JP4619884B2 - 鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法 - Google Patents
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Description
また、鉄筋の腐食度を測定する方法として、自然電位測定法が知られており、図7に示すように、鉄筋gにリード電線wにより電位差計mを介して照合電極s(硫酸銅電極)を接続し、この照合電極sをコンクリートCの鉄筋埋設ルートに沿い移動させ、その移動中の電位を測定し、測定電位E(v)がほ0.20<Eの場合、90%以上の確率で腐食無し、ほ0.35≦E≦−0.20の場合、不確定、E<0.35の場合、90%以上の確率で腐食在りと診断している(例えば、非特許文献1)
また、自然電位測定法では、不確定範囲が広く、迷走電流の影響も受け易く問題がある。
近来、磁気センサとして磁気インピーダンス効果を利用したセンサが開発されている。 この磁気インピーダンス効果を利用したセンサは、ホールセンサ、磁気抵抗素子、フラックスゲートセンサ等に較べて小型、高感度、高空間分解能、高速応答性であり、このセンサを利用した磁気検出方法が提案されている。
この磁気インピーダンス効果センサを使用して漏洩磁束探傷試験法により鋼板内の欠陥を検出することも報告されている(非特許文献2)。
しかしながら、この方法では被検査体に磁界を印加する必要があり、検査対象に制限がある。
土木工学ハンドブックI,土木学会編,第9章維持管理,p1021 藤本 幸二、毛利 佳年雄,MAG−98−86,p39〜43
漏洩磁束探傷試験方法とは異なり、磁化することなく欠陥を検出できることは、磁気インピーダンス効果素子に印加するバイアス磁界が磁性体である鉄系被検査体にバイパスし、被検査体の欠陥に応じた被検査体のリラクタンス変化によりそのバイアス磁界が変化してセンサ出力が変化されることが関与している。
請求項2に係る鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法は、磁気インピーダンス効果素子にバイアス磁界用コイルを付設しその素子の出力を検波回路に通して検出するセンサを、磁気インピーダンス効果素子に励磁電流を通電しバイアス磁界用コイルに電圧を印加してバイアス磁界を発生させつつ鉄系材埋設コンクリート構造物の埋設鉄系材上の構造物表面にスキャニングさせ、このスキャニング中、バイアス磁界が鉄系材にバイパスされることにより生じるバイアス磁界の変化に基づく検出出力の変化から鉄系材の長手方向に沿っての劣化度を診断することを特徴とする。
請求項3に係る鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法は、請求項1または2の鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法において、軸方向を相互に異ならせて多数箇の磁気インピーダンス効果素子を組み合わせた多次元磁気インピーダンス効果素子を備えたセンサを使用することを特徴とする。
請求項4に係る鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法は、請求項1〜3何れかの鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法において、1次元〜多次元の磁気インピーダンス効果素子を並設し、それら素子の検波出力を多チャンネル化することを特徴とする。
請求項5に係る鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法は、請求項1〜4何れかの鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法において、各チャンネルの検出信号を空間的に離れた場所に無線で送信する送信手段を付設することを特徴とする。
(2)バイアス磁界用コイルが発生するバイアス磁界に対し、埋設鉄系材もその磁界の回路の一部となり、バイアス磁界の強さが埋設鉄系材の腐食・減肉の程度に応じて変化する。このバイアス磁界が磁気インピーダンス効果素子としてのアモルファスワイヤ内を軸方向に通過するから、励磁電流による円周方向磁界が円周方向からずらされ、そのずれの程度が埋設鉄系材の腐食・減肉の程度に応じて変化される。従って、磁気インピーダンス効果素子の出力変化が埋設鉄系材の腐食・減肉の程度に相関し、その出力変化から埋設鉄系材の腐食・減肉の程度を判定できる。
(3)磁気インピーダンス効果素子を多次元の構成として埋設鉄系材の腐食・減肉上方を多方向から得ているから、埋設鉄系材が鉄筋のような線状体であっても、腐食・減肉情報を高感度で得ることができる。
(4)磁気インピーダンス効果素子の複数箇を並列に配設しており、その配設方向と直交方向に劣化診断装置をスキャニングするにあたりスキャニング回数を少なくできるから、作業工数を減少できる。
(5)多チャンネル化しており、各チャンネルの検出信号を無線方式でコンピュータに送信して埋設鉄系材の劣化状態を遠隔から容易に検出できる。
図1は本発明において使用する磁気インピーダンス効果センサの回路図を示している。
