1(1/5);約11.3度であり、幅方向WにおけるノズルピッチPn=(2/300)・(sin(1/5))−1インチ;約0.034インチとなっている。また、ノズル数nは96(n=96)である。
背面電極体300は、複数対の正極性偏向電極310と負極性偏向電極320、電極配置基板330、正極性偏向電極端子341、負極性偏向電極端子342により構成される。
図3乃至図5に示すように、複数対の正極性偏向電極310と負極性偏向電極320は、記録用紙Pの背面に、ノズル列211を挟む位置に設置されている。同極性の電極同士は電極配置基板330上で束ねられ、正極性偏向電極端子341と負極性偏向電極端子342にそれぞれ接続されている。
偏向制御信号発生回路400は、荷電信号作成回路410、正極性偏向電圧源421、負極性偏向電圧源422、正極性バイアス回路431、負極性バイアス回路432を備えている。
インク粒子吐出制御回路500は、記録信号作成回路510、タイミング信号発生回路520、PZT駆動パルス作成回路530、PZTドライバ回路540を有する。記録信号作成回路510は入力データに基づき画像の画素データを作成し、タイミング信号発生回路520はタイミング信号を発生させる。PZT駆動パルス作成回路530は、記録信号作成回路510からの画素データとタイミング信号発生回路520からのタイミング信号に基づき、各ノズル230のPZT235の駆動パルスを発生する。PZTドライバ回路540は、この駆動パルスをPZT駆動のために十分な信号レベルに増幅させる。PZTドライバ回路540からの駆動パルスはPZT駆動信号として各ノズル230のPZT235に加えられ、インク粒子を所定のタイミングで吐出させる。
図6は記録用紙にベタ黒を印刷する場合、すなわち画素全てに記録ドットを形成する場合の電荷・偏向電極310、320に印加する荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)と、各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートを示し、図7は図6の記録ドット形成状態を示した図である。
以下、図6及び図7を参照しながら記録動作を説明する。
図6において、荷電・偏向電極310、320に荷電・偏向信号(A)、(B)がそれぞれ印加されると、正極性電極310には+H、負極性電極320には−Hの偏向電圧がかかると共に、時間間隔Tごと1/2・VCずつ、0〜±VC間で変化する荷電電圧が加わる。この印加により、偏向用の静電場と荷電用の電場が形成される。
一方、記録ヘッド200中のインクはアース電位、すなわち0電位に落としてある。従って、荷電・偏向電極310、320に前記の荷電電圧が印加されると、各ノズル孔231内のインクにも同様の荷電電圧が印加されることになる。そして、インクの導電性が数百ΩCm以下と良好である場合には、インク粒子130がノズル孔231中のインクから分離する時に、インク粒子130は印加されている荷電電圧に応じて帯電し、記録用紙Pに向かって飛行することになる。
図6において、荷電電圧が0のとき、吐出されるインク粒子の偏向量は0であり、荷電電圧が+VC、+1/2・VC、−1/2・VC、−VCのときの偏向量はそれぞれ+2、+1、−1、−2である。
図7において、ノズル孔231Aより噴出したインク粒子130は、上述の偏向制御により、主走査線110n+1から110n+5上に着弾可能で、記録ドット140An+1から140An+5を形成できる。同様にノズル孔231Bから噴出したインク粒子130は主走査線110n+3から110n+7に着弾可能で、ノズル孔231Cから噴出したインク粒子130は主走査線110n+5から110110n+9に着弾可能である。
次に図6(a)〜(d)のPZT駆動信号時の記録動作を説明する。
図7は記録用紙P上のドット記録状態であり、ノズル位置231A’、231B’、231C’は図4に示されるノズル孔231A、231B、231Cの記録用紙Pへの投影位置である。
本発明においては、記録用紙Pが主走査方向Bに一定速度で移動されつつ、時間間隔Tで各ノズル孔231からインク粒子130の吐出制御と吐出したインク粒子130の偏向制御との組み合せにより記録が行われる。
図7において、記録動作中は例えばノズル231B’は記録用紙Pに対し、主走査線110n+5上を主走査方向Bと反対の方向B’に相対的に移動する。ここで、図中、主走査線110n+5からは主走査方向Bに対して等間隔に複数の時分割・偏向参照線Tが偏向方向Cに延びている。
次に、ノズル孔231Aからのインク粒子吐出に注目する。
図6に示されるT1の時間帯では、荷電・偏向信号(A)、(B)の荷電電圧が0Vであり、ノズル230AへのPZT駆動信号はONであるので、ノズル孔231Aから吐出したインク粒子103は荷電されず直進し、例えば、図7の主走査線110n+3上の画素120T1に着弾して記録ドット120AT1を記録する。
