JP4618941B2 - 半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に実装密度を向上させた薄型の半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器にセットされる回路装置は、携帯電話、携帯用のコンピューター等に採用されるため、小型化、薄型化、軽量化が求められている。
【0003】
例えば、回路装置として半導体装置を例にして述べると、一般的な半導体装置として、従来通常のトランスファーモールドで封止されたパッケージ型半導体装置がある。この半導体装置は、図12のように、プリント基板PSに実装される。
【0004】
またこのパッケージ型半導体装置は、半導体チップ2の周囲を樹脂層3で被覆し、この樹脂層3の側部から外部接続用のリード端子4が導出されたものである。
【0005】
しかしこのパッケージ型半導体装置1は、リード端子4が樹脂層3から外に出ており、全体のサイズが大きく、小型化、薄型化および軽量化を満足するものではなかった。
【0006】
そのため、各社が競って小型化、薄型化および軽量化を実現すべく、色々な構造を開発し、最近ではCSP(チップサイズパッケージ)と呼ばれる、チップのサイズと同等のウェハスケールCSP、またはチップサイズよりも若干大きいサイズのCSPが開発されている。
【0007】
図13は、支持基板としてガラスエポキシ基板5を採用した、チップサイズよりも若干大きいCSP6を示すものである。ここではガラスエポキシ基板5にトランジスタチップTが実装されたものとして説明していく。
【0008】
このガラスエポキシ基板5の表面には、第1の電極7、第2の電極8およびダイパッド9が形成され、裏面には第1の裏面電極10と第2の裏面電極11が形成されている。そしてスルーホールTHを介して、前記第1の電極7と第1の裏面電極10が、第2の電極8と第2の裏面電極11が電気的に接続されている。またダイパッド9には前記ベアのトランジスタチップTが固着され、トランジスタのエミッタ電極と第1の電極7が金属細線12を介して接続され、トランジスタのベース電極と第2の電極8が金属細線12を介して接続されている。更にトランジスタチップTを覆うようにガラスエポキシ基板5に樹脂層13が設けられている。
【0009】
前記CSP6は、ガラスエポキシ基板5を採用するが、ウェハスケールCSPと違い、チップTから外部接続用の裏面電極10、11までの延在構造が簡単であり、安価に製造できるメリットを有する。
【0010】
また前記CSP6は、図12のように、プリント基板PSに実装される。プリント基板PSには、電気回路を構成する電極、配線が設けられ、前記CSP6、パッケージ型半導体装置1、チップ抵抗CRまたはチップコンデンサCC等が電気的に接続されて固着される。
【0011】
そしてこのプリント基板で構成された回路は、色々なセットの中に取り付けられる。
【0012】
つぎに、このCSPの製造方法を図14および図15を参照しながら説明する。
【0013】
まず基材(支持基板)としてガラスエポキシ基板5を用意し、この両面に絶縁性接着剤を介してCu箔20、21を圧着する(以上図14(A)を参照)。
【0014】
続いて、第1の電極7,第2の電極8、ダイパッド9、第1の裏面電極10および第2の裏面電極11対応するCu箔20、21に耐エッチング性のレジスト22を被覆し、Cu箔20、21をパターニングする。尚、パターニングは、表と裏で別々にしても良い(以上図14(B)を参照)。
【0015】
続いて、ドリルやレーザを利用してスルーホールTHのための孔を前記ガラスエポキシ基板に形成し、この孔にメッキを施し、スルーホールTHを形成する。このスルーホールTHにより第1の電極7と第1の裏面電極10、第2の電極8と第2の裏面電極10が電気的に接続される(以上図14(C)を参照)。
【0016】
更に、図面では省略をしたが、ボンデイングポストと成る第1の電極7,第2の電極8にAuメッキを施すと共に、ダイボンディングポストとなるダイパッド9にAuメッキを施し、トランジスタチップTをダイボンディングする。
【0017】
最後に、トランジスタチップTのエミッタ電極と第1の電極7、トランジスタチップTのベース電極と第2の電極8を金属細線12を介して接続し、樹脂層13で被覆している。(以上図14(D)を参照)。
【0018】
