JP4705276B2 - ガス放電表示装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータおよびテレビ等の画像表示に用いるガス放電表示装置に関し、特に面放電AC型プラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハイビジョンをはじめとする高品位で大画面のテレビに対する期待が高まっている中で、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel,以下PDPと記載する)は、小さい奥行きでも大画面を実現することが可能である点で注目されており、既に60インチクラスの製品も開発されている。
【0003】
PDPは、大別して直流型(DC型)と交流型(AC型)とに分けられるが、現在では大型化に適したAC型が主流となっている。
一般的な交流面放電型PDPは、前面パネルと背面パネルとが隔壁を介して平行に配され、隔壁で仕切られた放電空間内には放電ガスが封入されている。そして、前面パネル上には走査電極と維持電極が平行配設され、その上を誘電体層が覆っている。そして、背面パネル上には、アドレス電極と隔壁が配され、隔壁間に赤,緑,青の蛍光体層が配設されている。
【0004】
図13は、このPDPの電極マトリックスを示す図であって、本図では走査ラインLの数nは4、アドレスラインの数mは6として示している。
各走査電極SC1…SC4と各維持電極SU1…SU4とが対をなして当ピッチで平行に配され、これらと直交してアドレス電極A1…A6が配されている。そして、走査電極SC及び維持電極SUの対とアドレス電極Aとが立体交差するところに、放電セルが形成されている。隣り合う放電セルの間は隔壁群RIB1…RIB7で仕切られている。
【0005】
そして、PDPの駆動時においては、各電極に駆動回路でパルスを印加することによって放電を発生させると、それに伴って放電ガスから紫外線が放出され、蛍光体層の蛍光体粒子(赤,緑,青)がこの紫外線を受けて励起発光するようになっている。
ところで、各放電セルは元来、点灯か消灯の2階調しか表現できないため、1フィールドを、固有の重みを持つ複数のサブフィールドに分割して点灯時間を時分割し、その組み合わせによって中間階調を表現する方式(フィールド内時分割階調表示方式)が用いられている。
【0006】
図14は、256階調を表現する場合における1フィールドの分割方法を示す図であって、横方向は時間、斜線部は放電維持期間を示している。
図15は、この方式でPDPを駆動する際に、1つのサブフィールドにおいて各電極に印加する駆動電圧波形の一例を示す図である。本図に示すように、1つのサブフィールドは、書き込み期間、維持期間および消去期間に分かれている。
【0007】
書き込み期間では、維持電極SU1…SUnを一定電位(図15では0V)に保ち、表示する画像データに応じて選択的に書き込みパルスPaがアドレス電極A1…Amに印加されると共に、前記書き込みパルスPaと逆相の走査パルスPscnが走査電極SC1…SCnに加えられる。
それによって、走査電極−アドレス電極間の電位差によって第1の書き込み放電を起こると同時に、その放電をトリガとして走査電極−維持電極間に第2の書き込み放電が生じ(以降、第1の書き込み放電及び第2の書き込み放電を合わせて「書き込み放電」と呼ぶことにする。)、維持放電に必要な壁電荷が形成される。
【0008】
このような書き込み放電を各走査電極ごとに順次起こすことによって、画面全体に書き込みがなされる。
維持期間では、走査電極SC1…SCn及び維持電極SU1…SUnに一括して、交流維持パルスPsx及びPsyが印加される。これにより、書き込み期間に壁電荷が形成された放電セルで維持放電が継続して起こり、画像が表示される。
【0009】
消去期間においては、全ての維持電極に消去パルスPeが印加され、消去放電が発生される。この消去動作によって、維持放電終了後に残留した壁電荷をほぼ中和することができる。
ところでこの駆動方法において、限られた長さの書き込み期間内に多数の走査ラインを走査する必要があるため、書き込み放電は不安定になりやすい。そして、書き込み放電が不安定であると、その後の維持放電による発光が不安定となる。
【0010】
ここで書き込み電圧を大きく設定できればよいが、データドライバの性能に限界があるため、書き込みパルスの電圧を大きくすることは実際上できない。
よって、良好な画像表示を行うために、限られた長さの書き込み期間内において、書き込み放電動作を確実に行わせることが課題となっている。
また、PDPにおいては、発光輝度を向上させるために、放電ガスの封入圧力を大気圧以上に設定したり放電ガスとしてXe分圧が10%以上であるようなXeを含有する放電ガスを封入したものも開発されている。特に、このようなPDPは放電開始電圧が高くなるので、書き込み放電が不安定になりやすいという課題も顕著なものとなり、上記図15に示す駆動方法では駆動することが難しい状態である。
【0011】
このような課題に対して、例えば、特開平8−212930号公報では、書き込み期間の前に初期化期間を設けた駆動方法が示されている。
図17は、この駆動方法の駆動電圧波形の一例を示すものであり、初期化期間において正極性の初期化パルスPrnを走査電極SC1…SCnに印加している。
このように矩形波の初期化パルスを印加することによって初期化放電が起こると、消去放電後に残留した放電セル内の壁電荷を完全に中和するという効果が得られると共に、後続の書き込み放電を容易かつ安定に生じさせるプライミング効果を得ることができるので、書き込みの安定化を図る上で有効ではある。しかし、これだけで書き込み放電の安定化に対して十分でるとは言えず、別の解決方法も望まれている。
【0012】
書き込みの安定化を図る課題に対して、更に、特開平6−289811号公報において、書き込み期間において、書き込みパルスと逆極性のベースパルスを走査電極に印加する駆動方法が開示されている。
図16はこのような駆動方法における駆動電圧波形の一例を示したものであるが、本図では、アドレス電極A1…Amには正極性の書き込みパルスPaが印加され、走査電極SC1…SCnには、負極性で波高が一定のベース電圧Vbを持つベースパルスが書き込み期間全体にわたって印加されると共に、それに重畳して同じく負極性の走査パルスPscoが印加されている。
【0013】
このように走査電極にベースパルスを印加すると、印加されたベースパルスの分だけアドレス電極−走査電極間および走査電極−維持電極間の電位差が大きくなるので、上述の第1の書き込み放電が生じやすくなると共に、第2の書き込み放電もより確実に起こすことができる。その結果、書き込みパルス電圧を高くしなくても、書き込み放電を安定して行い表示品質を向上することができる。
【0014】
また、このベースパルスを印加する駆動方法を用いれば、放電ガスの封入圧力が大気圧以上である場合や放電ガスとしてXe分圧が10%以上であるようなXeを含有する放電ガスを封入したPDPにおいても一応駆動は可能となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このベースパルスを印加する駆動方法においても、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定した場合には、書き込み期間の最初において誤放電が生じることによって画質劣化が生じる傾向がある。
例えば、製造ばらつきなどによって書き込み放電が生じにくいPDPにベースパルスを印加する駆動方法を適用する場合、書き込み電圧を高くするために、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定しなければならないが、書き込み期間の最初において誤放電が生じることによって画質劣化が生じる傾向がある。
【0016】
よって、高い書き込み電圧を要するPDPに対しても安定して書き込みを行えるようにすることが望まれる。
本発明は、ガス放電パネルに安定して書き込み動作を行うことができるようにし、それによって優れた画質で表示することのできるガス放電装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、第1基板と第2基板とが互いに対向して配設され、第1基板の対向面に第1電極群と第2電極群とが互いに並行に配されていると共に、第2基板の対向面に第1電極群及び第2電極群と立体交差して第3電極群が配され、第1基板と第2基板との間に放電ガスが封入されたガス放電パネルと、書き込み期間においてデータの書き込みを行ない、維持期間において放電維持を行うガス放電表示装置において、書き込み期間において、走査パルスと重畳するようにベースパルスを走査電極群に印加するのであるが、そのベースパルスにおける印加開始から走査パルスが印加される直前までの平均電圧変化率を10V/μ秒以下に規定した。
【0018】
上記ガス放電表示装置において、書き込み期間に、第1電極(走査電極)に走査パルスを順次印加しながら、それに合わせて第3電極(アドレス電極)の中の選択された電極に走査パルスとは逆極性の書き込みパルスを印加することによって画像書き込みを行い、続いて、維持期間に、第1電極(走査電極)と第2電極(維持電極)との間に電圧を印加することによって放電維持を行い、画像を表示することができる。
【0019】
また更に、第1電極に印加するベースパルスの極性は、基本的に走査パルスと同じ極性である。このように走査パルスと同極性のベースパルスを印加することによって、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を「書き込み放電開始電圧」よりも小さく設定しても、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差にベース電圧分が加算された値が「書き込み放電開始電圧」を超えるようにすれば、走査パルス及び書き込みパルスを印加するときに、第1電極と第3電極との間の電圧が「書き込み放電開始電圧」を超えるので、書き込み放電が安定して行われる。
【0020】
ここで、「書き込み放電開始電圧」は、書き込み期間において放電が開始される電圧を示す。
なお、ベースパルスの波高は、通常、書き込み期間全体にわたってほぼ一定であるが、「書き込み放電開始電圧」を超える電圧が発生された後は、確実に放電が行われる程度で変動があってもよい。
【0021】
ここで、「ベースパルスの印加開始から走査パルスを印加する直前までの平均電圧変化率」の意味について説明する。
ベースパルスの印加開始は、ベースパルス立ち上がりが開始する時点である(なお、本明細書で「立ち上がり」は、パルス極性が正極性の場合はパルスの前縁から電圧が上昇する部分、パルス極性が負極性の場合はパルスの前縁から電圧が下降する部分を指すものとする。)。
【0022】
また、「走査パルスを印加する直前」について説明する。
走査パルスの電圧値と書き込みパルス電圧値との差を、書き込み放電開始電圧よりも小さく設定した場合、第1電極と第3の電極間の電圧に、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を加算した加算値は、ベースパルスの印加開始時点では「書き込み放電開始電圧」より小さいが、印加開始から時間が経過するに従って大きくなり、ある時点で「書き込み放電開始電圧」に到達する。つまり、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を第1電極、第3電極間の電圧に加算した値が書き込み放電開始電圧以上になる程度に、走査パルスが印加される直前には第1電極と第3電極間に電圧を印加しておく必要がある。
【0023】
このように、走査電極にベースパルスを印加開始した時点及び走査パルスを院加する前の期間(以降、「ベースパルス印加タイミング」とする。)において、平均電圧変化率を10V/μ秒以下と緩やかにすることによって、以下の作用効果を奏する。
本発明者は、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定した場合に書き込み期間の最初に誤放電が生じる原因を考察したところ、ベースパルス印加開始タイミングTbにおいて、アドレス電極−走査電極間では放電が発生していない状態で、走査電極−維持電極間の電圧が放電開始電圧を越えてしまうことによって大きな放電が発生することが原因であることを見出した。
【0024】
そして、ベース電圧の絶対値を大きく設定した場合でも、上記のようにベース電圧を印加開始した後の電圧変化を緩やかにすれば、放電セル内部の電圧が放電開始電圧を超えるときに微小な放電が生じるのみであって、大きな放電は生じないことも見出した。
即ち本発明によれば、ベース電圧の絶対値を大きく設定した場合でも、ベースバルス印加タイミングにおいて誤放電が生じるのを回避できるので、書き込みを安定に行うことができるという効果が得られる。
【0025】
また、ベースパルス印加タイミングに大きな放電が生じると、当該放電に伴う発光によってコントラストが低下するが、本発明によれば、このような発光が抑えられるのでコントラストの低下も生じにくい。
このような本発明は、上述した初期化パルスを印加する技術と組み合わせることにより顕著な効果を奏する。
【0026】
即ち、走査電極群に、初期化パルスを印加した後に、書き込み期間に初期化パルスとは逆極性のベースパルスを印加する場合には、ベースパルス印加タイミングにおいていっそう誤放電が発生しやすい状態になるが、ベースパルス印加タイミングにおいて緩やかに電圧を変化させれば誤放電が防止できるので、より効果的である。
【0027】
この場合、初期化パルスの立ち上がり部分並びに立ち下がり部分も、平均電圧変化率10V/μ秒以下で変化させることが好ましく、また、初期化パルスの立ち下がり部分からベースパルス印加タイミングの期間を通して連続的に変化させることが好ましい。
