図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成するカラー印字処理、およびブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する単色印字処理を選択的に実行する画像形成装置である。この画像形成装置1では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令(印字指令)がメインコントローラ51に与えられると、このメインコントローラ51からの指令に応じてエンジンコントローラ52がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート(記録材)Sに画像形成指令に対応する画像を形成する。
図1において、本実施形態の画像形成装置1は、ハウジング本体2と、ハウジング本体2の前面(同図の右手側面)に開閉自在に装着された第1の開閉部材3と、ハウジング本体2の上面に開閉自在に装着された第2の開閉部材(排紙トレイを兼用している)4とを有している。また、第1の開閉部材3には、開閉蓋3aがハウジング本体2の前面に開閉自在に装着されている。なお、この開閉蓋3aは第1の開閉部材3と連動して、または独立して開閉可能となっている。
ハウジング本体2内には、電源回路基板、メインコントローラ51およびエンジンコントローラ52を内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット6、送風ファン7、転写ベルトユニット9および給紙ユニット10もハウジング本体2内に配設されている。一方、第1の開閉部材3側には、2次転写ユニット11、定着ユニット12およびシート搬送機構13が配設されている。なお、この実施形態では、画像形成ユニット6および給紙ユニット10内の消耗品は、装置本体に対して着脱自在に構成されている。そして、これらの消耗品および転写ベルトユニット9については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
転写ベルトユニット9は、ハウジング本体2の下方に配設され後述するブラック用駆動モータにより回転駆動される駆動ローラ14と、駆動ローラ14の斜め上方に配設される従動ローラ15と、この2本のローラ14、15間に張架されて図示矢印方向D16へ循環駆動される中間転写ベルト16と、中間転写ベルト16の表面に当接されるベルトクリーナ17とを備えている。この従動ローラ15は駆動ローラ14に対して斜め上方(図1中の左手上方)に配置されている。このため、中間転写ベルト16は傾斜状態のまま方向D16に回転移動する。また、中間転写ベルト16を駆動した際のベルト搬送方向D16が下向き(図1の右下向き)になるベルト面16aは下方に位置している。本実施形態においては、ベルト面16aがベルト駆動時のベルト張り面(駆動ローラ14により引っ張られる面)となっており、各色の感光体ドラム(像担持体)20の周速よりも遅い周速を有している。このように中間転写ベルト16の周速を各感光体ドラム20の周速よりも遅くなるように設定することで、感光体ドラム20は中間転写ベルト16に回転を抑える向きに引っ張られるようにして駆動している。
また、この実施形態では、中間転写ベルト16を熱可塑性エラストマー(以下「TPE」という)をアロイ主成分とする熱可塑性エラストマーアロイをベルト基材としたものを採用している。その主たる理由は耐屈曲性にある。すなわち、中間転写ベルト16のベルト基材としては、従来よりPC樹脂やPET樹脂などが多用されてきたが、耐屈曲性において必ずしも十分であるというわけではなく、「発明が解決しようとする課題」の項で詳述したような課題を有していた。特に、中間転写ベルト16を架張するために設けられたローラのローラ本数を低減させたり、ローラを小型化する場合には、ローラでの中間転写ベルト16の湾曲度合いを高める必要があるが、その場合には耐屈曲性が大きな問題となってくる。そこで、本発明者らは中間転写ベルト16のベルト基材としてPC樹脂やPET樹脂をはじめとし、PI(ポリイミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、TPEアロイの物理特性を検討した結果、TPEアロイをベルト基材として用いることで優れた耐屈曲性を有する中間転写ベルト16が得られることがわかった。そこで、本実施形態では、ベルト基材としてTPEアロイを採用した中間転写ベルト16を用いている。
