JP4651753B2 - 不安定結合による担体結合抗原から成るワクチン - Google Patents
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Description
ワクチン調製物の抗原性を増大させる広く知られた方法は、この製剤にアジュバントを加える方法である。しかし、このようなアジュバントは非特異的な方法でのみ免疫応答を刺激し、用いた抗原の特異的な抗原性または免疫原性を増大させるものではない。それ自体抗原性または免疫原性の乏しい抗原の特異的な抗原性または免疫原性を高めることは、該抗原を担体化合物に結合させることによりしばしば達成される。合成ペプチドは動物を免疫するためによく使用されている。しかし、アミノ酸が約20ないし30以下のペプチドは、そのような免疫原の乏しい周知の例である。それらの特異的抗原性または免疫原性を高めるために、分子量を増やす必要があるとされている。
分子量を増加させるために、抗原を担体分子に安定な結合で接合させる多くの試行がなされているが、そこでは担体タンパク質としてキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)またはオボアルブミン(OVA)などの異なる担体化合物を使用する。そのような免疫接合は非常に複雑な構造に導き、不所望の副作用を生じるが、その意味は、例えば、担体化合物および抗原と担体の連結が生じている接合分子の領域に対して特異的な不所望の抗体が誘導されるということである。
応用されている他の方法は抗原性または免疫原性の低いタンパク質またはペプチドに脂肪酸基を結合させることである。抗原に脂肪酸を導入する主な目的は、アジュバント−および免疫提示系、例えば、リポソームおよびISCOM類に親水性の抗原を固定することである。その理由はそのような系がそれらの系にそれらを包含させるために疎水性分子の存在を必要とするからである。ワクチン調製物についてのそのような手法は、モデルタンパク抗原ではある程度上手く用いられているが、合成ペプチドではあまり上手くいっていない。オボアルブミンのリジンをパルミチン酸でアシル化すると、主要組織適合性複合体(MHC)のクラスII制限提示を増強することが見出された。このことは長鎖脂肪酸との接合が、MHCクラスIIおよび/またはT細胞レセプターに結合するために親和性を増大したリポペプチドT細胞エピトープが形成されることを示唆している(20)。
脂肪酸のそのような結合は、免疫化/予防接種の目的に使用することを企図するタンパク質またはペプチド(26)のアシル化によって、単に脂肪酸を抗原に共役結合させることにより達成されている。これらの研究では、主にパルミチン酸またはミリスチン酸が用いられている。タンパク抗原に対しての「脂質尾部」の導入(パルミチル化)は主にパルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミドを用いて実施されているが、この場合には、タンパク質と脂肪酸の間に不可逆的で安定な結合が形成される。合成ペプチド抗原に対しての最も一般的な手法は、ペプチド合成の後に続いて実施するが、ペプチド合成化学を続けることにより得られる末端アミノ酸の遊離アミノ基にパルミチン酸を付加することにより行う。この反応はパルミチン酸尾部とペプチドの間に不可逆的なアミド結合を形成させる。
今回我々は、抗原を担体化合物に不可逆的に結合させる代りに、抗原(タンパク質またはペプチドまたは炭水化物または免疫化/予防接種手法にとって抗原として用いられる他の分子)と担体化合物との間に可逆的で不安定な様式、いわゆる不安定結合法で結合させることのできる手法を見出した。「不安定結合」(labile−link)とは抗原と担体タンパク質の間の不安定な化学結合を意味する。不安定なとは化学的または酵素的に不安定であることと理解すべきである。化学的に不安定な結合は、例えば、通常体内に見出される条件、例えば、一定の体組織に見ることのできる塩基性pHでの条件、あるいは他の組織または一定の細胞区画に見ることのできる酸性pHでの条件で切断するが、一方、酵素的に不安定な結合は、体組織に存在する酵素、例えば、チオエステラーゼまたはエステラーゼの存在下に切断する。
そのような切断は、ワクチンの投与後、抗原と担体化合物の解離を招く。この方法によって、この記載の実験の部に詳細に説明するように、抗原と担体化合物の間の安定な結合を与える方法によるよりも、それ自体免疫性の高くない抗原によって驚くほどよい免疫応答を発現させることができる。
本発明は脂質尾部などの担体化合物を抗原に導入するのを可能とするばかりでなく、抗原提示細胞の細胞表面によりよく道をつけることをも可能とする。その結果、抗原が解離したものとなり、それらの抗原提示細胞によりよりよく処理されてよりすぐれた免疫応答を示すことになる。それ故、本発明は担体タンパク、アジュバントまたは他の提示系に抗原を固定することを単に目指したものではなく、それ自体の能力によって抗原の抗原性または免疫原性を顕著に増大させることができるものである。
