JP4669962B2 - クラスC型β−ラクタマーゼ産生菌の簡易検出法 - Google Patents
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Description
β-ラクタマーゼには、その構造上の特徴からクラス A、 B、 C、 Dの4つのグループがある。本発明者らは、これまでに臨床上大きな問題となっているクラス A の基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)の検出法としてTwin testを、クラス Bのメタロ-β-ラクタマーゼの検出法としてSMA法(特開2000−224998号公報)を開発し、広く普及されるに至っている。
[1]
検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、ボロン酸化合物及びβ-ラクタム薬を、距離を置いて点在させ、かつボロン酸化合物とβ-ラクタム薬との間の距離が、培養期間中にボロン酸化合物が拡散する範囲とβ-ラクタム薬が拡散する範囲とが重複するように設定し、上記固体培地を培養し、培養後、上記β-ラクタム薬の周囲に形成される阻止円が、上記ボロン酸化合物側に拡張したか否かにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法。
[2]
ボロン酸化合物を含有するディスク及びβ-ラクタム薬を含有するディスクを用いて、ボロン酸化合物及びβ-ラクタム薬をそれぞれ点在させる[1]に記載の方法。
[3]
ボロン酸化合物が3-アミノフェニルボロン酸である[1]または[2]に記載の方法。
[4]
β-ラクタム薬が第3世代セフェム薬である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]
第3世代セフェム薬がセフタジジムまたはセフォタキシムである[4]に記載の方法。
[6]
ボロン酸化合物を含有するディスク及びβ-ラクタム薬を含有するディスクを、1つずつストリップ状の基体に配置し、かつボロン酸化合物を含有するディスクとβ-ラクタム薬を含有するディスクとの間の距離が、培養期間中に固体培地の表面でボロン酸化合物が拡散する範囲とβ-ラクタム薬が拡散する範囲とが重複するように設定されていることを特徴とするキットであって、
前記キットを検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に置き、培養を行い、培養後、上記β-ラクタム薬を含有するディスクの周囲に形成される阻止円が、上記ボロン酸化合物を含有するディスク側に拡張したか否かにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法に用いるためのクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌判別用キット。
[7]
ボロン酸化合物が3-アミノフェニルボロン酸である[6]に記載のキット。
[8]
β-ラクタム薬が第3世代セフェム薬である[6]〜[7]のいずれか1項に記載のキット。
[9]
第3世代セフェム薬がセフタジジムまたはセフォタキシムである[8]に記載のキット。
[10]
[6]〜[9]のいずれかに記載のキットを検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に置き、培養を行い、培養後、上記β-ラクタム薬を含有するディスクの周囲に形成される阻止円が、上記ボロン酸化合物を含有するディスク側に拡張したか否かにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法。
さらに本発明によれば、より簡便にクラスC型β−ラクタマーゼ産生菌を判別する方法を実施できるキット及びこのキットを用いたクラスC型β−ラクタマーゼ産生菌を判別する方法を提供することがある。
本発明の方法の第1の態様は、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤及びβ−ラクタム薬を、距離を置いて点在させ、上記固体培地を培養し、培養後、上記β−ラクタム薬の周囲に形成される阻止円が、上記クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤側に拡張したか否かにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法である。
さらに、ボロン酸化合物としては、例えば、3-アミノフェニルボロン酸、3-ニトロフェニルボロン酸、2-チオフェンボロン酸、ベンゾ[b]チオフェン-2-ボロン酸等を挙げることができる。
但し、これらはあくまでも目安であり、検査対象とする菌の種類に応じて、β−ラクタム薬の周囲に形成される阻止円の形状や大きさ等を考慮して適宜変化させることができる。
これは、クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤により、クラスC型β-ラクタマーゼの活性が阻害され、その結果、β−ラクタム薬が菌の生育を妨げることができるようになったためである。ここで観察される阻止帯の形状は、β−ラクタム薬の拡散範囲とクラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤の拡散範囲との重複の程度により変化するが、一般的には、歪んだ形になる。即ち、β−ラクタム薬の周囲に形成される阻止円は、クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤側に拡張する。この形状が変化した阻止円は、クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤の拡散範囲と重複しない位置にあるβ−ラクタム薬の周囲に形成される阻止円とは、大きさの違いから明確に区別できる。
本発明の方法の第2の態様は、検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤及びβ−ラクタム薬の混合物、並びにβ−ラクタム薬を、距離を置いて点在させ、上記固体培地を培養し、培養後、上記混合物の周囲に形成される阻止円と、上記β−ラクタム薬の周囲に形成される阻止円の違いにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法である。
本発明のクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌判別用キットは、