以上のように、本発明によると、被記録体の1回の主走査移動を通じて、各主走査線について、複数のノズル孔から吐出されるインク粒子を同一の主走査線上に着弾可能なように制御する。そして、複数のノズル孔から吐出され、同一の主走査線上に振り分け可能なインク粒子を、主走査方向と該方向に垂直な方向あるいはこれら2方向のいずれかの方向に、異なるノズル孔からのインク粒子により形成される記録ドットが、交互に並ぶようにインク粒子の吐出タイミングを制御する。
また、図7からも分かるように、本実施の形態では、時分割・偏向参照線T毎にインク粒子130の吐出制御と荷電・偏向制御をし、主走査方向B及び幅方向Wにおいて等間隔で並ぶ画素位置にインク粒子130を割り当て記録できるようにノズル孔配置を工夫している。これにより、記録ヘッド200の応答性を必要以上に要求する必要がなくなる。あるいは、同じ周波数応答性のノズルでも高速記録が可能となる。このように制御が可能なのは、画素位置に対するノズル列の傾きやノズルピッチ等、ノズル孔配置を適切に設定したためである。
また、ノズル231A、231B、231Cを使用した従来方式の記録装置では、110n+3、110n+5、110n+7の3つの主走査線にしか記録ドットを着弾させられなかった。これに対し、本発明による記録装置ではその間の主走査線上にも記録ドットを形成可能である。すなわち、ノズル数を従来に対して1/2に削減できる。
図8は、ノズル231Bが故障した時、ノズル231Bを使わないでべた黒を印刷する動作例である。図6の正常動作時と比べると、荷電・偏向信号(A)(B)は同じであるが、PZT駆動信号(a)〜(d)が異なる。
すなわち、ノズル231Bは使用しないのでノズル231Bに駆動信号は与えない。つまりノズル231Bは常時offされる。その代わり、ノズル231Aで吐出させたインク粒子130を偏向レベル−1で偏向して、図9に示すように120AT2等の画素位置に着弾させたり、偏向レベル−2に偏向して120AT8等の画素位置に着弾させる。また、ノズル231Cで吐出させたインク粒子130を偏向レベル+2で偏向して120CT9等の画素位置に着弾させたり、偏向レベル+1に偏向して120AT10等の画素位置に着弾させる。
以上では1個のノズルが故障の場合についての動作を述べたが、奇数番目のノズルが同時に多数故障した場合や、偶数番目のノズルが同時に多数故障した場合にも前記動作を故障個所に適応することによりバックアップ可能である。
また、連続して2個のノズルが故障した場合にも両側の健全ノズルでカバーすることは可能である。3つ以上の連続ノズルの同時故障に対応するには、インク粒子の偏向量、偏向レベルを対応できるように大きくとるようにし、ノズルのインク吐出応答周波数を向上させることで対応できる。
更に、前記実施の形態では主走査線1本置きにノズル孔を対応させて設置してノズル数を1/2に削減したが、更に削減率を上げるためには、N本(N=2以上)の主走査線毎にノズル孔1個づつの割合で列状に配置する。そして、ノズル孔のピッチやノズル列の主走査線に対する配置角度を適値に設定する。また偏向手段は、インク粒子が少なくともN本の主走査線上の全てに着弾できるように偏向量を制御する。そして、前記主走査線上の全の画素位置にインク粒子を着弾可能なようにインク粒子吐出タイミングを制御する。
更に、このノズル数を1/Nに出来る特徴を次のように活用することも可能である。すなわち、同じノズル配置ピツチの記録ヘッドでも、従来の構成に比べてN倍高精細な記録が可能になる。この特徴を発展させると、同じ記録ヘッドで、記録ヘッドの配置を変えることなく、偏向や走査仕様を変更するだけで高精細記録を達成できる記録装置の実現も可能である。
あるいは、同じ精細度の記録を行うための記録ヘッドを製作する場合、本発明を使用すると、ノズル配置のピツチを広げることができるので、記録ヘッドの製作が容易になり、ノズル間での干渉に伴う吐出特性変動も少なくなるので記録品質を向上させることが可能である。
次に、本発明による第2の実施の形態について図10乃至図20を参照して説明する。なお、前述の実施の形態におけるライン走査型インクジェット記録装置100と重複する部分には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
本実施の形態によるライン走査型インクジェット記録装置100Aは、所定記録速度で主走査方向Bに移動する記録用紙P上に、図11の主走査線110の密度Ds=300dpiで画像を高速記録する装置である。
図10に示すように、ライン走査型インクジェット記録装置100Aは、記録ヘッド200と、中間電極体300と、偏向制御信号発生回路400と、インク粒子吐出制御回路500とを備える。
記録ヘッド200は、ノズル列方向Aが主走査方向Bに対して角度θ=tan−1(1/6);約9.46度であり、幅方向WにおけるノズルピッチPn=(2/300)・(sin(1/6))−1インチ;約0.04インチである点で第1の実施の形態の記録ヘッド200と異なる。なお、n=96である。また、幅方向Wにおけるノズルピッチは2/300インチ、主走査線方向Bにおけるノズルピッチは12/300インチに設定されており、主走査線110の1本置きにノズル孔231を1個対応するように設定されている。