本発明を制限するものではないとして理論的説明をすると、担体化合物に可逆的な結合または不安定な連鎖を介して結合した抗原、例えば、ペプチドのチオール基をパルミチン酸アシル化により結合した抗原は、種々細胞区画へのルートづけを容易にし、この方式によってその免疫原性を高める。
ペプチド類は極めて多くの様式でパルミチン酸残基に置換されている。例えば、Nα,Nε−ジパルミトイルリジン・ペプチド(8,5)、Nα−パルミトイル−S−(2,3−ビス−パルミトイルオキシ−(2RS)−プロピル)−(R)−システイン(Pam3Cys−ペプチド(5,13))、パルミトイル化ポリリジン(23,24)、Pam3Cys−多重抗原ペプチド(4,10)、リポ−多重抗原ペプチド(9,10)、ISCOMに包含させるのに用いるN−パルミトイル化タンパク質(3,14,17)、およびペプチジル−Nε−パルミトイルリジン(5)との接合などによる。これらの例では、パルミトイル化がアミノ基またはヒドロキシ基で起こり、アミドなどの非可逆的結合を与える。
実験の部で例示するように、本発明は不安定な結合の形成を利用するものであるが、今回は、抗原と1個の長鎖脂肪酸との制御下での接合により不安定に連接した抗原と担体化合物を得るための非常に簡単な方法を提供する。脂肪酸の存在は抗原が抗原提示細胞に取り込まれるのを促進し、その結合が不安定で可逆的な性質のものであるために、抗原が再分離されたものとなり、抗原のみに対しての特異抗体形成を誘発する。
実験の部においては、不安定な結合の概念について、担体化合物としてのパルミチン酸にチオエステル結合を介して結合した抗原としての合成ペプチドにより、また、担体化合物としてのN−パルミトイルペプチドにジスルフィド結合を介して結合した抗原としての合成ペプチドにより説明する。本発明の好ましい部分はこのように開示した実施例により説明する。しかし、ワクチン投与後、抗原が担体化合物から解離するという目的に適うすべての不安定な結合によりその抗原が担体化合物に可逆的にまたは変わり易くまたは不安定に結合しているワクチンまたは免疫原調製物もまた本発明の一部である。例えば、オボアルブミンにジスルフィド架橋を介して連接したグリコペプチドから成るワクチン組成物は、該組成物が還元的環境、例えば、グルタチオンの存在する血中にあるような環境に遭遇すると直ちに解離する。
抗原としては、免疫応答が好ましく誘発される必要のある他のタイプの分子、例えば、ポリペプチド、炭水化物部分もしくは他の側鎖を有することのあるタンパク質、炭水化物鎖それ自体、核酸分子、ハプテンなどを選択できる。担体化合物としては、他の脂肪酸を用いることができるが、KLHまたはOVAなどの担体タンパク質、または脂肪酸ペプチド、または他のタイプの分子を担体化合物として使用することができる。
抗原と担体化合物間の不安定な結合としては、チオエステル結合が本発明の好ましい部分を説明する。しかし、通常、体液中あるいは体組織もしくは細胞内外に存在する生理条件下(例えば、pH,モル浸透圧性、塩濃度、または還元剤もしくは酵素の存在など)で不安定なエステルおよびジスルフィド結合などの他の化学結合もまた、生理条件下、すなわち、投与後に抗原がその担体化合物から解離するようなワクチンまたは免疫原調製物を提供することの目的に適うものである。不安定なリンカーの代表的な好ましい例がガン治療の分野に見出されるが、そこではリンカーが抗体と細胞増殖抑制剤との間に応用されている。
また、本発明により調製されるワクチンおよび免疫原調製物は、抗原をより高活性の抗原もしくは免疫原とするために伝統的に用いられる担体化合物およびアジュバントと混合してもよい。更に、本発明により調製されるワクチンおよび免疫原調製物は、該調製物を投与した後、すなわち、解離速度を変化させる条件により調製物を包囲し、それによって正常な生理条件から一時的に調製物を遮蔽することにより、担体化合物から抗原が解離する速度を速めたり、遅くしたりするのに特に選択する他の化合物またはアジュバントまたは抗原搬送システムと混合してもよい。担体から抗原の放出を持続させるためには、担体と抗原間の異なる解離定数を有する異なるリンカーを適用するのが有用である。
更に、また、本発明により調製されるワクチンおよび免疫原調製物は、技術上既知の種々の方法で投与することができる。例えば、筋肉内、鼻内、腹腔内、皮膚内、皮内、粘膜またはエアゾル製剤などとして投与できるが、これらに限定されるものではない。
実施例
序論
不安定な結合の概念は抗原としての合成ペプチドおよび担体化合物としてのパルミチン酸もしくはN−パルミトイルペプチドにより説明し得る。
