以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるニードルドライバを正面斜め一側方からみた外観斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の、外科用処置具である針持器としてのニードルドライバ1は、詳細は後述するが、挿入部2、操作部3及び挿入部2の先端に設けられた処置部4とで主要部が構成されている。なお、当該ニードルドライバ1を構成する前記挿入部2、操作部3および処置部4については後に詳述するが、以下概略構成について説明する。
前記操作部3には、開閉レバー5、角度可変ダイヤル6及び回動ダイヤル7が設けられている。開閉レバー5は処置部4の開閉操作をするためのレバーであり、角度可変ダイヤル6は処置部4の延出方向の角度を変更する操作を行うためのダイヤルであり、また回動ダイヤル7は処置部4の回動操作を行うためのダイヤルである。
図2に示すように、挿入部2の一端から延出するように設けられた処置部4は、先端側に、挟持部8を有している。開閉レバー5を押下することで、図3に示すように挟持部8が開き、開閉レバー5の押下を止めることで図2のように挟持部8が閉じるようになっている。
この挟持部8の開閉操作を開閉レバー5にて行うことで、患部の縫合を行う縫合糸を有する縫合針(図示せず)を挟持部8で挟持/解放することが可能となっている。
また、角度可変ダイヤル6を回動させることで、図4に示すように、処置部4の挟持部8の延出方向の角度は挿入部2の挿入軸2aを含む所定の面内で回動自在であって、挿入軸2aに対して処置部4の延出方向が任意の角度に変更可能となっている。
さらに、回動ダイヤル7を回動させることで、図2に示すように、処置部4の挟持部8は当該処置部4の長軸を中心に回動可能であって、挟持部8に縫合針を挟持させた状態で回動ダイヤル7を操作することで、縫合針により生体組織の縫合が行えるようになっている。
次に、本実施形態の外科用処置具であるニードルドライバを用いた内視鏡下の吻合手技方法としての冠状動脈バイパス手術の手術工程について説明する。
冠状動脈バイパス手術は、胸部の所定位置(例えば、左側第3、第4及び第6肋間位置)の皮膚をメスを用いて切開する。
次に、切開後に、指、あるいは先端が円錐形状の内套をトラカールの外套管内に挿通させ先端より突出させて、皮膚の切開部分を押し広げて体内側に孔を形成し、所望位置まで孔を形成した段階で内套をトラカールの外套管より抜き取ることで、複数の例えば3本のトラカールによる体内臓器へのポート孔を作成する。これにより複数のトラカールを介することで各種処置具の左胸腔内へのアプローチが可能となる。
続いて、通常(公知)の胸腔鏡下の手技で適用されるように、視野確保のための片肺換気を実施する。すなわち、片肺換気用の気管チューブを気管に挿通し、片(右)肺のみでの換気を実行、他方(左)の肺を虚脱させる。
そして、内胸動脈剥離手技を行う。内胸動脈剥離手技では、ポート孔に設けた複数のトラカールに、図示はしないが、超音波処置具、把持鉗子、内視鏡を挿通させる。超音波処置具は、超音波処置具に超音波駆動エネルギーを供給制御する超音波制御装置に接続されている。また、内視鏡は、照明光を供給する光源装置及び内視鏡像を信号処理して表示するCCU(カメラコントロールユニット)に接続されている。
そして、内視鏡の観察下で、内胸動脈に超音波処置具をアプローチさせ、内胸動脈を覆っている胸膜を切開する。切開した胸膜の切り口部分を把持鉗子及び超音波処置具を用いて周囲組織より内胸動脈及びその側枝を露出させ、内胸動脈の側壁から延びる側枝(血管)を超音波処置具にて切断し、切断した側枝(血管)を超音波処置具にて止血することで、内胸動脈の部分剥離が行われる。
そして、内胸動脈の所定量(例えば15cm〜20cm程度)の剥離がなされるまで、領域を拡大して胸膜の切開を継続し上記部分剥離を繰り返す。
内胸動脈の所定量の剥離がなされると、内胸動脈の切断位置において末梢側の2ケ所を止血クリップにて止血する。そして、超音波処置具に代えて、ハサミ鉗子を用いて止血クリップ間の内胸動脈の切断位置で内胸動脈を切断して、内胸動脈剥離手技を終了する。
このようにして内胸動脈剥離手技が終了すると、内胸動脈と冠状動脈との吻合手技を行う。ここで、図5のフローチャートを用い吻合手技手順について説明する。
内胸動脈と冠状動脈との吻合手技は、図5に示すように、ステップS51にて各種処置具の心臓近傍への上方からのアプローチが可能となる位置に例えば3つポート孔を追加し、複数のトラカールの挿通位置を変更する。そして、冠状動脈の真上にトラカールを介して内視鏡を挿入する。すなわち、術部の略真上から観察しながら手術を行う。
そして、ステップS52にて、複数のトラカールにスタビライザ、本実施形態の外科手術処置具であるニードルドライバ1あるいは他の鉗子、内視鏡、把持鉗子を挿通させる。例えばニードルドライバ1の挿入部2を胸腔内に挿入するとともに、ニードルドライバ1の操作部3を体腔外に位置する。
なお、スタビライザは、心臓の拍動影響を抑制する処置具であって、例えば米国特許第5,807,243号公報等に開示されているので、詳細な説明は省略する。
次に、ステップS53にて心膜を切開し心外膜表面を露出させ、ステップS54にてスタビライザにて目的冠状動脈付近の心臓の拍動影響を抑制する。
上記ステップS51ないしステップS54が吻合手技手順における吻合手技準備工程となる。
そして、スタビライザにて心臓の拍動影響を抑制しながら、ステップS56にて内胸動脈を閉塞させるターニケットに挿通させ、ターニケットにより内胸動脈を閉塞させ、その後ステップS57に止血クリップが付いた部分を切除し、ステップS58にてハサミ鉗子を用いて内胸動脈の切断面を所定の形状にトリミングする。
上記ステップS55ないしステップS58が吻合手技手順における内胸動脈プレパレーション工程となる。
そして、ステップS59にてターニケットにより冠状動脈の中枢側部位を閉塞する。次に、ステップS60にて先端が丸いビーバーメス(またはマイクロメス)により冠状動脈を覆う心外膜を切開し、冠状動脈を露出させ、ステップS61にて先の尖ったマイクロメスにより冠状動脈の側壁を切開し、ハサミ鉗子により所定量を開口し吻合口を形成する。
続いて、ステップS62にて冠状動脈の吻合口よりシャントを冠状動脈に内挿する。そして、ステップS63にてターニケットを緩め、冠状動脈の閉塞を解除する。これにより冠状動脈での血流が確保される。
上記ステップS59ないしステップS63が吻合手技手順における冠状動脈プレパレーション工程となる。
そして、ステップS64にて本実施形態の外科用処置具であるニードルドライバ1を挿入し、ニードルドライバ1の処置部4の挟持部8の延出方向の角度を調整する。
