本発明に係る食材支持網が用いられる加熱調理器の一例を図1−5に基づき説明する。図1は正面図、図2は加熱室の扉を開いた状態の正面図、図3はトレイ使用状況を説明する模型的断面図、図4は全体構成説明図、図5は制御ブロック図である。
加熱調理器1は直方体形状のキャビネット10を備える。キャビネット10の正面には扉11が設けられる。扉11は下端を中心に垂直面内で回動するものであり、上部のハンドル12を握って手前に引くことにより、図1に示す垂直な閉鎖状態から図2に示す水平な開放状態へと90゜姿勢変換させることができる。扉11は、耐熱ガラスをはめ込んだ透視部を備える中央部分11Cの左右に、金属製装飾板で仕上げられた左側部分11L及び右側部分11Rを対称的に配置した構成を備える。右側部分11Rには操作部13が設けられている。
扉11を開くと図2のようにキャビネット10の正面が露出する。扉11の中央部分11Cに対応する箇所には加熱室20が設けられている。扉11の左側部分11Lに対応する箇所には水タンク収納部80が設けられている。扉11の右側部分11Rに対応する箇所には特に開口部は設けられていないが、その箇所の内部に制御基板が配置されている。
加熱室20は直方体形状で、扉11に面する正面側は全面的に開口部となっている。加熱室20の残りの面はステンレス鋼板で形成される。加熱室20の周囲には断熱対策が施される。
調理器1は、食材を熱媒体で加熱するとともに、高周波を用いて加熱することも可能になっている。以下、主として図4を参照しつつ加熱の仕組みを説明する。
加熱室20の底部の下には高周波発生装置21が組み込まれている。すなわち加熱室20の底部はガラスやセラミックなどの誘電体で形成され、その下にアンテナ室22が形成されている。アンテナ室22はアンテナ23を収容し、アンテナ23はアンテナモータ24によって水平面内で揺動する。アンテナ室22にはマグネトロン25より導波管26を通じて高周波が送り込まれ、送り込まれた高周波をアンテナ23が加熱室20内に供給する。マグネトロン25は高周波駆動電源27(図5参照)によって発振する。
加熱室20の底部の下には、高周波発生装置21の他、下部ヒータ28が配置されている。下部ヒータ28は後述する熱媒体ヒータ42と協働して加熱室20内の熱媒体を所定温度に加熱する。
調理器1は熱媒体として過熱水蒸気または高温空気を用いるものであり、熱媒体は外部循環路30を通って循環する。外部循環路30の始端となるのは、加熱室20の奥の側壁の上部に形成された吸込口31である。吸込口31は小径の透孔の集合からなる。
吸込口31に続くのは送風装置32である。送風装置32は加熱室20の奥の側壁の外面に取り付けられている。送風装置32は遠心ファン33及びこれを収容するファンケーシング34と、遠心ファン33を回転させるファンモータ35(図5参照)を備える。遠心ファン33としてはシロッコファンを用いる。ファンモータ35には高速回転が可能な直流モータを使用する。
ファンケーシング34から吐出された熱媒体はダクト36を通じて熱媒体生成装置40に送り込まれる。熱媒体生成装置40は、加熱室の天井部の上に形成された昇温室41の中に熱媒体ヒータ42を配置して構成されるものであり、平面的に見て天井部の中央部にあたる箇所に設けられる。熱媒体ヒータ42はシーズヒータからなる。
熱媒体生成装置40で昇温された熱媒体は上方及び側方より噴流として加熱室20に供給される。その噴流を形成する仕組みにつき以下説明する。
加熱室20の上部には上部熱媒体供給口43が設けられる。上部熱媒体供給口43を構成するのは、昇温室41の底部となり、また加熱室20の天井部の一部ともなる噴気カバー44である。噴気カバー44は垂直断面が台形のドームを上下反転した形状であり、そこに形成された複数の噴気孔が噴流形成部を構成する。噴気カバー44の中央に広い面積を占める水平部には熱媒体を真下に噴出させる垂直噴気孔45が複数形成され、水平部を囲む斜面部には熱媒体を斜め下に噴出させる斜め噴気孔46が複数形成されている。