また、本発明を用いれば、従来駆動することの難しかった封入ガス圧力が大気圧以上のガス放電パネルや放電ガス中のXe分圧が10%以上のガス放電パネルでも、安定して駆動することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明のガス放電表示装置の一実施形態について、図面を用いて説明する。本発明のガス放電表示装置は、ガス放電型PDP、該PDPを駆動する駆動装置を備えている。
〔PDPの構造について〕
図1は、本発明の一実施の形態に係る交流面放電型PDPの概略構成を示す斜視図である。
【0029】
このPDPは、前面ガラス基板11上に走査電極群SC…,維持電極群SU…、誘電体層13、保護層14が配されてなる前面パネル10と、背面ガラス基板21上にアドレス電極群A…、誘電体層23が配された背面パネル20とが、電極群SC…,SU…とアドレス電極群A…とを対向させた状態で間隔をおいて互いに平行に配されて構成されている。そして、前面パネル10と背面パネル20との間隙は、ストライプ状の隔壁RIBで仕切られることによって放電空間40が形成され、当該放電空間40内には放電ガスが封入されている。
【0030】
また、この放電空間40内において、背面パネル20側には、蛍光体層31が配設されている。この蛍光体層31は、赤,緑,青の順で繰返し並べられている。
このPDPの電極マトリックスは、従来例の図13に示したものと同様であって、走査電極群SC1…SCn,維持電極群SU1…SUn及びアドレス電極群A1…Amは、共にストライプ状であって、各走査電極SC1…SCn,維持電極SU1…SUnは隔壁RIBと直交する方向に、アドレス電極A1…Amは隔壁RIBと平行に配されている。
【0031】
走査電極群SC1…SCn,維持電極群SU1…SUn,アドレス電極群A1…Amは、銀,金,銅,クロム,ニッケル,白金等の金属単独で形成してもよいが、走査電極群SC1…SCn,維持電極群SU1…SUnについては、ITO,SnO2 ,ZnO等の導電性金属酸化物からなる幅広の透明電極の上に幅細の銀電極を積層させた組み合わせ電極を用いてもよい。
【0032】
誘電体層13は、前面ガラス基板11の電極群SC1…SCn,SU1…SUnが配された表面全体を覆って配設された誘電物質からなる層であって、一般的に、鉛系低融点ガラスが用いられているが、ビスマス系低融点ガラスで形成しても良い。
保護層14は、酸化マグネシウム(MgO)からなる薄層であって、誘電体層13の表面全体を覆っている。
【0033】
隔壁RIBは、背面パネル20の誘電体層23の表面上に突設されている。
隣り合う放電セルの間は隔壁群RIBで仕切られ、これによって隣接する放電セルへの放電拡散が遮断されるため、解像度の高い表示を行うことができるようになっている。
また、この隔壁RIBは、両ガラス基板11,21間を隔てるスペーサとしての働きもなしている。なお、この隔壁RIBは必ずしも必要ということではなく、隔壁RIBの代りにガラスビーズなどをスペーサとして配設してもよい。
【0034】
放電ガスは、Xeを含む混合ガス(例えばNe−Xe、He−Xe)であって、一般的にはXe含有量は10%未満で封入圧力は大気圧未満(通常は1×104〜7×104Pa程度)に設定されているが、後の実施の形態5で述べるように、Xe含有量を10%以上に設定したり、大気圧より高い圧力(8×104Pa以上の圧力)に設定することよって、パネル輝度及び発光効率を向上させることもできる。
【0035】
〔PDPの駆動方式について〕
このPDPは、駆動装置(後述する駆動装置100)を用いてフィールド内時分割階調表示方式を用いて駆動される。
上記図14に示される分割方法の例では、1フィールドは、8個のサブフィールドSF1〜SF8で構成され、各サブフィールドの放電維持期間の比は、1,2,4,8,16,32,64,128に設定されており、この8ビットバイナリの組み合わせによって256階調を表現できる。なお、NTSC方式のテレビ映像においては、1秒間あたり60枚のフィールド画像で映像が構成されているため、1フィールドの時間は16.7msに設定されている。
【0036】
各サブフィールドは、書き込み期間、放電維持期間という一連のシーケンスで構成されており、1サブフィールド分の動作を8回繰返すことによって、1フィールドの画像表示が行われる。
次に、各サブフィールドにおいて各電極に印加する方式について、以下の実施の形態1〜4において説明する。
【0037】
〔実施の形態1〕
図2は、実施の形態1において、1つのサブフィールドにおいて各電極にパルスを印加するときの駆動電圧波形の一例を示す図である。
書き込み期間においては、アドレス電極A1…Amの中で表示データに応じて選択されたものに、一極性(正極性)の書き込みパルスPaが印加される。
【0038】
また、走査電極SC1…SCnに一括して、書き込みパルスPaと反対極性(負極性)のベースパルスを書き込み期間全体にわたって印加すると共に、走査電極SC1…SCnごとに順次、上記書き込みパルスPaを印加するタイミングに合わせて、ベースパルスと同極性(負極性)の走査パルスPscoを重畳して印加することによって書き込み放電を起こして書き込みを行う。
【0039】
維持期間においては、走査電極群SC1…SCn及び維持電極群SU1…SUnに、維持パルスPsx及び維持パルスPsyを交互に印加する。これによって、書き込み期間に壁電荷が形成されたセルで維持放電が継続して起こり、画像表示がなされる。
消去期間においては、維持電極群SU1…SUnに、消去パルスPeを印加することによって、放電セルに残留している壁電荷を消去する。
【0040】
(ベースパルスについての説明)
上記ベースパルスは、書き込み期間全体にわたって印加される幅の広いパルスであるが、その立ち上がり部分は、ほぼ一定の傾斜で徐々に電圧が変化しているランプ状波形である。即ち、書き込み期間の導入部Ia(ベースパルスの立ち上がり開始からベース電圧Vbに達するまでの期間)において走査電極SC1…SCnに印加する電圧は、徐々に変化した後に一定のベース電圧Vbに達している。そして、走査パルスPscoは、書き込み期間の導入部Iaにおいては印加されず、ベースパルスがベース電圧Vbに達してから印加されている。なお、ランプ波形(Ramp Waveform)に関しては、ASIA DISPLAY 98中の「Plasma Display Device Challenges(Larry F Weber)」に記載されている(P23〜27)。
【0041】
ここで、走査パルスPscoにベースパルスを重畳することによる基本的な効果について説明する。
先ず、上記PDPにおいて、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Amとの間で放電が開始される一定の「書き込み放電開始電圧」が存在する。即ち、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Amとの間に、きわめてゆっくり電圧値を上昇させながら電圧を印加すると、ある電圧レベルに達したときに放電が開始されるが、このときの電圧が「書き込み放電開始電圧」である。
【0042】
一般的に、書き込み期間にベースパルスを印加しない場合には、走査パルスPscoの電圧値と書き込みパルスPaの電圧値との差は、この「書き込み放電開始電圧」よりも大きく設定する必要があるが、書き込み期間にベースパルスを印加する場合は、走査パルスPscoの電圧値と書き込みパルスPaの電圧値との差に、ベース電圧Vbを加算した値が「書き込み放電開始電圧」を越えればよいので、走査パルスPscoの電圧値と書き込みパルスPaの電圧値との差を、書き込み放電開始電圧よりも小さく設定することができる。
【0043】
即ち、ベースパルスを印加すれば、書き込みパルスPaの電圧値をあまり高く設定しなくても、走査パルスPsco及び書き込みパルスPaの印加時に走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Amとの間で、「書き込み放電開始電圧」を超える電位差が生じ、安定した書き込み放電がなされる。
そして、この場合、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Am間の電圧に、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を加算した加算値は、ベースパルスの印加開始時点では「書き込み放電開始電圧」より小さいが、導入部Iaにおいて時間経過に伴って大きくなり、導入部Iaの途中で「書き込み放電開始電圧」に達し、導入部Iaの終了時に、少なくとも走査パルスが印加される前には「書き込み放電開始電圧」を超えることになる。
【0044】
更に、本実施形態では、ベースパルスが上記のように立ち上がり部分が緩やかかなため、以下のような効果を奏する。
書き込み期間において、図16の従来例のように立ち上がりが急なベースパルスを印加する方式を用いてPDPを駆動する場合に、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定すると、ベースパルス印加タイミングTbにおいて、アドレス電極−走査電極間では放電が発生していない状態で、走査電極−維持電極間の電圧が放電開始電圧を越えてしまい、大きな放電が発生することが原因で誤放電が生じてしまう傾向がある。この誤放電は、パネルの特性にもよるが、ベース電圧Vbの絶対値が100Vを超えると生じやすくなる。また、大きな放電が生じると、発光によってコントラストも低下する。
【0045】
特に、PDP内の放電セルごとに放電の起きやすさが不均一である場合、書き込み放電の起きやすい放電セルで誤放電が発生しやすい。
これに対して、図2のように、書き込み期間の導入部Iaで、傾斜を保って徐々に電圧を変化させるように印加すれば、この導入部Iaで放電セル内の電圧が放電開始電圧を越えたとしても、放電開始電圧を越えた時点から表示発光にほとんど寄与しない微小な放電が発生するのみで、大きな誤放電は生じない。このときに起こる放電が微小なのは、電圧の変化が緩やかであるため、放電セル内の電圧が放電開始電圧を大きく超えることがなく、放電が起こってもすぐに停止するからである。
【0046】
従って、立ち上がりの緩やかなベースパルスを用いると、ベース電圧Vbの絶対値を大きく、100Vを超える値に設定しても、誤放電の発生を抑えることができ、導入部Iaでの発光に伴うコントラストの低下も抑えられる。
導入部Ia(立ち上がり開始からベース電圧Vbまでの期間)における平均傾きは10V/μ秒以下に設定することが好ましい。
【0047】
また、導入部Iaの中で、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Am間の電圧に、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を加算した加算値が、「書き込み放電開始電圧」に到達する時点(書き込み放電開始電圧到達時点)までの期間における平均傾きを10V/μ秒以下に設定してもよい。
更に、ベース電圧Vbに達したと同時に走査パルスPscoを印加してもよいし、休止時間を設けて走査パルスPscoを印加してもよい。つまり、ベースパルスの印加開始から走査パルスPscoを印加する直前までの間で、平均傾きを10V/μ秒以下の期間を設ければよい。
【0048】
また、このように立ち上がりの緩やかなベースパルスを用いることによるもう一つの利点として、緩やかな電圧変化の際に生じる微小な放電により得られるプライミング効果が、後続の書き込み放電を補助するので、放電遅れ及びそのばらつきが軽減されることもあり、それによって、書き込みを更に安定して行うことが可能となる。
【0049】
(ベースパルスの導入部Iaにおける波形の変形例)
上記図2に示したベースパルスは、導入部Iaにおける波形が直線的に変化するランプ状である。導入部Iaにおける平均傾き若しくは導入部Iaの中で書き込み放電開始電圧到達時点までの平均傾きが10V/μ秒以下であれば、微小期間において傾きが10V/μ秒を越えても上記効果が得られる。
【0050】
例えば、図3(A)に示すように、導入部Iaにおいてベースパルス波形が指数関数的に変化する部分を有している場合、或は図3(B)に示すように、導入部Iaにおいてベースパルス波形が微細な階段状に変化する部分を有している場合、或は図3(C)に示すように、導入部Iaにおいてベースパルス波形が細かく振動しながら変化する部分を有している場合、或は、これらを複合した場合であっても、上記のように平均傾きが10V/μ秒以下であれば、同様の効果が得られる。
【0051】
以上のように、本実施の形態の駆動方式を用いれば、上記作用効果によって、書き込みにくい放電セルを持つPDPに対しても、安定した書き込みを行うことが可能となる。
〔実施の形態2〕
図4は実施の形態2における駆動電圧波形の一例を示す図である。
【0052】
本実施の形態では、初期化期間を設けて走査電極SC1…SCnに初期化パルスPrnを印加するが、その他の書き込み期間から消去期間にかけては実施の形態1と同様の電圧波形を各電極に印加する。
これによって以下のような効果を奏する。
走査電極SC1…SCnに対して、初期化期間に図17に示したような正極性矩形波の初期化パルスPrnを印加して初期化を行った後は、直前のサブフィールドにおける消去放電後に残留した放電セル内部の壁電荷が完全に中和されるため、書き込み放電が起こりやすい状態となる。
【0053】
しかし、この状態で書き込み期間に図16に示したような立ち上がりの急な負極性のベースパルスを印加すると、初期化を行わないときと比べて更に、ベースパルス印加タイミングTbにおいて誤放電が起こりやすくなってしまう。なお、パネルの特性にもよるが、初期化を行った場合、ベース電圧Vbの絶対値が15Vを超えると誤放電が生じやすくなる。
【0054】