その後、ステップS65にて本実施形態の外科用処置具であるニードルドライバ1による内胸動脈と冠状動脈の血管吻合(縫合)手技が行われる。内胸動脈と冠状動脈の血管吻合(縫合)手技においては、内胸動脈と冠状動脈との連続縫合を進めながら、状況に応じて処置部4の挟持部8の延出方向の角度を再調整する。
具体的には、図6に示すように、胸壁1000に挿通したトラカール1001を介してニードルドライバ1の先端の処置部4を心臓1002近傍にアクセスさせ、このニードルドライバ1を用いて内胸動脈(図示せず)の切断面と冠状動脈1003の吻合口1004との連続縫合を行っている際は、上述したように、スタビライザ1005にて心臓1002の拍動影響を抑制している。このため、内胸動脈の切断面と冠状動脈1003の吻合口1004との縫合部分への処置部4の挟持部8のアプローチがスタビライザ1005にて干渉される場合がある。
そこで、図7に示すように、操作部3に設けられている角度可変ダイヤル6を回動操作することで、ニードルドライバ1の挿入時あるいは連続縫合時に処置部4の挟持部8の延出方向の角度を所望の角度に調整する。
本実施形態のニードルドライバ1では、操作部3に角度可変ダイヤル6を設けているので、術者は操作部3での把持状態をなんら変えることなく、把持状態を維持した状態で角度可変ダイヤル6を回動操作することができ、手技になんら支障なくニードルドライバ1の処置部4の挟持部8の延出方向の角度を再調整することができ、スタビライザ1005による干渉を避けることができる。
そして、内胸動脈と冠状動脈の血管吻合(縫合)手技が終了する1〜2針手前で、ステップS66にて、冠状動脈に留置したシャントを抜き去り、さらに1 2針縫合を追加した後、ステップS67にて糸の結紮手技を行う。
上記ステップS64ないしステップS67が吻合手技手順における内胸動脈−冠状動脈吻合工程となる。
次に、図面を用いて、針持器としての、上述した外科用処置具であるニードルドライバ1の構造について説明する。
上述したように図1は、本発明の一実施形態であるニードルドライバを正面斜め一側方からみた外観斜視図であり、図8は、当該ニードルドライバを背面斜め他側方からみた外観斜視図である。
また、図9乃至図12は、それぞれ図9は、本実施形態のニードルドライバの正面図、図10は、本実施形態のニードルドライバを一側方(左側方)からみた左側面図、図11は、本実施形態のニードルドライバを他側方(右側方)からみた右側面図、図12は、本実施形態のニードルドライバの背面図である。
前記ニードルドライバ1は、挿入部2と、その挿入部2の一方端(基端側)に設けられた操作部3と、その挿入部2の他方端から延出するように設けられた処置部4とで主要部が構成される。
前記挿入部2は所定の長さを有する略円柱形状を呈する。また操作部3は挿入部2の基端側において当該挿入部2の長軸と同軸上に一体的に配設された略長方体形状を呈する部材であって、術者が片手で把持して、後述する操作をすることができる形状である。
また、前記操作部3には、処置部4の開閉操作をするための開閉操作部としての開閉レバー5と、処置部4の延出方向の角度の変更操作をするための角度変更操作部としての角度可変ダイヤル6と、処置部4の回動操作をするための回動操作部としての回動ダイヤル7とが設けられている。
前記開閉レバー5の基端部は、詳しく後述するが、操作部3の基端部一側方において軸支され、一方、開閉レバー5の自由端部は、当該操作部3の先端側に向けて延出され、後述するバネ33の付勢力により操作部3の外装部から離間する方向に付勢されている。
なお、詳しくは後述するが、牽引ワイヤ(図8から図12では図示せず)の基端側一端が、開閉レバー5に係合する開閉ベース部材(図8から図12では図示せず)に固定され、開閉レバー5には、この牽引ワイヤを介してバネ33の付勢力が印加されるようになっている。
挿入部2の一端から延出するように設けられた処置部4は、先端側に、挟持部8を有しており、挟持部8の軸方向、すなわち処置部4の延出方向は、挿入部2の軸方向に対して所定の角度の範囲内で可変となっている。言い換えると、ニードルドライバ1には、挿入部2の軸に対する処置部4の延出方向の角度を変更するための角度変更手段が設けられている。
次に、図面を用いて、ニードルドライバ1の内部構造を説明する。
まず、ニードルドライバ1の先端部の構造を説明する。
図13乃至図17は、ニードルドライバ1の処置部4を含む先端部分の構造を説明するための図である。
図13は、ニードルドライバ1の処置部4を含む先端部分の側面図である。図14は、ニードルドライバ1の処置部4を含む先端部分の背面図である。図15は、ニードルドライバ1の処置部4を含む先端部分の断面図である。具体的には、図15は、図13のIX−IX線に沿った断面図である。図16及び図17は、ニードルドライバ1の先端部分の断面図である。具体的には、図16は、図14のXVI−XVI線に沿った断面図であり、図17は、図14のXVII−XVII線に沿った断面図である。
挿入部2は、ステンレス製のパイプ、すなわち円筒部材であるシース11を有する。シース11の先端側、すなわち処置部4側には、ステンレス製の先端固定部材12が固定されている。先端固定部材12は、先端固定部材12の基端側、すなわちシース11側に、シース11の内周面に嵌合する円筒形状の嵌合部と、先端固定部材12の先端側、すなわち挟持部8側に、内部に空間を有し、挿入部2の軸に直交する断面形状がチャンネル形状のチャンネル形状部とを有する。
シース11内には、軸部材としての、ステンレス製の回動力伝達パイプ13が挿通されている。回動力伝達パイプ13は、先端部に回動力を伝達するためのパイプである。回動力伝達パイプ13内には、後述する挟持部8の開閉動作のための、ステンレス製の牽引ワイヤ14が挿通されている。
牽引ワイヤ14は、挟持部8の開動作を行うために操作部3側に牽引される線部材であり、細いステンレス線を編んで柔軟に構成されている。また、内部での摺動抵抗を低減し、かつ進退し易くするためにワイヤ表面にフッ素系の樹脂がコーティングされていてもよい。
先端固定部材12の嵌合部は、挿入部2の軸に直交する断面形状が略円形状を呈する棒状部材であるが、図16に示すようにステンレス製の止めネジ16(後述する)により固定される部分においては、断面形状が略半円形状を呈する半円柱形状を呈する。当該先端固定部材12の嵌合部の軸に対して略線対称の位置には、回動力伝達パイプ13とステンレス製の湾曲力伝達棒15とが挿通されている。上記回動力伝達パイプ13は、当該回動力伝達パイプ13の軸を回転中心として回転摺動可能に挿通され、棒部材であるステンレス製の湾曲力伝達棒15は、湾曲力伝達棒15の軸方向に進退可能に挿通されている。
シース11と先端固定部材12とは、ステンレス製の止めネジ16によって固定され、さらにシース11の先端部と先端固定部材12とは接着剤例えばエポキシ樹脂系の接着剤が付けられて、固定されている。