図11及び図12に示されるように、中間電極体300の複数対の正極性偏向電極310と負極性偏向電極320は、記録ヘッド200の各リニアヘッド記録モジュール210のノズル列を挟む位置に、記録用紙Pと記録ヘッド200との間に設置される。各極性同士は電極配置基板330上で束ねられ、正極性偏向電極端子341と負極性偏向電極端子342に接続されている。これらの電極320、321には偏向制御信号発生装置400からの荷電・偏向信号(A)、(B)(図13)が印加される。
インク粒子吐出制御回路500のPZT駆動パルス作成装置530は、画素毎複数ノズル用PZT駆動パルス生成装置531とPZT駆動パルスタイミング調整装置532を備える。画素毎複数ノズル用PZT駆動パルス生成装置531は、PZT駆動パルス信号を生成する。PZT駆動パルス信号は各ノズルのPZTに印加され、これにより各ノズルからインク粒子が吐出される。
以下、図11、図13及び図14を参照しながら記録動作を説明する。
荷電・偏向電極310、320に荷電・偏向信号(A)(B)が印加されると、図13に示すように正電極310には+H、負電極320には−Hの偏向電圧がかかると共に、0〜±VC間で変化する荷電電圧が加わるようになる。この荷電電圧は時間間隔Tごとに電圧が1/5・VCずつ変化している。この印加により、偏向用の静電場と、荷電用の電場が形成される。
図11において、ノズル孔231Aから噴出したインク粒子130は偏向により主走査線110nから110n+5上に着弾可能で、記録ドット140Anから140An+5の形成が可能である。同様にノズル孔231Bから噴出したインク粒子は偏向により主走査線110n+2から110n+7上に着弾可能であり、ノズル孔231Cから噴出したインク粒子は偏向により主走査線110n+4から110n+9上に着弾可能である。
次に、図13 (a)〜(d)のPZT駆動信号時の記録動作について、ノズル孔231Aからのインク粒子吐出に注目して説明する。
図13のT1の時間帯では(a)に示すように荷電電圧が−1/5VCであるので、ノズル231AのPZTへのPZT駆動信号パルス印加で吐出したインク粒子は、例えば、図14の主走査線110n+3上の画素120αn+3に着弾して記録ドットを形成する。引き続く時間帯T2では、(a)に示すように荷電電圧が−3/5・VCであるので、ノズル231AのPZTへのPZT駆動信号パルス印加で吐出したインク粒子は、例えば、図14の主走査線110n+4上の画素120αn+4に着弾して記録ドットを形成する。
また、ノズル231B、231C等他のノズル231についても同様に、各ノズル231は夫々に対応して主走査線上110の画素位置全てにインク粒子130を着弾させ、記録ドットを形成させることができる。従って、例えば画素120αn+4位置にはノズル231Cで吐出させたインク粒子130によって記録ドットが形成された後、走査を通じて同じ画素120αn+4位置にノズル231Bによる記録ドット、そしてノズル231Aによる記録ドットが順次形成されることとなる。他の各画素についても同様に、走査が進むと最終的には、隣接する3ノズルから吐出させたインク粒子130を1個づつ、合計3個のインク粒子130を着弾させたベタ黒の記録ができる。
図15は記録用紙Pに任意の記録パターンを印刷する例として、短線パターンを印刷する場合の荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)、そして各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートであり、図16はその際の記録ドット形成状態を示した図である。以下、その記録動作について説明する。なお、本例では、図16に示すように、画素120βn+4、120βn+5、120βn+6の3画素からなる短線パターンを印刷するものとする。
記録用紙Pと記録ヘッド200の相対的な走査方向移動により、まず最初にノズル231Cの隣(図11において左隣)に配置されたノズル231D(図示せず)により吐出されたインク粒子を図16の画素120βn+6に着弾させ、記録ドットを形成する。次に、図15(C)に示す3個のPZT駆動パルスにより、ノズル231Cから順次3個のインク粒子130を吐出させる。この時、荷電・偏向電極310、320には図15(A)、(B)に示す偏向制御信号電圧が印加されているので、吐出したインク粒子130は夫々+3レベル、+2レベル、+1レベル偏向され120βn+4、120βn+5、120βn+6の画素位置に着弾する。
以上のように、記録ヘッド200の各ノズル230から吐出するインク粒子130が、予め定められた複数の主走査線110上のいずれにも着弾可能なように、インク粒子130の飛行方向を主走査線方向Bと直角な方向成分を持つ偏向方向Cに偏向し、かつ記録ヘッド200と記録用紙Pの1回の相対的な主走査移動を通じて、各主走査線110について複数のノズル孔231から吐出されるインク粒子130を同一の主走査線110上に着弾可能である。