これに対して、図4に示すように、ベースパルスを印加させて、書き込み期間の導入部Iaにおいてゆるい傾斜で電圧変化させればよい。初期化パルスの印加によって放電セル内部が放電しやすい状態になっていても、実施の形態1で説明した作用と同様、導入部Iaで放電セル内の電圧が放電開始電圧を越えた時点から表示発光にほとんど寄与しない微小な放電が発生するのみで、大きな誤放電は生じない。
【0055】
本実施の形態においても、導入部Iaにおける平均傾き若しくは導入部Iaの中で書き込み放電開始電圧到達時点までの平均傾きは、10V/μ秒以下に設定することが好ましい。
また、上記実施の形態1において「導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例」として説明した内容は、本実施の形態にもあてはまる。
【0056】
以上のように、本実施の形態のように初期化パルスを印加して且つ立ち上がりの緩やかなベースパルスを用いると、初期化パルスを印加することによる効果とベースパルスを印加することによる効果の両方を得るこができ、且つ誤放電を防止できるので、より安定に書き込みを行うことが可能となる。
〔実施の形態3〕
図5は実施の形態3における駆動電圧波形の一例を示した図である。
【0057】
本実施形態の駆動電圧波形は実施の形態2と同様であるが、初期化期間における初期化パルスPrgの立ち上がり部分Suおよび立ち下がり部分Sdに傾斜を設けた点が異なっている。
このように初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下り部分Sdに傾斜をつけることによって、実施の形態2のように初期化パルスに単純な矩形波を用いる場合と比べて、初期化パルスの電圧設定範囲が広くなると共に、初期化動作をより確実に行うことができるようになる。
【0058】
即ち、初期化パルスの立ち上がり部分Suにおける傾斜が大きいほど、電圧変化が緩やかになるため立ち上がり時に生じる放電の大きさが弱まる。従って、初期化パルスの立ち上がり部分Suに傾斜をつけることによって、初期化放電の大きさを容易に抑制することができるので、それだけ初期化パルスの電圧絶対値を大きく設定することが可能となる。
【0059】
また、PDPの放電セル間で放電特性にばらつきが存在する場合は、初期化パルスの立ち上がり部分に傾斜がないと、すべての放電セルに急に電圧がかかってしまうため、放電しやすい放電セルでは過剰な電圧がかかることによって初期化放電が不安定になる。しかし、初期化パルスの立ち上がり部分に緩やかな傾斜を有する場合は、初期化パルスの電圧が各放電セルにおいて初期化放電に最適な電圧に達した時点で、各放電セルごとに順次初期化放電が起きるため、初期化動作をより確実に行える。
【0060】
一方、初期化パルスの立ち下がり部分Sdにおいて傾斜をつけると、立ち下がり部分での自己消去放電を防ぐことができるので、やはり初期化パルスの電圧絶対値を大きく設定することが可能となり、初期化動作を確実に行うことができる。この自己消去放電とは、パルス電圧の立ち上がり部分における放電後に放電セル内にパルス電圧を打ち消す働きをする壁電荷が蓄積され、パルスが立ち下がったときにその壁電荷の電圧によってセルが放電してしまうという現象である。
【0061】
初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdにおける傾斜は、ベースパルスの導入部Iaと同様、平均電圧変化率が10V/μ秒以下となるように設定することが好ましい。
なお、初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdの両方について傾斜を設けることが好ましいが、どちらか一方だけ傾斜を設けることによっても、その分による効果を得ることができる。
【0062】
また、このように立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdに傾斜を持つ初期化パルスを用いても、書き込み期間において、図16の従来例のように立ち上がりが急なベースパルスを印加した場合には、実施の形態2でも説明したようにベースパルス印加タイミングTbにおいて誤放電が生じやすく発光によってコントラストも低下しやすい。しかし、本実施形態のように書き込み期間の導入部Iaで傾斜をつけていれば、ベースパルス印加タイミングにおける誤放電の発生は防がれ、コントラストの低下も防ぎ、且つ安定した書き込みを行うことができる。
【0063】
また、上記実施の形態1において「導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例」として説明した内容は、本実施の形態にもあてはまる。
(初期化パルスの立ち上がり及び立ち下がり部分の波形についての変形例)
上記図5に示した例では、初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdにおける波形は、直線的に変化するランプ状である。この立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdにおける波形も、実施の形態1の(導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例)で説明したのと同様に、指数関数的に変化する部分を有してもよいし、微細な階段状に変化する部分を有してもよい。また、初期化パルス波形が細かく振動しながら変化する部分を有しもよいし、これらを複合したものであってもよい。
【0064】
以上のように、本実施の形態の駆動方式を用いれば、上記作用効果によって、書き込みにくい放電セルを持つPDPに対しても、安定した書き込みを行うことが可能となる。
〔実施の形態4〕
図6は実施の形態4における駆動電圧波形の一例を示した図である。
【0065】
本実施形態の駆動電圧波形は上記実施の形態3と同様であるが、初期化期間に印加される初期化パルスPrgの立ち下がり部分Sdと、書き込み期間の導入部分Iaとの間に休止期間がない。更に、初期化パルスの立ち下がり開始からベース電圧Vbに達するまでの期間、若しくは初期化パルスの立ち下がり開始から書き込み放電開始電圧到達時点までの期間は、ほぼ一定の傾斜で電圧が連続的に変化している点が異なっている。
【0066】
このように、初期化パルスの立ち下がりからベース電圧Vbに至るまでの間、休止期間をとらず連続的に変化させると、放電セル内の電圧が放電開始電圧を越えた後に、微小放電が連続して発生して荷電粒子が放電空間内に残りやすくなるので、プライミング効果が大きくなる。その結果、書き込み放電の放電遅れ及びそのばらつきが著しく軽減される。
【0067】
よって、誤放電を生じることなく、上記実施の形態3と比べてより安定に書き込みを行うことが可能となる。
なお、図6に示した例では、初期化パルスの立ち下がり開始からベース電圧Vbに達するまでの期間は、ほぼ一定の傾斜で電圧が変化しているが、この期間の傾斜は一定でなくてもよく、電圧変化が連続的であれば同様の効果を奏する。
【0068】
また、上記実施の形態1において、「導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例」として説明した内容、並びに上記実施の形態3において、「初期化パルスの立ち上がり及び立ち下がり部分の波形についての変形例」として説明した内容は、本実施の形態にもあてはまる。
〔実施の形態5〕
本実施形態では、PDPの駆動時に用いる駆動電圧波形については、上記実施の形態1〜4で説明したのと同様であるが、PDPにおける放電ガスの封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高い範囲に限定している。
【0069】
即ち本実施の形態では、PDPの放電ガス封入圧力が大気圧よりも高く設定する、もしくは、PDPの放電ガス中のXe分圧を10%以上に設定する。
このように、PDPの放電ガスの封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高く設定することは、パネル輝度や発光効率を高めるのに有利である。しかし、一般的に、PDPの放電ガス封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高く設定すると、パッシェン則に従って放電開始電圧が高くなるので、高い駆動電圧が必要となる(特開平6−342631のコラム2の8行目〜16行目、「平成8年電気学会全国大会シンポジウムS3−1プラズマディスプレイ放電、平成8年3月」参照)。従って、図15に示すような従来の駆動方法では、このようなPDPを駆動させることは難しい。
【0070】
また、図16に示すように、書き込み期間において走査電極SC1…SCnにベースパルスを印加することによって、書き込み期間に放電セル内にかかる電圧を大きくする方法も有効であるが、この駆動方法をそのままこのPDPに適用すると、実施の形態1の項で説明したように、ベース電圧Vbを大きくしなければならないことから、ベースパルス印加タイミングTbにおいて誤放電が生じやすい。
【0071】
これに対して、本実施の形態では、実施の形態1で説明したように、走査電極群SC1…SCnに立ち上がりの緩やかな(立ち上がり開始からベース電圧Vbに達するまで、若しくは立ち上がり開始から書き込み放電開始電圧到達時点までの平均電圧変化率が10V/μ秒以下である)ベースパルスを印加して駆動しているため、ベース電圧Vbを大きく設定しても誤放電が生じにくい。よって、放電ガスの封入ガス圧が大気圧よりも高いパネルや放電ガス中のXe含有量の高いPDPでも誤放電を生じることなく、容易に駆動を行うことが可能である。
【0072】
この結果、PDPを高輝度・高効率で、且つ安定して駆動することができる。
なお、本実施形態のように、放電ガスの封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高く設定する場合には、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定する必要があるため、特に誤放電が生じやすい状態にある。
〔上記実施の形態1〜5全体に関する変形例など〕
上記実施の形態1〜5では、走査電極群SC1…SCnに印加する初期化パルス及びアドレス電極群A1…Amに印加する書き込みパルスは正極性とし、走査電極群SC1…SCnに印加するベースパルスと走査パルスは負極性とする例を示した。これとは逆に、走査電極群SC1…SCnに印加する初期化パルス及びアドレス電極群A1…Amに印加する書き込みパルスは負極性とし、走査電極群SC1…SCnに印加するベースパルスと走査パルスは正極性としても、同様に実施することが可能で、同様の効果を奏する。
【0073】
上記実施の形態1〜5では、ベースパルスの立ち上がり開始からベース電圧Vbに達するまで、若しくは立ち上がり開始から書き込み放電開始電圧到達時点までの平均電圧変化率を10V/μ秒以下にするのが好ましいとしたが、この期間の電圧変化を更に緩やかに、平均電圧変化率を5V/μ秒以下に設定すれば、より確実に効果を得ることができる。
【0074】
上記実施の形態1〜5では、ベースパルスが立ち上がった後のベース電圧Vbは、書き込み期間全体にわたって一定であるものとしたが、このベース電圧Vbは、必ずしも書き込み期間全体にわたって一定でなくてもよく、緩やかに増減したり、ある程度変動があってもよい。少なくとも書き込み放電開始電圧を超える電圧が発生された後は、確実に各電極間で放電が行われる程度でベース電圧は変動してもよい。
【0075】
〔駆動装置についての説明〕
上述したPDPの各電極に駆動電圧を印加するための駆動装置について以下に説明する。
ここでは、実施の形態2〜4のように初期化パルスを印加する場合について一例を説明する。
【0076】
図7は、このような駆動装置100の構成を示すブロック図である。
この駆動装置100は、外部の映像出力器から入力されてくる映像データを処理するプリプロセッサ101、処理された映像データを格納するフレームメモリ102、フィールド毎及びサブフィールド毎に同期パルスを生成する同期パルス生成部103、走査電極群SC1…SCnにパルスを印加するスキャンドライバ104、維持電極群SU1…SUnにパルスを印加するサステインドライバ105、アドレス電極群A1…Amにパルスを印加するデータドライバ106を備えている。
【0077】
プリプロセッサ101は、入力されてくる映像データからフィールド毎の映像データ(フィールド映像データ)を抽出し、抽出したフィールド映像データから各サブフィールドの映像データ(サブフィールド映像データ)を作成してフレームメモリ102に格納する。また、フレームメモリ102に格納されているカレントサブフィールド映像データから1ラインづつデータドライバ106にデータを出力したり、入力される映像データから水平同期信号、垂直同期信号などの同期信号を検出し、同期パルス生成部103にフィールドごと及びサブフィールドごとに同期信号を送ることも行う。
【0078】
フレームメモリ102は、フィールド毎に、各サブフィールド映像データを分割して格納できるものである。
具体的には、フレームメモリ102は、1フィールド分のメモリ領域(8個のサブフィールド映像を記憶)を2個備える2ポートフレームメモリであって、一方のメモリ領域にフィールド映像データを書き込みながら、他方のメモリ領域から、これに書き込まれているフィールド映像データを読み出す動作を交互に行うことができるようになっている。
【0079】
同期パルス生成部103は、プリプロセッサ101からフィールドごと及びサブフィールドごとに送られて来る同期信号を参照して、初期化パルス,走査パルス,維持パルス,消去パルスを立ち上がらせるタイミングを指示するトリガ信号を生成して、各ドライバ104〜106に送る。
スキャンドライバ104は、同期パルス生成部103から送られてくるトリガ信号に呼応して、初期化パルス、走査パルス、ベースパルス、維持パルスを生成して印加する。
【0080】
図8は、スキャンドライバ104の構成を示すブロック図である。
