JP4620481B2 - 老化防止剤含有ウェットマスターバッチ及びその製造方法、並びにこれを用いたゴム組成物及びタイヤ - Google Patents
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ウェットマスターバッチへの老化防止剤の添加にあたっては、合成ゴムで通常行われているように、ラテックスに老化防止剤を混合する手法がとられている。この場合、老化防止剤をそのまま混合するとラテックスが沈殿したり、部分的に凝固してしまうため、一般には界面活性剤を加えエマルジョンにして用いる。
また、特許文献3には、ウェットマスターバッチのカーボンブラックスラリーにゴム添加剤(薬品)を混合することが記載されている。しかし、具体的な分散方法については記述がなく、実施例として開示されているのは予めラテックスにエマルジョンとして薬品を添加している例のみである(例えば、段落〔0055〕、〔0064〕及び〔0095〕)。
しかし、これら従来法によるエマルジョンの老化防止剤を加えたラテックスは、充填材のスラリー溶液と混合すると、界面活性剤が充填材の表面に吸着することにより、充填材の表面活性を下げてしまい、この現象により、充填材とゴムの相互作用が損なわれるため、ゴムの補強性、耐摩耗性の低下を招くという問題があった。また、老化防止剤の分散性は不十分であり、耐熱老化性の向上は困難であった。
すなわち、本発明は下記の構成からなる。
nM1 ・xSiOy・zH2 O ・・・(I)
[式中、M1 は、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]
で表わされる無機充填材の少なくとも1種とを、同時に高速せん断ミキサーを用いて分散溶媒中に分散させることによりスラリー溶液を調製した後、
(B)該スラリー溶液とゴム溶液とを混合し、凝固させることを特徴とする老化防止剤含有ウェットマスターバッチの製造方法。
2.スラリー溶液の特性として、(i)スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量は、溶液中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上保持するものである前記1記載のウェットマスターバッチの製造方法。
3.(a)成分と(b)成分との溶液中への分散は、界面活性剤を使用することなく、高速せん断ミキサーにより行なうものである前記1又は2に記載のウエットマスターバッチの製造方法。
4.ゴム溶液が、天然ゴムラテックス又は合成ゴムラテックスである前記1〜3のいずれかに記載のウェットマスターバッチの製造方法。
5.スラリー溶液が、水分散溶液である前記1〜4のいずれかに記載のウェットマスターバッチの製造方法。
6.凝固後のウェットマスターバッチを乾燥する工程で、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行う前記1〜5のいずれかに記載のウェットマスターバッチの製造方法。
7.連続混練機を用いて乾燥を行う前記6に記載のウェットマスターバッチの製造方法。
8.連続混練機が多軸混練押出機である前記7記載のウェットマスターバッチの製造方法。
9.前記1〜8のいずれかに記載の方法により製造されたウェットマスターバッチ。
10.前記9に記載のウェットマスターバッチを用いたゴム組成物。
11.前記10に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
このスラリー溶液の調製工程((A)工程)において、溶液中に分散さる充填材は、カーボンブラック、シリカ、及び一般式(I)
nM1 ・xSiOy・zH2 O ・・・(I)
[式中、M1,n,x,y,zの説明は前記]で表される無機充填材からなる群の中から選ばれた少なくとも一種のものである。
ここで、カーボンブラックとしては、通常ゴム工業に用いられるものが使用できる。例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独にまたは混合して使用することができる。
シリカは特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。
また、一般式(I)で表される無機充填材としては、M1 がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。
また、この分散は、界面活性剤を使用することなく行なうことが好ましい。ここで、高せん断ミキサーとは、ローターとステーター部からなる高せん断ミキサーであって、高速で回転するローターと、固定されたステーターが狭いクリアランスで設置され、ローターの回転によって高いせん断速度を生み出す。
高せん断とは、せん断速度が2000/s以上、好ましくは4000/s以上であることを意味する。
高せん断ミキサーは、市販品としては、例えば特殊機化工業社製ホモミキサー、独PUC社製コロイドミル、独キャビトロン社製キャビトロン、英シルバーソン社製ハイシアーミキサーなどが挙げられる。