駆動ローラ14は、2次転写ローラ19のバックアップローラを兼ねている。駆動ローラ14の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が105Ω・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラ19を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ14に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、2次転写部へシートSが進入する際の衝撃が中間転写ベルト16に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
また、本実施形態においては、駆動ローラ14の径を従動ローラ15の径より小さくしている。これにより、2次転写後のシートSがシートS自身の弾性力で剥離し易くすることができる。また、従動ローラ15をベルトクリーナ17のバックアップローラとして兼用させている。このベルトクリーナ17は、搬送方向下向きのベルト面16a側に設けられており、図1に示すように、残留トナーを除去するクリーニングブレード17aと、除去したトナーを搬送するトナー搬送部材とを備えている。そして、クリーニングブレード17aは従動ローラ15への中間転写ベルト16の巻きかけ部において中間転写ベルト16に当接して2次転写後に中間転写ベルト16の表面に残留しているトナーをクリーニング除去する。
駆動ローラ14および従動ローラ15は転写ベルトユニット9の支持フレーム(図示省略)に回転自在に支持されている。また、中間転写ベルト16の搬送方向下向きのベルト面16a裏面には、後述する各画像形成ステーションY,M,C,Kの感光体ドラム20に対向して1次転写ローラ21が設けられている。これら4つの1次転写ローラ21は上記支持フレームに対して回転自在に軸支され、1次転写バイアス発生部525と電気的に接続されており、適当なタイミングで1次転写バイアス発生部525から1次転写バイアスが印加される。
上記支持フレームは、駆動ローラ14を回動中心として矢印方向D21にハウジング本体2に対して回動自在となっている。そして、図示を省略するアクチュエータを作動させることで支持フレームが回動してイエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の画像形成ステーションY,M,Cの感光体ドラム20に対向して配置された1次転写ローラ21が感光体ドラム20に向かって近接し、また感光体ドラム20から離間移動する。このため、イエロー、マゼンタおよびシアン用の1次転写ローラ21が感光体ドラム20に向かって近接移動すると、中間転写ベルト16を挟んで該感光体ドラム20に当接する(図1中の実線)。そして、この当接位置が1次転写位置となっており、該1次転写位置でトナー像が中間転写ベルト16に転写される。逆に、イエロー、マゼンタおよびシアン用の1次転写ローラ21が感光体ドラム20から離間移動すると、画像形成ステーションY,M,Cの感光体ドラム20と中間転写ベルト16とは互いに離間する(図1中の破線)。一方、ブラック(K)の画像形成ステーションKの感光体ドラム20に対向して配置された1次転写ローラ21については、中間転写ベルト16を挟んで該感光体ドラム20に当接されたまま回転するように構成されている。したがって、図1の実線で示すように、全1次転写ローラ21を感光体ドラム20側に位置させることでカラー印字処理が実行可能となる。一方、同図の破線で示すように、ブラック用の1次転写ローラ21を残して他の1次転写ローラ21を感光体ドラム20から離間させることでモノクロ印字処理のみを実行しつつ中間転写ベルト16が画像形成ステーションY,M,Cから離間してイエロー、マゼンタおよびシアン色については非印字状態とすることができる。なお、ブラック用の1次転写ローラ21についても、必要に応じて感光体ドラム20から離間移動させるように構成してもよい。
図3は駆動ローラ近傍に配設されたセンサを示す図である。この実施形態では、2種類の光学センサが設けられている。すなわち、転写ベルトユニット9の支持フレームには、駆動ローラ14に近接してテストパターンセンサ18が設置されている。このテストパターンセンサ18は、いわゆる反射方式の光センサであり、中間転写ベルト16の画像領域(画像が形成される最大領域)の表面部分181に向けて光を照射する投光部(図示省略)と、中間転写ベルト16の表面やレジストマークRMにより反射された光を受光する受光部(図示省略)を備えている。そして、投光部から中間転写ベルト16上のレジストマークRMに光が照射される一方、該レジストマークRMからの光が受光部で受光されて該受光部での受光量に対応する信号がテストパターンセンサ18から出力される。そして、テストパターンセンサ18からの出力信号に基づき中間転写ベルト16上の各色トナー像の位置決めを行うとともに、各色トナー像の濃度を検出し、各色画像の色ずれや画像濃度を補正する。