以上の製造方法により、支持基板5を採用したCSP型の電気素子が完成する。この製造方法は、支持基板としてフレキシブルシートを採用しても同様である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
図13に於いて、トランジスタチップT、接続手段7〜12および樹脂層13は、外部との電気的接続、トランジスタの保護をする上で、必要な構成要素であるが、これだけの構成要素で小型化、薄型化、軽量化を実現する回路素子を提供するのは難しかった。
【0020】
また、支持基板となるガラスエポキシ基板5は、前述したように本来不要なものである。しかし製造方法上、電極を貼り合わせるため、支持基板として採用しており、このガラスエポキシ基板5を無くすことができなかった。
【0021】
そのため、このガラスエポキシ基板5を採用することによって、コストが上昇し、更にはガラスエポキシ基板5が厚いために、回路素子として厚くなり、小型化、薄型化、軽量化に限界があった。
【0022】
更に、図12に示す如く、実装基板にはチップ抵抗CRおよびチップコンデンサCCが別々に実装されている。従って、実装面積が大きく成ってしまう問題があった。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体装置は、前述した多くの課題に鑑みて成され、導電パターン上に固着された半導体素子と、前記半導体素子の近傍の前記導電パターン上に固着されたチップ部品と、前記半導体素子の電極に一端を接続され、前記チップ部品を越えて他端を前記チップ部品の外部にある導電パターンに接続された金属細線とを有することを特徴とする。金属細線がチップ部品を超えて導電パターンに接続されることにより、金属細線の下方のスペースを有効に利用することができる。従って実装密度を向上させることができる。また、前記導電パターンは、1枚の銅箔を用いた単層のものだけに限定されない。層間絶縁膜を用いた多層の導電パターンを用いても良い。
【0024】
更に、本発明の半導体装置は、前記半導体素子は、スタック構造を有していることを特徴とする。半導体素子をスタック構造にすることにより、実装密度を向上させることができる。
【0025】
更に、本発明の半導体装置は、前記半導体素子は中央部に設けられ、前記チップ部品は前記半導体装置を囲むように複数個が設けられることを特徴とする。このことにより、チップ部品上方をワイヤボンディングの金属細線が通過するとができる。従って、実装密度を向上させることができる。
【0026】
更に、前記チップ部品は、バンドパスコンデンサ、ダンピング抵抗、ノイズ対策用インダクタまたは水晶発振子を含む高周波部品のいずれかであることを特徴とする。これら輻射ノイズ対策の部品を半導体素子の近傍に配置させることによって、ノイズ対策の効果を最大にすることができる。なお、チップ部品は、ノイズ対策のチップ部品だけに限定されない。チップ部品はコンデンサ、抵抗、ベアのトランジスタ、ダイオードのいずれでも良い。
【0027】
更に、前記半導体素子、前記チップ部品および前記金属細線は、絶縁性樹脂により封止されることを特徴とする。
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法は、前述した多くの課題に鑑みて成され、導電箔を用意し、少なくとも搭載部を多数個形成する導電パターンを除く領域の前記導電箔に前記導電箔の厚みよりも浅い分離溝を化学的エッチングにより形成して導電パターンを形成する工程と、前記各搭載部の所望の前記導電パターン上に、半導体素子およびチップ部品を固着する工程と、前記各搭載部の半導体素子の電極と所望の前記導電パターンとを、金属細線をチップ部品の上方を通過させて、ワイヤボンディングする工程と前記各搭載部の前記半導体素子およびチップ部品を一括して被覆し、前記分離溝に充填されるように絶縁性樹脂で共通モールドする工程と、前記絶縁性樹脂が露出するまで前記導電箔の裏面全域を除去する工程と、前記絶縁性樹脂を各搭載部毎にダイシングにより分離する工程とを具備することを特徴とする。
【0029】
本発明では、導電パターンを形成する導電箔がスタートの材料であり、絶縁性樹脂がモールドされるまでは導電箔が支持機能を有し、モールド後は絶縁性樹脂が支持機能を有することで支持基板を不要にでき、従来の課題を解決することができる。
【0030】
また、本発明では、ワイヤボンディングの工程に於いて、金属細線をチップ部品の上方を通過させることによって、実装密度を向上させている。
【0031】