回動力伝達パイプ13の先端には、ステンレス製の回動力伝達コイル17が固定されている。回動力伝達コイル17は、挿入部2の先端部分に回動力を伝えるためのフレキシブルなコイルである。回動力伝達コイル17内には、牽引ワイヤ14が挿通されている。回動力伝達パイプ13は金属製であるため、操作部3における回動ダイヤル7の回動操作による回動力を、回動力伝達コイル17まで確実に伝えることができる。
回動力伝達パイプ13に接続された回動力伝達コイル17は、3つのコイルを重ねるようにして構成された3重巻き密着構造をしている。1番下のコイルの上に重ねるように1番下のコイルの巻き方向と逆の巻き方向の2番目のコイルを設け、2番下のコイルの上に重ねるように2番目のコイルの巻き方向とは逆の巻き方向(1番下のコイルと同じ巻き方向)の3番目のコイルが設けられている。
回動力伝達コイル17の両端部は、ろう付けされ、かつ、ろう付けされた後に切削される。その結果、両端部の肉厚は、中心部の肉厚よりも薄い。そして、両端部は、それぞれ回動力伝達パイプ13と回動部ベース部材25とろう付けによって固定されている。
湾曲力伝達棒15は、それぞれがステンレス製のリンクジョイント18とH型リンク部材19とを介して、湾曲部ベース部材20に連結されている。
図18は、先端固定部材12を点線で示して省略した、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。図18に示すように、H型リンク部材19は、基部の両側に、それぞれ2つの腕部19a、19bを有するH型形状である。一方の2つの腕部19aの方が、他方の2つの腕部19bより、腕部の長さが長い。
湾曲部ベース部材20は、先端側に円筒状部20aを有し、基端側に円筒状部20aの基端部の側面部及び底部から突出するように、かつ湾曲伝達棒15の方へ延出した延出部20bを有する。円筒状部20aの先端側には開口部が設けられている。図18に示すように、H型リンク部材19の長い方である一方の2つの腕部19aの間に延出部20bの一部を挟むようにして、延出部20bを貫通するピン21によって連結されている。ピン21は、H型リンク部材19の端部においてレーザ溶接によって固定されているが、延出部20bは、ピン21の軸を回動中心として、回動可能となっている。
さらに、図18に示すように、H型リンク部材19の短い方である他方の2つの腕部19bの間にリンクジョイント18の一部を挟むようにして、リンクジョイント18の1つの孔を貫通するピン22によって連結されている。リンクジョイント18は、略直方体形状をしており、3つの孔が形成されている。ピン22は、H型リンク部材19の端部においてレーザ溶接によって固定されているが、リンクジョイント18は、ピン22の軸を回動中心として、回動可能となっている。
リンクジョイント18は、さらに、湾曲力伝達棒15を挿入可能な孔部を有する。その孔部に挿入された湾曲力伝達棒15は、湾曲力伝達棒15を貫通するピン23によって連結されている。ピン23は、ピン22の軸とは直交する方向の軸を有する。ピン23は、リンクジョイント18の端部においてレーザ溶接によって固定されている。
湾曲部ベース部材20の延出部20bは、先端部固定部材12のチャンネル形状部の内部に空間内に配置され、延出部20bと先端部固定部材12とは、先端部固定部材12の両側面の互いに対向する位置から嵌入するピン24によって連結され、湾曲部ベース部材20は、これら2つのピン24の共通軸を回動中心として、回動可能となっている。
従って、図19に示すように、操作部3の角度可変ダイヤル6を回動させることによって、湾曲力伝達棒15が操作部3の軸方向において進退すると、ピン24を回動中心として湾曲部ベース部材20が回動する。図19は、先端固定部材12を点線で示して省略した、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。なお、ピン21,22,23、24は、それぞれステンレス製である。操作部3の角度可変ダイヤル6を回動させることによって、湾曲力伝達棒15が操作部3の軸方向において進退する機構については後述する。
図15に戻り、湾曲部ベース部材20の円筒状部20a内には、円筒状の回動部ベース部材25が、回動部ベース部材25の軸を回動中心として回動可能なように、嵌挿されている。回動部ベース部材25は、先端側に開口部を、基端側に底部を有する。回動部ベース部材25の基端側の底部には、孔が形成されており、その孔に回動力伝達コイル17の先端部が挿入されて、上述したようにろう付けによって固定されている。
回動力伝達コイル17は、基端側において回転力伝達パイプ13に上述したように、ろう付けによって固定され、先端側においては回動部ベース部材25に固定されている。回動力伝達コイル17の先端部は、回動部ベース部材25の基端側の底部に挿入されてろう付けされる。回動力伝達コイル17の基端部は、回転力伝達パイプ13の先端部の内部に形成された段部に挿入されてろう付けされる。よって、回転力伝達パイプ13が回転力伝達パイプ13の軸を回動中心として回動すると、回転力伝達パイプ13の回動量を処置部4へ伝達するように、回動力伝達コイル17と回動部ベース部材25も同様に回動する。
回動部ベース部材25は、ステンレス製であり、回動部ベース部材25内には、ワイヤ抜け止め受け部材26が内挿されている。ワイヤ抜け止め受け部材26は、ステンレス製であり、基端側にフランジ部を有する円筒部材である。
ワイヤ抜け止め受け部材26の基端側の底部には、牽引ワイヤ14が挿通可能な孔が設けられている。ワイヤ抜け止め受け部材26の先端側の円筒部内には、ステンレス製の円筒状のワイヤ抜け止め部材27が内挿されている。ワイヤ抜け止め部材27は、牽引ワイヤ14の先端部に設けられて、牽引ワイヤ14の抜けを防ぐための円筒形状の部材である。
ワイヤ抜け止め部材27の円筒内には、牽引ワイヤ14が挿通され、ろう付けによってワイヤ抜け止め部材27と牽引ワイヤ14が固定されている。ワイヤ抜け止め受け部材26の先端側の底部に、ワイヤ抜け止め部材27が当接して引っ掛かるようにすることによって、牽引ワイヤ14が、操作部3側に引っ張られたときに、ワイヤ抜け止め受け部材26が操作部3側に移動可能となる。
処置部4の先端部には、針を挟持する2つの挟持部材を含む挟持部8が設けられており、次にこの挟持部8の構成を説明する。図20は、ニードルドライバ1の先端部の背面図である。図21は、図20のXXI-XXI線に沿った断面図である。図22は、図20のXXII-XXII線に沿った断面図である。
回動部ベース部材25には、1つの挟持部材である、ステンレス製の可動挟持片28の一部が嵌挿されている。可動挟持片28は、2つの切り欠き部28a、28bを有する略円筒形状であり、基端部の端部において、接着剤例えばエポキシ樹脂系の接着剤により、回動部ベース部材25内のワイヤ抜け止め受け部材26に固定されている。可動挟持片28の先端部は、針を挟持するための平面部を有し、ここでは、その平面部の平面は、略円筒形状の可動挟持片28の軸に対して直交する。