初期化パルス,維持パルスは、全ての走査電極SC1…SCnに共通して印加されるものであるため、図8に示すように、スキャンドライバ104には、各パルスを発生するため初期化パルス発生器111、維持パルス発生器112aが備えられている。そして、これらのパルス発生器は、フローティンググラウンド方式で直列に接続され、同期パルス生成部103からのトリガ信号に応じて作動することによって、初期化パルス,維持パルスが、走査電極群SC1…SCnに択一的に印加されるようになっている。
【0081】
またスキャンドライバ104は、走査電極SC1,SC2…SCnに順に走査パルスを印加するために、ここでは図8に示すように、走査パルス発生器114と、これに接続されたマルチプレクサ115とを備えている。このスキャンドライバ104は、同期パルス生成部103からのトリガ信号に応じて、走査パルス発生器114でパルスを発生すると共に発生したパルスをマルチプレクサ115で切り換えて出力する方式をとっているが、各走査電極SC1…SCn毎に個別に走査パルス発生回路を設けた構成にすることも可能である。
【0082】
スキャンドライバ104は更に、同期パルス生成部103からのトリガ信号に呼応して走査電極SC1…SCnにベースパルスを印加するベースパルス発生器116を備え、このベースパルス発生器116で発生するベースパルスと上記走査パルスとが重畳されるようになっている。
そして、上記パルス発生器111,112からの出力と、走査パルス発生器114及びベースパルス発生器116からの出力とは、スイッチSW1及びSW2によって、択一的に走査電極群SC1…SCnに印加される。
【0083】
サステインドライバ105は、維持パルス発生器112b,消去パルス発生器113を備え、同期パルス生成部103からのトリガ信号に呼応して、維持パルス並びに消去パルスを生成して維持電極群SU1…SUnに印加する。
データドライバ106は、シリアルに入力される1ラインに相当するサブフィールド情報に基づいて、データパルスをアドレス電極群A1…Amにパラレルに出力するものである。
【0084】
〔初期化パルス発生器及びベースパルス発生器の構成について〕
ベースパルス発生器116においては、立ち上がり部分において電圧が徐々に変化するパルスを発生する。また、実施の形態3,4のような波形で駆動電圧を印加するには、初期化パルス発生器111において、立ち上がり部分及び立ち下がり部分の少なくとも一方において、電圧が徐々に変化するパルスを発生する必要がある。
【0085】
そこで、以下に、緩やかに立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路並びに緩やかに立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路について説明する。
図9(A)に示すパルス発生回路U1は、ランプ状に立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路である。
このパルス発生回路U1は、プルアップFET(Q1)とプルダウンFET(Q2)とが接続されてなるプッシュプル回路に、3相ブリッジドライバであるIC1(例えば、International Recifier製IR−2113)が接続され、プルアップFET(Q1)のゲートとドレイン間にはコンデンサC1が介挿され、IC1のHo端子とプルアップFET(Q1)のゲートとの間に電流制限素子R1が介挿されて構成されている。そしてこのプルアップ回路に対しては、一定の電圧Vset1が印加されている。
【0086】
このパルス発生回路U1において、プルアップFET(Q1)、コンデンサC1及び電流制限素子R1によってミラー積分回路が形成されており、これによって立ち上がり部分の勾配が緩やかなランプ状の波形が形成されるようになっている。
図9(B)は、パルス発生回路U1によってパルスが形成される様子を示す図である。
【0087】
上記パルス発生回路U1において、図9(B)に示されるように、IC1のHin端子にはパルス信号VHin1が、Lin端子にはこれと逆極性のパルス信号VLin1が入力されると、IC1による制御のもとにプッシュプル回路が作動して、出力端子OUT1からは、緩勾配で電圧Vset1まで立ち上がるパルスが出力される。ここで、当該パルスにおける緩勾配の立ち上がリ時間長t1は、コンデンサC1の容量C1、電圧Vset1、IC1における端子Ho−端子Vs間の電位差VH、電流制限素子R1の抵抗値R1との間に次のような関係がある。
【0088】
従って、コンデンサC1の容量C1あるいは電流制限素子R1の抵抗値R1を変えることによって、立ち上がリ時間長t1を調整することが可能である。
一方、図10(A)に示すパルス発生回路U2は、ランプ状に立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路である。
【0089】
このパルス発生回路U2は、プルアップFET(Q3)とプルダウンFET(Q4)とからなるプッシュプル回路に、3相ブリッジドライバであるIC2(例えば、International Recifier製IR−2113)が接続され、プルダウンFET(Q4)のゲートとドレイン間にはコンデンサC2が介挿され、IC2のLo端子とプルダウンFET(Q4)のゲートとの間に電流制限素子R2が介挿されて構成されている。そしてこのプッシュプル回路に対しては、一定の電圧Vset2が印加されている。
【0090】
このパルス発生回路U2において、プルダウンFET(Q4)、コンデンサC2及び電流制限素子R2によってミラー積分回路が形成されており、これによって立ち下がり部分の勾配が緩やかなランプ状の波形が形成されるようになっている。
図10(B)は、パルス発生回路U2によってパルスが形成される様子を示す図である。
【0091】
上記パルス発生回路U2において、図10(B)に示されるように、IC2のHin端子にはパルス信号VHin2が、Lin端子にはこれと逆極性のパルス信号VLin2が入力されると、IC2による制御のもとにプッシュプル回路が作動して、出力端子OUT2からは、電圧Vset2から緩勾配でランプ状に立ち下がるパルスが出力される。
【0092】
ここで、当該パルスにおける緩勾配の立ち下がり時間長t2は、コンデンサC2の容量C2、電圧Vset2、IC2における端子Loの電位VL、電流制限素子R2の抵抗値R2との間に次のような関係がある。
従って、コンデンサC2の容量C2あるいは電流制限素子R2の抵抗値R2を変えることによって、立ち下がり時間長t2を調整することが可能である。
【0093】
図11(A)に示すパルス発生回路U3は、指数関数的に立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路である。
このパルス発生回路U3は、上記図9(A)の回路と同様の構成であるが、プルアップFET(Q1)のゲートとドレイン間のコンデンサC1や、IC1のHo端子とプルアップFET(Q1)のゲートとの間の電流制限素子R1は無く、代りに、IC1のVs端子とプルアップFET(Q1)のソースとの間に電流制限素子R3が介挿されている。
【0094】
そして、このパルス発生回路U3によって、図11(B)に示すように、立ち上がり部分が指数関数的に変化する波形が形成される。
図12(A)に示すパルス発生回路U4は、指数関数的に立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路である。
このパルス発生回路U4は、上記図10(A)の回路と同様の構成であるが、プルダウンFET(Q4)のゲートとドレイン間のコンデンサC2や、IC2のLo端子とプルダウンFET(Q4)のゲート間の電流制限素子R2は無く、代りに、IC2のVs端子とプルダウンFET(Q4)のドレインとの間に電流制限素子R4が介挿されている。
【0095】
そして、このパルス発生回路U4によって、図12(B)に示すように、立ち下がり部分が指数関数的に変化する波形が形成される。
階段状に立ち上がる波形、並びに階段状に立ち下がるパルス波形を形成する場合には、例えば、ブートストラップ階段波発生回路(電子通信ハンドブック(電子通信学会)に掲載されている。)をはじめとする階段波発生回路を用いればよい。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、第1基板と第2基板とが互いに対向して配設され、第1基板の対向面に第1電極群と第2電極群とが互いに並行に配されていると共に、第2基板の対向面に第1電極群及び第2電極群と立体交差して第3電極群が配され、第1基板と第2基板との間に放電ガスが封入されたガス放電パネルと、書き込み期間においてデータの書き込みを行ない、維持期間において放電維持を行うガス放電表示装置において、書き込み期間において、走査パルスと重畳するようにベースパルスを走査電極群に印加するのであるが、そのベースパルスにおける印加開始から走査パルスが印加される直前までの平均電圧変化率を10V/μ秒以下に規定することによって、
ベース電圧の絶対値を大きく設定した場合でも、ベースバルス印加タイミングにおいて誤放電が生じるのを回避できるので、書き込みを安定に行うことができるという効果が得られる。
【0097】
また、ベースパルス印加タイミングに大きな放電が生じると、当該放電に伴う発光によってコントラストが低下するが、本発明によれば、このような発光が抑えられるのでコントラストの低下も生じにくい。
このような本発明は、上述した初期化パルスを印加する技術と組み合わせること、誤放電が防止に対してより効果的である。
【0098】
また、本発明を用いれば、従来駆動することの難しかった封入ガス圧力が大気圧以上のガス放電パネルや放電ガス中のXe分圧が10%以上のガス放電パネルでも、安定して駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る交流面放電型PDPの概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における駆動タイミング図である。
【図3】ベースパルスの導入部における波形の変形例を示す図である。
【図4】実施の形態2における駆動タイミング図である。
【図5】実施の形態3における駆動タイミング図である。
【図6】実施の形態4における駆動タイミング図である。
【図7】実施の形態における駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図6におけるスキャンドライバの構成を示すブロック図である。
【図9】ランプ状に立ち上がるパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図10】ランプ状に立ち下がるパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図11】指数関数的に立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図12】指数関数的に立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図13】一般的な交流面放電型PDPの電極マトリックスを示す図である。
【図14】256階調を表現する場合における1フィールドの分割方法を示す図である。
【図15】従来例の駆動方式にかかる駆動電圧波形図である。
【図16】従来例の駆動方式にかかる駆動電圧波形図である。
【図17】従来例の駆動方式にかかる駆動電圧波形図である。
【符号の説明】
10 前面パネル
11 前面ガラス基板
20 背面パネル
21 背面ガラス基板
40 放電空間
100 駆動装置
111 初期化パルス発生器
114 走査パルス発生器
116 ベースパルス発生器
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータおよびテレビ等の画像表示に用いるガス放電表示装置に関し、特に面放電AC型プラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハイビジョンをはじめとする高品位で大画面のテレビに対する期待が高まっている中で、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel,以下PDPと記載する)は、小さい奥行きでも大画面を実現することが可能である点で注目されており、既に60インチクラスの製品も開発されている。
【0003】
PDPは、大別して直流型(DC型)と交流型(AC型)とに分けられるが、現在では大型化に適したAC型が主流となっている。
一般的な交流面放電型PDPは、前面パネルと背面パネルとが隔壁を介して平行に配され、隔壁で仕切られた放電空間内には放電ガスが封入されている。そして、前面パネル上には走査電極と維持電極が平行配設され、その上を誘電体層が覆っている。そして、背面パネル上には、アドレス電極と隔壁が配され、隔壁間に赤,緑,青の蛍光体層が配設されている。
【0004】
図13は、このPDPの電極マトリックスを示す図であって、本図では走査ラインLの数nは4、アドレスラインの数mは6として示している。
各走査電極SC1…SC4と各維持電極SU1…SU4とが対をなして当ピッチで平行に配され、これらと直交してアドレス電極A1…A6が配されている。そして、走査電極SC及び維持電極SUの対とアドレス電極Aとが立体交差するところに、放電セルが形成されている。隣り合う放電セルの間は隔壁群RIB1…RIB7で仕切られている。
【0005】
そして、PDPの駆動時においては、各電極に駆動回路でパルスを印加することによって放電を発生させると、それに伴って放電ガスから紫外線が放出され、蛍光体層の蛍光体粒子(赤,緑,青)がこの紫外線を受けて励起発光するようになっている。
ところで、各放電セルは元来、点灯か消灯の2階調しか表現できないため、1フィールドを、固有の重みを持つ複数のサブフィールドに分割して点灯時間を時分割し、その組み合わせによって中間階調を表現する方式(フィールド内時分割階調表示方式)が用いられている。