更に、本発明の半導体装置の製造方法は、前記半導体素子は、フェイスアップで固着されることを特徴とする。
【0032】
更に、本発明の半導体装置の製造方法は、前記金属細線をM字形に変形させて、ワイヤボンディングを行うことを特徴とする。金属細線をM字に変形させることによって。金属細線がチップ部品に接触してしまうのを防止することができる。
【0033】
更に、本発明の半導体装置の製造方法は、前記絶縁性樹脂はトランスファーモールドで付着されることを特徴とする。
【0034】
更に、本発明の半導体装置の製造方法は、前記導電箔には少なくとも搭載部を多数個形成する導電パターンをマトリックス状に配列したブロックを複数個並べたことを特徴とする。
【0035】
更に、本発明の半導体装置の製造方法は、前記絶縁性樹脂は前記ブロック毎にトランスファーモールドで付着されることを特徴とする。
【0036】
更に、本発明の半導体装置の製造方法は、前記絶縁性樹脂でモールドされた前記各ブロック毎に各搭載部にダイシングにより分離することを特徴とする。
【0037】
【発明の実施の形態】
半導体装置を説明する第1の実施の形態
本発明の半導体装置について、図1を参照しながら説明する。図1(A)は半導体装置53の平面図であり、図1(B)は図1(A)のA−A線での断面図である。
【0038】
図1(A)および図1(B)に示すように、本発明に係る半導体装置は、導電パターン51と、導電パターン上に固着された半導体素子52Aと、半導体素子52Aの近傍の導電パターン上に固着されたチップ部品52Bと、半導体素子52Aの電極に一端が接続されチップ部品52Bを越えて他端をチップ部品52Bの外側にある導電パターン51Cに接続された金属細線55Aと、半導体素子52A、チップ部品52B、金属細線55Aを被覆し且つ一体に支持する絶縁性樹脂50とから構成される。なお、図1に於いては、導電パターンは単層であるが、層間絶縁膜を用いた多層の導電パターンを用いても良い。
【0039】
先ず、半導体装置53を構成する各要素の具体的な説明を行う。
【0040】
絶縁性樹脂50としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また絶縁性樹脂は、金型を用いて固める樹脂、ディップ、塗布をして被覆できる樹脂であれば、全ての樹脂が採用できる。本発明に於いて、絶縁性樹脂50は半導体素子等を封止すると同時に、半導体装置全体を支持する働きを有する。
【0041】
導電パターン51としては、Cuを主材料とした導電箔、Alを主材料とした導電箔、またはFe−Ni等の合金から成る導電箔等を用いることができる。もちろん、他の導電材料でも可能であり、特にエッチングできる導電材、レーザで蒸発する導電材が好ましい。本発明では、導電パターン51は、導電箔を表面からハーフエッチングする工程と、導電箔の裏面をエッチングする工程の2つの工程で形成される。そして、導電箔の裏面をエッチングする工程までは、導電箔が全体を支持する働きを有する。また、導電パターンは、層間絶縁膜を用いた多層の導電パターンを用いても良い。
【0042】
半導体素子52Aとしては、LSI等が導電パターン51の中央部に固着される。半導体素子52Aの接続手段としては、金属接続板、ロウ材から成る導電ボール、半田等のロウ材、Agペースト等の導電ペーストまたは金属細線を用いたワイヤボンディングがある。これら接続手段は、半導体素子52Aの実装形態で選択される。本発明に於いては、半導体素子52Aがフェイスアップで固着され、ワイヤボンディングで電気的接続が行われる。
【0043】
チップ部品としては、ノイズ対策としてバンドパスコンデンサ、ダンピング抵抗およびノイズ対策用インダクタ等が実装される。また、チップ部品52Bとして、コンデンサ、抵抗、ベアのトランジスタ、ダイオードまたは水晶発振子を含む高周波部品等でも良い。
【0044】
次に、本発明の特徴である、金属細線55Aの形状について説明する。
【0045】
図1(B)に示す如く、本発明の特徴は、金属細線55AがM字の形状を有していることである。このことにより、金属細線55Aの下方の導電箔51B上にチップ部品52Bを設けることができる。
【0046】
従来の金属細線の形状は、図12に示す如く、トランジスタT側が盛り上がったループ形状になっている。従って、金属細線12からガラスエポキシ基板5までの距離が小さく、金属細線下方にチップ部品を設けることができなかった。つまり、金属細線の下のスペースがデッドスペースと成っていた。
【0047】