さらに、図21及び図22に示すように、ワイヤ抜け止め受け部材26の円筒状部の一部には凸部26aが形成されており、一方可動挟持片28の基端側の内周面の一部にも凸部28cが形成されている。それぞれの凸部を、相手方の凸部がない部分においてぶつからないように嵌め合わせてから、先端部の軸方向において互いに凸部が重なるように軸の回りで回転させて、上述したように接着剤によって、ワイヤ抜け止め受け部材26と可動挟持片28を固定する。このようにすることによって、牽引ワイヤ14が操作部3側に牽引されて移動すると、ワイヤ抜け止め受け部材26と共に可動挟持片28も、操作部3側に移動する。
回動部ベース部材25の先端部には、ステンレス製の先端挟持片取り付け部材29がピン30によって固定されている。
図23から図26は、挟持部8の構成を説明するための図である。
図23は、先端部の処置部の外観を示す斜視図である。図24は、挟持部の内部構成を示す図であって、回動部ベース部材を省いて示した斜視図である。図25は、挟持部の内部構成を示す図であって、回動部ベース部材および湾曲部ベース部材を部分的に省いて示した斜視図である。図26は、挟持部の内部構成を示す図であって、回動部ベース部材、湾曲部ベース部材および可動挟持片を部分的に省いて示した斜視図である。
先端挟持片取り付け部材29は、図15、図24から図26に示すように、基端側にはT型形状部と、先端側には棒状部とを有する。基端側のT型形状部は、回動部ベース部材25の軸に直交する方向に延出した延出部29aを有する。延出部29aは、可動挟持片28の2つの切り欠き部28a、28b内に摺動可能なように嵌挿され、かつ、延出部29aと回動部ベース部材25とは、延出部29aを貫通するピン30によって固定されている。ピン30は、端部においてレーザ溶接によって回動部ベース部材25と固定される。
先端挟持片取り付け部材29の先端部には、1つの挟持部材である、ステンレス製の先端挟持片31が、ステンレス製のピン32によって固定されている。ピン32は、端部においてレーザ溶接によって先端挟持片31と固定される。先端挟持片31は、円環状であり、可動挟持片28の先端部の平面部に対して平行な平面部を有する。従って、後述するように、開閉レバー5に対する開閉動作に応じて、先端挟持片31の平面部と可動挟持片28の平面部とによって挟むように、針が挟持される。
針の挟持を行う挟持面である、先端挟持片31の平面部と可動挟持片28の平面部のそれぞれの表面は、滑り止め加工が施されている。滑り止め加工としては、放電加工、ローレット加工、金属メッキへのダイヤモンド微小粉末の吹きつけ処理加工等がある。
円筒状の可動挟持片28の先端部には、内向フランジが設けられており、その内向フランジ部の内側面と、その内側面に対向する、先端挟持片取り付け部材29の延出部29aの先端側面との間に、ステンレス製のバネ33が圧縮された状態で、先端挟持片取り付け部材29の棒状部に介装されるようにして設けられている。従って、バネ33は、2つの挟持部材の少なくとも一方を、他方に密着する方向に常に付勢する付勢手段の一部を構成する。
次に、以上のように構成されたニードルドライバ1の処置部4の動作を説明する。
まず、挟持部8の開閉動作を説明する。図27から図29は、ニードルドライバ1の処置部4の挟持部8が開いた状態を示す図である。図27は、ニードルドライバ1の処置部4の挟持部8が開いた状態を示す斜視図である。図28は、ニードルドライバ1の処置部4の挟持部8が開いた状態を示す背面図である。図29は、ニードルドライバ1の処置部4の挟持部8が開いた状態を示す断面図である。
先端挟持片取り付け部材29は、回動部ベース部材25に固定されているので、先端挟持片取り付け部材29に固定されている先端挟持片31は、回動部ベース部材25に対して固定された位置関係を有する。言い換えれば、先端挟持片31は、湾曲部ベース部材20に対しても長軸方向に固定された位置関係を有する。
一方、開閉レバー5の開操作がされてすなわち開閉レバー5が押されて、牽引ワイヤ14が牽引されることによって、操作部3側に移動可能なワイヤ抜け止め受け部材26に固定されかつ引っ掛けられた可動挟持片28は、バネ33が伸長する方向に掛かる力に抵抗しながら、可動挟持片28は、先端挟持片31から離間する方向である操作部3側に移動することができる。従って、牽引ワイヤ14が牽引されると、可動挟持片28は、牽引ワイヤ14の進退動作に応じた量だけ、図27の矢印に示す方向に移動する。すなわち、バネ33による、他方の挟持部材である先端挟持片31に密着する方向の付勢力に抗して、一方の挟持部材である可動挟持片28は、開閉操作における開操作によって、処置部4の先端部に位置する先端挟持片31から離間する方向に移動する。このとき、図29に示すように、バネ33は、図15に示す開閉レバー5の開操作がされていない状態よりも、さらに圧縮された状態となり、開閉レバー5を押す、開操作がされなくなると、バネ33の伸長力によって、牽引ワイヤ14は、バネ33による、可動挟持片28を、先端挟持片31に密着する方向への付勢力によって、処置部4側に引っ張られる。その結果、挟持部8において、先端挟持片31の平面部と可動挟持片28の平面部の間に位置する針が挟持される。
次に回動動作について説明する。
針が挟持された状態において、あるいは針が挟持されていない状態において、回動ダイヤル7が回動されると、軸部材である回動力伝達パイプ13が軸を回動中心として回動するために、回動力伝達パイプ13に固定された回動力伝達パイプ17が回動し、回動力伝達パイプ17に固定された回動部ベース部材25も回動する。回動ダイヤル7が回動された量に応じて、回動力伝達パイプ13が回動するので、回動ダイヤル7が回動された量に応じた回動量が、処置部4へ伝達される。その結果、挟持部8を構成する先端挟持片31と可動挟持片28とは回動部ベース部材25に連動して共に回動する。
また、可動挟持片28とワイヤ抜け止め受け部材26とは固定されており
、かつ、上記先端挟持片取り付け部材29における延出部29aが上記切り欠き部28a、28bに挿通されているので、回動部ベース部材25とワイヤ抜け止め受け部材26とは協動して共に回動する。
また、このとき、牽引ワイヤ14と、その牽引ワイヤ14に固定されたワイヤ抜け止め部材27は、ワイヤ抜け止め受け部材26に対して摺動可能となっているため、回動部ベース部材25が回動しても、牽引ワイヤ14とワイヤ抜け止め部材27は、当該回動部ベース部材25と共に回動することはない。
次に角度可変動作について説明する。
図30は、図4に示すように、ニードルドライバ1の処置部4を湾曲されたときの断面図である。角度可変ダイヤル6を回動させることによって、湾曲力伝達棒15が、図15に示す状態から、操作部3側に引っぱられていくと、リンクジョイント18及びH型リンク19によって、湾曲部ベース部材20を、ピン24を回動中心として回動する。