また、この実施形態では、上記センサ18に加えて、中間転写ベルト16の特徴部位(例えば回転周期検出マークTM)を検出する回転周期検出センサ60が支持フレームに取り付けられている。この回転周期検出センサ60もテストパターンセンサ18と同様にいわゆる反射方式の光センサである。すなわち、センサ60は、中間転写ベルト16の非画像領域(画像が形成されない領域)の表面部分601に向けて光を照射する投光部(図示省略)と、中間転写ベルト16の表面や回転周期検出マークTMにより反射された光を受光する受光部(図示省略)を備えている。そして、投光部から中間転写ベルト16上の回転周期検出マークTMに光が照射される一方、該レジストマークRMからの光が受光部で受光されて該受光部での受光量に対応する信号が回転周期検出センサ60から出力される。つまり、図4に示すように中間転写ベルト16の回転周期検出マークTMがセンサ60を通過するたびに回転周期検出信号が出力される。したがって、回転周期検出信号の間隔を計測することで中間転写ベルト16の回転周期T(T1,T2,…)を求めることができる。このように、この実施形態では、回転周期検出センサ60が本発明の「中間転写ベルトの回転周期を検出する検出手段」として機能しており、次に説明する理由からセンサ60による検出結果に基づき装置1の内部温度、つまり機内温度を精度良く求めることができる。なお、この実施形態では、回転周期検出マークTMを設け、いわゆる反射方式で回転周期検出信号を得ているが、例えばマークTMの代わりにホールを穿設し、いわゆる透過方式でホールを検出して回転周期検出信号を得るように構成してもよい。
図5は温度に応じた中間転写ベルトの回転周期を示すグラフである。同図には、PC樹脂、PET樹脂およびTPEアロイをベルト基材とする中間転写ベルト16の回転周期Tが温度変化に伴い変動する様子が示されている。同図から明らかなようにTPEアロイをベルト基材とするベルトを中間転写ベルト16として用いた場合には、温度上昇に伴って回転周期Tが長くなっている。これは、TPEの熱膨張率が従来よりベルト基材として用いられているPC樹脂やPET樹脂の熱膨張率に比べて比較的大きく、機内温度に応じて比較的大きく伸縮することに起因している。このようにTPEアロイを用いた場合には、中間転写ベルト16の伸縮量が機内温度を示す指標値となり得る。そこで、この実施形態では、回転周期検出センサ60によって中間転写ベルト16の回転周期を検出することで中間転写ベルト16の伸縮を求め、これによって機内温度を検出することができる。そして、その検出結果に基づき装置各部の動作条件を後述するように制御している。
図1に戻って装置構成の説明を続ける。画像形成ユニット6は、複数(本実施形態では4つ)の異なる色の画像を形成する画像形成ステーションY(イエロー用),M(マゼンタ用),C(シアン用),K(ブラック用)を備えている。各画像形成ステーションY,M,C,Kは本発明の「像形成手段」に相当するものであり、これらにはそれぞれ感光体ドラム20が設けられている。また、各感光体ドラム20の周囲には、帯電部22、像書込部23、現像部24および感光体クリーナ25が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。なお、図1において、画像形成ユニット6の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上、一部の画像形成ステーションのみに符号を付けて他の画像形成ステーションについては符号を省略する。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kの配置順序は任意である。
各画像形成ステーションY,M,C,Kの感光体ドラム20は1次転写位置TR1で中間転写ベルト16の搬送方向下向きのベルト面16aに当接されるように配置されている。また、これらの感光体ドラム20はそれぞれ専用の駆動モータに接続され、図示矢印D20に示すように、中間転写ベルト16の搬送方向に所定周速で回転駆動される。
帯電部22は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム20の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム20の回転動作に伴って感光体ドラム20に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電位置で感光体ドラム20の表面を帯電させる。
像書込部23は、発光ダイオードやバックライトを備えた液晶シャッタ等の素子を感光体ドラム20の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に列状に配列したアレイ状書込ヘッドを用いており、感光体ドラム20から離間配置されている。また、アレイ状書込ヘッドは、レーザー走査光学系よりも光路長が短くてコンパクトである。そのため、感光体ドラム20に対して近接配置が可能であり、装置全体を小型化できるという利点を有する。