また、ノズル孔は、この偏向制御手段と、記録ヘッドと記録用紙との相対移動による1回の主走査移動により、記録用紙上に所定の間隔で画素が配置可能で、かつ前記複数のノズル孔のから吐出され同一の走査線上に着弾可能なように偏向されたインク粒子が、同一の画素位置に着弾可能なように、ノズル列方向におけるノズルピッチと、主走査方向に対するノズル列方向のなす傾き角度を設定している。
更に、インク粒子吐出制御手段は、記録用紙上の所定画素の位置に記録ドットを形成する場合には、ノズル孔の配置と偏向制御手段及び主走査移動により決定される、個々の画素の記録を受け持つ複数のノズルについて、1画素を形成するタイミングで複数個のノズル孔よりインク粒子が吐出するのを制御する。このようにして、複数のノズルにより吐出されたインク粒子を、各画素位置に着弾させて、1画素を形成する。
図17及び図18はベタ黒印刷時において、ノズル231Bが故障してインク粒子を吐出できなくなった時の状態を示すもので、図の正常状態印刷時に対応する図である。すなわち、図17はベタ黒を印刷する場合の荷電・偏向電極に印加する荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)、そして各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートであり、図18はその記録ドット形成状態を示した図である。
図19及び図20は、図15の正常印刷時に対応する図で、3画素からなる短線の印刷において、ノズル231Bが故障してインク粒子を吐出できなくなった時の状態を示した図である。すなわち、図19は短線パターンを印刷する場合の荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)、そして各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートであり、図20はその際の記録ドット形成状態を示した図である。
従来の各ノズルに1本の主走査線を対応させて記録する方式においては、このような故障ノズルが生じると、主走査線の抜けが生じて、記録すべき情報が欠落してしまうという致命的な問題が発生した。
以上説明したように、本発明によれば、故障ノズルがあることを検知しなくても、記録情報の欠落を引き起こすことなく記録を継続可能である。もちろん、故障ノズルがあることを検知して故障ノズルへのPZT駆動パルス信号供給を停止して、信号を図17、図19の(b−1)から(b−2)のように切り替えても良い。
また、本発明により記録される記録画素は、複数の隣接ノズルにより記録される記録ドットで構成されるため、画素の大きさや位置が平均化される。従って、従来の技術において問題とされていたノズル個性による記録ドット大きさのバラツキによる筋ムラ、濃度ムラ等の記録ムラも軽減でき、従来のライン走査型インクジェット記録装置の重要な問題点を解決できる。
以上の例では、1画素に3記録ドットを割り当て、ノズルの数を1主走査線毎に割当てたが、これは本発明に限定を加えるものではなく、設定したい割当て数に応じて前記で述べた本発明の手段を調整することで達成可能である。
記録ドットの大きさは、画素の大きさと、画素を構成する記録ドットの割当て数とを適切に設定することで、記録品質を向上させることが可能である。記録ドットが大き過ぎると、解像度が劣化するものの、故障ノズル発生による画像への影響は少なくなる。一方、記録ドットが小さ過ぎると、解像度に劣化はないが、故障ノズル発生時の画像への影響は大きくなり、また記録濃度不足になる。従って、これらの得失や印刷装置の応用面等を考慮し、記録ドット大きさを設定するのが望ましい。
なお、個々のインク粒子が記録用紙に記録された時のドット径は、吐出インク粒子の体積、インクの記録用紙への滲み具合等で決まるため、インクと記録用紙が固定の場合には、吐出インク粒子の体積を適切に設定する必要がある。インク粒子の体積を所定値に設定するには、ノズル孔径やインク粒子吐出制御手段のPZT駆動パルス波形を適値に設定する。すなわち、ノズル孔径を小さくするほど、インク粒子の体積を小さく出来る。また、一般にPZT駆動パルスの幅を狭くしたり、パルスの高さを低くすることでインク粒子の体積を小さく出来る。更に飛躍的に体積を小さくするには、駆動パルス波形を、ノズル孔にできるインクの境界面であるメニスカスを急峻にノズル内側に引っ込めるように設定することで、引き続いて微小粒子を発生させることも可能である。
また、図13及び図14からも分かるように、本発明では、等時間間隔Tで、インク粒子の吐出制御と荷電・偏向制御をして、縦、横、等間隔で並ぶ画素にインク粒子を割り当て記録できるようにノズル孔の配置を工夫している。これにより、記録ヘッドの応答性を必要以上に要求する必要がなくなる。あるいは同じ周波数応答性のノズルでも高速記録が可能となる。このように制御が可能なのは、画素位置に対するノズル列の傾きやノズルピッチ等、ノズル孔配置を適切に設定したためである。