【0006】
図14は、256階調を表現する場合における1フィールドの分割方法を示す図であって、横方向は時間、斜線部は放電維持期間を示している。
図15は、この方式でPDPを駆動する際に、1つのサブフィールドにおいて各電極に印加する駆動電圧波形の一例を示す図である。本図に示すように、1つのサブフィールドは、書き込み期間、維持期間および消去期間に分かれている。
【0007】
書き込み期間では、維持電極SU1…SUnを一定電位(図15では0V)に保ち、表示する画像データに応じて選択的に書き込みパルスPaがアドレス電極A1…Amに印加されると共に、前記書き込みパルスPaと逆相の走査パルスPscnが走査電極SC1…SCnに加えられる。
それによって、走査電極−アドレス電極間の電位差によって第1の書き込み放電を起こると同時に、その放電をトリガとして走査電極−維持電極間に第2の書き込み放電が生じ(以降、第1の書き込み放電及び第2の書き込み放電を合わせて「書き込み放電」と呼ぶことにする。)、維持放電に必要な壁電荷が形成される。
【0008】
このような書き込み放電を各走査電極ごとに順次起こすことによって、画面全体に書き込みがなされる。
維持期間では、走査電極SC1…SCn及び維持電極SU1…SUnに一括して、交流維持パルスPsx及びPsyが印加される。これにより、書き込み期間に壁電荷が形成された放電セルで維持放電が継続して起こり、画像が表示される。
【0009】
消去期間においては、全ての維持電極に消去パルスPeが印加され、消去放電が発生される。この消去動作によって、維持放電終了後に残留した壁電荷をほぼ中和することができる。
ところでこの駆動方法において、限られた長さの書き込み期間内に多数の走査ラインを走査する必要があるため、書き込み放電は不安定になりやすい。そして、書き込み放電が不安定であると、その後の維持放電による発光が不安定となる。
【0010】
ここで書き込み電圧を大きく設定できればよいが、データドライバの性能に限界があるため、書き込みパルスの電圧を大きくすることは実際上できない。
よって、良好な画像表示を行うために、限られた長さの書き込み期間内において、書き込み放電動作を確実に行わせることが課題となっている。
また、PDPにおいては、発光輝度を向上させるために、放電ガスの封入圧力を大気圧以上に設定したり放電ガスとしてXe分圧が10%以上であるようなXeを含有する放電ガスを封入したものも開発されている。特に、このようなPDPは放電開始電圧が高くなるので、書き込み放電が不安定になりやすいという課題も顕著なものとなり、上記図15に示す駆動方法では駆動することが難しい状態である。
【0011】
このような課題に対して、例えば、特開平8−212930号公報では、書き込み期間の前に初期化期間を設けた駆動方法が示されている。
図17は、この駆動方法の駆動電圧波形の一例を示すものであり、初期化期間において正極性の初期化パルスPrnを走査電極SC1…SCnに印加している。
このように矩形波の初期化パルスを印加することによって初期化放電が起こると、消去放電後に残留した放電セル内の壁電荷を完全に中和するという効果が得られると共に、後続の書き込み放電を容易かつ安定に生じさせるプライミング効果を得ることができるので、書き込みの安定化を図る上で有効ではある。しかし、これだけで書き込み放電の安定化に対して十分でるとは言えず、別の解決方法も望まれている。
【0012】
書き込みの安定化を図る課題に対して、更に、特開平6−289811号公報において、書き込み期間において、書き込みパルスと逆極性のベースパルスを走査電極に印加する駆動方法が開示されている。
図16はこのような駆動方法における駆動電圧波形の一例を示したものであるが、本図では、アドレス電極A1…Amには正極性の書き込みパルスPaが印加され、走査電極SC1…SCnには、負極性で波高が一定のベース電圧Vbを持つベースパルスが書き込み期間全体にわたって印加されると共に、それに重畳して同じく負極性の走査パルスPscoが印加されている。
【0013】
このように走査電極にベースパルスを印加すると、印加されたベースパルスの分だけアドレス電極−走査電極間および走査電極−維持電極間の電位差が大きくなるので、上述の第1の書き込み放電が生じやすくなると共に、第2の書き込み放電もより確実に起こすことができる。その結果、書き込みパルス電圧を高くしなくても、書き込み放電を安定して行い表示品質を向上することができる。
【0014】
また、このベースパルスを印加する駆動方法を用いれば、放電ガスの封入圧力が大気圧以上である場合や放電ガスとしてXe分圧が10%以上であるようなXeを含有する放電ガスを封入したPDPにおいても一応駆動は可能となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このベースパルスを印加する駆動方法においても、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定した場合には、書き込み期間の最初において誤放電が生じることによって画質劣化が生じる傾向がある。
例えば、製造ばらつきなどによって書き込み放電が生じにくいPDPにベースパルスを印加する駆動方法を適用する場合、書き込み電圧を高くするために、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定しなければならないが、書き込み期間の最初において誤放電が生じることによって画質劣化が生じる傾向がある。
【0016】
よって、高い書き込み電圧を要するPDPに対しても安定して書き込みを行えるようにすることが望まれる。
本発明は、ガス放電パネルに安定して書き込み動作を行うことができるようにし、それによって優れた画質で表示することのできるガス放電装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、第1基板と第2基板とが互いに対向して配設され、第1基板の対向面に第1電極群と第2電極群とが互いに並行に配されていると共に、第2基板の対向面に第1電極群及び第2電極群と立体交差して第3電極群が配され、第1基板と第2基板との間に放電ガスが封入されたガス放電パネルと、書き込み期間においてデータの書き込みを行ない、維持期間において放電維持を行うガス放電表示装置において、書き込み期間において、走査パルスと重畳するようにベースパルスを走査電極群に印加するのであるが、そのベースパルスにおける印加開始から走査パルスが印加される直前までの平均電圧変化率を10V/μ秒以下に規定した。
【0018】
上記ガス放電表示装置において、書き込み期間に、第1電極(走査電極)に走査パルスを順次印加しながら、それに合わせて第3電極(アドレス電極)の中の選択された電極に走査パルスとは逆極性の書き込みパルスを印加することによって画像書き込みを行い、続いて、維持期間に、第1電極(走査電極)と第2電極(維持電極)との間に電圧を印加することによって放電維持を行い、画像を表示することができる。
【0019】
また更に、第1電極に印加するベースパルスの極性は、基本的に走査パルスと同じ極性である。このように走査パルスと同極性のベースパルスを印加することによって、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を「書き込み放電開始電圧」よりも小さく設定しても、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差にベース電圧分が加算された値が「書き込み放電開始電圧」を超えるようにすれば、走査パルス及び書き込みパルスを印加するときに、第1電極と第3電極との間の電圧が「書き込み放電開始電圧」を超えるので、書き込み放電が安定して行われる。
【0020】
ここで、「書き込み放電開始電圧」は、書き込み期間において放電が開始される電圧を示す。
なお、ベースパルスの波高は、通常、書き込み期間全体にわたってほぼ一定であるが、「書き込み放電開始電圧」を超える電圧が発生された後は、確実に放電が行われる程度で変動があってもよい。
【0021】
ここで、「ベースパルスの印加開始から走査パルスを印加する直前までの平均電圧変化率」の意味について説明する。
ベースパルスの印加開始は、ベースパルス立ち上がりが開始する時点である(なお、本明細書で「立ち上がり」は、パルス極性が正極性の場合はパルスの前縁から電圧が上昇する部分、パルス極性が負極性の場合はパルスの前縁から電圧が下降する部分を指すものとする。)。
【0022】
また、「走査パルスを印加する直前」について説明する。
走査パルスの電圧値と書き込みパルス電圧値との差を、書き込み放電開始電圧よりも小さく設定した場合、第1電極と第3の電極間の電圧に、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を加算した加算値は、ベースパルスの印加開始時点では「書き込み放電開始電圧」より小さいが、印加開始から時間が経過するに従って大きくなり、ある時点で「書き込み放電開始電圧」に到達する。つまり、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を第1電極、第3電極間の電圧に加算した値が書き込み放電開始電圧以上になる程度に、走査パルスが印加される直前には第1電極と第3電極間に電圧を印加しておく必要がある。
【0023】
このように、走査電極にベースパルスを印加開始した時点及び走査パルスを院加する前の期間(以降、「ベースパルス印加タイミング」とする。)において、平均電圧変化率を10V/μ秒以下と緩やかにすることによって、以下の作用効果を奏する。
本発明者は、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定した場合に書き込み期間の最初に誤放電が生じる原因を考察したところ、ベースパルス印加開始タイミングTbにおいて、アドレス電極−走査電極間では放電が発生していない状態で、走査電極−維持電極間の電圧が放電開始電圧を越えてしまうことによって大きな放電が発生することが原因であることを見出した。
【0024】
そして、ベース電圧の絶対値を大きく設定した場合でも、上記のようにベース電圧を印加開始した後の電圧変化を緩やかにすれば、放電セル内部の電圧が放電開始電圧を超えるときに微小な放電が生じるのみであって、大きな放電は生じないことも見出した。
即ち本発明によれば、ベース電圧の絶対値を大きく設定した場合でも、ベースバルス印加タイミングにおいて誤放電が生じるのを回避できるので、書き込みを安定に行うことができるという効果が得られる。
【0025】
また、ベースパルス印加タイミングに大きな放電が生じると、当該放電に伴う発光によってコントラストが低下するが、本発明によれば、このような発光が抑えられるのでコントラストの低下も生じにくい。
このような本発明は、上述した初期化パルスを印加する技術と組み合わせることにより顕著な効果を奏する。
【0026】
即ち、走査電極群に、初期化パルスを印加した後に、書き込み期間に初期化パルスとは逆極性のベースパルスを印加する場合には、ベースパルス印加タイミングにおいていっそう誤放電が発生しやすい状態になるが、ベースパルス印加タイミングにおいて緩やかに電圧を変化させれば誤放電が防止できるので、より効果的である。
【0027】
この場合、初期化パルスの立ち上がり部分並びに立ち下がり部分も、平均電圧変化率10V/μ秒以下で変化させることが好ましく、また、初期化パルスの立ち下がり部分からベースパルス印加タイミングの期間を通して連続的に変化させることが好ましい。
また、本発明を用いれば、従来駆動することの難しかった封入ガス圧力が大気圧以上のガス放電パネルや放電ガス中のXe分圧が10%以上のガス放電パネルでも、安定して駆動することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明のガス放電表示装置の一実施形態について、図面を用いて説明する。本発明のガス放電表示装置は、ガス放電型PDP、該PDPを駆動する駆動装置を備えている。
〔PDPの構造について〕
図1は、本発明の一実施の形態に係る交流面放電型PDPの概略構成を示す斜視図である。
【0029】
このPDPは、前面ガラス基板11上に走査電極群SC…,維持電極群SU…、誘電体層13、保護層14が配されてなる前面パネル10と、背面ガラス基板21上にアドレス電極群A…、誘電体層23が配された背面パネル20とが、電極群SC…,SU…とアドレス電極群A…とを対向させた状態で間隔をおいて互いに平行に配されて構成されている。そして、前面パネル10と背面パネル20との間隙は、ストライプ状の隔壁RIBで仕切られることによって放電空間40が形成され、当該放電空間40内には放電ガスが封入されている。
【0030】
また、この放電空間40内において、背面パネル20側には、蛍光体層31が配設されている。この蛍光体層31は、赤,緑,青の順で繰返し並べられている。
このPDPの電極マトリックスは、従来例の図13に示したものと同様であって、走査電極群SC1…SCn,維持電極群SU1…SUn及びアドレス電極群A1…Amは、共にストライプ状であって、各走査電極SC1…SCn,維持電極SU1…SUnは隔壁RIBと直交する方向に、アドレス電極A1…Amは隔壁RIBと平行に配されている。
【0031】
走査電極群SC1…SCn,維持電極群SU1…SUn,アドレス電極群A1…Amは、銀,金,銅,クロム,ニッケル,白金等の金属単独で形成してもよいが、走査電極群SC1…SCn,維持電極群SU1…SUnについては、ITO,SnO2 ,ZnO等の導電性金属酸化物からなる幅広の透明電極の上に幅細の銀電極を積層させた組み合わせ電極を用いてもよい。
【0032】
誘電体層13は、前面ガラス基板11の電極群SC1…SCn,SU1…SUnが配された表面全体を覆って配設された誘電物質からなる層であって、一般的に、鉛系低融点ガラスが用いられているが、ビスマス系低融点ガラスで形成しても良い。