そして、本実施形態においては、各画像形成ステーションY,M,C,Kの感光体ドラム20、帯電部22、現像部24および感光体クリーナ25を交換カートリッジ6Y,6M,6C,6K(図2)としてユニット化している。また、各交換カートリッジ6Y,6M,6C,6Kには、該交換カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリ91〜94がそれぞれ設けられている。そして、各交換カートリッジに設けられた送受信部53Y,53M,53C,53Kと、本体側に設けられた送受信部522Y,522M,522C,522Kとがそれぞれ互いに近接配置され、エンジンコントローラ52のCPU521とメモリ91〜94との間で無線通信が行われる。こうすることで、各交換カートリッジに関する情報がCPU521に伝達されるとともに、各メモリ91〜94内の情報が更新記憶される。
次に、現像部24の詳細について、画像形成ステーションKを代表して説明する。この現像部24は、トナーを貯留するトナー貯留容器26と、このトナー貯留容器26内に配設された2つのトナー撹拌供給部材28,29と、トナー撹拌供給部材29に近接配置された仕切部材30と、仕切部材30の上方に配設されたトナー供給ローラ31と、トナー供給ローラ31および感光体ドラム20に当接して所定の周速で図示矢印方向に回転する現像ローラ33と、現像ローラ33に当接される規制ブレード34とから構成されている。
そして、各現像部24では、トナー撹拌供給部材29により撹拌、運び上げられたトナーは、仕切部材30の上面に沿ってトナー供給ローラ31に供給される。また、こうして供給されたトナーは供給ローラ31を介して現像ローラ33の表面に供給される。そして、現像ローラ33に供給されたトナーは規制ブレード34により所定厚さの層厚に規制され、感光体ドラム20へと搬送される。そして、現像ローラ33と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ33に印加される現像バイアスによって、現像ローラ33と感光体ドラム20とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ33から感光体ドラム20に移動して、像書込部23により形成された静電潜像が顕像化される。
また、この実施形態では、感光体ドラム20の回転方向D20において1次転写位置TR1の下流側に、感光体ドラム20の表面に当接して感光体クリーナ25が設けられている。この感光体クリーナ25は、感光体ドラム20の表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム20の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
給紙ユニット10は、シートSが積層保持されている給紙カセット35と、給紙カセット35からシートSを一枚ずつ給送するピックアップローラ36とからなる給紙部を備えている。第1の開閉部材3内には、2次転写領域TR2へのシートSの給紙タイミングを規定するレジストローラ対37と、駆動ローラ14および中間転写ベルト16に圧接される2次転写手段としての2次転写ローラ19と、定着ユニット12と、排紙ローラ対39と、両面プリント用搬送路40を備えている。
2次転写ローラ19は、中間転写ベルト16に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット12は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ45と、この加熱ローラ45を押圧付勢する加圧ローラ46とを有している。そして、シートSに2次転写された画像は、加熱ローラ45と加圧ローラ46で形成するニップ部で所定の温度でシートSに定着される。本実施形態においては、中間転写ベルト16の斜め上方に形成される空間、換言すれば、中間転写ベルト16に対して画像形成ユニット6と反対側の空間に定着ユニット12を配設することが可能になり、電装品ボックス5、画像形成ユニット6および中間転写ベルト16への熱伝達を低減することができ、各色の色ずれ補正動作を行う頻度を少なくすることができる。
また、こうして定着処理を受けたシートSは排紙ローラ対39を経由してハウジング本体2の上面部に設けられた第2の開閉部材(排紙トレイ)4に搬送される。また、シートSの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートSの後端部が排紙ローラ対39後方の反転位置まで搬送されてきた時点で排紙ローラ対39の回転方向を反転し、これによりシートSは両面プリント用搬送路40に沿って搬送される。そして、レジストローラ対37の手前で再び搬送経路に乗せられるが、このとき、2次転写領域TR2において中間転写ベルト16と当接して画像を転写されるシートSの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートSの両面に画像を形成することができる。