本発明の偏向制御手段は静電力を活用するものであり、インク粒子に電荷を与える荷電手段と、該荷電手段により荷電された荷電インク粒子を偏向するように、インク粒子の飛行経路に設けた電場形成手段を備える。図3、図10の例では、これらの手段が一対の電極と、これら電極とノズル内インクの間に荷電信号電圧と偏向電圧を重畳して印加することで、電極構造等を簡易に構成している。しかし、この例は本発明に制限を与えるものではなく、荷電用電極と偏向用の電場形成電極を別々に設ける通常の電極構造に対して、電極や電圧印加方法に変形を加えた他の構成であってもよい。
また、前記例で説明したように、本発明によれば、主走査方向、幅方向の隣接する画素を、異なるノズルで記録し、記録ムラを低減させることが出来るが、このような記録ムラ低減機能を実現するには、偏向制御手段は、被記録体の1回の主走査移動を通じて、各主走査線について、複数のノズル孔から吐出されるインク粒子を同一の主走査線上に着弾可能なように制御する。
また前記例により説明したバックアップ機能を実現するには、偏向制御手段は、1回の走査を通じて、各主走査線について複数のノズル孔から吐出されるインク粒子を同一の主走査線上に着弾可能なように制御する。
また、ノズル孔の配置として、前記例では図7、図14からも分かるように等時間間隔で吐出したインク粒子で、等間隔で配置した画素にインク粒子が振り分け可能となるように、画素位置に対するノズル列の傾きを適切に設定した。
本発明での偏向手段は静電力を活用するものであり、インク粒子に電荷を与える荷電手段と、該荷電手段により荷電された荷電インク粒子を偏向するように、インク粒子の飛行経路に設けた電場形成手段を備える。図3、図10の例では、これらの手段が一対の電極と、これら電極およびノズル中インクへの荷電信号電圧の印加や偏向電圧の印加の工夫で、電極構造等を簡易に構成した実施の形態を示した。しかし、この例は本発明に制限を与えるものではなく、以下の変形例でもよい。
図21に示す電極配置では、偏向電極310、320には偏向電圧源421、422からの偏向用直流電圧のみを印加し、荷電のための荷電信号源411からの荷電制御信号をノズル孔231中のインクに印加する。このように構成することにより、インクのグラウンドからの電気絶縁が必要になるが、バイアス回路431、432が不要になる利点を持つ。
図22は前記図21の例と、図12に示す第2変形例における電極配置を組み合わせた例である。つまり、荷電・偏向電極310、320を記録用紙Pと上に配置し、荷電信号源411を備える一方、バイアス回路431、432を構成要件から外している。
図23は電極をインク粒子の帯電量を制御する荷電制御専用電極315と偏向電場形成専用電極311、321に分け、設置したものである。電極が増える分、インク粒子の飛行距離が伸びてしまうが、バイアス回路は不要になる。また、インクをグラウンドからの電気に絶縁する必要もなくなる。
図24はノズル列の片側に偏向電極310を設置し、偏向制御信号源400からの矩形波状等の高電圧パルスを印加する他の例を示すものである。インク粒子130は高電圧パルスで荷電されるとともに、同パルスの電場で偏向される。インク粒子130の飛翔間隔が狭い場合の偏向制御の独立性に難点はあるが、電極構造、偏向制御信号源が簡単である点に利点がある。
以上のように、本発明によると、インク粒子を所定量偏向するため、インク粒子に電荷を与える荷電手段と、該荷電手段により荷電された帯電インク粒子を偏向するように、インク粒子の飛行経路に設けた静電場形成手段を備えていればよく、他の電極構造と電圧印加もあり得る。例えば、電極は必ずしもノズル列に平行でなくても良いし、ノズル夫々に対応して電極を設置してもよい。
以上の例ではライン走査型インクジェット記録装置への適用例に付いて述べたが、シリアル走査型インクジェット記録装置への適用も可能である。
以上の例ではインク粒子の偏向に静電力を使用したが、インクに磁性インクを使用すれば、偏向力に磁力を使用することができる。またノズルとしては、前述したPZT等の圧電素子を用いたオンデマンドインクジェット方式のノズルに限らず、前述した発熱素子へ駆動電圧を印加することにより、インク室中のインクに圧力を加えて、ノズル孔からインク粒子を吐出させるなど他の原理や構造に基づきインク粒子を吐出制御するオンデマンドインクジェット方式のノズルにも適用可能である。
本発明は前述のような構成になっており、故障ノズルのバックアップを行うことが可能となり、記録すべき情報が欠落するといった事態を回避することができる。
Claims (14)
- ノズルを多数配列した記録ヘッドと、その記録ヘッドに対して相対的に移動する被記録体を有し、前記ノズルからインク粒子を吐出して前記被記録体上に着弾するインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドに対する被記録媒体の相対的な移動方向を主走査方向、前記各ノズルが対向する前記被記録媒体の主走査方向に延びる線を主走査線とし、