加熱室20の左右両側壁の外側には、左右対称的に側部熱媒体供給口47(図3参照)が設けられる。どちらの側部熱媒体供給口47にも、熱媒体生成装置40よりダクト48を通じて熱媒体が送り込まれる。側部熱媒体供給口47の加熱室20に面する側は開口となっており、そこから熱媒体が噴流となって噴き出す。すなわちこの箇所が噴流形成部となる。側部熱媒体供給口47の底部は噴流の方向を定めるガイド部49となっている。
熱媒体である過熱水蒸気のもととなる飽和水蒸気を生成するため、調理器1は蒸気発生装置60を備える。蒸気発生装置60は中心線を垂直にして配置された筒型の容器61を有する。
容器61の内部は円筒形の隔壁62により内室63と外室64に区画される。内室63と外室64は底部で連通している。外室64の中にはシーズヒータをコイル状に巻いた蒸気発生ヒータ65が配置されている。また外室64に対し、蒸気供給管66の入口部が接続される。蒸気供給管66の出口部はファンケーシング34の吸込側に接続される。
内室63に対し、給水管67とオーバーフロー管68が接続される。給水管67は水タンク収納部80(図2参照)に収納された水タンク81の水を容器61に注ぎ込むためのものであり、途中に給水ポンプ69が設けられている。容器61の底部は漏斗状に成形され、そこから排水パイプ70が導出される。排水パイプ70の途中には排水バルブ71が設けられている。
給水ポンプ69は、直接水タンク81から水を吸い上げるのでなく、水タンク81が接続する中継タンク72から水を吸い上げるものである。水タンク81の底部からは水タンク収納部80の奥に向かって出口管82が突き出し、この出口管82が中継タンク72から横向きに突き出す入口管73に接続する。
水タンク81を水タンク収納部80から引き出し、出口管82が入口管73から離れたとき、そのままでは水タンク81内の水と中継タンク72内の水が流出してしまう。これを防ぐため、出口管82と入口管73にカップリングプラグ74a、74bを装着する。図4のように出口管82を入口管73に接続した状態では、カップリングプラグ74a、74bは互いに連結し、通水可能な状態になる。出口管82を入口管73から切り離せば、カップリングプラグ74a、74bはそれぞれ閉鎖状態になり、水タンク81と中継タンク72からの水の流出が止まる。
給水管67は中継タンク72に上から入り込み、先端を中継タンク72の底部近くに届かせている。オーバーフロー管68は中継タンク72の上部に接続されている。排水管70は水タンク81の給水口83まで延設されている。
容器61の内部には容器水位センサ75が配設され、中継タンク72には水位センサ76が配設される。容器水位センサ75は容器61の天井部から垂下する1対の電極棒により構成され、水位センサ76は中継タンク72の天井部から垂下する計4本の電極棒により構成される。水位センサ76を構成する4本の電極棒の内、2本は他のものより長く、中継タンク72の底部近くまで届く。もう1本の電極棒はそれより短く、最後の1本の電極棒はそれよりもさらに短い。なお容器水位センサ75は蒸気発生ヒータ65より少し高い位置にある。
加熱室20には、そこから熱媒体を機外に逃がす排気路77が形成されている。ダクト36にも排気路78が形成される。排気路78の入口には電動式のダンパ79が設けられている。
調理器1の動作制御を行うのは図5に示す制御装置90である。制御装置90はマイクロプロセッサ及びメモリを含み、所定のプログラムに従って調理器1を制御する。制御状況は操作部13の中の表示部14に表示される。表示部14は例えば液晶パネルにより構成される。制御装置90には操作部13に配置した各種操作キーを通じて動作指令の入力を行う。操作部13には各種の音を出す音発生装置も配置されている。
制御装置90には、操作部13及び表示部14の他、アンテナモータ24、高周波駆動電源27、下部ヒータ28、ファンモータ35、熱媒体ヒータ42、蒸気発生ヒータ65、給水ポンプ69、排水バルブ71、ダンパ79、容器水位センサ75、及び水位センサ76が接続される。この他、加熱室20内の温度を測定する温度センサ91と加熱室20内の湿度を測定する湿度センサ92が接続される。