図1において、1は磁気インピーダンス効果素子であり、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向の磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤが使用される。かかる零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤに高周波励磁電流を流したときに発生するワイヤ両端間出力電圧中のインダクタンス電圧分は、ワイヤの横断面内に生じる円周方向磁束によって上記の円周方向に易磁化性の外殻部が円周方向に磁化されることに起因して発生する。従って、周方向透磁率μθは同外殻部の円周方向の磁化に依存する。而るに、この通電中のアモルファスワイヤの軸方向に信号磁界を作用させると、上記通電による円周方向磁束と信号磁界磁束との合成により、上記円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずれ、それだけ円周方向への磁化が生じ難くなり、上記周方向透磁率μθが変化し、上記インダクタンス電圧分が変動することになる。この変動現象は磁気インダクタンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。更に、上記通電電流の周波数がMHzオ−ダになると、高周波表皮効果が大きく現れ、表皮深さδ=(2ρ/wμθ)1/2(μθは前記した通り円周方向透磁率、ρは電気抵抗率、wは角周波数をそれぞれ示す)がμθにより変化し、このμθが前記した通り、信号磁界によって変化するので、ワイヤ両端間出力電圧中の抵抗電圧分も信号磁界で変動するようになる。この変動現象は磁気インピーダンス効果と称され、これは上記高周波励磁電流(搬送波)が信号磁界(信号波)で変調される現象ということができる。
磁気インピーダンス効果素子1には、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファスワイヤの外、アモルファスリボン、アモルファススパッタ膜等も使用できる。
図2の(ハ)から、バイアス磁界の変化ΔHbによって信号磁界Hexが0のときの出力が変化することが理解できる。
また、被変調波(周波数fs)に同調させた周波数fsの方形波を被変調波に乗算して信号波をサンプリングする同調検波を使用することができる。
上記の実施例では、被変調波の復調によって被検出磁界を取り出しているが、これに限定されず、磁気インピーダンス効果素子に作用する信号磁界(信号波)で変調された高周波励磁電流波(搬送波)から信号磁界を検波し得るものであれば、適宜の検波手段を使用できる。
図3において、100は基板チツプであり、例えばセラミックス板を使用できる。101は基板片の片面に設けた電極であり、磁気インピーダンス効果素子接続用突部102を備えている。この電極は導電ペースト、例えば銀ペーストの印刷・焼付けにより設けることができる。1xは電極101,101の突部102,102間にはんだ付けや溶接により接続した磁気インピーダンス効果素子であり、前記した通り零磁歪乃至負磁歪のアモルファスワイヤ、アモルファスリボン、スパッタ膜等を使用できる。103は鉄やフェライト等からなるC型鉄芯、6xはC型鉄芯に巻装した負帰還用コイル、7xは同じくバイアス磁界用コイルであり、磁気インピーダンス効果素子1xとC型鉄芯103とでループ磁気回路を構成するように、C型鉄芯103の両端を基板片100の他面に接着剤等で固定してある。鉄芯材料としては、残留磁束密度の小さい磁性体であればよく、例えば、パーマロイ、フェライト、鉄、アモルファス磁性合金の他、磁性体粉末混合プラスチック等を挙げることができる。
図4−2はスキャニング中でのバイアス磁界の作用状態を示している。
図4−1及び4−2において、1xは図3に示した鉄芯コイル付き磁気インピーダンス効果ユニットの磁気インピーダンス効果素子を、103は鉄芯を、7xはバイアス磁界用コイルを、gは鉄パイプをそれぞれ示しており、鉄パイプgが磁性体であるから、鉄パイプgにバイアス磁界がバイパスされる。
鉄芯103のリラクタンスをR103、磁気インピーダンス効果素子1xのリラクタンスをR1、鉄パイプgのリラクタンスをRg、磁気インピーダンス効果素子端と鉄パイプ間のリラクタンスをRC、バイアス電流をI、バイアス磁界用コイル7xの巻数をN、磁気インピーダンス効果素子1xを通るバイアス磁束をB1とすると、そのバイアス磁束は図4−3に示す等価回路の電流B1で与えられ、バイアス磁界Hbは磁気インピーダンス効果素子の透磁率をμとして
Hb=B1/μ
で与えられる。
これは、バイアス磁界B1/μ(Hb)が変化して図2の(ハ)に示した外部磁界Hex=0のときの検出出力Eoutが変動するためであると認められる。
図4−1における距離xが大になると、検出出力の変動は生じない。これは磁気インピーダンス効果素子端と鉄パイプ間のリラクタンスRCが大となり、鉄パイプ(リラクタンスRg)にバイアス磁界がバイパスされずに磁気インピーダンス効果素子を通るバイアス磁束B1が一定になるためと認められる。
図4−1において、距離xを0とするように磁気インピーダンス効果センサSeをスキャニングさせていけば、そのスキャニング軌跡が鉄系パイプgの直上となり、そのときの検出出力は最大となる。従って、検出出力を最大とするように磁気インピーダンス効果センサをスキャニングさせていけば、鉄パイプの埋設ルートを探査できる。
従って、3個の磁気インピーダンス効果素子をx軸方向、y軸方向、z軸方向に向けて組む合わせた3次元磁気インピーダンス効果センサを使用することが好ましい。