また、この装置1では、図2に示すように、メインコントローラ51のCPU511により制御される表示部54を備えている。この表示部54は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、CPU511からの制御指令に応じて、ユーザへの操作案内や画像形成動作の進行状況、さらに装置の異常発生やいずれかのユニットの交換時期などを知らせるための所定のメッセージを表示する。
なお、図2において、符号513はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース512を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ51に設けられた画像メモリである。また、符号523はCPU521が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号524はCPU521における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
図6は図1の画像形成装置の動作を示す図である。この装置では、同図に示すように、回転周期検出センサ60によって中間転写ベルト16の回転周期を検出し、その検出結果に基づき色ずれ補正処理の実行タイミングを制御している。より具体的には、ROM523に記憶されている色ずれ補正に関するプログラムにしたがってエンジンコントローラ52のCPU521が装置各部を以下のように制御して色ずれ補正処理の実行タイミングを調整している。
ステップS1で回転周期検出センサ60から回転周期検出信号が2回出力されると、最初の回転周期検出信号の出力から次の信号の出力までの時間を内部タイマー(図示省略)がカウントして中間転写ベルト16が1周する時間、つまり回転周期Tが算出される(ステップS2)。そして、この回転周期Tがリファレンス周期TrとしてRAM524に記憶される(ステップS3)。こうして、機内温度の変動を検出する準備が完了する。
そして、回転周期検出信号が出力されるたびに(ステップS4)、前回の回転周期検出信号からの経過時間を内部タイマーがカウントして回転周期Tが算出される(ステップS5)。また、この回転周期Tとリファレンス周期Trとの差の絶対値|T−Tr|が予め設定されている許容値Taと比較される(ステップS6)。すなわち、絶対値|T−Tr|は回転周期の変動量を示すものであり、機内温度の変動を指標している。そこで、この実施形態では、ステップS6で許容値Taを超えて機内温度が変動しているか否かを判定している。
このステップS6で「NO」と判定する、つまり回転周期の変動量が小さく機内温度の変動が小さいと判定した場合には、ステップS4に戻り、次の回転周期検出信号の検出および回転周期Tの算出を繰り返す。一方、ステップS6で「YES」と判定する、つまり回転周期の変動量が許容値Taを超えて変動し、機内温度の変動が大きいと判定した場合には、中間転写ベルト16の速度変動が生じるとともに、装置各部の伸縮が生じている可能性が高いため、色ずれ補正処理を実行する(ステップS7)。
この色ずれ補正処理では、画像形成ステーションY,M,C,Kによって、例えば図3に示すように中間転写ベルト16の画像領域に中間転写ベルト16の搬送方向D16に直交する主走査方向Xに平行に延びる帯状形状(例えば幅0.5mm)のレジストマークRMが、K、C、M、Yの順に搬送方向(副走査方向)D16にそれぞれ所定間隔(例えば0.5mm)の間隔をおいて形成される。なお、同図には、イエローのレジストマークRM(Y)、ブラックのレジストマークRM(K)、シアンのレジストマークRM(C)、マゼンタのレジストマークRM(M)およびイエローのレジストマークRM(Y)のみが図示されているが、各色について複数本ずつ形成している。そして、上記のようにして中間転写ベルト16上に形成されたレジストマークRM(K)、RM(C)、RM(M)、RM(Y)は中間転写ベルト16の移動とともに搬送方向D16に移動してテストパターンセンサ18の検出領域181を通過する。このとき、テストパターンセンサ18から出力される信号の電圧レベルが受光量に応じて変化する。このため、電圧レベルを計測することでテストパターンセンサ18を各レジストマークRMが通過するタイミングを測定することができ、レジストマークRMの位置情報を取得することができる。そして、全てのレジストマークRMについて位置情報が得られると、それらの位置情報に基づき色ずれ補正を行う。