ペプチドを溶液中または固相上でアシル化する条件は確立された。更に、我々の研究によれば、脂肪酸の接合はN−アシル化が関与する場合には安定なアミドの形成を伴い、S−アシル化の場合には不安定なチオエステルの形成を伴うために、結合の安定性が免疫の効能に影響することが証明された。アシル化の位置(NまたはS)によるこの相違はその免疫原性にとって重要であることが見出された。免疫化にもとづいて見出されたことは、不安定なS−パルミトイル化ペプチドまたは不安定なジスルフィド架橋を介してN−パルミトイル化ペプチドに結合したペプチドはN−パルミトイル化ペプチドに勝っており、少なくとも検出可能な抗体形成または生物学上の効果の応答時間に関しては、KLH接合ペプチドに匹敵するということである。理論的な説明では、生物学的または生理学的条件下、不安定なチオエステルもしくはジスルフィド結合を介して化学的に結合した適切な脂肪酸の存在は免疫原性を改善するが、その理由は恐らくそれが免疫系細胞中での取り込みおよび処理工程での好適な前駆体を表しているからである。この処理工程はすでに単離されているパルミトイルチオエステル(18)により、あるいはジスルフィドの場合にはグルタチオンにより仲介される。
アミドおよびエステルと違って、チオエステルは求核性の攻撃を非常に受け易い。パルミトイルチオエステルの化学的安定性はこのように生理的pHにおいて、および脱保護条件(酸、酸−チオール、塩基)について検討しなければならなかった。9種のペプチド構成物(A,B,C,D,E,F,G,HおよびI,図1)はワクチン調製物として調製され、その2種のペプチドはGnRH−縦列ペプチドを代表し、5種はイヌのパルボウイルス(CPV(11))のVP2(cys−2−21位置)N−末端に基づいておりて、2種はネコの免疫不全ウイルス(FIV)のV3ループからのものである。それらはそのアシル化部位(S,α−Nまたはε−N,図1)により相違する。S−パルミトイル化ペプチドは高いレベルの抗体を誘発し、そのレベルはKLH−MBS結合ペプチドに比較し得るか、僅かに勝っており、検出可能な抗体(CPV)または生物学上の効果(GnRH)の応答時間に関しては、N−パルミトイル化ペプチドより優れている。
材料
N−メチルピロリドン(NMP),2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびピペリジンはペプチド合成純度のものであり、パーキン・エルマー/ABI(ワーリントン、英国)より入手した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC),ジメチルホルムアミド(DMF),N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt),ジイソプロピルエチルアミン(DIEA),アセトニトリル(ACN),トリフルオロ酢酸(TFA),チオアニソール(TA),フェノール、パルミチン酸およびエタンジチオール(EDT)は分析純度のものであり、メルク(ダルムシュタット、ドイツ)より入手した。ジエチルエーテルは活性化塩基性酸化アルミニウ・カラムで精製し、DIEAは使用前にニンヒドリンおよび水酸化カリウム上で2度蒸留した。Fmoc−アミノ酸誘導体および樹脂(4−(2’、4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)フェノキシ樹脂(リンク樹脂)(19))はサクソン・バイオケミカルズ(ハノーバー、ドイツ)より入手した。4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂はノババイオケム(ラオフェルフィンゲン、スイス)より入手した。分析用HPLCについて、我々は2個のウオーターズ製ポンプ・モデル510、ウオーターズ製グラジエント・コントローラー・モデル680、ウオーターズ製WISP712オートインジェクター、およびウオーターズ製991光ダイオード・アレイ検出器を用いた。生成物を直線勾配(グラジデント)法により、0.1%TFA含有水ないし0.1%TFA含有60%アセトニトリル/水を用い、ウオーターズ製デルタパックC18−100カラム(3.9 x 150mm、5μm)上で、1ml/分の速度、60分間で分析した。
アミノ酸分析はウオーターズ製ピコータグ・システムを使用し、6N−HCl、150℃1時間の条件下、ピコータグ・ワークステーションで水解し、フェニルイソチオシアネートで誘導化した後、実施した。分離HPLCは、デルタ−パックC18−100(15μm)を充填した2本のプレップパックカートリッジおよびガードカートリッジ(40x210mmまたは25x210mm)を備えるウオーターズRCMモジュール装備プレップ4000液体クロマトグラフを用い実施した。ペプチドは分離用セルをもつウオーターズ486スペクトロホトメーターを用い、230nmで検出した。