さらに好ましくは、体積平均粒子径(mv)が20μm以下、かつ90体積%粒径(D90)が25μm以下である。粒度が大きすぎるとゴム中の充填材分散が悪化し、補強性、耐摩耗性が悪化することがある。
スラリー溶液において、前記充填材の濃度は1〜15質量%とするのが好ましく、特に2〜10質量%の範囲であることが好ましい。充填材の濃度が1質量%未満では必要とするスラリー容量が多くなりすぎ、また15質量%以上では、スラリー溶液の粘度が高くなりすぎて、作業上問題が生じる。
また、老化防止剤は、スラリー溶液中、0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。0.05質量%未満では物性改良効果が充分でなく、また1質量%を超えるとスラリー溶液内での老化防止剤の均一性が保てなくなる場合がある。
アミン系老化防止剤としては、例えば、N−(1,3−ジメチル−ブチル)−N′−フェニル−P−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−P−フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、4,4′(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N−フェニル−N′−(3メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル−P−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘブチル)−N′−フェニル−P−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミンとその誘導体、N,N′−ジフェニル−P−フェニレンジアミン、N,N′−ジアリル−P−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−P−フェニレンジアミン、等が挙げられる。
天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、酵素で処理した脱蛋白ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。
合成ゴムラテックスとしては、例えばスチレン−ブタジエン重合体ゴム、ニトリルゴム、ポリクロロプレンゴムなどのラテックスが含まれる。
ウェットマスターバッチの凝固方法としては、通常と同様、蟻酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩の凝固剤を用いて行われる。また、本発明においては、凝固剤を添加せず、天然ゴムラテックスと前記スラリーとを混合することによって、凝固がなされる場合もある。
これにより、ゴムの場合は、加工性、補強性などをより向上することができる。この乾燥は、一般的な混練機を用いて行なうことができるが、工業的生産性の観点から、連続混練機を用いることが好ましい。さらには、同方向回転、あるいは異方向回転の多軸混練押出機を用いることがより好ましい。
また、このゴム組成物において、ゴム成分の全体に対して上記ウェットマスターバッチにおけるゴム成分を30質量%以上含むことが好ましい。上記ウェットマスターバッチに追加して用いられる他のゴム成分としては、通常の天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物などが挙げられる。
各実施例、比較例における各種測定は下記により行なった。
(1)スラリー溶液中の充填材の粒度分布測定(体積平均粒子径(mv)、90体積%粒径(D90))
レーザー回折型粒度分布計(MICROTRAC FRA型)を使用し、水溶媒(屈折率1.33)を用いて測定した。粒子屈折率(Particle refractive index)は全ての測定において1.57を用いた。また、充填材の再凝集を防ぐため、分散後直ちに測定を行った。
(2)充填材の24M4DBP吸油量
ISO 6894に準拠して測定した。
JIS K6251−1993に準拠し、23℃で測定した時の引張強さを求めた。値が大きいほど補強性が高い。
(4)ランボーン耐摩耗試験
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率40%で摩耗量を測定し、その逆数を、比較例1のゴム組成物(耐熱老化前)を100とする指数で表示した。値が大きいほど質量減少が少なく耐摩耗性は良好である。
(5)耐熱老化試験
ウェットマスターバッチを作成後、すぐに配合、加硫したものと、一ヶ月間40℃放置して配合、加硫したものについて、ゴム組成物の破壊強力及びランボーン耐摩耗性を評価した。