それに対して、本発明では金属細線55AがM字の形状を有している。このことにより、金属細線55Aの下方にチップ部品52Bを設けても、金属細線55Aがチップ部品52Aに接触するのを防止することができる。つまり、従来デッドスペースとなっていた金属細線55Aの下方のスペースを、チップ部品52Bを載置することにより活用することができる。
【0048】
また、本発明に係る半導体装置53では、半導体素子52Aが中央に設けられている。そして、半導体素子52Aを囲むように内側から、チップ部品52B、ボンディングパッドとなる導電パターン51Cが設けられている。従って、半導体装置53の全域を活用することができるので、実装密度を向上させることができる。
【0049】
また、上記したように、チップ部品52Bとしては、ノイズ対策のチップ部品採用される。これらのノイズ対策のチップ部品は、半導体素子52Aに近いほど、ノイズ防止の効果が大きくなる。従って、本発明の半導体装置のように、半導体素子52Aを囲むようにバンドパスコンデンサ、ダンピング抵抗、ノイズ対策用インダクタ等を設けると、半導体素子52Aとチップ部品52Bの距離が小さくなる。従って、ノイズ防止の効果を最大にすることができる。
【0050】
更に、本発明の半導体装置は、ノイズ対策のチップ部品を内蔵した構造を有する。従って、本発明の半導体装置は、これらノイズ対策の部品を内蔵してピンコンパチが可能になり、そのまま置き換えが容易である。
【0051】
図2を参照して、半導体素子がスタック構造を有する場合について説明する。図2(A)は半導体装置53の平面図であり、図2(B)は図1のA−A線での断面図である。
【0052】
図2(A)および図2(B)を参照して、半導体素子52A上に第2の半導体素子52Cがフェイスアップで固着されている。そして、半導体素子52Aと第2の半導体素子52Cは金属細線55Bでワイヤボンディングされている。このように2つの半導体素子をスタック構造にすることにより、半導体装置53の実装密度を更に向上させることができる。この半導体素子のスタック構造以外の構造は図1のものと同じである。
半導体装置の製造方法を説明する第2の実施の形態
まず本発明の半導体装置の製造方法について図3のフローを参照しながら説明する。
【0053】
本発明は、導電箔を用意し、少なくとも搭載部を多数個形成する導電パターンを除く領域の前記導電箔に前記導電箔の厚みよりも浅い分離溝を化学的エッチングにより形成して導電パターンを形成する工程と、前記各搭載部の所望の前記導電パターン上に、半導体素子およびチップ部品を固着する工程と、前記各搭載部の半導体素子の電極と所望の前記導電パターンとを、金属細線をチップ部品の上方を通過させて、ワイヤボンディングする工程と前記各搭載部の前記半導体素子およびチップ部品を一括して被覆し、前記分離溝に充填されるように絶縁性樹脂で共通モールドする工程と、前記絶縁性樹脂が露出するまで前記導電箔の裏面全域を除去する工程と、前記絶縁性樹脂を各搭載部毎にダイシングにより分離する工程とから構成されている。
【0054】
図3のフローに示す如く、Cu箔、Agメッキ、ハーフエッチングの3つのフローで導電パターンの形成が行われる。ダイボンドのフローでは各搭載部への半導体素子の固着が行われる。ワイヤーボンディングのフローでは半導体素子と導電パターンとの電気的接続が行われる。トランスファーモールドのフローでは絶縁性樹脂による共通モールドが行われる。裏面Cu箔除去のフローでは絶縁性樹脂が露出するまで導電箔の裏面全域のエッチングが行われる。裏面処理のフローでは裏面に露出した導電パターンの電極処理が行われる。測定のフローでは各搭載部に組み込まれた半導体素子の良品判別や特性ランク分けが行われる。ダイシングのフローでは絶縁性樹脂からダイシングで個別の半導体素子への分離が行われる。
【0055】
以下に、本発明の各工程を図4〜図11を参照して説明する。
【0056】
本発明の第1の工程は、図4から図6に示すように、導電箔60を用意し、少なくとも半導体素子52の搭載部を多数個形成する導電パターン51を除く領域の導電箔60に導電箔60の厚みよりも浅い分離溝61を化学的エッチングにより形成して導電パターン51を形成することにある。
【0057】
本工程では、まず図4(A)の如く、シート状の導電箔60を用意する。この導電箔60は、ロウ材の付着性、ボンディング性、メッキ性が考慮されてその材料が選択され、材料としては、Cuを主材料とした導電箔、Alを主材料とした導電箔またはFe−Ni等の合金から成る導電箔等が採用される。