前記記録ヘッドが少なくともAのノズルとBのノズルとCのノズルを有し、
前記各ノズルから吐出されるインク粒子の吐出方向を複数の方向に偏向させることのできる吐出方向偏向手段と、
前記Aのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1の主走査線上の第1の画素位置に着弾でき、
前記Bのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1の主走査線上の第1の画素位置と第2の主走査線上の第2の画素位置に着弾でき、
前記Cのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第2の主走査線上の第2の画素位置に着弾できるように制御する吐出制御手段を備え、
前記Bのノズルが故障したときに、
前記Bのノズルが分担していた前記第1の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Aのノズルで代替できるように、
また前記Bのノズルが分担していた前記第2の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Cのノズルで代替できるように分けて、
前記AのノズルならびにCのノズルからのインク粒子を振り向けて、前記第1の画素位置と第2の画素位置へ着弾するように、前記吐出制御手段で制御することを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出制御手段による吐出制御が、前記記録ヘッドに対する前記被記録媒体の1回の相対移動毎に行われることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記インク粒子が前記同じ画素位置に部分的に重なって着弾可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記同じ画素位置に同じノズルから吐出したインク粒子が着弾しないことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記ノズルからそれぞれ吐出するインク粒子が同じ画素位置に重ねて着弾して1画素を形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記多数のノズルのうちいずれか1つのノズルから吐出したインク粒子を着弾して第1の画素を形成し、その第1の画素と隣接する第2の画素を前記多数のノズルのうちの前記ノズルとは異なるノズルから吐出したインク粒子を着弾して形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記ノズルの1つから吐出するインク粒子の偏向量が偏向量0を含んで複数段にわたって設定可能になっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記インク粒子の偏向方向が前記ノズルの配列方向に対してほぼ直角であることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記画素を構成する記録ドットの割り当て数が切り替え可能になっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記各ノズルからそれぞれ吐出するインク粒子の体積が制御可能になっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記故障したノズルへのインク粒子吐出駆動パルスの供給を停止することを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、当該インクジェット記録装置が、
前記記録ヘッドが固定されており、前記被記録媒体の幅方向において等間隔に並ぶ画素位置にインクを割り当てて記録できるように前記ノズルが多数配列されたライン走査型インクジェット記録装置であることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項1ないし12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記被記録媒体の幅方向において前記主走査線の1本置きに前記ノズルが1個対応するようなっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1ならびに3ないし13のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、移動中の前記被記録媒体に対して前記記録ヘッドから吐出したインクを着弾する構成になっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
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