食材Fを加熱室20内で支持するのは、食材支持網110と共に食材支持ユニットUを構成するトレイ100である。加熱室20の内部には、挿入されたトレイ100を所定高さに支持するトレイ受けが設けられる。本実施形態では、加熱室20の両側壁に、トレイ100の左辺と右辺を係合させてトレイ100を水平に支持するトレイ受けが形成される。
図2に示すように、トレイ受けは上から下まで3段にわたって設けられている。最上段の第1トレイ受け101は側部熱媒体供給口47より加熱室20に流入する側部熱媒体流より上の位置にトレイ100を支持する。中段の第2トレイ受け102は前記側部熱媒体流が上から吹きかけられる位置にトレイ100を支持する。最下段の第3トレイ受け103は第2のトレイ受け102より下方に所定距離隔たった位置にトレイ100を支持する。第1、第2、第3のトレイ受け101、102、103を構成するのは、それぞれ加熱室20の側壁面から突き出すうね状の突部である。
調理中に脂肪や肉汁が滴り落ちるような食材、あるいは下面に熱媒体を通さねばならないような食材の場合、トレイ100の上に食材支持網110を載置し、その上に食材Fを載置する。食材支持網110の構造は後述する。
調理器1の動作は次の通りである。熱媒体として過熱水蒸気を使用する場合は、扉11を開け、水タンク81を水タンク収納部80から引き出し、給水口83より水タンク81内に水を入れる。十分に水を入れた水タンク81を水タンク収納部80に押し込み、所定位置にセットする。出口管82が中継タンク72の入口管73にしっかりと接続されたことを確認したうえで、食材支持網110を介して食材Fを載置したトレイ100を加熱室20に挿入し、扉11を閉じる。それから操作部13の操作キー群の中で必要なものを押して調理メニューの選択や各種設定を行い、調理をスタートさせる。
出口管82が入口管73に接続されると、水タンク81と中継タンク72が連通し、双方の水位が同じになる。このため、中継タンク72内の水位を測定する水位センサ76によって水タンク81内の水位も測定されることになる。水タンク81内の水量が選択された調理メニューを遂行するのに十分であれば、制御装置90は水蒸気の発生を開始する。水タンク81内の水量が選択された調理メニューを遂行するのに不十分であれば、制御装置90はその旨を警告報知として表示部14に表示する。そして水量不足が解消されるまで水蒸気の発生を開始しない。
水蒸気の発生が可能な状態になると、給水ポンプ69が運転を開始し、蒸気発生装置60への給水が始まる。この時、排水バルブ71は閉じている。
水は容器61の底の方から溜まって行く。一定量の水が給水されたらそこで給水は停止する。なお、制御系の故障などで給水ポンプ69の運転が止まらないようなことがあると、容器61内の水位は所定レベルを超えても上昇し続けるが、溢水レベルに達すれば、容器61内の水はオーバーフロー管68を通じて中継タンク72に戻る。従って容器61から水が溢れるようなことはない。
給水停止後、蒸気発生ヒータ65への通電が開始される。蒸気発生ヒータ65は容器61内の水を直接加熱する。容器61内の水が沸騰し、飽和水蒸気が発生したら、蒸気発生ヒータ52への通電が停止される。そして送風装置32及び熱媒体ヒータ42への通電が開始される。送風装置32は吸込口31を通じて加熱室20内の空気を吸い込む。また蒸気供給管66を通じて蒸気発生装置60より飽和水蒸気を吸い込む。送風装置32が吐出する空気と飽和水蒸気の混合気体はダクト36を通じて熱媒体生成装置40に送り込まれる。この時ダンパ79は排気路78の入口を閉ざしている。
熱媒体生成装置40に入った飽和水蒸気は熱媒体ヒータ42により300℃にまで熱せられ、過熱水蒸気となる。過熱水蒸気は上部熱媒体供給口43より下向き及び斜め下向きの噴流として加熱室20に噴き出す。過熱水蒸気の一部はダクト48を通じて側部熱媒体供給口47に送り込まれ、側部熱媒体供給口47より、やや下向きになった側部熱媒体流として加熱室20に噴き出す。これらの過熱水蒸気によってもたらされる熱で加熱室20内の食材Fは加熱される。
過熱水蒸気による加熱では、食材Fは、対流伝熱(水蒸気の比熱0.48cal/g/℃)に加えて、表面で過熱水蒸気が凝縮する際に生じる凝縮熱(潜熱)によっても加熱される。凝縮熱は539cal/gと大きいため、食材Fに大量の熱を与えることができ、食材Fは急速に加熱される。また加熱水蒸気は食材Fの中で温度の低い部分に優先的に凝縮するので、加熱ムラが少なくなる。