【0058】
導電箔の厚さは、後のエッチングを考慮すると10μm〜300μm程度が好ましい。しかし、後述するように、導電箔60の厚みよりも浅い分離溝61が形成できる厚さであれば良い。
【0059】
尚、シート状の導電箔60は、所定の幅、例えば45mmでロール状に巻かれて用意され、これが後述する各工程に搬送されても良いし、所定の大きさにカットされた短冊状の導電箔60が用意され、後述する各工程に搬送されても良い。
【0060】
具体的には、図4(B)に示す如く、短冊状の導電箔60に多数の搭載部が形成されるブロック62が4〜5個離間して並べられる。各ブロック62間にはスリット63が設けられ、モールド工程等での加熱処理で発生する導電箔60の応力を吸収する。また導電箔60の上下周端にはインデックス孔64が一定の間隔で設けられ、各工程での位置決めに用いられる。
【0061】
続いて、導電パターンを形成する。
【0062】
まず、図5に示す如く、Cu箔60の上に、ホトレジスト(耐エッチングマスク)PRを形成し、導電パターン51となる領域を除いた導電箔60が露出するようにホトレジストPRをパターニングする。そして、ホトレジストPRを介して導電箔60を選択的にエッチングする。
【0063】
具体的に、この化学的エッチングにより形成された分離溝61の深さは、例えば50μmであり、その側面は、粗面となり、非異方性にエッチングされるためにその側面は湾曲構造となり、絶縁性樹脂50との接着性が向上される。
なお、図5に於いて、ホトレジストの代わりにエッチング液に対して耐食性のある導電被膜(図示せず)を選択的に被覆しても良い。導電路と成る部分に選択的に被着すれば、この導電被膜がエッチング保護膜となり、レジストを採用することなく分離溝をエッチングできる。この導電被膜として考えられる材料は、Ag、Ni、Au、PtまたはPd等である。しかもこれら耐食性の導電被膜は、ダイパッド、ボンディングパッドとしてそのまま活用できる特徴を有する。
【0064】
例えばAg被膜は、Auと接着するし、ロウ材とも接着する。よってチップ裏面にAu被膜が被覆されていれば、そのまま導電パターン51上のAg被膜にチップを熱圧着でき、また半田等のロウ材を介してチップを固着できる。またAgの導電被膜にはAu細線が接着できるため、ワイヤーボンディングも可能となる。従ってこれらの導電被膜をそのままダイパッド、ボンディングパッドとして活用できるメリットを有する。
【0065】
図6に具体的な導電パターン51を示す。本図は図4(B)で示したブロック62の1個を拡大したもの対応する。黒く塗られた部分の1個が1つの搭載部65であり、導電パターン51を構成し、1つのブロック62には5行10列のマトリックス状に多数の搭載部65が配列され、各搭載部65毎に同一の導電パターン51が設けられている。各ブロックの周辺には枠状のパターン66が設けられ、それと少し離間しその内側にダイシング時の位置合わせマーク67が設けられている。枠状のパターン66はモールド金型との嵌合に使用し、また導電箔60の裏面エッチング後には絶縁性樹脂50の補強をする働きを有する。
【0066】
また、上記の説明では単層の導電パターンを形成する方法を説明したが、導電パターンは層間絶縁膜を用いた多層のものでも良い。
【0067】
本発明の第2の工程は、図7に示す如く、各搭載部の所望の導電パターン51に半導体素子52Aおよびチップ部品52Bを固着することにある。図7(A)は1つの搭載部の平面図であり、図7(B)は図7(A)のA−A線での断面図である。
【0068】
半導体素子52Aとしては、ICチップ等がフェイスアップで実装される。そして、チップ部品52Bとしてはチップコンデンサ、チップ抵抗等の受動素子が実装される。また、チップ部品52Bとして、ノイズ対策部品を用いると、それらを半導体素子52Aの近傍に配置することができる。従ってノイズ対策の効果を最大にすることができる。ここで、ノイズ対策部品とは、バンドパスコンデンサ、ダンピング抵抗、ノイズ対策用インダクタ等である。
【0069】
ここでは、半導体素子52Aが導電パターン51Aにダイボンディングされ、チップ部品52Bは半田等のロウ材または導電ペースト55Bで導電パターン51Bに固着される。
【0070】
本発明の第3の工程は、本発明の特徴とする工程であり、図8に示す如く、各搭載部65の回路素子52の電極と所望の導電パターン51とをワイヤボンディングすることにある。図8(A)は1つの搭載部の平面図であり、図8(B)は図8(A)のA−A線での断面図である。