方法
1]ペプチドの合成
すべてのペプチド(ペプチドBを除く。図1)はABI430Aペプチド合成機によりファストモック(FastMoc)(商標)法を用い、リンク樹脂(0.38mmol/g負荷)上C−末端アミドとして合成した。システインのイオウはS−tert−ブチルスルフェニル基またはトリチル基で保護し、すべての他の側鎖機能はトリフルオロ酢酸反応活性基により保護した。合成終了後、ペプチドを無水酢酸/DIEA/NMP(0.1/0.01/1(v/v/v))を用いてアセチル化するか、またはあらかじめ活性化したパルミチン酸を用いN−パルミトイル化した(方法・第3および4項参照)。S−トリチル保護システインを有するペプチドは、TFA/水/EDT/TA/フェノール(40/2/1/2/3(v/v/v/v/w))を用い、スカベンジャーの存在下、2時間、酸水解して樹脂から切断し、同時に脱保護した。粗製のペプチドを沈殿させ、ヘキサン/エーテル(1:1)で2度洗浄し、アセトニトリル/水(1:1)から凍結乾燥した。ペプチドBはNMP中Fmoc−Lys(Boc)−OHから出発して、メチルベンズヒドリルアミン(MHBA,0.46mmol/g)樹脂上、C−末端アミドとして合成した。TFA/水(19:1)でBoc基を切断後、あらかじめ活性化したパルミチン酸でパルミトイル化した(方法・第4項参照)。Fmoc脱保護後、上記のごとく、α−アミノ基を適切なFmoc−アミノ酸で連続的にアシル化して保護ペプチドとした。化合物Bを脱保護し、HF/アニソール(9:1)で樹脂から切断した。
2]S−(tert−ブチルスルフェニル)システイニル残基の溶液中脱保護
システインの側鎖保護基を、還元剤を用い脱離した。30分で行う定型の二重脱保護を採用し、窒素気流下、10%H2O/NMP中、50モル等量過剰のトリ(n−ブチル)ホスフィンで実施した。反応はHPLC分析によりモニターした。
3]溶液中でのS−パルミトイル化
パルミチン酸の活性化−パルミチン酸(100μmol)のDCM(250μl)溶液に、DMF(220μl)中HBTU/HOBt100μmol(0.45M)溶液およびNMP中の2M−DIEA溶液200μmolを添加した。活性化パルミチン酸は室温20分でこの混合物からゲルを形成した。
チオール基のパルミトイル化−アセチル化したペプチド(リジン残基不含)をNMPに10mg/mlの濃度で溶解した。溶液をpH試験紙でチェックしながらDIEA(2M NMP溶液)でpH5とし、1等量のあらかじめ活性化したパルミチン酸と混合した。室温で90分間攪拌後、サンプルを分析用HPLCに付した。約50%のペプチドが反応していることが判明した。二度目の等量の活性化パルミチン酸を、この場合は半量のDIEAで調製したものを添加すると、更に90分後に70%以上のペプチドがパルミトイル化されていた。副産物は認めなかった。総反応時間5時間後、混合物をアセトニトリル/水(1:1)で4倍に希釈し、2滴のTFAを加え、パルミトイル化ペプチドを単離し、分離用HPLCで精製した。
α−もしくはε−アミノ基のパルミトイル化−リジン残基の遊離Nαもしくは遊離Nεを、S−パルミトイル化について記載したようにN−パルミトイル化した。
4]樹脂上N−パルミトイル化
合成完了後、樹脂をNMP/水(9:1)中、トリ(n−ブチル)ホスフィン(50等量)で60分間2度(またはホスフィンの品質により2度目は一夜)処理し、tert−ブチルスルフェニル基を除去した。樹脂をNMPで充分に洗浄した。遊離のSH基を、あらかじめ活性化したパルミチン酸試薬(パルミトイル化溶液、第3項参照)を用い、DCM/NMP中、それぞれ5時間と15時間、2度の連結反応により樹脂上パルミトイル化した。
5]脱保護混合物の選択と酸に対するチオエステルの安定性
tert−ブチルオキシ機能(BocおよびOBut)の酸水解による除去および/または樹脂−ペプチド結合の切断におけるチオエステルの安定性を検討するために、2種のモデルペプチド、すなわち、Ac-C(palm)SEIFRPGGGDMR-NH2およびAc-C(palm)VATQLPASF-NH2(両方ともリジンを含まない)を溶液中でパルミトイル化し、分離用HPLCで精製した。サンプルをスカベンジャーの存在下または不存在下に、TFA/水(19/1、v/v)(A),TFA/水/EDT/TA/フェノール(40/2/1/2/3、v/v/v/v/w)(B),またはEDT/水/TFA(1/1/38,v/v/v)(C)を用いる酸水解条件に付した。酢酸/水(1/1)を対照として用いた。処理(3時間)は室温で実施した。チオエステルはこれら酸性条件のすべての下で安定であることが証明された。
6]ヨードアセトアミドによる遊離SH基のブロッキング