こうして色ずれ補正処理と並行して、または完了後に、RAM524に記憶されているリファレンス周期TrをステップS5で算出された回転周期Tに書き換えた(ステップS8)後、ステップS4に戻って、上記一連の動作(ステップS4〜S8)を繰り返す。
以上のように、この実施形態によれば、中間転写ベルト16のベルト基材をTPEアロイで構成したため、PC樹脂やPET樹脂製の中間転写ベルトに比べて耐屈曲性を格段に向上させることができ、トナー像の転写不良を防止して良好な品質で画像を形成することができる。
また、この実施形態では、TPEアロイをベルト基材とする中間転写ベルト16を用いた場合には、中間転写ベルト16の伸縮量が装置の内部温度を示す指標値となり得ることに着目し、色ずれ補正処理の実行タイミングを制御している。すなわち、中間転写ベルト16の非画像領域に回転周期検出マークTMを設けるとともに、該マークTMを検出するための回転周期検出センサ60を設けている。そして、該センサ60から回転周期検出信号に基づき中間転写ベルト16の回転周期を算出し、リファレンス周期Trとの相違量(|T−Tr|)を演算することで機内温度の変動を求めているため、機内温度の変動を正確に求めることができる。というのも、中間転写ベルト16はトナー像を担持しながら所定方向に循環移動するものであり、その伸縮は装置内部の平均的な温度を反映したものとなるからである。
そして、この実施形態では、機内温度の変動が許容を超えた場合に色ずれ補正処理を実行している。したがって、機内温度の変動に起因する中間転写ベルト16の速度変動や装置各部の伸縮が生じた結果、色ずれ発生の可能性が高まるタイミングで色ずれ補正処理が適切に実行されるため、色ずれや色調低下などの発生を未然に防止することができる。
ところで、ベルト基材をTPEアロイで構成した中間転写ベルト16を用いた場合には、機内温度の変動による中間転写ベルト16の伸縮量が比較的大きくなる。したがって、図7に示すように、固定配置されたローラ14、15以外にテンションローラ61を設けて中間転写ベルト16に対して所定の張力を与えるように構成するのが望ましい。つまり、転写ベルトユニット9が、同図に示すように、駆動ローラ14、従動ローラ15、62およびテンションローラ61の間に中間転写ベルト16を張架して図示矢印方向D16へ循環駆動するように構成してもよい。このように構成された装置においても、上記実施形態と同様に、回転周期検出センサ60から回転周期検出信号に基づき中間転写ベルト16の回転周期を算出し、機内温度の変動を求めることができる。また、同図に示すように、テンションローラ61の近傍にポジションセンサ63を設け、ポジションセンサ63によるテンションローラ61の位置により機内温度の変動を求めるようにしてもよい。というのも、機内温度の変動により中間転写ベルト16が伸縮すると、その伸縮量に応じてテンションローラ61が移動し、ポジションセンサ63からの出力される電圧値が図8に示すように変化するからである。そこで、回転周期信号の代わりにポジションセンサ63からの出力信号に基づき機内温度の変動を検出して色ずれ補正処理の実行タイミングを制御するようにしてもよい。すなわち、ポジションセンサ63を本発明の「テンションローラの位置を検出する検出手段」として機能させるように構成してもよい。以下、図9を参照しつつ詳述する。
図9は本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態の動作を示すフローチャートである。この装置では、同図に示すように、ポジションセンサ63によってテンションローラ61の位置を検出し、その検出結果に基づき色ずれ補正処理の実行タイミングを制御している。より具体的には、ROM523に記憶されている色ずれ補正に関するプログラムにしたがってエンジンコントローラ52のCPU521が装置各部を以下のように制御して色ずれ補正処理を実行する。
ステップS21でポジションセンサ63からの出力信号に基づきテンションローラ61の位置Pが検出される。そして、この検出結果(テンションローラ61の位置P)がリファレンス位置PrとしてRAM524に記憶される(ステップS22)。こうして、機内温度の変動を検出する準備が完了する。
そして、カラー印字指令が与えられるたびに(ステップS23)、ポジションセンサ63からの出力信号に基づきテンションローラ61の位置Pが検出される。また、位置Pとリファレンス位置Prとの差の絶対値|P−Pr|が予め設定されている許容値Paと比較される(ステップS25)。すなわち、絶対値|P−Pr|はテンションローラ61の変動量を示すものであり、機内温度の変動を指標している。そこで、この実施形態では、ステップS25で許容値Paを超えて機内温度が変動しているか否かを判定している。