保護層14は、酸化マグネシウム(MgO)からなる薄層であって、誘電体層13の表面全体を覆っている。
【0033】
隔壁RIBは、背面パネル20の誘電体層23の表面上に突設されている。
隣り合う放電セルの間は隔壁群RIBで仕切られ、これによって隣接する放電セルへの放電拡散が遮断されるため、解像度の高い表示を行うことができるようになっている。
また、この隔壁RIBは、両ガラス基板11,21間を隔てるスペーサとしての働きもなしている。なお、この隔壁RIBは必ずしも必要ということではなく、隔壁RIBの代りにガラスビーズなどをスペーサとして配設してもよい。
【0034】
放電ガスは、Xeを含む混合ガス(例えばNe−Xe、He−Xe)であって、一般的にはXe含有量は10%未満で封入圧力は大気圧未満(通常は1×104〜7×104Pa程度)に設定されているが、後の実施の形態5で述べるように、Xe含有量を10%以上に設定したり、大気圧より高い圧力(8×104Pa以上の圧力)に設定することよって、パネル輝度及び発光効率を向上させることもできる。
【0035】
〔PDPの駆動方式について〕
このPDPは、駆動装置(後述する駆動装置100)を用いてフィールド内時分割階調表示方式を用いて駆動される。
上記図14に示される分割方法の例では、1フィールドは、8個のサブフィールドSF1〜SF8で構成され、各サブフィールドの放電維持期間の比は、1,2,4,8,16,32,64,128に設定されており、この8ビットバイナリの組み合わせによって256階調を表現できる。なお、NTSC方式のテレビ映像においては、1秒間あたり60枚のフィールド画像で映像が構成されているため、1フィールドの時間は16.7msに設定されている。
【0036】
各サブフィールドは、書き込み期間、放電維持期間という一連のシーケンスで構成されており、1サブフィールド分の動作を8回繰返すことによって、1フィールドの画像表示が行われる。
次に、各サブフィールドにおいて各電極に印加する方式について、以下の実施の形態1〜4において説明する。
【0037】
〔実施の形態1〕
図2は、実施の形態1において、1つのサブフィールドにおいて各電極にパルスを印加するときの駆動電圧波形の一例を示す図である。
書き込み期間においては、アドレス電極A1…Amの中で表示データに応じて選択されたものに、一極性(正極性)の書き込みパルスPaが印加される。
【0038】
また、走査電極SC1…SCnに一括して、書き込みパルスPaと反対極性(負極性)のベースパルスを書き込み期間全体にわたって印加すると共に、走査電極SC1…SCnごとに順次、上記書き込みパルスPaを印加するタイミングに合わせて、ベースパルスと同極性(負極性)の走査パルスPscoを重畳して印加することによって書き込み放電を起こして書き込みを行う。
【0039】
維持期間においては、走査電極群SC1…SCn及び維持電極群SU1…SUnに、維持パルスPsx及び維持パルスPsyを交互に印加する。これによって、書き込み期間に壁電荷が形成されたセルで維持放電が継続して起こり、画像表示がなされる。
消去期間においては、維持電極群SU1…SUnに、消去パルスPeを印加することによって、放電セルに残留している壁電荷を消去する。
【0040】
(ベースパルスについての説明)
上記ベースパルスは、書き込み期間全体にわたって印加される幅の広いパルスであるが、その立ち上がり部分は、ほぼ一定の傾斜で徐々に電圧が変化しているランプ状波形である。即ち、書き込み期間の導入部Ia(ベースパルスの立ち上がり開始からベース電圧Vbに達するまでの期間)において走査電極SC1…SCnに印加する電圧は、徐々に変化した後に一定のベース電圧Vbに達している。そして、走査パルスPscoは、書き込み期間の導入部Iaにおいては印加されず、ベースパルスがベース電圧Vbに達してから印加されている。なお、ランプ波形(Ramp Waveform)に関しては、ASIA DISPLAY 98中の「Plasma Display Device Challenges(Larry F Weber)」に記載されている(P23〜27)。
【0041】
ここで、走査パルスPscoにベースパルスを重畳することによる基本的な効果について説明する。
先ず、上記PDPにおいて、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Amとの間で放電が開始される一定の「書き込み放電開始電圧」が存在する。即ち、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Amとの間に、きわめてゆっくり電圧値を上昇させながら電圧を印加すると、ある電圧レベルに達したときに放電が開始されるが、このときの電圧が「書き込み放電開始電圧」である。
【0042】
一般的に、書き込み期間にベースパルスを印加しない場合には、走査パルスPscoの電圧値と書き込みパルスPaの電圧値との差は、この「書き込み放電開始電圧」よりも大きく設定する必要があるが、書き込み期間にベースパルスを印加する場合は、走査パルスPscoの電圧値と書き込みパルスPaの電圧値との差に、ベース電圧Vbを加算した値が「書き込み放電開始電圧」を越えればよいので、走査パルスPscoの電圧値と書き込みパルスPaの電圧値との差を、書き込み放電開始電圧よりも小さく設定することができる。
【0043】
即ち、ベースパルスを印加すれば、書き込みパルスPaの電圧値をあまり高く設定しなくても、走査パルスPsco及び書き込みパルスPaの印加時に走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Amとの間で、「書き込み放電開始電圧」を超える電位差が生じ、安定した書き込み放電がなされる。
そして、この場合、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Am間の電圧に、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を加算した加算値は、ベースパルスの印加開始時点では「書き込み放電開始電圧」より小さいが、導入部Iaにおいて時間経過に伴って大きくなり、導入部Iaの途中で「書き込み放電開始電圧」に達し、導入部Iaの終了時に、少なくとも走査パルスが印加される前には「書き込み放電開始電圧」を超えることになる。
【0044】
更に、本実施形態では、ベースパルスが上記のように立ち上がり部分が緩やかかなため、以下のような効果を奏する。
書き込み期間において、図16の従来例のように立ち上がりが急なベースパルスを印加する方式を用いてPDPを駆動する場合に、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定すると、ベースパルス印加タイミングTbにおいて、アドレス電極−走査電極間では放電が発生していない状態で、走査電極−維持電極間の電圧が放電開始電圧を越えてしまい、大きな放電が発生することが原因で誤放電が生じてしまう傾向がある。この誤放電は、パネルの特性にもよるが、ベース電圧Vbの絶対値が100Vを超えると生じやすくなる。また、大きな放電が生じると、発光によってコントラストも低下する。
【0045】
特に、PDP内の放電セルごとに放電の起きやすさが不均一である場合、書き込み放電の起きやすい放電セルで誤放電が発生しやすい。
これに対して、図2のように、書き込み期間の導入部Iaで、傾斜を保って徐々に電圧を変化させるように印加すれば、この導入部Iaで放電セル内の電圧が放電開始電圧を越えたとしても、放電開始電圧を越えた時点から表示発光にほとんど寄与しない微小な放電が発生するのみで、大きな誤放電は生じない。このときに起こる放電が微小なのは、電圧の変化が緩やかであるため、放電セル内の電圧が放電開始電圧を大きく超えることがなく、放電が起こってもすぐに停止するからである。
【0046】
従って、立ち上がりの緩やかなベースパルスを用いると、ベース電圧Vbの絶対値を大きく、100Vを超える値に設定しても、誤放電の発生を抑えることができ、導入部Iaでの発光に伴うコントラストの低下も抑えられる。
導入部Ia(立ち上がり開始からベース電圧Vbまでの期間)における平均傾きは10V/μ秒以下に設定することが好ましい。
【0047】
また、導入部Iaの中で、走査電極SC1…SCnとアドレス電極A1…Am間の電圧に、走査パルスの電圧と書き込みパルス電圧との差を加算した加算値が、「書き込み放電開始電圧」に到達する時点(書き込み放電開始電圧到達時点)までの期間における平均傾きを10V/μ秒以下に設定してもよい。
更に、ベース電圧Vbに達したと同時に走査パルスPscoを印加してもよいし、休止時間を設けて走査パルスPscoを印加してもよい。つまり、ベースパルスの印加開始から走査パルスPscoを印加する直前までの間で、平均傾きを10V/μ秒以下の期間を設ければよい。
【0048】
また、このように立ち上がりの緩やかなベースパルスを用いることによるもう一つの利点として、緩やかな電圧変化の際に生じる微小な放電により得られるプライミング効果が、後続の書き込み放電を補助するので、放電遅れ及びそのばらつきが軽減されることもあり、それによって、書き込みを更に安定して行うことが可能となる。
【0049】
(ベースパルスの導入部Iaにおける波形の変形例)
上記図2に示したベースパルスは、導入部Iaにおける波形が直線的に変化するランプ状である。導入部Iaにおける平均傾き若しくは導入部Iaの中で書き込み放電開始電圧到達時点までの平均傾きが10V/μ秒以下であれば、微小期間において傾きが10V/μ秒を越えても上記効果が得られる。
【0050】
例えば、図3(A)に示すように、導入部Iaにおいてベースパルス波形が指数関数的に変化する部分を有している場合、或は図3(B)に示すように、導入部Iaにおいてベースパルス波形が微細な階段状に変化する部分を有している場合、或は図3(C)に示すように、導入部Iaにおいてベースパルス波形が細かく振動しながら変化する部分を有している場合、或は、これらを複合した場合であっても、上記のように平均傾きが10V/μ秒以下であれば、同様の効果が得られる。
【0051】
以上のように、本実施の形態の駆動方式を用いれば、上記作用効果によって、書き込みにくい放電セルを持つPDPに対しても、安定した書き込みを行うことが可能となる。
〔実施の形態2〕
図4は実施の形態2における駆動電圧波形の一例を示す図である。
【0052】
本実施の形態では、初期化期間を設けて走査電極SC1…SCnに初期化パルスPrnを印加するが、その他の書き込み期間から消去期間にかけては実施の形態1と同様の電圧波形を各電極に印加する。
これによって以下のような効果を奏する。
走査電極SC1…SCnに対して、初期化期間に図17に示したような正極性矩形波の初期化パルスPrnを印加して初期化を行った後は、直前のサブフィールドにおける消去放電後に残留した放電セル内部の壁電荷が完全に中和されるため、書き込み放電が起こりやすい状態となる。
【0053】
しかし、この状態で書き込み期間に図16に示したような立ち上がりの急な負極性のベースパルスを印加すると、初期化を行わないときと比べて更に、ベースパルス印加タイミングTbにおいて誤放電が起こりやすくなってしまう。なお、パネルの特性にもよるが、初期化を行った場合、ベース電圧Vbの絶対値が15Vを超えると誤放電が生じやすくなる。
【0054】
これに対して、図4に示すように、ベースパルスを印加させて、書き込み期間の導入部Iaにおいてゆるい傾斜で電圧変化させればよい。初期化パルスの印加によって放電セル内部が放電しやすい状態になっていても、実施の形態1で説明した作用と同様、導入部Iaで放電セル内の電圧が放電開始電圧を越えた時点から表示発光にほとんど寄与しない微小な放電が発生するのみで、大きな誤放電は生じない。
【0055】
本実施の形態においても、導入部Iaにおける平均傾き若しくは導入部Iaの中で書き込み放電開始電圧到達時点までの平均傾きは、10V/μ秒以下に設定することが好ましい。
また、上記実施の形態1において「導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例」として説明した内容は、本実施の形態にもあてはまる。
【0056】
以上のように、本実施の形態のように初期化パルスを印加して且つ立ち上がりの緩やかなベースパルスを用いると、初期化パルスを印加することによる効果とベースパルスを印加することによる効果の両方を得るこができ、且つ誤放電を防止できるので、より安定に書き込みを行うことが可能となる。
〔実施の形態3〕
図5は実施の形態3における駆動電圧波形の一例を示した図である。
【0057】
本実施形態の駆動電圧波形は実施の形態2と同様であるが、初期化期間における初期化パルスPrgの立ち上がり部分Suおよび立ち下がり部分Sdに傾斜を設けた点が異なっている。
このように初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下り部分Sdに傾斜をつけることによって、実施の形態2のように初期化パルスに単純な矩形波を用いる場合と比べて、初期化パルスの電圧設定範囲が広くなると共に、初期化動作をより確実に行うことができるようになる。
【0058】
即ち、初期化パルスの立ち上がり部分Suにおける傾斜が大きいほど、電圧変化が緩やかになるため立ち上がり時に生じる放電の大きさが弱まる。従って、初期化パルスの立ち上がり部分Suに傾斜をつけることによって、初期化放電の大きさを容易に抑制することができるので、それだけ初期化パルスの電圧絶対値を大きく設定することが可能となる。
【0059】
また、PDPの放電セル間で放電特性にばらつきが存在する場合は、初期化パルスの立ち上がり部分に傾斜がないと、すべての放電セルに急に電圧がかかってしまうため、放電しやすい放電セルでは過剰な電圧がかかることによって初期化放電が不安定になる。しかし、初期化パルスの立ち上がり部分に緩やかな傾斜を有する場合は、初期化パルスの電圧が各放電セルにおいて初期化放電に最適な電圧に達した時点で、各放電セルごとに順次初期化放電が起きるため、初期化動作をより確実に行える。