ペプチドac−CSDGAVQPDGGQPAVRNERATG−NH2の空気酸化による2量化を防ぐために、遊離SH基をブロックした。ペプチドac−CSDGAVQPDGGQPAVRNERTAG−NH2(20μmol)およびヨードアセトアミド(100μmol)を、400μlのDMFおよび600μlの2%NH4HCO3(pH8.0)中に溶解した。pHを7.5〜8.5の間に保ち、必要があれば、特級NH4HCO3(結晶)を用いて調整した。この溶液を、室温で約1.5または2時間攪拌した。酢酸(100%、50μl)を加えて、反応を停止させた。エルマン試験によって、得られた生成物を分析した。
7]塩基に対するチオエステルの安定性
リン酸緩衝溶液(PBS、pH7.2)/DMF(7/3)、NH4HCO3水(2%、pH8)/DMF(7/3)、ピペリジン/NMP(3/7)中でのペプチドAの安定性を検討した。ペプチドAを、室温で、5mg/mlの濃度で溶解した。安定性は、分析HPLCで測定した(表1)。結果を表1にまとめた。
8]CPVのジスルフィド構成物Cの合成
ac−CSDGAVQPDGGQPAVRNERATG−NH2(13mg)およびpalm−CSDGAVQPDGGQPAVRNERATG−NH2(6.4mg)を、1mlの50%DMSO/DCMに溶解した。この溶液を、150μlの2%NH4HCO3を用いて、pH7.0にした。この混合物を攪拌し、反応は、分析HPLCで追跡した。3時間後、0.5mlの酢酸を加えることによって反応を停止した。ヘテロダイマーC(図1、ジスルフィド)およびアセチルペプチドのホモダイマーは、HPLC精製によって単離した。最適な収率で化合物Cを得るために、等モル量の両出発ペプチドを用いてもよい。また、2量化は、中和にトリエチルアミンを用いて、10%DMSO/NMP中で行ってもよい。モル質量は、高速原子衝撃質量分析(FAB−MS)で測定した。質量分析のために還元剤チオグリコール酸を添加したので、2つの1本鎖ペプチドだけが検出された(ac−ペプチド:計算値:2422、測定値:2422および2489;palm−ペプチド:計算値:2465.79、測定値:2465.20)。合成中に起こる2つの副反応が、いくつかの副生成物の原因であり(26)、67の質量の増加は、ピペリジンとアスパラギン酸残基の1つとの反応によって引き起こされて、1分子の水が失われ、また18の減少は、特にDG配列において頻繁に起こる副反応であるAsp−Gly転位によって引き起こされた(DGは、配列中に2回現れる)。エレクトロスプレー質量分析(electrospray MS:ES−MS)によって、完全な構成物Cの質量だけではなく、上述の副反応によって変形した構成物Cの質量もまた示された。これらの変形物は、免疫応答に重大な影響を与えないであろう。
9]複合体の調製
キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin:KLH、10mg、カルバイオケム、ラ・ジョラ、カリフォルニア)を、pH7の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液に、12.5mg/mlの濃度で溶解した。アセトニトリル(0.3ml)を添加し、続いて、100μlの0.125Mマレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサッカリンイミドエステル(MBS、ピアス、ロックフォード、イリノイ)のDMF溶液を添加した。1時間攪拌した後、溶液を、4℃でpH7.0の0.1Mリン酸緩衝液に対して、30分単位で3回透析した。ペプチド(10mg)を修飾KLHに加え、この混合物を室温で一晩震盪した。この複合体を、2時間単位で2回透析した後、4℃でpH7.0の0.1Mリン酸緩衝液に対して一晩透析した。
10]ワクチンの調製
各ワクチン、(KLHと複合した、N−またはS−パルミトイル化した)ペプチド構成物を、リン酸緩衝溶液(PBS、pH7.2)に溶解し、等体積で、完全フロイントアジュバント(CFA)を用いて乳化した。この混合物を、安定な油中水型乳剤が得られるまで、針を通して繰返し押出すことによって乳化した。この乳剤は、免疫化の直前に調製した。2回目の免疫化は、不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて準備された。
11]予防接種または免疫化
GnRH−縦列構成物。7〜8頭の10週齢の雄の仔ブタの6群を、化合物AまたはB(図1)で免疫化した。各動物に、1mlのワクチン調製物(1、0.25、または0.05mg)を、首の筋肉内に投与されるように注射した。2回目の免疫化は、8週間後に行った。コントロール用の1群は、CFAおよびKLHのみで擬似免疫化した。26週目に、動物は屠殺される体重になり、精巣を摘出し、精巣上体を切除し、精巣の重量を記録した。
