JP4696836B2 - 静電アクチュエータの製造方法および静電アクチュエータ - Google Patents
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Description
このようなインクジェットヘッドにおいて、従来の電極基板の製造方法に、グレースケールマスク(面積諧調マスク)によって露光する等倍露光や、焦点をフォトレジスト層表面からずらして露光する縮小露光を用いて、傾斜部を有する凹部をフォトレジスト層に形成し、その凹部をドライエッチングによって電極基板に転写して、傾斜部を有するギャップを形成する技術があった(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、電極基板上の微小ギャップをプレス成形で加工するようにすると、硼珪酸ガラスの軟化点は800℃程度と非常に高温であるため、押し型の耐久性が大幅に低下する。800℃でも利用することができる押し型は、石英や単結晶シリコン、超硬合金に限られ、これらの素材によって押し型を成形することは困難を伴う。
また、自由度の高い形状のギャップを押し型の精度と同等な精度で第2の基板上に一括して形成することができ、こうして形成されたギャップは、ガラスと同等の強度、耐熱性、安定性を有することになる。
また、電極基材表面をエキシマ光照射で処理し、表面処理後の電極基材表面に転写層を塗布するようにした場合、電極基材と転写層とを強固かつ確実に密着することができる。 また、エキシマ光の照射強度及びスキャン速度を制御することにより、均一かつ最適な表面処理が可能となる。
また、電極基材表面をスパッタで処理し、表面処理後の電極基材表面に転写層を塗布するようにした場合、電極基材と転写層とを強固かつ確実に密着することができる。また、複数枚を同時に処理することで、スループットが良好な表面処理が可能となる。
また、ニッケル型よりなる押し型を用いて、転写層に電極溝を形成するようにしたため、押し型の耐久性が良好で、マスターからの複製も容易であるため、押し型のコストを低く抑えることができる。
また、第2の基板に表面活性接合によって第1の基板を接合するようにしたため、熱膨張係数差のある転写層と第1の基板とを、低温で陽極接合なみの強度で接合することができる。
また、電極溝に多段構造を有するようにしたもので、対向電極は電極溝の最浅部でキャビティ基板の振動板と最近接しており、この位置を当接開始点とすることができる。よって、この当接開始点で振動板の当接開始電圧を下げることができ、振動板の当接開始電圧を単段構造よりも小さくすることができる。こうして振動板の各部分が段階的に個別電極に吸引されることにより、微小なインク圧力波動が発生し、インク小滴が分断して噴射されるので、駆動電圧の低減を図りつつ充分な発生力を得ることができる。
また、転写層の成分をSOG(Spin On Glass)により構成したため、自由度の高い形状のギャップを押し型の精度と同等な精度で一括して形成することができ、形成されたギャップはガラスと同等の強度、耐熱性、安定性を有することになる。
図1は本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの縦断面図である。なお、以下の説明では、図中、上側を「上」、下側を「下」とする。図に示すように、インクジェットヘッド1は、キャビティ基板2の上面にノズル基板3が接合され、キャビティ基板2の下面に電極基板4が接合されている。すなわち、インクジェットヘッド1は、下方から上方へ電極基板4(第2の基板)、キャビティ基板2(第1の基板)、ノズル基板3が順次積層された3層構造となっている。
このようにして構成されたインクジェットヘッド1では、振動板23と個別電極42と電圧印加手段(図示せず)とが静電アクチュエータを構成している。すなわち、電圧印加手段が振動板23と個別電極42との間に駆動電圧を印加すると、振動板23と個別電極42との間に静電気力が発生する。これにより、振動板23が個別電極42側へ撓んで変位し、インク吐出室22の容積が拡大する。次に、駆動電圧を解除すると、振動板23はその弾性復帰力によって復帰し、インク吐出室22の容積が急激に収縮する。このときに発生するインク圧力により、インク吐出室22を満たすインクの一部が、このインク吐出室22に連通しているノズル孔32からインク滴として吐出される。
(a) まず、図2(a)に示すように、下面が研磨されたシリコンよりなるキャビティ基材2aを用意する。次に、キャビティ基材2aの下面に不純物をドープし、不純物拡散層23aを形成する。不純物としては、ボロン等が上げられる。この不純物拡散層23aは、インクジェットヘッド1において振動板23を構成するものである。また、この不純物拡散層23aは、エッチング液に対するエッチング速度がキャビティ基材2aと異なるので、後工程で行うキャビティ基材2aのエッチングに際して、エッチングの停止層として機能する。したがって、この不純物拡散層23aの厚さを制御することによって、所望の厚さの振動板23を形成することができる。なお、不純物拡散層23aは、キャビティ基材2aに比べて低抵抗性であることから、特に、振動板23となる部分においては、共通電極として良好な導電性が得られる。
(a) 次に、電極基板4を作製する。まず、図3(a)に示すように、電極基材4aを用意する。電極基材4aは、シリコンと熱膨張係数が近い硼珪酸ガラスのようなガラスを主材料とする。そして、電極基材4aの上面を、エキシマ光照射80で表面処理する。