角度可変ダイヤル6の回動量に応じて湾曲力伝達棒15が進退することによって、処置部4の湾曲量、すなわち湾曲角度が変化する。よって、術者は、上述したように、手術の状況に応じて、処置部4を挿入部2の軸に対して所望の角度にして、処置を行うことができる。
処置部4の軸、すなわち挟持部8の先端挟持片31と可動挟持片28の挟持面に直交する方向の軸の、挿入部2の軸に対する角度は、0度から92度程度の範囲で、変更可能であるが、各部材の位置関係を調整することによって、角度の変更範囲は種々変更することができる。
ここで、図31ないし図35を用いてニードルドライバ1の処置部4の湾曲回転中心位置について説明する。
図31ないし図33において、
l:回動力伝達コイル17と回動力伝達パイプ13が接合されている面と、ピン24(湾曲回転中心)の中心軸との挿入部長手方向の距離
r:湾曲部ベース部材20に設けられたコイルガイドの半径
k:コイルガイドの回転中心Oとピン24の水平方向および鉛直方向の距離
点A(r,0):回動力伝達コイル17が、湾曲部ベース部材20に設けられたコイルガイドの先端側で接する点
点B(X1,Y1):回動力伝達コイル17と回動力伝達パイプ13が接合されている面上の最も湾曲力伝達棒15に近い点
点C(X2,Y2):回動力伝達コイル17と湾曲部ベース部材20に設けられたコイルガイドが接する点
θ:挿入部と先端部のなす角度(0度〜 -90度),湾曲角
L:回動力伝達コイル17の点A〜点C〜点Bの長さ
t:湾曲部ベース部材20と回動部ベース部材25の隙間
である。
処置部4を湾曲させるのに伴いLが変化してしまう。この長さ変化分は湾曲部ベース部材20と回動部ベース部材25との隙間tとして現れる。隙間tの変化が大きいと、以下のような状況が生じる。
(1)先端の針把持部が把持部の長軸方向に進退して作業しづらい
(2)隙間tが0になった状態からLがさらに長くなると、回動部ベース部材25が湾曲部ベース部材20に対して押し付けられるため、回動に要する力が大きくなる
(3)隙間tが大きくなると把持力が減少し,さらに大きくなると把持部が開いてしまう
このような(1)〜(3)の状況により、湾曲に伴うLの長さ変化は極力小さくする必要がある。
そこで、本実施形態では、以下のように処置部4の湾曲回転中心位置を設定し、湾曲に伴うLの長さ変化を抑制している。
すなわち、r,l,kを設定することで,湾曲角θのときのLを求める。Lの変化が小さくなるようにr,l,kを調整する(Lを求める過程で点B,点Cの座標値X1,Y1,X2,Y2を使用する)。
点Bの座標値
X1=(r−k)cosθ+lsinθ+k
Y1=(r−k)sinθ−lcosθ−k
点Cの座標値
X2=(r2−Y1Y2)/X1
Y2=[r2Y1+{r4Y12−(X12+Y12)(r4−r2X12)}1/2]/(X12+Y12) (X1≧0)
or
Y2=[r2Y1−{r4Y12−(X12+Y12)(r4−r2X12)}1/2]/(X12+Y12) (X1<0)
コイル内側長さL
L=racos(X2/r)+{(X1−X2)2+(Y1−Y2)2}1/2 (実際にはθの関数)
上記各式により、湾曲の回転中心位置を適切に設定することで、Lの変化を小さく抑える。
例えば、
k=πr/4(コイルガイドの半径中心Oと湾曲回転中心の距離は√2πr/4)
としてやると、θが0°の時と−90°の時のLの変化が0になる。
r=3[mm],l=6.4[mm]の条件では,
k=2.3561とすると,θが0°の時と−90°の時のLの変化が0になり,さらにθが0°から−90°まで変化するときのLの変化は図34のようになり、この範囲で湾曲させる際Lの変化を0.2[mm]程度に収めることが可能である。
参考にk=3とした場合のLの変化を図35に示す。このとき0°から90°の湾曲範囲でのLの長さ変化は1.3[mm]程度と大きくなり、回転中心位置が重要であることが分かる。
次に、本発明の実施形態における操作部について説明する。
図36は、本実施形態のニードルドライバの正面図、図37は、本実施形態のニードルドライバの背面図である。また、図38は、本実施形態のニードルドライバにおける操作部3を一側方(左側方)から見た要部側面図であり、図39は、上記当該操作部3を図38におけるXXXVII−XXXVIIで切り取って示した要部断面図であり、当該操作部3を背面側からみた図である。
さらに、図40は、上記実施形態のニードルドライバにおける回動ダイヤル7、角度可変ダイヤル6及び開閉レバー5を当該操作部3の外装部を省いて示した要部斜視図である。また、図41は、上記実施形態のニードルドライバにおける回動ダイヤル7、角度可変ダイヤル6を当該操作部3の外装部を省いて示した要部拡大斜視図であり、処置部4を湾曲させたときの状態を示し、図42は、上記実施形態のニードルドライバにおける回動ダイヤル7、角度可変ダイヤル6を当該操作部3の外装部を省いて示した要部拡大斜視図であり、処置部4の初期状態(湾曲させない)ときの状態を示す。さらに、図43は、上記実施形態のニードルドライバにおける開閉レバー5を当該操作部3の外装部を省いて示した要部拡大斜視図であり、処置部4を閉じたときの状態を示し、図44は、上記実施形態のニードルドライバにおける開閉レバー5を当該操作部3の外装部を省いて示した要部拡大斜視図であり、処置部4を開いたときの状態を示す。
上述したように、本実施形態の外科用処置具である針持器としてのニードルドライバ1は、挿入部2、操作部3及び挿入部2の先端に設けられた処置部4とで主要部が構成されるが、上記操作部3は、前記処置部4における各種動作の操作機構を備え、上記挿入部2の基端側に一体的に配設されている(図36図37参照)。
以下、本実施形態のニードルドライバ1における操作部3について説明する。
図36乃至図40に示すように、操作部3は、挿入部2の基端側において当該挿入部2の長軸と同軸上に一体的に配設され、略長方体形状を呈する外装部材131に覆われている。
操作部3の一側方には、当該操作部3の基端部を回動中心とする開閉レバー5が操作部3の一側方に向けて揺動可能に配設されている。
上記開閉レバー5は、処置部4の開閉操作をするための開閉操作部としてのレバーであって、操作部3の基端部に設けられた端部159の一側方に設けられた軸151を回動中心として揺動可能に配設され、その自由端部は当該操作部3の基端部から先端側に向けて延出される。
また、上記自由端部の中程には後述するリンク152が外装部材131に内設する開閉操作機構171との間に架設され、さらに該リンク152を介して外装部材131から離間する方向に向けて上述したバネ33の付勢力が印加されている。