【0071】
本工程では、ブロック62内の各搭載部の半導体素子52Aの電極と導電パターン51Cを、熱圧着によるボールボンディング及び超音波によるウェッヂボンディングにより一括してワイヤボンディングを行う。
【0072】
本発明の特徴は、図8(B)を参照して、金属細線55AをM字に変形させてワイヤボンディングを行うことにある。このことにより、導電パターン51B上に固着されたチップ部品52Bと金属細線55Aとを離間させることができる。従って、金属細線がチップ部品52Bに接触してしまうのを防ぐことができる。
【0073】
従来のワイヤボンディングでは、図13に示す如く、金属細線は半導体素子側が盛り上がったループの形状を有していた。従って、金属細線の下方にチップ部品を設けるスペースは無かった。
【0074】
しかしながら、本発明では、金属細線55AをM字に変形させてワイヤボンディングを行うことにより、金属細線55A下方にチップ部品52Bを設けるためのスペースを形成することができる。従って、金属細線55Aの下方に、チップ部品としてコンデンサ、抵抗、トランジスタ、ダイオード等を設けることができる。つまり、半導体装置の実装密度を向上させることができる。
【0075】
また以上のように、金属細線55AをM字に変形させることにより、チップ部品52Bを半導体素子52Aの近傍に設けることができる。チップ部品として、ノイズ対策部品であるバンドパスコンデンサ、ダンピング抵抗またはノイズ対策用インダクタを採用した場合、このことによるメリットは大きくなる。すなわち、これらノイズ対策の部品の効果は、半導体素子52Aとの距離が近い程、その効果を最大にすることができる。
【0076】
また本発明では、各搭載部毎にクランパを使用してワイヤボンディングを行っていた従来の回路装置の製造方法と比較して、極めて効率的にワイヤボンディングを行うことができる。
【0077】
本発明の第4の工程は、図9に示す如く、各搭載部63の半導体素子52を一括して被覆し、分離溝61に充填されるように絶縁性樹脂50で共通モールドすることにある。
【0078】
本工程では、図9(A)に示すように、絶縁性樹脂50は半導体素子52A、52Bを完全に被覆し、導電パターン51間の分離溝61には絶縁性樹脂50が充填されてた導電パターン51A、51B、51Cの側面の湾曲構造と嵌合して強固に結合する。そして絶縁性樹脂50により導電パターン51が支持されている。
【0079】
また本工程では、トランスファーモールド、インジェクションモールド、またはポッティングにより実現できる。樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂がトランスファーモールドで実現でき、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂はインジェクションモールドで実現できる。
【0080】
更に、本工程でトランスファーモールドあるいはインジェクションモールドする際に、図9(B)に示すように各ブロック62は1つの共通のモールド金型に搭載部63を納め、各ブロック毎に1つの絶縁性樹脂50で共通にモールドを行う。このために従来のトランスファーモールド等の様に各搭載部を個別にモールドする方法に比べて、大幅な樹脂量の削減が図れる。
【0081】
導電箔60表面に被覆された絶縁性樹脂50の厚さは、半導体素子52のボンディングワイヤー55Aの最頂部から約100μm程度が被覆されるように調整されている。この厚みは、強度を考慮して厚くすることも、薄くすることも可能である。
【0082】
本工程の特徴は、絶縁性樹脂50を被覆するまでは、導電パターン51となる導電箔60が支持基板となることである。従来では、図13の様に、本来必要としない支持基板5を採用して導電路7〜11を形成しているが、本発明では、支持基板となる導電箔60は、電極材料として必要な材料である。そのため、構成材料を極力省いて作業できるメリットを有し、コストの低下も実現できる。
【0083】
また分離溝61は、導電箔の厚みよりも浅く形成されているため、導電箔60が導電パターン51として個々に分離されていない。従ってシート状の導電箔60として一体で取り扱え、絶縁性樹脂50をモールドする際、金型への搬送、金型への実装の作業が非常に楽になる特徴を有する。
【0084】
本発明の第5の工程は、図9(A)に示す如く、絶縁性樹脂50が露出するまで、導電箔60の裏面全域をエッチングすることにある。