なお、電極基材4aの上面を、アルゴンスパッタやイオンビームスパッタ等のスパッタで表面処理してもよい。
ついで、押し型81を転写層4bより剥離させ、そののち、転写層4bを焼成する。
以上の工程により電極基板4が作製される。
(a)次に、図4(a)に示すように、電極基板4とキャビティ基材2aとを、電極基板4の転写層4b側の面と、キャビティ基材2aの絶縁膜63側の面とが対向するようにして配置する。
(b)そして、図4(b)に示すように、電極基板4とキャビティ基材2aとを表面活性接合によって接合し、接合基板71を形成する。このように表面活性接合によって接合するのは、電極基板4とキャビティ基材2とを電極基板4側の転写層4bを介して接合するからであり、これらの接合を高温を要する陽極接合によって行うと部材間の熱膨張係数差により剥離等の欠陥が発生する場合があるからである。
(a) 次に、図5(a)に示すように、キャビティ基材2aの上側をグラインダー等で切削し、キャビティ基材2aを薄板化する。
さらに、キャビティ基材2aの上面全体にウェットエッチングを行い、キャビティ基材2を薄板化する。エッチング液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液等を用いる。
このように、キャビティ基材2aを切削加工とエッチングの2段階で薄板化すると、切削加工によって比較的厚い厚さ分を高速で切削することができ、また、エッチングによって、キャビティ基材2aの切削された加工面を比較的滑らかで欠陥の少ない面とすることができる。したがって、キャビティ基材2aを短時間で薄板化することができ、また良好な表面を得ることができる。
(f)そして、図6(f)に示すように、共通インク室21に対応する部分21aの底部を、例えばレーザー加工によって開口し、インク供給孔43aと共通インク室21とを連通させてインク供給口43を形成する。
以上の工程によってキャビティ基板2が作製される。
(a)次に、図7(a)に示すように、キャビティ基板2と、インクオリフィス31およびノズル孔32が形成されたノズル基板3とを、ノズル孔32がインク吐出室22となる部分の先端付近となるようにして接合する。これにより、キャビティ基板2とノズル基板3との間に、共通インク室21、インク吐出室22およびインクオリフィス31が画成される。
図8は本発明の実施の形態2に係るインクジェットヘッドの縦断面図である。なお、図1と同一部分には同じ符合を付し、説明を省略する。
本実施の形態2に係るインクジェットヘッド1は、電極基板4の転写層4bに形成された凹部41及び個別電極42の形状が、実施の形態1に示した凹部41及び個別電極42の形状と異なっているが、それ以外の部分は、図1に示したインクジェットヘッドと実質的に同様である。
その他の構成、作用、効果は、実施の形態1に示した場合と実質的に同様なので、説明は省略する。
実施の形態1では電極基板4のギャップ形状を断面ほぼ台形状に形成し、実施の形態2では段差状に形成したが、本実施の形態3ではギャップ形状を上方にコ字状に開口したものである(図示せず)。
電極基板4の転写層4bの上部には、キャビティ基板2の各振動板23に対応した位置に、上方にコ字状に開口した凹部が形成され、この凹部には個別電極42が設けられている。
その他の、構成、作用、効果は、実施の形態1に示した場合と実質的に同様なので、説明は省略する。
図9は本実施の形態4に係る液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の斜視図である。なお、図9に示す液滴吐出装置100は、一般的なインクジェットプリンタである。
本実施の形態4に係る液滴吐出装置によれば、電極基板4の加工精度とギャップ形状の自由度が高く、静電アクチュエータは高密度かつ複雑な構造を有することができるため、液滴吐出装置の性能は良好になる。
なお、上記の静電アクチュエータは、インクジェットプリンタに限らず、他の液滴吐出装置にも用いることができる。例えば、他の液滴吐出装置としては、プロテインチップやDNAチップの作製、有機EL製造装置や液晶表示装置のカラーフィルタの製造、インクジェット法による配線基板の作製などに用いるものが挙げられる。また、係る静電アクチュエータは、光スキャナなど、液滴吐出装置以外の装置にも用いることができる。
Claims (2)
- 振動板を有する第1の基板と、電極溝を有し該電極溝に前記振動板とギャップを隔てて対向する対向電極が設けられた第2の基板とを備え、前記振動板と対向電極の間に電圧を印加することによりこれらの間に静電力を発生させて前記振動板を変位させる静電アクチュエータの製造方法において、
基板部材表面をエキシマ光照射またはスパッタで処理し、表面処理後の前記基板部材表面に、無機SOG(Spin On Glass)からなる転写層を塗布し、
ニッケル型よりなる押し型を前記転写層の上部より押圧し、ナノインプリント法によって、平坦部と傾斜部とを長手方向に交互に少なくとも2組以上並んだ底面を有し、長手方向に深さが段階的に短くなる電極溝を形成して前記第2の基板を構成し、
前記第2の基板に、表面活性接合によって前記第1の基板を接合することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。 - 請求項1記載の静電アクチュエータの製造方法により製造された静電アクチュエータ。
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