過熱水蒸気は、表面温度の低い食材Fに付着すると直ちに凝縮して凝縮水となり、凝縮熱で大量の熱を伝達する。その後食材Fから水分が蒸発し始め、復元過程を経てから乾燥が始まる。従って食材Fは、内部に水分を保持しつつ、表面はパリッとした仕上がりになる。また高温空気による調理に比べ、脱油効果、減塩効果、ビタミンC破壊抑制効果、油脂酸化抑制効果ともに大きい。
過熱水蒸気による調理の際、熱媒体ヒータ42への通電が連続的に行われる訳ではない。時々下部ヒータ28への通電に切り替えられる。ちなみにヒータの消費電力は、例えば、蒸気発生ヒータ65が1300W、熱媒体ヒータ42も1300W、下部ヒータ28が700Wといった具合に設定される。一般家庭の電力事情を考えた場合、これらのヒータを2個以上同時に通電対象とすることはできないので、デューティー制御により時分割で順次通電対象を切り替えて最適結果が得られるようにしている。これは高温空気による加熱の場合も同様である。
加熱室20内の水蒸気量が多くなった場合、余剰の水蒸気は排気路77から機外に放出される。その水蒸気が調理器1の周辺に結露して錆やカビを発生させるといったことのないよう、機外に出す前に水蒸気を凝縮させ、ドレンの形で排出する仕組みを採用してもよい。
蒸気発生装置60で蒸気を発生し続けていると、容器61内の水位が低下する。水位が所定レベルに低下したことを容器水位センサ75が検知すると、制御装置90は給水ポンプ69の運転を再開する。給水ポンプ69は中継タンク72内の水を吸い上げ、容器61に一定量の水を補充する。水補充完了後、制御装置90は給水ポンプ69の運転を再び停止する。
調理終了後、制御装置90が表示部14にその旨の表示を出し、また合図音を鳴らす。調理終了を音と表示により知った使用者は扉11を開け、加熱室20からトレイ100を引き出す。それ以後の調理の予定がなければ排水バルブ71が開き、容器61内の水は水タンク81に戻される。
熱媒体として高温空気を使用する調理メニューを選択した場合は、水タンク81内の水量を問うことなく、すぐに熱媒体ヒータ42への通電と、送風装置32の運転が開始される。今度は高温空気の噴流で食材Fが加熱されることになる。過熱水蒸気による加熱の場合と同様、熱媒体ヒータ42と下部ヒータ28は時分割で通電制御される。
過熱水蒸気または高温空気で調理を行っている際に扉11を開けると、使用者の方に過熱水蒸気または高温空気が流れる可能性がある。調理終了後も同様である。そのため、高温の熱媒体が循環している期間中に扉11が開けられたときは、ダンパ79が動作して排気路78の入口を開き、排気路78に高温熱媒体を誘導するようになっている。
高周波加熱による調理メニューを選択した場合は、高周波発生装置21が駆動される。高周波発生装置21は、単独でも使用され得るし、過熱水蒸気または高温空気との併用も可能である。
前述の通り、食材Fはトレイ100に載置された状態で加熱室20に入れられるが、その時どのトレイ受けにトレイ100を支持させるかは調理メニューによって異なる。過熱水蒸気による調理を選択したときは、トレイ100は第2トレイ受け102に支持されるべきものであり、その旨が表示部14に指示として表示される。高温空気による調理は、第1トレイ受け101、第2トレイ受け102、第3トレイ受け103のいずれにトレイ100を支持させた状態でも可能である。高温空気による調理の場合、第1トレイ受け101と第3トレイ受け103の両方に1枚ずつトレイ100を支持させて上下2段で調理を行うこともできる。2段調理を選択したときは、第1トレイ受け101と第3トレイ受け103を使用すべき旨が表示部14に表示される。
第2トレイ受け102でトレイ100を支持する場合、トレイ100の上には食材支持網110を置き、食材Fをトレイ面から浮かせて支持する。第1トレイ受け101または第3トレイ受け103に支持されたトレイ100においても食材支持網110は効用を発揮する。しかしながら第2トレイ受け102に支持されたトレイ100にあっては、側部熱媒体供給口47から斜め下に噴出する側部熱媒体流を食材Fの下に回り込ませるため、少なくともこの場合の食材支持網110の使用はほぼ必須となる。