さらに、外装部材131の長軸方向中程であって、開閉レバー5の自由端部の延長線上であって当該開閉レバー5の先端部近傍において、一側方(図36中、左側方)に向けて、術者の指おき用凸部133が突設されている。この指おき用凸部133の突設方向の高さは、開閉レバー5の自由端部の揺動範囲に応じて、すなわち、先端部の最大離間位置に応じて適切な値に決められている。具体的には、本実施形態においては、この指おき用凸部133の突設方向の高さは、開閉レバー5の先端部の最大離間位置と略同一面に設定される。また、本実施形態では、術者が所定の指(本実施形態のニードルドライバ1では、親指を想定する)によって当該開閉レバー5を操作する前後において、一時的に当該指を当該指おき用凸部133に載置して操作部3を把持することを想定しており、この指おき用凸部133に載置した親指と、後述する凸部132の係合面132aに当接した中指とで、開閉レバー5の非操作時においてニードルドライバ1をより安定して把持することができ、確実な手技を実現することができる。
図36に戻って、外装部材131の長軸方向中程には、他側方(図36中、右側方)に向けては、後述するダイヤル操作ユニット用101が内設される凸部132が突設されている。
上記凸部132の正面側(図36参照)には、角度可変ダイヤル6露出用の開口溝136aおよび回動ダイヤル7用の開口溝137aが、外装部材131の長軸方向に沿って穿設されている。これら開口溝136aと開口溝137aとは、外装部材131の長軸方向に沿ってそれぞれ、当該操作部3の他側面寄り(図36中、右側面)の位置と中心寄りの位置とに軌条に配置されるが、開口溝136aは、開口溝137aに対してより操作部3の基端側に配置される。
また、この凸部132は、操作部3の外周面における前記指おき用凸部133
の略裏面側に突設されており、当該操作部を把持する指のうち一の係合指(本実施形態では中指を想定する)に当接する係合面132aを有する指掛け部としての役目を果たす。
この係合面132aは、操作部3に対して傾斜面として形成されており、前記
指おき用凸部133に開閉レバー5の操作指(本実施形態では親指を想定する)を載置し、また当該係合面132aに中指を当接して当該操作部3を把持する際に、もっとも把持に適した面として形成される。
一方、上記凸部132の背面側(図37参照)における、上記開口溝136aおよび開口溝137aに対向する位置には、それぞれ、角度可変ダイヤル6露出用の開口溝136bおよび回動ダイヤル7用の開口溝137bが穿設されている。
そして、これら開口溝136a、136bおよび開口溝137a、137bからは、それぞれ角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7がその円周面の一部を露出して配設されるようになっている。
すなわち、これら開口溝136a、136bおよび開口溝137a、137bにおいて、それぞれ露出して配設される角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7は、角度可変ダイヤル6の方が操作部3の基端側であって、操作部3の外側の位置に配置されることとなる。
なお、本実施形態においては上記角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7は、上記指おき用凸部133と上記凸部132の係合面132aとの間であって、両ダイヤル6,7の操作指(本実施形態では人差し指を想定)の可動範囲に配設される。
次に、処置部4の延出方向の角度の変更操作をするための角度変更操作部としての角度可変ダイヤル6と、処置部4の回動操作をするための回動操作部としての回動ダイヤル7およびその周辺部について、図39乃至図42を参照して説明する。
操作部3の長軸方向中程から挿入部2側寄りには、すなわち、上記凸部132には、処置部4の回動操作機構を構成する回動ダイヤル7、および、処置部4の角度可変操作機構を構成する角度可変ダイヤル6が配設されている。
これら回動ダイヤル7および角度可変ダイヤル6は、共にダイヤル操作ユニット101に組み込まれ、所定の位置において回動自在となるように配設されている。
なお、角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7の外周面には、操作性を考慮して、本実施形態においてはローレット加工が施されている。
上記ダイヤル操作ユニット用101は、アルミニウム等で形成された台座102、この台座102に垂設された保持用突片111,113,114、および上記保持用突片111および113を連結する部材112で構成された保持ユニットに、上記回動ダイヤル7、角度可変ダイヤル6およびこれら回動ダイヤル7、角度可変ダイヤル6にそれぞれ係合するベベルギヤユニット123,121等が組み込まれて構成されている。
上記台座102は、略短冊形状を呈する硬質の板状部材であり、その一端部には保持用突片111がねじ等により一体的に垂設され、さらに他端部には保持用突片113が上記同様にねじ等により一体的に垂設されている。また、これら保持用突片111と保持用突片113とは、角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7の配置位置に対応した段差が形成された連結部材112により連結されている。なお、この連結部材112はねじ118、119によりそれぞれ保持用突片111、113に固着されている。
また、角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7には、インナーベベルギヤ61およびインナーベベルギヤ71が、それぞれ角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7に対して同軸上に配設され、当該角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7と一体的に回動するようになっている。
また、インナーベベルギヤ61およびインナーベベルギヤ71には、角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7と共通の回動軸である回動軸6aおよび回動軸7aが一体に形成されており、これら回動軸6aおよび回動軸7aは、上記連結部材112に形成された軸孔112a、軸孔112bにそれぞれ回動自在に枢支されている。
さらに、インナーベベルギヤ61には、ベベルギヤユニット121におけるベベルギヤ122が、また、インナーベベルギヤ71にはベベルギヤユニット123におけるベベルギヤ124がそれぞれ噛合している。
ベベルギヤ122は太径の回動軸126の先端部に一体的に固着され、該回動軸126の基端部は上記保持用突片113に形成された軸受け部113aに回動自在に軸支されている。一方、ベベルギヤ124は、太径の回動軸127の先端部に一体的に固着され、該回動軸127の基端部は上記保持用突片111に形成された軸受け部111aに回動自在に軸支されている。