【0060】
一方、初期化パルスの立ち下がり部分Sdにおいて傾斜をつけると、立ち下がり部分での自己消去放電を防ぐことができるので、やはり初期化パルスの電圧絶対値を大きく設定することが可能となり、初期化動作を確実に行うことができる。この自己消去放電とは、パルス電圧の立ち上がり部分における放電後に放電セル内にパルス電圧を打ち消す働きをする壁電荷が蓄積され、パルスが立ち下がったときにその壁電荷の電圧によってセルが放電してしまうという現象である。
【0061】
初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdにおける傾斜は、ベースパルスの導入部Iaと同様、平均電圧変化率が10V/μ秒以下となるように設定することが好ましい。
なお、初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdの両方について傾斜を設けることが好ましいが、どちらか一方だけ傾斜を設けることによっても、その分による効果を得ることができる。
【0062】
また、このように立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdに傾斜を持つ初期化パルスを用いても、書き込み期間において、図16の従来例のように立ち上がりが急なベースパルスを印加した場合には、実施の形態2でも説明したようにベースパルス印加タイミングTbにおいて誤放電が生じやすく発光によってコントラストも低下しやすい。しかし、本実施形態のように書き込み期間の導入部Iaで傾斜をつけていれば、ベースパルス印加タイミングにおける誤放電の発生は防がれ、コントラストの低下も防ぎ、且つ安定した書き込みを行うことができる。
【0063】
また、上記実施の形態1において「導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例」として説明した内容は、本実施の形態にもあてはまる。
(初期化パルスの立ち上がり及び立ち下がり部分の波形についての変形例)
上記図5に示した例では、初期化パルスの立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdにおける波形は、直線的に変化するランプ状である。この立ち上がり部分Su及び立ち下がり部分Sdにおける波形も、実施の形態1の(導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例)で説明したのと同様に、指数関数的に変化する部分を有してもよいし、微細な階段状に変化する部分を有してもよい。また、初期化パルス波形が細かく振動しながら変化する部分を有しもよいし、これらを複合したものであってもよい。
【0064】
以上のように、本実施の形態の駆動方式を用いれば、上記作用効果によって、書き込みにくい放電セルを持つPDPに対しても、安定した書き込みを行うことが可能となる。
〔実施の形態4〕
図6は実施の形態4における駆動電圧波形の一例を示した図である。
【0065】
本実施形態の駆動電圧波形は上記実施の形態3と同様であるが、初期化期間に印加される初期化パルスPrgの立ち下がり部分Sdと、書き込み期間の導入部分Iaとの間に休止期間がない。更に、初期化パルスの立ち下がり開始からベース電圧Vbに達するまでの期間、若しくは初期化パルスの立ち下がり開始から書き込み放電開始電圧到達時点までの期間は、ほぼ一定の傾斜で電圧が連続的に変化している点が異なっている。
【0066】
このように、初期化パルスの立ち下がりからベース電圧Vbに至るまでの間、休止期間をとらず連続的に変化させると、放電セル内の電圧が放電開始電圧を越えた後に、微小放電が連続して発生して荷電粒子が放電空間内に残りやすくなるので、プライミング効果が大きくなる。その結果、書き込み放電の放電遅れ及びそのばらつきが著しく軽減される。
【0067】
よって、誤放電を生じることなく、上記実施の形態3と比べてより安定に書き込みを行うことが可能となる。
なお、図6に示した例では、初期化パルスの立ち下がり開始からベース電圧Vbに達するまでの期間は、ほぼ一定の傾斜で電圧が変化しているが、この期間の傾斜は一定でなくてもよく、電圧変化が連続的であれば同様の効果を奏する。
【0068】
また、上記実施の形態1において、「導入部Iaにおけるベースパルス波形の変形例」として説明した内容、並びに上記実施の形態3において、「初期化パルスの立ち上がり及び立ち下がり部分の波形についての変形例」として説明した内容は、本実施の形態にもあてはまる。
〔実施の形態5〕
本実施形態では、PDPの駆動時に用いる駆動電圧波形については、上記実施の形態1〜4で説明したのと同様であるが、PDPにおける放電ガスの封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高い範囲に限定している。
【0069】
即ち本実施の形態では、PDPの放電ガス封入圧力が大気圧よりも高く設定する、もしくは、PDPの放電ガス中のXe分圧を10%以上に設定する。
このように、PDPの放電ガスの封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高く設定することは、パネル輝度や発光効率を高めるのに有利である。しかし、一般的に、PDPの放電ガス封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高く設定すると、パッシェン則に従って放電開始電圧が高くなるので、高い駆動電圧が必要となる(特開平6−342631のコラム2の8行目〜16行目、「平成8年電気学会全国大会シンポジウムS3−1プラズマディスプレイ放電、平成8年3月」参照)。従って、図15に示すような従来の駆動方法では、このようなPDPを駆動させることは難しい。
【0070】
また、図16に示すように、書き込み期間において走査電極SC1…SCnにベースパルスを印加することによって、書き込み期間に放電セル内にかかる電圧を大きくする方法も有効であるが、この駆動方法をそのままこのPDPに適用すると、実施の形態1の項で説明したように、ベース電圧Vbを大きくしなければならないことから、ベースパルス印加タイミングTbにおいて誤放電が生じやすい。
【0071】
これに対して、本実施の形態では、実施の形態1で説明したように、走査電極群SC1…SCnに立ち上がりの緩やかな(立ち上がり開始からベース電圧Vbに達するまで、若しくは立ち上がり開始から書き込み放電開始電圧到達時点までの平均電圧変化率が10V/μ秒以下である)ベースパルスを印加して駆動しているため、ベース電圧Vbを大きく設定しても誤放電が生じにくい。よって、放電ガスの封入ガス圧が大気圧よりも高いパネルや放電ガス中のXe含有量の高いPDPでも誤放電を生じることなく、容易に駆動を行うことが可能である。
【0072】
この結果、PDPを高輝度・高効率で、且つ安定して駆動することができる。
なお、本実施形態のように、放電ガスの封入圧力や放電ガス中のXe含有量を高く設定する場合には、ベース電圧Vbの絶対値を大きく設定する必要があるため、特に誤放電が生じやすい状態にある。
〔上記実施の形態1〜5全体に関する変形例など〕
上記実施の形態1〜5では、走査電極群SC1…SCnに印加する初期化パルス及びアドレス電極群A1…Amに印加する書き込みパルスは正極性とし、走査電極群SC1…SCnに印加するベースパルスと走査パルスは負極性とする例を示した。これとは逆に、走査電極群SC1…SCnに印加する初期化パルス及びアドレス電極群A1…Amに印加する書き込みパルスは負極性とし、走査電極群SC1…SCnに印加するベースパルスと走査パルスは正極性としても、同様に実施することが可能で、同様の効果を奏する。
【0073】
上記実施の形態1〜5では、ベースパルスの立ち上がり開始からベース電圧Vbに達するまで、若しくは立ち上がり開始から書き込み放電開始電圧到達時点までの平均電圧変化率を10V/μ秒以下にするのが好ましいとしたが、この期間の電圧変化を更に緩やかに、平均電圧変化率を5V/μ秒以下に設定すれば、より確実に効果を得ることができる。
【0074】
上記実施の形態1〜5では、ベースパルスが立ち上がった後のベース電圧Vbは、書き込み期間全体にわたって一定であるものとしたが、このベース電圧Vbは、必ずしも書き込み期間全体にわたって一定でなくてもよく、緩やかに増減したり、ある程度変動があってもよい。少なくとも書き込み放電開始電圧を超える電圧が発生された後は、確実に各電極間で放電が行われる程度でベース電圧は変動してもよい。
【0075】
〔駆動装置についての説明〕
上述したPDPの各電極に駆動電圧を印加するための駆動装置について以下に説明する。
ここでは、実施の形態2〜4のように初期化パルスを印加する場合について一例を説明する。
【0076】
図7は、このような駆動装置100の構成を示すブロック図である。
この駆動装置100は、外部の映像出力器から入力されてくる映像データを処理するプリプロセッサ101、処理された映像データを格納するフレームメモリ102、フィールド毎及びサブフィールド毎に同期パルスを生成する同期パルス生成部103、走査電極群SC1…SCnにパルスを印加するスキャンドライバ104、維持電極群SU1…SUnにパルスを印加するサステインドライバ105、アドレス電極群A1…Amにパルスを印加するデータドライバ106を備えている。
【0077】
プリプロセッサ101は、入力されてくる映像データからフィールド毎の映像データ(フィールド映像データ)を抽出し、抽出したフィールド映像データから各サブフィールドの映像データ(サブフィールド映像データ)を作成してフレームメモリ102に格納する。また、フレームメモリ102に格納されているカレントサブフィールド映像データから1ラインづつデータドライバ106にデータを出力したり、入力される映像データから水平同期信号、垂直同期信号などの同期信号を検出し、同期パルス生成部103にフィールドごと及びサブフィールドごとに同期信号を送ることも行う。
【0078】
フレームメモリ102は、フィールド毎に、各サブフィールド映像データを分割して格納できるものである。
具体的には、フレームメモリ102は、1フィールド分のメモリ領域(8個のサブフィールド映像を記憶)を2個備える2ポートフレームメモリであって、一方のメモリ領域にフィールド映像データを書き込みながら、他方のメモリ領域から、これに書き込まれているフィールド映像データを読み出す動作を交互に行うことができるようになっている。
【0079】
同期パルス生成部103は、プリプロセッサ101からフィールドごと及びサブフィールドごとに送られて来る同期信号を参照して、初期化パルス,走査パルス,維持パルス,消去パルスを立ち上がらせるタイミングを指示するトリガ信号を生成して、各ドライバ104〜106に送る。
スキャンドライバ104は、同期パルス生成部103から送られてくるトリガ信号に呼応して、初期化パルス、走査パルス、ベースパルス、維持パルスを生成して印加する。
【0080】
図8は、スキャンドライバ104の構成を示すブロック図である。
初期化パルス,維持パルスは、全ての走査電極SC1…SCnに共通して印加されるものであるため、図8に示すように、スキャンドライバ104には、各パルスを発生するため初期化パルス発生器111、維持パルス発生器112aが備えられている。そして、これらのパルス発生器は、フローティンググラウンド方式で直列に接続され、同期パルス生成部103からのトリガ信号に応じて作動することによって、初期化パルス,維持パルスが、走査電極群SC1…SCnに択一的に印加されるようになっている。
【0081】
またスキャンドライバ104は、走査電極SC1,SC2…SCnに順に走査パルスを印加するために、ここでは図8に示すように、走査パルス発生器114と、これに接続されたマルチプレクサ115とを備えている。このスキャンドライバ104は、同期パルス生成部103からのトリガ信号に応じて、走査パルス発生器114でパルスを発生すると共に発生したパルスをマルチプレクサ115で切り換えて出力する方式をとっているが、各走査電極SC1…SCn毎に個別に走査パルス発生回路を設けた構成にすることも可能である。
【0082】
スキャンドライバ104は更に、同期パルス生成部103からのトリガ信号に呼応して走査電極SC1…SCnにベースパルスを印加するベースパルス発生器116を備え、このベースパルス発生器116で発生するベースパルスと上記走査パルスとが重畳されるようになっている。
そして、上記パルス発生器111,112からの出力と、走査パルス発生器114及びベースパルス発生器116からの出力とは、スイッチSW1及びSW2によって、択一的に走査電極群SC1…SCnに印加される。
【0083】
サステインドライバ105は、維持パルス発生器112b,消去パルス発生器113を備え、同期パルス生成部103からのトリガ信号に呼応して、維持パルス並びに消去パルスを生成して維持電極群SU1…SUnに印加する。
データドライバ106は、シリアルに入力される1ラインに相当するサブフィールド情報に基づいて、データパルスをアドレス電極群A1…Amにパラレルに出力するものである。
【0084】
〔初期化パルス発生器及びベースパルス発生器の構成について〕
ベースパルス発生器116においては、立ち上がり部分において電圧が徐々に変化するパルスを発生する。また、実施の形態3,4のような波形で駆動電圧を印加するには、初期化パルス発生器111において、立ち上がり部分及び立ち下がり部分の少なくとも一方において、電圧が徐々に変化するパルスを発生する必要がある。
【0085】
そこで、以下に、緩やかに立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路並びに緩やかに立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路について説明する。
