JP4732081B2 - 酸化アルミニウム膜形成用組成物及び酸化アルミニウム膜形成方法 - Google Patents
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Description
また、本発明の他の目的は、アルミニウム及びその合金に、塗料の密着度の高い塗装下地用の成膜を施すことができる酸化アルミニウム膜形成用組成物を提供することにある。さらに、別の目的は、アルミニウムに、アルミコンデンサーに適した無孔性膜を形成するのに有用な酸化アルミニウム膜形成用組成物を提供することである。
本発明に係る酸化アルミニウム膜形成用組成物は、アルミニウムイオンを含有する水溶液から成り、カソード電解によって、アルミニウム及びその合金上に酸化アルミニウム膜等が形成されるので、皮膜に微細孔が発生せず、かつ、アニオン種(硫酸根)等の取り込みがほとんど無いため、(アノード酸化法に比べて)塗膜の密着性が良い塗装下地を形成することができる。また、無孔性であることから、封孔処理が不要となり、封孔処理に必要な(生体毒性を有する)ニッケル塩等が不要になるので、環境汚染をもたらさない。また、封孔処理作業が無いことから、手間を省け、かつ、コストの削減にもなる。また、アルミコンデンサー用皮膜としても有用である。
また、上記水溶液は窒素含有化合物等を含んでいないので、六価クロム酸塩等の有害金属塩を用いる化成処理法と違い、環境破壊をもたらすことがなく、環境の保護になる。また、電解に使用する電気量が、アノード酸化法等の他の電解法に比べて少なくて済むので、コストの削減にもなる。さらに、電気化学パラメータによって膜の表面状態及び膜厚等を容易に制御できるので、クラック(亀裂)やムラのない膜を得ることができる。そのため、耐蝕性や、塗膜の密着性が非常に良く、塗装の下地に好適である。
図1,図2は本発明に係る酸化アルミニウム膜形成用組成物の実施の一形態を示し、この酸化アルミニウム膜形成用組成物は、アルミニウムイオンを含有する水溶液5から成り、アルミニウム1及びその合金(以下、アルミニウム1)上に酸化アルミニウム膜3及び/又は含水酸化アルミニウム膜3(以下、酸化アルミニウム膜3等とする。)を形成するものである。この水溶液5(以下、Al2(SO4)3 水溶液5とする。)は、アルミニウムイオン源として、硫酸アルミニウムを有する。Al2(SO4)3 水溶液5には、アルミニウム1の種類などによっては、pH調整用の硫酸を加えることもある。
図1,図2は、本発明に係る酸化アルミニウム膜形成用組成物にて酸化アルミニウム膜3等を形成するための説明用の装置を示したものであって、これに特定されるものではなく、実施にあたっては、処理容器7に相当する電解槽もコイルなどの電解に使用される連続処理用の電解槽、一般的なバッチタイプの電解槽、アルミサッシなど用に使用される横吊り式や縦吊り式の電解槽など、現在使用されているほとんどの電解槽が使用できる。また、電源も、様々なタイプの直流電源、直流・交流重畳電源、パルス電源などが使用でき、これも特定されるものではない。図1,図2の装置は、処理容器7と、処理容器7内に入れられたAl2(SO4)3 水溶液5と、Al2(SO4)3 水溶液5に浸けられる金又は白金から成る陽極4、及び、陰極2とを有する。陽極4と陰極2は、電源8に接続される。
そして、陰極2に、酸化アルミニウム膜3等を形成するためのアルミニウム1が、Al2(SO4)3 水溶液5に浸けられた状態で接続される。
つまり、電解浴をAl2(SO4)3 水溶液5とすると共に、Al2(SO4)3 水溶液5中で陰極2にアルミニウム1を接続し、Al2(SO4)3 水溶液5中で電気分解を行って、陰極2のアルミニウム1の表面に膜3を形成する酸化アルミニウム膜形成法を用いる。
Al2(SO4)3 → 2Al3+ + 3SO4 2- ………(1)
2H2O + 2e- → H2 + 2OH- ………(2)
Al3+ + 3OH- → Al(OH)3 ………(3)
この化学式(1)(2)(3) に表されるように、アルミニウム1の表面に酸化アルミニウム及び/又は含水酸化アルミニウム3が形成される。