図5は3次元磁気インピーダンス効果センサの一例の要部を示し、フレキシブル基板pの片面に鉄芯コイル付き磁気インピーダンス効果ユニットU1zをz軸方向に、同フレキシブル基板pの他面に鉄芯コイル付き磁気インピーダンス効果ユニットU1xをx軸方向に、同フレキシブル基板pの折曲げ立上げ面p’に鉄芯コイル付き磁気インピーダンス効果ユニットU1yをy軸方向にそれぞれ装着し、これら3個の鉄芯コイル付き磁気インピーダンス効果ユニットの磁気インピーダンス効果、バイアス磁界用コイル、負帰還用コイルのそれぞれを直列に接続してある。
図6−1において、C1〜Cnは複数箇のチャンネル検出系であり、11〜1nは磁気インピーダンス効果素子を、71〜7nは各磁気インピーダンス効果素子に対するバイアス磁界用コイルを、31〜3nは各磁気インピーダンス効果素子に対する検波回路を、41〜4nは増幅回路を、61〜6nは負帰還用コイルをそれぞれ示している。
811〜81nは各チャンネルの検出信号をディジタル化し各ディジタル信号で各チャンネルの周波数の搬送波を変調する多チャンネルA/D変換・変調器、82は変調信号波を無線方式で送信する多チャンネル送信器、83は受信器、84は受信波を復調してディジタル信号を取出したうえで解析するコンピュータである。
利用できる無線の方式としては、SS無線、ブルーテゥース、無線LAN、赤外線等を挙げることができ、特に、無線LANの使用が好ましい。
出力変化が生じたチャンネルの磁気インピーダンス効果素子が通過した経路に鉄系材が埋設されていることを知り得、その出力を解析することによりその鉄系材の劣化程度を診断できる。また、チャンネルに対応した周波数の搬送波をこの各チャンネルの検出信号で変調して無線方式でコンピュータに送信し、各チャンネルの変調波を復調して各チャンネルの信号をコンピュータで解析しており、遠隔から探査・診断できる。
図6−3は埋設鉄系材が排水鉄パイプのような単一条の場合の診断方法を示し、センサを鉄パイプ埋設コンクリート構造物の表面に沿い鉄パイプの長手方向にスキャンニングさせていき、図6−3の(イ)に示すように鉄パイプgに最も近い距離をとる磁気インピーダンス効果ユニットが1umであるとすると、図6−3の(ロ)に示すようにチャンネルmにのみ鉄系材探査情報を出力させることができ、その出力変動を解析して鉄パイプの劣化程度を診断できる。
図6−4は埋設鉄系材が鉄筋のような平行多数条の場合の診断方法を示し、センサを鉄筋コンクリート構造物の表面に沿い鉄筋の長手方向にスキャンニングさせていき、図6−4の(イ)に示すように鉄筋gに近い距離をとる磁気インピーダンス効果ユニットが1u3,1u7,1u11であるとすると、図6−4の(ロ)に示すようにチャンネル3,7,11に鉄系材探査情報を出力させることができ、その出力変動を解析して鉄筋の劣化程度を診断できる。この場合、磁気インピーダンス効果ユニットの間隔は鉄筋の間隔よりも充分に狭く設定することが有効であり、通常、3mm〜30mmとされる。
2 励磁電流源回路
3 検波回路
4 増幅回路
C 鉄系材埋設コンクリート構造物
g 埋設鉄系材
C1〜Cn 一チャンネル分の検出回路
11〜1n 磁気インピーダンス効果素子
71〜7n バイアス磁界用コイル
811〜81n A/D変換・変調器
82 無線式送信器
83 受信器
84 コンピュータ
Claims (5)
- 磁気インピーダンス効果素子にバイアス磁界用コイルを付設しその素子の出力を検波回路に通して検出するセンサを、磁気インピーダンス効果素子に励磁電流を通電しバイアス磁界用コイルに電圧を印加しつつ鉄系材埋設コンクリート構造物の表面にスキャニングさせる方法において、バイアス磁界が鉄系材へのバイパスのために鉄系材とセンサとの間の距離に応じて変化し、この変化により検出出力が変化するもとで、前記距離が最も近接したときに検出出力が最大となるようにし、前記センサを鉄系材埋設コンクリート構造物表面に前記検出出力が最大となるようにスキャニングさせて鉄系材を探査することを特徴とする鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法。
- 磁気インピーダンス効果素子にバイアス磁界用コイルを付設しその素子の出力を検波回路に通して検出するセンサを、磁気インピーダンス効果素子に励磁電流を通電しバイアス磁界用コイルに電圧を印加してバイアス磁界を発生させつつ鉄系材埋設コンクリート構造物の埋設鉄系材上の構造物表面にスキャニングさせ、このスキャニング中、バイアス磁界が鉄系材にバイパスされることにより生じるバイアス磁界の変化に基づく検出出力の変化から鉄系材の長手方向に沿っての劣化度を診断することを特徴とする鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法。
- 軸方向を相互に異ならせて多数箇の磁気インピーダンス効果素子を組み合わせた多次元磁気インピーダンス効果素子を備えたセンサを使用することを特徴とする請求項1または2記載の鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法。
- 1次元〜多次元の磁気インピーダンス効果素子を並設し、それら素子の検波出力を多チャンネル化することを特徴とする請求項1〜3何れか記載の鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法。
- 各チャンネルの検出信号を空間的に離れた場所に無線で送信する送信手段を付設することを特徴とする請求項1〜4何れか記載の鉄系材埋設コンクリート構造物の鉄系材の診断方法。
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