このステップS25で「NO」と判定する、つまりテンションローラ61の変動量が小さく機内温度の変動が小さいと判定した場合には、色ずれ補正処理を行うことなしにカラー印字処理を実行した(ステップS26)後、ステップS23に戻って次のカラー印字指令を待つ。一方、ステップS25で「YES」と判定する、つまりテンションローラ61の変動量が許容値Paを超えて変動し、機内温度の変動が大きいと判定した場合には、中間転写ベルト16の速度変動が生じるとともに、装置各部の伸縮が生じている可能性が高いため、上記実施形態と同様の色ずれ補正処理を実行する(ステップS27)。
こうして色ずれ補正処理と並行して、または完了後に、RAM524に記憶されているリファレンス位置PrをステップS24で検出されたテンションローラ61の位置Pに書き換えた(ステップS28)。また、色ずれ補正処理の完了を待ってカラー印字処理を実行した(ステップS29)後、ステップS23に戻って次のカラー印字指令を待つ。
以上のように、この実施形態では、機内温度の指標値としてテンションローラ61の位置を用いているが、その他の点では先の実施形態と同様であり、その結果、同様の作用効果が得られる。すなわち、中間転写ベルト16のベルト基材をTPEアロイで構成したため、耐屈曲性の向上によりトナー像の転写不良を防止して良好な品質で画像を形成することができる。また、中間転写ベルト16の伸縮に対応して移動するテンションローラ61の位置を検出し、リファレンス位置Prとの相違量(|P−Pr|)を演算することで機内温度の変動を求めているため、機内温度の変動を正確に求めることができる。そして、機内温度の変動が許容を超えた場合に色ずれ補正処理を実行しているため、色ずれや色調低下などの発生を未然に防止することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、中間転写ベルト16の回転周期やテンションローラ61の位置に基づき機内温度の変動を検出し、色ずれ補正処理の実行タイミングを制御しているが、他の処理タイミングを制御するようにしてもよい。というのも、機内温度の変動による画像品質への悪影響は色ずれのみ限定されるものではなく、例えば各画像形成ステーションY,M,C,Kでトナー像を形成する際の動作条件(現像バイアス、露光エネルギー、帯電バイアスなど)の最適値が変動してしまうことがある。このように各画像形成ステーションY,M,C,Kでの動作条件が最適値からずれると、トナー像の濃度が所望値から変動して画質低下を招く。そこで、中間転写ベルト16の回転周期やテンションローラ61の位置に基づき動作条件を最適化する最適化処理の実行タイミングを制御してもよく、これによって常に良好な動作条件でトナー像が形成されて画像品質を高めることができる。なお、ここでいう「最適化処理」とは、画像形成ステーションY,M,C,Kの動作条件を変更設定しながらトナー像をパッチ画像として形成するとともにパッチ画像の濃度を検出して動作条件を最適化する処理をいうものである。また、トナー像の転写条件も機内温度の影響を受け易く、色ずれ補正処理や最適化処理と同様に、中間転写ベルト16の回転周期やテンションローラ61の位置に基づき転写条件を制御するのが望まれる。
また、上記実施形態では、中間転写ベルト16の回転周期やテンションローラ61の位置に基づき機内温度の変動を検出しているが、予め回転周期やテンションローラ位置に対応する機内温度を示すテーブルや関数を求めるとともにROM523に記憶しておき、回転周期やテンションローラ位置を検出した際にテーブルや関数に基づき機内温度そのものを求めるように構成してもよい。すなわち、上記テーブルや関数を予め用意しておくことで中間転写ベルト16の伸縮を機内温度用の温度センサとして機能させることができる。
さらに、上記実施形態では、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に本発明を適用しているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、像形成手段により形成されたトナー像を所定方向に循環移動する中間転写ベルトに転写して該トナー像を一時的に担持する画像形成装置全般に対して本発明を適用することができる。
1…画像形成装置、 9…転写ベルトユニット、 14…駆動ローラ(固定ローラ)、 15…従動ローラ(固定ローラ)、 16…中間転写ベルト、 52…エンジンコントローラ(制御手段)、 60…回転周期検出センサ(検出手段)、 61…テンションローラ、 63…ポジションセンサ(検出手段)、 521…CPU(制御手段)、 P…(テンションローラの)位置、 RM、RM(K)、RM(C)、RM(M)、RM(Y) …レジストマーク、 T…回転周期、 Y,M,C,K…画像形成ステーション(像形成手段)