【0085】
本工程は、導電箔60の裏面を化学的および/または物理的に除き、導電パターン51として分離するものである。この工程は、研磨、研削、エッチング、レーザの金属蒸発等により施される。
【0086】
実験では研磨装置または研削装置により全面を30μm程度削り、分離溝61から絶縁性樹脂50を露出させている。この露出される面を図9(A)では点線で示している。その結果、約40μmの厚さの導電パターン51となって分離される。また、絶縁性樹脂50が露出する手前まで、導電箔60を全面ウェトエッチングし、その後、研磨または研削装置により全面を削り、絶縁性樹脂50を露出させても良い。更に、導電箔60を点線で示す位置まで全面ウェトエッチングし、絶縁性樹脂50を露出させても良い。
【0087】
この結果、絶縁性樹脂50に導電パターン51の裏面が露出する構造となる。すなわち、分離溝61に充填された絶縁性樹脂50の表面と導電パターン51の表面は、実質的に一致している構造となっている。従って、本発明の半導体装置53は図13に示した従来の裏面電極10、11のように段差が設けられないため、マウント時に半田等の表面張力でそのまま水平に移動してセルフアラインできる特徴を有する。
【0088】
更に、導電パターン51の裏面処理を行い、図1に示す最終構造を得る。すなわち、必要によって露出した導電パターン51に半田等の導電材を被着し、半導体装置として完成する。
【0089】
本発明の第6の工程は、図10に示す如く、絶縁性樹脂50で一括してモールドされた各搭載部63の半導体素子52の特性の測定を行うことにある。
【0090】
前工程で導電箔60の裏面エッチングをした後に、導電箔60から各ブロック62が切り離される。このブロック62は絶縁性樹脂50で導電箔60の残余部と連結されているので、切断金型を用いず機械的に導電箔60の残余部から剥がすことで達成できる。
【0091】
各ブロック62の裏面には図10に示すように導電パターン51の裏面が露出されており、各搭載部65が導電パターン51形成時と全く同一にマトリックス状に配列されている。この導電パターン51の絶縁性樹脂50から露出した裏面電極56にプローブ68を当てて、各搭載部65の半導体素子52の特性パラメータ等を個別に測定して良不良の判定を行い、不良品には磁気インク等でマーキングを行う。
【0092】
本工程では、各搭載部65の半導体装置53は絶縁性樹脂50でブロック62毎に一体で支持されているので、個別にバラバラに分離されていない。従って、テスターの載置台に置かれたブロック62は搭載部65のサイズ分だけ矢印のように縦方向および横方向にピッチ送りをすることで、極めて早く大量にブロック62の各搭載部65の半導体装置53の測定を行える。すなわち、従来必要であった半導体装置の表裏の判別、電極の位置の認識等が不要にできるので、測定時間の大幅な短縮を図れる。
【0093】
本発明の第7の工程は、図11に示す如く、絶縁性樹脂50を各搭載部65毎にダイシングにより分離することにある。
【0094】
本工程では、ブロック62をダイシング装置の載置台に真空で吸着させ、ダイシングブレード69で各搭載部65間のダイシングライン70に沿って分離溝61の絶縁性樹脂50をダイシングし、個別の半導体装置53に分離する。
【0095】
本工程で、ダイシングブレード69はほぼ絶縁性樹脂50を切断する切削深さで行い、ダイシング装置からブロック62を取り出した後にローラでチョコレートブレークするとよい。ダイシング時は予め前述した第1の工程で設けた各ブロックの周辺の枠状のパターン66の内側の相対向する位置合わせマーク67を認識して、これを基準としてダイシングを行う。周知ではあるが、ダイシングは縦方向にすべてのダイシングライン70をダイシングをした後、載置台を90度回転させて横方向のダイシングライン70に従ってダイシングを行う。
【0096】
【発明の効果】
本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、以下に示すような効果を奏することができる。
【0097】
第1に、ワイヤボンディングを行う金属細線をM字に変形させることによって、金属細線の下方の導電パターン上に、チップ部品を実装することができる。従って、半導体装置の実装密度を向上させることができる。
【0098】