第2トレイ受け102に支持されたトレイ100の上の食材Fには、上部熱媒体供給口43より下向きに過熱水蒸気が吹き付けられる。また側部熱媒体供給口47からの過熱水蒸気の側部熱媒体流がトレイ100の上面に当たって上向きに方向を変えることにより、食材Fの下面にも過熱水蒸気が吹き付けられる。このように上下から過熱水蒸気が吹き付けられることにより、食材Fは対流伝熱による熱と凝縮熱(潜熱)を満遍なく受け取り、効率的に加熱される。食材Fから滴り落ちる脂肪や肉汁はトレイ100に受けられ、調理後に廃棄処理される。
第2トレイ受け102に支持されたトレイ100の上の食材Fを高温空気で調理することも勿論可能である。食材支持網110で食材Fを浮かせておけば、食材Fは上下からの高温空気で満遍なく加熱される。この場合も食材Fから滴り落ちる脂肪や肉汁はトレイ100に受けられ、調理後に廃棄処理される。
食材支持ユニットUの第1実施形態を図6−8に基づき説明する。図6は上面図、図7は正面図、図8は食材支持網110のみの側面図である。
トレイ100は金属板を浅皿状にプレス成形したものであり、平面形状は正方形に近い矩形で、周縁に額縁状の縁部105を有している。食材支持網110はステンレス鋼線製で、格子状の網部111とこれを支える脚部112からなる。網部111はトレイ100の縁部105より内側の部分とほぼ同大である。脚部112はステンレス鋼線をそり状に曲げたものであり、網部111の左右両辺に1個ずつ配置され、溶接固定される。
網部111の四辺には、食材Fが滑り落ちるのを防止する欄干部が設けられる。欄干部もステンレス鋼線製で、網部111に溶接固定される。欄干部には、網部111の前辺及び後辺に溶接される欄干部113と、網部111の左辺及び右辺に溶接される欄干部114がある。欄干部114の両端部は網部111の前辺と後辺において網部111の平面投影から張り出し、転倒防止部115を構成する。
食材支持網110をトレイ100に載置すると、転倒防止部115が縁部105の上面に対向する。転倒防止部115は、その先端が縁部105の外周縁に達する程度にまで張り出している。上下方向の位置に関して言えば、転倒防止部115は縁部105に接していてもよく、縁部105との間に隙間が生じていてもよい。但し隙間があると食材支持網110が傾き得ることになるので、隙間の値は適当な範囲にとどめる。
上記のような食材支持ユニットUを加熱室20に挿入して調理を行い、調理完了後、ミトンをはめた手で食材支持ユニットUを引き出すとき、トレイ100の底と食材支持網110の網部111の前辺(この場合は手前側にある欄干部113)を親指とそれ以外の指とで挟む形になることがある。そのような場合、食材支持網110が本発明を実施しない形のものであると、食材支持網110はほぼ確実に転倒への道をたどっていた。特に、本実施形態のように脚部112が網部111の左右両辺にしかなく、またトレイ100を傷つけないよう角部に大きなアールがつけられているそり形状である場合など、食材支持網110は丁度揺りかごのように傾きやすくなる。そのため、欄干部113が押さえられると食材支持網110が勢い良く傾き、食材Fが落下したり、食材Fや肉汁などの液体が使用者の方に飛んできて使用者の衣服を汚す可能性がある。
これに対し本発明では、欄干部113を押さえることにより食材支持網110に傾動のモーメントが生じたとしても、転倒防止部115がトレイ100の縁部105に当たることにより傾動が止まる。これにより、食材支持網110が転倒しにくくなり、食材Fが落下したり、肉汁などの液体が飛散して、使用者の方に飛んできたりすることが防止される。よって、安全性の高い加熱調理器を提供できる。