さらには、濃度が 0.05mol/L以上0.1mol/L以下に設定され、かつ、浴温度が25℃以上30℃以下に設定され、かつ、電流密度が0.25A/dm2 以上0.35A/dm2 以下に設定され、さらに、通電量が 1.8C以上 2.2C以下の範囲に設定されるのが好ましく(以下、最適範囲とする)、最適範囲に設定したAl2(SO4)3 水溶液5中にてカソード電解法により、電気分解を行うと、アルミニウム1の表面には、無孔性であり塗料との密着性が高い酸化アルミニウム膜3が形成される。なお、この最適範囲はアルミニウム1の材質や大きさによっても異なるため、特定されるものではなく、あくまでも、後述するアルミニウム材の種類と大きさを用いたときのものである。Lはリットルであり、Aはアンペアであり、dmはデシメートルであり、Cはクーロンである(以下、同じ)。なお、このアルミニウム1の材質の場合、Al2(SO4)3 水溶液5のpHは特に調整しなくてよく、Al2(SO4)3 をイオン交換水に溶解させるだけでよい。この場合のpHは 3.2である。
先ず、処理容器7内で、板状のアルミニウム1(アルミニウム材の種類は、A1050P−H24で、大きさは、幅50mm,長さ100mm ,厚さ0.8mm )を陰極2に接続する前に行う前処理について説明すると、アルミニウム1を、60℃, 0.5%NaOH水溶液に3分間浸漬してエッチングを行った後で1分間水洗いし、その後、10%HNO3水溶液に1分間浸漬してスマット除去を行い1分間水洗いする。そして、前処理したアルミニウム1を、陰極2に接続する。
また、図4(イ)(ロ)(ハ)は、Al2(SO4)3 の濃度を0.1mol/Lとし、浴温度を25℃とし、電流密度を0.3 A/dm2 とし、かつ、通電量を2Cに設定してカソード電解法による試験によってアルミニウム1に形成された酸化アルミニウム膜3を示す。
また、図5(イ)(ロ)(ハ)は、Al2(SO4)3 の濃度を0.05mol /Lとし、浴温度を30℃とし、電流密度を0.35A/dm2 とし、かつ、通電量を2Cに設定してカソード電解法による試験によってアルミニウム1に形成された酸化アルミニウム膜3を示す。
これらの結果から、膜3は均質な白色皮膜であり、クラック(亀裂)が無く密着性が良好である。
なお、図3〜図5の(イ)(ロ)(ハ)は、拡大倍率を変えて撮影した顕微鏡写真の画像である。
1.塗装の下地処理法として多用されてきた化成処理法の主成分である六価クロム酸塩
等の有害金属塩に比べ、カソード電解法で使用するAl2(SO4)3 水溶液5は、窒素含有
物を含まないので、環境負荷が小さい。
2.形成された膜3が無孔性であり、かつ、アニオン種(硫酸根)等の取り込みがほと
んど無く、アノード酸化法で形成された皮膜に比べて塗膜の密着性が良い。
3.合金の種類に関係なく、成膜が可能である。
4.無孔性の酸化アルミニウム膜が得られるので、封孔処理が不要である。
5.電解に使用する電気量が、アノード酸化法等の他の電解法に比べて少ない。
6.有機酸を用いないので、廃液の処理が容易である。
7.電気化学パラメータによって膜の組成及び膜厚を制御できる。
8.比較的低温で酸化アルミニウム膜を形成できる。
9 比較的平滑な皮膜を形成できる。
このように、カソード電解法により形成された酸化アルミニウム膜3は、アノード酸化法により形成された膜と違い、環境汚染をすることなく、しかも、塗膜の密着度が良好な塗装下地となる。
また、膜3の厚さ寸法が極めて小さく抑えられ、非常に薄い膜3を形成できる。
3 酸化アルミニウム膜
5 水溶液
Claims (2)
- アルミニウムイオンを含有する水溶液(5)から成り、かつ、上記水溶液(5)に浸された状態で陰極(2)に接続されるアルミニウム及びその合金上に、カソード電解法によって酸化アルミニウム膜(3)及び/又は含水酸化アルミニウム膜(3)を形成するための電解浴として用いられる酸化アルミニウム膜形成用組成物であって、
上記水溶液(5)は、アルミニウムイオン源として硫酸アルミニウムを有し、かつ、窒素含有化合物を含まず、pHが2.0乃至3.4に設定され、硫酸アルミニウムの濃度が0.001mol /L乃至 0.5mol /Lであることを特徴とする酸化アルミニウム膜形成用組成物。 - アルミニウム及びその合金上に、酸化アルミニウム膜(3)及び/又は含水酸化アルミニウム膜(3)を形成する酸化アルミニウム膜形成方法であって、
電解浴を、硫酸アルミニウムを有し、かつ、窒素含有化合物を含まず、pHが2.0乃至3.4に設定され、硫酸アルミニウムの濃度が0.001mol /L乃至 0.5mol /Lである水溶液(5)とし、
上記アルミニウム及びその合金を陰極(2)に接続し、カソード電解法によって、上記水溶液(5)中で電気分解を行って、上記アルミニウム及びその合金上に上記酸化アルミニウム膜(3)及び/又は含水酸化アルミニウム膜(3)を形成することを特徴とする酸化アルミニウム膜形成方法。
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