図9(A)に示すパルス発生回路U1は、ランプ状に立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路である。
このパルス発生回路U1は、プルアップFET(Q1)とプルダウンFET(Q2)とが接続されてなるプッシュプル回路に、3相ブリッジドライバであるIC1(例えば、International Recifier製IR−2113)が接続され、プルアップFET(Q1)のゲートとドレイン間にはコンデンサC1が介挿され、IC1のHo端子とプルアップFET(Q1)のゲートとの間に電流制限素子R1が介挿されて構成されている。そしてこのプルアップ回路に対しては、一定の電圧Vset1が印加されている。
【0086】
このパルス発生回路U1において、プルアップFET(Q1)、コンデンサC1及び電流制限素子R1によってミラー積分回路が形成されており、これによって立ち上がり部分の勾配が緩やかなランプ状の波形が形成されるようになっている。
図9(B)は、パルス発生回路U1によってパルスが形成される様子を示す図である。
【0087】
上記パルス発生回路U1において、図9(B)に示されるように、IC1のHin端子にはパルス信号VHin1が、Lin端子にはこれと逆極性のパルス信号VLin1が入力されると、IC1による制御のもとにプッシュプル回路が作動して、出力端子OUT1からは、緩勾配で電圧Vset1まで立ち上がるパルスが出力される。ここで、当該パルスにおける緩勾配の立ち上がリ時間長t1は、コンデンサC1の容量C1、電圧Vset1、IC1における端子Ho−端子Vs間の電位差VH、電流制限素子R1の抵抗値R1との間に次のような関係がある。
【0088】
従って、コンデンサC1の容量C1あるいは電流制限素子R1の抵抗値R1を変えることによって、立ち上がリ時間長t1を調整することが可能である。
一方、図10(A)に示すパルス発生回路U2は、ランプ状に立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路である。
【0089】
このパルス発生回路U2は、プルアップFET(Q3)とプルダウンFET(Q4)とからなるプッシュプル回路に、3相ブリッジドライバであるIC2(例えば、International Recifier製IR−2113)が接続され、プルダウンFET(Q4)のゲートとドレイン間にはコンデンサC2が介挿され、IC2のLo端子とプルダウンFET(Q4)のゲートとの間に電流制限素子R2が介挿されて構成されている。そしてこのプッシュプル回路に対しては、一定の電圧Vset2が印加されている。
【0090】
このパルス発生回路U2において、プルダウンFET(Q4)、コンデンサC2及び電流制限素子R2によってミラー積分回路が形成されており、これによって立ち下がり部分の勾配が緩やかなランプ状の波形が形成されるようになっている。
図10(B)は、パルス発生回路U2によってパルスが形成される様子を示す図である。
【0091】
上記パルス発生回路U2において、図10(B)に示されるように、IC2のHin端子にはパルス信号VHin2が、Lin端子にはこれと逆極性のパルス信号VLin2が入力されると、IC2による制御のもとにプッシュプル回路が作動して、出力端子OUT2からは、電圧Vset2から緩勾配でランプ状に立ち下がるパルスが出力される。
【0092】
ここで、当該パルスにおける緩勾配の立ち下がり時間長t2は、コンデンサC2の容量C2、電圧Vset2、IC2における端子Loの電位VL、電流制限素子R2の抵抗値R2との間に次のような関係がある。
従って、コンデンサC2の容量C2あるいは電流制限素子R2の抵抗値R2を変えることによって、立ち下がり時間長t2を調整することが可能である。
【0093】
図11(A)に示すパルス発生回路U3は、指数関数的に立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路である。
このパルス発生回路U3は、上記図9(A)の回路と同様の構成であるが、プルアップFET(Q1)のゲートとドレイン間のコンデンサC1や、IC1のHo端子とプルアップFET(Q1)のゲートとの間の電流制限素子R1は無く、代りに、IC1のVs端子とプルアップFET(Q1)のソースとの間に電流制限素子R3が介挿されている。
【0094】
そして、このパルス発生回路U3によって、図11(B)に示すように、立ち上がり部分が指数関数的に変化する波形が形成される。
図12(A)に示すパルス発生回路U4は、指数関数的に立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路である。
このパルス発生回路U4は、上記図10(A)の回路と同様の構成であるが、プルダウンFET(Q4)のゲートとドレイン間のコンデンサC2や、IC2のLo端子とプルダウンFET(Q4)のゲート間の電流制限素子R2は無く、代りに、IC2のVs端子とプルダウンFET(Q4)のドレインとの間に電流制限素子R4が介挿されている。
【0095】
そして、このパルス発生回路U4によって、図12(B)に示すように、立ち下がり部分が指数関数的に変化する波形が形成される。
階段状に立ち上がる波形、並びに階段状に立ち下がるパルス波形を形成する場合には、例えば、ブートストラップ階段波発生回路(電子通信ハンドブック(電子通信学会)に掲載されている。)をはじめとする階段波発生回路を用いればよい。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、第1基板と第2基板とが互いに対向して配設され、第1基板の対向面に第1電極群と第2電極群とが互いに並行に配されていると共に、第2基板の対向面に第1電極群及び第2電極群と立体交差して第3電極群が配され、第1基板と第2基板との間に放電ガスが封入されたガス放電パネルと、書き込み期間においてデータの書き込みを行ない、維持期間において放電維持を行うガス放電表示装置において、書き込み期間において、走査パルスと重畳するようにベースパルスを走査電極群に印加するのであるが、そのベースパルスにおける印加開始から走査パルスが印加される直前までの平均電圧変化率を10V/μ秒以下に規定することによって、
ベース電圧の絶対値を大きく設定した場合でも、ベースバルス印加タイミングにおいて誤放電が生じるのを回避できるので、書き込みを安定に行うことができるという効果が得られる。
【0097】
また、ベースパルス印加タイミングに大きな放電が生じると、当該放電に伴う発光によってコントラストが低下するが、本発明によれば、このような発光が抑えられるのでコントラストの低下も生じにくい。
このような本発明は、上述した初期化パルスを印加する技術と組み合わせること、誤放電が防止に対してより効果的である。
【0098】
また、本発明を用いれば、従来駆動することの難しかった封入ガス圧力が大気圧以上のガス放電パネルや放電ガス中のXe分圧が10%以上のガス放電パネルでも、安定して駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る交流面放電型PDPの概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における駆動タイミング図である。
【図3】ベースパルスの導入部における波形の変形例を示す図である。
【図4】実施の形態2における駆動タイミング図である。
【図5】実施の形態3における駆動タイミング図である。
【図6】実施の形態4における駆動タイミング図である。
【図7】実施の形態における駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図6におけるスキャンドライバの構成を示すブロック図である。
【図9】ランプ状に立ち上がるパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図10】ランプ状に立ち下がるパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図11】指数関数的に立ち上がるパルスを発生するパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図12】指数関数的に立ち下がるパルスを発生するパルス発生回路の構成を示すブロック図及びその回路によってパルスが形成される様子を示す図である。
【図13】一般的な交流面放電型PDPの電極マトリックスを示す図である。
【図14】256階調を表現する場合における1フィールドの分割方法を示す図である。
【図15】従来例の駆動方式にかかる駆動電圧波形図である。
【図16】従来例の駆動方式にかかる駆動電圧波形図である。
【図17】従来例の駆動方式にかかる駆動電圧波形図である。
【符号の説明】
10 前面パネル
11 前面ガラス基板
20 背面パネル
21 背面ガラス基板
40 放電空間
100 駆動装置
111 初期化パルス発生器
114 走査パルス発生器
116 ベースパルス発生器
Claims (15)
- 第1基板と第2基板とが互いに対向して配設され、前記第1基板の対向面に第1電極群と第2電極群とが互いに並行に配されていると共に、前記第2基板の対向面に前記第1電極群及び前記第2電極群と立体交差して第3電極群が配され、前記第1基板と第2基板との間に放電ガスが封入されたガス放電パネルと、書き込み期間においてデータの書き込みを行ない、維持期間において放電維持を行う駆動回路とを備えるガス放電表示装置であって、
前記駆動回路は、
前記第1電極群に、走査パルスと重畳するようにベースパルスを書き込み期間に印加し、
且つ、前記ベースパルスは、印加開始から前記走査パルスが印加される直前までの平均電圧変化率が10V/μ秒以下であることを特徴とするガス放電表示装置。 - 前記駆動回路が第1電極群に印加するベースパルスは、
前記ベースパルスの印加開始から前記走査パルスが印加される直前までの期間内に、電圧がランプ状に変化する部分を含むことを特徴とする請求項1記載のガス放電表示装置。 - 前記駆動回路が第1電極群に印加するベースパルスは、
前記ベースパルスの印加開始から前記走査パルスが印加される直前までの期間内に、電圧が指数関数的に変化する部分を含むことを特徴とする請求項1記載のガス放電表示装置。 - 第1基板と第2基板とが互いに対向して配設され、前記第1基板の対向面に第1電極群と第2電極群とが互いに並行に配されていると共に、前記第2基板の対向面に前記第1電極群及び前記第2電極群と立体交差して第3電極群が配され、前記第1基板と第2基板との間に放電ガスが封入されたガス放電パネルと、書き込み期間に先立つ初期化期間において初期化パルスを印加し、前記書き込み期間においてデータの書き込みを行ない、維持期間において放電維持を行う駆動回路とを備えるガス放電表示装置であって、
前記駆動回路は、
前記第1電極群に、走査パルスと重畳するようにベースパルスを書き込み期間に印加し、
且つ、前記ベースパルスは、印加開始から前記走査パルスが印加される直前までの平均電圧変化率が10V/μ秒以下であることを特徴とするガス放電表示装置。 - 前記駆動回路が第1電極群に印加するベースパルスは、
前記ベースパルスの印加開始から前記走査パルスが印加される直前までの期間内に、電圧がランプ状に変化する部分を含むことを特徴とする請求項4記載のガス放電表示装置。 - 前記駆動回路が第1電極群に印加するベースパルスは、
前記ベースパルスの印加開始から前記走査パルスが印加される直前までの期間内に、電圧が指数関数的に変化する部分を含むことを特徴とする請求項4記載のガス放電表示装置。 - 前記初期化パルスの立ち上がり部分、立ち下がり部分の少なくとも一方において、前記第1電極群に印加する電圧を10V/μ秒以下で変化させることを特徴とすることを特徴とする請求項4記載のガス放電表示装置。
- 前記初期化パルスは、前記駆動回路によって第1電極群に印加され、
当該初期化パルスの立ち上り部分及び立ち下がり部分の少なくとも一方において、電圧がランプ状に変化する部分を含むことを特徴とする請求項4記載のガス放電表示装置。 - 前記初期化パルスは、前記駆動回路によって第1電極群に印加され、
当該初期化パルスの立ち上り部分及び立ち下がり部分の少なくとも一方において、電圧が指数関数的に変化する部分を含むことを特徴とする請求項4記載のガス放電表示装置。 - 前記駆動回路は、
前記初期化期間における初期化パルスの立ち下がり開始から、前記書き込み期間における前記走査パルスが印加される直前までの期間において、
前記第1電極群に印加する電圧を10V/μ秒以下で連続的に変化させることを特徴とする請求項7記載のガス放電表示装置。 - 前記初期化パルスは、前記駆動回路によって第1電極群に印加され、
当該初期化パルスの立ち下がり部分から、前記書き込み期間における前記走査パルスが印加される直前までの期間内において、電圧がランプ状に変化する部分を含むことを特徴とする請求項10記載のガス放電表示装置。 - 前記初期化パルスは、前記駆動回路によって第1電極群に印加され、
当該初期化パルスの立ち下がり部分から前記書き込み期間における前記走査パルスが印加される直前までの期間内において、電圧が指数関数的に変化する部分を含むことを特徴とする請求項10記載のガス放電表示装置。 - 前記駆動回路が前記第1電極群に印加する走査パルスとベースパルスとは、互いに同極性であることを特徴とする請求項1または4記載のガス放電表示装置。
- 前記放電ガスの封入圧力が大気圧以上であることを特徴とする請求項1または4記載のガス放電表示装置。。
- 前記ガス放電パネルに封入されている放電ガスは、
Xeが含有され、
且つ、放電ガスの封入圧力に対するXe分圧が10%以上であることを特徴とする請求項14記載のガス放電表示装置。
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