(1)クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤を含有するディスク及びβ−ラクタム薬を含有するディスクを、1つずつストリップ状の基体に配置したことを特徴とするものと、(2)クラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤及びβ−ラクタム薬を含有するディスク及びβ−ラクタム薬を含有するディスクを、1つずつストリップ状の基体に配置したことを特徴とするものとが有る。
(1)のクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌判別用キットは、上記本発明の方法の第1の態様に用いられ、(2)のクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌判別用キットは、上記本発明の方法の第2の態様に用いられる。
本発明の方法の第3の態様は、微量液体希釈法に基づく方法である。この方法では、まず、β−ラクタム薬を段階的に希釈して含有し、かつ等濃度のクラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤を含有する複数の液体培地を用意する。
液体培地としては、例えば、ミューラー・ヒントン液体培地(Ditco社)等を用いることができる。
β−ラクタム薬及びクラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤は、本発明の方法の第1の態様で説明したものと同様である。
液体培地中でのβ−ラクタム薬の段階的な希釈の程度は、例えば、0.5〜256μg/mlの範囲とすることができる。
また、各液体培地中のクラスC型β-ラクタマーゼ阻害剤の濃度は等しくし、例えば、3-アミノフェニルボロン酸であれば、例えば、200μg/mlとすることができる。
実施例1(本発明の方法の第1の態様)
被検菌をNCCLSの推奨するディスク拡散法に基づく方法でミューラー・ヒントン寒天培地に接種した。被検菌としては以下の表1に示すものを用いた。
(直径6mm)を中心距離にして約18mm離して配置した。図1及び2に写ったシャーレの上段の3つのディスクが左から、CAZ 、APB、CTXのディスクである。
発育阻止帯の状況及び形状を下記表2に記載する。
被検菌を上記実施例1と同様にミューラー・ヒントン寒天培地に接種し、CAZのKBディスク(直径6mm)を中心距離にして3cm以上離して配置した。一方のCAZディスクにAPBを300μgしみ込ませ、一晩培養後2つのCAZディスクの周囲の発育阻止円の径を測定した。図1及び2に写ったシャーレの下段の2つのディスクが左から、CAZ 、CAZ+APBのディスクである。結果を下記表3にコメントともに示す。
CAZを段階希釈したミューラー・ヒントン液体培地と、CAZの段階希釈に200μgの APBを加えたミューラー・ヒントン液体培地を作製し、被検菌をNCCLSの推奨する微量液体希釈法に基づいた方法で接種した。一晩培養後MICを測定した。結果を以下の表4に示す。
APB:3-アミノフェニルボロン酸
CAは4μg/ml、SMAは500μg/nl、APBは200μg/ml、の濃度で使用した。
尚、CAZ+CA及びCAZ+SMAの場合、前者はクラスA型βーラクタマーゼ産生菌においてのみCAZの場合に比べて8倍以上のMICの低下がみられ、後者の場合はクラスB型βーラクタマーゼ産生菌においてのみCAZの場合に比べて8倍以上のMICの低下を認める。
Claims (10)
- 検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に、ボロン酸化合物及びβ-ラクタム薬を、距離を置いて点在させ、かつボロン酸化合物とβ-ラクタム薬との間の距離が、培養期間中にボロン酸化合物が拡散する範囲とβ-ラクタム薬が拡散する範囲とが重複するように設定し、上記固体培地を培養し、培養後、上記β-ラクタム薬の周囲に形成される阻止円が、上記ボロン酸化合物側に拡張したか否かにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法。
- ボロン酸化合物を含有するディスク及びβ-ラクタム薬を含有するディスクを用いて、ボロン酸化合物及びβ-ラクタム薬をそれぞれ点在させる請求項1に記載の方法。
- ボロン酸化合物が3-アミノフェニルボロン酸である請求項1または2に記載の方法。
- β-ラクタム薬が第3世代セフェム薬である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 第3世代セフェム薬がセフタジジムまたはセフォタキシムである請求項4に記載の方法。
- ボロン酸化合物を含有するディスク及びβ-ラクタム薬を含有するディスクを、1つずつストリップ状の基体に配置し、かつボロン酸化合物を含有するディスクとβ-ラクタム薬を含有するディスクとの間の距離が、培養期間中に固体培地の表面でボロン酸化合物が拡散する範囲とβ-ラクタム薬が拡散する範囲とが重複するように設定されていることを特徴とするキットであって、
前記キットを検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に置き、培養を行い、培養後、上記β-ラクタム薬を含有するディスクの周囲に形成される阻止円が、上記ボロン酸化合物を含有するディスク側に拡張したか否かにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法に用いるためのクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌判別用キット。 - ボロン酸化合物が3-アミノフェニルボロン酸である請求項6に記載のキット。
- β-ラクタム薬が第3世代セフェム薬である請求項6〜7のいずれか1項に記載のキット。
- 第3世代セフェム薬がセフタジジムまたはセフォタキシムである請求項8に記載のキット。
- 請求項6〜9のいずれかに記載のキットを検出対象である菌が塗布された固体培地の表面に置き、培養を行い、培養後、上記β-ラクタム薬を含有するディスクの周囲に形成される阻止円が、上記ボロン酸化合物を含有するディスク側に拡張したか否かにより、検出対象である菌がクラスC型β-ラクタマーゼ産生菌か否かを判別する方法。
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