CPV構成物。第1の実験では、5頭のテンジクネズミの2群を、化合物CまたはDで免疫化した(図1)。各動物に、500μlのワクチン調製物を、首の筋肉内に投与されるように注射した。2回目の免疫化は、6週間後に行った。コントロール用の1群は、化合物F(KLH−MBS結合ペプチド構成物、図1)で免疫化した。血液を、免疫化後0、6、7、および12週目に採取し、抗ペプチド抗体価は、ELISAで記録した。
第2の実験では、3頭のテンジクネズミの1群を、CFAに乳化させた化合物Cで免疫化した。比較のために、化合物EをCFAに乳化させた。血液を、免疫化後0、4、8、および16週目に採取し、抗ペプチド抗体価は、ELISAで記録した。
第3の実験では、3頭のテンジクネズミの3群を、化合物D、EまたはFで免疫化した。CFAを用いて、ペプチドを乳化した。コントロールとして、ペプチドの2量化を防ぐために、チオール基をヨードアセトアミドでブロックした遊離ペプチドGを用いた。血液を、免疫化後0、4、および8週目に採取し、抗ペプチド抗体価は、ELISAで記録した。
FIV構成物。この実験では、4頭のネコの6群を、(IFA中、またはISCOMS中の)化合物Hで、または(MBSを介してコレラ毒素と複合化し、皮下、直腸、または鼻孔間のどこかに投与した)化合物Iで免疫化した。血液サンプルを、免疫化後8週目に採取し、ペプチドに対する抗体価は、ELISAで記録した。
結果
1]方法
溶液中、または固体担体のマトリックス内でペプチドチオールをアシル化する方法が確立された。溶液中では、予め活性化されたパルミチン酸を用いて、ただ1つの求核性官能基(NまたはS)を有するペプチドを非常に効率良くアシル化することができる。固体担体上の保護されたペプチドのS−アシル化には、tert−ブチルスルフィニル基を効率的かつ選択的に脱保護することが要求され、これはNMP/水(9/1)中でトリ(n−ブチル)ホスフィンで還元することにより、効果的に行われた。この方法の利点は、リシンがまだ保護されたままであるため、リシンの存在下でも実施することができることにある。パルミチン酸チオール(AおよびE,図1)は、溶液中で予め活性化されたパルミチン酸によるアシル化によって得られ、B,Eおよび化合物Cのパルミトイルペプチドは樹脂上でパルミトイル化した。チオエステルペプチドは、他の保護官能基が酸分解される間、安定であることが判った。パルミトイル−チオエステル結合は、塩基性条件下で安定でない。pH8付近で緩衝作用を有するチオエステル溶液は、長時間にわたって効果を維持することができない(表1)。
pH7において、安定性はかなり向上し、−18℃で凍結乾燥したチオエステルは、28ヶ月後でも安定であることが判った。
2]パルミトイル化ペプチドの免疫効果
a)GnRH−縦列ペプチドAおよびB
合成GnRH縦列ペプチドAおよびBの免疫効果は、7〜8頭の雄ブタ(10週齢)から成る6つの群に対して行った実験で調べた。各グループは、S−パルミトイル化(A)抗原またはN−パルミトイル化(B)抗原のいずれかの投与を受けている。GnRH縦列ペプチドAまたはBは、CFAまたはIFAの存在下に2回の注射を行った後の、26週齢における精巣重量(15)から判るように、異なる免疫効果を示した(2回目の注射、表2を参照)。いずれの形でも精巣の大きさを小さく保つことができたが、S−パルミトイル化ペプチドAのみが、全ての個体について、試験した最も高い用量(1mg)でも、さらに8個体中3個体について、最も低い用量(0.05mg)でもこの効果を示した。反応は用量に依存した。S−パルミトイル化ペプチドAの用量0.25mgは、N−パルミトイル化ペプチドBの用量1mgと同等の効果を示した。
b)CPVペプチド
上で認められた、パルミトイル化GnRHペプチドAおよびBによる効果を、他の構成物および他の動物種を用いてさらに調べた。以下の実験では、イヌパルボウィルスのVP2のN末端断片(2〜21位)を用いた。このペプチドは、ジスルフィド架橋を介して同ペプチドにN−パルミトイル基によって複合される場合(ペプチド構成物C)、KLHに複合されたペプチド(ペプチドFなど)と同等の抗体反応を誘引するようである。一方、N−パルミトイル化ペプチド単独(ペプチドD,おそらく部分的に2量体として存在する)では、抗体の力価が低く、すべての個体で増加が認められなかったことから(表3を参照)、より低い免疫効果しか与えなかったことが判る。ペプチド構成物Cは、ペプチドEの最初の合成中に形成された。この合成においては、Fmoc−Cys(StBu)−OHを、パルボペプチド−樹脂に連結した後、システイン基を保護しているStBu側鎖を、2−メルカプトエタノールを用いて48時間かけて切断した。この段階でFmoc基も部分的に切断された。