(A)スラリー溶液の調製:水中にカーボンブラック(N110)と老化防止剤6C(N−(1,3−ジメチルブチル)-N`-フェニル−p−フェニレンジアミン)を各々5質量%、0.1質量%の割合で入れ、シルバーソン社製ハイシアーミキサーにて微分散させてスラリー溶液を作成した。ここで得られたスラリー中のカーボンブラックの粒度分布は中心粒径mv=13.7μm、D90(90%粒径)=19.2μmであった。
(B)ウェットマスターバッチの調製:上記スラリー溶液3kgと10質量%に希釈した天然ゴム濃縮ラテックス3kgとを攪拌しながら混合し、蟻酸にてpH4.5にコントロールして凝固し、洗浄、真空乾燥して、ウェットマスターバッチAを得た。
上記ウェットマスターバッチA中、ゴム100質量部当たりのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤の量は1質量部であった。
スラリー溶液の調製として、実施例1において、老化防止剤を加えずに作成したこと以外は実施例1と同様の操作を行なってスラリー溶液を作成した。
次に、上記スラリー溶液3kgと10質量%に希釈した天然ゴム濃縮ラテックス3kgとを混合し、実施例1と同様の操作によりウェットマスターバッチBを作成した。
上記ウェットマスターバッチB中、ゴム100質量部当たりのカーボンブラックの量は50質量部であった。
(A)スラリー溶液の調製:比較例1と同様にして老化防止剤を添加せず作成した。
(B)老化防止剤含有ラテックスの調製:老化防止剤6Cの10gをベンゼン30gに溶解した液Iと、水60g、水酸化カリウム0.2g、オレイン酸2g混合した液IIを、激しく攪拌して混合して濃度10%のエマルジョン液を作成した。このエマルジョン液を天然ゴムラテックスに添加し、天然ゴム濃度10質量%、老化防止剤濃度0.1質量%のラテックスを作成した。
上記により得られたカーボンブラックスラリー溶液と老化防止剤含有ラテックスとを混合し、比較例1と同様の操作によりウェットマスターバッチCを作成した。
上記ウェットマスターバッチC中、ゴム100質量部当たりのカーボンブラックの量は50質量部、老化防止剤の量は1質量部であった。
実施例1及び比較例1,2で得られた天然ゴムマスターバッチA〜Cを用い、バンバリーミキサーを用いて第1表に示す配合に従って配合し、150℃で30分加硫しゴム組成物を調製した。これらのゴム組成物について、耐熱老化試験前後においての破壊強力とランボーン摩耗を測定した。結果を第1表に示す。
加硫促進剤NS:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
Claims (11)
- 老化防止剤を含有するウェットマスターバッチを製造する方法であって、
(A)(a)老化防止剤と、(b)カーボンブラック、シリカ、又は一般式(I)
nM1 ・xSiOy・zH2 O ・・・(I)
[式中、M1 は、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]
で表わされる無機充填材の少なくとも1種とを、同時に高速せん断ミキサーを用いて分散溶媒中に分散させることによりスラリー溶液を調製した後、
(B)該スラリー溶液とゴム溶液とを混合し、凝固させることを特徴とする老化防止剤含有ウェットマスターバッチの製造方法。 - スラリー溶液の特性として、(i)スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量は、溶液中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上保持するものである請求項1記載のウェットマスターバッチの製造方法。
- (a)成分と(b)成分との溶液中への分散は、界面活性剤を使用することなく、高速せん断ミキサーにより行なうものである請求項1又は2に記載のウエットマスターバッチの製造方法。
- ゴム溶液が、天然ゴムラテックス又は合成ゴムラテックスである請求項1〜3のいずれかに記載のウエットマスターバッチの製造方法。
- スラリー溶液が、水分散溶液である請求項1〜4のいずれかに記載のウエットマスターバッチの製造方法。
- 凝固後のウエットマスターバッチを乾燥する工程で、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行う請求項1〜5のいずれかに記載のウェットマスターバッチの製造方法。
- 連続混練機を用いて乾燥を行う請求項6に記載のウェットマスターバッチの製造方法。
- 連続混練機が多軸混練押出機である請求項7記載のウェットマスターバッチの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造されたウェットマスターバッチ。
- 請求項9に記載のウェットマスターバッチを用いたゴム組成物。
- 請求項10に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
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