以下、角度可変ダイヤル6の回動力を処置部4へ伝達するための動力変換機構と、回動ダイヤル7の回動力を処置部4へ伝達するための動力変換機構についてそれぞれ説明する。
まずは、角度可変ダイヤル6に係る動力変換機構について説明する。
上記ベベルギヤユニット121において、上記軸受け部113aに回動自在に軸支される回動軸126の基端面中心には、当該回動軸126と同軸にウォームねじ125が一体的に延設されている。また、このウォームねじ125の他端は、台座102から垂設された保持用突片114に回動自在に軸支されている。
上記ウォームねじ125には、該ウォームねじ125に螺合して操作部3の長軸方向に移動自在に配設された移動部材161が係合している。この移動部材161は外周面が矩形状を呈するナット部材であり、その底辺は上記台座102に摺動自在に当接している。また移動部材161は、ウォームねじ125に対して適度なフリクションにより螺合するものであり、ウォームねじ125の回動に伴って、台座102上を操作部3の適当な操作部3の長軸方向に摺動するようになっている。すなわち、ウォームねじ125と移動部材161とはカム−カムフォロワの関係を有するものである。
また、上記角度可変ダイヤル6、インナーベベルギヤ61およびウォームねじ125は、所定の減速比をもって構成されており、角度可変ダイヤル6の回動が適度な減速比を伴って移動部材161の移動に供されることとなる。
また、上記移動部材161の一辺には突片162が突設され、移動部材161の移動に伴って操作部3の長軸方向に移動するようになっている。この突片162の先端部には係合孔162aが形成され、該係合孔162aには、挿入部2側に向けて延出した連結棒163の一端が嵌合固着されている。また、突片162の基端側であって、上記ベベルギヤ124の回動軸の延長上には、牽引ワイヤ14の挿通孔162bが穿設されている。そして、挿入部2から延設される牽引ワイヤ14は、当該突片162の位置および移動の有無に影響されずに当該挿通孔162b内を自在に移動することが可能となっている。
一方、上記連結棒163の他端は、上述した湾曲力伝達棒15との連結部164に形成された係合孔164aに嵌合固着されている。連結部164の一端には、上記連結棒163が操作部3の基端側から嵌合するが、他端には、上記湾曲力伝達棒15が係合孔164bに嵌合固着されている。これにより、上記移動部材161の移動に連動して、突片162、連結棒163を介して連結部164が操作部3の長軸方向に移動することとなり、すなわち、角度可変ダイヤル6の回動に伴って、湾曲力伝達棒15が操作部3の長軸方向に移動することとなる。
なお、連結部164には上述した回動力伝達パイプ13と係合するガイド溝164cが形成されており、連結部164は回動力伝達パイプ13に案内されて操作部3の長軸方向に移動するようになっている。
図41は、上記移動部材161が操作部3の最も基端側に位置したときの様子を示した図であり、このとき処置部4は湾曲した状態となっている。また、図42は、上記移動部材161が操作部3の最も先端側に位置したときの様子を示した図であり、このとき処置部4は湾曲しない初期状態を保っている。
ここで、角度可変ダイヤル6に係る動力変換機構および当該角度可変ダイヤル6の操作に伴う処置部4の作用について、術者の立場に立って説明する。
術者が角度可変ダイヤル6を回動すると、上述したように当該角度可変ダイヤル6の回動量に応じてインナーベベルギヤ61、ベベルギヤユニット121、ウォームねじ125、移動部材161および突片162が可動し、湾曲力伝達棒15が操作部3の長軸方向に移動(進退)する。そして、この湾曲力伝達棒15の進退により、処置部4の湾曲量、すなわち湾曲角度が変化する(図4参照)。これにより、術者は、上述したように、手術の状況に応じて、処置部4を挿入部2の軸に対して所望の角度にして、処置を行うことができる。
次に、回動ダイヤル7に係る動力変換機構について説明する。
図40に戻って、上述したように、回動ダイヤル7と一体的に回動するインナーベベルギヤ71にはベベルギヤ124が噛合し、該ベベルギヤ124は、太径の回動軸127の先端部に一体的に固着され、該回動軸127の基端部は上記保持用突片111に形成された軸受け部111aに回動自在に軸支されている。この回動軸127の基端面には、上記回動力伝達パイプ13の一端が同軸に一体的に固着されており、ベベルギヤ124の回動に伴って回動力伝達パイプ13も一体的に回動するようになっている。
なお、上記回動軸127の中心には、上記牽引ワイヤ14の挿通用の嵌入孔127aが形成されている。この嵌入孔127aには上記挿入部2から延出された回動力伝達パイプ13の先端部が嵌入し、さらに回動力伝達パイプ13の先端部は、当該回動軸127の外周面から螺合挿入されたねじにより嵌入孔127a内において固定されている。すなわち、回動力伝達パイプ13内において挿入部2から延出された上記牽引ワイヤ14は、この回動力伝達パイプ13の先端面から露出し、後述する開閉操作機構171に向けてさらに延出する。なお、挿入部2から延設される牽引ワイヤ14は、当該回動軸127の回動の有無に影響されずに当該回動力伝達パイプ13を自在に移動することが可能となっている。
ここで、回動ダイヤル7に係る動力変換機構および当該回動ダイヤル7の操作に伴う処置部4の作用について、術者の立場に立って説明する。
処置部4において針が挟持された状態において、あるいは針が挟持されていない状態において術者が回動ダイヤル7を回動すると、インナーベベルギヤ71およびベベルギヤ124が可動し、回動力伝達パイプ13が回動する。これにより、回動力伝達パイプ13に固定された回動力伝達パイプ17が回動し、回動力伝達パイプ17に固定された回動部ベース部材25も回動する。すなわち、回動ダイヤル7の回動量に応じて、回動力伝達パイプ13が回動し、当該回動ダイヤル7の回動力が処置部4へ伝達される。その結果、挟持部8を構成する先端挟持片31と可動挟持片28とが回動部ベース部材25と一緒に回動する。
次に、処置部4の開閉操作をするための開閉操作部としての開閉レバー5およびその周辺部について、図39乃至図44を参照して説明する。
上述したように、操作部3の一側方には、処置部4の開閉操作を行う開閉レバー5が上記軸151に揺動自在に配設されている。この開閉レバー5は、処置部4の開閉操作をするための開閉操作部としてのレバーであって、操作部3の基端部の設けられた端部159の一側方に設けられた軸151を回動中心として揺動可能に配設され、その自由端部は当該操作部3の基端部から先端側に向けて延出される。
また、上記自由端部の中程には後述するリンク152が外装部材131に内設する開閉操作機構171との間に架設され、さらに該リンク152を介して外装部材131から離間する方向に向けて上述したバネ33の付勢力が印加されている。