第2に、金属細線の下方にチップ部品を設けることにより、半導体素子の近傍にノイズ対策のチップ部品を設けることができる。従って、ノイズ対策の効果を最大にすることができる。ここで、ノイズ対策のチップ部品とは、バンドパスコンデンサ、ダンピング抵抗、ノイズ対策用インダクタ等である。
【0099】
第3に、本発明の半導体装置はノイズ対策のチップ部品を内蔵している。従って、本発明では半導体素子、ノイズ対策のチップ部品等の実装密度が高い半導体装置の、ピンコンパチが可能となる。
【0100】
第4に、本発明では、導電パターンの材料となる導電箔自体を支持基板として機能させ、分離溝の形成時あるいは回路素子の実装、絶縁性樹脂の被着時までは導電箔で全体を支持し、また導電箔を各導電パターンとして分離する時は、絶縁性樹脂を支持基板にして機能させている。従って、回路素子、導電箔、絶縁性樹脂の必要最小限で製造できる。従来例で説明した如く、本来回路装置を構成する上で支持基板が要らなくなり、コスト的にも安価にできる。また支持基板が不要であること、導電パターンが絶縁性樹脂に埋め込まれていること、更には絶縁性樹脂と導電箔の厚みの調整が可能であることにより、非常に薄い回路装置が形成できるメリットもある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回路装置を説明する図である。
【図2】本発明の回路装置を説明する図である。
【図3】本発明の製造フローを説明する図である。
【図4】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図6】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図7】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図8】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図9】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図10】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図11】本発明の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図12】従来の回路装置の実装構造を説明する図である。
【図13】従来の回路装置を説明する図である。
【図14】従来の回路装置の製造方法を説明する図である。
【図15】従来の製造フローを説明する図である。
【符号の説明】
50 絶縁性樹脂
51 導電パターン
52A 回路素子
52B チップ部品
53 回路装置
55A 金属細線
61 分離溝
62 ブロック
Claims (6)
- 複数の導電パターンと、前記複数の導電パターンの中の一つである第1の導電パターン上に固着されたLSIから成る半導体素子と、前記半導体素子の近傍で、前記複数の導電パターンの中の一つである第2の導電パターンと、前記第2の導電パターン上に固着されたノイズ対策用のチップ部品と、前記チップ部品の外部にある前記複数の導電パターンの中の一つである第3の導電パターンと、前記半導体素子の電極に一端を接続され、前記チップ部品を越えて他端が前記第3の導電パターンに接続された金属細線とを有し、
前記半導体素子を囲んで内側から、複数の前記チップ部品と前記第3の導電パターンが設けられ、前記第2の導電パターンおよび前記チップ部品は、前記金属細線の下方に設けられることを特徴とする半導体装置。 - 前記半導体素子は、スタック構造を有していることを特徴とする請求項1に記載された半導体装置。
- 前記半導体素子、前記チップ部品および前記金属細線を被覆する絶縁性樹脂が設けられる請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
- 前記金属細線は、M字に変形される事で、前記チップ部品を設けるためのスペースが設けられる請求項1、請求項2または請求項3に記載の半導体装置。
- 前記導電パターンは、パッケージとなる前記絶縁樹脂の裏面に露出する請求項4に記載の半導体装置。
- 前記チップ部品は、バンドパスコンデンサ、ダンピング抵抗またはノイズ対策用インダクタを含む高周波部品のいずれかであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載された半導体装置。
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