樹脂を洗浄し、遊離システインを、チオール基および上述のように部分的にアミノ基において、パルミトイル化した。次に、Fmoc基をピペリジンを用いて切断した。この段階でパルミトイルチオエステルも切断され、システインの遊離のアミノ基に部分的に転移した(S⇒N転移)。次に、ペプチドをアセチル化し、脱保護し、上述のように樹脂から切断した。ワークアップおよび分取HPLCによる精製を行ったところ、合成ペプチドである生成物Cであって、もう1つの同ペプチドに連結される脂肪酸に、ジスルフィド結合を介して連結された生成物Cを、少量の他の副産物とともに単離した。質量分析では、Asp−Gly配列がパルボペプチド中で2回出現していることから、ペプチド構成物Cが部分的に転位していることが判った(26)。しかしながら、3または9位のアスパラギン酸にピペリジン基を添加しても、またはアスパルトイミドを形成することによって水分子を欠失させても免疫応答に顕著な影響は及ぼさない。第2の実験は、CFA中で、ペプチドEをペプチド構成物Cと比較する実験であった。このペプチドEの合成においては、ペプチドをFmoc−Cys(StBu)−OHと連結した直後に、アセチル化し、アミノ基のパルミトイル化を防止した。StBu基を切断し、S−パルミトイル化し、最終的に脱保護した後、パルボチオエステル生成物をHPLCを用いて精製した。結果として得られた生成物Eは、チオエステル結合によって脂肪酸に結合された合成ペプチドであり、分析HPLCおよび質量分析のいずれによっても付加産物は一切検出されなかった。生成物EおよびCは同様の免疫応答を示した(表4を参照)。S−パルミトイル化生成物が、N−パルミトイル化生成物よりも優れていることは、ペプチドD、ペプチドE、およびKLH−MBS複合ペプチドFを直接比較することによって確認した(表5)。この第3の実験において、ワクチン注射4週間目における、S−パルミトイル化ペプチドによって誘引される抗体の力価は、N−パルミトイル化ペプチドによって誘引される力価の約100倍高かった。8週間目では、力価はほぼ同じであった。KLH複合ペプチドと比較すると、S−パルミトイル化ペプチドに対する力価は、4週間目、8週間目のいずれにおいても高かった。
c)FIVペプチド
パルミトイル−チオエステルペプチドHの抗体反応は、IFA,ISCOMSのいずれにおいても、コレラ毒素複合ペプチドに対する反応よりもはるかに高かった。CTペプチド複合物を投与するという方法によって、反応性を大きく高めることはできなかった(表6)。
実施例の実験結果の考察
免疫学的見地から
本研究では、アミド結合またはチオエステル結合を介してパルミトイル化する方法が確立された。さらに、脂肪酸に複合されたペプチドの免疫効果を調べ、KLH−MBS複合ペプチドと比較した。アシル化(NまたはS)の部位が付加産物の免疫原性に影響することが判った。驚くべきことに、チオエステル結合を介するペプチドのパルミトイル化(Sアシル化)により、高い免疫原性を有する生成物が得られ、担体タンパク質(KLH,OVAまたはCT)に連結されたペプチドと同程度か、もしくはそれ以上の効用を示した。一方、N−パルミトイル化では、S−パルミトイル化またはKLH−MBS複合化の場合に比べて、免疫原性はかなり低かった。しかしながら、不安定なジスルフィド結合を介してN−パルミトイル化ペプチド担体と複合されたペプチドは、高い抗体反応性を誘導した。このように、抗原ペプチドと、担体分子であるパルミチン酸またはパルミトイル化ペプチドとの間の可逆的で不安定な結合が、免疫応答性を激烈に高める。したがって、チオエステル結合を介しての脂肪酸の導入により、大きな担体タンパクが必要でなくなる。大きな分子(タンパク質)を用いた従来の複合化では、連結の際に引き起される化学作用を常に十分に制御できないことによる問題が生じるとともに、担体タンパク質およびリンカーに対する望ましくない抗体が誘導されてしまう。
化学的見地から
Nα−アセチル化ペプチドのアミドは、固相合成により自動的に調製することができる。しかしながら、ピペリジンによって塩基に不安定なFmoc基を除去すると、合成中のS−パルミトイル化システイン誘導物の使用が不可能になる。したがって、S−アシル化は、樹脂上で合成の終了時に実施するか、または切断および脱保護後に溶液中で実施しなければならない。ここで適用したアシル化反応では、チオールとアミノ基とを区別することができない。ペプチドは、担体から切断される際にN−保護基をも失うので、選択的パルミトイル化は、溶液中で、ただ1つの求核性の官能基を有する化合物を用いてしか行うことができない(NまたはS)。水酸基は反応しない。