上記開閉操作機構171は、操作部3の基端側内部において当該操作部3の長軸方向に摺動自在に配設された開閉操作用ベース部材172と、上記牽引ワイヤ14の端部において当該牽引ワイヤ14に固着された係合片14aの保持部材であって、該開閉操作用ベース部材172の移動に応じて移動する牽引ワイヤ保持部材173と、上記開閉操作用ベース部材172と上記開閉レバー5の中程との間に架設されたリンク152等で構成されている。
上記開閉操作用ベース部材172は、略長方体形状を呈し、操作部3の基端側内部において長軸方向に形成されたガイド溝139に摺動自在に配設されている。また、上記牽引ワイヤ保持部材173は、角柱形状を呈した上記牽引ワイヤ14における係合片14aの保持部材であって、長軸方向に長孔173bが形成されている。そして、この長孔173bにおいて上記開閉操作用ベース部材172の一辺にねじ176で組み付けられている。なお、牽引ワイヤ保持部材173を開閉操作用ベース部材172に組み付ける際には、牽引ワイヤ14の最適な張力が得られるように調整することが可能となっている。すなわち、当該牽引ワイヤ保持部材173を取り付ける際に、当該牽引ワイヤ14の長さのばらつきを吸収すると共に、牽引ワイヤ14に適度な撓みをもたせるよう、当該牽引ワイヤ保持部材173の位置を調節して取り付ける。
上記開閉操作用ベース部材172の先端側には、牽引ワイヤ14における上記係合片14aを挟設するための保持部173aが形成されている。この保持部173aの操作部3の短軸方向の一面には開口部173cが形成されており、牽引ワイヤ14の係合片14aをこの開口部173cから挿入した後は、当該係合片14aの長軸方向の移動が規制されるようになっている。
上記リンク152は、上記開閉操作用ベース部材172の先端側に配設された軸172aと開閉レバー5の自由端部の中程に配設された軸153とに共に回動自在に配設されている。これにより、開閉レバー5の、上記軸151を回動中心とする揺動に応じて当該リンク152を介して開閉操作用ベース部材172がガイド溝139上を摺動するようになっている。
一方、牽引ワイヤ14には、上述したバネ33により、当該牽引ワイヤ14を挿入部2がわに向けて引張する付勢力が印加されており、これにより、開閉操作用ベース部材172は挿入部2側に付勢されている。さらに、当該付勢力により、開閉レバー5はリンク152を介して、その自由端部が外装部材131から離間する方向に付勢される。
このように付勢される開閉レバー5を当該付勢力に抗して押下すると、リンク152を介して開閉操作用ベース部材172が操作部3の基端側に変位し、この開閉操作用ベース部材172の変位に伴って牽引ワイヤ14には、牽引ワイヤ保持部材173を介して操作部3の基端側への引張力が印加される。そして、当該引張力が印加された牽引ワイヤ14は、適度な遊びを経た後、適宜、当該基端側に向けて移動される。
すなわち、開閉レバー5は、通常は、バネ33の付勢力によりその自由端部が外装部材131から離間する位置に配置される。そして、使用の際に術者により自由端部が操作部3に向けて押下されると、適度の遊びを経た後、牽引ワイヤ14が操作部3の基端部に向けて移動され、この牽引ワイヤ14の移動に伴って処置部4が開かれる。
図43は、上記開閉レバー5が通常状態にあるときの様子を示しており、このとき処置部4は閉じられている。また、図44は、開閉レバー5を押下したときの様子を示しており、このとき処置部4は開成した状態となっている。
ここで、開閉レバー5の操作に伴う処置部4の作用について、術者の立場に立って説明する。
通常状態(図43の示す初期の状態)にある開閉レバー5を術者が図44に押下すると(図44の示す押下状態)、リンク152を介して開閉操作用ベース部材172が操作部3の基端側に変位し、これに伴って牽引ワイヤ14が操作部3の基端側に引張され、移動され、処置部4が開かれる(図3参照)。術者は、開かれた処置部4により適宜縫合針を挟んだ後、当該開閉レバー5の押下を解除すると、バネ33の付勢力により、牽引ワイヤ14が挿入部2がわに引張され、リンク152を介して開閉レバー5は再び外装部材131から離間する方向に揺動される。
術者は、この後、上記角度可変ダイヤル6あるいは回動ダイヤル7を回動操作することにより、所望の処置部4の湾曲操作あるいは回動操作を行うことができる。
また、上述したように、本実施形態のニードルドライバ1においては、開閉レバー5の先端近傍には、指おき用凸部133が形成されており、術者は、開閉レバー5の操作を実行しない場合には、当該指おき用凸部133に当該開閉レバー5に係る指を当接することができる。この指おき用凸部133に当該指を当接することで、意図せず開閉レバー5を操作してしまうことを未然に防止することができる。
さらに本実施形態のニードルドライバ1においては、以下の効果を奏する。
本実施形態のニードルドライバ1は、上述したように、操作部3を指おき用凸部133に載置した親指と凸部132の係合面132aに係合した中指とで、確実に把持することができるため、角度可変ダイヤル6あるいは回動ダイヤル7の回動操作をより安定して実行することができる。
すなわち、術者は、当該ニードルドライバ1を恰もペンの如く把持することができ、操作部3を確実に、かつ安定して把持することができる。また、この操作部3の安定した把持状態を維持しつつ、操作部3に配設された開閉レバー5、角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7の操作により、処置部4における開閉、湾曲および回動という3つの動作を巧みに操ることができる。換言すると、操作部3の持ち替えあるいは持ち直し動作をすることなく、上述した開閉、湾曲および回動という3つの動作を術中に安定して連続的に行うことができ、内視鏡下での縫合操作を極めて容易に、かつ、確実に行い得る。
さらに、縫合針の保持力が、回動伝達力を邪魔することがないので、針を把持した際に、回動動作が軽くなり、非常に使い勝手が良い。
なお、本実施形態においては、角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7の回動変位方向は、操作部3の長軸方向に平行な方向であるとしたが、これに限らず、操作に供する指の稼働範囲に応じて適度な方向に設定しても良い。
また、本実施形態においては、上述の如き位置関係をもって上記回動ダイヤル7と角度可変ダイヤル6とを配置したが、これに限らず、たとえば、回動ダイヤル7と角度可変ダイヤル6とをオフセットすることなく列設してもよい。
さらに、本実施形態においては、インナーベベルギヤ61あるいはインナーベベルギヤ71とベベルギヤユニット121あるいはベベルギヤユニット123との噛合関係は、互いに軸が約90度の交差角度をもって配置するものであるとしたが、これに限らず、角度可変ダイヤル6および回動ダイヤル7の配置位置に応じて適宜、変更されても良い。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。