転倒防止部115は縁部105の外周縁まで張り出している。このため、食材支持網110が傾こうとしたとき、転倒防止部115が縁部105の外周縁に係合するから、転倒防止部115を梃子に見立てた場合、梃子が長くなったのと同じ理屈になり、傾動に強く抵抗して食材支持網110の転倒を防ぐ。また転倒防止部115が短いと、食材支持網110をトレイ100の上に置いたとき、食材支持網110が斜めになって転倒防止部115が縁部105の内側にのめり込んでしまい、転倒防止部115の機能が果たされなくなることがあるが、縁部105の外周縁に達する程度の長さがあればその心配はない。
欄干部113は、真上から見た場合、転倒防止部115の端より外側に張り出していないのが望ましい。そのようにしておけば、欄干部113に真上から力がかかった場合、食材支持網110の転倒を完全に防ぐことができる。
本実施形態ではトレイ100の縁部105の上面は平面である。この面が平面以外の面形状、例えば円筒面であるならば、転倒防止部115の形状をその面形状に沿う形に変形すればよい。
なお、網部111の上に別途トレイ(以下第2トレイと呼ぶ)を載置し、この第2トレイ上にてクッキーなどの被加熱物を焼く調理を行うこともできる。このとき、トレイ100を第2トレイ受け102にて支持する。こうすることで、第2トレイの下部にも、熱媒体(この場合は熱風)を供給することができ、クッキーなどの被加熱物に焼きムラが生じる可能性を低減できる。
欄干部113と欄干部114は、第2トレイを載置する際の位置決めとしての機能も果たす。網部111の前辺及び後辺に設けられている欄干部113は、使用者がトレイ100と網部111と第2トレイとを同時に掴んだ際に、第2トレイが転倒しにくくする転倒抑制機能も兼ね備える。なお、欄干部114の転倒防止部115を利用して、欄干部113を形成するような構成としても良い。あるいは、転倒防止部115の形状をトレイ100の平面に沿う転倒抑制部分と、転倒抑制部分から上方向に延長し、第2トレイを載置する位置決めの機能をもたせた位置決め部分とからなる形状としてもよい。
食材支持ユニットUの第2実施形態を図9−11に基づき説明する。図9は部分上面図、図10は正面図、図11は部分側面図である。
第2実施形態では、食材支持網110に欄干部がなく、欄干部の端を延長して転倒防止部115を形成することができない。そこで、ステンレス鋼線の別部材を食材支持網110に溶接し、転倒防止部115としている。なお図には食材支持網110の前辺部分しか示されていないが、後辺部分にも同様にして転倒防止部115が形成されている。
食材支持ユニットUの第3実施形態を図12−14に基づき説明する。図12は部分上面図、図13は正面図、図14は部分側面図である。
第3実施形態でも、食材支持網110に欄干部がなく、欄干部の端を延長して転倒防止部115を形成することができない。そこで、脚部112をヘアピン状に屈曲して転倒防止部115としている。このようにすれば、脚部112と一体の堅牢な転倒防止部115を、材料費の大幅増を招くことなく実現できる。また別部材を溶接する必要がないため、生産性が向上する。なお食材支持網110の後辺側にも同様にして転倒防止部115が形成されていることは言うまでもない。
脚部112を利用して転倒防止部を形成するにあたっては、脚部112にリングを嵌合固定し、それを転倒防止部にする、といったやり方も可能である。
上記各実施形態では、食材支持網110の網部111の平面投影から張り出す形で転倒防止部115を形成したが、転倒防止部115は必ずしも網部111の平面投影から張り出している必要はない。網部111の平面投影から張り出していなくても、転倒防止部115を設ければ、転倒防止部115を設けない場合より、トレイ100と網部111の前辺を同時に掴まれたときに食材支持網110は傾きにくくなり、傾き抑制の効果は得られるからである。
また、トレイと食材支持網の組み合わせからなる食材支持ユニットを用いるものであれば、焼物料理でなく専ら冷凍食材の解凍に用いられる加熱調理器や、高周波加熱調理器で解凍を行う場合であっても本発明の適用対象となる。
食材支持網は必ずしも金属製である必要はない。冷凍食材解凍用の食材支持網であれば、合成樹脂(耐熱温度は高い方が好ましい)で形成することもできる。
以上本発明の実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することが可能である。