S−パルミトイル化ペプチドは塩基に対して不安定であるので、S−パルミトイル化ペプチドを緩衝溶液(pH7〜8)中に長期間放置しておくことは薦められない(表1を参照)。チオエステルは、酸性溶媒中では解離せず、したがってチオエステルを攻撃するであろうチオラートアニオンを含まない。我々は、チオエステルが強酸性溶媒中でチオールに耐性を有するため、チオールをカルボニウムイオンに対する捕獲剤として、tert−ブチロキシ官能基の保護時に使用することができるという一般則を立証した(21参照)。
参考文献
結果は、室温で所与時間後、分析HPLCによって推定されるGnRH縦列ペプチド(A)の初期濃度のパーセンテージで示す。
精巣重量<100グラムであるものは陽性であるとみなし、100〜150グラムの間にあるものは中間、150グラムより重いものは陰性であるとみなした。
Claims (19)
- 体内組織の生理条件下で化学的または酵素的に不安定であり、解離するチオエステルにより直接もしくは間接に連結している抗原および脂肪酸もしくは脂肪酸ペプチド担体化合物を有するワクチンであって、
ワクチンまたはその調製物の投与後、該抗原が該担体化合物から解離し、
該抗原がタンパク質、ポリペプチド、合成ペプチド、炭水化物、またはハプテンであり、
該脂肪酸がパルミチン酸であり、
該脂肪酸ペプチド担体化合物がN−パルミトイル化ペプチドであることを特徴とするワクチン。 - 該抗原が合成ペプチドである請求項1記載のワクチン。
- 該合成ペプチドが実質的にアミノ酸配列/EHWSYGLRPGQHWSYGLRPGから成ることを特徴とする請求項2記載のワクチン。
- 該合成ペプチドが実質的にアミノ酸配列SDGAVQPDGGQPAVRNERATGから成ることを特徴とする請求項2記載のワクチン。
- 該合成ペプチドが実質的にアミノ酸配列RAISSWKQRNRWEWPRDから成ることを特徴とする請求項2記載のワクチン。
- 該抗原がペプチドであり、該担体化合物が脂肪酸に結合した該ペプチドのもう一つのコピーであることを特徴とする請求項1または2記載のワクチン。
- 該ペプチドが実質的にアミノ酸配列SDGAVQPDGGQPAVRNERATGから成ることを特徴とする請求項6記載のワクチン。
- 製薬的に可能な化合物またはアジュバントと共に請求項1〜7のいずれかで調製したワクチン調製物。
- 免疫原調製物の調製のための組成物の使用であって、組成物はチオエステル結合を介して脂肪酸に連結した合成ペプチドを有し、
チオエステル結合が体内組織の生理条件下で化学的または酵素的に不安定であり、解離し、
組成物の投与後、該合成ペプチドは該脂肪酸から解離し、
該脂肪酸がパルミチン酸であり、
該脂肪酸ペプチド担体化合物がN−パルミトイル化ペプチドであることを特徴とする組成物の使用。 - 該脂肪酸がパルミチン酸である請求項9記載の組成物の使用。
- 該ペプチドがEHWSYGLRPGQHWSYGLRPG、SDGAVQPDGGQPAVRNERATGおよびRAISSWKQRNRWEWPRDから成る群より選択されることを特徴とする請求項9または10記載の組成物の使用。
- 免疫原調製物の調製のための組成物の使用であって、組成物はジスルフィド結合を介して担体化合物に連結した合成ペプチドを有し、該担体化合物が該合成ペプチドのもう一つのコピーに連結した脂肪酸を有し、
ジスルフィド結合が体内組織の生理条件下で化学的または酵素的に不安定であり、解離し、
組成物の投与後、該合成ペプチドは該担体化合物から解離し、
該脂肪酸がパルミチン酸であり、
該脂肪酸ペプチド担体化合物がN−パルミトイル化ペプチドであることを特徴とする組成物の使用。 - 該脂肪酸がパルミチン酸である請求項12記載の組成物の使用。
- 該ペプチドがEHWSYGLRPGQHWSYGLRPG、SDGAVQPDGGQPAVRNERATGおよびRAISSWKQRNRWEWPRDから成る群より選択されることを特徴とする請求項12または13記載の組成物の使用。
- 体内組織の生理的条件下で化学的または酵素的に不安定であり、解離するチオエステルを介して合成ペプチドを脂肪酸または脂肪酸ペプチド担体化合物と連結させることを含む免疫原調製物の製造方法であって、
免疫原調製物の投与後、該合成ペプチドが該担体化合物から解離し、
該脂肪酸がパルミチン酸であり、
該脂肪酸ペプチド担体化合物がN−パルミトイル化ペプチドであることを特徴とする免疫原調製物の製造方法。 - 該脂肪酸がパルミチン酸である請求項15記載の方法。
- 該ペプチドがEHWSYGLRPGQHWSYGLRPG、SDGAVQPDGGQPAVRNERATGおよびRAISSWKQRNRWEWPRDから成る群より選択されることを特徴とする請求項15または16記載の方法。
- 請求項15〜17のいずれかに記載の方法により得られる免疫原調製物。
- 製薬的に可能な化合物またはアジュバントと共に調製した請求項18記載の免疫原調製物を有することを特徴とするワクチン。
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